説明

試料スライドの処理装置

【課題】コンパクトな構造をもち、そして封入処理された試料スライドを容易に取り扱うことができるよう、試料スライド上に配置された薄切片を簡単に封入処理可能とする、試料スライドの処理装置を提供する。
【解決手段】当該処理装置(10)は、試料スライド(21)上に配置された薄切片を封入処理するための封入モジュールを含んで構成され、該封入モジュールは、先ず封入剤を前記試料スライド上へ塗布し、引き続いて被覆要素を該試料スライド上へ載置する。更に当該処理装置(10)は、前記試料スライドを搬出するための搬出ユニット(18)を有し、該搬出ユニットは、該搬出ユニット内に配置された前記試料スライドに塗布された封入剤から溶剤を少なくとも部分的に除去するための乾燥ユニット(32)を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本出願は、2010年11月26日出願のドイツ特許出願第 10 2010 060 824.6 号の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、試料スライドの処理装置に関し、特に、試料スライド(試料支持体)上に配置された薄切片を被覆要素で被覆(以下、封入処理(Eindecken)という)するための少なくとも1つの封入モジュールを含んで構成される試料スライドの処理装置(取扱装置)に関する。そのために前記封入モジュールは、先ず封入剤(被覆剤ないし封入媒体)を試料スライド上へ塗布し、引き続いて被覆要素(カバー部材)、特にカバーガラスを該試料スライド上へ載置(カバースリップ)する。更に本処理装置は、試料スライドを搬出するための搬出ユニット(アウトプットユニット)を有する。
【背景技術】
【0003】
組織学において、組織試料(組織検体)から生成される薄切片は試料スライド(所謂スライド)上に載置される。引き続き、試料スライド上に載置された薄切片は、通常は(薬品などで)処理され、例えば染色及び/又は脱水される。その後、薄切片を保護するために薄切片はカバーガラスを用いて封入される。カバーガラスを載置する前に先ずは、カバーガラスを試料スライド上で付着させる封入剤が塗布される。そしてこのように封入処理された試料スライドは顕微鏡へ導かれる。
【0004】
先行技術文献として下記特許文献が挙げられる。これらの特許文献の全開示内容はこれらの引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 2009/0110597 A1
【特許文献2】US 2007/0172911 A1
【特許文献3】US 2006/0231023 A1
【特許文献4】DE 101 44 989 A1
【特許文献5】DE 41 17 833 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は本発明者によるものである。試料スライド上に配置された薄切片を封入処理するための公知の装置において、封入処理された試料スライドが極めて注意深く慎重に取り扱われなくてはならないことは問題であるが、その理由は、封入モジュールから試料スライドを取り出す際に封入剤がまだ完全には乾いてなく、従って例えば試料スライドが水平でない状態に保たれた場合にはカバーガラスが滑ってその位置をずらしてしまうからである。それにより薄切片は損傷されてしまう。また、カバーガラスが滑って位置をずらすことで横の方へ試料スライドから突き出てしまい、それにより試料スライドを取り扱う使用者が簡単に指や手を切ってしまうということもあり得る。このことは、汚染されている薄切片を取り扱う場合に特に問題であるが、その理由は、その場合には使用者が感染のリスクにさらされているためである。
【0007】
上記特許文献1から、試料スライドの処理装置が公知であり、該処理装置は、封入モジュールと、乾燥ユニットと、封入処理されて乾燥処理された試料スライドを搬出するための搬出ユニットとを含んでいる。この際、試料スライドは、これらの試料スライドが個々に乾燥ユニットを通って搬出ユニットへ移送される間、乾燥され、そして個々に搬出ユニット内に保管される。
【0008】
試料スライドを封入処理するための別の装置及び方法が上記特許文献2及び3から公知である。
【0009】
上記特許文献4及び5には、試料スライド上に配置された組織試料を染色するための自動染色機が記載されており、該自動染色機は、試料スライドを供給する及び/又は取り出すためのドロア(引出し部材)を含んでいる。
【0010】
従って本発明の課題は、コンパクトな構造をもち、そして封入処理された試料スライドを容易に取り扱うことができるよう、試料スライド上に配置された薄切片を簡単に封入処理可能とする、試料スライドの処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一視点によれば、試料スライドの処理装置であって、試料スライド上に配置された薄切片を封入処理するための少なくとも1つの封入モジュールと、前記試料スライドを搬出するための搬出ユニットとを有し、前記封入モジュールは、先ず封入剤を前記試料スライド上へ塗布し、引き続いて被覆要素を該試料スライド上へ載置する、処理装置が提供される。該処理装置において、搬出ユニットは、該搬出ユニット内に配置された前記試料スライドにおける塗布された前記封入剤から少なくとも一溶剤を少なくとも部分的に除去するための乾燥ユニットを含んで構成される。封入処理された前記試料スライドを前記封入モジュールから前記搬出ユニットへ移送するための移送ユニットが設けられており、該移送ユニットは、該移送ユニットを用い、前記試料スライドの収容されているラックが前記搬出ユニットへ供給可能であるように構成されている。前記搬出ユニットは、搬出引出しを含んで構成され、該搬出引出し上には、前記試料スライドの収容されている搬出すべき前記ラックが保管されることを特徴とする。
(尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態に限定することを意図するものではないことを付言する。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記一視点によれば、本発明の課題に対応する効果、即ちコンパクトな構造をもち、そして封入処理された試料スライドを容易に取り扱うことができるよう、試料スライド上に配置された薄切片を簡単に封入処理可能とする、試料スライドの処理装置が提供される。
【0013】
試料スライド上に塗布された封入剤から溶剤を除去する(Entziehen)ために乾燥ユニットを設けたことにより、封入剤が迅速に乾燥し、従って被覆要素が試料スライドにおいて確実に固着する。従って試料スライドは、既に封入処理後の短時間内で、たとえ試料スライドが斜めに保持されたとしても被覆要素が滑って位置をずらしてしまうことなく取り出すことができる。特に乾燥ユニットにより、溶剤の比較的迅速な気化(蒸発)が達成される。搬出ユニット内に配置されている試料スライドが乾燥ユニットにより乾燥されるように乾燥ユニットを配置することにより、本処理装置の特にコンパクトな構造が達成される。特に、別個の乾燥ユニットであって該別個の乾燥ユニットでは、試料スライドが乾燥処理後に搬出ユニットへ移送される前に該試料スライドを乾燥処理のために中間貯蔵するという形式の別個の乾燥ユニットの介在使用を省くことができる。従って本処理装置内における試料スライドの必要不可欠な移送回数も減少される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の好ましい実施形態の概要について説明する。
【0015】
被覆要素として特にカバーガラスが使用される。溶剤は、揮発性ないし蒸発可能なものでよく、特にキシレン(Xylol)、トルエン(Toluol)、及び/又は水を含んでいる。
【0016】
試料スライド上に塗布された封入剤から溶剤を除去する(Entziehen)ことは、好ましくは、試料スライドに対し、乾燥ユニットの空気供給ユニットにより空気流を供給することにより達成される。この空気乾燥により封入剤の慎重な(ないし処理対象に悪影響を及ぼさない条件で、即ち大きなストレスを生じない、low−stress,schonend)乾燥処理が行われ、それにより、試料スライド上に載置された薄切片が損傷されることはない。特に従って、乾燥処理時に薄切片が該薄切片を損傷するであろう温度に達することはないことが保証される。本発明の一変形実施形態では、空気供給ユニットに追加し又は択一的に放射加熱ユニットを設けることもでき、該放射加熱ユニットを用い、試料スライドが熱照射され、従って乾燥される。
【0017】
当該処理装置は、特に移送ユニットを含んで構成され、該移送ユニットを用い、封入処理された試料スライドを封入モジュールから搬出ユニットへ移送することができる。従って、封入モジュールから搬出ユニットへの封入処理された試料スライドの自動移送が提供されており、それにより手動アクセス(手で操作すること)が省略され、そして移送ユニットを用いた移送により移送中には試料スライドの水平位置が維持され、カバーガラスが滑って位置をずらしてしまうことが回避される。搬出ユニットへ乾燥ユニットを組み込むことにより、別個の乾燥ユニットを設けることに比べ、移送ユニットをより簡単に且つよりコンパクトに構成することができようになるが、その理由は、移送ユニットにより通過される様々な移送行程が少なくて済むためである。
【0018】
試料スライドは、その移送中には特に1つの又は複数のラック内に収容されており、それにより各試料スライドが個々に移送される必要はない。それにより、時間単位ごとにより多くの試料スライドを移送することができるようになる。更に、特に封入剤がまだ完全に乾いていない場合には、ラックを取り扱う方が個々の試料スライドを取り扱うよりも簡単である。試料スライドは、該試料スライド上に載置された薄切片と共に、好ましくはラックを用い、搬入コンパートメント(インプット用の区画)を介して当該処理装置内へ取り入れられ、ラックを用いて封入モジュールへ移送される。封入処理後には封入処理された試料スライドが、ラックが移送ユニットにより搬出ユニットへ移送される前に再びラック内へ戻される。封入剤の乾燥処理後にラックは機械的に及び/又は手動で取り出し可能である。
【0019】
本発明の一変形実施形態において、試料スライドは個々でも封入モジュールから搬出ユニットへ移送され、個々でも搬出ユニット内に収容することができる。或いはまた、試料スライドを個々で搬入ユニット(インプットユニット)から封入モジュールへ移送することも可能である。同様に、それらの移送の一部分をラック内で(ラックを用いて)行い、それらの移送の他の一部分の間では試料スライドが個々に移送されるということも可能である。
【0020】
搬出ユニットは、好ましくは搬出引出し(搬出用の引出し部材:アウトプット)を含んで構成され、該搬出引出し内には、乾燥ユニットを用いた乾燥処理中において、搬出すべき試料スライドが個々で及び/又はラックに収容されて保管されている。搬出引出しは、引き込まれた状態において当該処理装置のハウジングの内側に配置されており、それに対し、搬出すべき試料スライドを取り出すための引き出された状態において少なくとも部分的に当該処理装置のハウジングの外側に配置されている。従って、搬出引出し内に収容されている試料スライドは、該搬出引出しが引き出された状態において簡単に取り出すことができる。引き出された状態の搬出引出しからの試料スライド或いはラックの取り出しは、手動で及び/又は自動で行うことができる。
【0021】
当該処理装置は、特に駆動ユニットを含んで構成され、該駆動ユニットを用い、搬出引出しが引き込まれた状態から引き出された状態へ、或いは引き出された状態から引き込まれた状態へ移動可能である。このようにして一方では、搬出引出しの快適な引き込み或いは引き出しが達成され、他方では、搬出引出しが注意深く引き込まれ或いは引き出されることが保証され、それにより搬出引出し内に収容されている試料スライドが損傷されることはない。また駆動ユニットは、特に電気モータを含んで構成される。
【0022】
本発明の一変形実施形態において、搬出引出しは、追加的に又は択一的に、手動でも、引き込まれた状態から引き出された状態へ、或いは引き出された状態から引き込まれた状態へ移動可能である。従って駆動ユニットを省略することもでき、その際には当該処理装置の簡単で安価な構造が達成される。
【0023】
引き込まれた状態から引き出された状態への搬出引出しの移動により、搬出引出し内に収容されている試料スライドに対する乾燥ユニットの作用も終了し、又は少なくとも減少される。従って乾燥の作用時間、従って乾燥の程度を、引き込まれた状態から引き出された状態への搬出引出しの移動により簡単に制御することができる。乾燥ユニットは、特に連続的に稼動され、乾燥の作用時間と程度は、搬出引出しの引き込み及び引き出しにより機械的に又は手動で制御される。
【0024】
本発明の有利な一実施形態において、搬出ユニットはケーシングを含んで構成され、該ケーシングは、供給ユニットを用いてラック又は試料スライドを供給するための第1開口部と、搬出引出しが通過移動可能である第2開口部とを有する。第1開口部を通り、ラック或いは試料スライドを簡単に搬出ユニットへ供給することができる。第2開口部を通り、ラック或いは試料スライドを簡単に当該処理装置から取り出すことができる。つまりラック或いは試料スライドの簡単な取り扱い(操作)が達成される。
【0025】
搬出ユニットのケーシングは、少なくとも一部分領域において当該処理装置のハウジングにより形成することができる。特に搬出ユニットのケーシングは、搬出引出しが配置されている部分領域において当該処理装置のハウジングにより形成されている。搬出引出しは、特に前壁を含んで構成されており、該前壁は、該搬出引出しが引き込まれた状態において当該処理装置のハウジングの一部分と搬出ユニットのケーシングの一部分とを形成する。
【0026】
搬出引出しの前壁は、好ましくは、該搬出引出しが引き込まれた状態に配置されている場合に特に第2開口部を閉鎖する。従って当該処理装置からの空気流の漏れ、特に搬出ユニットからの空気流の漏れが回避される。
【0027】
搬出ユニットは、好ましくは、当該搬出ユニットのケーシングにより当該処理装置の残りの部分に対して閉鎖されており、それにより、乾燥すべき試料スライドのところ(周り)を通っていく空気流が当該処理装置の残りの部分へ漏れ出すことはない。従って、搬出ユニット内に収容されている試料スライドにおいて封入剤に的を絞った簡単な乾燥処理が達成される。
【0028】
搬出ユニットのケーシングの第1開口部は、好ましくは開閉可能であり、それにより該ハウジングが閉鎖されている場合には空気流が漏れ出すことはない。第1開口部の閉鎖は、特に摺動式扉(スライド式ドア)を介して行われることが好ましく、それにより、特に折畳式扉と比べ、必要な構造空間は少なくて済む。従って当該処理装置のコンパクトで省スペースの構造が達成される。
【0029】
本発明の有利な一実施形態において、搬出ユニットのケーシングの少なくとも1つの部分領域は断熱材料を用いて断熱されており、それにより、搬出ユニットのケーシングにより包囲された内部空間と、当該処理装置の残りの部分との間の熱的な分離が達成される。また搬出ユニットの全ケーシングが断熱されていると特に有利である。追加的に又は択一的に摺動式扉を断熱性とすることもできる。断熱作用により熱損失は減少され、それにより、空気流を予め設定された温度に加熱するためのエネルギーはより少なくて済むことになる。
【0030】
この際、ラックは、好ましくは、収容されたラック内に配置されている試料スライドが水平配置されているように搬出ユニット内に収容可能であり、それにより、封入剤が乾いて付着していない間に被覆要素(カバーガラス)が滑って位置をずらしてしまうことが防止される。
【0031】
更に乾燥ユニットは、好ましくは、試料スライドから空気を排出するための空気排出ユニットを含んで構成される。従って、空気供給ユニットにより供給された空気流が排出され、空気流が試料スライドの周りを連続的に通流することが達成される。
【0032】
特に空気排出ユニットは、好ましくは、該空気排出ユニットがファンを含んで構成されており、該ファンを用い、排出すべき空気が搬出ユニットから吸引されるないし吐き出される。空気供給ユニットも、好ましくはファンを含んで構成され、該ファンにより、供給すべき空気が空気供給路を通ってラックの方向へ送られる。
【0033】
本発明の特に有利な一実施形態において、好ましくは、空気供給ユニットは、予め設定された温度を有する空気流を試料スライドへ供給する。予め設定された温度は、特に40℃〜70℃の間の値、好ましくは40℃〜50℃の間の値を有する。
【0034】
温度設定された空気流の供給により、加熱空気は、より冷たい空気、特に室温を有する空気の場合よりも多くの溶剤を吸収することができるようになり、それにより、搬出ユニット内に配置された試料スライドの封入剤はより迅速に乾燥し、試料スライドが搬出ユニット内に留まるべき時間は減少される。特に好ましくは40℃〜50℃の間の温度を有する空気流を供給することにより、一方では、迅速な乾燥処理が行われ、他方では、高すぎる温度による薄切片の損傷が回避されることが保証される。
【0035】
空気流の加熱のために特に乾燥ユニットは、空気流がラックへ導かれる前に該空気流を加熱するヒータ要素(ヒータエレメント)を含んで構成される。特にヒータ要素は、空気供給ユニットにおいて、搬出ユニット内に収容されているラックから離れた端部に配置されており、それによりヒータ要素とラックとの間にできるだけ大きな間隔が達成される。従って、乾燥ユニット内に配置された試料スライド上に載置されている薄切片が高すぎる温度で損傷されてしまうことが回避される。特に従って、薄切片がヒータ要素の放射熱に直接的にはさらされないことが達成される。
【0036】
更に、空気流の現在温度を検出するためのセンサが設けられていると有利である。一制御ユニットが、予め設定された温度と現在温度とを比較し、この比較の結果に依存し、供給される空気流が目標温度を有するようにヒータ要素を制御する。従って、予め設定された目標温度も達成されることが保証される。従って試料スライドの迅速で十分な乾燥処理が成され、高すぎる温度による薄切片の損傷が回避される。ヒータ要素の制御は、特に閉ループ制御ないしフィードバック制御(Regelkreis)の形式で行われる。
【0037】
空気供給ユニットは、特に好ましくは空気流が0.5m/s〜1.5m/sの間の気流速度及び/又は4m/h〜5m/hの間の容積流量を有するように構成されている。この場合、カバーガラスが滑って位置をずらしてしまうことのない封入剤の十分な乾燥が、空気流が50℃〜60℃の間の温度をもつ際には3分以内で達成され、それにより、搬出ユニット内に収容されたラックを既に3分後には取り出すことができる。従って高いスループット(処理量)が達成される。
【0038】
本発明の特に有利な一実施形態において、好ましくは、乾燥ユニットは少なくと1つのセンサを含んで構成され、該センサを用い、空気流の現在気流速度及び/又は現在容積流量が検知可能である。前記制御ユニットが、検出された現在気流速度及び/又は検出された現在容積流量を、予め設定された目標気流速度及び/又は予め設定された目標容積流量と比較し、予め設定された目標気流速度及び/又は予め設定された目標容積流量を有する空気流が試料スライドへ供給されるように空気供給ユニットを制御する。この制御は、特に閉ループ制御ないしフィードバック制御(Regelkreis)の形式で行われる。
【0039】
更に、供給すべき空気をフィルタリング(ろ過)するためのフィルタ、特に活性炭フィルタが設けられていると有利である。それにより、汚染ないし不純化された空気により、乾燥すべき試料スライド上に載置された薄切片が変質されること(ないし歪の生成)が防止され、従って薄切片の顕微鏡検査において後の結果が誤りとなってしまうことも防止される。或いはまた、排出される空気をフィルタリング(ろ過)するための別のフィルタ、特に活性炭フィルタを設けることもできる。それにより、当該処理装置の周辺部へ放出される空気は汚染されていないことになる。このことは、薄切片がそのように負荷されている場合(汚染されている場合)には特に有利である。
【0040】
更に、ラック或いは試料スライドが保管されている搬出引出しの底部要素が少なくとも1つの開口部、好ましくは複数の開口部を有し、該開口部を通って空気供給ユニットが空気流を供給すると有利である。それにより、加熱空気が該加熱空気の自然特性(比重差による対流)に応じて下方から上方へ上昇することが達成され、従って空気を案内するための特殊な手段は必要ではない、又は必要であったとしても少なくて済む。特に空気流の供給及び排出は、ラック内で互いに隣接して配置された2つの試料スライドの間に形成されている中間空間において渦状の通流が空気流により行われるように行われ、それにより短時間内で良好な乾燥処理が達成される。
【0041】
本発明の一変形実施形態では、搬出引出しにおいて互いに対向配置された2つの側壁において、各々、空気流を供給するためのスリット状ノズルを設けることができる。この際、スリット状ノズルは、該スリット状ノズルの縦方向(長手方向)が(当該処理装置において)鉛直に延在するように配置されている。更にスリット状ノズルは、好ましくはラック(ラックの高さ)よりも長くなるように構成されており、それにより、ラックにおいて一番端にある試料スライド(最上段や最下段にある試料スライド)の周りの確実な通流が達成される。この場合、排出すべき空気の吸引(ないし排出)は、特に底部要素の少なくとも1つの開口部を介して行われる。或いはまた、排出すべき空気はラックの上側でも吸引(ないし排出)することができる。
【0042】
本発明の一変形実施形態では、側壁を含まずに搬出引出しを構成することもできる。この場合、スリット状ノズルは、搬出ユニットのケーシングにおいて互いに対向配置された2つの側壁に、及び/又は、搬出ユニットのケーシングの内部において該スリット状ノズルのために設けられ且つ互いに対向配置された別個の2つの側壁に配置されている。
【0043】
特に空気供給ユニットは、空気流を供給するための少なくとも1つの空気供給路と、排出すべき空気を排出するための少なくとも1つの空気排出路とを有する。本発明の好ましい一実施形態において空気供給路と空気排出路は、これらが少なくとも一部分領域において直接的に相並んで延在し、特に空気供給路と空気排出路の各々の境界壁の一部分領域が一体式で形成されているように構成されている。従ってコンパクトで省スペースの構造が達成される。
【0044】
本発明の更なる特徴及び長所は、添付の図面に図示した本発明の具体的な実施例を説明する後続段落の記載内容から明らかである。
【0045】
上記のごとく本発明において下記形態が可能である。尚、下記各形態は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載した各々の構成要件にも対応している。
(形態1)上記一視点のとおり。
(形態2)前記乾燥ユニットは、空気流を前記試料スライドへ供給するための空気供給ユニットを含んで構成されることが好ましい。
(形態3)前記試料スライドの収容されている前記ラックは、前記乾燥ユニットを用いた乾燥処理中において前記搬出引出し上に保管されること、前記搬出引出しは、引き込まれた状態において当該処理装置のハウジングの内側に配置されること、及び、前記搬出引出しは、搬出すべき前記試料スライドを取り出すための引き出された状態において少なくとも部分的に当該処理装置の前記ハウジングの外側に配置されることが好ましい。
(形態4)前記搬出引出しは、駆動ユニットを用いて及び/又は手動で、引き込まれた状態から引き出された状態へ、或いは引き出された状態から引き込まれた状態へ移動可能であることが好ましい。
(形態5)前記搬出ユニットはケーシングを含んで構成されること、前記搬出ユニットの該ケーシングは、前記試料スライドの収容されているラック及び/又は前記試料スライドを供給するための第1開口部を含んで構成されること、及び、前記搬出ユニットは、前記搬出引出しが通過移動可能である第2開口部を含んで構成されることが好ましい。
(形態6)前記第1開口部は、摺動式扉を介して閉鎖可能であることが好ましい。
(形態7)前記搬出引出しの前壁が、該搬出引出しが引き込まれた状態に配置されている場合に前記第2開口部を閉鎖することが好ましい。
(形態8)前記搬出ユニットの前記ケーシングの少なくとも1つの部分領域が、断熱材料を用いて断熱されていることが好ましい。
(形態9)前記乾燥ユニットは、前記搬出引出し内に収容されている前記試料スライドから空気を排出するための空気排出ユニットを含んで構成されることが好ましい。
(形態10)前記空気供給ユニットを用いて供給される空気流を加熱するためのヒータ要素が設けられていることが好ましい。
(形態11)前記空気供給ユニットは、該空気供給ユニットが、0.5m/s〜1.5m/sの間の気流速度及び/又は4m/h〜5m/hの間の容積流量を有し、予め設定された温度を有する空気流を供給するように構成されていることが好ましい。
(形態12)供給すべき空気をフィルタリングするためのフィルタ、及び/又は、排出される空気をフィルタリングするためのフィルタが設けられていることが好ましい。
(形態13)前記ラック或いは前記試料スライドの保管されている前記搬出引出しの底部要素が、少なくとも1つの開口部を有すること、及び、前記空気供給ユニットは、前記開口部を通って空気流を前記試料スライドへ供給することが好ましい。
(形態14)前記搬出引出しは、互いに対向配置された2つの側壁を含んで構成されること、及び、該側壁には、各々、空気流を供給するための少なくとも1つのスリット状ノズルが設けられていることが好ましい。
(形態15)前記空気供給ユニットは、空気流を供給するための少なくとも1つの空気供給路を含んで構成され、前記空気排出ユニットは、空気を排出するための少なくとも1つの空気排出路を含んで構成されること、及び、少なくとも一部分領域において前記空気供給路の境界壁と前記空気排出路の境界壁が一体式で構成されていることが好ましい。
【0046】
次に、本発明の具体的な実施例について図面を参照して説明する。
【0047】
本明細書に添付の図面の簡単な説明は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の具体的な第1実施例による自動封入装置を示す概要斜視図であり、図1において搬出引出しは引き込まれた状態にある。
【図2】図1による自動封入装置を示す別の概要斜視図であり、図2において搬出引出しは引き出された状態にある。
【図3】搬出引出しを示す概要斜視図である。
【図4】図1、2による自動封入装置を極めて簡素化して示す概要図であり、図4において搬出引出しは引き込まれた状態にある。
【図5】図1、2、4による自動封入装置を極めて簡素化して示す概要図であり、図5において搬出引出しは引き出された状態にある。
【図6】本発明の具体的な第2実施例による自動封入装置を極めて簡素化して示す概要図である。
【図7】本発明の具体的な第3実施例による自動封入装置を極めて簡素化して示す概要図である。
【図8】本発明の具体的な第4実施例による自動封入装置の搬出ユニットを示す概要断面図である。
【図9】本発明の具体的な第5実施例による自動封入装置を示す概要斜視図である。
【図10】本発明の具体的な第6実施例による自動封入装置を極めて簡素化して示す概要図である。
【図11】本発明の具体的な第7実施例による自動封入装置を極めて簡素化して示す概要図である。
【実施例】
【0049】
図1には、自動封入装置(自動カバーガラススリッピング装置 Eindeckautomat)10として構成されている、試料スライドの処理装置(取扱装置)の概要斜視図が示されている。自動封入装置10は、図1では非図示の搬入ユニット(16:図2)を含んで構成され、該搬入ユニット(インプットユニット)を介し、複数のラックを該ラック内に収容された試料スライドと共に自動封入装置10へ供給することができる。搬出ユニット(アウトプットユニット)18内に配置されたラックは例として符号20で示され、該ラック内の試料スライドは例として符号21で示されている。
【0050】
ラック20及び試料スライド21の供給は、手動でも、供給ユニットを用いて自動でも行うことができる。従って、自動封入装置10が試料スライド用の別の処理装置とは連結されていないスタンドアローン稼動も、ワークステーション稼動も可能である。ワークステーション稼動において自動封入装置10は、特に自動染色装置に隣接して配置され、この際、試料スライド21は、これらの試料スライド21上に配置された薄切片が染色された後に、自動で、ラック20内に収容されて自動染色装置から自動封入装置10へ移行される。
【0051】
更に自動封入装置10は移送ユニット12を有し、該移送ユニット12を用い、搬入ユニットを介して搬入されたラック20を封入モジュール14へ移送することができる。封入モジュール14内では試料スライド21が個々にラック20から取り出される。取り出された試料スライド21上には先ず封入剤(被覆剤 Eindeckmedium)が塗布され、引き続きこの封入剤上へ特にカバーガラスである被覆要素(Eindeckmittel)が載置される。このようにして薄切片はカバーガラスにより保護され、薄切片の顕微鏡検査における明瞭な表示ないし描写が保証されている。試料スライド21の薄切片がこのように封入処理された後に、該試料スライド21は、再び移送されてラック20内へ戻され、次の試料スライド21が封入処理のために取り出される。
【0052】
ラック20の全ての試料スライド21が封入処理された後に、移送ユニット12はラック20を搬出ユニット18内へ移送する。搬出ユニット18は、該搬出ユニット18内に多数のラック20が収容可能であるように構成されている。それらのラック20は、該ラック(試料スライド21)が顕微鏡検査のために顕微鏡へ供給される前に搬出ユニット18から手動及び/又は自動で取り出すことができる。
【0053】
搬出ユニット18は搬出引出し(搬出用の引出し部材)22を含んで構成され、該搬出引出し22内に複数のラック20が収容されている。搬出引出し22は、図1に示されている引き込まれた状態において、ラック20が自動封入装置10の内部に配置されているように配置されている。また搬出引出し22は引き込まれた状態において、特に該搬出引出し22の前壁24が自動封入装置10のハウジング26の一部分と1つの面内に配置されているように配置されており、それによりハウジング26と前壁24は自動封入装置10の内部空間を好ましくは気密に閉鎖する。従って搬出引出し22の引き込まれた状態において、空気が自動封入装置10の内部空間から自動封入装置10の周辺部へ漏れることが回避される。
【0054】
図2に示されている搬出引出し22の引き出された状態において、該搬出引出し22は少なくとも部分的に、ハウジング26により包囲された自動封入装置10の内部空間の外側に配置されている。特に搬出引出し22は引き出された状態において、該搬出引出し22内に収容されている全てのラック20へのアクセス(手が届くこと)が可能であるように自動封入装置10から引き出されている。
【0055】
図3には、図1、2による搬出引出し22の概要斜視図が示されている。ここでは、搬出引出し22の移動方向P1で見て各々3つのラックが相前後して収容されるように複数のラック20が収容されている。また搬出引出し22の移動方向P1の垂直方向で見て各々3つのラックが相並んで収容されている。従って第1実施例においては全部で9つのラックが同時に搬出引出し22内に収容可能である。本発明の一変形実施例では9つのラック20よりも多くの又は9つのラック20よりも少ないラックを搬出引出し22内に収容することができる。更に搬出引出し22内のラック20の配置構成は、図1〜3に示された配置構成と異なって構成することもできる。
【0056】
自動封入装置10は駆動ユニット28を含んで構成され、該駆動ユニット28を用い、搬出引出し22を引き込まれた状態から引き出された状態へ又は引き出された状態から引き込まれた状態へ移動させることができる。駆動ユニット28は特に電気モータ30を有する。
【0057】
本発明の一変形実施例において搬出引出し22は、手動でも、引き込まれた状態から引き出された状態へ又は引き出された状態から引き込まれた状態へ移動させることができる。或いはまた、搬出引出し22が駆動ユニット28を用いても手動でも移動可能であるように自動封入装置10を構成することも可能である。
【0058】
図4には、図1、2による自動封入装置10を極めて簡素化して示す概要図が示されており、図4において搬出引出し22は引き込まれた状態にあり、図5は、図4に対応する図であるが、図5において搬出引出し22は引き出された状態で示されている。搬出ユニット18は乾燥ユニット32を含んで構成され、該乾燥ユニット32を用い、搬出引出し22内に収容されたラック20内に収容されている試料スライド21が乾燥される。乾燥ユニット32により、塗布された封入剤を介して塗布からそれに含まれる少なくとも一溶剤が少なくとも部分的に該封入剤から除去され(放出され:entziehen)、それにより封入剤が乾燥し、カバーガラスを試料スライドに付着させる。特に乾燥ユニット32により、前記溶剤の比較的迅速な気化(蒸発)が達成され、それにより、乾燥ユニットをもたない自動封入装置に比べると試料スライド21が比較的短時間で乾燥され、それにより、カバーガラスが滑って位置をずらしてしまうことなく試料スライド21を取り出すことができる。
【0059】
乾燥ユニット32は、試料スライド21が搬出引出し22内に収容されている間中、従って搬出ユニット18内に収容されている間中、該試料スライド21が乾燥されるように構成されている。それにより、別個の乾燥ユニットであって該別個の乾燥ユニットでは、試料スライドが乾燥処理後に引き続いて搬出ユニットへ移送される前に試料スライドを封入処理後に中間貯蔵するという形式の別個の乾燥ユニットに比べると、コンパクトで省スペースの構造が達成される。乾燥ユニット32の作用時間、従って溶剤除去の程度(乾燥の程度)は、特に、試料スライド21が搬出ユニット18内にとどまる滞留時間によって制御することができる。
【0060】
乾燥ユニット32は空気供給ユニット34を含んで構成され、該空気供給ユニット34を介し、搬出引出し22内に収容されているラック20に対して空気流が供給される。この空気流は、流れ方向について白抜き矢印により示唆されており、その中の1つは例として符号P2が付されている。空気供給ユニット34は、空気供給路36と、ファン38と、供給すべき空気流を加熱するためのヒータ要素(ヒータエレメント)40とを含んでいる。ヒータ要素40は、特に空気流が50℃〜60℃の間の温度をもつように空気流を加熱する。この際、試料スライド21の封入剤の十分な乾燥が、好ましくは3分以内で達成される。この乾燥処理によりカバーガラス自体は、試料スライド21が非水平状態に保たれた場合にも滑って位置をずらすことはない。従って試料スライド21の高いスループット(処理量)が達成される。
【0061】
更に空気供給ユニット34は、該空気供給ユニット34により、特に0.5m/s〜1.5m/sの間の気流速度と4m/h〜5m/hの間の容積流量とを有する空気流が発生されるように構成されている。
【0062】
搬出引出し22の底部要素(底部部材)42は複数の開口部を有し、該開口部のうち1つが例として符号44で示されている。開口部44を通り、空気供給ユニット34により空気が下方から試料スライド21へ供給され、そして加熱空気は該加熱空気の自然挙動(対流)に応じて上方へ上昇し、この際、好ましくは、ラック20内に収容されている試料スライド(複数)21の周りを流れてゆき、それにより試料スライド21の封入剤ができるだけ短時間で乾燥する。
【0063】
更に乾燥ユニット32は空気排出ユニット46を有し、該空気排出ユニット46を用い、冷却され且つ溶剤の成分を含んだ空気が排出される。空気排出ユニット46は、特に空気排出路48とファン50を含んで構成され、該ファン50を用い、搬出引出し22内に収容されているラック20から空気が吸引され、中央排気処理ユニット52へ供給される。空気排出ユニット46は、ラック20が配置されている搬出引出し22の領域において上方に配置された吸引要素(排気集合フード)54を含んで構成され、該吸引要素54は複数の開口部56を有し、これらの開口部56を通って空気が吸引される。空気排出ユニット46は、一方では連続的な空気流を維持し、他方では自動封入装置10内での爆発性及び/又は健康有害性の混合物の生成を回避させるよう作動する。
【0064】
更にセンサ58が(例えば空気供給路36内に)設けられており、該センサ58を用い、供給されている空気流の現在温度が検出される。非図示の制御ユニットが、予め設定された目標温度と前記現在温度とを比較し、この比較の結果に依存してヒータ要素40を制御する。従って、供給されている空気流が実際においても予め設定された目標温度を少なくとも近似的に有することが保証される。それにより、暖かすぎる温度による試料(検体)の損傷が回避されると共に、冷たすぎる空気流による不十分な乾燥も回避される。空気流の温度の制御は、特に閉ループ制御ないしフィードバック制御(Regelkreis)の形式で行われる。
【0065】
特にヒータ要素40は、空気供給路36において搬出引出し22とは反対側の端部に配置されており、それによりヒータ要素40は試料スライド21からできるだけ遠くに離れて配置されており、従ってヒータ要素40により、試料スライド21に対する直接的な熱放射は作用せず、直接的な熱放射による薄切片の損傷が回避される。
【0066】
図6には、本発明の具体的な第2実施例による自動封入装置60を極めて簡素化して示す概要図が示されている。図6において搬出引出し22は、引き込まれた状態で図示されている。
【0067】
図1〜5による第1実施例と異なり、図6による第2実施例において空気供給ユニット34は、空気流を上方からラック20へ供給する。空気排出ユニット46’は、搬出引出し22の底部要素42の複数の開口部44を通って空気を吸引し、この空気を中央排気処理ユニット52へ供給する。
【0068】
本発明の一変形実施例では、搬出ユニット18が搬出引出し22を含まないように構成することもできる。この場合、搬出ユニット18は、特に跳ね蓋(フラップ)及び/又は扉(ドア)である閉鎖要素を介して閉鎖可能な開口部を有し、該開口部を通り、搬出ユニット18内に収容されているラック20が乾燥処理後に手動で及び/又は機械式で取り出し可能である。この場合、ラック20を取り出すためには、ハウジング26により画定されている自動封入装置60の内部空間内へ、該ラック20を該内部空間から取り出すためにアクセス(手でつかむ又は器具でつかむ等)がされなくてはならない。
【0069】
図7には、本発明の具体的な第3実施例による自動封入装置70を極めて簡素化して示す概要図が示されている。この第3実施例において搬出ユニット18はケーシング72を含んで構成され、該ケーシング72により搬出ユニット18の内部空間88が画定されている。搬出引出し22が引き込まれた状態においてラック20は内部空間88内に配置されている。ケーシング72は少なくとも部分的に(或いは全体的に)断熱材料を用いて断熱されており、それにより、搬出ユニット18を包囲する空間に対する搬出ユニット18の内部空間88の熱的な境界付けが成されている。従って封入剤の乾燥のために必要なエネルギー需要が減少される。更にケーシング72により、溶剤の成分を含む空気の漏れが回避される。更にケーシング72は、空気供給ユニット34’’及び空気排出ユニット46’’による空気流の更に正確な案内を可能にする。
【0070】
搬出ユニット18のケーシング72は第1開口部74を有し、該第1開口部74を通り、移送ユニット12(図1参照)がラック20を搬出ユニット18へ供給し、搬出引出し22上へ保管することができる。第1開口部74は摺動式扉(スライド式ドア)76を用いて閉鎖可能であり、それにより閉じた(密閉した)ケーシング72が達成される。摺動式扉76として扉76を構成することにより、特にコンパクトで省スペースの構造が達成される。
【0071】
更に搬出ユニット18のケーシング72は、図7で見ることはできないが第2開口部を有し、該第2開口部を通り、搬出引出し22が引き込まれた状態と引き出された状態との間で移動可能である。搬出引出し22が引き込まれた状態では前壁24が特にこの第2開口部を閉鎖し、それにより搬出引出し22が引き込まれた状態では、空気流により通流される内部空間88が、ケーシング72と摺動式扉76と前壁24とにより好ましくは気密に閉鎖されている。この第3実施例において空気の供給及び排出は、上記第1及び第2実施例に関して説明された供給及び排出の方式に対応して行うことができる。
【0072】
図8には、本発明の具体的な第4実施例による自動封入装置の搬出ユニット18を示す概要断面図が示されている。この第4実施例において搬出ユニット18は2つのスリット状ノズル80、82を含んで構成されており、該スリット状ノズル80、82は、互いに対向配置された2つの側壁84、86に配置されており、該スリット状ノズル80、82を介し、空気流が空気供給ユニット34により、ケーシング72により画定されている搬出ユニット18の内部空間88へ供給される。図示の例においては、スリット状ノズル80、82は、該スリット状ノズルの縦方向(長手方向)が(該自動封入装置において)鉛直に延在するように配置されている。更にスリット状ノズル80、82は、該スリット状ノズルが、少なくとも、ラック20において最上段の試料スライド90と最下段の試料スライド92との間の間隔と同じ長さであるように構成されている。本発明の好ましい一実施例においてスリット状ノズル80、82は、該スリット状ノズルがラック20において最上段の試料スライド90と最下段の試料スライド92との間の間隔よりも僅かに長いように構成されており、それによりラック20において最上段の試料スライド90及び最下段の試料スライド92の周りの空気流の通流も保証されている。
【0073】
スリット状ノズル80、82により、空気流がラック20内で水平配置されている複数の試料スライド21の間を通過するよう案内されることになり、従って、供給された加熱空気が十分にこれらの各試料スライド21の周りを流れる。ラック20に対するこの空気通流により、供給された加熱空気は冷却され(熱を奪われ)、溶剤を(気化させてその成分を)吸収する。ラック20を通流した後には冷却空気が下方へ沈み(降下し)、下部領域の中央において搬出引出し22の底部要素42の開口部44を通り、空気排出ユニット46(図7参照)を用いて吸引される。
【0074】
図9には、本発明の具体的な第5実施例による自動封入装置100を示す概要斜視図が示されている。この第5実施例において搬出引出し22の側壁102、104は、搬出引出し22内に収容されているラック20と少なくとも同じ高さで構成されている。搬出引出し22が引き込まれた状態において該搬出引出し22の側壁102、104は、搬出ユニット18(図2参照)のケーシングの側壁を形成し、従って別個の側壁は必要ではない。それにより簡単でコンパクトで安価な構造が達成される。従って搬出ユニットの内部空間の容積が減少され、それにより加熱のために必要なエネルギーは少なくて済む。
【0075】
図10には、本発明の具体的な第6実施例による自動封入装置110を極めて簡素化して示す概要図が示されている。この第6実施例において乾燥ユニット32は、空気流を供給するための空気供給ユニット34’だけを含んで構成されるが、冷却され且つ溶剤の成分を含んだ空気を管理して排出するための空気排出ユニットは含まれていない。
【0076】
図11には、本発明の具体的な第7実施例による自動封入装置120を極めて簡素化して示す概要図が示されている。この第7実施例において空気排出路48A(図7参照)の部分領域は(2つの)空気供給路36(A、B)の間に配置されている。このようにして特にコンパクトな構造が達成される。
【0077】
尚、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づき、実施形態ないし実施例の変更、調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。即ち本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想に従い、当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10、60、70、100、110、120 自動封入装置
12 移送ユニット
14 封入モジュール
16 搬入ユニット(インプットユニット)
18 搬出ユニット(アウトプットユニット)
20 ラック
21 試料スライド(試料支持体)
22 搬出引出し(搬出用の引出し部材)
24 前壁
26 ハウジング
28 駆動ユニット
30 電気モータ
32 乾燥ユニット
34、34’、34’’ 空気供給ユニット
36、36’、36’’ 空気供給路
36(A)、36(B) 空気供給路
38、50 ファン
40 ヒータ要素(ヒータエレメント)
42 底部要素
44、56 開口部
46、46’、46’’ 空気排出ユニット
48、48’、48’’ 空気排出路
48A 空気排出路
52 排気処理ユニット
54 吸引要素
58 センサ
72 ケーシング
74 開口部
76 摺動式扉(スライド式ドア)
80、82 スリット状ノズル
84、86 側壁
88 内部空間
90、92 ラック内で一番端にある試料スライド
102、104 側壁
P1 移動方向
P2 空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料スライドの処理装置であって、
試料スライド上に配置された薄切片を封入処理するための少なくとも1つの封入モジュールと、前記試料スライドを搬出するための搬出ユニットとを有し、
前記封入モジュールは、先ず封入剤を前記試料スライド上へ塗布し、引き続いて被覆要素を該試料スライド上へ載置し、
前記搬出ユニット(18)は、該搬出ユニット(18)内に配置された前記試料スライド(21)における塗布された前記封入剤から少なくとも一溶剤を少なくとも部分的に除去するための乾燥ユニット(32)を含んで構成され、
封入処理された前記試料スライド(21)を前記封入モジュール(14)から前記搬出ユニット(18)へ移送するための移送ユニット(12)が設けられており、
該移送ユニット(12)は、該移送ユニット(12)を用い、前記試料スライド(21)の収容されているラック(20)が前記搬出ユニット(18)へ供給可能であるように構成されており、
前記搬出ユニット(18)は、搬出引出し(22)を含んで構成され、該搬出引出し(22)上には、前記試料スライド(21)の収容されている搬出すべき前記ラック(20)が保管されること
を特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記乾燥ユニット(32)は、空気流を前記試料スライド(21)へ供給するための空気供給ユニット(34)を含んで構成されること
を特徴とする、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記試料スライド(21)の収容されている前記ラック(20)は、前記乾燥ユニット(32)を用いた乾燥処理中において前記搬出引出し(22)上に保管されること、前記搬出引出し(22)は、引き込まれた状態において当該処理装置のハウジング(26)の内側に配置されること、及び、前記搬出引出し(22)は、搬出すべき前記試料スライド(21)を取り出すための引き出された状態において少なくとも部分的に当該処理装置の前記ハウジング(26)の外側に配置されること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記搬出引出し(22)は、駆動ユニット(28)を用いて及び/又は手動で、引き込まれた状態から引き出された状態へ、或いは引き出された状態から引き込まれた状態へ移動可能であること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記搬出ユニット(18)はケーシング(72)を含んで構成されること、前記搬出ユニット(18)の該ケーシング(72)は、前記試料スライド(21)の収容されているラック(20)及び/又は前記試料スライド(21)を供給するための第1開口部(74)を含んで構成されること、及び、前記搬出ユニット(18)は、前記搬出引出し(22)が通過移動可能である第2開口部を含んで構成されること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記第1開口部(74)は、摺動式扉(76)を介して閉鎖可能であること
を特徴とする、請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記搬出引出し(22)の前壁(24)が、該搬出引出し(22)が引き込まれた状態に配置されている場合に前記第2開口部を閉鎖すること
を特徴とする、請求項5又は6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記搬出ユニット(18)の前記ケーシング(72)の少なくとも1つの部分領域が、断熱材料を用いて断熱されていること
を特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項9】
前記乾燥ユニット(32)は、前記搬出引出し(22)内に収容されている前記試料スライド(21)から空気を排出するための空気排出ユニット(46)を含んで構成されること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記空気供給ユニット(34)を用いて供給される空気流を加熱するためのヒータ要素(40)が設けられていること
を特徴とする、請求項2〜9のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記空気供給ユニット(34)は、該空気供給ユニット(34)が、0.5m/s〜1.5m/sの間の気流速度及び/又は4m/h〜5m/hの間の容積流量を有し、予め設定された温度を有する空気流を供給するように構成されていること
を特徴とする、請求項2〜10のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項12】
供給すべき空気をフィルタリングするためのフィルタ、及び/又は、排出される空気をフィルタリングするためのフィルタが設けられていること
を特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項13】
前記ラック(20)或いは前記試料スライド(21)の保管されている前記搬出引出し(22)の底部要素(42)が、少なくとも1つの開口部(44)を有すること、及び、前記空気供給ユニット(34)は、前記開口部(44)を通って空気流を前記試料スライド(21)へ供給すること
を特徴とする、請求項4〜12のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項14】
前記搬出引出し(22)は、互いに対向配置された2つの側壁(102、104)を含んで構成されること、及び、該側壁(102、104)には、各々、空気流を供給するための少なくとも1つのスリット状ノズル(80、82)が設けられていること
を特徴とする、請求項4〜12のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項15】
前記空気供給ユニット(34)は、空気流を供給するための少なくとも1つの空気供給路(36'')を含んで構成され、前記空気排出ユニット(46)は、空気を排出するための少なくとも1つの空気排出路(48'')を含んで構成されること、及び、少なくとも一部分領域において前記空気供給路(36'')の境界壁と前記空気排出路(48'')の境界壁が一体式で構成されていること
を特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−112964(P2012−112964A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257137(P2011−257137)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】