説明

試料中の金属の測定方法

【課題】高価な装置を使用することなく、簡便、正確かつ高感度に、試料中に微量に含まれる複数の金属を同時に測定することができる試料中の金属の測定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、下記の(a)〜(c)の工程よりなる、試料中の金属の測定方法である。
(a)試料と、配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブとを混合し、接触させ、この混合液中において前記試料に含まれる金属と前記蛍光プローブとの蛍光性金属錯体を形成させる工程。
(b)前記混合液をゲル電気泳動法に適用する工程。
(c)前記ゲル電気泳動法により泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する工程。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブを用い、そして、ゲル電気泳動法に適用して、試料中の金属の測定を行うものであり、複数の金属をも同時に測定できる測定方法である。
本発明は、分析化学などの化学分野、又は臨床検査などの生命科学分野において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試料中に微量に含まれる金属の測定には、原子吸光分析装置が繁用されてきたが、この原子吸光分析装置は大変高価であり、またその設置に広いスペースを必要とし、配管や換気装置が必要なものであった。
また、ICP発光分析装置は、試料中の複数の金属を同時に測定することができるものであるが、これは非常に高価なものであり、そしてやはりその設置に広いスペースを必要とし、配管や換気装置が必要なものであった。
【0003】
更に、キャピラリー電気泳動法により複数の金属を分離して、紫外吸収を測定すること等により試料中に含まれていた複数の金属を同時に測定する方法が知られている。
この方法は高価な装置を使用せずに測定を行える方法であるが、しかしこのキャピラリー電気泳動法による方法においては、試料中の多くの共存化学物質もまた紫外光を吸収するため、多くの場合、測定を妨害することが知られている。
また、上記吸光検出法では、蛍光検出法に比べ感度が著しく低いことが一般に知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、試料中に微量に含まれる金属を、高価な装置を使用することなく、簡便かつ正確に測定を行うことができる測定方法を提供することにあり、特に、複数の金属を同時に測定することができる測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明よりなる。
(1) 下記の(a)〜(c)の工程よりなる、試料中の金属の測定方法。
(a)試料と、配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブとを混合し、接触させ、この混合液中において前記試料に含まれる金属と前記蛍光プローブとの蛍光性金属錯体を形成させる工程。
(b)前記混合液をゲル電気泳動法に適用する工程。
(c)前記ゲル電気泳動法により泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する工程。
(2) 配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブが、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなるものである、前記(1)記載の試料中の金属の測定方法。
(3) 配位部位が6座以上の配位部位である、前記(1)又は(2)記載の試料中の金属の測定方法。
(4) 配位部位が8座以上の配位部位である、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の試料中の金属の測定方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の試料中の金属の測定方法により、高価な装置を使用することなく、簡便、正確かつ高感度に、試料中に微量に含まれる複数の金属を同時に測定することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
1.金属
本発明の試料中の金属の測定方法における金属は、試料中における存在の有無又はその濃度を測定しようとする金属である。
この金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属又はその他の金属を挙げることができる。
【0008】
より具体的には、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はフランシウムを挙げることができる。
【0009】
また、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム又はラジウムを挙げることができる。
【0010】
そして、遷移金属としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルビジウム、ラドン、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金等を挙げることができる。
【0011】
更に、その他の金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、水銀、タリウム、鉛、ビスマス又はポロニウム等を挙げることができる。
【0012】
2.試料
本発明の試料中の金属の測定方法における試料は、前記の金属を含む可能性がある試料であって、これを測定しようとするものである。
金属は単体、イオン及び化合物等の種々の形態を取り、また遊離又はキャリアー(担体)に結合した状態等で存在し、そして様々な物に含まれて存在しているが、本発明の試料中の金属の測定方法により測定を行う試料中の金属は特に限定されるものではなく、直接又は処理を行うことによりゲル電気泳動法に適用することが可能であり、測定を行うことが可能なものであれば対象となる。
【0013】
本発明の測定方法は、金属を簡便、正確、かつ高感度に測定できることを特徴とするものであるので、生体試料、食肉、野菜、穀物、果物、水産物、加工食品、飲料、飲料水、井戸水、河川水、湖沼水、海水、土壌、空気、又は医薬品等の微量の金属が含まれる可能性がある試料に含まれる金属の測定に特に有効なものである。
【0014】
例えば、生体試料としては、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、大便、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水、脳等の臓器、毛髪や皮膚や爪や筋肉若しくは神経等の組織及び細胞等を挙げることができる。
【0015】
本発明の測定方法による試料中の金属の測定においては、蛍光プローブと混合し、接触させる試料は液体であることが好ましい。
もし、金属を含む試料が液体でない場合には、抽出処理又は可溶化処理等の前処理を公知の方法に従って行ない、金属を液体中に含有させるようにしてもよい。
【0016】
3.蛍光プローブ
本発明の試料中の金属の測定方法における蛍光プローブは、配位部位及び蛍光団よりなるものである。
この蛍光プローブは、測定しようとする試料中の金属と接触することにより、この金属と配位結合し、この金属との蛍光性金属錯体を形成する。
なお、この蛍光プローブにおける配位部位は、測定しようとする試料中の金属と接触することにより、この金属と配位結合し、錯体を形成することができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0017】
本発明の測定方法における蛍光プローブの配位部位としては、例えば、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(若しくはエチレンジアミン四酢酸)〔EDTA〕、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔BAPTA〕、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン〔Bicine〕、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸〔CyDTA〕、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、エチレンジアミン−N,N’−二プロピオン酸〔EDDP〕、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸〔EDTA−OH〕,O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔GEDTA〕、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸〔HIDA〕、イミノ二酢酸〔IDA〕、ニトリロ三酢酸〔NTA〕、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)〔NTPO〕、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン〔TPEN〕、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸〔TTHA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン〔Cyclen〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ビス(酢酸−t−ブチルエステル)〔DOA−t−bu−ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)〔DOA−t−bu−ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔DOTA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)〔DOTP〕、(1R,4R,7R,10R)−a,a’,a”,a’’’−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔DOTMA〕、2−p−ニトロベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン〔p−NO−Bz−Cyclen〕、2−p−ニトロベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−NO−Bz−DOTA〕、2−p−アミノベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−NH−Bz−DOTA〕、2−p−イソチオシアナトベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−SCN−Bz−DOTA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ビス(酢酸−t−ブチルエステル)−4,10−ビス酢酸〔DOTA−bis(t−butyl ester)〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)の−10−酢酸〔DOTA−tris(t−butyl ester)〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシサクシニミジルエステル)〔DOTA−mono−NHS−tris(t−bu)ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシサクシニミジルエステル)〔DOTA−NHS−ester〕、1−p−アミノベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−NH−Bz−DTPA〕、p−アミノベンジル−ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔p−NH−Bz−DTPA−penta(t−bu ester)〕、p−イソチオシアナトベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−SCN−Bz−DTPA〕、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕、若しくはジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)など、又はこれらの塩、これらの水和物若しくはこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0018】
本発明における蛍光プローブは、その蛍光団により、蛍光を測定することができる。
なお、この蛍光プローブにおける蛍光団は、励起光を照射することにより、蛍光を放出するものであれば、特に制限なく用いることができる。
この蛍光団としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナトなどのフルオレセイン類縁体、キニーネ、ローダミンB、アクリジンオレンジ、クマリン、又はPOPOP等を挙げることができる。
この蛍光団としては、特に、フルオレセイン、又はフルオレセイン類縁体が好ましい。
【0019】
本発明における蛍光プローブは、配位部位及び蛍光団よりなるものであるが、この蛍光プローブは配位部位と蛍光団を結合した「配位部位−蛍光団」の構造のものであってもよいが、配位部位と蛍光団をスペーサーを介して結合させ「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造としたものであることが好ましい。
このように配位部位と蛍光団との間にスペーサーを存在させることにより、この蛍光プローブが試料中に含まれる金属と蛍光性金属錯体を形成したときに消光してしまうのを抑制することができ、高いレベルの蛍光を安定して得ることができるので好ましい。
【0020】
このスペーサーとしては、例えば、「−NH−C(=S)−NH−C−CH−」、「−NH−C(=S)−NH−」、「−C(=O)−NH−」、アルキル基やフェニル基などの炭化水素基、又はこれらの誘導体等を挙げることができる。
このスペーサーとしては、特に、「−NH−C(=S)−NH−C−CH−」が好ましい。
【0021】
なお、本発明における蛍光プローブは、その配位部位が6座以上であるものが好ましい。
この配位部位が6座以上であることにより、6座未満のものよりも、より広い範囲の金属の測定を行うことができたり、6座未満のものでは測定することができない金属を測定することができたりする点で好ましい。
これは、配位部位が6座未満の蛍光プローブは、配位部位が6座以上の蛍光プローブよりも、金属との錯体の安定性がより小さいためではないかと推測される。
【0022】
具体的には、この6座以上の配位部位としては、例えば、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(若しくはエチレンジアミン四酢酸)〔EDTA〕、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔BAPTA〕、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸〔CyDTA〕、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸〔EDTA−OH〕、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔GEDTA〕、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)〔NTPO〕、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン〔TPEN〕、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸〔TTHA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ビス(酢酸−t−ブチルエステル)〔DOA−t−bu−ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)〔DOA−t−bu−ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔DOTA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)〔DOTP〕、(1R,4R,7R,10R)−a,a’,a”,a’’’−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔DOTMA〕、2−p−ニトロベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−NO−Bz−DOTA〕、2−p−アミノベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−NH−Bz−DOTA〕、2−p−イソチオシアナトベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−SCN−Bz−DOTA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ビス(酢酸−t−ブチルエステル)−4,10−ビス酢酸〔DOTA−bis(t−butyl ester)〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸〔DOTA−tris(t−butyl ester)〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシサクシニミジルエステル)〔DOTA−mono−NHS−tris(t−bu)ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシサクシニミジルエステル)〔DOTA−NHS−ester〕、1−p−アミノベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−NH−Bz−DTPA〕、p−アミノベンジル−ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔p−NH−Bz−DTPA−penta(t−bu ester)〕、p−イソチオシアナトベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−SCN−Bz−DTPA〕、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕、若しくはジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)など、又はこれらの塩、これらの水和物若しくはこれらの誘導体等を挙げることができる。
なお、これらの配位部位は、カルボキシル基、エステル基、エーテル基又はリン酸基などの酸素原子、及び窒素原子等により6座以上のものである。
【0023】
そして、本発明における蛍光プローブは、その配位部位が8座以上であるものがより好ましい。
この配位部位が8座以上であることにより、8座未満のものよりも、更により広い範囲の金属の測定を行うことができたり、8座未満のものでは測定することができない金属を測定することができたりする点でより好ましい。
これは、配位部位が8座未満の蛍光プローブは、配位部位が8座以上の蛍光プローブよりも、金属との錯体の安定性がより小さいためではないかと推測される。
【0024】
具体的には、この8座以上の配位部位としては、例えば、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔BAPTA〕、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔GEDTA〕、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸〔TTHA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔DOTA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ(メチレンホスホン酸)〔DOTP〕、(1R,4R,7R,10R)−a,a’,a”,a’’’−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔DOTMA〕、2−p−ニトロベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−NO−Bz−DOTA〕、2−p−アミノベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−NH−Bz−DOTA〕、2−p−イソチオシアナトベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔p−SCN−Bz−DOTA〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,7−ビス(酢酸−t−ブチルエステル)−4,10−ビス酢酸〔DOTA−bis(t−butyl ester)〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸〔DOTA−tris(t−butyl ester)〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシサクシニミジルエステル)〔DOTA−mono−NHS−tris(t−bu)ester〕、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸モノ(N−ヒドロキシサクシニミジルエステル)〔DOTA−NHS−ester〕、1−p−アミノベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−NH−Bz−DTPA〕、p−アミノベンジル−ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔p−NH−Bz−DTPA−penta(t−bu ester)〕、p−イソチオシアナトベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−SCN−Bz−DTPA〕、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕、若しくはジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)など、又はこれらの塩、これらの水和物若しくはこれらの誘導体等を挙げることができる。
なお、これらの配位部位は、カルボキシル基、エステル基、エーテル基又はリン酸基などの酸素原子、及び窒素原子等により8座以上のものである。
【0025】
また、本発明における蛍光プローブは、その配位部位の構造が非環状であるものが好ましい。
この配位部位の構造が非環状であることにより、環状のものよりも、より広い範囲の金属の測定を行うことができたり、環状のものでは測定することができない金属を測定することができたりする点で好ましい。
【0026】
具体的には、この構造が非環状である配位部位としては、例えば、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(若しくはエチレンジアミン四酢酸)〔EDTA〕、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔BAPTA〕、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン〔Bicine〕、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸〔CyDTA〕、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、エチレンジアミン−N,N’−二プロピオン酸〔EDDP〕、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸〔EDTA−OH〕、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔GEDTA〕、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸〔HIDA〕、イミノ二酢酸〔IDA〕、ニトリロ三酢酸〔NTA〕、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)〔NTPO〕、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン〔TPEN〕、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸〔TTHA〕、1−p−アミノベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−NH−Bz−DTPA〕、p−アミノベンジル−ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔p−NH−Bz−DTPA−penta(t−bu ester)〕、p−イソチオシアナトベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−SCN−Bz−DTPA〕、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕、若しくはジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔DTPA−penta(t−bu ester)〕など、又はこれらの塩、これらの水和物若しくはこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0027】
そして、本発明における蛍光プローブは、先に記載した理由により、その配位部位の構造が非環状でありかつ8座以上であるものがより好ましい。
【0028】
具体的には、その構造が非環状でありかつ8座以上である配位部位としては、例えば、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔BAPTA〕、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔GEDTA〕、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸〔TTHA〕、1−p−アミノベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−NH−Bz−DTPA〕、p−アミノベンジル−ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔p−NH−Bz−DTPA−penta(t−bu ester)〕、p−イソチオシアナトベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−SCN−Bz−DTPA〕、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕、若しくはジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)など、又はこれらの塩、これらの水和物若しくはこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0029】
前記の非環状でありかつ8座以上である配位部位としては、例えば、非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位等を挙げることができる。
【0030】
より具体的には、この非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位としては、例えば、O,O’−ビス(2−アミノフェニル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔BAPTA〕、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸〔GEDTA〕、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸〔TTHA〕、1−p−アミノベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−NH−Bz−DTPA〕、p−アミノベンジル−ジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)〔p−NH−Bz−DTPA−penta(t−bu ester)〕、p−イソチオシアナトベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸〔p−SCN−Bz−DTPA〕、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕、若しくはジエチレントリアミンペンタ(酢酸−t−ブチルエステル)など、又はこれらの塩、これらの水和物若しくはこれらの誘導体等を挙げることができる。
なお、これらの配位部位は、カルボキシル基、エステル基又はエーテル基などの酸素原子、及び窒素原子等により8座以上のものである。
【0031】
これらの非環状のポリアミノカルボン酸でありかつ8座以上の配位部位においては、特に、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(若しくはジエチレントリアミン五酢酸)〔DTPA〕、又はN−[(R)−2−アミノ−3−(p−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N”,N’’’−五酢酸〔CHX−A”−DTPA〕が好ましい。
【0032】
本発明における蛍光プローブの具体例としては、例えば、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕(構造式を[化1]に示す)、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕(構造式を[化2]に示す)、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕(構造式を[化3]に示す)、又は1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕(構造式を[化4]に示す)等を挙げることができる。
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
本発明の蛍光プローブとしては、特に、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕、又はN−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕が好ましい。
【0038】
4.蛍光プローブの調製方法
本発明における蛍光プローブは、前記の「配位部位」及び「蛍光団」を「配位部位−蛍光団」の構造となるように結合させて調製するか、又は前記の「配位部位」、「スペーサー」及び「蛍光団」を「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造となるように結合させて調製すれば良い。
【0039】
この調製の方法は、特に制限はなく、公知の方法等により行えば良い。
例えば、前記の2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕の調製方法としては、2−(4−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸溶液に、マレイン酸、フルオレセインイソチオシアナート アイソマーI溶液、及び超純水を加え、暗所で放置した後、1−ブタノールで抽出し、さらに1−ペンタノールで抽出し、そして塩酸で再結晶し、乾燥することにより2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を取得する方法等を挙げることができる。
【0040】
また、前記のN−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕の調製方法としては、[(R)−2−アミノ−3−(4−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−五酢酸溶液に、マレイン酸、5−アミノフルオレセイン、及び超純水を加え、暗所で放置することによりN−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を取得する方法等を挙げることができる。
【0041】
5.試料中の金属の測定
(1)試料中の金属の測定方法
本発明の試料中の金属の測定方法は、下記の(a)〜(c)の工程よりなるものである。
(a)試料と、配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブとを混合し、接触させ、この混合液中において前記試料に含まれる金属と前記蛍光プローブとの蛍光性金属錯体を形成させる工程。
(b)前記混合液をゲル電気泳動法に適用する工程。
(c)前記ゲル電気泳動法により泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する工程。
【0042】
(2)工程(a)
本発明の試料中の金属の測定方法の工程(a)において、試料と蛍光プローブを混合する際の量比は、試料中に含まれる金属の濃度や蛍光プローブの濃度等により異なるので一概に言うことはできないが、一般的には、試料量1に対して、蛍光プローブ溶液量は、0.01〜100とすることが好ましく、0.1〜10とすることがより好ましい。
【0043】
また、試料と蛍光プローブを混合する際の蛍光プローブの濃度は、試料中に含まれる金属の濃度や試料と蛍光プローブ溶液の混合比率等により異なるので、これも一概に言うことはできないが、一般的には、0.01μM〜100mMの範囲の濃度とすることが好ましく、1μM〜10mMの範囲の濃度とすることがより好ましく、10μM〜1mMの範囲の濃度とすることが特に好ましい。
【0044】
そして、試料と蛍光プローブを混合し、接触させ、この混合液中において蛍光性金属錯体を形成させる際の温度は、特に制限はなく、室温で良く、又は冷温下でも良く、又は加温下でも良い。
【0045】
試料と蛍光プローブを混合し、接触させ、この混合液中において蛍光性金属錯体を形成させるための時間は、1分間以上であることが好ましく、5分間以上であることがより好ましく、10分間以上であることが特に好ましい。
【0046】
(3)工程(b)
本発明の試料中の金属の測定方法の工程(b)においては、前記の工程(a)における試料と蛍光プローブとの混合液をゲル電気泳動法に適用する。
これは、この混合液をゲルに添加、接触させ、次に通電して、前記の蛍光性金属錯体を泳動させることにより行う。
この試料と蛍光プローブとの混合液をゲル電気泳動法に適用することにより、形成された蛍光性金属錯体と遊離の蛍光プローブとの分離を行い、更に複数種類の金属毎に形成された蛍光性金属錯体同士の分離を行う。
【0047】
このゲル電気泳動法は、支持体としてゲルを使用する電気泳動法であれば、特に制限なく用いることができる。
このゲル電気泳動法におけるゲルとしては、例えば、ポリアクリルアミドゲル、又はアガロースゲル等を挙げることができるが、特に、ポリアクリルアミドゲルを用いることが好ましい。
また、このゲル電気泳動法としては、スラブ型(垂直型)、ディスク型、又は水平型等のいずれの種類のゲル電気泳動法をも用いることができる。
そして、このゲル電気泳動法としては、通常のゲル電気泳動法、又はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法のいずれをも用いることができる。
更に、このゲル電気泳動法としては、一次元電気泳動法、又は二次元電気泳動法のいずれをも用いることができる。
なお、このゲル電気泳動法におけるゲルの大きさについては、特に制限はない。
適宜、適した大きさのものを使用すれば良い。
【0048】
なお、本発明の測定方法におけるゲル電気泳動法としては、濃縮ゲル及び分離ゲルよりなる非連続系ゲルを用いることが好ましい。
この場合、濃縮ゲルとしては、そのゲル濃度が、4%T以上でありかつ30%T以下のものが好ましく、10%T以上でありかつ20%T以下のものがより好ましい。
また、濃縮ゲルのpHは、pH6〜pH10の範囲のものが好ましく、pH8〜pH10の範囲のものがより好ましい。
この濃縮ゲルの緩衝液としては、前記のpH範囲において緩衝能を有する緩衝剤よりなるものであれば良い。
この緩衝液として、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液等を挙げることができる。
なお、この濃縮ゲルの大きさについては、特に制限はない。
適宜、適した大きさのものを使用すれば良い。
【0049】
また、分離ゲルとしては、そのゲル濃度が、10%T以上でありかつ70%T以下のものが好ましく、20%Tを超えかつ50%T以下のものがより好ましい。
また、分離ゲルのpHは、pH6〜pH11の範囲のものが好ましい。
この分離ゲルの緩衝液としては、前記のpH範囲において緩衝能を有する緩衝剤よりなるものであれば良い。この緩衝液として、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液等を挙げることができる。
なお、この分離ゲルの大きさについては、特に制限はない。
適宜、適した大きさのものを使用すれば良い。
【0050】
なお、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法における分離ゲルのゲル濃度は、従来、4%T以上20%T以下の範囲で使用されていた。
これに対し、本発明者らは、分離ゲルのゲル濃度を20%Tを超えかつ50%T以下の濃度のものとすることにより、分離ゲルの細孔径が小さくなり、これにより蛍光性金属錯体の拡散を防ぐことができ、その結果、非常に細いバンドでの分離が可能となること、すなわち高感度かつ高精度での試料中の金属の測定が可能となることを見出した。
よって、本発明の試料中の金属の測定方法においては、分離ゲルのゲル濃度を20%Tを超えかつ50%T以下の濃度のものとすることがより好ましいのである。
【0051】
また、ゲルを構成するアクリルアミド(モノマー)などや緩衝剤などの試薬等には、不純物としての金属が含まれており、これが蛍光プローブと結合してしまうことにより、本発明における試料中の金属の測定結果にこの不純物金属のバンドが現れ、測定が妨害される。
しかし、分離ゲルに、キレート剤を含有させることにより、この不純物金属のバンドの出現を抑制することができるので、好ましい。
このキレート剤として、先に本発明における蛍光プローブの配位部位として挙げたもの等を用いることができる。
このキレート剤としては、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸〔CyDTA〕等が好ましい。
【0052】
このキレート剤を含有させる濃度であるが、0.1μM〜1000mMが好ましく、1μM〜100mMがより好ましく、10μM〜10mMが特に好ましい。
【0053】
そして、この分離ゲルには、アミノ酸等の両性電解質を含有させることにより、複数の金属の分離を促進させることができるので、好ましい。
この両性電解質としては、アミノ酸が好ましく、グリシン等が特に好ましい。
この両性電解質を含有させる濃度であるが、0.1mM〜1000mMが好ましく、1mM〜500mMがより好ましく、10mM〜100mMが特に好ましい。
【0054】
本発明におけるゲル電気泳動法の泳動液としては、そのpHが、pH6〜pH11の範囲であることが好ましい。
この泳動液の緩衝液としては、前記のpH範囲において緩衝能を有する緩衝剤よりなるものであれば良い。この緩衝液として、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液等を挙げることができる。
【0055】
更に、この泳動液には、電気泳動度の極めて小さい物質と大きい物質とを共存させることにより、濃縮ゲルにおいて金属のバンドを濃縮させることができるので、好ましい。
この電気泳動度の極めて小さい物質としては、グリシン等が好ましく、電気泳動度の大きい物質としては塩化物イオン等が好ましい。
これらの電気泳動度の極めて小さい物質、電気泳動度の大きい物質を共存させる濃度であるが、1μM〜1000mMが好ましく、100μM〜500mMがより好ましく、1mM〜200mMが特に好ましい。
【0056】
本発明の測定方法において、試料と蛍光プローブの混合液をゲル電気泳動法に適用する際の、ゲルに添加、接触させる前記混合液の量は、実施するゲル電気泳動法の条件に応じ、適した量とすれば良いが、一般的には、1μL〜200μLの量を添加することが好ましい。
【0057】
本発明の測定方法でのゲル電気泳動法において、その通電条件は、実施するゲル電気泳動法の条件に応じたものとすればよいが、一般的には、電流5mA〜100mA、電圧200V〜5000Vにおいて行えば良い。
【0058】
また、泳動時間は、実施するゲル電気泳動法の条件により異なるが、一般的には、30分間〜360分間である。
【0059】
(4)工程(c)
本発明の試料中の金属の測定方法の工程(c)においては、前記の工程(b)のゲル電気泳動法で泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する。
すなわち、前記工程(b)のゲル電気泳動法において泳動されて、遊離の蛍光プローブと分離された蛍光性金属錯体、更には複数種類の金属毎に分離された蛍光性金属錯体を測定する。
この測定は、前記のゲル電気泳動法のゲルに、用いた蛍光プローブの蛍光団に適した波長の励起光を照射し、これに対して放出された蛍光を測定することにより行う。
【0060】
この蛍光の測定は、目視により前記ゲルの泳動パターン(バンド)の確認を行い定性的に金属を測定しても良いし、又はデンシトメーター若しくは蛍光光度計等により各バンドの蛍光強度を測定して、定量的に金属を測定しても良い。
また、前記ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラやスキャナー等により取り込んで、コンピュータで解析しても良い。
【0061】
そして、既知の金属、又は既知の濃度の既知金属を本発明の測定方法で測定した際のゲルの泳動パターン(バンド)、更にはその蛍光強度と比較することにより、試料中に含まれていた1種類又は複数種類の金属について、その有無、更にはそれらの濃度についての測定結果を得ることができる。
【実施例】
【参考例1】
【0062】
〔蛍光プローブ(2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕)の調製〕
【0063】
本発明の試料中の金属の測定方法における蛍光プローブとして、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を調製した。
【0064】
1.調製
10−1mol dm−3の2−(4−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸溶液25mlに10−1mol dm−3のマレイン酸(pH6.0)を5ml、10−2mol dm−3のフルオレセインイソチオシアナート アイソマーI溶液を2.5ml、更に超純水を17.5ml加えた。
その後、暗所で6時間放置し、その後、1−ブタノールで抽出し、更に1−ペンタノールで抽出し、塩酸で再結晶し、乾燥し、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕の粉末を得た。
【0065】
2.元素分析値
前記1で調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕の元素分析を行った結果を下に示す。
測定値:C,53.30;H,5.25;N,7.05%.
計算値:C,53.31;H,4.54;N,7.40%(測定値と計算値の誤差0.71%)
【参考例2】
【0066】
〔蛍光プローブ(N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕)の調製〕
【0067】
本発明の試料中の金属の測定方法における蛍光プローブとして、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を調製した。
【0068】
10−1mol dm−3の[(R)−2−アミノ−3−(4−イソチオシアナトフェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−五酢酸溶液25mlに10−1mol dm−3のマレイン酸(pH6.0)を5ml、10−2mol dm−3の5−アミノフルオレセイン溶液を2.5ml、更に超純水を17.5ml加えた。
その後、暗所で6時間放置し、N−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を得た。
【参考例3】
【0069】
〔蛍光プローブ(2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕)の調製〕
【0070】
本発明の試料中の金属の測定方法における蛍光プローブとして、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕を調製した。
【0071】
1.調製
10−1mol dm−3の2−(4−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸溶液25mlに10−1mol dm−3のマレイン酸(pH6.0)を5ml、10−2mol dm−3のフルオレセインイソチオシアナート アイソマーI溶液を2.5ml、更に超純水を17.5ml加えた。
その後、暗所で6時間放置し、その後、1−ブタノールで抽出し、更に1−ペンタノールで抽出し、塩酸で再結晶し、乾燥し、2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕の粉末を得た。
【0072】
2.元素分析値
前記1で調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕の元素分析を行った結果を下に示す。
測定値:C,52.45;H,5.48;N,8.13%
計算値:C,52.50;H,5.10;N,8.35%(測定値と計算値の誤差0.38%)
【参考例4】
【0073】
〔蛍光プローブ(1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕)の調製〕
【0074】
本発明の試料中の金属の測定方法における蛍光プローブとして、1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕を調製した。
【0075】
1.調製
10−1mol dm−3の1−(4−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸溶液25mlに10−1mol dm−3のマレイン酸(pH6.0)を5ml、10−2mol dm−3のフルオレセインイソチオシアナート アイソマーI溶液を2.5ml、更に超純水を17.5ml加えた。
その後、暗所で6時間放置し、その後、1−ブタノールで抽出し、更に1−ペンタノールで抽出し、塩酸で再結晶し、乾燥し、1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕の粉末を得た。
【0076】
2.元素分析値
前記1で調製した1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕の元素分析を行った結果を下に示す。
測定値:C,56.73;H,4.58;N,6.43%.
計算値:C,56.71;H,4.51;N,6.96%(測定値と計算値の誤差0.53%)
【0077】
3.質量分析値
前記1で調製した1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕の質量分析を行った結果を下に示す。
MS(FAB(−),glycerol matrix):m/e=785[M−H]
【0078】
4.核磁気共鳴スペクトル分析値
前記1で調製した1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕の核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果を下に示す。
H NMR(270MHz,d−DMSO):δ(ppm)12.4(1H,br),10.14(2H,s),10.07(1H,s),8.18(1H,d,HH=1.3Hz),7.80(1H,dd,HH=8.2Hz,HH=1.7Hz),7.39(2H,d,HH=8.6Hz),7.19(3H,d,HH=8.2Hz),6.66(2H,d,HH=1.0Hz),6.57(4H,m),3.46(5H,s),3.36(8H,m),2.77(4H,m).
【実施例1】
【0079】
〔蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)を用いてのゲル電気泳動法による試料中の金属の測定〕
前記参考例1で調製した蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)を用いて、ゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った。
【0080】
1.試料
下記の13種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0081】
2.蛍光プローブ含有溶液
参考例1にて調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を、蛍光プローブとして用いた。
【0082】
1mMのFTC−ABDTPAを含む水溶液を調製し、蛍光プローブ含有溶液とした。
【0083】
3.ゲル電気泳動法用のゲル及び泳動液
(1)濃縮ゲル
ゲル濃度が16.5%T(1.46%C)であり、0.0938Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.8)を含むポリアクリルアミドゲルを調製し、濃縮ゲルとした。
【0084】
(2)分離ゲル
ゲル濃度が30%T(0.8%C)であり、0.166Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH9.3)、0.0853Mグリシンを含むポリアクリルアミドゲルを調製し、分離ゲルとした。
【0085】
(3)泳動液
48mMグリシンを含む6.25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.3)を調製し、これを泳動液とした。
【0086】
4.試料中の金属の測定
(1) 前記1の13種類の試料各々と、前記2の蛍光プローブ含有溶液と、50wt%グリセロール水溶液と、75mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.8)と、純水とを、それぞれ1:1:0.5:1:6.5で混合し、これにより試料と蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0087】
(2) 前記(1)の計13種類の混合液のそれぞれをポリアクリルアミドゲル電気泳動法に適用して、泳動を行った。
なお、このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、一次元・スラブ型であり、濃縮ゲルの下に分離ゲルを配置した非連続系のものである。
この濃縮ゲルとしては前記3の(1)の濃縮ゲルを用い、また、分離ゲルとしては前記3の(2)の分離ゲルを用い、そして、泳動液としては前記3の(3)の泳動液を用いた。
なお、この濃縮ゲル及び分離ゲルを合わせた大きさは、高さ20cm、幅20cmであった。
【0088】
具体的には、まず前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽にセットした。
次に、計13種類の前記(1)の混合液のそれぞれの3μLを、前記の濃縮ゲルに添加し、接触させた。
【0089】
そして、電流20mA(一定)、電圧680−1150Vで、180分間通電した。
この通電により、前記の蛍光性金属錯体は濃縮ゲル中で濃縮され、その後分離ゲルに移動し、分離ゲル中を泳動した。
【0090】
(3) 前記(2)の通電を終了した後、前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽から取り外した。
【0091】
その後、この濃縮ゲル及び分離ゲルを、紫外線照射装置の上に置き、波長470nmの励起光を照射した。
これにより放出された蛍光による濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラで撮影した。
この濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、図1に示した。
なお、この図1の泳動パターン(バンド)において、「Blank」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Ca」は前記のカルシウム含有試料のバンドを示し、同様に、「Mg」は前記のマグネシウム含有試料の、「Al」は前記のアルミニウム含有試料の、「Fe」は前記の鉄含有試料の、「Cu」は前記の銅含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「Co」は前記のコバルト含有試料の、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Cd」は前記のカドミウム含有試料の、「Hg」は前記の水銀含有試料の、そして「Pb」は前記の鉛含有試料のバンドを示す。
【0092】
5.測定結果
図1の濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)から、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる金属に応じたバンドが得られることが分かる。
このことより、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
また、更に、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる複数の金属を同時に測定することができることも確認できた。
【実施例2】
【0093】
〔蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)を用いてのゲル電気泳動法による試料中の金属の測定〕
前記参考例2で調製した蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)を用いて、ゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った。
【0094】
1.試料
下記の14種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)12種類の金属含有試料
0.1mMの鉛イオン、0.1mMの水銀イオン、0.1mMのカドミウムイオン、0.1mMのマンガンイオン、0.1mMのコバルトイオン、0.1mMのニッケルイオン、0.1mMの亜鉛イオン、0.1mMの銅イオン、0.1mMの鉄イオン、0.1mMのアルミニウムイオン、0.1mMのマグネシウムイオン、及び0.1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(14)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0095】
2.蛍光プローブ含有溶液
参考例2にて調製したN−[(R)−2−アミノ−3−(p−フルオレセイン−チオカルバミル−フェニル)プロピル]−トランス−(S,S)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N’,N’,N’’’,N’’’−五酢酸〔FTC−CHX−A”−DTPA〕を、蛍光プローブとして用いた。
【0096】
1mMのFTC−CHX−A”−DTPAを含む水溶液を調製し、蛍光プローブ含有溶液とした。
【0097】
3.ゲル電気泳動法用のゲル及び泳動液
(1)濃縮ゲル
ゲル濃度が16.5%T(1.46%C)であり、0.0938Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.8)を含むポリアクリルアミドゲルを調製し、濃縮ゲルとした。
【0098】
(2)分離ゲル
ゲル濃度が30%T(0.8%C)であり、0.166Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH9.3)、0.0853Mグリシンを含むポリアクリルアミドゲルを調製し、分離ゲルとした。
【0099】
(3)泳動液
48mMグリシンを含む6.25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.3)を調製し、これを泳動液とした。
【0100】
4.試料中の金属の測定
(1) 前記1の14種類の試料各々と、前記2の蛍光プローブ含有溶液と、50wt%グリセロール水溶液と、75mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.8)と、純水とを、それぞれ1:1:0.5:1:6.5で混合し、これにより試料と蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と蛍光プローブ(FTC−CHX−A”−DTPA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0101】
(2) 前記(1)の計14種類の混合液のそれぞれをポリアクリルアミドゲル電気泳動法に適用して、泳動を行った。
なお、このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、一次元・スラブ型であり、濃縮ゲルの下に分離ゲルを配置した非連続系のものである。
この濃縮ゲルとしては前記3の(1)の濃縮ゲルを用い、また、分離ゲルとしては前記3の(2)の分離ゲルを用い、そして、泳動液としては前記3の(3)の泳動液を用いた。
なお、この濃縮ゲル及び分離ゲルを合わせた大きさは、高さ20cm、幅20cmであった。
【0102】
具体的には、まず前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽にセットした。
次に、計14種類の前記(1)の混合液のそれぞれの3μLを、前記の濃縮ゲルに添加し、接触させた。
そして、電流20mA(一定)、電圧680−1150Vで、180分間通電した。
この通電により、前記の蛍光性金属錯体は濃縮ゲル中で濃縮され、その後分離ゲルに移動し、分離ゲル中を泳動した。
【0103】
(3) 前記(2)の通電を終了した後、前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽から取り外した。
【0104】
その後、この濃縮ゲル及び分離ゲルを、紫外線照射装置の上に置き、波長470nmの励起光を照射した。
これにより放出された蛍光による濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラで撮影した。
この濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、図2に示した。
なお、この図2の泳動パターン(バンド)において、「L」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Metal*12」は前記の12種類の金属含有試料のバンドを示す。
そして、「Pb」は前記の鉛含有試料のバンドを示し、同様に、「Hg」は前記の水銀含有試料の、「Cd」は前記のカドミウム含有試料の、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Co」は前記のコバルト含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Cu」は前記の銅含有試料の、「Fe」は前記の鉄含有試料の、「Al」は前記のアルミニウム含有試料の、「Mg」は前記のマグネシウム含有試料の、そして「Ca」は前記のカルシウム含有試料のバンドを示す。
【0105】
5.測定結果
図2の濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)から、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる金属に応じたバンドが得られることが分かる。
このことからも、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
また、更に、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる複数の金属を同時に測定することができることも確認できた。
【実施例3】
【0106】
〔蛍光プローブ(FTC−ABDOTA)を用いてのゲル電気泳動法による試料中の金属の測定〕
前記参考例3で調製した蛍光プローブ(FTC−ABDOTA)を用いて、ゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った。
【0107】
1.試料
下記の13種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0108】
2.蛍光プローブ含有溶液
参考例3にて調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕を、蛍光プローブとして用いた。
【0109】
0.9mMのFTC−ABDOTA、及び5.5%のグリセロールを含む溶液を調製し、蛍光プローブ含有溶液とした。
【0110】
3.ゲル電気泳動用のゲル及び泳動液
(1)濃縮ゲル
ゲル濃度が16.5%T(1.46%C)であり、0.0938Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.8)を含むポリアクリルアミドゲルを調製し、濃縮ゲルとした。
【0111】
(2)分離ゲル
ゲル濃度が30%T(0.8%C)であり、0.166Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH9.3)、0.0853Mグリシンを含むポリアクリルアミドゲルを調製し、分離ゲルとした。
【0112】
(3)泳動液
48mMグリシンを含む6.25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.3)を調製し、これを泳動液とした。
【0113】
4.試料中の金属の測定
(1)前記1の13種類の試料各々と、前記2の蛍光プローブ含有溶液と、純水を、それぞれ0.5:5.5:6.5で混合し、これにより試料と蛍光プローブ(FTC−ABDOTA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と蛍光プローブ(FTC−ABDOTA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0114】
(2)前記(1)の計13種類の混合液のそれぞれをポリアクリルアミドゲル電気泳動法に適用して、泳動を行った。
なお、このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、一次元・スラブ型であり、濃縮ゲルの下に分離ゲルを配置した非連続系のものである。
この濃縮ゲルとしては前記3の(1)の濃縮ゲルを用い、また、分離ゲルとしては前記3の(2)の分離ゲルを用い、そして、泳動液としては前記3の(3)の泳動液を用いた。
なお、この濃縮ゲル及び分離ゲルを合わせた大きさは、高さ20cm、幅20cmであった。
【0115】
具体的には、まず前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽にセットした。
次に、計13種類の前記(1)の混合液のそれぞれの3μLを、前記の濃縮ゲルに添加し、接触させた。
そして、電流20mA(一定)、電圧680−1150Vで、180分間通電した。
この通電により、前記の蛍光性金属錯体は濃縮ゲル中で濃縮され、その後分離ゲルに移動し、分離ゲル中を泳動した。
【0116】
(3)前記(2)の通電を終了した後、前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽から取り外した。
【0117】
その後、この濃縮ゲル及び分離ゲルを、紫外線照射装置の上に置き、波長254nmの励起光を照射した。
これにより放出された蛍光による濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラで撮影した。
この濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、図3に示した。
なお、この図3の泳動パターン(バンド)において、「Blank」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。
また、「Ca」は前記のカルシウム含有試料のバンドを示し、同様に、「Mg」は前記のマグネシウム含有試料の、「Al」は前記のアルミニウム含有試料の、「Fe」は前記の鉄含有試料の、「Cu」は前記の銅含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「CO」は前記のコバルト含有試料の、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Cd」は前記のカドミウム含有試料の、「Hg」は前記の水銀含有試料の、そして「Pb」は前記の鉛含有試料のバンドを示す。
【0118】
5.測定結果
図3の濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)から、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる金属に応じたバンドが得られることが分かる。
このことより、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
更に、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる複数の金属を同時に測定することができることも確認できた。
【実施例4】
【0119】
〔蛍光プローブ(FTC−ABEDTA)を用いてのゲル電気泳動法による試料中の金属の測定〕
前記参考例4で調製した蛍光プローブ(FTC−ABEDTA)を用いて、ゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った。
【0120】
1.試料
下記の2種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)銀含有試料
1mMの銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0121】
2.蛍光プローブ含有溶液
参考例4にて調製した1−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸〔FTC−ABEDTA〕を、蛍光プローブとして用いた。
【0122】
1mMのFTC−ABEDTAを含む水溶液を調製し、蛍光プローブ含有溶液とした。
【0123】
3.ゲル電気泳動法用のゲル及び泳動液
(1)濃縮ゲル
ゲル濃度が16.5%T(1.46%C)であり、0.0938Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.8)を含むポリアクリルアミドゲルを調製し、濃縮ゲルとした。
【0124】
(2)分離ゲル
ゲル濃度が30%T(0.8%C)であり、0.166Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH9.3)、0.0853Mグリシンを含むポリアクリルアミドゲルを調製し、分離ゲルとした。
【0125】
(3)泳動液
48mMグリシンを含む6.25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.3)を調製し、これを泳動液とした。
【0126】
4.試料中の金属の測定
(1)前記1の2種類の試料各々と、前記2の蛍光プローブ含有溶液と、50wt%グリセロール水溶液と、75mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液(pH8.8)と、純水とを、それぞれ1:1:0.5:1:6.5で混合し、これにより試料と蛍光プローブ(FTC−ABEDTA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の試料中の金属と蛍光プローブ(FTC−ABEDTA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0127】
(2)前記(1)の計2種類の混合液のそれぞれをポリアクリルアミドゲル電気泳動法に適用して、泳動を行った。
なお、このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、一次元・スラブ型であり、濃縮ゲルの下に分離ゲルを配置した非連続系のものである。
この濃縮ゲルとしては前記3の(1)の濃縮ゲルを用い、また、分離ゲルとしては前記3の(2)の分離ゲルを用い、そして、泳動液としては前記3の(3)の泳動液を用いた。
なお、この濃縮ゲル及び分離ゲルを合わせた大きさは、高さ7cm、幅9cmであった。
【0128】
具体的には、まず前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽にセットした。
次に、計2種類の前記(1)の混合液のそれぞれの3μLを、前記の濃縮ゲルに添加し、接触させた。
【0129】
そして、電流50mA(一定)、電圧232Vで、180分間通電した。
この通電により、前記の蛍光性金属錯体は濃縮ゲル中で濃縮され、その後分離ゲルに移動し、分離ゲル中を泳動した。
【0130】
(3)前記(2)の通電を終了した後、前記の濃縮ゲル及び分離ゲルを泳動槽から取り外した。
【0131】
その後、この濃縮ゲル及び分離ゲルを、紫外線照射装置の上に置き、波長470nmの励起光を照射した。
これにより放出された蛍光による濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、デジタルカメラで撮影した。
この濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を、図4に示した。
なお、この図4の泳動パターン(バンド)において、「L」は前記の陰性対照試料のバンドを示す。また、「Ag」は前記の銀含有試料のバンドを示す。
【0132】
5.測定結果
図4の濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)から、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に含まれる金属に応じたバンドが得られることが分かる。
このことより、本発明の試料中の金属の測定方法においては、試料中に微量に含まれる金属を、簡便、正確かつ高感度に測定できることが確かめられた。
【参考例5】
【0133】
〔蛍光プローブ(FTC−ABDTPA又はFTC−ABDOTA)を用いてのキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法による試料中の金属イオンの測定〕
参考として、蛍光プローブ(FTC−ABDTPA又はFTC−ABDOTA)を用いて、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属の測定を行った。
【0134】
1.試料
下記の13種類の試料をそれぞれ調製した。
(1)マグネシウム含有試料
1mMのマグネシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(2)アルミニウム含有試料
1mMのアルミニウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(3)カルシウム含有試料
1mMのカルシウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(4)マンガン含有試料
1mMのマンガンイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(5)鉄含有試料
1mMの鉄イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(6)コバルト含有試料
1mMのコバルトイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(7)ニッケル含有試料
1mMのニッケルイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(8)銅含有試料
1mMの銅イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(9)亜鉛含有試料
1mMの亜鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(10)カドミウム含有試料
1mMのカドミウムイオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(11)水銀含有試料
1mMの水銀イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(12)鉛含有試料
1mMの鉛イオンを含む、10mM塩酸溶液を調製した。
(13)陰性対照試料
超純水を陰性対照試料とした。
【0135】
2.蛍光プローブ含有溶液
(1)FTC−ABDTPA含有溶液
参考例1にて調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−ジエチレントリアミン五酢酸〔FTC−ABDTPA〕を、蛍光プローブとして用いた。
【0136】
1mMのFTC−ABDTPAを含む水溶液を調製し、FTC−ABDTPA含有溶液とした。
【0137】
(2)FTC−ABDOTA含有溶液
参考例3にて調製した2−(4−フルオレセイン−チオカルバミル−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸〔FTC−ABDOTA〕を、蛍光プローブとして用いた。
【0138】
1mMのFTC−ABDOTAを含む水溶液を調製し、FTC−ABDOTA含有溶液とした。
【0139】
3.キャピラリー電気泳動法用の泳動液
0.05wt%のポリブレン、及び1mMの1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)を含む50mMリン酸−ホウ酸緩衝液(pH10.09)を調製し、これを泳動液とした。
【0140】
4.試料中の金属の測定
(1)前記1の13種類の試料各々と、前記2の(1)のFTC−ABDTPA含有溶液と、100mMホウ酸緩衝液(pH10.0)と、純水とを、それぞれ0.001:0.05:2:8で混合し、これにより試料と蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)とを接触させ、室温にて20分間放置し、この混合液中において前記1の各試料中の金属と蛍光プローブ(FTC−ABDTPA)との蛍光性金属錯体を形成させた。
【0141】
(2)前記(1)の計13種類の混合液のそれぞれを、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)に適用して、泳動及び測定を行った。
なお、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)における高電圧電源は松定プレシジョンのHCZE−30Pを、レーザー装置はSpectra−Physics社製ArレーザーシステムModel263Dを、レーザー誘起蛍光検出器はPicometrics社製ZETALIFを使用した。
Arレーザー(励起波長488nm)の出力は8.0mWとした。
また、キャピラリー電気泳動法の印加電圧は20kV一定とした。
キャピラリーチューブは、ジーエルサイエンス社製の内径0.05mm、全長60cm、及び有効長47cmの溶融シリカキャピラリーを使用した。
【0142】
(3)このFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した結果を、図に示した。
なお、この図において、「L2」は前記の陰性対照試料のピークを示す。
また、「Cd」は前記のカドミウム含有試料のピークを示し、同様に、「Mn」は前記のマンガン含有試料の、「Pb」は前記の鉛含有試料の、「Zn」は前記の亜鉛含有試料の、「Ni」は前記のニッケル含有試料の、「Co」は前記のコバルト含有試料のピークを示す。
そして、この図において、横軸は移動時間(分)を表し、縦軸は測定により得られた蛍光強度を表す。
【0143】
(4)また、蛍光プローブ含有溶液として前記2の(1)のFTC−ABDTPA含有溶液に代えて、前記2の(2)のFTC−ABDOTA含有溶液を用いる他は、前記(1)及び(2)の通りに泳動及び測定を行った。
このFTC−ABDOTAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した結果を、図6に示した。
なお、この図において、「L3」は前記の陰性対照試料のピークを示す。
また、「Ca2+」は前記のカルシウム含有試料のピークを示し、同様に、「Mn2+」は前記のマンガン含有試料の、「Mg2+」は前記のマグネシウム含有試料の、「Zn2+」は前記の亜鉛含有試料の、「Co2+」は前記のコバルト含有試料の、「Cu2+」は前記の銅含有試料の、「Ni2+」は前記のニッケル含有試料のピークを示す。
そして、「■」は未確定なピークを示す。
なお、この図において、横軸は移動時間(分)を表し、縦軸は測定により得られた蛍光強度を表す。
【0144】
5.測定結果
図5より、蛍光プローブとしてFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した場合には、試料中のカドミウム、鉛、マンガン、亜鉛、ニッケル及びコバルトの各イオン(計6種類)を測定することができたことが分かる。
【0145】
また、図6より、蛍光プローブとしてFTC−ABDOTAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属を測定した場合には、試料中のカルシウム、マグネシウム、銅、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルの各イオン(計7種類)を測定することができたことが分かる。
【0146】
なお、この参考例5における測定結果と、前記の実施例1、実施例2及び実施例3における測定結果とを比較すると、例え同じ蛍光プローブを用いたとしても、キャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)に適用した場合には、試料中の12種類の金属の内6種類〜7種類の金属のピークしか得られていない。
これに対し、同じ蛍光プロープをゲル電気泳動法に適用した場合には、より多くの金属のシグナル(バンド)が得られている。
すなわち、蛍光プローブをゲル電気泳動法に適用した場合には、ゲル電気泳動法以外の方法に適用した場合よりも、より多数の金属を同時に測定することができ、ゲル電気泳動法に適用することの優位性を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】蛍光プローブとしてFTC−ABDTPAを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った際の泳動を行った濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を示した図である。
【図2】蛍光プローブとしてFTC−CHX−A”−DTPAを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った際の泳動を行った濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を示した図である。
【図3】蛍光プローブとしてFTC−ABDOTAを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った際の泳動を行った濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を示した図である。
【図4】蛍光プローブとしてFTC−ABEDTAを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法により試料中の金属の測定を行った際の泳動を行った濃縮ゲル及び分離ゲルの泳動パターン(バンド)を示した図である。
【図5】参考のため蛍光プローブとしてFTC−ABDTPAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属の測定を行った際の結果を示した図である。
【図6】
参考のため蛍光プローブとしてFTC−ABDOTAを用いてキャピラリー電気泳動−レーザー誘起蛍光検出法(CE−LIF)により試料中の金属の測定を行った際の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(c)の工程よりなる、試料中の金属の測定方法。
(a)試料と、配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブとを混合し、接触させ、この混合液中において前記試料に含まれる金属と前記蛍光プローブとの蛍光性金属錯体を形成させる工程。
(b)前記混合液をゲル電気泳動法に適用する工程。
(c)前記ゲル電気泳動法により泳動された前記蛍光性金属錯体を測定する工程。
【請求項2】
配位部位及び蛍光団よりなる蛍光プローブが、「配位部位−スペーサー−蛍光団」の構造よりなるものである、請求項1記載の試料中の金属の測定方法。
【請求項3】
配位部位が6座以上の配位部位である、請求項1又は請求項2記載の試料中の金属の測定方法。
【請求項4】
配位部位が8座以上の配位部位である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の試料中の金属の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−168450(P2009−168450A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−342025(P2007−342025)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(000131474)株式会社シノテスト (28)
【Fターム(参考)】