説明

試薬容器

【課題】試薬容器において、強度をプローブに要求することなく、またプローブ等の汚染を低減し、常に正確な液面検出ができ、開栓が容易なものとする。
【解決手段】試薬容器(50)は、試薬を収容し、プローブが挿入されて試薬が吸引される開口した複数の収容部(52a、52b、52c、52d)を有する。すべての収容部(52a、52b、52c、52d)の開口部(66)は、少なくとも1枚のシート状のシール材(62)によりシールされる。試薬容器(50)は、容器本体(52)と、下面にシール材(62)を各開口部(66)において穿孔する複数の中空の穿孔部(64)が下方に向けて突設され、上面に穿孔部(64)に連通するプローブの挿抜を可能とする開口(86)が形成された蓋体(54)とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液等のサンプルを分析する自動分析装置に使用される試薬容器に関し、特に試薬容器から少量の試薬を吸引してマイクロチップ等に分注する分注プローブ(以下 単にプローブという)を使用する自動分析装置に使用する試薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などのサンプルの分析を行う自動分析装置には、マイクロ流路が形成されたマイクロチップが使用され始めている。このマイクロチップには、バッファ(緩衝液)を含む試薬がプローブによりマイクロ流路に注入され、次に、高電圧がマイクロ流路に印加される。この高電圧の印加により流路内のサンプル中の各組成分が泳動され、その泳動度の差によってサンプル中の測定対象物質が分離されるようになっている。分離された測定対象物質は、試薬によって識別され、分析装置の検出部で検出される。これらの一連の過程は分析装置中で自動的になされる。
【0003】
一方、サンプルの1つの分析項目、例えば、特定のたんぱく質の分析に対し、複数の試薬を必要とする場合が多い。これらの試薬は、試薬容器内に予め収容されており、また、複数の試薬容器が分析装置内に配置される。このようなことから、分析の効率化のために、試薬容器を小型化して分析装置内に多数の試薬容器を配置できるようにすることが望まれている。一般的な試薬容器は、プローブが挿入される開口を有するが、通常、開口は、ねじ式キャップにより蓋をされて内部が密閉されている。この種の試薬容器を使用するにあたっては、キャップを手操作により取外した後、試薬容器を分析装置に装填することが行われる。
【0004】
また、このねじ式キャップを手で開けずに、試薬を吸引するためのピペットによりねじ式キャップを穿孔する方法も知られている(特許文献1)。この特許文献1に記載された従来技術においては、キャップの円錐形凹所の先端(下端)を、降下したピペットの先端で押し開いて試薬容器内にピペットが挿入される。ピペットを試薬容器から抜去するとき、ピペットの先端部に付着した試薬は、キャップの先端に穿孔された孔の縁部で拭われるようになっている。
【0005】
また、従来、他の試薬容器として、試薬容器の開口部にヒンジ機構を有する蓋が設けられたものが知られている(特許文献2)。この試薬容器は、分析装置に装填された後、このヒンジ機構と分析装置側の機構とが協働することにより蓋が自動的に開閉されるようになっている。
【特許文献1】特開平5−99931号公報
【特許文献2】特開2004−156971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のねじ式キャップを有する一般的な試薬容器では、試薬容器の開口部のサイズより大径のキャップが存在するため、1個の試薬容器に複数の試薬収容部を密集させることが困難であった。また、収容する試薬の量が微量の場合であっても、キャップを小型化するには限度があるため、試薬容器を小型化することは困難であった。また、キャップを一つ一つ個別に開栓する必要があり、キャップが多い場合は開栓するための労力、時間が必要であった。また、複数種類の試薬を収容する試薬容器において、試薬の種類により、必要量が少ない場合に試薬の収容量を少なくしたり、必要量が多い場合に収容量を多くしたりして、バランスよく収容することが困難であった。
【0007】
特許文献1に開示された試薬容器では、合成樹脂製のキャップを穿孔可能な強度がピペットに要求される。しかし、微量の液体試薬を精度よく取り扱うピペットは、吸引する量以外の液体試薬の付着を低減するために細さが要求されるので、ピペットにキャップを穿孔するための強度を求めることは困難である。また、試薬を吸引後、ピペットをキャップから抜去する際に、穿孔した孔でピペットが拭われるため、キャップの孔周辺に液体が付着してしまう。キャップに液体が付着していると、試薬の液面を静電容量方式で検出する場合、誤検出するおそれがある。すなわち、ピペットが孔周辺の液体に接触した時点で、ピペットが試薬の液面に達したものと誤判定されてしまうことがあり、正確な液面検出を再現性良く行うことが困難である。またピペットは、液体が付着したキャップの穿孔部を通過する際に、ピペットの先端部以外に試薬が付着して、実際に試薬液面に接触する先端部分より上方まで汚染されてしまう。通常、ピペット先端部は、吸引の都度、水等で洗浄され、試薬の残存量が所定の量以下に抑制されるが、液体に接触するピペットの部分が多いと、より多くの領域を洗浄する必要が生じ、メンテナンスの工数がかかるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示された試薬容器では、試薬容器に嵩張るヒンジ機構を設ける必要があることから、1個の容器に複数の試薬収容部を密集させることは困難となる。また、分析装置にはヒンジを開閉する機構を設けなければならず、分析装置は、構造が複雑且つ高価になるという問題がある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、1個の試薬容器内に複数の試薬を収容し且つ小型化できる試薬容器を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、試薬容器の開栓すなわち穿孔を容易に行うことのできる試薬容器を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、強度をプローブに要求することのない試薬容器を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、試料によるプローブ等の汚染を低減することのできる試薬容器を提供することにある。
【0013】
また、本発明のさらに他の目的は、一般的な静電容量方式により、常に正確な液面検出ができる試薬容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の試薬容器は、試薬を収容し、自動分析装置のプローブが挿入されて試薬が吸引される開口した複数の収容部を有し、すべての収容部の開口部が少なくとも1枚のシート状のシール材によりシールされた容器本体と、下面にシール材を各開口部において穿孔する複数の中空の穿孔部が下方に向けて突設され、上面に穿孔部に連通するプローブの挿抜を可能とする開口が形成された蓋体とからなり、容器本体の上から蓋体を押し付けることによりシール材が穿孔されてプローブが穿孔部の中空部から収容部に挿入可能とされるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0015】
また、試薬が複数種類あり、それぞれの収容部が、対応する試薬の必要量に応じた収容量を有するよう構成することができる。
【0016】
また、複数の収容部のうち少なくとも一つの開口部が、他の開口部と異なる大きさを有しており、すべての穿孔部が、等しい外形寸法を有しているように構成してもよい。
【0017】
また、シール材が、穿孔後蓋体の穿孔部と密着する材質からなることが好ましい。
【0018】
また、シール材が、穿孔部による穿孔の際、シール材の分離した断片を生じない材質からなることが好ましい。
【0019】
また、複数の穿孔部のうち少なくとも一つは、蓋体の下面から下方に向けて突出する長さが他の穿孔部と異なっており、これにより穿孔部がシール材を段階的に穿孔するよう構成されていることが好ましい。
【0020】
また、試薬容器の外部に取っ手が設けられていてもよい。
【0021】
また、蓋体が、容器本体と係合して、容器本体の上方であって穿孔部とシール材とが干渉しない位置に蓋体を保持する係合部を有してもよい。
【0022】
また、容器本体が外周壁を有するブロック状であり、蓋体が、容器本体の上から押し付けられた際に前記外周壁により内壁面が案内されるカバー壁と、穿孔部を下面に有する上壁とから構成されていてもよい。
【0023】
また、蓋体は、自動分析装置側の部材と係合して位置決めされる位置決め部を有することができる。
【0024】
容器本体の開口部に対し、穿孔部の少なくとも一つは、開口部の内壁面から穿孔部の外周面までの最短距離が、内壁面から穿孔部の中心までの最短距離の2分の1以下となる位置に配置されていることが好ましい。
【0025】
開口部のうち少なくとも1つが穿孔部の外周面に沿う相似形部を有しており、相似形部の、外周面に沿う長さが外周面の長さの25%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の試薬容器は、すべての収容部の開口部が少なくとも1枚のシート状のシール材によりシールされた容器本体と、複数の中空の穿孔部が下方に向けて突設され、上面に穿孔部に連通するプローブの挿抜を可能とする開口が形成された蓋体とからなり、容器本体の上から蓋体を押し付けることによりシール材が穿孔されてプローブが穿孔部の中空部から収容部に挿入可能とされるように構成されているので、次の効果を奏する。すなわち容器本体は、通常、開口部がシート状のシール材によりシールされているだけであり、嵩張らず、また、蓋体をその上に被せるだけなので複数の収容部を有していても、小型の試薬容器を得ることができる。また、蓋体を容器本体に押圧するだけで、容器本体の穿孔を一括して行うことができ、穿孔が極めて容易である。また、中空の穿孔部により、プローブの通路が確保されるので、プローブは強度を必要とせず必要な細さを確保することができ、且つ試薬に接触する先端部以外の部分を汚染されることが防止される。また、これにより静電容量方式であっても、常に正確な液面検出ができる。
【0027】
また、試薬が複数種類あり、それぞれの収容部が、対応する試薬の必要量に応じた収容量を有するよう構成されている場合は、試薬の種類による必要量に応じて複数種類の試薬をバランスよく収容する小型の試薬容器とすることができる。
【0028】
また、複数の収容部のうち少なくとも一つの開口部が、他の開口部と異なる大きさを有しており、すべての穿孔部が、等しい外形寸法を有しているように構成されている場合は、穿孔の際、各穿孔部に必要な力が略均一になり、安定した穿孔作業を行うことができる。
【0029】
また、シール材が、穿孔後、蓋体の穿孔部と密着する材質からなる場合は、試薬が外部環境と遮断されるので、試薬の漏出が防止されるとともに、試薬の変質や蒸発による濃度の変化が防止され、それにより測定結果に影響を及ぼすことが防止される。
【0030】
また、シール材が、穿孔部による穿孔の際、シール材の分離した断片を生じない材質からなる場合は、断片が試薬収容部内に落下して、プローブの試薬吸引に悪影響を及ぼすことが阻止される。
【0031】
シール材は、穿孔時に穿孔部の外周の断面と同様な形状の孔が形成されることが好ましい。
【0032】
また、複数の穿孔部のうち少なくとも一つが、蓋体の下面から下方に向けて突出する長さが他の穿孔部と異なっており、これにより穿孔部がシール材を段階的に穿孔するよう構成されている場合は、穿孔に必要とする力を集中的に必要とせず、分散できるので、少ない力で容易に穿孔することができる。
【0033】
また、試薬容器の外部に取っ手が設けられている場合は、試薬容器の取り扱いが容易となる。
【0034】
また、蓋体が、容器本体と係合して、容器本体の上方であって穿孔部とシール材とが干渉しない位置に蓋体を保持する係合部を有している場合は、蓋体と容器本体を係合させた状態で効率的に取り扱い且つ運搬することができる。
【0035】
また、容器本体が外周壁を有するブロック状であり、蓋体が、容器本体の上から押し付けられた際に前記外周壁により内壁面が案内されるカバー壁と、穿孔部を下面に有する上壁とから構成されている場合は、前記外周壁により蓋体の内壁面が案内されるので、試薬容器の開栓すなわち穿孔を容易且つ安定して行うことのできるという効果を奏する。
【0036】
また、蓋体が、自動分析装置側の部材と係合して位置決めされる位置決め部を有している場合は、自動分析装置側のプローブと、プローブが挿入される蓋体の穿孔部の開口との位置合せが確実になされるので、プローブが蓋体に接触することによるプローブの破損や汚染が防止される。
【0037】
容器本体の開口部に対し、穿孔部の少なくとも一つは、開口部の内壁面から穿孔部の外周面までの最短距離が、内壁面から穿孔部の中心までの最短距離の2分の1以下となる位置に配置されている場合は、穿孔部によるシール材の穿孔時に、シール材の撓みを少なくして穿孔を容易にし、且つ穿孔の再現性を確実に向上させることができる。
【0038】
開口部のうち少なくとも1つが穿孔部の外周面に沿う相似形部を有しており、相似形部の外周面に沿う長さが外周面の長さの25%以上である場合は、穿孔部によるシール材の穿孔時に、開口部のうち少なくとも1つが穿孔部の外周面に沿う相似形部を有するであることと相俟って、シール材の撓みがさらに少なくなって穿孔を一層容易にし、且つ穿孔の再現性を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の試薬容器の一例について、添付図を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の試薬容器を概念的に説明する断面図であり、図1(a)は、試薬容器1を構成する容器本体2と、その上方に位置する開栓部材としての蓋体4とを示す。図1(b)は、蓋体4が容器本体2に押し付けられてシール材が穿孔された状態を示し、図1(c)は、分注プローブ(以下、単にプローブという)6が蓋体4を経て試薬容器1内に挿入された状態を示す。
【0040】
図1に示すように、容器本体2は、上方に開口した複数の収容部2a、2bおよび2cを有する。この断面図では、3つの収容部2a、2b、2cを有するが、3つに限定されるものではない。これらの収容部2a、2b、2cのそれぞれには、互いに異なる種類の液体の試薬8a、8b、8cが収容されている。また、収容部2a、2b、2cは、通常は、それぞれの試薬の必要量に応じた容積とされるが、互いに同じ容積であってもよい。なお、試薬8a、8b、8cを総括して試薬8という。
【0041】
収容部2a、2b、2cのそれぞれの開口部10a、10b、10cは、1枚のシート状のシール材12によりシール(封止)されている。図1に示すシール材12は1枚であるが、各開口部10a、10b、10cは、個別のシール材(図示せず)によりシールされてもよい。なお、開口部10a、10b、10cは、総括して開口部10という。容器本体2は、シール材12によりシールされているため、輸送中に試薬8が、容器本体2から漏出することはなく取り扱いが容易である。また、シール材の材質は、例えばアルミ箔の如き薄膜であってもよいし、アルミ箔をその両面または片面から、例えばポリプロピレン等の樹脂でラミネートした層構造のものでもよい。
【0042】
蓋体4は、容器本体2の上面を覆うように延在する本体4aと、本体4aの下面5から開口部10に向けて突設されている筒状の穿孔部14a、14b、14cとを有し、例えば合成樹脂により一体に成形される。図1の概念図において、蓋体4の本体4aの平面方向の寸法は、容器本体2の平面方向の寸法と略同じ寸法である。なお、穿孔部14a、14b、14cを総括して穿孔部14という。穿孔部14a、14b、14cは、開口部10a、10b、10cにそれぞれ対応する位置に本体4aの下面5に対し垂直に突設されており、それらの外径は同じである。
【0043】
各穿孔部14a、14b、14cは、円筒形でもよいし、角形やその他の断面形状でもよい。穿孔部14の下端部は剪断角を有する、すなわち下端部は斜めに切欠かれ、先端20が鋭利な形状を呈している。また、各穿孔部14a、14b、14cは、本体4aの上面の開口16に連通する中空の通路(中空部)18a、18b、18cをそれぞれ有する。これらの各通路18a、18b、18cの内径は、プローブ6が接触せずに通過するのに十分な寸法が確保されている。通路18a、18b、18cを総括して、通路18という。通路18は、プローブ6を挿入し得れば、その断面形状は丸形や適当な多角形等いずれでもよい。なお、穿孔部14の先端形状は、直線的に斜めに切欠かれた形状に限定されるものではなく、V字状、逆V字状、あるいはそれらを組み合わせた形状に切欠かれた任意の形状をとり得るが、いずれの形状においても先端がシール材12を穿孔するのに十分鋭利であることが好ましい。
【0044】
図1の概念図においては、穿孔部14aと穿孔部14cは、略同じ長さを有しており、穿孔部14bはそれらより短い寸法となっている。これは蓋体4をシール材12へ押し付けて、穿孔部14によりシール材12を押し破る際に、段階的にシール材12と接触して穿孔することにより、穿孔に必要とする力が集中しないようにするためである。従って、この目的のためには、各穿孔部14a、14b、14cの全てが、互いに異なる長さを有してもよい。また、より多くの穿孔部14を有する場合は、穿孔部14をグループごとに突出長さを変えてもよい。例えば、穿孔部14が7つあれば、3つと4つのグループに分けてもよい。また、穿孔の際、僅かな力で済む場合は、全ての穿孔部14a、14b、14cが同じ長さであることを排除するものではない。
【0045】
次に、図1(b)に示すように、蓋体4が容器本体2に向けて押し下げられると、穿孔部14の先端20により、シール材12が押し破られて穿孔される。すなわち穿孔部14は、シール材12を貫通する。この際、シール材12が前述の如き材質であるので、穿孔時にシール材12が、断片に分離して試薬8内に落下することが阻止される。また、穿孔されたシール材12の縁部は、穿孔部14の外周面に密着する。前述の如く穿孔部14a、14cと穿孔部14bは、突出長さが異なるため、最初に穿孔部14a、14cがシール材12を押し開き、次に穿孔部14bがシール材12を押し開く。この段階的な穿孔により、蓋体4がシール材12を押し開くために必要とする力が少なくて済む。この穿孔により収容部2a、2b、2cは、通路18a、18b、18cにより外部とそれぞれ連通する。このように、容器本体2の複数の収容部2a、2b、2cは、蓋体4を押し下げるという一度の操作で、一括して穿孔すなわち開栓される。
【0046】
次に、試薬容器1から試薬8の吸引が行われる。図1(c)に示すように、分析装置側のプローブ6が、蓋体4の開口16および例えば、通路18bを経て収容部2bに降下する。プローブ6の先端部6aが試薬8bに達したことが、例えば分析装置側の静電容量式の液面検知器(図示せず)により検知されると、プローブ6は試薬8bを自動的に吸引する。プローブ6が収容部2b内に挿入されるときは、通路18bが確保されているので、プローブ6が穿孔部14bに接触する虞は少ない。他の収容部2a、2cについても同様のことが言える。
【0047】
シール材12は、穿孔部14(14a、14b、14c)の圧入により押し破られても、前述の如く、断片状になって収容部2a、2b、2c内に落下したりすることのないラミネートされたアルミ箔の如き材質が好ましい。また、シール材12は、穿孔部14(14a、14b、14c)により穿孔された後、それらの押し破られた縁部が、穿孔部14(14a、14b、14c)の通路18を塞ぐことなく穿孔部14(14a、14b、14c)の外周に密接することが好ましい。これにより、プローブ6がシール材12に接触して試薬8a、8b、8cが、シール材12に付着することが防止される。
【0048】
穿孔部14によって押し破られたシール材12が、部分的であっても通路18を塞ぐような位置にあると、通路18を通るプローブ6の挿抜によりシール材12に試薬8が付着するおそれがある。試薬8が付着した場合、この付着した試薬8によりプローブ6の先端部以外の部分が汚染されるおそれがある。また、試薬8の液面9の誤検出を招いたりするおそれがある。すなわち静電容量式の液面検出方式の場合、プローブ6がシール材12の試薬8に接触した場合、プローブ6の先端部6aが試薬8の液面9に達したものと判定されるおそれがある。
【0049】
このような観点から、穿孔部14の長さは、抜き径すなわち穿孔された孔の直径に対しある程度の長さが必要となる。具体的には、穿孔部14の長さすなわち蓋体4の本体4aの下面5から、先端20より突出長さが短い方の端21に至る長さが、抜き径の直径の80%以上であることが好ましい。さらに、90%以上であることが一層好ましく、100%以上であることが最も好ましい。しかし、その場合であっても先端20の長さは、穿孔後に試薬8の液面9に達しない寸法でなければならない。
【0050】
次に、このような概念に基づく試薬容器の第1の実施形態について、図2および図3を参照して説明する。なお、説明にあたり、図1の概念図の構成要素と同じ構成要素については、同じ参照符号を用いて説明する。図2は、第1の実施形態の試薬容器50を、容器本体52と蓋体54を分離して示す斜視図であり、図3は、図2に示す試薬容器50を下方から見た斜視図である。図2および図3に示すように、容器本体52は、例えば、合成樹脂により一体に成形された箱(ブロック)状の外形形状を呈し、内部空間55(図3)を有する枠状の外周壁56と頂壁58(図2)を有する。頂壁58には、外周壁56内に位置する、試薬8を収容するための複数の収容部52a、52b、52c、52dが、前述の内部空間55内に垂下するように頂壁58と一体に形成されている。収容部52aは、外周壁56の一部を含むように構成された直方体であり、収容部52cは円筒状であり、収容部52dは、断面が概ねひょうたん型あるいは交わった2つの円形の外形形状を有する筒状である。また、収容部52c、52dと収容部52aとの間に位置する収容部52bは、収容部52aより小型の概ね直方体となっている。
【0051】
これらの収容部52a、52b、52c、52dは、いずれも頂壁58にそれぞれ開口(開口部)66a、66b、66c、66d(図2)を有する。なお、これらの開口66a、66b、66c、66dを総括して開口66という。開口66aは、その4つの隅部の一つが湾曲した湾曲開口74(図2)となっている。また、開口66bにも、その一端側が湾曲開口76(図2)となっている。これらの湾曲開口74、76は、穿孔部64の円筒状の外周と略同心状の曲面を有する。
【0052】
開口66a、66b、66c、66dの周囲には、開口66a、66b、66c、66dをそれぞれ囲む環状のリブ72a、72b、72c、72d(図2)が頂壁58に突設されている。なお、リブ72a、72b、72c、72dを総括してリブ72という。リブ72は水滴の進入を阻止することができる。すなわち、試薬容器50は分析装置の試薬庫の如き、低温の環境下にあるとき、頂壁58に水滴が付着することがある。このような場合でも、リブ72により、収容部52a、52b、52c、52d内に水滴が進入することが阻止される。これらのリブ72a、72b、72c、72dには、前述のシール材12と同様の1枚のシール材62(図2)が、例えば超音波溶着により接着され、内部の試薬の漏出を防止している。1枚のシール材62の代わりに、各収容部52a、52b、52c、52dのそれぞれの開口66a、66b、66c、66dを個別のシール材(図示せず)でシールしてもよい。
【0053】
次に、蓋体54について説明する。蓋体54は、容器本体52の頂壁58を覆う寸法の上壁80(図2)と、容器本体52の外周壁56に被嵌される外形寸法を有するカバー壁82とからなる略直方体形状である。上壁80とカバー壁82は、例えば合成樹脂により一体に形成されており、カバー壁82により囲まれる空間は下方に開放している。上壁80には、容器本体52の収容部52a、52b、52c、52dの開口66a、66b、66c、66dに対応する位置に、中空の通路68(図3)を有する穿孔部64(64a、64b、64c、64d)が形成されている。これら各穿孔部64a、64b、64c、64dは、平面視において同じ外形寸法を有する。各穿孔部64a、64b、64c、64dは、図2に示すように、上壁80に突設された、開口86(図2)を囲む環状のリブ84を有する。これらのリブ84も、前述のリブ72と同様に、水滴が開口86内に進入することが阻止される。
【0054】
また、穿孔部64(64a、64b、64c、64d)は 図3に示すように、上壁80の下面85から下方に、カバー壁82の内壁面83により形成される空間内に突出している。穿孔部64(64a、64b、64c、64d)の下端部は、切取られたように傾斜しており、先端88はシール材62への貫通を容易にするために鋭利に突出している。また、穿孔部64(64a、64b、64c、64d)の長さすなわち突出寸法は、例えば、互いに隣接する穿孔部64cと64dでは、その長さを変えている。蓋体54を使用する場合は、容器本体52に上方から被せて、そのまま下方に押圧して、穿孔部64(64a、64b、64c、64d)をシール材62に貫通させる。シール材62と穿孔部64(64a、64b、64c、64d)は密着するので、蓋体54は容器本体52に保持される。その後、試薬容器50は、分析装置に装着され、プローブ6(図1)が開口86から挿入される。
【0055】
試薬容器50のように、その外形形状が概ね直方体である場合は、分析装置に並列的に配置するのに適している。また、前述の穿孔部64の先端88が、カバー壁82側、すなわち蓋体54の長手方向と直交する方向の外側(互いに逆向き)を向いている場合は、シール材62への押圧時に、シール材62が蓋体54を支持する範囲が広くなるので、蓋体54を安定して容器本体52に押圧することができる。
【0056】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態の試薬容器について説明する、図4(a)は第2の実施形態の試薬容器300を水平な面で切断した断面図であり、図4(b)は、図4(a)においてIVで示す円内の要部拡大図である。図4(c)は、穿孔部が、図4(a)に示す穿孔部と45°回転した状態に形成されている場合の試薬容器の断面図である。図4(a)に示すように試薬容器300は、概ねブロック状の容器本体302と、容器本体302に被嵌された蓋体304とからなる。容器本体302は、収容部302a、302b、302c、302d、302e、302f、302gを有する。これらの収容部302a、302b、302c、302d、302e、302f、302gは、それぞれ断面形状が異なる。なお、図4中、各収容部302a、302b、302c、302d、302e、302f、302g内に配置されている円形あるいは矩形形状の部分は、蓋体304の穿孔部314(314a、314b)である。穿孔部314aは円筒状であり、穿孔部314bは角筒状である。穿孔部314a、314bは、それぞれ穿孔部314a、314bの外周面315a、315bを有する。
【0057】
各収容部302a、302b、302c内に、それぞれ位置する穿孔部314a、314b、314aは、対応する収容部302a、302b、302cの隅部に位置している。この理由は、一般的に、内壁面と穿孔部の外周面が互いに接近していた方が、シール材を容易に剪断できるためである。このような場合の穿孔部は、開口部の内壁面から穿孔部の外周面までの最短距離が、当該内壁面から穿孔部の中心までの最短距離の2分の1以下、好ましくは3分の1以下となるような位置に配置されているのが好ましい。他方、仮に、穿孔部が収容部の中央に位置していた場合、穿孔位置が収容部の内壁面から遠くなり、図示しないシール材が穿孔時に撓み易くなり、その結果穿孔しにくくなる。さらに、収容部302aについてみると、収容部302aの断面形状は、矩形の角部を欠いた形状を呈しており、2つの凹部303a、303bを有する。穿孔部314bは、凹部303a内に、穿孔部314bの外周面315bが収容部302aの開口の内壁面305と略平行になるように位置している。換言すると、内壁面305の一部が穿孔部314bの外周面315bと相似形となっている。これにより内壁面305と穿孔部314bの外周面315bが互いにより接近することとなり、シール材12をより容易に剪断することが可能となる。なお、図4(c)に示すように、穿孔部314b’の中心をcとすると、内壁面305と穿孔部314b’の外周面315b’の距離a−bが接近していれば、必ずしも相似形となる配置でなくてもよいが、相似形となっている方がより好ましい。さらに、内壁面と穿孔部の外周面が接近していれば、例えば、丸形状の穿孔部と四角形状の内壁面、四角形状の穿孔部と丸形状の内壁面等の組合せでもよい。
【0058】
このことは、収容部302b内の穿孔部314aについても同様のことがいえる。すなわち、また、円筒形の穿孔部314aは、収容部302b内の凹部303cの湾曲した内壁面306内に配置されている。すなわち、湾曲した内壁面306の一部は、円筒状の穿孔部314aの外周面315aと相似形となっている。内壁面305、306と、穿孔部314a、314bの相似関係について、図4(b)を参照してさらに詳細に説明する。
【0059】
穿孔部314bの外周面315bと相似形の、収容部302aの凹部303aにおける内壁面305の部分を相似形部という。この相似形部は、内壁面305のうち308で示す領域にあたる。図4(b)の例では、相似形部308は、穿孔部314bの外周面315bの全体の約3/4すなわち75%に対応している。この相似形部308の長さは、必ずしも75%必要なものではなく、外周面315bの一平面に沿う内壁面305の領域があればよい。すなわちこの場合の相似形部308の長さは、外周面315bの1/4すなわち25%となる。従って、相似形部308は、外周面315bの長さ(周囲)の25%以上の長さがあればよい。この関係は、円筒形の穿孔部314aと内壁面306との関係においても同様である。すなわち内壁面306の相似形部(図示せず)は、円筒形の穿孔部314aの外周面315aの少なくとも1/4の長さに対応する長さがあればよい。
【0060】
また、前述した理由により、図4(b)における外周面315bと内壁面305との間隙は、狭い方が穿孔部314bによる剪断が確実である。従って、穿孔部の中心cから外周面315bまでの寸法をbとし、内壁面305から穿孔部の中心cまでの最短距離をaとすると、開口部の内壁面305から穿孔部314bの外周面315bまでの最短距離a−bが、当該内壁面305から穿孔部314bの中心cまでの最短距離aの2分の1以下、好ましくは3分の1以下となる必要がある。
【0061】
次に、この第2の実施形態の特徴について、さらに図5を併せて参照して説明する。図5は試薬容器300を分析装置(図示せず)の試薬容器配置部350に配置した状態を示す斜視図である。試薬容器300の容器本体302の外周壁356には、上向きの2対の係合凹部357が形成されている。蓋体304の対応する位置には、係合凹部357と互いに係合して保持される係合突部(係合部)360が下向きに形成されている。これにより、蓋体304を容器本体302に押圧すると、互いに係合して一体化した試薬容器300となる。また蓋体304のカバー壁382のうち、長手方向に離隔した互いに逆向きの壁面には、水平方向にタブ(位置決め部)362、363(図4)が突設されている。タブ362の中央には孔362a(図4(a))が形成されている。
【0062】
他方、試薬容器配置部350は、図5に示すように梯子状であり、左右のレール365の間に設けられた仕切板367により試薬容器300を配置するための複数の区画370が列状に形成されている。一方のレール365の各区画370に対応する位置には、前述の試薬容器300の孔362aに対応する突起374が突設されており、また、他方のレール365の区画370に対応する位置には、互いに離隔した突条372が突設されている。これらの突起374および突条372を分析装置側の部材という。試薬容器300は、この試薬容器配置部350に配置されると、前述のタブ362の孔362aと突起374が係合するとともに、タブ363の両側に突条372が位置してその移動が阻止され、試薬容器300が確実に位置決めされる。
【0063】
なお、図4に示した第2の実施形態の試薬容器300の容器本体302は、図4(a)からわかるように、長手方向に沿う外周壁356の一方は、垂直方向に延びる複数の凹凸が形成されているが、他方の外周壁356は比較的平坦である。これは容器本体302の収容部302a、302b、302c、302d、302e、302f、302gの肉厚を均一にするためである。肉厚を均一にすることにより、ひけが生じて外観品質が低下したり、収容部302a、302b、302c、302d、302e、302f、302gの容量が変化したりすることを防止することができる。さらに係合突部360と係合凹部357の係合や、容器本体302へのラベルの貼付性に悪影響を与えることもない。また、蓋体304のカバー壁382にも前述の凹凸に対応する凹凸が形成されている。蓋体304を容器本体302に被せるときに、容器本体302の凹凸が、蓋体304の内壁面383のガイドとなる。また凹凸は片方の側壁にのみ形成されているので、蓋体304を容器本体302に誤って逆に被せたりすることが防止できるという効果もある。
【0064】
次に、図6を参照して、試薬容器50の変形例を示す。図6(a)は第1の変形例の斜視図であり、図6(b)は第2の変形例の斜視図である。図6(a)に示す試薬容器50’は、容器本体52’については、第1の実施形態と略同じであるが、蓋体54’には取っ手60を設けた点が相違する。取っ手60は、蓋体54’の上壁80’の長手方向に沿って、上壁80’に対し垂直に板状に突設されている。取っ手60の長さは上壁80’の幅の略中心に沿い且つ長手方向の略全長に亘っている。また、取っ手60の突出高さは、指で摘める程度の高さを有している。
【0065】
蓋体54’の使用に際しては、第1の実施形態と同様に、容器本体52’に上方から被せて、押圧するだけでよい。これにより、試薬容器50’を分析装置等に装着するのに、取っ手60を摘んで持ち運べばよいので、操作が容易になる。また、この変形例のように、蓋体54’に取っ手60を設けた場合は、容器本体52が蓋体54’に確実に保持されるようにするために、カバー壁82’に矩形の係合口(係合部)70aと、容器本体52’に係合口70aと凹凸係合する係合突起70bが形成されている。係合口70aと係合突起70bは、カバー壁82’の互いに対向する位置に1対形成される。しかし、これらの係合口70aと係合突起70bは、それらの形状や、取付位置は、この第1の変形例に記載されたものに限定されるものではなく、変形や変更が可能である。また、取っ手60の形状、大きさ(長さ、高さ)取付位置も変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
次に、図6(b)に示す第2の変形例の試薬容器50″は、取っ手61を蓋体54″ではなく容器本体52″に設けた点が、第1の変形例と相違する。容器本体52″の頂壁58″には、頂壁58″の長手方向に沿って、取っ手61が頂壁58″に対し垂直に且つ一体に板状に突設されている。この取っ手61の長さ、すなわち頂壁58″の長手方向に沿う長さは、頂壁58″の長手方向の寸法の約3分の1である。また、取っ手61の取付け位置は、容器本体52″の長手方向の一方の端部近傍である。また、取っ手61の突出高さは、指で取っ手61を摘める程度の寸法である。他方、蓋体54″の上壁80″には、取っ手61に対応した位置に、取っ手61を通過させるのに十分なサイズのスロットすなわち逃げ穴78が形成されている。この蓋体54″は、容器本体52″に取付けるにあたっては、第1の変形例と同様に、容器本体52″に対し、上方から押圧するだけでよい。この第2の変形例の場合、取っ手61は、容器本体52″から突設されているため、容器本体52″が重くても、容器本体52″が落下するおそれはない。従って、第2の変形例においては、第1の変形例の試薬容器50’の係合口70aと係合突起70bのような構成はなくてもよい。また、取っ手61の形状、大きさ(長さ、高さ)、取付位置も変更可能である。
【0067】
次に、図7および図8を参照して、本発明の第3の実施形態の試薬容器100について説明する。図7は、試薬容器100の全体を示す斜視図である。図8は、試薬容器100の容器本体102を示す斜視図である。容器本体102は、平面視が扇形であり、側面視が矩形形状を呈している。この形状は、試薬容器100を扇形の狭幅の部分が内側になるように、互いに隣接させて円形に分析装置内に配置するのに適している。なお、説明の便宜上、狭幅側を一端、円弧状の広幅側を他端というものとする。
【0068】
図8に示すように、容器本体102は、その頂壁158にそれぞれ開口(開口部)166(166a、166b、166c、166d)を有する複数の収容部152a、152b、152c、152dが形成されている。これらの収容部152a、152b、152c、152dは、頂壁158と一体に形成され、第1の実施形態と同様に、外周壁156により形成される内部空間155内に頂壁158から垂直に垂下している。一端側の開口166aは、大きく台形を呈しており、他端側の開口166dは、円形となっている。また、一端と他端の中間の開口166b、166cは、開口166aより小型の台形となっている。各開口166a、166b、166c、166dの周囲には、第1の実施形態と同様にリブ172a、172b、172c、172dがそれぞれ形成されている。さらに、開口166a、166b、166c、166dは、これまでの実施形態と同様にシール材で覆われて実用に供される。また、容器本体102の3つの隅部には頂壁158に、後述する蓋体154の脚190(図90)を収容する取付孔140(140a、140b)が形成されている。これらの各取付孔140a、140b内には、脚と係合する係合部142が形成されている。
【0069】
次に、図9および図10を併せて参照して蓋体154について説明する。図9は、容器本体102の上部に取り付けられる蓋体154の本体部材144を示す斜視図である。図10は、スライド板(シャッター)146を取り外した状態の蓋体154の平面図である。蓋体154は、容器本体102の上部に配置される本体部材144と、この本体部材144に摺動可能に装着される2枚のスライド板146から構成されている。本体部材144は、全体形状が、容器本体102の上部と同様な形状の扇形乃至三角形をしており、スライド板146を摺動可能に配置する2つの溝148が形成されている。これらの溝148は、本体部材144の長手方向の外側縁に概ね沿って形成されたガイド壁150と、これらの1対のガイド壁150、150の間に形成された1対のガイド壁151とから構成される。各ガイド壁150、151は、一端側の端壁160で終端している。
【0070】
各溝148のガイド壁150、151の上縁部は、連結壁162(162a、162b、162c、162d)により、一端側から他端側にかけて互いに離隔する位置に、ガイド壁150、151と一体に形成されている。図10において理解のために、これら、上縁側の連結壁162(162a、162b、162c、162d)を斜線を施して示す。他方、これらの連結壁162の反対側すなわちガイド壁150、151の下縁側には、端壁160と連結壁162aとの間、および互いの連結壁162(162a、162b、162c、162d)の間に他の連結壁164(164a、164b、164c、164d)(図10)が形成されている。図9では、連結壁164(164a、164b、164c、164d)は、スライド板146の下側に位置するので表れていない。連結壁162と連結壁164との間、すなわちスライド板146に垂直な方向における連結壁162と連結壁164との間には、スライド板146が通過する図示しない間隙が形成されている。従って、スライド板146は、ガイド壁150、151と連結壁162、164とにより案内された状態で溝148内を摺動させることができる。
【0071】
図10に示すように、容器本体102に近い側となる各連結壁164c、164dには、第1の実施形態の蓋体54の開口86に対応する複数の円形の開口186が形成されている。また。連結壁164bの一つにも開口186が形成されている。これらの開口186は、図8に示す容器本体102の収容部152a、152b、152c、152dの開口166に対応する位置に形成されている。これらの開口186の下部には、開口186と連通する通路170を有する穿孔部168が形成されている(図9)。これらの各穿孔部168も平面視において同じ外形寸法であり、また、これまでの実施形態と同様に下端部が傾斜した形状となっている。
【0072】
次に、スライド板146について、図11を併せて参照して説明する。図11は図10に示す本体部材144にスライド板146を装着した状態を示す蓋体154の平面図である。2枚の板状のスライド板146は同じものであり、それらの平面視における外形形状は、ガイド壁150、151により形成される溝148の平面視の形状と相補形である。また、スライド板146の他端側には、溝148から外方に突出する延長部174が形成されている。各延長部174は、スライド板146の板面から下方に直角に垂下する2枚の板片174a、174bを有する。板片174a、174bの間には、自動分析装置400(図12)側からこれらの板片174a、174bと係合する後述する部材が進入して、スライド板146を溝148に押し込んだり、引き出したりするようになっている。
【0073】
図11に示すように前述の開口186は、通常、スライド板146により覆われた状態となっている。各スライド板146には、図11に示すスライド板146の位置で、連結壁162a、162b、162cと同じ位置に前述の開口186より僅かに大径の孔176が形成されている。この孔176は、スライド板146の引き出し量に応じて、いずれかの収容部152に対応する開口186と整列する。すなわち、開口186と孔176とが一致することにより、プローブ6が容器本体102に挿入可能となる。図7には、引き出された片方のスライド板146に形成された孔176がみえる。試薬容器100を使用しない場合は、図11に示すようにスライド板146を押し込んでおくことにより、開口186を閉鎖して試薬と外気との接触を絶つことができる。
【0074】
次に、再び図9を参照して、蓋体154を容器本体102へ取り付けるための構成について説明する。蓋体154は一端側に脚190aおよび他端側の隅部に脚190bが下方に延出するように一体的に形成されている。これらの脚190a、190bは総括して脚190という。これらの脚190は、容器本体102の取付孔140に対応する位置に形成されている。各脚190には外側に向く2つの係止突起(係合部)192、194が、脚190の長手方向に互いに離隔して形成されている。係止突起192は、脚190の下端に脚190の一側縁側に形成されており、係止突起194は、脚190の長さの略中央の他側縁側に形成されている。この係止突起192は、容器本体102の前述の係合部142と係合して、仮止め(仮係止)される。使用する場合は、蓋体154を押し込んで開栓した際に、係止突起194が係合部142と係合して蓋体154が容器本体102にロック(本係止)される。他の脚190についても同様な方法で蓋体154に係止される。この際に、穿孔部168は、各開口166を覆っているシール材を貫通する。
【0075】
脚190の係止構造については、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、脚190の先端(下端)の係止突起192は、必ずしも必要ではなく、単に取付孔140内に案内される舌片として機能するだけでもよい。また、係止突起が一つであって、取付孔140内に仮係止と、本係止(ロック)に対応する位置に係合部があってもよい。また、このような仮係止の位置と本係止の位置をとり得る脚190のような構造は、前述のブロック状の試薬容器50、300に適用してもよい。
【0076】
なお、蓋体154の一端に位置決め孔161が形成され、他端の中央に切欠163が形成されているが、これらは試薬容器100が、分析装置に取り付けられた際の位置決めとなるものであり、総括して位置決め部という。この取付け態様について、図12を参照して説明する。図12は、試薬容器100を分析装置400に装着した状態を示す斜視図である。分析装置400の試薬庫402には試薬容器100と相補形の区画404が軸406の周りに放射状に形成されている。この各区画404の半径方向内側にピン408が突設され、外側に舌片410が突設されている。これらピン408および舌片410を自動分析装置400側の部材という。試薬容器100をこれらの区画404に配置すると、前述の位置決め孔161はピン408と係合し、舌片410は試薬容器100の蓋体154の切欠163に係合して、試薬容器100が試薬庫402内に位置決めされる。ここで重要なことは蓋体154と試薬庫402のピン408、舌片410が係合する点である。これにより、蓋体154の孔176とプローブ6との位置が確実に合致する。
【0077】
以上、本発明の実施形態について、詳細に説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形変更が可能であることはいうまでもない。また、第2の実施形態において説明した穿孔部314と、収容部302a、302bの内壁面305、306の一部との相似関係は、第2の実施形態に限定されるものではなく、前述の全ての実施形態、変形例に適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の試薬容器を概念的に説明する断面図であり、(a)は、試薬容器を構成する容器本体と、その上方に位置する開栓部材としての蓋体とを示す。(b)は、蓋体が容器本体に押し付けられてシール材が穿孔された状態を示し、(c)は、分注プローブが蓋体を経て試薬容器内に挿入された状態を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態の試薬容器を、容器本体と蓋体を分離して示す斜視図である。
【図3】図2に示す試薬容器を下方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の試薬容器を示し、(a)は試薬容器を水平な面で切断した断面図であり、(b)は、(a)においてIVで示す円内の要部拡大図である。
【図5】図4の試薬容器を分析装置の試薬容器配置部に配置した状態を示す斜視図である。
【図6】図2の試薬容器の変形例を示し、(a)は第1の変形例の斜視図であり、(b)は第2の変形例の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の試薬容器の全体を示す斜視図である。
【図8】図7に示す試薬容器の容器本体の斜視図である。
【図9】図8の容器本体の上部に取り付けられる蓋体を示す斜視図である。
【図10】スライド板(シャッター)を取り外した状態の蓋体の本体部材の平面図である。
【図11】図10に示す蓋体の本体部材にスライド板を装着した状態を示す蓋体の平面図である。
【図12】第3の実施形態の試薬容器を自動分析装置に装着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
1、50、50’、50″、100 試薬容器
2、52、52’、52″ 、102、302 容器本体
2a、2b、2c、52a、52b、52c、52d、152a、152b、152c、152d、302a、302b、302c、302d、302e、302f、302g 収容部
4、54、54″、154、304 蓋体
5 下面
6 プローブ
8a、8b、8c 試薬
10a、10b、10c、66a、66b、66c、66d、166a、166b、166c、166d 開口部
12、62 シール材
14a、14b、14c、64a、64b、64c、64d、168、314a、314b 穿孔部
16、86、186 開口
18a、18b、18c、68、170 通路(中空部)
56、156 外周壁
60、61 取っ手
80、80’、80″ 上壁
82、82’ カバー壁
83、383 (カバー壁の)内壁面
192 係合部
161、163、362、363 位置決め部
176 孔
305、306 (収容部の)内壁面
308 相似形部
315a、315b 外周面
400 自動分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容し、自動分析装置のプローブが挿入されて試薬が吸引される開口した複数の収容部を有し、すべての該収容部の開口部が少なくとも1枚のシート状のシール材によりシールされた容器本体と、
下面に前記シール材を前記各開口部において穿孔する複数の中空の穿孔部が下方に向けて突設され、上面に該穿孔部に連通する前記プローブの挿抜を可能とする開口が形成された蓋体とからなり、
前記容器本体の上から前記蓋体を押し付けることにより前記シール材が穿孔されて前記プローブが前記穿孔部の中空部から前記収容部に挿入可能とされるように構成されてなることを特徴とする試薬容器。
【請求項2】
前記試薬が複数種類あり、前記それぞれの収容部が、対応する前記試薬の必要量に応じた収容量を有していることを特徴とする請求項1記載の試薬容器。
【請求項3】
前記複数の収容部のうち少なくとも一つの開口部が、他の開口部と異なる大きさを有しており、すべての前記穿孔部が、等しい外形寸法を有していることを特徴とする請求項1または2記載の試薬容器。
【請求項4】
前記シール材が、穿孔後前記蓋体の穿孔部と密着する材質からなることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項5】
前記シール材が、前記穿孔部による穿孔の際、前記シール材の分離した断片を生じない材質からなることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項6】
前記複数の穿孔部のうち少なくとも一つは、前記蓋体の下面から下方に向けて突出する長さが他の穿孔部と異なっており、これにより前記穿孔部が前記シール材を段階的に穿孔するよう構成されてなることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項7】
前記試薬容器の外部に取っ手が設けられていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項8】
前記蓋体が、前記容器本体と係合して、前記容器本体の上方であって前記穿孔部と前記シール材とが干渉しない位置に該蓋体を保持する係合部を有することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項9】
前記容器本体が外周壁を有するブロック状であり、前記蓋体が、前記容器本体の上から押し付けられた際に前記外周壁により内壁面が案内されるカバー壁と、前記穿孔部を下面に有する上壁とから構成されていることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項10】
前記蓋体が、前記自動分析装置側の部材と係合して位置決めされる位置決め部を有することを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項11】
前記容器本体の開口部に対し、前記穿孔部の少なくとも一つは、前記開口部の内壁面から前記穿孔部の外周面までの最短距離が、前記内壁面から前記穿孔部の中心までの最短距離の2分の1以下となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の試薬容器。
【請求項12】
前記開口部のうち少なくとも1つが前記穿孔部の外周面に沿う相似形部を有しており、該相似形部の前記外周面に沿う長さが前記外周面の長さの25%以上であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の試薬容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−98114(P2009−98114A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83003(P2008−83003)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】