説明

試薬容器

【課題】本発明の課題は、従来の熱電対を使用するものと異なって、試薬容器内の温度のモニタリングが中断する恐れが低減され、その温度測定の準備作業が極めて簡単になる試薬容器を提供することにある。
【解決手段】本発明の試薬容器101aは、充填された試薬117の温度を検出する温度センサ部120と、前記温度センサ部120が出力した温度データを格納する測定記録部121(データ格納部)と、測定記録部121が格納する前記温度データを試薬容器101aの外部に設けられた外部通信機器に非接触で送信する通信部122を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に搭載される試薬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置としては、複数の試薬容器を搭載したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。更に詳しく説明すると、この自動分析装置は、免疫分析等に供する血液等の検体(サンプル)に試薬を添加して反応させ、その反応状態(例えば、発光強度等)を測定することによって、分析対象物の定量を行うものである。
【0003】
そして、このような自動分析装置においては、所定角度刻みで回動する試薬ディスク上に複数の試薬容器が同心円状に配置されており、試薬ディスクが回動して所定位置に配置された際に、試薬分注機構が試薬容器から試薬を採取し、これをサンプルに分注するようになっている。
その一方で、このような自動分析装置においては、試薬容器内に充填された試薬が所定の温度となるように維持管理されている。したがって、自動分析装置においては、試薬の温度をモニタリングする必要がある。
【0004】
従来、温度を検知する手段としては熱電対が知られている。この温度センサは、周知のとおり、異種金属の二接点間の温度差で生じる起電力に基づいて温度が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−181423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような熱電対を、前記した自動分析装置(例えば、特許文献1参照)に配置される試薬容器内の温度をモニタリングするために使用すると、試薬ディスクが回動して試薬容器の位置が変動するために熱電対の配線が絡まる場合がある。そして、配線が絡まると、温度のモニタリングを中断しなければならない。
また、複数の試薬容器内の温度をモニタリングする際には、試薬容器ごとに熱電対の配置し、その配線を行う必要があるために測定の準備作業が極めて煩雑となる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、従来の熱電対を使用するものと異なって、試薬容器内の温度のモニタリングが中断する恐れが低減され、その温度測定の準備作業が極めて簡単になる試薬容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の第1は、充填された試薬の温度を検出する温度センサ部と、前記温度センサ部が出力した温度データを試薬容器の外部に設けられた外部通信機器に非接触で送信する通信部とを備えることを特徴とする試薬容器である。
また、前記課題を解決する本発明の第2は、充填された試薬の温度を検出する温度センサ部と、前記温度センサ部が出力した温度データを格納するデータ格納部とを備えることを特徴とする試薬容器である。
また、前記課題を解決する本発明の第3は、充填された試薬の温度を検出する温度センサ部と、前記温度センサ部が出力した温度データを格納するデータ格納部と、前記データ格納部が格納する前記温度データを試薬容器の外部に設けられた外部通信機器に非接触で送信する通信部とを備えることを特徴とする試薬容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の熱電対を使用するものと異なって、試薬容器内の温度のモニタリングが中断する恐れが低減され、その温度測定の準備作業が極めて簡単になる試薬容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の試薬容器が搭載される自動分析装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の自動分析装置を構成する試薬容器保存装置の斜視図である。
【図3】本発明の試薬容器を示す縦断面図である。
【図4】本発明の試薬容器の変形例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の試薬容器の構成を説明するための模式図である。
【図6】本発明の試薬容器と通信する外部通信機器が配置された様子を例示する配置説明図であり、当該試薬容器が配置された試薬保存装置の部分拡大断面図である。
【図7】(a)は、本発明の実施例に係る試薬容器を使用した試薬の温度測定方法の工程説明図、(b)は、比較例に係る試薬容器を使用した試薬の温度測定方法の工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態の試薬容器について説明する。この試薬容器は、臨床検査で一般に行われる生化学分析や免疫分析等の化学分析を自動で行う自動分析装置に使用するものである。以下に、自動分析装置の全体構成を説明した後に、試薬容器について説明する。
【0012】
(自動分析装置)
図1に示すように、自動分析装置Aは、血液検体等(サンプル)を入れたサンプル容器110を搬送するサンプル容器搬送機構109と、前記サンプルと試薬とを反応させる反応容器106を保持するターンテーブルで構成される反応容器保持器105と、この反応容器保持器105に供給する反応容器106を複数常備する反応容器供給庫107と、この反応容器供給庫107の反応容器106を前記反応容器保持器105に移送する反応容器移送機構108と、前記反応容器保持器105の反応容器106に対して、前記サンプル容器搬送機構109で搬送された前記サンプル容器110からサンプルを分注するサンプル分注機構111と、このサンプルが分注された反応容器106に対して、試薬容器保存装置100の試薬容器101から採取した試薬を分注する試薬分注機構104と、この試薬が分注されてサンプルと試薬との反応による状態変化(例えば、発光強度等)を測定する反応測定装置112と、を備えている。
なお、図1中、符号102は、後記する試薬ディスクであり、符号103は、後記する試薬容器蓋開閉機構である。
【0013】
前記試薬容器保存装置100について、以下に更に詳しく説明する。
図2に示すように、試薬容器保存装置100の試薬ディスク102上には、縦長の後記する試薬容器101が、その周方向に複数並設されると共に、そのラジアル方向(径方向)にも複数並設されている。つまり、試薬容器101は、試薬ディスク102上で同心円状に配列されている。そして、試薬ディスク102上には、ラジアル方向の外側に試薬容器101が三段(3周)に並ぶ外周側配設部100aと、この外周側配設部100aの内側で試薬容器101が三段(3周)に並ぶ内周側配設部100bとが形成されている。この試薬ディスク102は、軸周りに所定角度で回転することで、試薬容器101を周方向の所定の位置に移動させることができるようになっている。
【0014】
試薬容器移動機構114は、この外周側配設部100aと内周側配設部100bとの間で、試薬容器101を相互に入れ替えるように移動させるものである。
各試薬容器101は、その上部に試薬を出し入れするための開口(図示省略)が形成されており、この開口には開閉自在に試薬容器蓋113が取り付けられている。
そして、この試薬容器蓋113は、試薬容器蓋開閉機構103によって、開閉されるようになっている。これらの試薬容器移動機構114及び試薬容器蓋開閉機構103は、試薬ディスク102上に配置される機構ベース115に支持されている。
なお、試薬容器保存装置100は、試薬容器101内の試薬の温度を所定の温度に保つための温度調節装置(図示省略)を試薬ディスク102の下方に備えている。また、試薬容器保存装置100は、試薬ディスク102上に配置された試薬容器101をその上側から覆う試薬容器保存装置蓋(図示省略)を更に備えている。
【0015】
次に、このような自動分析装置Aの動作について説明する。
図1に示すように、反応容器供給庫107に常備されたディスポーサブルの反応容器106が、反応容器移送機構108によって反応容器保持器105に移送されると、ターンテーブルで構成される反応容器保持器105は、所定角度で回動することで、反応容器106をサンプル分注機構111の近傍に移動させる。
【0016】
その一方で、分析対象となるサンプルの入ったサンプル容器110がサンプル容器搬送機構109によって反応容器保持器105の近傍に搬送されると、サンプル分注機構111は、サンプル容器110からサンプルを採取すると共に、このサンプルを反応容器106に分注する。その後、反応容器保持器105は、回動することで、サンプルが分注された反応容器106を試薬分注機構104の近傍に移動させる。
【0017】
そして、試薬分注機構104は、試薬容器保存装置100に配置された試薬容器101内の試薬を採取する。この際、サンプルとの反応に複数種類の試薬を要する場合には、必要な試薬の種類ごとに設けられた複数の試薬容器101から採取され、そして、それらは反応容器106内に分注される。その後、反応容器106内を攪拌して、必要に応じてアニーリングを行った後、反応容器106のサンプルは、分析に供せられる。そして、反応容器保持器105は、回動することで、反応容器106を反応測定装置112に向けて搬送し、反応測定装置112は、サンプルと試薬との反応による状態変化(例えば、発光強度等)を測定することで、サンプルに含まれる分析対象物の定量を行う。
【0018】
なお、試薬容器保存装置100内の試薬容器101は、前記したように、所定の温度下に保存されている。そして、試薬分注機構104によって試薬が採取される前後において、図2に示す試薬容器蓋113が、試薬容器蓋開閉機構103によって開閉される。また、試薬容器101は、必要に応じて、図2に示す試薬容器移動機構114によって、外周側配設部100aと内周側配設部100bとの間で配置位置が入れ替えられる。以上の動作は自動分析装置Aが備える図示しない制御部によって制御される。
【0019】
(試薬容器)
試薬容器保存装置100に搭載される図2に示す試薬容器101は、縦長の略直方体の形状を呈している。試薬容器101の形状は、これに限定されるものではなく、その外形が、例えば円柱形状であってもよい。
【0020】
このような試薬容器101は、次に説明する温度センサ部120(図3参照)を備える第1の試薬容器101aと、温度センサ部120を備えない第2の試薬容器101bの2種類で構成されている。そして、2種類の試薬容器101a及び試薬容器101bのうち、第1の試薬容器101aが、特許請求の範囲に記載した本発明の「試薬容器」に相当する。
なお、本実施形態での試薬容器保存装置100に配置される複数の試薬容器101のうち、第1の試薬容器101aは、外周側配設部100aの適所に1つと、内周側配設部100bの適所に1つ、合計2つが配置されている。そして、残りの全ての試薬容器101は、第2の試薬容器101bで構成されている。
【0021】
第1の試薬容器101a(本発明の試薬容器であり、以下、単に「試薬容器101a」と称する)は、図3に示すように、試薬117が充填される内部空間を有する試薬容器筒118と、試薬容器筒118を外側から保護する試薬容器保護部119と、試薬容器筒118の上部開口を封止可能であって、前記試薬容器保護部119に支持される一端部周りで回動可能な試薬容器蓋113と、を備えている。
なお、第2の試薬容器101b(図2参照)は、図示しないが、以上のような試薬容器101aと同じ形状及び構造を有している。
【0022】
そして、試薬容器101aは、これに加えて、試薬容器筒118内の試薬117の温度を測定する温度センサ部120を備えている。この温度センサ部120としては、特に制限はないが、中でも熱電対、測温抵抗体及びサーミスタが望ましい。
【0023】
温度センサ部120は、上下に縦長の試薬容器101aの上方から下方にかけて複数設けられており、本実施形態では、試薬容器筒118内に臨むように、上部、中部、及び下部の3箇所に設けられている。この温度センサ部120の数は、特に制限はなく、1つや、2つであってもよいが、3つ以上とするのが望ましい。また、温度センサ部120の配置位置は、試薬117の温度が検出可能であれば、試薬容器筒118外であってもよい。
【0024】
次に参照する図4は、本発明の試薬容器の変形例を示す縦断面図である。
図4に示すように、この試薬容器101aにおいては、温度センサ部120が、試薬容器筒118と試薬容器保護部119との間に配置されている。このような試薬容器101aによれば、試薬容器筒188と温度センサ部120とが互いに着脱自在に配置することが可能となり、必要に応じてこれらの交換が可能となる。
【0025】
また、試薬容器101aは、更に、温度センサ部120で検出された温度データを格納する測定記録部121と、この測定記録部121に格納された温度データを外部通信機器に通信する通信部122と、これら温度センサ部120、測定記録部121、及び通信部122に電力を供給するバッテリーからなる電源部123と、を備えている。
なお、測定記録部121は、特許請求の範囲にいう「データ格納部」に相当する。また、本実施形態での測定記録部121と、通信部122とは、単一の基板124に搭載されている。
【0026】
測定記録部121は、ICチップからなるメモリで構成されている。通信部122は、外部通信機器(図示省略)に所定のアンテナ(図示省略)を介して温度データを送信する送信器であればよいが、電源部123を兼ねるRFIDを採用する場合には、送受信器を構成する。
なお、本実施形態では、測定記録部121と通信部122とを単一の基板124上に集約しているが、測定記録部121及び通信部122のそれぞれの機能を分割した複数の基板を備えるように構成することもできる。
【0027】
電源部123としてのバッテリー(ボタン型バッテリー)は、試薬容器筒118と試薬容器保護部119との間の空間に配置された電池収納部125内に収納されている。そして、電池収納部125に対応する位置の試薬容器保護部119は切り欠かれることで、電池収納部125内は、この切り欠き部を介して、試薬容器101aの外部に臨むようになっている。そして、この切り欠き部には、電池蓋127としての蓋体が着脱自在に取り付けられている。つまり、電源部123としてのバッテリーが消耗した際には、電池蓋127を取り外すことで、バッテリーの交換が可能となっている。
なお、電池収納部125は、断熱材料で形成することが望ましい。
【0028】
図5に示すように、本実施形態の試薬容器101aの温度センサ部120は、前記したように、試薬容器101aの上下方向に複数(3つ)配設されている。そして、各温度センサ部120は、基板124に搭載された測定記録部121と電気的に接続され、温度センサ部120で検出された温度データは、測定記録部121に電子的に記録されるようになっている。
【0029】
また、測定記録部121は、これと同じ基板124上に搭載された通信部122と電気的に接続されている。つまり、通信部122は、測定記録部121に記録された温度データを参照すると共に、これを図示しないアンテナを介して無線で外部通信機器130に送信する。そして、外部通信機器130は、受信した温度データ、つまり、各温度センサ部120がそれぞれ検出した試薬容器筒118内の温度データをモニタ等の出力部(図示省略)に出力する。
【0030】
外部通信機器130の配置場所としては、自動分析装置A(図1参照)の外部であってもよいし、自動分析装置Aの内部であってもよい。なお、自動分析装置Aの内部に外部通信機器130を配置する場合には、当該配置場所は、自動分析装置Aの非可動部が望ましい。この非可動部の具体的としては、例えば、自動分析装置Aの筐体(図示省略)に対して直接的又は間接的に固定されている部材が挙げられる。次に参照する図6は、本発明の試薬容器と通信する外部通信機器が配置された様子を例示する配置説明図であり、当該試薬容器が配置された試薬保存装置の部分拡大断面図である。
【0031】
図6に示すように、外部通信機器130は、例えば、試薬容器101aと図6では図示しない試薬容器101b(図1参照)とで構成される試薬容器101(図1参照)を収容する試薬容器保存装置100の収容部の内壁面に配置することができる。
【0032】
図6中、符号122は、外部通信機器130と通信する試薬容器101aの通信部であり、符号102は、試薬容器101a及び試薬容器101bを配列させる試薬ディスク102である。
【0033】
このような外部通信機器130によれば、試薬ディスク102が周方向に回転する際に、通信部122と外部通信機器130との送受信感度を調節することによって、通信部122と外部通信機器130とが最も近接するたびに、外部通信機器130が、試薬容器101bの通信部122の送信した温度データを受信する。このような外部通信機器130によれば、試薬容器保存装置100内に配置された複数の試薬容器101b内の温度を、各試薬容器101bが最も近接するたびに、それぞれ個別に受信して読み取ることができる。
【0034】
また、本実施形態での外部通信機器130の数に特に制限はなく、外部通信機器130は、2以上であってもよい。また、前記したように、外部通信機器130の配置場所は、自動分析装置A(図1参照)の内外を問わず、通信部122との送受信が可能な範囲で適宜に設定することができる。
【0035】
ちなみに、外部通信機器130に対する通信部122の送信のタイミングは、所定のインターバルごとに行ってもよいし、外部通信機器130からの要求があったときに行ってもよいし、両方のタイミングであってもよい。
【0036】
以上のような試薬容器101aの奏する作用効果について説明するが、ここでは、まず本実施形態に係る試薬容器101aの使用態様について説明する。
使用態様の第1としては、試薬容器101aは、製造した自動分析装置Aの出荷時における規格試験(出荷試験)が挙げられる。
この規格試験においては、図5に示すように、試薬117を試薬容器筒118内に充填し、試薬容器蓋113を閉じた試薬容器101aを、図2に示すように、自動分析装置Aの試薬ディスク102上の、温度を計測するポジション(本実施形態では前記した2箇所)に搭載する。この際、このポジション以外の搭載位置には、温度センサ部120を有しない、前記した第2の試薬容器101bが搭載される。
【0037】
次に、自動分析装置Aの電源(図示省略)をオンにして分析モードとする。この分析モードとなった自動分析装置Aは、試薬ディスク102の下方の前記した温度調節装置(図示省略)によって、試薬容器101a,101bが所定の温度に維持されるように制御する。
【0038】
この際、図3に示す各温度センサ部120は、試薬容器筒118内の、上部、中部及び下部の温度を検出し、その温度データを、測定記録部121及び通信部122を介して外部通信機器130に送信する。そして、この自動分析装置Aの規格試験者は、外部通信機器130が受信した温度データを、モニタ等の出力部(図示省略)を介して取得することができる。その結果、規格試験者は、得られた温度データに基づいて、自動分析装置Aが規格(仕様)を満足しているか否かを判断することができる。
なお、自動分析装置Aのメンテナンス時の試薬容器保存装置100に対する温度性能確認試験においても、前記規格試験と同様の手法を採用することができる。
【0039】
また、使用態様の第2としては、前記したサンプルの分析試験における試薬117(図3参照)の温度管理用のモニタとしての使用態様が挙げられる。この使用態様では、試薬分注機構104(図2参照)によって試薬が採取され、試薬容器蓋113(図2参照)が試薬容器蓋開閉機構103によって開閉された際の、試薬117の温度変化が測定される。この際、温度センサ部120は、試薬容器筒118の上部、中部及び下部に配置されているので、試薬分注機構104(図2参照)によって試薬117が採取されて、試薬容器筒118内の試薬117の液面が変化した場合であってもこれに対応して試薬117の温度を測定することができる。
【0040】
以上のような試薬容器101aを使用した試薬温度の測定方法(本発明の実施例)は、図7(a)に示すように、試薬容器(試薬容器101a)を準備する工程(ステップS201)と、この試薬容器101aを試薬ディスク102上にセットする工程(ステップS202)と、前記したようにして試薬117の温度データを無線により取得してその温度を測定する工程(ステップS203)と、その測定の終了後に、試薬容器101aを試薬ディスク102上から回収する工程(ステップS204)と、を有することとなる。
【0041】
これに対して、熱電対を使用した従来の試薬温度の測定方法(比較例)は、図7(b)に示すように、試薬容器を準備する工程(ステップS301)と、この試薬容器を試薬ディスク102上にセットする工程(ステップS302)と、この試薬容器に熱電対を配置する工程(ステップS303)と、試薬の温度データを有線により取得して測定する工程(ステップS304)と、配置した熱電対を試薬容器から回収する工程(ステップS305)と、その測定の終了後に、試薬容器を試薬ディスク102上から回収する工程(ステップS306)と、を有することとなる。
【0042】
そして、以上の本発明の実施例と比較例とを対比すると、本実施例では、試薬容器101aに充填された試薬117の温度を無線で測定することができるので(ステップS203参照)、これを搭載する自動分析装置Aを動作させて試薬容器101aの配置位置が試薬容器保存装置100内で変化する場合であっても、従来の熱電対で試薬117の温度を有線で測定するもの(ステップS304参照)と異なって、その配線が絡まる恐れがない。
【0043】
また、この試薬容器101aによれば、従来の熱電対で試薬117の温度を測定するものと異なって、試薬117の温度を測定しようとするたびに、複数の試薬容器(例えば、図2での試薬容器101b)ごとに、熱電対の配置(ステップS303参照)や温度モニタとの配線作業、並びに検出後のこれらの取り外し及び回収作業(ステップS305参照)を行う必要がない。したがって、この試薬容器101aによれば、前記した規格試験(出荷試験)や、メンテナンス時の温度性能確認試験を簡単に、かつ迅速に行うことができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、測定記録部121及び通信部122の両方を備える試薬容器101aについて説明したが、本発明は、通信部122を備えずに、温度センサ部120と測定記録部121とを有する構成とすることもできる。
【0045】
このような試薬容器101aでは、温度の検出が終了して試薬容器保存装置100から取り外された試薬容器101aの測定記録部121から、例えば、パーソナルコンピュータ等の外部装置を使用して温度データが読み出されることとなる。
【0046】
この試薬容器101aによっても、前記したと同様の作用効果を奏すると共に、通信部122や外部通信機器130を使用しなくてもよいので、構成が簡素化する。
【0047】
また、前記実施形態では、電源部123は、温度センサ部120、測定記録部121及び通信部122に対する電力の供給を常時継続する構成を想定しているが、試薬容器101aの温度の検出時(作用時)のみに電力を供給するように、オンオフスイッチを設けることもできる。また、このオンオフスイッチは、遠隔操作が可能なものであってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、試薬容器1つに対して温度センサ部120等を設けることを想定しているが、複数の試薬容器(例えば、試薬容器101b)が複数集合して形成されたユニットに対して温度センサ部120等が配置されたものであってもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、温度センサ部120と外部通信機器130との通信は、光(例えば、赤外線)等であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
101 試薬容器
101a 試薬容器
113 試薬容器蓋
117 試薬
118 試薬容器筒
119 試薬容器保護部
120 温度センサ部
121 測定記録部(データ格納部)
122 通信部
123 電源部
125 電池収納部
127 電池蓋
130 外部通信機器
A 自動分析装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された試薬の温度を検出する温度センサ部と、前記温度センサ部が出力した温度データを試薬容器の外部に設けられた外部通信機器に非接触で送信する通信部とを備えることを特徴とする試薬容器。
【請求項2】
充填された試薬の温度を検出する温度センサ部と、前記温度センサ部が出力した温度データを格納するデータ格納部とを備えることを特徴とする試薬容器。
【請求項3】
充填された試薬の温度を検出する温度センサ部と、前記温度センサ部が出力した温度データを格納するデータ格納部と、前記データ格納部が格納する前記温度データを試薬容器の外部に設けられた外部通信機器に非接触で送信する通信部とを備えることを特徴とする試薬容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の試薬容器において、
試薬が充填される試薬容器筒を更に備えると共に、
前記試薬容器筒は、上下に長く形成され、
前記温度センサ部は、前記試薬容器筒の長手方向に沿って複数配置されていることを特徴とする試薬容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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