説明

試験片

【課題】 異なる分析装置に装填することが可能な試験片を提供すること。
【解決手段】 分析装置に装填される試験片101であって、上記分析装置の第1受容部に挿入される装填部111と、上記分析装置あるいは他の分析装置に設けられた上記第1受容部とは異なる第2受容部に挿入される第2装填部112と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物、酵素、抗体などの生物材料の分子認識機能を利用したバイオセンサと称される分析装置が広く用いられている。このような分析装置は、ディスポーザブルタイプとされた試験片が装填され、たとえば血液中のグルコース量を計測する血糖値測定器として機能する。図9は、このような分析装置に装填される従来の試験片の一例を示している(たとえば、特許文献1)。同図に示された試験片900は、絶縁材料からなる基板910、基板910上に形成された導電層920、および試薬層950を有する。導電層920は、パッド931,932,933、および電極941,942,943を有する。パッド931,932,933は、電極941,942,943に各別に導通している。パッド931,932,933は、基板910の図中右端寄り部分に形成されている。電極941,942,943は、基板910の図中左端寄り部分に形成されている。試薬層950は、電極941,942,943の一部ずつを覆っている。
【0003】
基板910の右端寄り部分とパッド931,932,933とにより、装填部901が構成されている。装填部901は、分析装置(図示略)に設けられた受容部(図示略)に装填される。この受容部は、試験片900の装填部901が挿入されることを意図した凹部と、この凹部内に設けられた複数のパッドとからなる。これらのパッドは、試験片900のパッド931,932,933と接する。試験片900の試薬層950に試料を導入すると、これらの反応に起因してパッド931,932間に電圧が生じる。上記分析装置は、上記受容部を介してこの電圧を検出することにより、たとえば血液中のグルコース量を測定する。
【0004】
しかしながら、同じ試料の同じ成分を同じ試薬を用いて測定する場合であっても、分析装置が異なると、上記受容部の形状や上記パッドの配置が異なる場合がほとんどである。このため、同種の測定を行うために、複数種類の試験片900を製造し、用意しておくことが強いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4184573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、異なる分析装置に装填することが可能な試験片を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される試験片は、分析装置に装填される試験片であって、上記分析装置の第1受容部に挿入される第1装填部と、上記分析装置あるいは他の分析装置に設けられた上記第1受容部とは異なる第2受容部に挿入される第2装填部と、を備えている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、基板と、上記基板上に形成された導電層と、を備えており、上記基板は、第1および第2装填片部を有しており、上記導電層は、上記第1装填片部上に形成された1対の第1パッド、上記第2装填片部上に形成された1対の第2パッド、上記1対の第1パッドに導通する1対の第1電極、上記1対の第2パッドに導通する1対の第2電極、を有しており、上記第1装填部は、上記第1装填片部および上記1対の第1パッドによって構成されており、上記第2装填部は、上記第2装填片部および上記1対の第2パッドによって構成されている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の第1電極および上記1対の第2電極の双方に接する試薬層を備える。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1装填部を上記第1受容部に挿入する第1挿入方向と、上記第2装填部を上記第2受容部に挿入する第2挿入方向とが、一致している。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の第1パッドは、上記第1および上記第2挿入方向に対して直角である幅方向における位置が異なるように離間配置されており、上記1対の第2パッドは、上記幅方向における位置が異なるように離間配置されており、上記1対の第1パッドおよび上記1対の第2パッドは、上記幅方向において一方が他方の内側に配置されている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2装填片部のいずれか一方は、他方よりも上記第1(第2)挿入方向において突出しており、かつ上記幅方向寸法が小である。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板の同一部位が、上記第1および上記第2装填片部とされている、
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記1対の第1パッドおよび上記1対の第2パッドは、上記第1(第2)挿入方向における位置が互いに異なる。
【0015】
このような構成によれば、上記第1装填部を上記第1受容部に装填可能であるとともに、上記第2装填部を上記第2受容部に装填可能である。これにより、互いに異なる構成の第1または第2受容部を有する複数の分析装置に、上記試験片を使用することができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく試験片を示す平面図である。
【図2】図1の試験片の一使用状態を示す平面図である。
【図3】図1の試験片の他の使用状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に基づく試験片を示す平面図である。
【図5】図4の試験片の一使用状態を示す平面図である。
【図6】図4の試験片の他の使用状態を示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に基づく試験片を示す平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に基づく試験片を示す平面図である。
【図9】従来の試験片の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に基づく試験片を示している。本実施形態の試験片101は、基板200、導電層300、および試薬層400を備えている。図2および図3に示すように、試験片101は、分析装置801,802に装填されて使用されるものである。分析装置801,802は、バイオセンサと称されるものであり、特に血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose、以下SMBG)装置として構成されている。SMBG装置は、使用者が自己の血液の血糖値を、通院することなく自宅などにおいて自ら測定することを可能とするものである。
【0020】
基板200は、試験片101の土台となっており、たとえばポリエチレンテレフタラート(PET)に代表される樹脂などの絶縁材料からなる。本実施形態においては、基板200には、装填片部211,212が形成されている。装填片部211は、本発明で言う第1装填片部に相当し、装填片部212は、本発明で言う第2装填片部に相当する。装填片部211は、挿入方向N1に向けて挿入される部位であり、挿入方向N1に対して直角である幅方向Wにおいて基板200のほぼ中央に位置している。装填片部212は、挿入方向N2に向けて挿入される部位である。本実施形態においては、挿入方向N1,N2が一致している。装填片部212は、挿入方向N1,N2において装填片部211よりも後退した位置にある。また、装填片部212は、幅方向Wにおいて装填片部211よりも幅広とされており、幅方向W両側に突出している。
【0021】
導電層300は、基板200上に形成された導電体からなる層であり、その材質としてはたとえば金やパラジウムなどの金属、あるいはカーボンが挙げられる。導電層300は、1対のパッド311、1対のパッド312、1対の電極321、1対の電極322、1対の配線331、1対の配線332を有している。1対のパッド311は、装填片部211上に配置されており、本発明で言う1対の第1パッドに相当する。1対のパッド311は、幅方向Wにおいて離間配置されている。1対のパッド312は、装填片部212上に配置されており、本発明で言う1対の第2パッドに相当する。1対のパッド312は、幅方向Wにおいて離間配置されている。本実施形態においては、1対のパッド311が、1対のパッド312に対して幅方向W内側に配置されている。
【0022】
装填片部211と1対のパッド311とは、装填部111を構成している。装填部111は、本発明で言う第1装填部に相当する。装填片部212と1対のパッド312とは、装填部112を構成している。装填部112は、本発明で言う第2装填部に相当する。
【0023】
1対の電極321は、基板200の図中左方部分に形成されており、幅方向Wにおいて互いに離間配置されている。1対の電極321は、本発明で言う1対の第1電極に相当する。1対の電極322は、基板200の図中左方部分に形成されており、幅方向Wにおいて互いに離間配置されている。1対の電極322は、本発明で言う1対の第2電極の一例である。本実施形態においては、1対の電極321は、1対の電極322に対して幅方向W内側に配置されている。また、1対の電極321と1対の電極322の挿入方向N1,N2における位置は、ほぼ同じである。
【0024】
1対の配線331は、1対のパッド311と1対の電極321とを各別に導通させている。1対の配線332は、1対のパッド312と1対の電極322とを各別に導通させている。
【0025】
試薬層400は、塗布された試薬によって構成された層であり、たとえば血糖値を測定する場合、酵素であるグルコースオキシターゼと電子受容体としてのフェリシアン化カリウムなどからなる試薬を用いる。試薬層400は、1対の電極321および1対の電極322を覆っており、これらと接している。
【0026】
次に、図2および図3を参照しつつ、使用状態にある試験片101について以下に説明する。
【0027】
図2は、試験片101を分析装置801に装填した状態を示している。この分析装置801は、たとえばSMBG装置として構成されており、受容部811を有する。受容部811は、試験片101の装填部111が装填される部位であり、本発明で言う第1受容部に相当する。受容部811は、装填部111を収容可能な凹部と、この凹部内に配置された1対のパッド821とからなる。1対のパッド821は、試験片101が受容部811に装填されると、試験片101の1対のパッド311と接し、これらと導通する。
【0028】
図3は、試験片101を分析装置802に装填した状態を示している。分析装置802は、分析装置801と同様に血糖値を測定可能なSMBG装置として構成されているが、受容部811とは異なる構成の受容部812を有する。受容部812は、試験片101の装填部112が装填される部位であり、本発明で言う第2受容部に相当する。受容部812は、装填部112を収容可能な凹部と、この凹部内に配置された1対のパッド822とからなる。1対のパッド822は、試験片101が受容部812に装填されると、試験片101の1対のパッド312と接し、これらと導通する。
【0029】
次に、試験片101の作用について説明する。
【0030】
本実施形態によれば、図2および図3に示すように、装填部111を分析装置801の受容部811に装填可能であるとともに、装填部112を分析装置802の受容部812に装填可能である。これにより、互いに異なる構成の受容部811,812を有する分析装置801,802の双方に、試験片101を使用することができる。したがって、複数の分析装置801,802の双方を使用する場合であっても、使用者は1種類の試験片101を用意するだけで適切に血糖値測定などを行うことが可能であり、便利である。
【0031】
受容部811,812の挿入方向N1,N2を一致させることにより、基板200の形状がいびつとなることを回避することができる。1対のパッド311を幅方向Wにおいて1対のパッド312よりも内側に配置することにより、導電層300の形状が不当に複雑となってしまうことを回避することができる。
【0032】
図4〜図8は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0033】
図4は、本発明の第2実施形態に基づく試験片102を示している。本実施形態の試験片102は、基板200および導電層300の形状が、上述した試験片101と異なっている。
【0034】
本実施形態においては、基板200は、挿入方向N1,N2を長手方向とする長方形状とされている。また、装填片部211,212は、いずれも基板200の右端にある同一部分によって構成されており、互いに共通となっている。
【0035】
1対のパッド311は、装填片部211(212)の挿入方向N1(N2)先端寄りに配置されている。1対のパッド312は、装填片部212(211)の挿入方向N2(N1)根本側に配置されている。1対のパッド312は、1対のパッド311に対して幅方向Wにおいて内側に配置されている。
【0036】
1対の電極321は、基板200の左端寄り部分において、挿入方向N1(N2)に並んで配置されている。1対の電極322は、基板200の左端寄り部分において、1対の電極321よりも右側に、挿入方向N1(N2)に並んで配置されている。
【0037】
次に、図5および図6を参照しつつ、使用状態にある試験片102について以下に説明する。
【0038】
図5は、試験片102を分析装置803に装填した状態を示している。この分析装置803は、たとえばSMBG装置として構成されており、受容部811を有する。1対のパッド821は、受容部811の挿入方向N1(N2)奥方に配置されている。試験片102が受容部811に装填されると、1対のパッド821と1対のパッド311とが導通する。
【0039】
図6は、試験片102を分析装置804に装填した状態を示している。分析装置804は、外形が分析装置803とほぼ同じであり、受容部812を有している。受容部812は、分析装置803の受容部811と同じ形状の凹部を有している。受容部812に設けられた1対のパッド822は、図5に示した1対のパッド821よりも挿入方向N2(N1)左側に配置されている。試験片102が分析装置804の受容部812に装填されると、1対のパッド822と1対のパッド312とが導通する。
【0040】
このような実施形態によっても、試験片102を複数の分析装置803,804に適切に装填可能であり、それぞれを用いて測定することができる。また、本実施形態においては、装填片部211,212が共通となっており、1対のパッド311,312が別々の場所に配置されている。これにより、図5,6に示された複数の分析装置803,804に装填する使用形態のほかに、1対のパッド311に対応したパッドと、1対のパッド312に対応したパッドとが備えられた一つの分析装置に試験片102を装填するという使用形態が可能である。この場合、1対のパッド311を用いた測定の場合と、1対のパッド312を用いた測定の場合とで、たとえば測定処理に用いる補正係数を異ならせるといった運用が可能である。
【0041】
なお、挿入方向N1と挿入方向N2とが一致する構成においては、幅方向Wにおいて1対のパッド312が1対のパッド311の内側に位置する構成に限定されるものではない。1対のパッド311が、1対のパッド312の内側にあってもよい。また、幅方向Wにおいて、たとえば、1対のパッド311の間に1対のパッド312の一方が位置するように、1対のパッド311と1対のパッド312とが交互に並べられた構成であってもよい。あるいは、1対のパッド311と1対のパッド312とが幅方向Wにおいて隣り合う構成であってもよい。
【0042】
図7は、本発明の第3実施形態に基づく試験片を示している。本実施形態の試験片103は、装填部111の挿入方向N1と、装填部112の挿入方向N2とが異なっており、互いに直角である。また、1対のパッド311どうしの間隔と1対のパッド312どうしの間隔とは異なっており、1対のパッド311どうしの間隔の方が広い。このような実施形態によっても、試験片103を複数の分析装置に装填することができる。
【0043】
図8は、本発明の第4実施形態に基づく試験片を示している。本実施形態の試験片104は、装填部111の挿入方向N1と、装填部112の挿入方向N2とが異なっており、互いのなす角度がたとえば50度程度とされている。このような実施形態によっても、試験片104を複数の分析装置に装填することができる。
【0044】
本発明に係る試験片は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る試験片の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0045】
101〜104 試験片
111 (第1)装填部
112 (第2)装填部
200 基板
211 (第1)装填片部
212 (第2)装填片部
300 導電層
311 (第1)パッド
312 (第2)パッド
321 (第1)電極
322 (第2)電極
331,332 配線
400 試薬層
801〜804 分析装置
811 (第1)受容部
812 (第2)受容部
821 パッド
822 パッド
N1 (第1)挿入方向
N2 (第1)挿入方向
B 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置に装填される試験片であって、
上記分析装置の第1受容部に挿入される第1装填部と、
上記分析装置あるいは他の分析装置に設けられた上記第1受容部とは異なる第2受容部に挿入される第2装填部と、
を備える、試験片。
【請求項2】
基板と、
上記基板上に形成された導電層と、を備えており、
上記基板は、第1および第2装填片部を有しており、
上記導電層は、上記第1装填片部上に形成された1対の第1パッド、上記第2装填片部上に形成された1対の第2パッド、上記1対の第1パッドに導通する1対の第1電極、上記1対の第2パッドに導通する1対の第2電極、を有しており、
上記第1装填部は、上記第1装填片部および上記1対の第1パッドによって構成されており、
上記第2装填部は、上記第2装填片部および上記1対の第2パッドによって構成されている、請求項1に記載の試験片。
【請求項3】
上記1対の第1電極および上記1対の第2電極の双方に接する試薬層を備える、請求項2に記載の試験片。
【請求項4】
上記第1装填部を上記第1受容部に挿入する第1挿入方向と、上記第2装填部を上記第2受容部に挿入する第2挿入方向とが、一致している、請求項2または3に記載の試験片。
【請求項5】
上記1対の第1パッドは、上記第1および上記第2挿入方向に対して直角である幅方向における位置が異なるように離間配置されており、
上記1対の第2パッドは、上記幅方向における位置が異なるように離間配置されており、
上記1対の第1パッドおよび上記1対の第2パッドは、上記幅方向において一方が他方の内側に配置されている、請求項4に記載の試験片。
【請求項6】
上記第1および第2装填片部のいずれか一方は、他方よりも上記第1(第2)挿入方向において突出しており、かつ上記幅方向寸法が小である、請求項4または5に記載の試験片。
【請求項7】
上記基板の同一部位が、上記第1および上記第2装填片部とされている、請求項4または5に記載の試験片。
【請求項8】
上記1対の第1パッドおよび上記1対の第2パッドは、上記第1(第2)挿入方向における位置が互いに異なる、請求項4ないし7のいずれかに記載の試験片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92386(P2013−92386A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232828(P2011−232828)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)