調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法
【課題】非常時に原子炉格納容器内部調査を実行するに好適な調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、円形断面クローラはその取り付け位置が、長方形状の本体の長手方向と、長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている。
【解決手段】本発明の調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、円形断面クローラはその取り付け位置が、長方形状の本体の長手方向と、長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器外部から原子炉格納容器内部の環境を把握する調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法に係り、特に、原子炉施設の事故発生後に、非定常な内部点検手段が必要となる場合に適用可能な調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉建屋の全体的機能が喪失されるような非常時においては、各種計器自体の故障や多重防護機能の故障により、原子炉格納容器内部の状況を把握する手段がなくなる可能性が生じてくる。このような状況では、原子炉格納容器内部の蒸気/水環境、放射線環境状況がどのようになっているか不明であり、かつこの環境状況を確認する有効な手段が見当たらないのが実情である。
【0003】
特許文献1は、係る原子炉施設の事故時に、原子炉建屋外部より格納容器内雰囲気の性状を把握することが可能なサンプリング設備に関するものである。具体的には、非常時に迅速に設置可能な可搬方式を採用し、設置時に環境への放射性物資の放出を非常に少なくなるよう配慮され、原子炉格納容器内から直接サンプリングした試料から格納容器内雰囲気の性状を把握する。特許文献1の設備の特徴の一つとして、原子炉格納容器内から直接サンプリングするために、原子炉格納容器内から原子炉建屋外へと通じる専用の配管を設置し、事故時は原子炉建屋外部にて専用の配管とサンプリング設備を接続する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−138792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明の効果を得るためには、特徴の一つとして挙げた原子炉格納容器内から原子炉建屋外へと通じる専用の配管は、事故発生前に事前に設置しておくことが必須である。しかし、事前に設置しておくため、専用の配管の設置位置以外の箇所からサンプリングすることは困難である。つまり、非常時に備えて内部環境把握用の配管系統を準備しておくにしても、この配管系統が非常時に確保されているという保証がなく、実際の場面で使用できるか不明と言わざるを得ない。
【0006】
以上のことから本発明においては、非常時に原子炉格納容器内部調査を実行するに好適な調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、円形断面クローラはその取り付け位置が、長方形状の本体の長手方向と、長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている。
【0008】
また、本体上部に設置されたカメラの視野方向に向かって、円形断面クローラの回転方向を定めている。
【0009】
また、配管などの狭隘部内を進行するときには、2組の円形断面クローラはその長手方向を本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、2組の円形断面クローラはその長手方向を本体の直行方向に沿って並列に配置するように、クローラ方向変換手段により位置づける。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の調査装置は、壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内の調査装置であって、貫通部を含む領域の容器外部壁面に設置された遮蔽手段と、遮蔽手段内で貫通部に通じる進入孔を開ける進入孔加工手段と、進入孔から進入し容器内に進行し容器内を移動し調査を実施する撮像手段を搭載した調査ビークルと、調査ビークルからの映像信号を処理する映像処理手段とから構成され、調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、円形断面クローラはその取り付け位置が、長方形状の本体の長手方向と、長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の画像の処理方法は、壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内から得られた画像の処理方法であって、時系列的に取り込んだ映像信号に対して周波数分析を行い、周波数分析後の出力から低周波数成分のみを除去し、低周波数成分除去後の出力画像を予め設定した時間内で平均処理をする重ね合わせ処理する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調査ビークルによれば、進行する場所の制約条件に適した形態をとることで安定に移動することができる。
【0013】
本発明の原子炉格納容器内部調査装置によれば、格納容器外から進入し格納容器内部の状況を調査可能となる。特に、狭隘な配管から進入し、広域かつグレーチング等の上を進入可能な移動が可能となる。
【0014】
また、本発明の画像処理方法によれば、蒸気雰囲気および放射線環境下においても、実体のある蒸気ノイズと、電気的ノイズである放射線ノイズの混合した撮影画像を入力画像とし、明瞭な映像を出力できる。さらに、進入経路上に障壁が存在する場合でも、その障壁を取り除くことが可能になり、格納容器内部調査を実現でき、また、内部の各種物理量を測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ペネトレーション内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図。
【図2】原子炉格納容器内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図。
【図3】調査ビークルにおいて駆動力を与える円形断面クローラ43a,43bの構造を示す図。
【図4】沸騰水型原子炉の原子炉建屋及び原子炉格納容器の簡略な構成を示す図。
【図5】原子炉格納容器内への内部進入経路を示す図。
【図6】ペネトレーションから調査ビークルを原子炉格納容器内に進入させるときの準備段階処理を示す図。
【図7】調査ビークルとペネトレーションの配置関係を示す図。
【図8】原子炉格納容器内のグレーチングに到達したときの調査ビークルの配置を示す図。
【図9】グレーチング上走行する調査ビークルとケーブルウインチが調査ケーブルで接続されている関係を示す図。
【図10】カメラにより撮影された映像信号の処理手順を示す図。
【図11】図10の処理ステップS2の蒸気雑音除去手順を詳細に示す図。
【図12】図10の一連の画像処理により修正される画像の変遷を示した図。
【図13】画像処理を行う機能ブロック図を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を用いて、本発明の一実施形態による調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法の構成及び動作について説明する。
【実施例】
【0017】
図4は、沸騰水型原子炉の原子炉建屋及び原子炉格納容器の概略断面図である。この図で、1は原子炉建屋であり、この中に原子炉格納容器2が収納されている。さらに原子炉格納容器2内に原子炉3が遮蔽板4に覆われて設置されている。7は原子炉建屋床面であり、床面より下の地下部にトーラス室5、サプレッションチャンバ6、原子炉格納容器2の一部が設備されている。
【0018】
図4は、きわめて簡略な沸騰水型原子炉の原子炉建屋及び原子炉格納容器の構成を示しており、実際には原子炉格納容器2の周辺は原子炉建屋1内のコンクリート製の躯体で覆われている。また原子炉格納容器2には、原子炉建屋1と原子炉格納容器2内部を貫通する配管、ペネトレーション8、及び定期検査時に作業員が往来できるようパーソナルエアロック、グレーチング9等が取付けられている。
【0019】
これら取り付けられた要素は、通常運転時に原子炉格納容器2の液体、気体等の内部雰囲気が外部に拡散しないようバウンダリを保ちながら、原子炉格納容器2の外部と内部を通じるシステム系統が張り巡らされている。システム系統の中には、原子炉格納容器2内部の環境状況を把握するための計測系統も含まれており、非常時に機能が喪失されないよう、通常多重防護されている。
【0020】
このように沸騰水型原子炉の原子炉建屋1及び原子炉格納容器2の内部は非常に複雑な構造になっているが、通常の運転状態であれば作業員が原子炉建屋1及び原子炉格納容器2の内部、あるいはトーラス室5の内部に立ち入ることが可能であり、これらの内部環境も安全が確保されたものになっている。
【0021】
然しながら、原子炉建屋の全体的機能が喪失されるような非常時においては、計器自体の故障や多重防護機能の故障により、原子炉格納容器2内部の環境状況を把握する手段がなくなる可能性が生じてくる。このような状況では、原子炉格納容器2内部の蒸気/水環境、放射線環境状況がどのようになっているか不明である。例えば原子炉格納容器2内部は、放射性の高温蒸気に曝され、甚だしくは溶融燃料13が格納容器底部12に存在することも想定される。にも拘らず、この環境状況を確認する有効な手段が見当たらないのが実情である。
【0022】
このため、本発明は、故障などの理由により既設の計測系統が使用不可となり、原子炉格納容器内部の環境状況が不明な状況において、既存の貫通部(ペネトレーション)を利用して自走式の調査ビークルを搬入させ、原子炉格納容器の外部である原子炉建屋から原子炉格納容器内部の環境状況を把握する。ここで使用される調査ビークルは、ペネトレーション内走行に適した形態と、原子炉格納容器内の走行に適した形態とを切り替えることで、内部進入走行および内部走行を確実なものとする。
【0023】
最初に、図5により原子炉格納容器内への内部進入経路について説明する。ここでは、ペネトレーション8を利用して原子炉格納容器2内部へ計測器を搭載した調査ビークルを進入させる。なお、ペネトレーション8は、原子炉建屋1の内部状況に応じて、適宜のものが選択されるが、建屋床面7よりも上部に存在するものを使用する。
【0024】
調査ビークルは、原子炉建屋床7の上部にあるペネトレーション8から進入させ、グレーチング9aの開口部10から、グレーチング9bに落下させる。このため調査ビークルは、ほぼ水平であるが狭隘なペネトレーション8内を自走する。また電源コードなどの紐付とされ、垂れ下がりながらグレーチング9bに達する。グレーチング9bに達したのちは、グレーチング9b上を自走し、遮蔽板4の外側を周回して、遮蔽板4の開口部12から遮蔽板4の内部に進入する。その後、原子炉格納容器底部11に投下され、溶融燃料13などに接近してこれを調査する。
【0025】
以上のことから、調査ビークルは狭隘なペネトレーション8内を自走するに適した構成と、凹凸のあるグレーチング上を安定に走行するに適した構成とを備えるのが望ましい。
【0026】
図6は、ペネトレーション8を利用して調査ビークルを原子炉格納容器内に進入させるときの準備段階設備、あるいは準備段階処理を示している。通常の状態においては、原子炉格納容器2を貫通するようにペネトレーション8が設置されている。図6において、これら以外の装置や器具は調査ビークルを原子炉格納容器内に進入させるための準備として設置され、使用される。
【0027】
準備段階処理では、まずペネトレーション8外部に遮蔽箱30を設置する。遮蔽箱30の内部にはケーブルウインチ31を設置している。ケーブルウインチ31が巻き取り、送り出しを制御する調査ケーブル33の先端には後で説明する調査ビークルが接続されている。また、ケーブルウインチ31には制御ケーブル32が接続され、遮蔽箱30の外部からケーブルウインチ31を制御することができる。
【0028】
遮蔽箱30を設置したあと、調査ビークルに穿孔治具を取り付け、ペネトレーション8に開放部34を作る。なお、ペネトレーション8に開放部34を作るための手段については、調査ビークルの穿孔治具による手法以外の手法を採用してもよい。ケーブルウインチ31にはアタッチメント変更アームが設けられており、調査ビークルに穿孔治具を取り付け、取り外しを行う。調査ビークルは、調査ケーブル33の先端に接続されて開放部34からペネトレーション8内に挿入される。以後、調査ビークルは、ペネトレーション8内を自走進行していく。
【0029】
本発明の調査ビークルは、ペネトレーション内走行に適した形態と、原子炉格納容器内の走行に適した形態とを備え、適宜形態を変更する。図1は、ペネトレーション内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図である。
【0030】
図1の上部には調査ビークルの上面図、下部には調査ビークルの側面図を示している。長方形の板状に形成された調査ビークル本体40の上部には、その長手方向Xに照明付きカメラ42と、制御基板41を搭載している。また、調査ビークル本体40の下部には、クローラ方向変換軸44を介して2つの円形断面クローラ43a,43bが備えられている。この場合に、クローラ方向変換軸44は、クローラ方向変換モータ45により、円形断面クローラ43a,43bが長手方向Xを向くように位置づけられている。円形断面クローラ43a,43bは、この場合、長手方向Xに沿ってW1のように回転する。なお、カメラ42の視野は進行方向のVである。
【0031】
この結果、ペネトレーション内走行に適した調査ビークルは、全体が細長い形状をしており、長手方向Xの先端(カメラ42側)からペネトレーション内に入り、円形断面クローラ43a,43bに対して長手方向Xの回転方向W1を与えることでペネトレーション内を自走し原子炉格納容器内に向かって進行することができる。なお調査ビークルの後端側には、調査ケーブル33が接続されており、これを介して自走走行用の電力、さらには制御信号が供給される。また調査ビークルがペネトレーション8から原子炉格納容器2内に進入したときには、調査ケーブル33により吊り下げ状態となり、垂れ下がりながらケーブルウインチ31により緩やかにグレーチング9bに達する。
【0032】
図2は、原子炉格納容器内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図である。図2の上部には調査ビークルの上面図、下部には調査ビークルの側面図を示している。長方形の板状に形成された調査ビークル本体40は、グレーチング9bに達すると図2の形態となる。クローラ方向変換軸44がクローラ方向変換モータ45により、円形断面クローラ43a,43bが長手方向Xに対する直行方向Yを向くように位置づけられている。円形断面クローラ43a,43bは、この場合、長手方向XのW2のように回転する。なお、カメラ42の視野は進行方向のVである。
【0033】
この結果、原子炉格納容器内走行に適した調査ビークルは、全体が四角い形状、カメラ方向に幅の広い形状をしており、凹凸のあるグレーチング平面上を進行するのに安定した形状となる。なお調査ビークルは、この形態のままで回転方向W1を与えることも可能であり、例えば進行方向(カメラ視認方向V)に障害物を確認したときに、回転方向W1を与え横方向に回避操作することができる。
【0034】
図3は、調査ビークルに駆動力を与える円形断面クローラ43a,43bの構造を示す図である。同図において、上が上面図、中央が下面図、左下が平面図、右下が側面図を示している。この図のように円形断面クローラ43a,43bは、クローラケースに囲まれて履帯状ローラ駆動部62a,62bを備え、履帯状ローラ駆動部62a,62bの長手方向Xが長軸回転軸61により支えられている。また、2つの履帯状ローラ駆動部62a,62bは、長手方向のW1方向に回転するとともに、長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。これにより全方向駆動が可能になる。
【0035】
図7は、調査ビークル本体40とペネトレーション8の配置関係を示す図であり、配管方向Zに沿って長方形状の調査ビークル40が配置される。このためペネトレーション8内走行が容易な形状である。この形状での調査ビークル本体40は、例えば幅が20cm、長さが50cm程度にすることが可能であり、ペネトレーションに進入するに十分に小さな径の装置とすることができる。
【0036】
図8は原子炉格納容器内のグレーチング9bに到達したときの調査ビークル40の配置を示す図である。グレーチング9bの網目上に長方形状の調査ビークル本体40が到達したときに、2つの円形断面クローラ43a,43bを直行方向Yに方向変換する。これにより、四方に足を張った形状となり、網目状のグレーチング9bでの走行が安定する。この形状での調査ビークル本体40は、例えば幅が50cm、長さが50cm程度にすることが可能であり、グレーチング9bのメッシュ長10cm程度に対してこの上を走行するに十分に大きな縦横幅を有しているので凹凸のあるグレーチング上走行が安定する。
【0037】
図9はグレーチング上走行する調査ビークル本体40とケーブルウインチ31が調査ケーブル33で接続されている関係を示している。以上のように、本発明の調査ビークルは走行条件により形態を変更するが、円形断面クローラ43a,43bの回転方向も変更することにより基本的にはカメラ視野方向に向かって進行することができる。
【0038】
以上説明した調査ビークル本体40により、原子炉格納容器内がカメラ42により撮影され、調査ケーブル33、ケーブルウインチ31、制御ケーブル32を介して外部に取り出される。この映像信号は、図10のように処理される。
【0039】
図12は、図10の一連の画像処理により修正される画像の変遷を示した図である。まず図10の処理ステップS1の処理開始時に得られた生画像情報は、図12のAに示すようにぼやけており、かつ多くの点状ノイズを含んでいる。ぼやけは原子炉格納容器内の高温蒸気によるものであり、点状ノイズは放射線源からの放射線ノイズである。図10の次の処理ステップS2では、高温蒸気によるぼやけを解消(蒸気雑音除去)する。
【0040】
図11は、処理ステップS2の蒸気雑音除去手順を詳細に示している。処理ステップS21で画像取得し、処理ステップS22で2次元周波数分析を行い、処理ステップS23で低周波数成分を除去し、処理ステップS24で処理画像を保存する。これらの一連の処理は、すでに知られたフーリエ変換技術を利用した処理であり、ここでは簡単に説明しておく。図12のBが蒸気雑音除去処理後画像であり、ぼやけが解消されているが、未だ点状ノイズが残っている。
【0041】
図10に戻り、次の処理ステップS3では、図11の処理を完了した処理済み画像を取得する。処理ステップS4では点状ノイズ除去処理を行う。点状ノイズは、画像1枚ごとに相違する箇所に発生するという特徴があるので、ここでは時系列的な複数画面の重ね合わせ処理によりノイズを除去する。この処理は、時間平均的な画像処理に相当する。処理ステップS5では最終的に得られた画像をモニタ画面などに表示する。図12の画面Cが最終的に得られた画面であり、ぼやけも点状ノイズも除去されている。
【0042】
上記一連の画像処理は、蒸気雑音除去処理に続いて点状ノイズ除去処理を行うものであり、この順序で実行する事が鮮明画像を得る上で意味がある。因みに逆の順序での処理を実行した場合でも、蒸気雑音および点状ノイズを除去することは可能であるが、点状ノイズ除去処理、蒸気雑音処理の順で実行すると、初めの処理で蒸気雑音の高周波成分も低減され、次の蒸気雑音処理の際にフレーム間での相関の度合いも低下するため、蒸気雑音処理の効果が低下する。
【0043】
図13は画像処理を行う機能ブロック図を示した図である。計算機70(映像処理手段)は、取得した画像から2次元周波数分析を行なう2次元周波数分析部71、 低周波数成分を除去する低周波数成分除去部72、画像を記憶する画像記憶部73、 平均化処理を行う平均化処理部74を有する。また、これらの処理結果を示す表示装置75から成る。
【符号の説明】
【0044】
1:原子炉建屋
2:原子炉格納容器
3:原子炉
4:遮蔽板
5:トーラス室
6:サプレッションチャンバ
7:原子炉建屋床面
8:ペネトレーション
9:グレーチング
12:格納容器底部
13:溶融燃料
30:遮蔽箱
31:ケーブルウインチ
32:制御ケーブル
33:調査ケーブル
34:開放部
40:調査ビークル本体
41:制御基板
42:照明付きカメラ
43a,43b:円形断面クローラ
44:クローラ方向変換軸
45:クローラ方向変換モータ
62a,62b:履帯状ローラ駆動部
70:計算機
71:2次元周波数分析部
72:低周波数成分除去部
73:画像記憶部
74:平均化処理部
75:表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器外部から原子炉格納容器内部の環境を把握する調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法に係り、特に、原子炉施設の事故発生後に、非定常な内部点検手段が必要となる場合に適用可能な調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉建屋の全体的機能が喪失されるような非常時においては、各種計器自体の故障や多重防護機能の故障により、原子炉格納容器内部の状況を把握する手段がなくなる可能性が生じてくる。このような状況では、原子炉格納容器内部の蒸気/水環境、放射線環境状況がどのようになっているか不明であり、かつこの環境状況を確認する有効な手段が見当たらないのが実情である。
【0003】
特許文献1は、係る原子炉施設の事故時に、原子炉建屋外部より格納容器内雰囲気の性状を把握することが可能なサンプリング設備に関するものである。具体的には、非常時に迅速に設置可能な可搬方式を採用し、設置時に環境への放射性物資の放出を非常に少なくなるよう配慮され、原子炉格納容器内から直接サンプリングした試料から格納容器内雰囲気の性状を把握する。特許文献1の設備の特徴の一つとして、原子炉格納容器内から直接サンプリングするために、原子炉格納容器内から原子炉建屋外へと通じる専用の配管を設置し、事故時は原子炉建屋外部にて専用の配管とサンプリング設備を接続する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−138792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明の効果を得るためには、特徴の一つとして挙げた原子炉格納容器内から原子炉建屋外へと通じる専用の配管は、事故発生前に事前に設置しておくことが必須である。しかし、事前に設置しておくため、専用の配管の設置位置以外の箇所からサンプリングすることは困難である。つまり、非常時に備えて内部環境把握用の配管系統を準備しておくにしても、この配管系統が非常時に確保されているという保証がなく、実際の場面で使用できるか不明と言わざるを得ない。
【0006】
以上のことから本発明においては、非常時に原子炉格納容器内部調査を実行するに好適な調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、円形断面クローラはその取り付け位置が、長方形状の本体の長手方向と、長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている。
【0008】
また、本体上部に設置されたカメラの視野方向に向かって、円形断面クローラの回転方向を定めている。
【0009】
また、配管などの狭隘部内を進行するときには、2組の円形断面クローラはその長手方向を本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、2組の円形断面クローラはその長手方向を本体の直行方向に沿って並列に配置するように、クローラ方向変換手段により位置づける。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の調査装置は、壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内の調査装置であって、貫通部を含む領域の容器外部壁面に設置された遮蔽手段と、遮蔽手段内で貫通部に通じる進入孔を開ける進入孔加工手段と、進入孔から進入し容器内に進行し容器内を移動し調査を実施する撮像手段を搭載した調査ビークルと、調査ビークルからの映像信号を処理する映像処理手段とから構成され、調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、円形断面クローラはその取り付け位置が、長方形状の本体の長手方向と、長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えている。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の画像の処理方法は、壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内から得られた画像の処理方法であって、時系列的に取り込んだ映像信号に対して周波数分析を行い、周波数分析後の出力から低周波数成分のみを除去し、低周波数成分除去後の出力画像を予め設定した時間内で平均処理をする重ね合わせ処理する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調査ビークルによれば、進行する場所の制約条件に適した形態をとることで安定に移動することができる。
【0013】
本発明の原子炉格納容器内部調査装置によれば、格納容器外から進入し格納容器内部の状況を調査可能となる。特に、狭隘な配管から進入し、広域かつグレーチング等の上を進入可能な移動が可能となる。
【0014】
また、本発明の画像処理方法によれば、蒸気雰囲気および放射線環境下においても、実体のある蒸気ノイズと、電気的ノイズである放射線ノイズの混合した撮影画像を入力画像とし、明瞭な映像を出力できる。さらに、進入経路上に障壁が存在する場合でも、その障壁を取り除くことが可能になり、格納容器内部調査を実現でき、また、内部の各種物理量を測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ペネトレーション内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図。
【図2】原子炉格納容器内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図。
【図3】調査ビークルにおいて駆動力を与える円形断面クローラ43a,43bの構造を示す図。
【図4】沸騰水型原子炉の原子炉建屋及び原子炉格納容器の簡略な構成を示す図。
【図5】原子炉格納容器内への内部進入経路を示す図。
【図6】ペネトレーションから調査ビークルを原子炉格納容器内に進入させるときの準備段階処理を示す図。
【図7】調査ビークルとペネトレーションの配置関係を示す図。
【図8】原子炉格納容器内のグレーチングに到達したときの調査ビークルの配置を示す図。
【図9】グレーチング上走行する調査ビークルとケーブルウインチが調査ケーブルで接続されている関係を示す図。
【図10】カメラにより撮影された映像信号の処理手順を示す図。
【図11】図10の処理ステップS2の蒸気雑音除去手順を詳細に示す図。
【図12】図10の一連の画像処理により修正される画像の変遷を示した図。
【図13】画像処理を行う機能ブロック図を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を用いて、本発明の一実施形態による調査ビークル、容器内の調査装置及び画像の処理方法の構成及び動作について説明する。
【実施例】
【0017】
図4は、沸騰水型原子炉の原子炉建屋及び原子炉格納容器の概略断面図である。この図で、1は原子炉建屋であり、この中に原子炉格納容器2が収納されている。さらに原子炉格納容器2内に原子炉3が遮蔽板4に覆われて設置されている。7は原子炉建屋床面であり、床面より下の地下部にトーラス室5、サプレッションチャンバ6、原子炉格納容器2の一部が設備されている。
【0018】
図4は、きわめて簡略な沸騰水型原子炉の原子炉建屋及び原子炉格納容器の構成を示しており、実際には原子炉格納容器2の周辺は原子炉建屋1内のコンクリート製の躯体で覆われている。また原子炉格納容器2には、原子炉建屋1と原子炉格納容器2内部を貫通する配管、ペネトレーション8、及び定期検査時に作業員が往来できるようパーソナルエアロック、グレーチング9等が取付けられている。
【0019】
これら取り付けられた要素は、通常運転時に原子炉格納容器2の液体、気体等の内部雰囲気が外部に拡散しないようバウンダリを保ちながら、原子炉格納容器2の外部と内部を通じるシステム系統が張り巡らされている。システム系統の中には、原子炉格納容器2内部の環境状況を把握するための計測系統も含まれており、非常時に機能が喪失されないよう、通常多重防護されている。
【0020】
このように沸騰水型原子炉の原子炉建屋1及び原子炉格納容器2の内部は非常に複雑な構造になっているが、通常の運転状態であれば作業員が原子炉建屋1及び原子炉格納容器2の内部、あるいはトーラス室5の内部に立ち入ることが可能であり、これらの内部環境も安全が確保されたものになっている。
【0021】
然しながら、原子炉建屋の全体的機能が喪失されるような非常時においては、計器自体の故障や多重防護機能の故障により、原子炉格納容器2内部の環境状況を把握する手段がなくなる可能性が生じてくる。このような状況では、原子炉格納容器2内部の蒸気/水環境、放射線環境状況がどのようになっているか不明である。例えば原子炉格納容器2内部は、放射性の高温蒸気に曝され、甚だしくは溶融燃料13が格納容器底部12に存在することも想定される。にも拘らず、この環境状況を確認する有効な手段が見当たらないのが実情である。
【0022】
このため、本発明は、故障などの理由により既設の計測系統が使用不可となり、原子炉格納容器内部の環境状況が不明な状況において、既存の貫通部(ペネトレーション)を利用して自走式の調査ビークルを搬入させ、原子炉格納容器の外部である原子炉建屋から原子炉格納容器内部の環境状況を把握する。ここで使用される調査ビークルは、ペネトレーション内走行に適した形態と、原子炉格納容器内の走行に適した形態とを切り替えることで、内部進入走行および内部走行を確実なものとする。
【0023】
最初に、図5により原子炉格納容器内への内部進入経路について説明する。ここでは、ペネトレーション8を利用して原子炉格納容器2内部へ計測器を搭載した調査ビークルを進入させる。なお、ペネトレーション8は、原子炉建屋1の内部状況に応じて、適宜のものが選択されるが、建屋床面7よりも上部に存在するものを使用する。
【0024】
調査ビークルは、原子炉建屋床7の上部にあるペネトレーション8から進入させ、グレーチング9aの開口部10から、グレーチング9bに落下させる。このため調査ビークルは、ほぼ水平であるが狭隘なペネトレーション8内を自走する。また電源コードなどの紐付とされ、垂れ下がりながらグレーチング9bに達する。グレーチング9bに達したのちは、グレーチング9b上を自走し、遮蔽板4の外側を周回して、遮蔽板4の開口部12から遮蔽板4の内部に進入する。その後、原子炉格納容器底部11に投下され、溶融燃料13などに接近してこれを調査する。
【0025】
以上のことから、調査ビークルは狭隘なペネトレーション8内を自走するに適した構成と、凹凸のあるグレーチング上を安定に走行するに適した構成とを備えるのが望ましい。
【0026】
図6は、ペネトレーション8を利用して調査ビークルを原子炉格納容器内に進入させるときの準備段階設備、あるいは準備段階処理を示している。通常の状態においては、原子炉格納容器2を貫通するようにペネトレーション8が設置されている。図6において、これら以外の装置や器具は調査ビークルを原子炉格納容器内に進入させるための準備として設置され、使用される。
【0027】
準備段階処理では、まずペネトレーション8外部に遮蔽箱30を設置する。遮蔽箱30の内部にはケーブルウインチ31を設置している。ケーブルウインチ31が巻き取り、送り出しを制御する調査ケーブル33の先端には後で説明する調査ビークルが接続されている。また、ケーブルウインチ31には制御ケーブル32が接続され、遮蔽箱30の外部からケーブルウインチ31を制御することができる。
【0028】
遮蔽箱30を設置したあと、調査ビークルに穿孔治具を取り付け、ペネトレーション8に開放部34を作る。なお、ペネトレーション8に開放部34を作るための手段については、調査ビークルの穿孔治具による手法以外の手法を採用してもよい。ケーブルウインチ31にはアタッチメント変更アームが設けられており、調査ビークルに穿孔治具を取り付け、取り外しを行う。調査ビークルは、調査ケーブル33の先端に接続されて開放部34からペネトレーション8内に挿入される。以後、調査ビークルは、ペネトレーション8内を自走進行していく。
【0029】
本発明の調査ビークルは、ペネトレーション内走行に適した形態と、原子炉格納容器内の走行に適した形態とを備え、適宜形態を変更する。図1は、ペネトレーション内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図である。
【0030】
図1の上部には調査ビークルの上面図、下部には調査ビークルの側面図を示している。長方形の板状に形成された調査ビークル本体40の上部には、その長手方向Xに照明付きカメラ42と、制御基板41を搭載している。また、調査ビークル本体40の下部には、クローラ方向変換軸44を介して2つの円形断面クローラ43a,43bが備えられている。この場合に、クローラ方向変換軸44は、クローラ方向変換モータ45により、円形断面クローラ43a,43bが長手方向Xを向くように位置づけられている。円形断面クローラ43a,43bは、この場合、長手方向Xに沿ってW1のように回転する。なお、カメラ42の視野は進行方向のVである。
【0031】
この結果、ペネトレーション内走行に適した調査ビークルは、全体が細長い形状をしており、長手方向Xの先端(カメラ42側)からペネトレーション内に入り、円形断面クローラ43a,43bに対して長手方向Xの回転方向W1を与えることでペネトレーション内を自走し原子炉格納容器内に向かって進行することができる。なお調査ビークルの後端側には、調査ケーブル33が接続されており、これを介して自走走行用の電力、さらには制御信号が供給される。また調査ビークルがペネトレーション8から原子炉格納容器2内に進入したときには、調査ケーブル33により吊り下げ状態となり、垂れ下がりながらケーブルウインチ31により緩やかにグレーチング9bに達する。
【0032】
図2は、原子炉格納容器内走行に適した形態の調査ビークル構造を示す図である。図2の上部には調査ビークルの上面図、下部には調査ビークルの側面図を示している。長方形の板状に形成された調査ビークル本体40は、グレーチング9bに達すると図2の形態となる。クローラ方向変換軸44がクローラ方向変換モータ45により、円形断面クローラ43a,43bが長手方向Xに対する直行方向Yを向くように位置づけられている。円形断面クローラ43a,43bは、この場合、長手方向XのW2のように回転する。なお、カメラ42の視野は進行方向のVである。
【0033】
この結果、原子炉格納容器内走行に適した調査ビークルは、全体が四角い形状、カメラ方向に幅の広い形状をしており、凹凸のあるグレーチング平面上を進行するのに安定した形状となる。なお調査ビークルは、この形態のままで回転方向W1を与えることも可能であり、例えば進行方向(カメラ視認方向V)に障害物を確認したときに、回転方向W1を与え横方向に回避操作することができる。
【0034】
図3は、調査ビークルに駆動力を与える円形断面クローラ43a,43bの構造を示す図である。同図において、上が上面図、中央が下面図、左下が平面図、右下が側面図を示している。この図のように円形断面クローラ43a,43bは、クローラケースに囲まれて履帯状ローラ駆動部62a,62bを備え、履帯状ローラ駆動部62a,62bの長手方向Xが長軸回転軸61により支えられている。また、2つの履帯状ローラ駆動部62a,62bは、長手方向のW1方向に回転するとともに、長手方向のW1方向と直行するY方向W2に回転することもできる。これにより全方向駆動が可能になる。
【0035】
図7は、調査ビークル本体40とペネトレーション8の配置関係を示す図であり、配管方向Zに沿って長方形状の調査ビークル40が配置される。このためペネトレーション8内走行が容易な形状である。この形状での調査ビークル本体40は、例えば幅が20cm、長さが50cm程度にすることが可能であり、ペネトレーションに進入するに十分に小さな径の装置とすることができる。
【0036】
図8は原子炉格納容器内のグレーチング9bに到達したときの調査ビークル40の配置を示す図である。グレーチング9bの網目上に長方形状の調査ビークル本体40が到達したときに、2つの円形断面クローラ43a,43bを直行方向Yに方向変換する。これにより、四方に足を張った形状となり、網目状のグレーチング9bでの走行が安定する。この形状での調査ビークル本体40は、例えば幅が50cm、長さが50cm程度にすることが可能であり、グレーチング9bのメッシュ長10cm程度に対してこの上を走行するに十分に大きな縦横幅を有しているので凹凸のあるグレーチング上走行が安定する。
【0037】
図9はグレーチング上走行する調査ビークル本体40とケーブルウインチ31が調査ケーブル33で接続されている関係を示している。以上のように、本発明の調査ビークルは走行条件により形態を変更するが、円形断面クローラ43a,43bの回転方向も変更することにより基本的にはカメラ視野方向に向かって進行することができる。
【0038】
以上説明した調査ビークル本体40により、原子炉格納容器内がカメラ42により撮影され、調査ケーブル33、ケーブルウインチ31、制御ケーブル32を介して外部に取り出される。この映像信号は、図10のように処理される。
【0039】
図12は、図10の一連の画像処理により修正される画像の変遷を示した図である。まず図10の処理ステップS1の処理開始時に得られた生画像情報は、図12のAに示すようにぼやけており、かつ多くの点状ノイズを含んでいる。ぼやけは原子炉格納容器内の高温蒸気によるものであり、点状ノイズは放射線源からの放射線ノイズである。図10の次の処理ステップS2では、高温蒸気によるぼやけを解消(蒸気雑音除去)する。
【0040】
図11は、処理ステップS2の蒸気雑音除去手順を詳細に示している。処理ステップS21で画像取得し、処理ステップS22で2次元周波数分析を行い、処理ステップS23で低周波数成分を除去し、処理ステップS24で処理画像を保存する。これらの一連の処理は、すでに知られたフーリエ変換技術を利用した処理であり、ここでは簡単に説明しておく。図12のBが蒸気雑音除去処理後画像であり、ぼやけが解消されているが、未だ点状ノイズが残っている。
【0041】
図10に戻り、次の処理ステップS3では、図11の処理を完了した処理済み画像を取得する。処理ステップS4では点状ノイズ除去処理を行う。点状ノイズは、画像1枚ごとに相違する箇所に発生するという特徴があるので、ここでは時系列的な複数画面の重ね合わせ処理によりノイズを除去する。この処理は、時間平均的な画像処理に相当する。処理ステップS5では最終的に得られた画像をモニタ画面などに表示する。図12の画面Cが最終的に得られた画面であり、ぼやけも点状ノイズも除去されている。
【0042】
上記一連の画像処理は、蒸気雑音除去処理に続いて点状ノイズ除去処理を行うものであり、この順序で実行する事が鮮明画像を得る上で意味がある。因みに逆の順序での処理を実行した場合でも、蒸気雑音および点状ノイズを除去することは可能であるが、点状ノイズ除去処理、蒸気雑音処理の順で実行すると、初めの処理で蒸気雑音の高周波成分も低減され、次の蒸気雑音処理の際にフレーム間での相関の度合いも低下するため、蒸気雑音処理の効果が低下する。
【0043】
図13は画像処理を行う機能ブロック図を示した図である。計算機70(映像処理手段)は、取得した画像から2次元周波数分析を行なう2次元周波数分析部71、 低周波数成分を除去する低周波数成分除去部72、画像を記憶する画像記憶部73、 平均化処理を行う平均化処理部74を有する。また、これらの処理結果を示す表示装置75から成る。
【符号の説明】
【0044】
1:原子炉建屋
2:原子炉格納容器
3:原子炉
4:遮蔽板
5:トーラス室
6:サプレッションチャンバ
7:原子炉建屋床面
8:ペネトレーション
9:グレーチング
12:格納容器底部
13:溶融燃料
30:遮蔽箱
31:ケーブルウインチ
32:制御ケーブル
33:調査ケーブル
34:開放部
40:調査ビークル本体
41:制御基板
42:照明付きカメラ
43a,43b:円形断面クローラ
44:クローラ方向変換軸
45:クローラ方向変換モータ
62a,62b:履帯状ローラ駆動部
70:計算機
71:2次元周波数分析部
72:低周波数成分除去部
73:画像記憶部
74:平均化処理部
75:表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、前記本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、前記円形断面クローラはその取り付け位置が、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えていることを特徴とする調査ビークル。
【請求項2】
請求項1に記載の調査ビークルにおいて、
前記本体上部に設置されたカメラの視野方向に向かって、前記円形断面クローラの回転方向を定めることを特徴とする調査ビークル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の調査ビークルにおいて、
配管などの狭隘部内を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の直行方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけることを特徴とする調査ビークル。
【請求項4】
壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内の調査装置において、
前記貫通部を含む領域の容器外部壁面に設置された遮蔽手段と、該遮蔽手段内で前記貫通部に通じる進入孔を開ける進入孔加工手段と、該進入孔から進入し前記容器内に進行し容器内を移動し調査を実施する撮像手段を搭載した調査ビークルと、該調査ビークルからの映像信号を処理する映像処理手段とから構成され、
前記調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、前記本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、前記円形断面クローラはその取り付け位置が、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えていることを特徴とする容器内の調査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の容器内の調査装置において、
前記調査ビークルの本体上部に設置されたカメラの視野方向に向かって、前記円形断面クローラの回転方向を定めることを特徴とする容器内の調査装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の容器内の調査装置において、
前記調査ビークルは、前記貫通部内を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、前記内部に床面を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の直行方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけることを特徴とする容器内の調査装置。
【請求項7】
壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内から得られた画像の処理方法において、時系列的に取り込んだ映像信号に対して周波数分析を行い、該周波数分析後の出力から低周波数成分のみを除去し、該低周波数成分除去後の出力画像を予め設定した時間内で平均処理をする重ね合わせ処理することを特徴とする画像の処理方法。
【請求項1】
長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、前記本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、前記円形断面クローラはその取り付け位置が、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えていることを特徴とする調査ビークル。
【請求項2】
請求項1に記載の調査ビークルにおいて、
前記本体上部に設置されたカメラの視野方向に向かって、前記円形断面クローラの回転方向を定めることを特徴とする調査ビークル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の調査ビークルにおいて、
配管などの狭隘部内を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、平面上を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の直行方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけることを特徴とする調査ビークル。
【請求項4】
壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内の調査装置において、
前記貫通部を含む領域の容器外部壁面に設置された遮蔽手段と、該遮蔽手段内で前記貫通部に通じる進入孔を開ける進入孔加工手段と、該進入孔から進入し前記容器内に進行し容器内を移動し調査を実施する撮像手段を搭載した調査ビークルと、該調査ビークルからの映像信号を処理する映像処理手段とから構成され、
前記調査ビークルは、長方形状の本体上部の長手方向にカメラと制御基板を搭載し、前記本体下部に2方向に回転可能な円形断面クローラを2組取り付けており、前記円形断面クローラはその取り付け位置が、前記長方形状の本体の長手方向と、前記長方形状の本体の直行方向とに切替るためのクローラ方向変換手段を備えていることを特徴とする容器内の調査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の容器内の調査装置において、
前記調査ビークルの本体上部に設置されたカメラの視野方向に向かって、前記円形断面クローラの回転方向を定めることを特徴とする容器内の調査装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の容器内の調査装置において、
前記調査ビークルは、前記貫通部内を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の長手方向に沿って直列に配置し、前記内部に床面を進行するときには、前記2組の円形断面クローラはその長手方向を前記本体の直行方向に沿って並列に配置するように、前記クローラ方向変換手段により位置づけることを特徴とする容器内の調査装置。
【請求項7】
壁を貫通して貫通部が設置され、内部に床面を有する容器内から得られた画像の処理方法において、時系列的に取り込んだ映像信号に対して周波数分析を行い、該周波数分析後の出力から低周波数成分のみを除去し、該低周波数成分除去後の出力画像を予め設定した時間内で平均処理をする重ね合わせ処理することを特徴とする画像の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−113597(P2013−113597A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257179(P2011−257179)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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