説明

販売システム

【課題】不慣れな顧客であっても戸惑うことなく電子決済ができる販売システムを提供する。
【解決手段】販売システム100では、現金決済と電子決済とが可能であり、現金を載置するための現金受台5と、ICカードとの間で電波通信を行うアンテナ部62とが一体化され、受渡ユニット7を形成している。これにより顧客は、売買取引の決済に現金を用いる場合とICカードを用いる場合といずれであっても、受渡ユニット7に対して現金あるいはICカードを載置すればよい。このため、ICカードの取扱いに不慣れな顧客であっても、戸惑うことなくICカードを利用した電子決済を行うことができる。また、アンテナ部62を配置するためのスペースを現金受台5とは別に独立して確保する必要がなくなり、販売者と顧客との間の顧客が使いやすい位置にアンテナ部62を配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品の売買取引の際に、当該売買取引の決済に係るデータ処理を行う販売システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、店舗における商品の売買取引においては、現金を用いた現金決済の他、電子マネー機能を有する非接触型のICカードを利用した電子決済が一般的になりつつある。
【0003】
このような電子決済が可能な販売システムにおいては、ICカードに記憶された金額データの読み取り、あるいは、書き替えのためのICカード専用のリーダライタが設けられる。リーダライタは、そのアンテナ部を介した微弱な電波を利用した通信により、非接触でICカードのデータの読取/書込が可能である。現時点で一般的となっている規格では、混信を避けるために、リーダライタのアンテナ部がICカードと通信可能な距離は約10cm程度に設定されている。
【0004】
このため、商品の売買取引においてその電子決済を所望する顧客は、ICカードの金額データをリーダライタに読み取らせるために、リーダライタのアンテナ部に対してICカードをかざすようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−5034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、スーパーマーケットの食品レジなどに採用される販売システムにおいても、上記のようなICカードを用いた電子決済を可能とすることが要望されている。
【0007】
一般に、スーパーマーケットの販売システムでは、販売者と顧客との間において、商品を載置する長手の商品カウンタが顧客の進路に沿って配置され、この商品カウンタの上部の空間の全体にわたって商品が移動される。このため、対面する販売者と顧客との間に余裕となるスペースが非常に少ないという事情がある。
【0008】
一方で、リーダライタのアンテナ部は、販売者と顧客との間で、かつ、顧客が使いやすい位置に配置すべきである。しかしながら、スーパーマーケットの販売システムでは、上記の事情によりアンテナ部を配置するための適切なスペースが確保できず、アンテナ部を比較的不便な位置に配置せざるを得なくなる。その結果、顧客にとってはICカードをかざすべきアンテナ部の位置が分かりずらくなり、慣れた顧客でないとスムーズに電子決済を行うことができないことになる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、顧客が使いやすい位置にアンテナ部を配置できる販売システムを提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、本発明は、不慣れな顧客であっても戸惑うことなく電子決済ができる販売システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、商品の売買取引の際に、当該売買取引の決済に係るデータ処理である決済処理を行うデータ処理手段を含む販売システムであって、顧客から預かる決済用の現金を載置するための現金受台と、近傍に存在する電磁的な記録素子を有する可搬性のデータキャリアとの間で電波通信を行うアンテナ部と、を備え、前記現金受台と前記アンテナ部とは一体化されて隣接配置される。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の販売システムにおいて、前記データキャリアは、売買取引の決済に使用可能な金額データを記憶可能であり、前記データ処理手段は、前記アンテナ部を介して取得される前記データキャリアの金額データに基づいて前記決済処理が可能である。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の販売システムにおいて、前記現金受台と前記アンテナ部とを含むユニットは、前記データ処理手段とは分離構成される。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の販売システムにおいて、前記売買取引の際に販売者と顧客とに挟まれ、前記売買取引に係る商品を載置するため商品カウンタ、をさらに備え、前記現金受台と前記アンテナ部とを含むユニットは、前記商品カウンタの上部空間において、前記商品が載置される空間よりも上部に配置される。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の販売システムにおいて、前記アンテナ部は、当該アンテナ部のうちの前記電波通信の際に前記データキャリアと対向すべき通信面が、前記現金受台の底面と上下方向に重なる位置に配置される。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の販売システムにおいて、前記アンテナ部は、当該アンテナ部のうちの前記電波通信の際に前記データキャリアと対向すべき通信面が、前記現金受台の底面から独立して露出する位置に配置される。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の販売システムにおいて、前記アンテナ部のうちの前記電波通信の際に前記データキャリアと対向すべき通信面が前記現金受台の底面と上下方向に重なる第1位置と、前記通信面が前記底面から独立して露出する第2位置との双方に、前記アンテナ部を配置可能な可動手段、をさらに備えている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1ないし7の発明によれば、現金受台とアンテナ部とを一体化することで、アンテナ部を配置するスペースを独立して確保する必要がなくなり、顧客が使いやすい位置にアンテナ部を配置できる。
【0019】
また、特に請求項2の発明によれば、顧客は、売買取引の決済に現金を用いる場合とデータキャリアを用いる場合といずれであっても、現金受台とアンテナ部とを含むユニットに対して、現金あるいはデータキャリアを置けばよい。このため、データキャリアの取扱いに不慣れな顧客であっても、戸惑うことなく売買取引の決済ができる。
【0020】
また、特に請求項3の発明によれば、現金受台とアンテナ部とを含むユニットは、データ処理手段とは分離構成されるため、配置の自由度が高くなる。このため、データ処理手段の位置にかかわらず顧客が使いやすい位置に当該ユニットを配置できる。
【0021】
また、特に請求項4の発明によれば、商品カウンタが存在すると販売者と顧客との間のスペースに余裕がなくなるが、この状況でも現金受台とアンテナ部とを含むユニットを使いやすい位置に配置できる。
【0022】
また、特に請求項5の発明によれば、現金とデータキャリアとを同一位置に置くことができる。
【0023】
また、特に請求項6の発明によれば、現金とデータキャリアとを併用できる。
【0024】
また、特に請求項7の発明によれば、必要に応じて、現金とデータキャリアとを併用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
<1.外観構成>
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る販売システム100の外観構成を示す図である。以下の説明においては、方向及び向きを示す際に、適宜、図中に示す3次元のXYZ直交座標を用いる。このXYZ軸は販売システム100に対して相対的に固定される。ここで、X軸及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向(+Z側が上側)である。また、説明の便宜上、X軸方向を奥行方向(+X側が正面側、−X側が背面側)とし、Y軸方向を左右方向(正面側からみたとき、+Y側が右側、−Y側が左側)とする。したがって、図2は、販売システム100のを正面側(+X側)から見た場合における正面図に相当する。
【0027】
これらの図に示す販売システム100は、スーパーマーケットの食品レジなどに採用されるものであり、商品の売価の合計金額の演算、及び、商品の売買取引の決済(以下、併せて「精算処理」という。)に用いられる。
【0028】
販売システム100は主として、精算処理に係るデータ処理を行うPOSターミナル(以下、単に「ターミナル」という。)1と、各商品に付されたバーコードを読み取るスキャナ2とを備えている。図に示すように、ターミナル1は上面が略正方形状のターミナル台3に載置され、一方、スキャナ2は上面が長方形状の商品カウンタ4の長手方向の中央位置の右側(+Y側)に立設される。精算処理においては、スキャナ2によって取得される商品のバーコードの内容に基づいて、ターミナル1において商品の合計金額の演算がなされる。さらに、ターミナル1において、その合計金額に基づいて、売買取引の決済に係るデータ処理(以下、「決済処理」という。)がなされることになる。
【0029】
商品カウンタ4は、売買取引に係る商品を載置するためのものであり、その長手方向がX軸方向に沿うように配置されている。精算処理において商品は、商品カウンタ4の上部の空間の全体にわたって背面側(−X側)に移動されることになるが、その移動の過程においてスキャナ2が備えるバーコードリーダ22によってバーコードが読み取られる。ターミナル台3は、このような商品カウンタ4の左側(−Y側)の背面側(−X側)に配置される。
【0030】
精算処理において販売者たる店舗スタッフは、これらの商品カウンタ4の左側(−Y側)かつターミナル台3の正面側(+X側)となるエリアにおいて、スキャナ2及びターミナル1を利用して所定の作業を行う。具体的には、店舗スタッフは主として、商品に付されたバーコードをスキャナ2のバーコードリーダ22に読み取らせる作業と、売買取引の決済に係る操作をターミナル1に行う作業とを行う。
【0031】
一方、精算処理において顧客は、購入を希望する商品の移動に合わせて、商品カウンタ4の右側(+Y側)を背面側(−X側)に向けて移動する。そして、顧客が売買取引の決済を行う際には、商品が載せられた商品カウンタ4を挟んで、決済処理を行うターミナル1の近傍において店舗スタッフと対面することになる。
【0032】
販売システム100では、現金を用いた現金決済の他、電子マネー機能を有するICカードを利用した電子決済が可能とされている。つまり、売買取引の決済を行う際において顧客は、現金あるいはICカードのいずれかを差し出すことになる。このため、決済処理を行うターミナル1の近傍には、顧客から預かる決済用の現金を載置するための現金受台5が設けられ、これとともに、ICカードのデータの読取/書込を行うリーダライタ6のうちのICカードと通信を行うためのアンテナ部62が設けられている。そして、本実施の形態では、これらの現金受台5とアンテナ部62とが一体化されて受渡ユニット7を形成しているが、この受渡ユニット7については後に詳述する。
【0033】
<2.電気的構成>
次に、販売システム100の電気的な構成について説明する。図3は、販売システム100の電気的な構成を模式的に示すブロック図である。図に示すように、販売システム100は電気的には、ターミナル1とスキャナ2とリーダライタ6とで構成される。
【0034】
ターミナル1は、マイクロコンピュータを含む制御回路10と、各種情報の表示を行う表示部11と、ユーザの操作や入力を受け付ける入力部12と、レシートを印刷して発行するレシート発行部13と、管理装置たるPOSサーバ等と通信を行う通信部16とを備えて構成され、これらはそれぞれバスライン19に接続される。
【0035】
制御回路10は、各種演算処理を行うCPU101と、制御用プログラム等を記憶するROM102と、演算処理の作業領域となるRAM103と、各種データを記憶する不揮発性メモリであるバッテリーバックアップされたSRAM104とを備えている。CPU101は、ROM102内の制御用プログラムに従って演算処理を行なうことで、装置各部の制御機能や、精算処理のためのデータ処理機能を実現する。また、SRAM104には、「商品コード」に「商品名」や「売価」などを対応づけたテーブル形式の商品マスタ等が記憶される。
【0036】
また、ターミナル1は、スキャナ2とデータの送受信を行うための第1インタフェイス14と、リーダライタ6とデータの送受信を行うための第2インタフェイス15とをさらに備えており、これら第1及び第2インタフェイス14,15もそれぞれバスライン19に接続される。これにより、ターミナル1の制御回路10は、スキャナ2から送信されるデータを取り扱うことや、リーダライタ6の制御が可能とされている。
【0037】
スキャナ2は、バーコードを読み取るバーコードリーダ22と、バーコードリーダ22を制御する制御回路21とを備えている。バーコードリーダ22にて読み取られたバーコードの情報は、制御回路21にて商品コードに変換(デコード)されてターミナル1に送信される。
【0038】
また、リーダライタ6は、アンテナ部62と、アンテナ部62を制御する制御装置61とを備えて構成される。アンテナ部62は、近傍に存在するICカード8との間で、微弱な電波を利用して非接触のデータ通信を行う。本実施の形態では、アンテナ部62とICカード8とが通信可能な距離は約10cmとされている。
【0039】
制御装置61は、このアンテナ部62を介して、ICカード8からデータを取得するとともに、ICカード8に記憶されたデータの書き替えを行う。制御装置61は、専用ケーブルなどによりターミナル1と電気的に接続され、ターミナル1の制御の下で動作する。これにより、ターミナル1は、ICカード8のデータの取得や書換を行うことができることになる。
【0040】
本実施の形態においてリーダライタ6の制御装置61とアンテナ部62とは、別ユニットとして構成されており、これらはケーブル63にて電気的に接続されている。これにより、制御装置61とアンテナ部62とは互いに独立して配置可能となっている。本実施の形態では、制御装置61はターミナル台3の内部に配置されている(図1及び図2参照)。またもちろん、リーダライタ6自体が、ターミナル1とは分離して別装置として構成されているため、アンテナ部62は、ターミナル1の位置にも無関係に独立して配置可能となっている。
【0041】
<3.ICカード>
次に、販売システム100にて利用されるICカード8について簡単に説明する。本実施の形態で使用されるICカード8は、「非接触型ICカード」、あるいは、「スマートカード」とも呼ばれる電子マネー機能を有したデータキャリアの一である。
【0042】
図4は、ICカード8の構成を示す図である。図に示すように、ICカード8は、集積回路たるICチップ81と、電波通信を行うためのアンテナコイル82とをその内部に備えている。また、ICカード8は、電池を備えておらず、リーダライタ6からの電波をアンテナコイル82が受信することで電力が供給されるようになっている。
【0043】
ICチップ81は、認証用の演算などの各種の演算を行うCPUと、データを電磁的に記録するEEPROMなどの記録素子とを有している。本実施の形態のICカード8は電子決済に利用されるものであるため、ICチップ81の記録素子には、電子決済に使用可能な金額データや、認証用のデータなどが記憶される。
【0044】
<4.受渡ユニット>
次に、現金受台5とアンテナ部62とを一体化(ユニット化)して構成される受渡ユニット7について説明する。図5は受渡ユニット7の構成を示す斜視図であり、図6は受渡ユニット7の右側(+Y側)からの構成を示す側面図である。
【0045】
現金受台5は、主として紙幣を載置するための矩形皿状の紙幣受け52と、硬貨を集めるための略半球状のコイン受け51とを結合して構成されている。
【0046】
また、アンテナ部62は、例えば5mm〜20mm程度の厚みのある平板状の部材であり、互いに対向する2つの平面を有している。図6に示すように、アンテナ部62は、その内部に、アンテナ本体部64と、青色に発光する青色LED65と、赤色に発光する赤色LED66と、音声を出力するスピーカ67とを備えている。これらの各部はケーブル63を介して制御装置61に接続され、制御装置61の制御下で動作する。
【0047】
青色LED65は、主としてICカード8との間の通信が正常に行われた際に発光し、赤色LED66は、通信に何らかのエラーが生じた際に発光するものである。また、スピーカ67は、通信が正常に行われたことを示す確認音や、何らかのエラーが生じたことを示す警告音などを出力する。
【0048】
また、アンテナ本体部64は、ICカード8との間で電波通信を行うものである。このアンテナ本体部64は指向性があり、アンテナ部62が有効な通信を行うためには、平板状のアンテナ部62の2つの平面のいずれかの対向方向に、通信対象となるICカード8が存在する必要がある。つまり、アンテナ部62の2つの平面は、電波通信の際にICカード8と対向すべき「通信面」として機能する。
【0049】
本実施の形態では、現金受台5の紙幣受け52の底面52fは略水平面となっている。そして、この底面52fの下部にアンテナ部62の一の平面62fが密接して接着されている。これにより、現金受台5とアンテナ部62とが一体化されて隣接配置される。また、アンテナ部62の通信面として機能する平面62fは、現金受台5の底面52fと上下方向に重なる位置に配置される。すなわち、アンテナ部62の通信面は鉛直上側(+Z側)に向けて現金受台5の底面52fに対向することになり、アンテナ部62は現金受台5の底面52fに載置されたICカード8との間で通信することが可能となる。
【0050】
ところで、現金受台5は、ターミナル1とは物理的に独立して構成されている。また、前述したように、アンテナ部62もターミナル1とは別装置として構成されている。このため、これら現金受台5とアンテナ部62とを一体化した受渡ユニット7は、ターミナル1とは分離構成されて独立して配置できる。したがって、受渡ユニット7は、ターミナル1の位置にかかわらず、顧客から扱いやすい位置に配置することが可能である。
【0051】
本実施の形態では図1及び図2に示すように、受渡ユニット7は、顧客が扱いやすいように、ターミナル1の位置から、顧客が存在する側である右側(+Y軸)に突出した状態に配置される。この位置は、商品カウンタ4の上部であるが、商品カウンタ4の上部空間において商品が載置される空間40よりもさらに上部とされる。これにより、受渡ユニット7は、商品の載置や移動の妨げとならず、かつ、顧客が扱いやすい位置に配置されることになる。なお、本実施の形態では、このような受渡ユニット7の位置を固定するために、受渡ユニット7はターミナル台3の側面に固定部材31を介して固設される。
【0052】
<5.精算処理>
次に、販売システム100の精算処理の流れについて説明する。図7は、販売システム100による精算処理の流れを示す図である。図7に示す一連の精算処理は、一の顧客が購入を希望する商品群ごとになされるものである。
【0053】
まず、顧客が購入を希望する商品群のうちの一の商品に付されたバーコードが、スキャナ2のバーコードリーダ22によって読み取られ、これにより、当該商品の「商品コード」がターミナル1に送信される(ステップS1)。
【0054】
ターミナル1では、スキャナ2からの「商品コード」に基づいて、SRAM104内に記憶された商品マスタがCPU101により参照され、当該商品の「商品名」及び「売価」等の情報が取得される。取得された「商品名」及び「売価」等はRAM103に記憶され、当該精算処理に係る商品の情報として登録される(ステップS2)。
【0055】
このステップS1及びS2の処理は、顧客が購入を希望する全ての商品に関して同様に繰り返される(ステップS3)。これにより、全ての商品に関しての「商品名」及び「売価」等の情報がRAM103に記憶(登録)されることになる。
【0056】
全ての商品に関しての情報が得られると、次に、これらの「売価」の合計である「合計金額」がCPU101により演算される。求められた「合計金額」は、表示部11などに表示され、顧客に対して示される(ステップS4)。
【0057】
続いて、この「合計金額」に関しての決済処理を行うことになるが、顧客は、希望に応じて現金決済か、ICカード8を用いた電子決済かを選択できる。顧客は、現金決済を希望する場合は現金を差し出し、電子決済を希望する場合はICカード8を差し出すことになる。この際、上述したように、アンテナ部62は、現金受台5に載置されたICカード8との間で通信を行うことから、顧客は、現金とICカード8とのいずれを差し出す場合であっても、差し出すべきものを現金受台5(受渡ユニット7)の上に載置すればよいことになる。
【0058】
これに対して販売スタッフは、顧客から現金受台5に載置されたものを判別し、それに応じてターミナル1を操作して、ターミナル1に現金による決済処理(ステップS5)か、電子的な決済処理(ステップS6)かのいずれかを行わせることになる。
【0059】
すなわち、現金受台5に現金が載置された場合は、顧客が現金決済を希望していると判断して、販売スタッフはターミナル1に当該現金の金額を操作ボタンにより入力する(ステップS5にてNo)。これに応答して、ターミナル1では、入力金額から「合計金額」が差し引かれて「釣銭金額」が演算される。これにより、現金による決済処理が完了する(ステップS6)。
【0060】
一方、現金受台5にICカード8が載置された場合は、顧客が電子決済を希望していると判断して、販売スタッフはターミナル1に設けられる所定の「電子決済ボタン」を押下する(ステップS5にてYes)。これに応答して、ターミナル1では、リーダライタ6を用いてICカード8に記憶された金額データが取得される。そして、この取得された金額データの額から「合計金額」が差し引かれた残額が新たな金額データとしてリーダライタ6を用いてICカード8に書き込まれる。これにより、ICカード8を利用した電子的な決済処理が完了することになる(ステップS7)。この際、必要に応じて、青色LED65、赤色LED66、及び、スピーカ67などが動作する。
【0061】
このようにして決済処理が完了すると、精算処理の結果を示すレシート発行部13からレシートが発行され、精算処理が終了する(ステップS8)。このレシートには、精算処理において登録された商品の商品名、売価、合計金額とともに、現金決済の場合は釣銭金額、電子決済の場合はICカード8の金額データの残額などが印刷されることになる。
【0062】
<6.まとめ>
以上、説明したように、販売システム100では、現金決済と電子決済とが可能であり、現金を載置するための現金受台5と、ICカード8との間で電波通信を行うアンテナ部62とが一体化され、上下方向に隣接配置されている。このため、本実施の形態の販売システム100のように、販売者と顧客との間に商品カウンタ4が存在して余裕となるスペースが非常に少なくとも、アンテナ部62を配置するためのスペースを現金受台5とは別に独立して確保する必要がなくなり、販売者と顧客との間の顧客が使いやすい位置にアンテナ部62を配置できる。
【0063】
また、顧客にとっては、売買取引の決済に現金を用いる場合とICカード8を用いる場合といずれであっても、現金受台5とアンテナ部62とを含む受渡ユニット7に対して、現金あるいはICカード8を載置すればよい。つまり、現金とICカード8とで差し出すべき場所が一致されるため、顧客はICカード9をかざすべきアンテナ部62の位置を容易に把握できる。このため、ICカード8の取扱いに不慣れな顧客であっても、戸惑うことなくICカード8を利用した電子決済を行うことができる。
【0064】
また、販売スタッフにとっても、受渡ユニット7の上に載置されたものが現金かICカード8であるかを確認するだけで、顧客が現金決済か電子決済かのいずれを希望しているかを容易に判断できる。このため、顧客の意思の確認が確実かつ容易となり、精算処理を効率よく遂行することが可能となる。
【0065】
<7.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態(以下、「第1形態」という。)に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような他の実施の形態について説明する。
【0066】
<7−1.第2形態:上側への配置>
第1形態では、アンテナ部62が、現金受台5の底面52fの下部に配置されていたが、現金受台5の底面52fの上部に配置してもよい。図8は、この場合における受渡ユニット7の構成を示す斜視図である。
【0067】
図8に示すように、この第2形態では、現金受台5における紙幣受け52の内側となる底面52fの上部にアンテナ部62の一方の平面が接着され、現金受台5とアンテナ部62とが上下方向に隣接位置される。これにより、アンテナ部62の他方の平面62fは、現金受台5の底面52fの上部において鉛直上方に向けて露出した状態で配置され、通信面として機能することになる。このような態様であっても、第1形態と同様の効果が得られることになる。
【0068】
<7−2.第3形態:独立して露出>
また、アンテナ部62の通信面が、現金受台5の底面52fから独立して露出するように、アンテナ部62を配置するようにしてもよい。図9は、この場合における受渡ユニット7の構成を示す斜視図である。
【0069】
図9に示すように、この第3形態では、現金受台5の右側(+Y側)側面52sに対して、アンテナ部62の一の側面が接着されている。これにより、アンテナ部62と現金受台5とがY軸方向において隣接配置される。
【0070】
この第3形態によれば、アンテナ部62の通信面たる平面62fが現金受台5の底面52fから独立して露出することになる。このため、例えば、売買取引の決済に現金とICカード8とを併用することが可能な販売システム100では、現金とICカード8とを容易に併用できることになる。
【0071】
なお、図中の例では、現金受台5の右側(+Y側)側面52sが傾斜しているため、アンテナ部62の通信面たる平面62fも水平に対して傾斜し、この平面62fにICカード8を載置すると落下する可能性がある。このため、図9に示すように、この平面62fの下方にはICカード8の落下防止用の突起部68を形成することが望ましい。
【0072】
<7−3.第4形態:水平移動>
また、アンテナ部62を移動させることにより、アンテナ部62の通信面が、現金受台5の底面52fと上下方向に重なる位置と、現金受台5の底面52fから独立して露出する位置との双方に位置できるようになっていてもよい。
【0073】
図10及び図11は、この場合における受渡ユニット7の構成を示す斜視図である。この第4形態では、現金受台5の底面52fの下部に、互いに並行してY軸方向に沿って2つのガイドレール53が形成されている。一方で、アンテナ部62のX軸方向の側面の双方には、2つのガイドレール53に係合するため係合部が形成されている。そして、アンテナ部62は、係合部を介して2つのガイドレール53に係合され、現金受台5に対してガイドレール53が延びるY軸方向に沿って水平に移動可能となっている。
【0074】
すなわち、図10に示すように、通信面となる平面62fが現金受台5の底面52fの下部に位置するようにアンテナ部62を配置できる一方で、必要に応じてアンテナ部62を水平に移動させて、図11に示すように平面62fが現金受台5の底面52fから独立して露出するようにも配置できる。もちろん、図10及び図11のいずれの状態においても、アンテナ部62の平面62fは通信面として機能し、対向するICカード8と通信することが可能である。
【0075】
これによれば、図10のように現金受台5の下部にアンテナ部62の通信面を配置すれば受渡ユニット7の全体をコンパクトにでき、一方、図11に示すようにアンテナ部62の通信面を現金受台5から独立して露出させれば、現金とICカード8とを容易に併用できる。すなわち、アンテナ部62の態様を必要に応じて変更することができることになる。
【0076】
<7−4.第5形態:下側の回転移動>
アンテナ部62を移動させる可動手段としての態様は、第4形態のものに限定されない。図12及び図13は、他の態様の可動手段を有する受渡ユニット7の構成を示す斜視図である。
【0077】
この第5形態では、現金受台5の右側(+Y側)側面の外側に、X軸方向に沿って2つのヒンジ54が形成されている。そして、これらのヒンジ54によって、現金受台5の右側(+Y側)の側面とアンテナ部62の一の側面とが結合されている。これにより、アンテナ部62が、現金受台5に対して2つのヒンジ54を軸として回転移動することが可能となっている。
【0078】
すなわち、図12に示すように、一の平面62aが現金受台5の底面52fの下部に位置するようにアンテナ部62を配置できる一方で、必要に応じてアンテナ部62を回転移動させて、図13に示すように他の平面62bが現金受台5の底面52fから独立して露出するようにも配置できる。
【0079】
この第5形態においては、図12に示す場合ではこのときに上側に向けられた一方の平面62aが通信面として機能し、図13に示す場合ではこのときに上側に向けられた他方の平面62bが通信面として機能することになる。したがって、図12及び図13のいずれの状態においても、アンテナ部62はその上部に対向するICカード8と通信することが可能である。これにより、第4形態と同様の効果が得られることになる。
【0080】
なお、図13に示す場合において、通信面たる平面62bは水平に対して傾斜して配置される。このため、第3形態と同様に、平面62bの下方にICカード8の落下防止用の突起部68を形成することが望ましい。
【0081】
<7−5.第6形態:上側の回転移動>
第5形態では、現金受台5の下側においてアンテナ部62を回転移動させるようにしていたが、上側で回転移動させるようにしてもよい。図14及び図15は、この場合における受渡ユニット7の構成を示す斜視図である。
【0082】
この第6形態では、現金受台5の底面52fの内側の左側(−Y側)に、X軸方向に沿って2つのヒンジ54が形成されている。そして、これらのヒンジ54によって、現金受台5の底面52fとアンテナ部62の一の側面とが結合されている。これにより、アンテナ部62が、現金受台5に対して2つのヒンジ54を軸として回転移動することが可能となっている。
【0083】
すなわち、図14に示すように、一の平面62aが現金受台5の底面52fの上部に位置するようにアンテナ部62を配置できる一方で、必要に応じてアンテナ部62を回転移動させて、図15に示すように他の平面62bが現金受台5の底面52fから独立して露出するようにも配置できる。
【0084】
この第6形態においては、図14に示す場合ではこのときに上側に向けられた一方の平面62aが通信面として機能し、図15に示す場合ではこのときに顧客側に向けられた他方の平面62bが通信面として機能することになる。このような態様であっても、第4及び第5形態と同様の効果が得られることになる。
【0085】
<7−6.その他の変形例>
上記実施の形態では、電子決済が可能な電子マネー機能を有するICカード8を用いるものとして説明を行ったが、これに限定されず、例えばポイントカードや会員カードなど、電子マネー機能を有さないICカードを用いるものであってもよい。このような電子マネー機能を有さないICカードは、現金と併用されることが一般的である。このため、この場合は、現金と併用が容易な第3ないし第6形態の受渡ユニット7を採用することが特に望ましい。
【0086】
また、上記実施の形態では、データキャリアとしてICカードを利用するものとして説明を行ったが、例えば携帯電話機など、電磁的な記録素子を有する可搬性のデータキャリアであれば、どのようなデータキャリアであっても本実施の形態に係る技術において利用することが可能である。
【0087】
また、上記実施の形態におけるリーダライタ6の制御装置61としての機能は、ターミナル1が備えていてもよい。また、上記実施の形態における制御装置61の機能とアンテナ部62の機能とを一体的に備えるリーダライタであれば、このリーダライタの全体を現金受台と一体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】販売システムの外観構成を示す図である。
【図2】販売システムの外観構成を示す図である。
【図3】販売システムの電気的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】ICカードの構成を示す図である。
【図5】第1形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図6】第1形態の受渡ユニットの構成を示す側面図である。
【図7】販売システムによる精算処理の流れを示す図である。
【図8】第2形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図9】第3形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図10】第4形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図11】第4形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図12】第5形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図13】第5形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図14】第6形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【図15】第6形態の受渡ユニットの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0089】
1 ターミナル
2 スキャナ
4 商品カウンタ
5 現金受台
6 リーダライタ
61 制御装置
62 アンテナ部
100 販売システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の売買取引の際に、当該売買取引の決済に係るデータ処理である決済処理を行うデータ処理手段を含む販売システムであって、
顧客から預かる決済用の現金を載置するための現金受台と、
近傍に存在する電磁的な記録素子を有する可搬性のデータキャリアとの間で電波通信を行うアンテナ部と、
を備え、
前記現金受台と前記アンテナ部とは一体化されて隣接配置されることを特徴とする販売システム。
【請求項2】
請求項1に記載の販売システムにおいて、
前記データキャリアは、売買取引の決済に使用可能な金額データを記憶可能であり、
前記データ処理手段は、前記アンテナ部を介して取得される前記データキャリアの金額データに基づいて前記決済処理が可能であることを特徴とする販売システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の販売システムにおいて、
前記現金受台と前記アンテナ部とを含むユニットは、前記データ処理手段とは分離構成されることを特徴とする販売システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の販売システムにおいて、
前記売買取引の際に販売者と顧客とに挟まれ、前記売買取引に係る商品を載置するため商品カウンタ、
をさらに備え、
前記現金受台と前記アンテナ部とを含むユニットは、前記商品カウンタの上部空間において、前記商品が載置される空間よりも上部に配置されることを特徴とする販売システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の販売システムにおいて、
前記アンテナ部は、当該アンテナ部のうちの前記電波通信の際に前記データキャリアと対向すべき通信面が、前記現金受台の底面と上下方向に重なる位置に配置されることを特徴とする販売システム。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の販売システムにおいて、
前記アンテナ部は、当該アンテナ部のうちの前記電波通信の際に前記データキャリアと対向すべき通信面が、前記現金受台の底面から独立して露出する位置に配置されることを特徴とする販売システム。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の販売システムにおいて、
前記アンテナ部のうちの前記電波通信の際に前記データキャリアと対向すべき通信面が前記現金受台の底面と上下方向に重なる第1位置と、前記通信面が前記底面から独立して露出する第2位置との双方に、前記アンテナ部を配置可能な可動手段、
をさらに備えることを特徴とする販売システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−215969(P2006−215969A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30665(P2005−30665)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】