説明

質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定するための装置

質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定するための装置が提供される。装置は、四重極のRF電圧を整流し、整流されたRF電圧を生成するための少なくとも1つの整流ダイオード回路を備える。装置はさらに、電流/電圧変換器として構成される少なくとも1つの演算増幅器を備え、少なくとも1つの演算増幅器の負の入力が、少なくとも1つの整流ダイオード回路内の少なくとも1つのダイオードの出力に接続され、少なくとも1つの演算増幅器の正の入力が、接地され、少なくとも1つの演算増幅器内の出力が、負の入力とのフィードバックループ内にあることにより、少なくとも1つのダイオードからの逆漏れ電流を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許出願第61/250,142号(2009年10月9日出願、名称「Apparatus For Measuring Rf Voltage From A Quadrupole In A Mass Spectrometer」)に基づく優先権を主張する。該出願は、参照により本明細書に引用される。
【0002】
(技術分野)
本明細書は、概して、質量分析計に関し、具体的には、質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
概して、質量分析計内の四重極に印加されるRF電圧の精密な制御は、印加されるRF電圧が、一般的に、四重極内のイオンの放出および/または濾過に寄与するため望ましい。故に、RF電圧が印加される精度は、四重極の正確性および信頼性に影響を及ぼす。RF電圧を制御するために、RF電圧は、概して、RF検出器を介して測定され、RF電源は、フィードバックループ内でRF検出器によって制御される。図2は、従来技術による、RF検出器を描写しており、そこでは、整流ダイオードアレイが、整流されたRF電圧の平均を提供するためのRCフィルタ等の平均化回路と組み合わせて、RF電圧を測定するために使用される。しかしながら、そのようなRF検出器は、ダイオード内の逆漏れ電流に悩まされ、これは、ひいては、四重極内の質量ドリフトおよびダイオードの破壊をもたらす、検出器内の不安定性につながる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の第1の側面は、質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定するための装置を提供する。装置は、四重極のRF電圧を整流し、整流されたRF電圧を生成するための少なくとも1つの整流ダイオード回路を備える。装置はさらに、電流/電圧変換器として構成される、少なくとも1つの演算増幅器を備え、少なくとも1つの演算増幅器の負の入力が、少なくとも1つの整流ダイオード回路内の少なくとも1つのダイオードの出力に接続され、少なくとも1つの演算増幅器の正の入力が、接地され、少なくとも1つの演算増幅器内の出力が、負の入力とのフィードバックループ内にあることにより、少なくとも1つのダイオードからの逆漏れ電流を減少させる。
【0005】
装置はさらに、RF電圧が所与の量だけ減少されるように、四重極を少なくとも1つの整流ダイオード回路から絶縁するための所与の静電容量の少なくとも1つのコンデンサを備えることができる。
【0006】
装置はさらに、整流されたRF電圧の平均を提供するための少なくとも1つの演算増幅器に追従するRCフィルタを備えることができる。
【0007】
少なくとも1つの整流ダイオード回路は、1つのRF電源のRF電圧を整流するように有効化されることができ、RF電源は、四重極に電圧を供給するためのものである。
【0008】
少なくとも1つの整流ダイオード回路は、少なくとも2つのRF電源のRF電圧を整流するように有効化されることができ、RF電源は、四重極を含む少なくとも1つの四重極にRF電圧を供給するためのものである。
【0009】
装置はさらに、四重極および四重極にRF電圧を供給するための少なくとも1つのRF電源のうちの少なくとも1つに接続するための少なくとも1つのコネクタを備えることができる。
【0010】
装置はさらに、四重極にRF電圧を供給するためのRF電源を制御するためのフィードバックループに接続するための少なくとも1つのコネクタを備えることができ、少なくとも1つのコネクタは、測定された整流されたRF電圧を決定することができるように、演算増幅器の出力と通信する。
【0011】
本明細書の第2の側面は、質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定するための方法を提供する。方法は、四重極のRF電圧を整流し、整流されたRF電圧を生成するための少なくとも1つの整流ダイオード回路と、電流/電圧変換器として構成される、少なくとも1つの演算増幅器とを備える回路を提供するステップであって、少なくとも1つの演算増幅器の負の入力が、少なくとも1つの整流ダイオード回路内の少なくとも1つのダイオードの出力に接続され、少なくとも1つの演算増幅器の正の入力が、接地され、少なくとも1つの演算増幅器内の出力が、負の入力とのフィードバックループ内にあることにより、少なくとも1つのダイオードからの逆漏れ電流を減少させる、ステップと、回路を介してRF電圧を測定するステップとを含む。
【0012】
回路はさらに、RF電圧が所与の量だけ減少されるように、四重極を少なくとも1つの整流ダイオード回路から絶縁するための所与の静電容量の少なくとも1つのコンデンサを備えることができる。
【0013】
回路はさらに、整流されたRF電圧の平均を提供するための少なくとも1つの演算増幅器に追従するRCフィルタを備えることができる。
【0014】
少なくとも1つの整流ダイオード回路は、1つのRF電源のRF電圧を整流するように有効化されることができ、RF電源は、四重極に電圧を供給するためのものである。
【0015】
少なくとも1つの整流ダイオード回路は、少なくとも2つのRF電源のRF電圧を整流するように有効化されることができ、RF電源は、四重極を含む少なくとも1つの四重極にRF電圧を供給するためのものである。
【0016】
回路はさらに、四重極および四重極にRF電圧を供給するための少なくとも1つのRF電源のうちの少なくとも1つに接続するための少なくとも1つのコネクタを備えることができる。
【0017】
回路はさらに、回路を、四重極にRF電圧を供給するためのRF電源を制御するためのフィードバックループに接続するための少なくとも1つのコネクタを備えることができ、少なくとも1つのコネクタは、測定された整流されたRF電圧が決定されることができるように、演算増幅器の出力と通信する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
実施形態を、以下の図を参照して説明する。
【図1】図1は、非限定的実施形態による、質量分析計のブロック図を描写する。
【図2】図2、4から6は、従来技術による、質量分析計内の四重極に供給されるRF電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【図3】図3は、従来技術のための非限定的実施形態による質量分析計内の四重極に供給されるRF電圧を測定するための回路内のダイオードにわたる電圧降下を描写する。
【図4】図2、4から6は、従来技術による、質量分析計内の四重極に供給されるRF電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【図5】図2、4から6は、従来技術による、質量分析計内の四重極に供給されるRF電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【図6】図2、4から6は、従来技術による、質量分析計内の四重極に供給されるRF電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【図7】図7から9は、非限定的実施形態による、質量分析計内の四重極に供給されるFR電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【図8】図7から9は、非限定的実施形態による、質量分析計内の四重極に供給されるFR電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【図9】図7から9は、非限定的実施形態による、質量分析計内の四重極に供給されるFR電圧を測定するための回路の概略図を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、質量分析計100を描写しており、質量分析計100は、イオンガイド130と、四重極140と、衝突セル150(例えば、フラグメンテーションモジュール)と、飛行時間(ToF)検出器160とを備え、質量分析計100は、イオン源120からToF検出器160へとイオンビームを伝送するように有効化される。いくつかの実施形態では、質量分析計100はさらに、イオン性材料をイオン化するためのイオン源120の制御、四重極140に供給されるRF電力の制御、および質量分析計100のモジュールのイオンの輸送の制御を含むが、それらに限定されない、質量分析計100の動作を制御するためのプロセッサ185を備えることができる。動作時、イオン性材料が、イオン源120に導入される。イオン源120は、概して、イオン性材料をイオン化し、イオンガイド130(また、イオンガイド130が質量分析に関与しないことを示す、Q0として識別される)に輸送されるイオンビームの形態として、イオン190を生成する。イオン190は、イオンガイド130から、質量フィルタとして動作することができ、後述のように、イオン191を濾過し、放出するように制御することができる四重極140(また、Q1として識別される)に輸送される。次いで、放出されたイオン191は、フラグメンテーションのために、衝突セル150(また、q2として識別される)に、次いで、質量スペクトルの生成のために、ToF検出器160に輸送することができる。そうすることによって、イオン191は、ToF検出器160を通る経路197を追従し、好適な検出器表面198に衝突し、経路197を進行するのにかかる飛行時間は、イオンの質量対電荷比の平方根に比例する。いくつかの実施形態では、衝突セル150は、イオン191を濾過し、放出するように制御することができる、四重極140に類似する、四重極を備える。
【0020】
さらに、描写されていないが、質量分析計100は、イオン源120、イオンガイド130、四重極質量フィルタ140、衝突セル150、および/またはToF検出器160に好適な真空を提供するために、任意の適切な数の真空ポンプを備えることができる。いくつかの実施形態では、質量分析計100のある要素間に真空差をもたらすことができることを理解されたい。例えば、真空差は、概して、イオン源120が大気圧にあって、イオンガイド130が真空下にあるように、イオン源120とイオンガイド130との間に印加される。同じく描写されていないが、質量分析計100はさらに、任意の適切な数のコネクタと、電源と、RF(無線周波数)電源と、DC(直流)電源と、ガス源(例えば、イオン源120および/または衝突セル150用)と、質量分析計100の動作を可能にするための任意の他の好適な構成要素とを備えることができる。
【0021】
質量分析計100はさらに、質量分析計100内の四重極に供給されるRF電圧を測定するための装置198を備え、装置198は、概して、後述のように、RF検出器を備える。質量分析計100はさらに、質量分析計内の四重極100、例えば、四重極140および衝突セル150のうちの少なくとも1つに、RF電圧およびRF電力を提供するための装置199を備える。装置199は、四重極140および衝突セル150のうちの少なくとも1つが、イオン191を濾過および放出するように制御されるように有効化し、概して、RF電源を備える。一般に、装置198は、RF電圧が、装置199を介して、四重極に供給されるように、装置199とのフィードバックループ内にあって、RF電圧は、装置198を介して測定され、RF電圧は、測定に基づいて調節される。フィードバックループは、プロセッサ185を介して、制御することができる。さらに、装置198は、四重極140(および/または衝突セル150)に供給されるRF電圧が、装置198によって測定可能であるように、四重極140(および/または衝突セル150)および/または装置199に接続することができることを理解されたい。
【0022】
いくつかの実施形態では、装置199は、複数のRF電源を備えることができ、それぞれ、少なくとも1つの四重極にRF電圧を提供するためのものである。いくつかの実施形態では、装置199は、質量分析計100内の各四重極に対して、少なくとも2つの電源を備える(所与の四重極内の各対のロッドに対して1つ)。
【0023】
従来技術では、RF検出器は、図2に描写される回路200のものに類似する回路を備え、そこでは、RF電源V1およびV2はそれぞれ、四重極にRF電圧を供給するためのRF電源(例えば、装置199内)を表す。例えば、V1は、四重極内の第1の対のロッドにRF電圧を供給することができ、V2は、四重極内の第2の対のロッドにRF電圧を供給することができる。ダイオードD1、D2、D3、およびD9は、四重極に供給されるRF電圧を整流し、整流されたRF電圧を生成するための整流ダイオード回路を形成する。コンデンサC1およびC2サーバは、電圧が、コンデンサC1およびC2のそれぞれの静電容量に基づいて、所与の量だけ減少されるように、整流ダイオード回路から四重極を絶縁する。抵抗器R2およびコンデンサC3は、順方向に整流されたRF電圧の平均が、抵抗器R4にわたって測定されることができるように、整流ダイオード回路から順方向に整流されたRF電圧を受け取るように有効化された平均化回路(例えば、RCフィルタ)を形成する。同様に、抵抗器R3およびコンデンサC4は、逆方向に整流されたRF電圧の平均が、抵抗器R5にわたって測定されることができるように、整流ダイオード回路から逆方向に整流されたRF電圧を受け取るように有効化された平均化回路を形成する。R1およびR6は、電流/電圧を変換するように有効化される。
【0024】
コンデンサC1、C、C3、C4および抵抗器R1、R2、R3、R4、R5、R6の値は、任意の好適な値をとることができ、任意の好適な回路モデル化ソフトウェアを介して決定することができる。さらに、コンデンサC1、C、C3、C4および抵抗器R1、R2、R3、R4、R5、R6の値は、回路200の所望の利得および/または所望の平均化の程度に依存することができる。具体的非限定的実施形態では、コンデンサC1、C2はそれぞれ、約数pFであって、コンデンサC3、C4はそれぞれ、約数nFであって、抵抗器R1、R6はそれぞれ、約数百オームであって、抵抗器R2、R3はそれぞれ、約1キロオームから数十キロオームであって、抵抗器R4、R5はそれぞれ、約数メガオームである。ダイオードD1、D2、D3、D9はそれぞれ、任意の好適なダイオードを備えることができる。具体的非限定的例示的実施形態では、ダイオードD1、D2、D3、D9はそれぞれ、SchottkyダイオードD1N5711を備えることができるが、しかしながら、任意の好適なダイオードも、本実施形態の範囲内である。
【0025】
次に、図3を参照すると、例えば、RF電圧がダイオードD1に印加される時の、ダイオードD1にわたるモデル化された電圧降下を表す、曲線300が描写されている。曲線300は、RF電圧が印加されるのに伴って、その間に交互する、区分301aによって部分的に表される、複数の正の区分と、区分301bによって部分的に表される、複数の負の区分とを備える。一般に、区分301aは、例えば、ダイオードD1にわたる逆方向バイアス電圧降下を表し、区分301bは、ダイオードD1にわたる順方向バイアス電圧降下を表す。区分301bから、印加された逆方向バイアス電圧によって、ダイオードが、概して、大型抵抗器のように作用するため、逆方向バイアス電圧降下が、順方向バイアス電圧降下より遥かに大きい可能性があることが理解される(例えば、描写されるように、約1Vと比較して、10Vを上回る)。故に、ダイオードからの逆漏れ電流は、非常に大きくなる傾向がある。この大きな逆方向バイアス電圧降下および逆漏れ電流は、ダイオード内に問題を生じさせ、抵抗器R4(または、抵抗器R5)にわたる測定された平均整流電圧、ならびにダイオード、したがって、回路200全体の不安定性に影響し、ひいては、電圧が供給されている四重極内の質量ドリフト、および最終的に、ダイオードの破壊をもたらす。質量ドリフトが、ダイオードが、不安定となるために生じ、測定される平均整流RF電圧が、実際の平均整流RF電圧と異なり始める。
【0026】
図3はさらに、後述される曲線350および区分351a、351bを描写する。
【0027】
次に、図4を参照すると、従来技術による、RF電圧を測定するために、RF検出器内で使用することができる、回路400が描写されている。回路400は、回路200に類似するが、しかしながら、対照的に、回路400は、四重極のための電源を表す1つのRF電源V7を備え、さらに、コンデンサC9は、コンデンサC1に類似し、ダイオードD4、D10は、整流ダイオード回路を形成する。抵抗器R10、R11およびコンデンサC10は、順方向に整流されたRF電圧の平均が、抵抗器R14にわたって測定されることができるように、整流ダイオード回路から順方向に整流されたRF電圧を受け取るように有効化される順電圧平均化回路を形成する。抵抗器R20、R21およびコンデンサC14は、逆方向に整流されたRF電圧の平均が、抵抗器R14にわたって測定されることができるように、整流ダイオード回路から逆方向に整流されたRF電圧を受け取るように有効化される逆電圧平均化回路を形成する。ダイオードD4にわたる電圧降下は、RF電圧が印加される時の曲線300のものに類似し、逆電圧バイアス降下と関連付けられた類似した問題を有している。
【0028】
コンデンサC9、C10、C14および抵抗器R10、R11、R14、R20、R21、R22の値は、任意の好適な値をとることができ、任意の好適な回路モデル化ソフトウェアを介して、決定することができる。さらに、C9、C10、C14および抵抗器R10、R11、R14、R20、R21の値は、回路400の所望の利得および/または所望の平均化の程度に依存することができる。具体的非限定的実施形態では、コンデンサC9は、約数pFであって、コンデンサC10、C14はそれぞれ、約数nFであって、抵抗器R10、R12はそれぞれ、約数百オームであって、抵抗器R11、R21はそれぞれ、約1キロオームから数十キロオームであって、抵抗器R14、R22はそれぞれ、約数メガオームである。ダイオードD4、D10はそれぞれ、任意の好適なダイオードを備えることができる。具体的非限定的例示的実施形態では、ダイオードD4、D10はそれぞれ、SchottkyダイオードD1N5711を備えることができるが、しかしながら、任意の好適なダイオードも本実施形態の範囲内である。
【0029】
次に、図5を参照すると、従来技術による、RF電圧を測定するために、RF検出器内で使用することができる、回路500が描写されている。回路500は、回路400に類似し、同一要素は、同一番号を有するが、しかしながら、対照的に、回路400は、順方向に整流されたRF電圧の平均が、抵抗器R1にわたって測定されることができるように、抵抗器R10、R11およびコンデンサC10から形成される、順電圧平均化回路を備える。しかしながら、回路400と比較して、回路500は、逆平均電圧平均化回路を欠いており、逆方向に整流された電圧は、単に、接地に送電される。静電容量および抵抗の類似値が、図4を参照して前述のように、使用することができる。
【0030】
前述のように、回路200、300、400、500はすべて、各それぞれの整流ダイオード回路内のダイオードのうちの少なくとも1つにわたって、大きな逆方向バイアス電圧降下に悩まされ、ダイオード内の不安定性、RF電圧が供給されている四重極内の質量ドリフト、および最終的に、ダイオードの破壊につながる。故に、装置198は、ダイオード整流回路内の少なくとも1つのダイオードからの逆漏れ電流を減少させるように有効化される。
【0031】
例えば、図6を参照すると、それぞれ、四重極内の一対のロッドのためのRF電源を表す、RF電源V3、V4に接続される回路600を備える装置198の非限定的実施形態が描写されている。一般に、回路600は、回路200に類似し、回路200のコンデンサC1、C2に類似する、コンデンサC5、C6と、コンデンサD1、D2、D3、D9から形成される整流ダイオード回路に類似する、ダイオードD5、D6、D7、D8から形成される整流ダイオード回路とを備える。加えて、回路600は、平均順方向整流RF電圧が、抵抗器R30にわたって測定されることができるように、抵抗器R8およびコンデンサC7によって形成される第1の平均化回路と、平均逆方向整流RF電圧が、抵抗器R31にわたって測定されることができるように、抵抗器R9およびコンデンサC8によって形成される第2の平均化回路とを備える。
【0032】
回路600はさらに、電流/電圧変換器として構成される、少なくとも1つの演算増幅器U5、U6を備え、少なくとも1つの演算増幅器U5、U6の負の入力は、少なくとも1つの整流ダイオード回路内の少なくとも1つのダイオードD1、D2、D3、D9の出力に接続され、少なくとも1つの演算増幅器U5、U6の正の入力は、接地され、少なくとも1つの演算増幅器U5、U6の出力は、少なくとも1つの演算増幅器U5、U6の負の入力とのフィードバックループ内にあって、少なくとも1つのダイオードD1、D2、D3、D9からの逆漏れ電流を減少させる。
【0033】
例えば、演算増幅器U5の負の入力は、ダイオードD5、D6の出力に接続され、ダイオードD5は、RF電源V3に(コンデンサC5を介して)接続され、ダイオードD6は、RF電源V4に(コンデンサC6を介して)接続される。ダイオードD5を非限定的実施例として挙げると、演算増幅器U5の負の入力は、ダイオードD5の出力に接続され、演算増幅器U5の正の入力は、接地されるため、演算増幅器U5は、反転増幅器として作用する。かつ、演算増幅器U5の負の入力は、演算増幅器U5の出力とのフィードバックループ内にあるため、負の入力は、概して、正の入力に一致し、正の入力は、接地されるため、V-=V≒0(式中、V-は、演算増幅器U5の負の入力における電圧であって、Vは、演算増幅器U5の正の入力における電圧である)となる。故に、演算増幅器U5は、ダイオードD5からの任意の電流を減少させる。
【0034】
故に、ダイオードD5にわたる逆方向バイアス電圧降下が大きくなり、その結果、漏れ電流も大きくなるように、逆方向バイアス電圧がダイオードD5に印加されると、演算増幅器U5は、フィードバックループを介して、逆電圧降下を減少させる。例えば、図3はさらに、例えば、RF電圧が、RF電源V3から、ダイオードD5に印加された時の、ダイオードD5にわたるモデル化された電圧降下を表す、曲線350を描写する。曲線300および350は、明確にするために、180°位相がずれて描写されていることを理解されたい。曲線350は、RF電圧が印加されるのに伴って、その間に交互する、区分351aによって部分的に表される、複数の正の区分と、区分351bによって部分的に表される、複数の負の区分とを備える。一般に、区分351aは、例えば、ダイオードD1にわたる逆方向バイアス電圧降下を表し、区分351bは、ダイオードD1にわたる順方向バイアス電圧降下を表す。区分351aおよび区分351bから、逆方向バイアス電圧降下は、演算増幅器U5による漏れ電流の減少のため、順方向バイアス電圧降下に類似することが理解される。さらに、曲線300および350の比較から、回路500のダイオードD5の逆方向バイアス電圧は、演算増幅器U5によって提供される逆方向バイアス漏れ電流の減少のため、回路200のダイオードD1の逆方向バイアス電圧と比較して低下していることが理解される。
【0035】
さらに、演算増幅器U5は、ダイオードD6内の逆方向バイアス漏れ電流を減少させることにおいて、類似役割を果たすことが理解される。さらに、演算増幅器U6は、ダイオードD7、D8内の逆方向バイアス漏れ電流を減少させることにおいて、類似役割を果たすことが理解される。
【0036】
故に、各それぞれの整流ダイオード回路内のダイオードD5、D6、D7、D8のうちの少なくとも1つにわたる大きな逆方向バイアス電圧降下は、少なくとも1つの演算増幅器U5、U6によって減少され、これは、ダイオードD5、D6、D7、D8内のより優れた安定性へとつながり、故に、RF電圧が供給されている四重極内の質量ドリフトを減少させ、ダイオードD5、D6、D7、D8の破壊の可能性が低くなるため、ダイオードD5、D6、D7、D8の寿命を延長させる。
【0037】
さらに、装置198は、RF電源V3、V4および/またはRF電圧が供給されている関連付けられた四重極に接続するための任意の好適な数のコネクタを備えることができることが理解される。いくつかの実施形態では、装置198は、抵抗器R30および/またはR31にわたる電圧を測定することができるように、任意の好適な数のコネクタを備える。いくつかの実施形態では、装置198はさらに、抵抗器R30および/またはR31にわたって測定された電圧が、四重極140(および/または衝突セル150)に供給されるRF電圧を制御するための装置199とのフィードバックループに送り込まれることができるように、装置199および/またはプロセッサ185への出力を備える。
【0038】
コンデンサC5、C6、C7、C8および抵抗器R7、R8、R9、R12、R30、R31の値は、任意の好適な値をとることができ、任意の好適な回路モデル化ソフトウェアを介して、決定することができる。さらに、コンデンサC5、C6、C7、C8および抵抗器R7、R8、R12の値は、回路600の所望の利得および/または所望の平均化の程度に依存することができる。具体的非限定的実施形態では、コンデンサC5、C6はそれぞれ、約数pFであって、コンデンサC7、C8はそれぞれ、約数nFであって、抵抗器R7、R12はそれぞれ、約数百オームであって、抵抗器R8、R9はそれぞれ、約1キロオームから数十キロオームであって、抵抗器R30、R31はそれぞれ、約数メガオームである。ダイオードD5、D6、D7、D8はそれぞれ、任意の好適なダイオードを備えることができる。具体的非限定的例示的実施形態では、ダイオードD5、D6、D7、D8はそれぞれ、SchottkyダイオードD1N5711を備えることができるが、しかしながら、任意の好適なダイオードも本実施形態の範囲内である。演算増幅器U5、U6はそれぞれ、任意の好適な演算増幅器を備えることができる。非限定的例示的実施形態では、演算増幅器はそれぞれ、低雑音演算増幅器LT1806を備えることができるが、しかしながら、任意の好適な演算増幅器も本実施形態の範囲内である。さらに、演算増幅器はそれぞれ、好適な電源および/または好適な電圧Vee、Vccを供給する電源に接続されることが理解される。
【0039】
次に、図7を参照すると、回路700を備える、装置198の代替実施形態が描写されている。回路700は、回路400に類似し、単一RF電源V10からの平均整流電圧を測定するように有効化され、ダイオードD4に類似するダイオードD11と、ダイオードD10に類似するダイオードD12とを備え、ダイオードD11、D12は、整流ダイオード回路を形成する。回路700はさらに、平均化回路を備え、第1の平均化回路は、平均順方向バイアス電圧が、抵抗器R35にわたって測定されることができるように、抵抗器R16およびコンデンサC12を備え、第2の平均化回路は、平均順方向バイアス電圧が、抵抗器R36にわたって測定されることができるように、抵抗器R17およびコンデンサC13を備える。しかしながら、回路700は、前述のように、ダイオードD11の逆方向バイアス電流を減少させるための演算増幅器U7と、ダイオードD12の逆方向バイアス電流を減少させるための演算増幅器U8とを含む。静電容量および抵抗の類似値、ならびに類似ダイオードおよび演算増幅器が、図6を参照して前述のように、使用することができる。
【0040】
次に、図8を参照すると、回路800を備える、装置198の代替実施形態が描写されている。回路800は、回路500に類似し、単一RF電源V11からの平均整流電圧を測定するように有効化され、ダイオードD4に類似するダイオードD13と、ダイオードD10に類似するダイオードD14とを備え、ダイオードD13、D14は、整流ダイオード回路を形成する。回路800はさらに、平均順方向バイアス電圧が、抵抗器R39にわたって測定されることができるように、抵抗器R38およびコンデンサC15を備える、平均化回路を備える。逆方向バイアス電圧は、ダイオードD14を介して、接地にパスされる。しかしながら、回路800は、前述のように、ダイオードD13の逆方向バイアス電流を減少させるための演算増幅器U9を含む。静電容量および抵抗の類似値、ならびに類似ダイオードおよび演算増幅器が、図6を参照して前述のように、使用することができる。
【0041】
次に、図9を参照すると、回路900を備える、装置198の代替実施形態が描写されている。回路800は、回路900に類似し、単一RF電源V12からの平均整流電圧を測定するように有効化され、ダイオードD13に類似するダイオードD15と、ダイオードD14に類似するダイオードD16とを備え、ダイオードD15、D16は、整流ダイオード回路を形成する。回路900はさらに、平均順方向バイアス電圧が、抵抗器R42にわたって測定されることができるように、抵抗器R41およびコンデンサC17を備える、第1の平均化回路を備える。回路900はさらに、平均逆方向バイアス電圧が、抵抗器R45にわたって測定されることができるように、抵抗器R44およびコンデンサC18を備える、第2の平均化回路を備える。演算増幅器U10は、ダイオードD15からの逆漏れ電流を減少させるための演算増幅器U9に類似する。しかしながら、回路900はさらに、平均逆方向整流RF電圧の測定の際、ダイオードD16の逆方向バイアス電流を減少させるための演算増幅器U1を備える。静電容量および抵抗の類似値、ならびに類似ダイオードおよび演算増幅器が、図6を参照して前述のように、使用することができる。
【0042】
さらに、装置198および/または回路600および/または回路700および/または回路800および/または回路900は、少なくとも投入されているRF電源から四重極に供給されるRF電圧を測定するための方法において提供することができることが理解される。
【0043】
当業者であれば、いくつかの実施形態において、質量分析計100の機能性は、予めプログラムされたハードウェアもしくはファームウェア要素(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)等)、または他の関連する構成要素を使用して実装できることを理解するであろう。他の実施形態において、質量分析計100の機能は、計算装置の動作のためのコンピュータが読み取り可能なプログラムコードを記憶する、コードメモリ(図示せず)にアクセスする計算装置を使用して達成することができる。コンピュータが読み取り可能なプログラムコードは、固定され、有形であり、かつこれらの構成要素によって直接的に読み取り可能である、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶することができる(例えば、可撤性ディスケット、CD−ROM、ROM、固定ディスク、USBドライブ)。代替として、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードは、遠隔で記憶することができるが、伝送媒体上でネットワーク(インターネットが挙げられるが、これに限定されない)に接続されたモデムまたは他のインターフェースデバイスを介して、これらの構成要素に伝送可能であり得る。伝送媒体は、非無線媒体(例えば、光、および/またはデジタル、および/またはアナログ通信線)もしくは無線媒体(例えば、マイクロ波、赤外線、自由空間光学、または他の伝送スキーム)、またはそれらの組み合わせとなり得る。
【0044】
当業者は、実施形態を実装するためのさらに多くの代替の実装例および修正例があること、および前述の実装例および実施例は、1つ以上の実施形態の例証に過ぎないことを理解するであろう。したがって、範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定するための装置であって、
該四重極の該RF電圧を整流し、整流されたRF電圧を生成するための少なくとも1つの整流ダイオード回路と、
電流/電圧変換器として構成される少なくとも1つの演算増幅器と
を備え、
該少なくとも1つの演算増幅器の負の入力が、該少なくとも1つの整流ダイオード回路内の少なくとも1つのダイオードの出力に接続され、該少なくとも1つの演算増幅器の正の入力が、接地され、該少なくとも1つの演算増幅器の出力が、該負の入力とのフィードバックループ内にあることにより、該少なくとも1つのダイオードからの逆漏れ電流を減少させる、装置。
【請求項2】
前記RF電圧が所与の量だけ減少されるように前記四重極を前記少なくとも1つの整流ダイオード回路から絶縁するために、所与の静電容量の少なくとも1つのコンデンサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記整流されたRF電圧の平均を提供するために、前記少なくとも1つの演算増幅器に追従するRCフィルタをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの整流ダイオード回路は、1つのRF電源のRF電圧を整流するために有効化され、該RF電源は、前記四重極にRF電圧を供給するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの整流ダイオード回路は、少なくとも2つのRF電源のRF電圧を整流するために有効化され、該RF電源は、前記四重極を含む少なくとも1つの四重極にRF電圧を供給するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つのコネクタをさらに備え、該少なくとも1つのコネクタは、前記四重極と、前記四重極に前記RF電圧を供給するための少なくとも1つのRF電源とのうちの少なくとも1つに接続する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記四重極に前記RF電圧を供給するためのRF電源を制御するためのフィードバックループに接続するための少なくとも1つのコネクタをさらに備え、該少なくとも1つのコネクタは、測定された整流されたRF電圧が決定されることができるように、前記演算増幅器の出力と通信する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
質量分析計内の四重極からのRF電圧を測定する方法であって、
回路を提供するステップであって、
該回路は、該四重極の該RF電圧を整流し、整流されたRF電圧を生成するための少なくとも1つの整流ダイオード回路と、電流/電圧変換器として構成される少なくとも1つの演算増幅器とを備え、
該少なくとも1つの演算増幅器の負の入力が、該少なくとも1つの整流ダイオード回路内の少なくとも1つのダイオードの出力に接続され、該少なくとも1つの演算増幅器の正の入力が、接地され、該少なくとも1つの演算増幅器の出力が、該負の入力とのフィードバックループ内にあることにより、該少なくとも1つのダイオードからの逆漏れ電流を減少させる、ステップと、
該回路を介して該RF電圧を測定するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記回路は、前記RF電圧が所与の量だけ減少されるように前記四重極を前記少なくとも1つの整流ダイオード回路から絶縁するために、所与の静電容量の少なくとも1つのコンデンサをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記回路は、前記整流されたRF電圧の平均を提供するために、前記少なくとも1つの演算増幅器に追従するRCフィルタをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの整流ダイオード回路は、1つのRF電源のRF電圧を整流するために有効化され、該RF電源は、前記四重極に電圧を供給するためのものである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの整流ダイオード回路は、少なくとも2つのRF電源のRF電圧を整流するために有効化され、該RF電源は、前記四重極を含む少なくとも1つの四重極にRF電圧を供給するためのものである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記回路は、少なくとも1つのコネクタをさらに備え、該少なくとも1つのコネクタは、前記四重極と、前記四重極に前記RF電圧を供給するための少なくとも1つのRF電源とのうちの少なくとも1つに接続する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記回路は、該回路を、前記四重極に前記RF電圧を供給するためのRF電源を制御するためのフィードバックループに接続するための少なくとも1つのコネクタをさらに備え、該少なくとも1つのコネクタは、測定された整流されたRF電圧が決定されることができるように、前記演算増幅器の出力と通信する、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−507725(P2013−507725A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532430(P2012−532430)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001605
【国際公開番号】WO2011/041902
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】