説明

赤外線センサを用いた温度測定装置およびその補正方法

【課題】十分な測定精度を確保しつつ、測定作業が簡素化され、構成が簡単でコスト低減をはかることが可能な、赤外線センサを用いた温度測定装置およびその補正方法を提供する。
【解決手段】測定対象の温度をTb、赤外線センサ部1の出力(該出力に対応する赤外線センサ出力測定部3による測定出力)をV、赤外線センサ部1の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、赤外線センサ部1(赤外線センサ部1自体)の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、Tb={(V−c)/b+Trα}1/αなる演算によって測定対象の温度Tbを算出する。この場合、温度測定装置10には、冪指数α、温度係数b、および、オフセットcの各定数を予め保持しておく。該各定数は、赤外線センサ部の出力の実測値と予測値との差を2乗してデータ取得回数N分の和をとった、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする条件を充足するものとして各算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置およびその補正方法に関し、より詳細には、赤外線センサ部を用いた温度測定において簡易な操作で高精度の測定値を得ることが可能な温度測定装置およびその補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線センサ部を用いて対象物の温度を非接触で測定する温度測定装置が知られている。
それらの具体例として、非接触温度計(もしくは放射温度計)、サーモグラフィ、赤外線カメラ等が製品化されている。
これらの製品群における温度測定の原理は概ね以下の通りである。即ち、一般に、赤外線センサ部は、対象物の温度と赤外線センサ部自体の温度、及び赤外線センサ部が対象物を見込む立体角(両者の相互距離と相互の向き)によって出力が定まる。赤外線センサ部の持つこの性質を利用して、立体角を一定に保つことにより対象物の温度を測定する。
【0003】
しかしながら、上述のように立体角を一定に維持した状態で対象物の温度を測定する場合、仮に赤外線センサ部自体の温度を一定にすることができたとしても、通常、対象物の温度と赤外線センサ部の出力値とは比例関係にはない。
その理由は、電磁波のエネルギーと温度とが比例関係にはないからである。周知の通り、通常の赤外線センサ部の出力は、赤外線センサ部が吸収する電磁波のエネルギーと赤外線センサ部が放出する電磁波のエネルギーの差分(に比例する何がしかの物理量)として得られる。このため、他の方式のセンサでは一般的である比例関係式を適用して出力を得ることができない。
【0004】
この対策として、電磁波のエネルギーと温度(絶対温度)との関係について黒体放射に関するステファンボルツマンの法則が成立することを利用した温度測定方法がよく知られている。
ステファンボルツマンの法則に従えば、赤外線センサ部の出力Vは、赤外線センサ部自体の温度をTr、対象物の温度をTbとすると、
V=k・(Tb4−Tr4)………………(1)
で与えられることとなる。ここに、kは適当な変換係数であるが、特別な場合にはステファンボルツマン定数と呼ばれる物理定数となる。
【0005】
但し、上記のステファンボルツマンの法則を利用する場合には、赤外線センサ部がすべての波長の電磁波を吸収・放出できるという重要な前提条件を満たしている必要がある。
このような前提条件を充足するような赤外線センサ部を作ることは事実上不可能であるばかりか、赤外線領域(一般には、波長が0.7マイクロメートルから1ミリメートルの電磁波)の一部分のみ、更には、ごく僅かな波長領域のみが吸収・放出可能な赤外線センサ部も存在する。
従って、赤外線センサ部を用いた温度測定においては、上掲の式(1)からのずれが、測定による偶然誤差ではなく理論的な系統誤差として生じることとなる。
【0006】
また、仮に、全ての波長の電磁波を吸収・放出できる赤外線センサ部を製造することが可能であったとしても、その赤外線センサ部をそのまま放射温度計に適用することには、次のような問題がある。即ち、空気中の水蒸気(H2O)や二酸化炭素(CO2)などの分子が或る特定の波長の赤外線を吸収するという自然現象により、対象物と赤外線センサ部間の距離の変化に伴い、上述の各分子等の分子数が変わり、赤外線吸収量が変化する。このため、結果的に、対象物の温度が変化していないにもかかわらず赤外線センサ部の出力が変化してしまうという問題が生じる。この問題に対処すべく、現在製造されている殆どの放射温度計には、上述のような問題が生じない範囲内の波長のみを透過させる赤外線フィルタが設けられている。従って、赤外線センサ部を用いた放射温度計では、上掲の式(1)におけるステファンボルツマンの法則からの誤差を一掃することは原理的に不可能である。
【0007】
一方、この誤差を小さくする補正方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の提案では、上掲の式(1)からのずれを解消するため、測定対象物の基準温度、赤外線センサ部の基準温度、赤外線センサ部の基準出力値、に加えて、赤外線センサ部の基準温度からの差分、赤外線センサ部の基準出力値からの差分、を測定し、それらの測定結果に基づいて、測定対象物の温度を上記2種類の差分の関数に当てはめ、その関数の係数値を最小二乗法で求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−4451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された手法には、以下に示すような4つの問題点がある。
第1の問題点は、特許文献1に開示された手法だけでは上掲の式(1)に対応するようなセンサ出力と各温度との間に成立する関数形として、4次より大きい次数(冪指数)を持った多項式の次数を定めることができないことである。そして、更に、冪指数として任意の実数を持った関数形を定めることも不可能なことである。仮に4次式でなく更に高次の多項式で補正しようとしても、いったい何次の補正が適切なのかがそもそもこの手法だけで導くことができない。特許文献1に開示された手法では、冪指数として自然数だけを用いているのであるから、実数を用いた場合に比し真値との差異が含まれてしまい高い測定精度が得られない。
【0010】
第2の問題点は、特許文献1に開示された手法では基準となる測定対象温度に係る情報が必要なことである。即ち、赤外線センサ部を使って本来の測定対象の温度を測定する際に、予め本来の目的である測定と同じ測定をせざるを得ず、さらにその測定結果を記憶する必要まである。従って、本来の目的たる測定対象の温度の測定を行うには非常に効率が悪い。
【0011】
第3の問題点は、上述の基準温度或いは基準出力値を非常に多く必要とすることである。既述の通り、一般の赤外線センサ部そのものが既にステファンボルツマンの法則から系統的にずれた出力を出すのであるから、特許文献1に開示された手法では基準温度および基準出力値にごく近い条件下でしか精度の高い測定は実現できない。換言すれば、広い温度範囲で精度の高い測定を可能にするためには、極めて多数の基準温度或いは基準出力値が必要であり手間がかかる。
【0012】
第4の問題点は、仮に関数を上掲の式(1)のような4次式の多項式で近似できたとしても、その係数を求めるのに基準温度や基準出力値だけでなく、更にそれらの差分の測定までもが必要なことである。しかも、特許文献1に開示された手法では、赤外線センサ部の温度と赤外線センサ部の出力の一方を基準点に固定し、他方を変化させる必要がある(この点については後に詳述する)。従って、誤差補正のために非常に多くの測定を非常に複雑な制御条件のもとで行わねばならなくなり、必然的に装置自体のコスト高に直結する。
本発明は、上述のような状況に鑑みてなされたものであり、十分な測定精度を確保しつつ、測定作業が簡素化され、構成が簡単でコスト低減をはかることが可能な、赤外線センサを用いた温度測定装置およびその補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、ここに、次に列記するような技術を提案する。
(1)測定対象の温度を非接触で測定する温度測定装置であって、
赤外線センサ部と、
前記測定対象の温度をTb、前記赤外線センサ部の出力をV、前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、前記赤外線センサ部の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、
Tb={(V―c)/b+Trα}1/α
なる演算によって測定対象の温度Tbを算出する測定対象温度演算部と、
前記赤外線センサ部の出力Vを測定して前記測定対象温度演算部に供給する赤外線センサ出力測定部と、
前記赤外線センサ部の温度Trを測定して前記測定対象温度演算部に供給する赤外線センサ温度測定部と、
前記冪指数の値αを保持し該保持した値を前記測定対象温度演算部に供給する冪指数保持部と、
前記温度係数の値bを保持し該保持した値を前記測定対象温度演算部に供給する温度係数値保持部と、
前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットcの値を保持し該保持した値を前記測定対象温度演算部に供給するオフセット値保持部と、
を備えたことを特徴とする赤外線センサを用いた温度測定装置。
【0014】
(2)前記冪指数保持部は、前記赤外線センサ出力測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ温度測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し実測して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする4以外の値に設定された当該冪指数の値αを保持していることを特徴とする(1)に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【0015】
(3)前記温度係数値保持部は、前記赤外線センサ出力測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ温度測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し実測して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値に設定された当該温度係数の値bを保持していることを特徴とする(1)または(2)に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【0016】
(4)前記オフセット値保持部は、前記赤外線センサ出力測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ温度測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し実測して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値に設定された当該オフセット値cを保持していること特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【0017】
(5)前記ばらつきを表す既定の関数は、赤外線センサ部の出力の実測値と予測値との差を2乗して前記既定の回数N分の和をとったものであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【0018】
(6)赤外線センサ部を用いて測定対象の温度を非接触で測定する温度測定装置の補正方法であって、
前記測定対象の温度をTb、前記赤外線センサ部の出力をV、前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、前記赤外線センサ部の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、
Tb={(V―c)/b+Trα}1/α
なる演算式によって測定対象の温度Tbを算出するようにし、且つ、
前記演算式における冪指数αを、前記赤外線センサ部の出力Vの測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ部の温度の測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により前記赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記演算と同じ演算により前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し算出して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする4以外の値として設定し、
前記演算式における温度係数の値bを、前記赤外線センサ部の出力Vの測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ部の温度の測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により前記赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記演算と同じ演算により前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し算出して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値として設定し、
前記演算式におけるオフセット値cを、前記赤外線センサ部の出力Vの測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ部の温度の測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により前記赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記演算と同じ演算により前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し算出して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値として設定することを特徴とする赤外線センサを用いた温度測定装置の補正方法。
【0019】
(7)前記ばらつきを表す既定の関数は、赤外線センサ部の出力の実測値と予測値との差を2乗して前記既定の回数N分の和をとったものであることを特徴とする(6)に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置の補正方法。
【発明の効果】
【0020】
十分な測定精度を確保しつつ、測定作業が簡素化され、構成が簡単でコストが低減可能な、温度測定装置および温度測定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一つの実施の形態としての温度測定装置を表す機能ブロック図である。
【図2】図1の温度測定装置に保持される各定数を得るための定数算出装置を表す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態としての温度測定方法の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態につき詳述する。これにより本発明を明らかにする。
(本発明の実施の形態としての温度測定装置の構成)
図1は、本発明の一つの実施の形態としての温度測定装置を表す機能ブロック図である。
この温度測定装置10は、図示しない測定対象から放射される赤外線を受光して測定出力を得る赤外線センサ部1を用いて、測定対象温度演算部2における演算によって非接触で当該測定対象の温度を測定する。
【0023】
この赤外線センサ部1としては、量子型、熱型等種類の如何を問わず適用可能である。また、赤外線センサ部を用いて対象物の温度を非接触で測定する温度計(放射温度計ないしは非接触温度計)においては、対象物の一部分の領域のみを測定の対象とするために赤外線集束レンズを併用することが一般的である。また、対象物との距離によって測定誤差が生じるのを防止するために赤外線透過フィルタを併用すること等も一般的である。しかしながら、本発明の技術思想においては、上述のような赤外線集束レンズや赤外線透過フィルタ等の適用の有無を問わない。
【0024】
測定対象温度演算部2は、上記測定対象の温度をTb、赤外線センサ部1の出力(後述するように該出力に対応する赤外線センサ出力測定部3による測定出力)をV、赤外線センサ部1の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、赤外線センサ部1(赤外線センサ部1自体)の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、
Tb={(V−c)/b+Trα}1/α………………(2)
なる演算によって測定対象の温度Tbを算出する。
【0025】
そして、赤外線センサ部1の出力Vを測定して測定対象温度演算部2に供給する赤外線センサ出力測定部3、赤外線センサ部の温度Trを測定して前記測定対象温度演算部に供給する赤外線センサ温度測定部4、冪指数の値αを保持し該保持した値を測定対象温度演算部2に供給する冪指数保持部5、温度係数の値bを保持し該保持した値を記測定対象温度演算部2に供給する温度係数値保持部6、および、赤外線センサ部1の出力に関するオフセットの値cを保持し該保持した値を測定対象温度演算部2に供給するオフセット値保持部7、が設けられている。
【0026】
赤外線センサ出力測定部3は、一般的には微小な値である赤外線センサ部1の出力Vを電気的に増幅して測定するために設けられている。このため、例えば、赤外線センサ部1の出力Vをオペアンプ(Operational Amplifier)等の電子デバイスを用いて電気的に増幅する構成を採る。また必要に応じて、該増幅された電気的信号をAD(Analog to Digital)変換回路によってデジタル値に変換する構成を採る。尚、赤外線センサ出力測定部3で得られた測定出力値を、これ以降、適宜Vと表記する。このVは、AD変換前のアナログ値でも変換後のデジタル値でもよい。また、Vと表記しているが電圧出力と限る必要もなく、電流出力でもよい。一般的には、熱型の赤外線センサ部を適用する場合には電圧出力を、量子型の赤外線センサ部を適用する場合には電流出力を測定するのがよい。
【0027】
赤外線センサ温度測定部4は、最も一般的には赤外線センサパッケージの内部にサーミスタを内蔵する態様を採る。この態様の場合には、サーミスタが赤外線センサ部の直近に存在するため、赤外線センサ部の温度を非常に精度よく測定することが可能である。
尚、赤外線センサ温度測定部4によって測定される赤外線センサ部1自体の温度Tr、および、これ以降の説明で用いる温度に関する表記は(別段の注記を伴わない場合には)全て絶対温度であるものとする。周知の如く、摂氏0℃は絶対温度では273.15K(ケルビン)である。
【0028】
一方、測定対象温度演算部2における演算の式(2)は以下の式(3)をTbについて解いたものである。
V=b・(Tbα−Trα)+c………………(3)
式(2)および式(3)において、αを4なる定数として扱う方法が従来から公知の方法である(例えば、特許文献1の式1参照)。
しかしながら、冪指数αを4なる定数として扱う方法は、上掲の式(1)によって表されるステファンボルツマンの法則に依拠したものである。そして、この法則に依拠する限り、赤外線センサ部の感度波長帯域が全波長帯域(0〜+∞)に渡って検出可能であるという特別な条件下においてのみ適合し、この条件が充足されない場合には、温度測定において系統誤差を生じることは既述の通りである。
【0029】
即ち、赤外線センサ部の感度波長帯域が有限の場合、もしくは赤外線フィルタを併用することにより感度波長帯域を制限している場合にα=4と予め決定してしまう限りは、少なくとも理論的には正確な測定ができない。また、実際の放射温度計への適用を想定した場合に(感度波長帯域が無限に及ぶものでない限り)、赤外線センサ部がすでに理論から外れた測定値を出力するのであるから、ある一定以上の誤差が(偶発的に発生する)偶然誤差としてではなく(必然的に発生する)系統誤差として生じてしまうことになる。
【0030】
本発明では、冪指数αを無条件で4なる定数として扱うことはせず、様々な感度波長帯域を持った赤外線センサ部、及びその赤外線センサ部で構成された放射温度計等の様々なフィルタで波長帯域制限を施した温度測定装置において、上掲の式(2)を適用することによって既述のような系統誤差が根本的に生じない温度測定を可能にしている。
また、本発明では、冪指数αを無条件で4なる定数として扱うことをしないため、当然ながら、このαの値は別段の手段を講じることなくして定まることがない。従って、本発明では、冪指数αを如何様に設定するかの具体的手法を与えることを一つの特徴としており、この手法については次に図2等を参照して詳述する。
【0031】
(測定対象温度演算の各定数を得るための定数算出装置)
図2は、図1の温度測定装置に保持される上述の冪指数の値α、温度係数の値b、および、オフセットの値cである各定数を得るための定数算出装置20を表す機能ブロック図である。なお、図2では説明の便宜上、定数算出装置20だけでなく、これに接続して用いられる赤外線センサ部及び測定対象物も併せて描いてある。図示のように、この定数算出装置20は、赤外線センサ出力繰り返し測定部22、赤外線センサ温度繰り返し測定部23、対象物温度繰り返し測定部24、測定データ蓄積部25、および、ばらつき最小化演算部26の各機能ブロックを含む。
【0032】
赤外線センサ部21は図1の温度測定装置10に適用される赤外線センサ部1と同一物であり、この赤外線センサ部21の出力が赤外線センサ出力繰り返し測定部22に入力され、該出力が測定されるように構成されている。この赤外線センサ出力繰り返し測定部22は、図1における赤外線センサ出力測定部3とその測定特性が同様であり、且つ、測定を繰り返し行う。
【0033】
また、赤外線センサ部21自体の温度を測定する赤外線センサ温度繰り返し測定部23が設けられている。この赤外線センサ温度繰り返し測定部23は、図1の赤外線センサ温度測定部4とその測定特性が同様であり、且つ、測定を繰り返し行う。
更にまた、測定対象物100の温度を測定する対象物温度繰り返し測定部24が設けられている。この対象物温度繰り返し測定部24は、既述の赤外線センサ温度繰り返し測定部23による赤外線センサ部21自体の温度の測定と同様に、測定対象物100の温度をサーミスタ等の温度測定素子を用いて測定する。即ち、このような温度測定素子を測定対象物100に取り付けて温度の測定を行う。
【0034】
上述の赤外線センサ出力繰り返し測定部22、赤外線センサ温度繰り返し測定部23、および、対象物温度繰り返し測定部24は、図示しないコントローラ等によって、繰り返し行う各測定のタイミングが同期するように管理される。また、この定数算出装置20によって、上述の冪指数の値α、温度係数の値b、および、オフセットの値cの3つの定数を求めることから、各測定は3回以上繰り返される。そして、各測定のタイミングの同期をとることによって測定値の同時性が確保され、赤外線センサ出力繰り返し測定部22の各測定値が赤外線センサ温度繰り返し測定部23の各対応する測定値によって適切に補償され得る。同様に、対象物温度繰り返し測定部24の各測定値に関し、赤外線センサ出力繰り返し測定部22および赤外線センサ温度繰り返し測定部23の各対応する測定値の同時性が確保され、後の処理において、適切な演算が実行され得る。
【0035】
このようにして得られた、赤外線センサ出力繰り返し測定部22による測定データ、赤外線センサ温度繰り返し測定部23による測定データ、および対象物温度繰り返し測定部24による測定データは、測定データ蓄積部25に転送され、ここに蓄積される。本例では、上述の3通りの各測定項目毎にN個のデータを取得した場合、合計3N個のデータが蓄積されることになる。
そして、測定データ蓄積部25に蓄積されたこれらのデータに基づいて、ばらつき最小化演算部26における演算処理によって、冪指数の値α、温度係数の値b、および、オフセットの値cの各定数が算出される。
【0036】
ばらつき最小化演算部26においてこれら各定数の割り出しに適用される方法について次に説明する。
上述のN個のデータのうち、赤外線センサ出力繰り返し測定部22によるi番目の測定データをVi、赤外線センサ温度繰り返し測定部23によるi番目の測定データをTri、対象物温度繰り返し測定部24によるi番目の測定データをTbiとすれば、上掲の式(3)と全く同様の考察により、未知数α、b、および、cに関して、次の方程式が成立する。
Vi=b・(Tbiα−Triα)+c (i=1〜N)…………(4)
この式(4)の方程式は、未知数3個、本数N本の連立方程式である。このような場合には一般に3変数の最小2乗法(もしくは重回帰分析)が用いられる。この連立方程式から上述の未知数α、b、および、cを求める。
ばらつき最小化演算部26において、先ず始めに式(4)に鑑み以下の値Sを定義する。
【0037】
【数1】

【0038】
式(5)おいてSは、実測値Viと予測値b・(Tbiα−Triα)との差を2乗して上述のデータ取得回数N分の和をとったものであるから、ばらつきの指標を表す関数である。従って、α、b、および、cの最適値は、このS値が最小となる場合の値である。
S値が最小となるためには、α、b、および、cの全てに関する偏微分の値が0とならなければならない。従って、以下の式(6)、(7)、および、(8)が成り立つ。
【0039】
【数2】

【0040】
尚、式(6)におけるlogは、全てeを底とする自然対数である。
上掲の式(6)、(7)、および、(8)は、未知数α、b、および、cに関する3元連立方程式であるが、未知数αが絶対温度の冪指数となっているため、非線形の連立方程式である。従って、クラメールの解法等の解析的な手法ではこれら未知数を演算することはできない。このため、ニュートン・ラプソン法などの反復数値計算法で求めるのがごく一般的な手法である。但し、この手法には次の2つの弱点がある。
第1点は、初期値が真の解から離れていると収束せず、解がいつになっても求まらないということである。
第2点は、仮に初期値が近くても収束が遅い場合がり、この場合には計算に時間がかかるということである。
【0041】
上述のような弱点を克服するために、上掲の式(6)〜(8)の方程式の形に鑑み、以下のような手法を用いることも可能である。この手法によれば確実に解が求まる。
即ち、上掲の(6)〜(8)の方程式は、αを未知数でなく既知の定数と仮定すれば、全てbとcに関する線型連立方程式である。一方で、αは4と決め付けることこそできないものの、負の数になることは理論上あり得ない。また、赤外線領域を感度波長帯域とする限り、冪指数であるαが20以上という大きな数になったりすることは通常ない。この物理的要請を利用する。
先ず、式(6)は以後すべて無視する。一方で、式(7)と式(8)でαを0に近い数字(たとえばα=0.1)と仮定すると、これら2本の式はb、cに関する線型連立方程式である。従って、上記クラメールの解法などによって解析的に解くことができる。
【0042】
次に、この解いたbとcの値、及び仮定したαの値を用いて、式5(5)S値を算出する。そして、得られたα、b、cとS値を記憶しておく。続いて、式(7)と式(8)において、αを先に仮定した値よりも少し増加させる(たとえばα=0.2)。このような仮定のもとで再びクラメールの解法などを用いてb、cを解き、同様に式5のS値を算出する。
【0043】
以上のような計算をαが20程度になるまで繰り返すと、式(5)のS値がαの関数として(離散的に)定められる。その中でS値を最小(乃至は極小でもよい)にするαの値、更にそのα値のときのbとcが、取りも直さず式(6)〜(8)の非線型連立方程式の解である。
ここでα値を更に精度よく求めたければ、その要求精度に応じてαの増加分割量を小さく設定して分解能を高めた操作をすればよい。即ち、既述の例では、α値を0.1ずつ変化させていたところ、これを、例えば、0.01もしくは0.001とすればよい。
【0044】
(実施の形態における作用・効果のまとめ)
以上に述べた本発明の実施の形態としての温度測定装置に関する作用・効果について要約的に列記する。
(1)ステファンボルツマンの法則からずれる現実の赤外線センサ部に対しても精度の高い温度測定が可能となる。一般に、室温付近(摂氏25℃、絶対温度300ケルビン程度)の環境および測定対象物に対して、吸収・放出可能な波長領域が10ミクロン以下の赤外線センサ部を用いて測定すると、ステファンボルツマンの法則である4乗則よりも高いべき乗値が得られる。この場合には、特に本発明装置および方法が有用である。この場合、冪指数を「4」等の自然数だけに限定していないため、4乗に近い特性を示す赤外線センサ部に対してもさらに精密な補正が可能となる。
【0045】
(2)精度の高い温度測定をするための前準備として、3個の未知数を決めることができればよい。即ち、最小測定回数は3回である。
(3)一旦演算式における各定数を決めると、基準となる測定対象温度の測定や記憶などは一切必要なく、測定の回数を大幅に低減できる。因みに、上掲の特許文献1所載の手法では、基準値(調整点)を1点につき3個、さらに差分に係る情報として4次式の係数が上記基準値1点につき10個必要であり、それらの基準値を予め求めるための測定回数は最低でも13回必要である。
(4)測定条件には何の束縛もない。従って、測定条件は用途や特性に合わせて自由に決めることが可能である。
(5)上記を総じて、利便性の向上とコストの低減との双方が実現可能となる。
【0046】
(応用例について)
最後に、これまで説明した本発明の温度測定装置は、前述のさまざまな装置、非接触温度計、サーモグラフィ、赤外線カメラ等の製品への適用が可能である。以下に3つの例を挙げて説明する。
第一の例としては、1個の赤外線センサ部にレンズとアダプタを取り付けて向きを変えながらデータを取得すると、平面内の温度分布を取得することが可能となる。この取得された温度分布はまさに「サーモグラフィ」とほぼ同等のものである。
第二の例としては、赤外線センサ複数個を平面状に(アレイ状)に配置し、レンズとアダプタを取り付けると「赤外線カメラ」が完成する。
第三の例としては、赤外線センサ複数個を直線状に配置し、レンズとアダプタを取り付けるとともに、たとえば上記直線と直交する方向に対して向きを変えながらデータを取得すると、やはり平面内の温度分布を取得することが可能となる。この第三の例は、エアコンの風向制御等によく適用されているものである。
【0047】
(本発明の実施の形態としての温度補正方法)
図3は、本発明の実施の形態としての温度補正測定方法の一例を表すフローチャートである。特に、このフローの順番に従って測定する必要はなく、あくまで一例である。 この温度測定方法では、測定対象の温度をTb、前記赤外線センサ部の出力をV、前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、前記赤外線センサ部の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、
Tb={(V―c)/b+Trα}1/α
なる上掲の式(2)によって測定対象の温度Tbを算出するべく、各定数α、b、および、cを得る。
このために、上掲の式(5)で定義されるばらつきSの関数値を最小とする条件を充足する値として、定数α、b、および、cを得る(ステップS301)。
次いで、ステップS301で取得した定数α、b、および、cを上掲の式(2)に適用する(ステップS302)。
ステップS302で各定数α、b、および、cが定まった式(2)における変数VおよびTrを測定し、該測定値に基づいて式(2)の演算を実行し、測定対象の温度をTbを算出する(ステップS303)。
【符号の説明】
【0048】
1,21………………………………………赤外線センサ部
2………………………………………………測定対象温度演算部
3………………………………………………赤外線センサ出力測定部
4………………………………………………赤外線センサ温度測定部
5………………………………………………冪指数保持部
6………………………………………………温度係数値保持部
7………………………………………………オフセット値保持部
10……………………………………………温度測定装置
20……………………………………………定数算出装置
22……………………………………………赤外線センサ出力繰り返し測定部
23……………………………………………赤外線センサ温度繰り返し測定部
24……………………………………………対象物温度繰り返し測定部
25……………………………………………測定データ蓄積部
26……………………………………………ばらつき最小化演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の温度を非接触で測定する温度測定装置であって、
赤外線センサ部と、
前記測定対象の温度をTb、前記赤外線センサ部の出力をV、前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、前記赤外線センサ部の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、Tb={(V―c)/b+Trα}1/αなる演算によって測定対象の温度Tbを算出する測定対象温度演算部と、
前記赤外線センサ部の出力Vを測定して前記測定対象温度演算部に供給する赤外線センサ出力測定部と、
前記赤外線センサ部の温度Trを測定して前記測定対象温度演算部に供給する赤外線センサ温度測定部と、
前記冪指数の値αを保持し該保持した値を前記測定対象温度演算部に供給する冪指数保持部と、
前記温度係数の値bを保持し該保持した値を前記測定対象温度演算部に供給する温度係数値保持部と、
前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットcの値を保持し該保持した値を前記測定対象温度演算部に供給するオフセット値保持部と、
を備えたことを特徴とする赤外線センサを用いた温度測定装置。
【請求項2】
前記冪指数保持部は、前記赤外線センサ出力測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ温度測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し実測して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする4以外の値に設定された当該冪指数の値αを保持していることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【請求項3】
前記温度係数値保持部は、前記赤外線センサ出力測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ温度測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し実測して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値に設定された当該温度係数の値bを保持していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【請求項4】
前記オフセット値保持部は、前記赤外線センサ出力測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ温度測定部と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し実測して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値に設定された当該オフセット値cを保持していること特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【請求項5】
前記ばらつきを表す既定の関数は、赤外線センサ出力の実測値と予測値との差を2乗して前記既定の回数N分の和をとったものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置。
【請求項6】
赤外線センサ部を用いて測定対象の温度を非接触で測定する温度測定装置の補正方法であって、
前記測定対象の温度をTb、前記赤外線センサ部の出力をV、前記赤外線センサ部の出力に関するオフセットをc、温度係数をb、前記赤外線センサ部の温度をTr、温度の演算式における冪指数をαとするとき、Tb={(V―c)/b+Trα}1/αなる演算式によって測定対象の温度Tbを算出するようにし、且つ、
前記演算式における冪指数αを、前記赤外線センサ部の出力Vの測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ部の温度の測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により前記赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記演算と同じ演算により前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し算出して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする4以外の値として設定し、
前記演算式における温度係数の値bを、前記赤外線センサ部の出力Vの測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ部の温度の測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により前記赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記演算と同じ演算により前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し算出して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値として設定し、
前記演算式におけるオフセット値cを、前記赤外線センサ部の出力Vの測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により赤外線センサ部の出力Vを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ出力データと、前記赤外線センサ部の温度の測定に適用する測定器と等しい測定特性を有する測定器により前記赤外線センサ部の温度Trを既定の回数以上繰り返し測定して得た赤外線センサ温度データと、前記演算と同じ演算により前記測定対象の温度Tbを既定の回数以上繰り返し算出して得た測定対象温度データとの各データに基づいて、ばらつきを表す既定の関数の値を最小とする値として設定することを特徴とする赤外線センサを用いた温度測定装置の補正方法。
【請求項7】
前記ばらつきを表す既定の関数は、赤外線センサ出力の実測値と予測値との差を2乗して前記既定の回数N分の和をとったものであることを特徴とする請求項6に記載の赤外線センサを用いた温度測定装置の補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−252799(P2011−252799A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126925(P2010−126925)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】