説明

赤外線吸収コーティング剤組成物

【課題】赤外線センサー、特に、例えば、8〜12μmの赤外線に感応域を持つセンサー等に利用される赤外吸収微細構造の加工用コーティング剤として有用な、無機微粒子を含有した赤外線吸収コーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】以下のA群から選択される少なくとも1種及び以下のB群から選択される少なくとも1種の、動的光散乱法により求めた重量平均粒径が500nm以下の、無機微粒子を分散媒体中に含有する赤外線吸収コーティング剤組成物:
A群:二酸化ケイ素、窒化ケイ素;
B群:二酸化ゲルマニウム、窒化アルミニウム、珪酸塩化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子を含有する赤外線吸収コーティング剤組成物に関し、特に、赤外線センサーに利用される赤外線吸収微細構造の加工用コーティング剤等として有用な赤外線吸収コーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線センサー等に利用される赤外線吸収層については、金黒薄膜等の金属黒薄膜の利用(特許文献1、特許文献2参照。)、カーボンブラック等の黒色の色材分散高分子材料の利用(特許文献3参照。)等が知られている。また、近年、赤外線センサー素子を集積した赤外線センサーアレイが物体の検知や画像認識において注目されており、赤外線吸収微細構造を効率的に製造する技術が要請されている。このようなセンサーにおいては、一般に、中遠赤外線である8〜12μmの赤外線が検知される。
【0003】
しかしながら、金属黒薄膜を利用した場合、微細構造の加工を行う際に多くの工程を経なければならず、また下地との密着不良が起こる問題がある。また、上記色材分散高分子材料では、幅広い波長領域で光の吸収が起こるため、センサーの高感度化に際して、多くのノイズを発生させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−148663号
【特許文献2】特開2007−150217
【特許文献3】特開平6−74821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、赤外線センサー、特に、例えば、8〜12μmの中遠赤外線に感応域を持つセンサー等に利用される赤外線吸収微細構造の加工用コーティング剤等として有用な、無機微粒子を含有した赤外線吸収コーティング剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下のA群から選択される少なくとも1種及び以下のB群から選択される少なくとも1種の、動的光散乱法により求めた重量平均粒径が500nm以下の、無機微粒子を分散媒体中に含有する赤外線吸収コーティング剤組成物である:
A群:二酸化ケイ素、窒化ケイ素;
B群:二酸化ゲルマニウム、窒化アルミニウム、珪酸塩化合物。
本発明の他の態様においては、無機微粒子は、重合性の反応基を有する、分散剤又はカップリング剤、によって表面処理されたものであり、重合開始剤を含有する上述の組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大気の窓といわれる赤外線波長、とくに、そのうち8〜12μmの中遠赤外線に対する高い選択的吸収率を持ち、8〜12μm赤外線センサーの高感度化にも充分な対応が可能なセンサーを提供できる。更に、本発明によれば、微細構造の加工を行う際に、フォトリソグラフィー法を用いて、少ない工程で精密な微細構造を形成することも可能である。また下地との密着不良が起こる問題を回避可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の赤外線吸収コーティング剤組成物(以下、単に本発明のコーティング剤組成物ともいう。)は、上記のA群から選択される少なくとも1種及び上記のB群から選択される少なくとも1種の無機微粒子を必須成分として含有する。上記A群は、二酸化ケイ素(SiO2)及び窒化ケイ素からなる。窒化ケイ素は、典型的にはSi3N4と表記されるが、製造される化合物は必ずしもSiとNの比が理論値の3:4になっているわけではなく、それゆえ単にSiNと表記されたり、SixNyと表記されることもある。
【0009】
A群の化合物としては、赤外線に対する高い選択的吸収率が得られる点で窒化ケイ素が好ましい。A群の化合物は、1種又は2種を用いることができる。
【0010】
上記B群は、二酸化ゲルマニウム(GeO2)、窒化アルミニウム(AlN)及びケイ酸塩化合物からなる。ケイ酸塩化合物は、二酸化ケイ素と金属酸化物からなり、一般式xM2O・ySiO2で表される。ただし、Mは金属元素を表す。ケイ酸塩化合物の具体例としては、組成式で表すと、例えば、ZrSiO4、MgSiO4、Al2SiO5が挙げられる。ケイ酸塩化合物としては、これらのうち、赤外線吸収強度の点でZrSiO4が好ましい。
【0011】
B群の化合物としては、二酸化ゲルマニウム、ケイ酸塩化合物が好ましく、更に好ましくは、微粒子化の容易さとコストの観点でケイ酸塩化合物である。B群の化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
A群の化合物は、一般的にいえば、およそ9μm前後の赤外線に対する吸収率が高く、B群の化合物は、一般的にいえば、およそ11〜12μm前後の赤外線に対する吸収率が高い。
【0013】
A群の化合物とB群の化合物との配合比率は、所望の赤外線吸収率特性になるように適宜定めることができる。一般的には、例えば、8〜12μmの中遠赤外線に対する高い選択的吸収率を示すように、配合すればよい。具体的には、例えば、以下の組み合わせを以下の配合重量比で用いることができる。
SiO2:GeO2=30〜70:30〜70、
Si3N4:AlN=20〜80:20〜80、
SiO2:ZrSiO4=20〜80:80〜20等
【0014】
本発明のコーティング剤組成物においては、さらに、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化タンタルからなるC群から選択される少なくとも1種の無機微粒子を含有することが好ましい。具体的には、例えば、以下の組み合わせを以下の配合重量比で用いることができる。
SiNy:ZrSiO4:Al4O3=20〜80:20〜80:1〜60
【0015】
上記A群、B群及びC群の無機微粒子は、いずれも、平均粒径が500nm以下のものを使用する。このような無機微粒子であると、コーティング剤として、例えば、微細構造の形成に関してエッジラフネスの低減、塗膜の形成に関して平坦性向上のようなよい結果をもたらす。好ましくは250nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
【0016】
上記A群、B群及びC群の無機微粒子は、平均粒径が5nm以上のものが好ましく、より好ましくは10nm以上である。
【0017】
本発明において、無機微粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した重量平均二次粒径である。
【0018】
本発明において、上記A群、B群及びC群の無機微粒子は、分散剤やカップリング剤などを用いることで分散媒体中に分散させることができる。とくに、重合性の反応基を有する分散剤又は重合性の反応基を有するカップリング剤によって表面処理をし、分散させることが好ましい。重合性の反応基としてはとくに限定されず、付加重合反応、重縮合反応、付加縮合反応等の反応を行う、例えば、ラジカル重合性の反応基、イオン重合性の反応基、開環重合性の反応基等を挙げることができ、具体的には例えば、エチレン性二重結合含有基、エポキシ基、加水分解性シリル基等を挙げることができる。
【0019】
本発明において、上記A群、B群及びC群の無機微粒子は、表面処理した無機微粒子を用いる以外に、表面処理していない無機微粒子と分散剤やシランカップリング剤とを配合することも可能である。
【0020】
上記分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、リン酸系分散剤、シリコン系分散剤などを挙げることができる。
【0021】
上記カップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン類;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン等のビニルシラン類;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等の第四級アンモニウム塩類;p−スチリルトリメトキシシラン;フェニルトリメトキシシラン;イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルジアクリルイソステアロイルチタネート等のチタネート類等を挙げることができる。
【0022】
上記無機微粒子を上記分散剤又は上記カップリング剤で表面処理するには、常法を用いることができるが、例えば、シラン系カップリング剤で処理するには、無機微粒子100重量部に対して1〜50重量部を用いて、無機微粒子を溶媒に分散させ、酸性条件下でカップリング剤を混合し、作用させることにより行うことが出来、他のカップリング剤や分散剤による処理も、当業者が通常行う方法で実施することができる。
【0023】
上記表面処理した無機微粒子を使用する際、本発明のコーティング剤組成物には、必要に応じて、重合開始剤を使用することができる。上記重合開始剤としては、重合性の反応基に応じて、例えば、ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を使用することができる。
【0024】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、クメンハイドロパーオキシド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルベンゾイルフォーメート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0025】
上記カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアルキルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、アリールジアルキルスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、アリールジアルキルスルホニウムテトラパーフルオロフェニルホウ酸塩、ジアリールアルキルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩、トリフェニルスルホニウムホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート等を挙げることができる。
【0026】
上記重合開始剤の配合量は、無機微粒子の配合量により異なり得るが、一般的には、組成物中に、0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。
【0027】
本発明のコーティング剤組成物においては、反応性希釈剤を含有することが、成膜性の観点から好ましい。上記反応性希釈剤としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、メチル(メタ)アクリレーエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0028】
上記反応性希釈剤の配合量は、組成物中に0〜60重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましい。
【0029】
本発明のコーティング剤組成物には、無機微粒子を分散するための分散媒体を用いる。上記分散媒体としては、常温(典型的には25℃)常圧(典型的には1気圧)下で液状の、揮発又は蒸発可能なものであればよく、例えば、水、有機溶媒等を用いることができる。また。上記反応性希釈剤を分散媒体とすることもできる。反応性希釈剤を分散媒体とする場合は、揮発性や蒸発性を求めない。上記有機溶媒としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレンモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのアルキレンモノアルキルエーテル類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジブチルなどのエステル類などを挙げることができる。
【0030】
本発明のコーティング剤組成物中の無機微粒子の配合量は、成膜性と赤外吸収特性の観点から、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましい。
【0031】
本発明のコーティング剤組成物は、上述の各成分を混合して調製することができる。
【0032】
本発明のコーティング剤組成物を用いて赤外線吸収コーティング、より具体的には8〜12μmの波長域で感応域を持ち、しかもこの波長域の赤外線に対する高い選択的吸収率を持つ中遠赤外線吸収層を形成するには、基板等の被塗物に、公知の方法により塗布し、必要に応じて80〜120℃で乾燥するなどの手段により、塗膜を形成し、必要により、さらに重合反応により硬化させればよい。
【0033】
塗布膜厚は、通常、ドライ膜厚で0.1〜10μmである。
【0034】
また、本発明のコーティング剤組成物を用いて赤外線吸収微細構造を形成するには、本発明のコーティング剤組成物、好ましくは、無機微粒子としては、重合性の反応基を有する分散剤又はカップリング剤によって表面処理されたものを使用し、しかも重合開始剤を含有する、本発明のコーティング剤組成物、さらに好ましくは、さらに反応性希釈剤を含有する本発明のコーティング剤組成物、を用いて基板上に塗膜を形成し、好ましくはリソグラフィー法によりパターニングする方法を用いることができる。上記リソグラフィー法としては、例えば、光重合開始剤を含有する本発明のコーティング剤組成物を用いた塗膜に、マスクを介して露光した後、現像液により現像を行う方法を挙げることができる。以下、詳細に説明する。
【0035】
上記現像に使用できる現像液としては特に限定されないが、例えば、下記成分(A)〜(E)を含有するものが好ましく用いられる。これらのうち、成分(A)〜(C)は必須成分であり、成分(D)、成分(E)は必要に応じて添加する任意成分である。
(A)グリフィン法によるHLB値が7〜18のアセチレンアルコール系界面活性剤
(B)アルカリ成分
(C)水
(D)有機溶媒
(E)その他の添加剤
【0036】
グリフィン法によるHLB値が7〜18のアセチレンアルコール系界面活性剤(A)としては、例えば、アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物、具体的には例えば、アセチレングリコール(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)とエチレンオキサイドとの付加反応により得られる化合物であって、エチレンオキサイドの付加量が35〜90重量%のもの、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールにエチレンオキサイド40重量%付加のもの(HLB値8)、65重量%付加のもの(HLB値13)又は85重量%付加のもの(HLB値17)等を挙げることができる。また、アセチレングリコールとエチレンオキサイドとの付加反応により得られる化合物の混合物であって、各化合物のグリフィン法によるHLB値の加重平均が7〜18のものであってもよい。例えば、グリフィン法によるHLB値が6のものと13のものとを等量混合した場合の混合物のHLB値は9.5であり、このような混合物も使用可能である。
【0037】
上記現像液中のアセチレンアルコール系界面活性剤(A)の添加量は、0.2〜10重量%が好ましいが、より好ましくは0.3〜7重量%であり、さらに好ましくは0.5〜5重量%、もっとも好ましくは0.55〜5重量%である。
【0038】
上記アルカリ成分(B)は、有機アルカリ、無機アルカリどちらでもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩又はピロリン酸塩等の無機アルカリ;ベンジルアミン、ブチルアミン等の第1級アミン、ジメチルアミン、ジエタノールアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン等の環式アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のポリアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類、トリメチルスルホニウムヒドロキシド、ジエチルメチルスルホニウムヒドロキシド、ジメチルベンジルスルホニウムヒドロキシド等のスルホニウムヒドロキシド類等の有機アルカリが挙げられ、あるいは、コリン、ケイ酸塩含有緩衝液等であってもよく、これらは、単独又は混合して用いてもよい。これらのうち、好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0039】
上記現像液中、アルカリ成分(B)の添加量は、0.01〜10重量%が好ましいが、より好ましくは0.03〜5重量%であり、さらに好ましくは0.05〜1重量%である。また、上記(A)成分と上記(B)成分との合計量は0.21〜20重量%が好ましく、0.33〜12重量%がより好ましく、さらに好ましくは0.55〜6重量%である。
【0040】
水(C)の含有量は、上記(A)成分と上記(B)成分との合計量と、任意の成分を配合する場合は、それらの配合量を控除した残部である。水の含有量の下限は30重量%又はそれ以上が好ましい。
【0041】
上記有機溶媒(D)としては、種々のものを挙げることができる。例えば、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、乳酸メチル、乳酸エチル等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールアルキルエーテル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアルキルエーテルアセテート系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル等のエステル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素系溶媒等を挙げることができる。
【0042】
上記有機溶媒(D)を用いる場合の添加量は、通常は、現像液中40重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0043】
その他の添加剤(E)としては、例えば消泡剤などが挙げられる。
【0044】
消泡剤を使用する場合の添加量は、通常は、現像液中、0.01〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量%であり、さらに好ましくは0.1〜2重量%である。
【0045】
上記露光は、例えば、カーボンアークランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、可視光レーザー等の光源を用いて、必要に応じて所望の部位に対して行うことができ、例えば、フォトマスクを介したパターン露光や、あるいは、光線走査によるパターン露光等の手法で行うことができる。照射エネルギー量は、使用する光源により適宜決定することができるが、高圧水銀ランプの場合を例示すれば、通常、10〜1000mJ/cm程度とすることができる。
【0046】
現像条件としては、20〜25℃、30〜300秒で、吹きつけ法やディップ法により現像液を適用すればよい。現像の後、必要に応じて、純水リンス処理を行うことができる。更に、乾燥のために、80〜150℃、60〜300秒で、脱水ベーク処理を行ってもよい。
【0047】
上記基板としては、例えば、赤外線センサー、特に、赤外線センサーアレイを形成するための基板を挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は専ら説明のためのものであり、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1〜5、比較例1〜7
コーティング剤組成物の調製
表1の配合によりそれぞれ各成分を混合し、各サンプル組成物を得た。ここで、表1に示す各成分の配合比率は、固形分(溶媒を含まない)について記載しており、夫々プロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、固形分濃度が50重量%となる様に調製した。この組成物を、スピンナーを用いてシリコン基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚み約2μmの塗膜を形成した。尚、ここで使用した無機微粒子の重量平均二次粒径は、SiO2:50nm、SixNy:38nm、ZrSiO4:230nm、GeO2:20nm、MgSiO4:100nm、AlN:100nm、酸化アルミニウム:38nm、WO2:100nm、酸化タンタル:250nmである。
【0050】
得られた塗膜について、下記の評価をした。結果を表1に示した。
赤外線吸収率特性
8〜12μmの範囲(I)及び4〜8μm、12〜16μmの範囲(II)で吸収スペクトルの面積を計測しI/I+IIが0.5以上の値であり、かつ(I)の波長範囲の1/2以上で吸収率が30%以上の場合に○、それ以外を×として評価した。
【0051】
実施例6〜11
パターニング性能の評価
表2の無機微粒子と樹脂、重合開始剤を用いて、実施例1と同様にしてコーティング剤組成物を調製し、シリコン基板上に塗膜を形成し、マスクを介して250Wの高圧水銀ランプを用いて、波長405nmにて光強度9.5mW/cmの紫外線を500mJ/cmのエネルギー量となるように照射したものを、サーフィノール465(エア・プロダクツ株式会社製、アセチレンアルコール系界面活性剤、HBL値13)を3重量%及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを0.4重量%含有する水溶液を用いて、23℃、2分間の条件で現像し、最後に超純水でリンスし、得られた薄膜を有する基板を100℃のホットプレート上で120秒間脱水ベーク処理することで乾燥させた。得られたパターンを光学顕微鏡で観察してパターニング性能を評価した。50μm幅のラインパターンが解像できていれば○、できていなければ×とした。結果を表2に示した。表中、Z−320はダイセルサイテック社製アクリル化アクリレート樹脂を表し、IR902はBASF社製イルガキュアー902を表す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1の結果から、本発明のコーティング剤組成物は、波長8〜12μm域に選択的に吸収がある組成物であることが確認された。一方、比較例の組成物は波長8〜12μm域に選択的吸収が得られない組成物であった。
【0055】
表2の結果から、本発明のコーティング剤組成物は、フォトリソグラフィーによるパターニングが可能な組成物であることが確認された。一方、比較例の組成物は、試してみたが、その結果、フォトリソグラフィーによるパターニングは不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のA群から選択される少なくとも1種及び以下のB群から選択される少なくとも1種の、動的光散乱法により求めた重量平均二次粒径が500nm以下の、無機微粒子を分散媒体中に含有する赤外線吸収コーティング剤組成物:
A群:二酸化ケイ素、窒化ケイ素;
B群:二酸化ゲルマニウム、窒化アルミニウム、珪酸塩化合物。
【請求項2】
無機微粒子の平均粒径は、5nm以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
さらに、以下のC群から選択される少なくとも1種の、動的光散乱法により求めた重量平均二次粒径が500nm以下の、無機微粒子を含有する請求項1又は2記載の組成物:
C群:酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化タンタル。
【請求項4】
A群から選択されるのは、窒化ケイ素である請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
B群から選択されるのは、二酸化ゲルマニウム及び珪酸塩化合物から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
無機微粒子は、重合性の反応基を有する分散剤又は重合性の反応基を有するカップリング剤によって表面処理されたものであり、重合開始剤を含有する請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
【請求項7】
反応性希釈剤を含有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
基板上に塗膜を形成し、マスクを介して紫外線を照射した後、現像液により現像可能な請求項6または7記載の組成物
【請求項9】
グリフィン法によるHLB値が7〜18のアセチレンアルコール系界面活性剤、アルカリ成分及び水を含有する現像液により現像可能な請求項8記載の組成物。

【公開番号】特開2013−64093(P2013−64093A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204865(P2011−204865)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】