説明

走行不能車用台車

【課題】 キャリアカーの積載能力に相当する被移動車両を支障無く搭載可能する上、車輪やその懸架装置が大きく変形、破損した場合であっても何らの制約も受けず、被移動車両を迅速にジャッキアップし、キャリアカー荷台上への移動を実現可能とする新たな牽引手段を提供する。
【解決手段】 溝部21を上向きに配した本体フレーム2と、その左右端の前後に配置させた橇型滑走板4付きキャスター31,31,……からなる走行体3,3とを有し、それらキャスター31の中、前側同士間および後ろ側同士間に連結棒5,5を配して連動させ、本体フレーム2に軸着した操舵杆51の前後端を、前後連結棒5,5の各中央付近に連結した上、該操舵杆51を操舵可能とする操舵入力機構6を設け、本体フレーム2溝部21に、左右一対のジャッキ7,7を左右移動可能に組み込んだ走行不能車用台車1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、事故や故障等による走行不能車両の輸送に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであり、車両用の台車を製造する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
事故や故障等によって走行不能となった車両は、不具合の発生場所における応急処置が全く不可能か、応急処置によっても安全走行が確保できなくなると、牽引または車載型のレッカー車やキャリアカー等を用いて修理工場や自動車販売店等に輸送せざるを得ないこととなるが、特に事故によって前後車輪の何れか一方か、その懸架装置等に大きな損傷を受けてしまった車体を輸送しなければならない場合には、少なくともクレーンおよび被移動車両の前後何れか一方の左右二輪を搭載して走行可能とするレッカー車がどうしても必要となり、また、駆動系を解除できず四輪がロック状態となってしまった四輪駆動や、自走不可能な被移動車両を輸送するような場合には、キャリアカーや輸送用トラックの車体にクレーンを装備した輸送車両が不可欠となり、被移動車両の車体底部もしくはルーフ(車室内)下面に前後複数本の角材やベルト等を通し、クレーンを用いて輸送車両の荷台上に吊上げ、搭載して輸送する必要があった。
【0003】
しかしながら、一般的な自動車販売店等では、新車の納車や車検、店舗間の販売車両の輸送等を目的としたキャリアカーについては所有しているものの、事故車両や駆動系のトラブル等により、全く車輪が回転しない状態となってしまった車体を輸送するための手段となると、その頻度がかなり少ないことに加え、キャリアカーに比較して遥かに高価なレッカー車やクレーンを装備した特種輸送車両等は、主に専門のレスキューサービス会社や、そうした車両の使用頻度が高い修理工場等でしか所有していないのが実情であり、大多数の自動車販売店などで、いざ得意客利用の車両が大破してしまったときに、その対応が円滑に対応できないために不評を買ってしまうという事態がこれまでにも頻発しており、その割には有効な手は打たれないまま事態が放置されてきていた。
【0004】
(従来の技術)
そうした中にも、その打開策となるようなものとして、例えば実開平6−68979号公報「自動車移動装置」発明として提案されているもののように、フレームの下に左右の走行用車輪を取り付け、該フレームの走行用車輪よりも手前側に牽引アームを取付け、同フレームに油圧ジャッキと、被牽引車の下部に差し込み可能で且つ油圧ジャッキによって昇降でき、上昇時に被牽引車を持ち上げ可能とするリフトアームとを装備したものとなし、車輪やその懸架、駆動系等が破損して自走不可能となった被牽引車両の車体下部に、前方もしくは後方から当該リフトアームを差し込み、ジャッキアップしてキャリアカーの荷台上まで牽引可能としたもの、あるいは実開平5-49485号公報に開示された「自動車牽引運搬車における補助装置」考案のように、前後左右に車輪を配置した枠状のタイヤハウスを設けると共に、該タイヤハウス内にスライド可能な車輪固定プレートを組み込んでなるものとしてあって、複数の当該補助装置に対して被牽引車両の車輪を個々別々に搭載し、各車輪固定プレートによって挟着状とした上、チェーンやロープなどで固定して走行、運搬可能とするもの等が散見される。
【0005】
しかし、前者の「自動車移動装置」発明は、左右の走行用車輪の前方に牽引アームを延伸させ、後方にリフトアームを延伸するようにした構造となっているため、どうしても前後長寸法は大きくならざるを得ず、したがって、被移動車両をキャリアカーの荷台上に牽引操作しようとすると、同被移動車両の前方には、自動車移動装置自体を配備するためのかなり大きな空間を必要とすることになってしまい、被移動車両輸送のためでありながら、その被移動車両全長に比較して大幅に大きな荷台を確保するようにしたキャリアカーとしなければ、被移動車両の荷台への搭載が不可能になってしまうという不都合があり、また、後者の「自動車牽引運搬車における補助装置」考案のものには、被牽引車両の車輪自体を搭載して走行するようにした形式のものとなっていて、事故によって車輪が大きく変形または脱落してしまった場合、全く搭載することができなくなってしまうという致命的な欠点があった。
【特許文献1】(1)実開平6−68979号公報 (2)実開平5-49485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上記において見てきたとおり、従前までに提案のある車両移動用の装置類やそれらに関連する技術であって、車体をジャッキアップして移動する機能を有するものにあっては、何れもその機能を優先させんがために装置自体が大型化してしまい、例えば被移動車両1台分の搭載スペースしか備えていないキャリアカーに対しては、移動装置それ自体の移動空間が確保できず、被移動車両を牽引、搭載不能になってしまうことから装置自体の使用すらできないという大きな課題を残すものとなっており、また、十分に小型化されていてキャリアカーの荷台スペース占拠という問題を無くしたものであっても、それらは、例えば被移動車両の各車輪を個々、別々に搭載するものとなっていて、車輪やその懸架装置等が大きく変形、破損してしまった被移動車両には全く使用することができないという新たな課題を抱えてしまっており、結局はレッカー車やクレーン装備の特殊輸送車両等に頼らなければならず、こうした事態が発生したときには、どうしてもレスキューサービスのできる会社やそれら手段の用意された修理工場への依頼が不可欠となり、円滑な処理ができないばかりか、輸送依頼者が相当の経費を費やさざるを得なくなるという切実な問題は依然解消されていなかった。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、牽引装置類に要する搭載スペースを不要としてキャリアカーの積載能力に相当する被移動車両を支障無く搭載可能にした上、車輪やその懸架装置が大きく変形、破損した場合であっても一切支障なく被移動車両の下に潜ることができて迅速にジャッキアップし、キャリアカー荷台上への移動を円滑に実現可能とする新たな牽引技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の走行不能車用台車を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の走行不能車用台車は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法とした溝型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレームを介した前後箇所であって同フレームを軸支部として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対のキャスターからなる左右の走行体とを有し、それら走行体のキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させる一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとした構成を要旨とする走行不能車用台車である。
【0009】
この基本的な構成からなる走行不能車用台車を、より具体的な構成のものとして示すと、被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレームを介した前後箇所であって同フレームを軸支部として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対の橇型滑走板付きキャスターからなる左右の走行体とを有し、それら走行体の橇型滑走板付きキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させると共に、本体フレームの底面左右中央付近に対し中途適所を軸着した操舵杆の、左右揺動自在とした前後端を前後連結棒の各左右中央付近に適宜連結した上、該操舵杆を本体フレームの前後側何れか一方か、望ましくは同本体フレームの左右端側の何れか一方から、操舵可能とする操舵入力機構を設けたものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとした構成からなる走行不能車用台車となる。
【0010】
さらに具体的には、被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部を上向き配置とし、左右中央上部もしくは左右中央前後側適所に牽引用掛着部を固着してなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレームを介した前後箇所であって同フレームを軸支部として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対の橇型滑走板付きキャスターからなる左右の走行体とを有し、それら走行体の橇型滑走板付きキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させると共に、本体フレームの底面左右中央付近に対し中途適所を軸着した操舵杆の、左右揺動自在とした前後端を前後連結棒の各左右中央付近に適宜連結した上、該操舵杆を本体フレームの前後側何れか一方か、望ましくは同本体フレームの左右端側の何れか一方から、操舵可能とする操舵入力機構を設けたものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれ、各ジャッキを短縮させた状態の全高寸法を100・以下に規制してなるものとした走行不能車用台車といえる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の走行不能車用台車によれば、前後一対の左右の走行体を有する溝型材からなる本体フレームの上向き溝部に左右一対のジャッキを組み込み、不動車両の側方から車体下部に挿入し、左右のジャッキをジャッキポイントに配置可能なものとしてあることから、従前までの不動車両の前後何れか一方からリフトアーム部分を車体下部に差し込む自動車移動装置のような、不動車牽引方向の前方に走行車輪や牽引アーム類が突出してキャリアカー車両搭載スペースの一部を占領してしまい、積載能力を悪化させてしまうという欠点を解消することができ、しかも被移動車両の車輪やその懸架装置等が変形、大破してしまっているような状況下でも、何等支障を来すことなく円滑に対象車両のジャッキアップポイントをジャッキアップさせ、迅速且つ安全に移動することができるという秀れた特徴が得られるものである。
【0012】
加えて、台車の所定箇所への配備や荷台に向けた移動に際しての走行操作性も、本体フレームの前後側に左右一対となる橇型滑走板付きキャスターからなる走行体が、操舵可能であり、しかもそれらを連結棒で連動して所望方向に変更可能な構造としてあり、それらが、操舵入力機構を同時に装備したものとすることによって、この発明の台車の前後あるいは左右の側で作業者にとって最適な側から操作可能となるようにしたものとして最適な位置取りが可能となるようにすることもできる上、走行体には橇型滑走板とその底面から僅か下方に突出状としたキャスターとが組み込まれていて、東北、北海道などといった降雪地帯であって、特に事故の多くなる冬場での事故車輌の処理に対しても全く不都合なく活躍できるものとなっていることなどの理由から、従前のものには殆ど比較になら程に向上していて利便性を発揮することができるのは勿論のこと、それら特筆すべき構成部分を含む全体構造も比較的簡潔なものとして実現可能であって、従前のこの種装置類と同等かそれらよりも安価なものとしての提供をも可能にするという非常に実用的な価値を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
本体フレームは、左右の走行体によって地上から僅かに浮いた状態に支持され、その左右側の夫々に一対のジャッキを組み込み可能とするものであって、被移動車両をジャッキアップする左右のジャッキを支持すると共に、走行体による移動を可能とする程度の十分な強度で支持可能とする機能を果たし、被移動車両の車輪巾を含む程度の左右長さ寸法に設定し、ジャッキをできるだけ低い位置に支持した上に高い強度を確保できるよう、溝部を上向き配置とした溝型材からなるものとしなければならず、その溝部は、左右一対のジャッキのベース部を組み込み、夫々を左右方向の所定範囲に渡って移動可能とするような寸法、形状に設定されたものとすべきであり、高い強度を確保可能なC型材(チャンネル材などとして総称されている型鋼材。)とするのが望ましい。
【0014】
そして、上記本体フレームの両端間中央付近の上面もしくは前後側面には、ウインチのフックやシャックル等を掛着、可能とする牽引用掛着部を一体形成してなるものとすることが可能である外、該牽引用掛着部は、当該本体フレームに対して環状部品もしくは鉤状部品を固着または着脱可能に装着したものとしたり、同本体フレームから、一体または着脱可能なものとして前後方向に延伸させた棒状部品の前端もしくは後端に環状部分あるいは鉤状部分を一体形成するようにしてなるものとしたりすること等も可能になる。
【0015】
走行体は、本体フレームが、その溝部を上向き配置とした姿勢のままに、地上面より僅かに浮上させた状態に十分な強度をもって支持するようにした上、しかも円滑に走行移動自在にすると共に、左右への操舵を可能とする機能を果たすものであり、上記した本体フレームの左右各端部に、当該本体フレームを介して前後一対のキャスターからなるものとし、同本体フレームの前後に夫々のキャスターが独立した軸支部を有するものに形成しなければならず、各キャスターは、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後側のもの同士間に、連結棒を配して連動させたものとすべきであり、さらに、東北、北海道などの降雪地帯向けのものとするには、後述する実施例にも示すように、各キャスターに対し、雪上の走行を補助的に可能ならしめる橇型滑走板に組み込まれたようなものとするのが望ましいといえる。
【0016】
キャスターは、本体フレームに掛かる被移動車両の荷重を十分な強度で支持し、且つ左右への操舵を自由に行える状態で走行可能とする機能を果たし、本体フレーム側への軸支部および車軸部に十分な強度を有するベアリング等の適宜軸受け機構を組み込んだものとするのが望ましく、その車輪外周部分に、舗装路面に損傷を与えないよう保護可能な樹脂製あるいは天然ゴム製等のタイヤ部分を有するものとする外、車輪全体に十分な強度を付与するよう金属製のものとしてもよい。
【0017】
橇型滑走板は、キャスターだけでは走行困難になる雪上での移動を補助する機能を果たすものであり、キャスターの接地部分を下面に露出させて接地可能としたまま、その主に走行方向の前後に橇板状部分を配して雪上の滑走ができるようにしたものとし、キャスターの操舵に連動もしくは一体化して滑走板の向きを自動的に操舵方向に向けることが可能になるようにしたものとするのが望ましいが、キャスターの操舵範囲を許容可能なキャスター用の露出孔を形成した上、本体フレーム側に一体的に固着してしまったり、本体フレームの底面に連続する橇面を形成するよう一体化してしまったものとすることも可能である。
【0018】
連結棒は、本体フレーム前後側の夫々左右に配された走行体の中、左右夫々の前側のキャスター同士、および左右夫々の後ろ側のキャスター同士を、夫々連動可能に連結し、連結した左右のキャスターの操舵角度を常に一致させるよう制御する機能を果たすものであり、連結したキャスター双方の操舵入力に十分に耐える強度を有するものとしなければならず、前後各連結棒の左右間中央部分付近には、操舵杆の対応する前後端を回動自在に連結したものとすることが可能であって、該操舵杆の連結部分には、操舵杆の回動運動を前後各連結杆の左右方向への直線(往復)運動に変換可能とする連結構造を設けたものとするのが望ましく、例えば、操舵杆の長手方向(本体フレームの略前後方向に相当)か、あるいは連結棒の中央付近に長手方向に直行する方向(本体フレームの略前後方向に相当)かの、何れかに連結用の長孔や遊び孔、レール等を形成したものとし、それに対応する連結棒中央付近か、もしくは操舵杆の前後端付近かかの何れかに、該連結用の長孔や遊び孔、レールに摺動自在に嵌着する摺動駒あるいは係合ピン等を設けたものとすることができる。
【0019】
操舵杆は、前後に配された連結棒の適所同士を機械的に連結する手段で前後連結棒の両端に連結した4箇所のキャスターが統合的に操舵可能となるよう連動させる機能を果たすものであって、本体フレームの左右中央付近底面に、中央部付近を回動自在に連結し、その両端の中の前端を、前側の連結棒の左右略中央付近に連結し、後端を後ろ側の連結棒の左右略中央付近に連結したものとすべきであり、その連結部分は、前述のとおり、操舵杆の回動運動を、前後連結棒の左右往復移動に変換可能とするよう、ある程度の自由度をもって連結されたものとしなければならず、適所に操舵入力機構を設けて本体フレームの外側から適宜操舵、入力可能なものとすることができる。
【0020】
操舵入力機構は、被移動車両の車体下側に滑り込ませた本体フレームの、左右側方か、あるいは前後側方向かの何れかから、各走行体に対して操舵、入力可能とする機能を果たすものであって、操舵杆を左右方向に揺動操作可能とするものとすべきであるが、前後何れか一方の連結棒を左右方向に直接的に揺動操作可能となるものにすることも可能であり、より具体的には、例えば後述する実施例のように、左右方向に貫通する雌ネジ孔を有し、操舵杆前後側何れか一方に設けられた螺合ブロックと、中途適所が本体フレームの前後側何れかの該螺合ブロックを設けた側となる左右側何れか適所に略水平軸回りに回転自在且つ、垂直軸回りに揺動自在に軸着され、本体フレーム左右端側何れかに向けられた基端に自在継ぎ手従動部を有し、先端側の所定範囲に渡り螺設された雄ネジ部を螺合ブロック雌ネジ孔に螺合させた操舵用中間シャフトと、本体フレームの螺合ブロックを設けた前後側何れか一方の操舵用中間シャフトを配した左右側何れかの端部付近に、略水平軸回りに回転自在に軸着され、先端に該操舵用中間シャフト自在継ぎ手従動部に連結された、自在継ぎ手主動部を有し、本体フレーム左右端部何れかに露出状となる回転入力端を形成した操舵入力シャフトとからなるものとすることができる。
【0021】
ジャッキは、本体フレーム溝部の左右端側適所に夫々配され、本体フレーム諸共、被移動車両の車体下部に潜り込ませ、車体左右に設定されたジャッキポイントの夫々に、各サドル部を対応させてジャッキアップ可能とする機能を果たすものであり、本体フレーム溝部の左右範囲内で、ある程度の自由度をもって左右方向へ移動可能となるようにしなければならず、例えば様々な市販車両の左右ジャッキポイント間巾に略相当する範囲に渡り、サドル(ジャッキ自体)を左右移動可能としたものとすべきであり、スクリュー型やパンタグラフ型等の外、油圧ジャッキ等様々な形式のものを用いることも可能であるが、本体フレームの溝部に組み込むことを考慮すれば、パンタグラフ型のものを一対用いるのが最も望ましく、したがって、左右一対のジャッキがパンタグラフ型のものとし、夫々の昇降操作入力部を、本体フレームの左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置してなるようなものなどとするとよい。
【0022】
また、後述する実施例にも示すように、左右一対のジャッキが、パンタグラフ型のものとされ、本体フレームの左右一方に向けるよう設定した左右ジャッキの各昇降ネジ同士を、左右伸縮自在であって水平軸心回りの回転力を伝達可能とした伸縮連結機構で連結し、少なくとも左右何れか一方の昇降操作入力部を、本体フレームの左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置されてなるものとすることが可能であり、さらにまた、左右一対のジャッキが、本体フレームの左右方向の任意の位置に対し、夫々独立して位置決め固定可能とするジャッキ用仮固定機構を有してなるものや、左右一対のジャッキが、被移動車両のジャッキポイント部分に挟着、固定可能とする車両用仮固定機構を有してなるものとすることができる。
【0023】
伸縮連結機構は、左右一対のジャッキの昇降入力操作を、本体フレームの左右何れか所望の一方端側から行えるようにする機能を果たすものであって、左右ジャッキ間の距離が変更されたときにも同様の昇降入力操作を行えるようにしたものにしなければならず、後述する実施例にも示すような多角形断面のシリンダーとピストンとの組み合わせによるものの外、折り畳み伸縮可能なリンク機構、あるいは蛇腹型あるいはコイル側の伸縮軸等様々な機構を採用することが可能である。
【0024】
ジャッキ用仮固定機構は、左右一対のジャッキの夫々が、本体フレームの左右方向の配置、位置を最適に調節した適所に仮固定しておくようにする機能を果たすものであり、ジャッキの伸縮機構に関わらない、例えばベース部等の適所を、本体フレームの適所に連結、仮固定可能とするものとしなければならず、実施例にも示すように、本体フレームの上端縁部に挟着、固定するものの外、本体フレームの左右方向に形成された長孔にジャッキ側に固定されたボルトを通し、その先端にナットを締め付け可能に螺着したものや、あるいは本体フレームの左右方向に沿って形成された案内レールにジャッキ側に固着された移動駒を嵌着し、該移動駒に設けられた締め付け機構によって左右方向のスライド移動を仮固定可能になるようにしたもの等とすることができる。
【0025】
車両用仮固定機構は、各ジャッキのサドル部を、被移動車両の対応するジャッキアップポイントに仮固定可能となるようにする機能を果たすものであって、十分な強度で被移動車両のジャッキポイントを仮固定可能とするものとしなければならず、実施例にも示すような、各サドル部に設けられたボルト・ナットを有する挾持片からなるものとするのがよい。
【0026】
被移動車両は、走行不能車であって、キャリアカーやトラックの荷台等まで自力走行による移動、搭載が不可能となった車両のことを示すものであり、一般的なセダン、クーペ、ハードトップ、ワゴン、バン、スポーツカー、ミニバン、ワンボックスカー、ツーボックスカー、軽トラックを含む乗用車や軽乗用車、商用車等を主な対象とするものであるが、寸法、強度等を適応させることによってトラックやダンプ、バス、トラクターヘッド等その外の車両を移動の対象車両とすることも不可能ではない。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0027】
図1の牽引用掛着部を設けた走行不能車用台車の斜視図、図2の走行不能車用台車の斜視図、および図3の走行不能車用台車の操舵構造の斜視図に図示される事例は、被移動車両V(図示せず)の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部21を上向き配置としてなる本体フレーム2と、該本体フレーム2の左右各端部において、図3中に示すように、夫々当該本体フレーム2を介した前後箇所であって同フレーム2を軸支部32,32,……として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対の橇型滑走板4付きキャスター31,31,……からなる左右の走行体3,3とを有し、それら走行体3,3の橇型滑走板4付きキャスター31,31,……の中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒5,5を配して連動させると共に、本体フレーム2の底面左右中央付近に対し中途適所を軸着した操舵杆51の、左右揺動自在とした前後端を前後連結棒5,5の各左右中央付近に適宜連結した上、該操舵杆51を本体フレーム2の左右端側の何れか一方から、操舵可能とする操舵入力機構6を設けたものとする一方、本体フレーム2の溝部21に、図1および図2中に示すように、被移動車両V(図示せず)車体のジャッキポイントP,Pに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキ7,7が左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなる、この発明の走行不能車用台車における代表的な一実施例を示すものである。
【0028】
走行不能車用台車1は、被移動車両Vである例えば一般乗用車両の左右車輪間巾寸法を含み、しかもその車輪間巾を大幅には超えない程度の長さに設定された、断面C字型の鉄鋼、ステンレス鋼等の金属製であって、その溝部21を上向きとするよう配置させた上、その長さ方向(以降左右方向と記す)の中央付近となる上端面に、前後方向に適宜長さ寸法をもって掛け渡され、前後端部分の夫々に牽引用の掛着孔24,24を穿孔した牽引用掛着部23を固着してなる本体フレーム2を有し、当該本体フレーム2の左右端には、夫々同本体フレーム2を地上から僅かに浮上させるよう支持可能とする走行体3,3が設けられたものとなっている。
【0029】
走行体3,3は、図3中に示すように、本体フレーム2左右端の前後側壁面に十分な強度をもって一体化された合計4箇所のフェンダー部25,25,……の夫々に、合計4個のキャスター31,31,……が、鉛直軸回りに回動自在とする軸支部32,32,……を介して左右方向へ操舵可能とするよう軸着、懸架されたものとなっており、これら各キャスター31,31,……の夫々には、滑走面の適所にキャスター車輪の下側一部を接地可能に露出させる車輪接地孔41を穿孔してなる橇型滑走板4,4,……を装着したものとし、前側の左右キャスター31,31同士、ならびに後ろ側の左右キャスター31,31同士の夫々を、本体フレーム2に平行状に配された、直線棒状の連結棒5,5の両端に対して、鉛直軸回りに回動自在となるよう連結し、前後側の左右キャスター31,31が、夫々前側は前側同士、後ろ側は後ろ側同士、互いに同じ舵角姿勢となるよう連動するものとなっている。
【0030】
前後連結棒5,5の左右方向中央部分には、本体フレーム2底面の左右方向中央に鉛直軸回りに揺動自在に軸着された直線棒状の操舵杆51の前後端部が、同操舵杆51の左右揺動運動を、前後連結棒5,5の左右スライド運動に変換可能とするよう連結されたものとなっており、その連結部分は例えば、操舵杆51の円弧状の揺動運動を連結棒5,5の左右スライド運動に変換可能とするよう、操舵杆51の長さ方向に多少の遊びを設けた長孔やレール機構等を組み込んだものとなっている。
【0031】
同図3中に示すように、操舵杆51には操舵入力機構6が設けられており、該操舵入力機構6は、本体フレーム2前後側何れかに配置された操舵杆51の中途適所に、左右方向に貫通する雌ネジ孔62を穿孔、螺設した螺合ブロック61を固着し、該螺合ブロック61の雌ネジ孔62に、操舵用中間シャフト63の棒状先端側、所定範囲に渡り形成した雄ネジ部64を螺合させ、本体フレーム2の左右何れか一方に向けられた同操舵用中間シャフト63基端部分に、小リング状の自在継ぎ手従動部65を成形し、その中途適所が本体フレーム2の前後側何れかの該螺合ブロック61を設けた側となる左右側何れか適所壁面に対し、水平軸回りに回転自在且つ、垂直軸回りに揺動自在に軸着されたものとした上、同操舵用中間シャフト63の略延長線上に配置された操舵入力シャフト66の中途適所を、対応するフェンダー部25に略水平軸回りに回転自在に貫通、支持させ、その先端に小リング状に成形した自在継ぎ手主動部67を、該操舵用中間シャフト63自在継ぎ手従動部64に連結し、同操舵入力シャフト66の本体フレーム2左右端何れかに露出状となる基端に、小リング状の回転入力端68を成形したものとなっている。
【0032】
本体フレーム2の溝部21左右端側には、図1および図2中に示すように、左右一対をなすパンタグラフ型のジャッキ7,7が、そのベース部73(図示せず)を溝部21底面上に接地させた状態に組み込まれたものとし、夫々の昇降操作入力部71,71を、本体フレーム2の左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置させ、当該走行不能車用台車1の左右ジャッキ7,7を最も低い位置まで縮小させた状態での地上全高寸法を100・前後、左右全巾を150〜200・前後、前後全長を30・前後とするよう設定したものとなっている。
【実施例2】
【0033】
図4の一部に変更を加えた走行不能車用台車の斜視図、および図5の一対のジャッキ間に組み込まれた伸縮連結機構の斜視図に示される事例は、左右一対のジャッキ7,7を連動型としたものであり、左右一対のパンタグラフ型ジャッキ7,7の各昇降操作入力部71,71を、左右何れか同一方向に向けると共に、各昇降ネジ72,72を同心状に配置させ、隣接するジャッキ7に向けられた昇降操作入力部71から、例えば断面六角形状の六角棒76を同心状に延伸するようにし、これに隣接するジャッキ7の昇降ネジ72における、昇降操作入力部71とは反対側であって、隣接するジャッキ7側に配置された端部からは、当該六角棒76を、その軸心方向に摺動自在に嵌挿可能とする六角孔を形成した六角筒77を同心状に延伸させ、同六角棒76の先端を、六角筒77の六角孔に嵌合状に装着してなる伸縮連結機構75を形成したものである。
【実施例3】
【0034】
図6のジャッキに設けられた仮固定機構の側面図に示す事例は、左右のジャッキ7,7の夫々に同一構造のジャッキ用仮固定機構8,8を個別に設けたものであり、該ジャッキ用仮固定機構8は、ジャッキ7のベース部分73に一体に結合され、本体フレーム2の溝部21底部から鉛直状に立ち上がり、本体フレーム2の横転C字型断面の内側に向けて略水平状に折曲された上側縁部22の直下付近に向けて折曲された固定側舌片82を形成したスライドベース部81を有し、該固定側舌片82に対して上側縁部22を挟んで上側に対峙するよう配置された可動側舌片83を設け、これら固定側舌片82と可動側舌片83とを上下、板厚方向に貫通させたボルト・ナット84で挟着、仮固定可能としたものである。
【実施例4】
【0035】
図7の車両用仮固定機構を有するジャッキ、サドル部分の正面図に示す事例は、左右一対のジャッキ7,7の各サドル部74,74の夫々に車両用仮固定機構9,9を設けたものであり、該車両用仮固定機構9は、サドル部74上の被移動車両VのジャッキポイントPへの嵌合用溝部の、被移動車両Vの車幅方向内側となる位置に、略鉛直状の姿勢となり、上端側を内側に向けて僅かに折曲させた固定側挾持片91を固着し、同サドル部74上の嵌合用溝部の、被移動車両Vの車幅方向外側となる位置には、可動側挾持片92を配し、これら固定側挾持片91と可動側挾持片92とには、ボルト・ナット93が両者を水平、板厚方向に貫通するよう装着されたものとなっている。
【0036】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなる実施例1の走行不能車用台車1は、図1および図2中に示した状態のままキャリアカーTの荷台T1等に常時搭載して置き、必要なときに素早く取り出して使用することが可能であり、例えば前輪およびその懸架装置が大破してしまった被移動車両Vを、事故現場から修理工場まで輸送するような場合には、左右のジャッキ7,7を十分に縮小させた当該走行不能車用台車1を、被移動車両Vの下側に移動させ、前輪寄りとなる左右のジャッキポイントP,Pに、左右のジャッキ7,7の各サドル部74,74が対応するよう、夫々のジャッキ7,7を本体フレーム2の溝部21に沿って左右へスライドさせて位置決めした上、各ジャッキ7,7の左右方向外側に露出している昇降操作入力部71,71を回動操作し、キャリアカーTの荷台T1に移動可能となる程度の高さまで前輪を浮上させた上、図3中に示すように、本体フレーム2の左右一方端側に露出する操舵入力機構6の回転入力端68に、図示しないクランクハンドル等を連結して適宜正逆回転操作する。
【0037】
すると、操舵入力シャフト66に入力された回転力が、自在継ぎ手主動部67および自在継ぎ手従動部65を介して操舵用中間シャフト63に伝達され、その先端側の雄ネジ部64の回転が、雌ネジ孔62を介して螺合ブロック61に伝わり、操舵杆51の左右揺動運動に変換され、該操舵杆51の前端が右側に傾くと後端側が左側に傾き、同操舵杆51の前端が左側に傾くと後端側が右側に傾くものとなり、前端側に連結された連結棒5と後端側に連結した連結棒5とを、同図3中に白抜き矢印で示すように、左右反対側にスライドさせるよう制御されることとなって、当該走行不能車用台車1が円滑に左右操舵される。
【0038】
このように適宜左右に操舵しながら、図8の走行不能車用台車の使用状態の側面図に示すように、被移動車両VをキャリアカーTの傾斜させた荷台T1の後方まで移動させた後、各走行体3,3のキャスター31,31,……を直進状態に操舵し、当該走行不能車用台車1の図1中に示す、牽引用掛着部23における被移動車両Vの前方に位置する掛着孔24に対して、キャリアカーTに装備されたウインチWワイヤRのフックFを掛着し、図8中に白抜き矢印で示すように自動的に巻き取り牽引し、荷台T1上まで被移動車両Vを移動させて搭載することが可能であり、このように搭載した被移動車両Vは、目的地である修理工場において、傾斜させた荷台T1上を、同図8の白抜き矢印とは逆向きに、ウインチWのワイヤRを送り出して地上に移動させることとなり、さらに当該走行不能車用台車1上に前方部分を搭載した被移動車両Vは、工場内を手押しによって自由に移動させることが可能となる。
【0039】
図1および図2中に示したように、各キャスター31,31,……に装着された橇型滑走板4,4,……は、積雪のある舗装路上を移動する場合に、キャスター31,31,……と路面との間に雪が入り込んで走行不能となってしまうのを阻止するよう、各橇型滑走板4,4,……が雪上に乗り上げるようにして案内するものとなり、しかも夫々の車輪接地孔41,41,……からキャスター31,31,……の接地部分だけを下方側に露出させてなるものとしてあって、降雪時期には、雪上だけではなく雪上と路面上とに跨がるような場所でもを円滑に移動することが可能となる。
【0040】
実施例2の走行不能車用台車1は、図4および図5中に示したように、左右一対のジャッキ7,7間に伸縮連結機構75を設けてなるものとしたことから、図示しない被移動車両Vの左右ジャッキアップポイントP,P間巾に一致させるよう、左右の各ジャッキ7,7を左右に移動させる場合に六角棒76と六角筒77との嵌合状態を確保したままの状態で円滑に移動、調節することが可能であり、各サドル部74,74を夫々対応する図示しないジャッキポイントP,Pに対応させた左右ジャッキ7,7を昇降操作するときには、本体フレーム2の左右何れか一方に露出状となっている昇降操作入力部71を回転操作することによって、一方のジャッキ7から他方のジャッキ7へ、伸縮連結機構75(六角棒76、六角筒77)を介して同じ回転操作が伝達され、左右ジャッキ7,7を同時に昇降操作可能なものとなり、また、昇降操作入力部71を、一対のジャッキ7,7双方の左右外側に夫々露出するようにしたものとして、左右何れからでも昇降操作を行うことができるようにしたものとすることも可能となる。
【0041】
また、実施例3に示した走行不能車用台車1のジャッキ7,7は、夫々図6中に示したように、ジャッキ用仮固定機構8が設けられていて、夫々のベース部73に一体化されたスライドベース部81諸共、本体フレーム2の溝部21内を左右方向(同図6の奥行き方向)に自在に移動させて配置調節することが可能となるようにしてあり、しかも固定側舌片82と可動側舌片83との間に、本体フレーム2溝部21の対応する上側縁部22を挟み込むようにしてボルト・ナット84を締め付け、左右一対のジャッキ7,7を、夫々本体フレーム2に対して強固に一体化させた状態で被移動車両Vの移送に利用することが可能なものとなっている。
【0042】
さらに、実施例4の図7に示したように、左右一対のジャッキ7,7の各サドル部74に設けられた車両用仮固定機構9は、その固定側挾持片91と可動側挾持片92との間に対応する被移動車両VのジャッキポイントPを挟み込み、ボルト・ナット93で締め付け、左右ジャッキ7,7の夫々を被移動車両Vの各ジャッキポイントP,Pに対して確りと一体化させることができるようなものにしてある。
【0043】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例1の走行不能車用台車1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図1および図8中に示したように、その全高(ジャッキ7,7を最も縮小させた場合の)寸法を100・以下に設定してあることから、軽自動車やミニバン等を含むファミリーカーから車高を低く抑えたスポーツカーまでの幅広い乗用車両の最低地上高寸法内に収まるものとすることができ、しかも本体フレーム2に対して牽引用掛着部23を一体化したことにより、走行不能車用台車1に前側もしくは後ろ側を搭載した被移動車両Vを牽引する際に、被移動車両V車体の牽引フックを使用せずに、走行不能車用台車1自体を牽引することができるので、被移動車両Vの好適な位置に牽引フックが装備されていない場合にも、支障なく迅速且つ安全に移動させることができるものとなり、さらに被移動車両Vが、四輪とも破損してしまったものであっても、2基の当該走行不能車用台車1,1を前後のジャッキポイントP,P,……に対応させて、ジャッキアップすることによって簡便、且つ円滑に移動させることが可能となるという利点がある。
【0044】
そして、図2および図3中に示したように、前後の連結棒5,5の中央間に、操舵入力機構6を設けた操舵杆51を連結してあり、本体フレーム2の左右何れか一方に露出された操舵入力機構6の回転入力端68に、図示しないクランクハンドル等を連結して回転操作入力を行うと、各キャスター31,31,……を所望の操舵角度に統合的に連動、制御することが可能となり、より確実な操舵を安定して行い得ることとなって高い安全性と移動作業性とが得られるという効果を奏するものとなる。
【0045】
また、図1ないし図4中にも示すように、各キャスター31,31,……の夫々に橇型滑走板4,4,……を装着し、各車輪接地孔41,41,……から各キャスター31,31……の一部接地部分だけを下側に露出するようにしたものでは、舗装路面上に積もった雪上において威力を発揮することとなり、特に降雪地帯の冬季間に雪上で多発することとなるスリップ事故等にも支障なく迅速に対応することができる上に、冬季間以外で舗装路上に泥や砂等が流入してしまったような場所においても有効に利用できるものになるという効果が得られる。
【0046】
実施例2の図4および図5中に示した走行不能車用台車1は、左右のジャッキ7,7を伸縮連結機構75で連結してあって、被移動車両Vを昇降させる場合、本体フレーム2の左右何れか一方側に露出状とてある昇降操作入力部71を操作するだけで、左右一対のジャッキ7,7を同時に同じ高さに昇降操作することができ、しかも左右ジャッキ7,7の左右へのスライド移動(ジャッキポイントP,Pへの位置調整のとき)も自在に行うことを可能となるようにしていて、より円滑で迅速な移動を実現して作業効率を大いに高める効果が得られることになる。
【0047】
実施例3の図6中に示したジャッキ用仮固定機構8,8によれば、被移動車両Vの左右ジャッキアップポイントP,Pに位置合わせした左右一対のジャッキ7,7の夫々を、本体フレーム2に対して仮固定することができることから、移送中にジャッキ7,7が本体フレーム2に対して不用意に移動することを防止し、より安全な移動を実現するものとなり、しかも各ジャッキ用仮固定機構8,8は、各ジャッキ7,7を、本体フレーム2溝部21の夫々独立した位置に仮固定することが可能になるので、様々なジャッキポイントP,P巾の被移動車両Vに自在に対応させることができるものとなっている。
【0048】
実施例4の図7に示した車両用仮固定機構9,9は、各ジャッキ7,7のサドル部74,74に対し、被移動車両Vの対応する各ジャッキポイントP,Pを仮固定することができるものとしてあって、被移動車両Vと各ジャッキ7,7とを強固に一体化し、不用意なズレや脱落を阻止し、より安全に移動作用を進めることができるものとなり、前記実施例3のジャッキ用仮固定機構8,8と組み合わせて被移動車両Vと走行不能車用台車1とを一体化させるようにしたものでは、さらに一層高い安全性を確保することができるようになるという大きな利点を有するものとになる。
【0049】
(結 び)
叙述の如く、この発明の走行不能車用台車は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの自動車移動装置等に比較して十分に小型、軽量化を実現しており、キャリアカー等の輸送車両荷台スペースを不必要に占拠することがなくなり、荷台スペースに常時搭載しておいても決して邪魔になるようなこともなくなる上、車輪やその懸架装置を大破してしまい、車輪がハの字型に開いてしまったり、あるいは完全に脱落してしまっているような被移動車両であっても、一人の作業者によって迅速且つ安全に路面上を移動させて輸送車両の荷台上まで簡単、確実に牽引、移動でき、レッカー車やクレーン搭載車両等の専用車両抜きでも十分に対応可能にしてキャリアカーの実用範囲を実質的に拡大し得るものとなることから、故障車両の回収経費を大幅に削減して遥かに経済的なものになって自動車販売店やその顧客に大いに歓迎され、その高い実用性によって自動車販売業は固よりのこと各方面からも高く評価されて広範に利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図面は、この発明の走行不能車用台車の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】牽引用掛着部を一体化した走行不能車用台車を示す斜視図である。
【図2】牽引用掛着部を取付けない状態の走行不能車用台車を示す斜視図である。
【図3】走行不能車用台車の連結棒、操舵杆、操舵入力機構を示す斜視図である。
【図4】伸縮連結機構を有するジャッキを搭載した走行不能車用台車を示す斜視図である。
【図5】伸縮連結機構で繋がる左右一対のジャッキを示す斜視図である。
【図6】ジャッキ用仮固定機構を示す側面図である。
【図7】車両用仮固定機構を示す正面図である。
【図8】走行不能車用台車を利用して被移動車両をキャリアカーに搭載する作業を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 走行不能車用台車
2 本体フレーム
21 同 溝部
22 同 上側縁部
23 同 牽引用掛着部
24 同 掛着孔
25 同 フェンダー部
3 走行体
31 同 キャスター
32 同 軸支部
4 橇型滑走板
41 同 車輪接地孔
5 連結棒
51 同 操舵杆
6 操舵入力機構
61 同 螺合ブロック
62 同 雌ネジ孔
63 同 操舵用中間シャフト
64 同 雄ネジ部
65 同 自在継ぎ手従動部
66 同 操舵入力シャフト
67 同 自在継ぎ手主動部
68 同 回転入力端
7 ジャッキ
71 同 昇降操作入力部
72 同 昇降ネジ
73 同 ベース部
74 同 サドル部
75 同 伸縮連結機構
76 同 六角棒
77 同 六角筒
8 ジャッキ用仮固定機構
81 同 スライドベース部
82 同 固定側舌片
83 同 可動側舌片
84 同 ボルト・ナット
9 車両用仮固定機構
91 同 固定側挾持片
92 同 可動側挾持片
93 同 ボルト・ナット
V 被移動車両
P ジャッキアップポイント
T キャリアカー
T1 同 荷台
W ウインチ
R 同 ワイヤ
F 同 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法とした溝型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレームを介した前後箇所であって同フレームを軸支部として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対のキャスターからなる左右の走行体とを有し、それら走行体のキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させる一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとしたことを特徴とする走行不能車用台車。
【請求項2】
被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部を上向き配置としてなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレームを介した前後箇所であって同フレームを軸支部として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対の橇型滑走板付きキャスターからなる左右の走行体とを有し、それら走行体の橇型滑走板付きキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させると共に、本体フレームの底面左右中央付近に中途適所を軸着して左右揺動自在とした操舵杆の前後端を、先の前後に配してある連結棒夫々の左右中央付近に連結、連動するようにした上、当該操舵杆を本体フレームの前後側何れか一方側、あるいは同本体フレームの左右端側の何れか一方側から操舵可能とする操舵入力機構を設けたものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれてなるものとしたことを特徴とする走行不能車用台車。
【請求項3】
被移動車両の車輪巾を含むだけの左右長さ寸法としたC型材で、その溝部を上向き配置とし、左右中央上部もしくは左右中央前後側適所に牽引用掛着部を固着してなる本体フレームと、該本体フレームの左右各端部において、夫々当該本体フレームを介した前後箇所であって同フレームを軸支部として何れも左右への操舵可能に組み込まれた前後一対の橇型滑走板付きキャスターからなる左右の走行体とを有し、それら走行体の橇型滑走板付きキャスターの中、左右夫々の前側のもの同士間、および左右夫々の後ろ側のもの同士間に、共に連結棒を配して連動させると共に、本体フレームの底面左右中央付近に中途適所を軸着して左右揺動自在とした操舵杆の前後端を、先の前後に配してある連結棒夫々の左右中央付近に連結、連動するようにした上、当該操舵杆を本体フレームの前後側何れか一方側、あるいは同本体フレームの左右端側の何れか一方側から操舵可能とする操舵入力機構を設けたものとする一方、本体フレームの溝部に、被移動車両車体のジャッキポイントに合致するよう左右方向に個別移動自在とする一対のジャッキが左右に適宜間隔を置いて組み込まれ、各ジャッキを短縮させた状態の全高寸法を100・以下に規制してなるものとしたことを特徴とする走行不能車用台車。
【請求項4】
操舵入力機構が、左右方向に貫通する雌ネジ孔を有し、操舵杆前後側何れか一方側に設けた螺合ブロックと、中途適所が本体フレームの前後側何れかの該螺合ブロックを設けた側となる左右側何れか適所に水平軸回りに回転自在であって垂直軸回りに揺動自在に軸着され、本体フレーム左右端側何れかに向けられた基端に自在継ぎ手従動部を有し、先端側の所定範囲に螺設した雄ネジ部を、先の螺合ブロック雌ネジ孔に螺合するようにした操舵用中間シャフトと、本体フレームの螺合ブロックを設けた前後側何れか一方側の操舵用中間シャフトを配してある左右側何れかの端部付近において、水平軸回りに回転自在に軸着され、先端に当該操舵用中間シャフト自在継ぎ手従動部に連結させた自在継ぎ手主動部を有し、本体フレーム左右端部何れか側に露出状となるようにして回転入力端を形成した操舵入力シャフトとからなるものとした、前記請求項2または3何れか一項記載の走行不能車用台車。
【請求項5】
左右一対のジャッキは、全高を極力低く抑える上で有利なパンタグラフ型のものとし、夫々の昇降操作入力部を、本体フレームの左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置してなるものとした、前記請求項1ないし4何れか一項記載の走行不能車用台車。
【請求項6】
左右一対のジャッキは、全高を極力低く抑える上で有利なパンタグラフ型のものとし、本体フレームの左右一方側に向けるよう設定した左右ジャッキの各昇降ネジ同士を、左右伸縮自在であって水平軸心回りの回転力を伝達可能とした伸縮連結機構によって連結し、少なくとも左右何れか一方側の昇降操作入力部を、本体フレームの左右何れか近接する端部側に向けて露出するよう配置してなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の走行不能車用台車。
【請求項7】
左右一対のジャッキは、本体フレームの左右方向の任意の位置に対し、夫々独立して位置決め固定可能とするジャッキ用仮固定機構が組み込まれてなるものとした、前記請求項1ないし6何れか一項記載の走行不能車用台車。
【請求項8】
左右一対のジャッキは、被移動車両のジャッキポイント部分に挟着、固定可能とする車両用仮固定機構が組み込まれてなるものとした、前記請求項1ないし7何れか一項記載の走行不能車用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−15669(P2007−15669A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202310(P2005−202310)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(505262343)
【Fターム(参考)】