説明

起泡性調味料及び泡状調味料

【課題】油耐性を有し、気泡が保持される起泡性調味料及び泡状調味料を提供する。
【解決手段】醤油などの液体調味料と、ゼラチンなどの起泡剤と、キラヤ抽出物とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性調味料及び泡状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油などの液体調味料を食材等にかける場合、その量によっては、食材等を保持する容器の底部に液体調味料が溜まってしまう。この液体調味料は、食材等の下側に過剰に吸収されて食感を低下させ、また、容器内の他の食材にも吸収されてしまう。
【0003】
そこで、液体調味料に、起泡剤を添加した起泡性調味料が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。起泡性調味料は、起泡されることで泡状の調味料となり、料理や食材にかけて用いられる。泡状調味料は、流動性が低いので食材等に付着した状態が維持される。これにより、液体調味料のように、泡状調味料が食材の下側に過剰に吸収されることがない。
【0004】
しかしながら、このような泡状調味料は、揚げ物などの食材にかけられて油に触れると、気泡の保形性が失われ、流動化してしまう。ホイップドクリームなどでは、気泡を保持するためにゼラチンが添加されるが(例えば、特許文献3参照)、泡状調味料にゼラチンが添加されていても、油に対する耐性は得られず、気泡が消滅してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−19667号公報
【特許文献2】特開平4−360675号公報
【特許文献3】特開平10−23876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、油耐性を有し、気泡が保持される起泡性調味料及び泡状調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液体調味料と、該液体調味料に溶解する起泡剤と、キラヤ抽出物とを含有することを特徴とする起泡性調味料にある。
【0008】
かかる第1の態様では、起泡剤及びキラヤ抽出物により起泡性及び保形性が向上すると共に、油耐性が顕著に向上した起泡性調味料が提供される。すなわち、起泡性調味料は、起泡されて泡状調味料として揚げ物などの油を含む食材に用いられても、長時間に亘り泡状のまま維持される。このように泡状調味料の液体化が防止されるので、液体化した調味料が容器の底部に溜まり、食材に過剰に吸収されて食感を低下させることも防止され、さらに、容器内の他の食材に吸収されることもない。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する起泡性調味料において、前記起泡剤は、ゼラチン、コラーゲン、グリセリン、ポリグルタミン酸、大豆多糖類、難消化性デキストリン、キサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする起泡性調味料にある。
【0010】
かかる第2の態様では、ゼラチン、コラーゲン、グリセリン、ポリグルタミン酸、大豆多糖類、難消化性デキストリン、キサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステルに、キラヤ抽出物が組み合わされることで、起泡性及び保形性が向上すると共に、油耐性が顕著に向上した起泡性調味料が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する起泡性調味料において、前記液体調味料は、醤油であることを特徴とする起泡性調味料にある。
【0012】
かかる第3の態様では、油耐性が顕著に向上した起泡性の醤油が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に記載する起泡性調味料において、前記キラヤ抽出物は、前記液体調味料に対して外割で0.1〜3(g/L)含まれていることを特徴とする起泡性調味料にある。
【0014】
かかる第4の態様では、より確実に起泡することができる起泡性調味料が得られる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に記載する起泡性調味料において、粘度が18CP以下であることを特徴とする起泡性調味料にある。
【0016】
かかる第5の態様では、より確実に起泡することができる起泡性調味料が得られる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に記載する起泡性調味料を起泡させたことを特徴とする泡状調味料にある。
【0018】
かかる第6の態様では、油耐性が顕著に向上した泡状の調味料が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、油耐性を有し、気泡が保持される起泡性調味料及び泡状調味料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る起泡性調味料は、液体調味料、キラヤ抽出物及び起泡剤を原料とし、本発明に係る泡状調味料は、起泡性調味料を起泡させたものである。
【0021】
本発明で用いられる液体調味料としては、醤油や醤油含有液体調味料(たれ、つゆ、ポン酢、ドレッシング等)を挙げることができる。醤油は、特に限定されず、その用途に応じ、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜醤油、再仕込醤油又はそれらの減塩タイプ、うす塩タイプなど、いずれでもよい。
【0022】
液体調味料としては、上述の醤油等に限らず、清澄な液体の調味料であればよい。例えば、液体だし、みりん、みりん風調味料、清酒、合成清酒、酒精含有甘味調味料、発酵調味料、スープ、及び魚醤等が挙げられる。酒精含有甘味調味料としては、米類、麦類、雑穀類の澱粉をα−アミラーゼで液化し、これをアルコール及び米麹と共に仕込み、糖化熟成して得られるもの、及び、これに食塩又は含塩調味料を加えたものが挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる起泡剤は、液体調味料に溶解し、起泡作用及び気泡の保形作用を有するものである。ここでいう起泡作用は、起泡性調味料を攪拌したり、空気を混和させることで泡状調味料にする作用であり、保形作用は、泡状調味料の気泡を離水しにくくして気泡の形状を保つ作用をいう。
【0024】
具体的には、起泡剤は、ゼラチン、コラーゲン、グリセリン、ポリグルタミン酸、大豆多糖類、難消化性デキストリン、キサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0025】
特にゼラチンを起泡剤として用いることが好ましい。ゼラチンは、牛、豚、魚などの動物の皮膚、骨、腱などの結合組織の主成分であるコラーゲンに熱を加え、抽出したものであり、タンパク質を主成分とする。化学的には、コラーゲン分子の三重らせん構造が熱変性によってほどけたものを主成分とする混合物である。
【0026】
コラーゲンは、牛、豚、魚などの動物の皮膚、骨、軟骨、鱗、鰾などの組織から抽出されたものである。グリセリンは、3価アルコールの1種であり、ポリグルタミン酸は、グルタミン酸を重合単位とするポリペプチドの1種である。大豆多糖類は、大豆に由来する水溶性の多糖類であり、大豆食物繊維又は水溶性大豆ヘミセルロース等と称されるものを含む。難消化性デキストリンは、澱粉を加熱、酵素処理して得られる難消化性の食物繊維である。キサンタンガムは、微生物キサントモナス・キャンペストリスがブドウ糖等を発酵して、その菌体外に蓄積した多糖類を精製し粉末にした天然のガム質である。アルギン酸プロピレングリコールエステルは、海藻等から得られるアルギン酸をエステルにしたものである。
【0027】
起泡剤として、ゼラチン、コラーゲン、グリセリン、ポリグルタミン酸、大豆多糖類、難消化性デキストリン、キサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステルをそれぞれ単独で用いる場合、各起泡剤の添加量は次の通りである。
【0028】
ゼラチンの添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で5〜20(g/L)、好ましくは10〜15(g/L)である。
【0029】
コラーゲンの添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で10〜100(g/L)、好ましくは50〜70(g/L)である。
【0030】
グリセリンの添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で5〜150(g/L)、好ましくは50〜100(g/L)である。
【0031】
ポリグルタミン酸の添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で5〜20(g/L)、好ましくは10〜15(g/L)である。
【0032】
大豆多糖類の添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で1〜20(g/L)、好ましくは3〜10(g/L)である。
【0033】
難消化性デキストリンの添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で5〜200(g/L)、好ましくは10〜100(g/L)である。
【0034】
キサンタンガムの添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で0.1〜15(g/L)、好ましくは0.1〜0.5(g/L)である。
【0035】
アルギン酸プロピレングリコールエステルの添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で1〜15(g/L)、好ましくは5〜10(g/L)である。
【0036】
いずれの起泡剤についても、添加量が上述したそれぞれの範囲内であれば、良好に気泡が生じ、また、食感を損ねない弾力を有する気泡が生じる。各起泡剤の添加量が下限値未満であると液体調味料が起泡せず、上限値を超えると、気泡の弾力性が高くなりすぎて食感を損ねてしまう。
【0037】
本発明で用いられるキラヤ抽出物は、キラヤを溶媒で抽出して得られる抽出液、その希釈液、濃縮液、エキス又はこれを乾燥して得られる乾燥物である。キラヤは、南米のチリ・ボリビア・ペルー地域に自生するシャボンの木(Quillaja Saponaria MOLINA)と呼ばれるバラ科の常緑樹である。溶媒としては、水、エタノール等が挙げられる。
【0038】
キラヤ抽出物に含まれるキラヤサポニンは、強い界面活性作用を有する。このため、キラヤサポニン自体も、起泡作用と保形作用とを有し、起泡性調味料の起泡性及び保形性が向上される。さらに、キラヤサポニンは、上述した起泡剤と組み合わされることで、油耐性を顕著に向上させる作用を有する。ここでいう油耐性とは、起泡性調味料を泡状調味料としたとき、油に接触しても気泡が消滅し難い性質をいう。
【0039】
キラヤ抽出物の添加量(g)は、液体調味料(L)に対して外割で0.1〜3(g/L)、好ましくは0.3〜1(g/L)である。添加量がこの範囲であれば、顕著に油耐性を向上させる作用が発揮し、かつ液体調味料の呈味に影響を与えない。添加量が下限値未満であれば、油耐性を向上させる作用が発揮されず、上限値を超えると、液体調味料の呈味を低下させてしまう。
【0040】
以上に説明したように、本発明に係る起泡性調味料は、起泡剤及びキラヤ抽出物により起泡性及び保形性が向上すると共に、油耐性が顕著に向上する。すなわち、起泡性調味料は、起泡されて泡状調味料として揚げ物などの油を含む食材に用いられても、長時間に亘り泡状のまま維持される。このように泡状調味料の液体化が防止されるので、液体化した調味料が容器の底部に溜まり、食材に過剰に吸収されて食感を低下させることも防止され、さらに、容器内の他の食材に吸収されることもない。もちろん、本発明に係る起泡性調味料は、油を含まない、又は殆ど含まないような食材に用いられても気泡が維持される。
【0041】
このような起泡性調味料は、例えば、厨房で起泡させて泡状調味料にし、これを料理にかけてから顧客に運んでも、その間に気泡が消滅することがないので、飲食店での使用に好適である。また、いわゆる立食パーティの参加者は、料理を載せた皿を片手に起立しているので、皿の姿勢が不安定になりがちである。しかし、本発明の起泡性調味料を起泡させた泡状調味料は油耐性を有するので、液体化して皿からこぼれ落ちることはない。このように本発明の起泡性調味料は、立食パーティなど不安定な状況で料理を食するような場合に有用である。
【0042】
上述した起泡性調味料は、液体調味料に、所定量の起泡剤及びキラヤ抽出物を添加することにより製造することができる。起泡剤及びキラヤ抽出物を添加する順序は、特に限定されず、同時でもよい。そして、液体調味料、起泡剤及びキラヤ抽出物を、起泡させないように混和させることで本発明に係る起泡性調味料が得られる。
【0043】
また、本発明に係る起泡性調味料が起泡された泡状調味料は、例えば、起泡性調味料を入れた容器の瓶口に装着し、内部の起泡性調味料を外部に適量取り出すディスペンサーを用いることで得られる。このディスペンサーには、起泡性調味料が吐出される開口であるノズルが設けられ、当該ノズルには微細な目を有するメッシュが設けられている。起泡性調味料を容器外部に取り出す際に、起泡性調味料に外部の空気を混ぜてメッシュを通過させることで、ノズルから泡状調味料が吐出される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【0045】
[実施例1−1、比較例1−2〜比較例1−7]
表1に示す原材料を用いて、実施例1−1、比較例1―2〜比較例1−7に係る起泡性醤油を製造した。
【0046】
実施例1−1、比較例1―2〜比較例1−7は、液体調味料として醤油を100mL用い、起泡剤としてトリゼラチンを0.7g用いた。当該トリゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0047】
上記醤油は、キッコーマン食品株式会社製(こいくちしょうゆ(商品名))であり、以下の全ての実施例、比較例で用いる醤油についても同社製のものである。トリゼラチンは、日本ピュアフード株式会社製(ニワトリゼラチン)であり、以下の全ての実施例、比較例で用いるトリゼラチンは同社製のものである。
【0048】
実施例1−1で用いられるキラヤ抽出物は0.03gであり、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。当該キラヤ抽出物は、丸善製薬社製(キラヤニンC−100)であり、以下の全ての実施例、比較例で用いるキラヤ抽出物についても同社製のものである。
【0049】
比較例1−2では、キラヤ抽出物の代わりに、大豆サポニン(Jオイルミルズ社製サポニンAZ−B)を0.03g用いた。大豆サポニンは、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。なお、大豆サポニンとは、大豆を煮たときに出る泡の中に含まれているトリテルペノイドサポニンである。大豆サポニンは、大豆から抽出して溶媒で精製するか、あるいは抽出液から樹脂吸着剤を用いて選択的にサポニンを吸着させて精製することによって得ることができる。
【0050】
比較例1−3では、キラヤ抽出物の代わりに、ユッカフォーム抽出物(丸善製薬社製サラキープALS)を0.03g用いた。ユッカフォーム抽出物は、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。なお、ユッカフォーム抽出物とは、ユッカアラボレセンス又はユッカシジゲラの全草から抽出されたステロイド系サポニンを主成分とするものをいう。
【0051】
比較例1−4では、キラヤ抽出物の代わりに、乳化剤であるポエムDM−30S(理研ビタミン社製)を0.03g用いた。当該乳化剤は、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。
【0052】
比較例1−5では、キラヤ抽出物の代わりに、乳化剤であるリョートーシュガーエステ
ルLWA−1570(三菱化学フーズ株式会社製、HLBは15。)を0.03g用いた
。当該乳化剤は、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。
【0053】
比較例1−6では、キラヤ抽出物の代わりに、乳化剤であるリョートーシュガーエステ
ルL−595(三菱化学フーズ社製、HLBは5。)を0.03g用いた。当該乳化剤は
、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。
【0054】
比較例1−7では、キラヤ抽出物の代わりに、乳化剤であるリョートーシュガーエステ
ルL−195(三菱化学フーズ社製、HLBは1。)を0.03g用いた。当該乳化剤は
、醤油に対して外割で0.3(g/L)である。
【0055】
実施例1−1、比較例1−2〜比較例1−7について、各原材料を起泡させないように混和させて起泡性調味料である起泡性醤油を製造した。
【0056】
[試験例1]
実施例1−1、比較例1−2〜比較例1−7に係る起泡性醤油のそれぞれを、容器に入れ、市販のディスペンサーで泡状醤油とし、市販のラード上に載せた。ラードに載せた泡状醤油を放置して、気泡の状態を観察した。実施例1−1、比較例1−2〜比較例1−7の気泡の保形性を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
起泡性は、ディスペンサーにより起泡性醤油から得られる気泡の性質を評価したものである。起泡性の「◎」は、きめ細かい気泡が形成され角が立つことを意味している。実施例1−1及び比較例1−5に係る起泡性醤油の起泡性が「◎」であった。
【0059】
起泡性の「○」は、きめ細かい気泡が形成されることを意味している。比較例1−2〜1−4に係る起泡性醤油の起泡性が「○」であった。
【0060】
また、起泡性の「×」は、泡が形成されず液状になってしまうことを意味している。比較例1−6及び1−7に係る起泡性醤油の起泡性が「×」であった。
【0061】
気泡の保形性の「◎」は、泡状醤油がラード上に付着してから30分以上、保形されることを意味している。実施例1−1に係る泡状醤油は、ラード上に付着してから6時間保持された。
【0062】
一方、気泡の保形性の「△」は、泡状醤油がラード上に付着すると、すぐには消泡しないが、5分程度で消泡することを意味している。比較例1−5に係る泡状醤油は、ラード上に付着し、3分で消泡してしまった。
【0063】
また、気泡の保形性の「×」は、泡状醤油がラード上に付着すると、たちまち消泡することを意味している。比較例1−2〜比較例1−4、比較例1−6〜比較例1−7に係る泡状醤油は、ラード上に付着し、すぐに消泡してしまった。
【0064】
風味は、泡状醤油の呈味を評価したものである。風味の「◎」は、醤油本来の良好な風味を有することを意味している。実施例1−1に係る起泡性醤油の風味が「◎」であった。
【0065】
風味の「△」は、添加物由来の苦味が強いことを意味している。比較例1−5の風味が「△」であった。
【0066】
また、風味の「−」は、気泡が形成されず評価不能であることを意味している。比較例
1−2〜比較例1−4、比較例1−6〜比較例1−7に係る起泡性醤油は、保形性が無い
ため、風味は「−」とした。
【0067】
試験例1によれば、食品に添加することができるサポニンのうちキラヤサポニンを含むキラヤ抽出物を含有する起泡性醤油が、醤油本来の風味を保持し、かつ起泡性及び油耐性を有することが分かる。その他のサポニンや乳化剤では油耐性が無いことが分かる。
【0068】
[実施例2−1〜実施例2−15、比較例2−16〜比較例2−17]
表2に示す原材料を用いて、実施例2−1〜実施例2−15、比較例2―16〜比較例2−17に係る起泡性醤油を製造した。
【0069】
実施例2−1〜実施例2−15、比較例2―16〜比較例2−17は、液体調味料として醤油を100mL用い、キラヤ抽出物を0.03g用いた。
【0070】
実施例2−1では、起泡剤として、「魚ゼラチン 200SP」(新田ゼラチン社製)を0.7g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0071】
実施例2−2では、起泡剤として、「魚ゼラチン 250TS」(新田ゼラチン社製)を0.7g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0072】
実施例2−3では、起泡剤として、「豚ゼラチン(酸処理) 200」(ゼライス社製)を0.7g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0073】
実施例2−4では、起泡剤として、「豚ゼラチン(アルカリ処理) 150」(ゼライス社製)を0.7g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0074】
実施例2−5は、起泡剤として、「豚ゼラチン(アルカリ処理) 200」(ゼライス社製)を0.7g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0075】
実施例2−6は、起泡剤として、「豚ゼラチン(アルカリ処理) 250」(ゼライス社製)を0.7g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で7(g/L)である。
【0076】
実施例2−7は、起泡剤として、チキンエキス(五協産業社製)を2.0g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で20(g/L)である。
【0077】
実施例2−8は、起泡剤として、肉エキス(日本ピュアフード株式会社製)を2.0g用いた。当該ゼラチンは、醤油に対して外割で20(g/L)である。
【0078】
実施例2−9は、起泡剤として、コラーゲン(焼津水産化学工業株式会社製マリンマトリックスGF)を5g用いた。当該コラーゲンは、醤油に対して外割で50(g/L)である。
【0079】
実施例2−10は、起泡剤として、グリセリン(ライオン株式会社製)を5g用いた。当該グリセリンは、醤油に対して外割で50(g/L)である。
【0080】
実施例2−11は、起泡剤として、ポリグルタミン酸(株式会社明治フードマテリア社製)を1g用いた。当該ポリグルタミン酸は、醤油に対して外割で10(g/L)である。
【0081】
実施例2−12は、起泡剤として、大豆多糖類(不二製油株式会社製)を0.6g用いた。当該大豆多糖類は、醤油に対して外割で6(g/L)である。
【0082】
実施例2−13は、起泡剤として、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製)を1g用いた。当該難消化性デキストリンは、醤油に対して外割で10(g/L)である。
【0083】
実施例2−14は、起泡剤として、キサンタンガム(三栄源エフエフアイ株式会社製)を0.05g用いた。当該キサンタンガムは、醤油に対して外割で0.5(g/L)である。
【0084】
実施例2−15は、起泡剤として、アルギン酸プロピレングリコールエステル(株式会社フードケミファ社製)を1g用いた。当該アルギン酸プロピレングリコールエステルは、醤油に対して外割で10(g/L)である。
【0085】
比較例2−16は、起泡剤として、リョートーシュガーエステルLWA−1570(三
菱化学フーズ株式会社製、HLBは15。)を0.03g用いた。比較例2−17は、起
泡剤として、市販のグアーガムを 0.05g用いた。
【0086】
実施例2−1〜実施例2−15、比較例2―16〜比較例2−17について、各原材料を起泡させないように混和させて起泡性調味料である起泡性醤油を製造した。
【0087】
[試験例2]
実施例2−1〜実施例2−15、比較例2―16〜比較例2−17に係る起泡性醤油のそれぞれを、容器に入れ、市販のディスペンサーで泡状醤油とし、市販のラード上に載せた。ラードに載せた泡状醤油を放置して、気泡の状態を観察した。実施例2−1〜実施例2−15、比較例2―16〜比較例2−17の気泡の保形性を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
起泡性、風味の各記号の意味は、試験例1と同様である。
【0090】
実施例2−1〜実施例2−15、比較例2−16に係る起泡性醤油の起泡性が「◎」であり、比較例2−17に係る起泡性醤油の起泡性が「×」であった。
【0091】
気泡の保形性の「○」は、泡状醤油がラード上に付着してから10〜30分程度、保形されることを意味している。他の記号の意味は試験例1と同様である。
【0092】
実施例2−1〜実施例2−8に関しては、気泡の保形性は殆どが「◎」であり一部「○」であった。すなわち、実施例2−1〜実施例2−8に係るゼラチンを用いた泡状醤油(実施例1−1も含めて)では、ラード上に付着した気泡が保持される効果は顕著に高いことが分かる。また、実施例2−9〜実施例2−15に関しては、気泡の保形性は「○」であった。すなわち、実施例2−9〜実施例2−15に係る泡状醤油では、ラード上に付着した気泡が保持される効果が高いことが分かる。
【0093】
一方、リョートーシュガーエステル(ショ糖ラウリン酸エステル)、グアーガムを用いた比較例2−16、2−17に係る起泡性醤油は、キラヤ抽出物が含まれていても、すぐに消泡してしまうことが分かる。
【0094】
実施例2−1〜2−15に係る泡状醤油の風味が「◎」であり、比較例2−16〜比較例2−17に係る泡状醤油の風味が「−」であった。
【0095】
試験例2によれば、キラヤ抽出物に、ゼラチン、コラーゲン、グリセリン、ポリグルタミン酸、大豆多糖類、難消化性デキストリン、キサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される少なくとも1つの起泡剤を含有する起泡性醤油が、醤油本来の風味を保持し、起泡性及び油耐性を有することが分かる。また、起泡剤の中でも、特にゼラチンを用いた起泡性醤油の油耐性が顕著に高いことが分かる。
【0096】
[実施例3−1〜実施例3−6、比較例3−7〜比較例3−9]
表3に示す原材料を用いて、実施例3−1〜実施例3−6、比較例3―7〜比較例3−9に係る起泡性調味料を製造した。
【0097】
実施例3−1〜実施例3−6、比較例3―7〜比較例3−9は、起泡剤としてトリゼラチンを0.7g用い、キラヤ抽出物を0.03g用いた。トリゼラチン、キラヤ抽出物は、それぞれ、液体調味料に対して外割で7(g/L)、0.3(g/L)である。
【0098】
また、さしみしょうゆ、減塩しょうゆ、だししょうゆ、液体だし、みりん、ポン酢、ソース、ケチャップ、混濁調味料は、いずれもキッコーマン食品株式会社製であり、100mL用いた。ここでいう混濁調味料は、例えば具入りステーキソースである。
【0099】
実施例3−1〜実施例3−6、比較例3―7〜比較例3−9について、各原材料を起泡させないように混和させて起泡性調味料を製造した。
【0100】
[試験例3]
実施例3−1〜実施例3−6、比較例3―7〜比較例3−9に係る起泡性調味料のそれぞれを、容器に入れ、市販のディスペンサーで泡状調味料とし、市販のラード上に載せた。ラードに載せた泡状調味料を放置して、気泡の状態を観察した。実施例3−1〜実施例3−6、比較例3―7〜比較例3−9の気泡の保形性を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
起泡性、気泡の保形性及び風味の記号の意味は試験例1及び試験例2と同様である。
【0103】
実施例3−1〜実施例3−3に係る起泡性調味料の起泡性が「◎」であり、実施例3−
4〜実施例3−6に係る起泡性調味料の起泡性は「○」であり、比較例3−7〜比較例3
−9に係る起泡性調味料の起泡性が「×」であった。
【0104】
実施例3−1〜実施例3−3に関しては、気泡の保形性は「◎」であった。すなわち、
実施例3−1〜実施例3−3に係る泡状調味料では、ラード上に付着した気泡が保持され
る効果は顕著に高いことが分かる。また、実施例3−4〜実施例3−6に関しては、気泡
の保形性は「○」であった。すなわち、実施例3−4〜実施例3−6に係る泡状調味料で
は、ラード上に付着した気泡が保持される効果が高いことが分かる。
【0105】
一方、ソース、ケチャップ、混濁調味料を用いた比較例3−7〜比較例3−9に係る起泡性調味料は、容器で詰まってしまい、起泡されなかった。
【0106】
実施例3−1〜3−6に係る泡状調味料の風味は「◎」であり、比較例3−7〜比較例3−9に係る泡状調味料の風味は「−」であった。
【0107】
試験例3によれば、清澄な液体調味料であれば、醤油等の調味料本来の風味を保持し、起泡性及び油耐性を有し、保形性の高い起泡性調味料が得られることが分かる。特に、液体調味料として醤油を用いた場合に、油耐性が顕著に高い起泡性醤油が得られる。
【0108】
[実施例4−1〜実施例4−3、比較例4−4〜比較例4−7]
表4に示す原材料を用いて、実施例4−1〜実施例4−3、比較例4―4〜比較例4−7に係る起泡性調味料を製造した。
【0109】
実施例4−1〜実施例4−3、比較例4―4〜比較例4−7は、液体調味料としてこいくちしょうゆ(キッコーマン食品株式会社製)を50mL用い、起泡剤として豚ゼラチンを1g用い、キラヤ抽出物を0.05g用いた。豚ゼラチン、キラヤ抽出物は、それぞれ、こいくちしょうゆに対して外割で20(g/L)、1(g/L)である。
【0110】
さらに、原材料として、水を100mL用い、上白糖を用いた。上白糖の分量は表4に示すとおりである。
【0111】
実施例4−1〜実施例4−3、比較例4―4〜比較例4−7について、各原材料を起泡させないように混和させて起泡性調味料を製造した。
【0112】
【表4】

【0113】
[試験例4]
実施例4−1〜実施例4−3、比較例4―4〜比較例4−7に係る起泡性調味料のそれぞれを、容器に入れ、粘度を測定するとともに、市販のディスペンサーで泡状調味料とすることができるか否かを観察した。起泡性調味料の粘度の測定は、VISCOMETER TUB−10(東機産業株式会社)を用い、起泡性調味料の温度を25℃とし、ローターNo.1を用い、60rpmに設定して粘度を計測した。また、試験例1と同様に気泡の保形性を観察した。これらの結果を表5に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
表5に示すように、実施例4−1〜実施例4−3に関しては、起泡性及び気泡の保形性についても「◎」であった。一方、比較例4−4〜比較例4−7に関しては、気泡せず、起泡性調味料とはならなかった。試験例4の結果から、起泡性調味料の粘度が18[CP]以下であると起泡性が良好であり、18[CP]を越えると起泡性調味料とはならない(起泡させても泡状調味料とならない)ことが分かる。
【0116】
なお、試験例4において水及び上白糖を原材料に用いたのは、様々な粘度の起泡性調味料を製造するためであり、水及び上白糖を用いない場合においても粘度が18[CP]以下であれば、起泡性調味料は起泡性が良好なものとなる。
【0117】
[実施例5−1、比較例5−2〜比較例5−5]
表6に示す原材料を用いて、実施例5−1、比較例5−2〜比較例5−5に係る起泡性調味料を製造した。
【0118】
液体調味料としてこいくちしょうゆ(キッコーマン食品株式会社製)を100mL用い、起泡剤としては、実施例5−1は豚ゼラチンを1g用い、比較例5−3及び比較例5−4は大豆多糖類(実施例1と同じもの)を0.6g用いた。比較例5−2及び比較例5−5に関しては起泡剤を用いなかった。実施例5−1、比較例5−2〜比較例5−3に関してはキラヤ抽出物を0.05gまたは0.1g用いた。比較例5−4はキラヤ抽出物に代替する乳化剤等は用いず、比較例5−5はキラヤ抽出物に代替してシュガーエステル(乳化剤)を0.1g用いた。
【0119】
実施例5−1、比較例5−2〜比較例5−5について、各原材料を起泡させないように混和させて起泡性調味料を製造した。
【0120】
[試験例5]
実施例5−1、比較例5−2〜比較例5−5に係る起泡性調味料のそれぞれを、容器に入れ、市販のディスペンサーで泡状調味料とし、該泡状調味料を食パンの上に載せた。1000Wで十分予熱されたオーブントースター内に食パンを30秒間入れて加熱した。そして、加熱後、オーブントースターから取り出した食パン上の泡状調味料の気泡を観察した。この結果を表6に示す。
【0121】
【表6】

【0122】
表6の「○」は、気泡が残っていることを示し、「△」は一部消失、「×」は消失したことを示す。
【0123】
表6に示すように、キラヤ抽出物及び起泡剤としてのゼラチンを含む実施例5−1は焼成後においても気泡が保たれていた(以下、焼成後において気泡の保形性があることを焼成耐性がある、という)。
【0124】
一方、キラヤ抽出物を用いた比較例5−2及び比較例5−3においては、比較例5−2は起泡剤を用いず、比較例5−3は起泡剤としての大豆多糖類を用いた。しかしながら、これらは気泡が消失し、焼成耐性がない。
【0125】
つまり、キラヤ抽出物を含んでいても、起泡剤を用いない起泡性調味料(比較例5−2)又は起泡剤としてゼラチンを用いない起泡性調味料(比較例5−3)においては焼成耐性がなく、一方、キラヤ抽出物を含み、起泡剤としてゼラチンを用いた起泡性調味料(実施例5−1)においては焼成耐性があることが分かった。
【0126】
なお、キラヤ抽出物を用いずに起泡剤を用いた比較例5−4、起泡剤を用いずに乳化剤を用いた比較例5−5は、何れも焼成耐性を有さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体調味料と、該液体調味料に溶解する起泡剤と、キラヤ抽出物とを含有することを特徴とする起泡性調味料。
【請求項2】
請求項1に記載する起泡性調味料において、
前記起泡剤は、ゼラチン、コラーゲン、グリセリン、ポリグルタミン酸、大豆多糖類、難消化性デキストリン、キサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される少なくとも1つである
ことを特徴とする起泡性調味料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する起泡性調味料において、
前記液体調味料は、醤油である
ことを特徴とする起泡性調味料。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する起泡性調味料において、
前記キラヤ抽出物は、前記液体調味料に対して外割で0.1〜3(g/L)含まれている
ことを特徴とする起泡性調味料。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する起泡性調味料において、
粘度が18CP以下である
ことを特徴とする起泡性調味料。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載する起泡性調味料を起泡させたことを特徴とする泡状調味料。