説明

超臨界CO2を用いて含浸する方法

本発明は、非多孔性のポリマー性薬学的担体に活性物質を含浸するバッチ法であって、以下の一連の工程:a)活性物質と、非多孔性のポリマー性薬学的担体とを混合し、該ポリマー性薬学的担体は固体形態であり、超臨界COに不溶性でありかつ非架橋ポリビニルピロリドンではなく、b)a)で得た混合物と超臨界COとを、80バールから170バールの圧力、31℃から90°Cの温度で1時間から6時間、攪拌せずに静的様式で接触させることにより、水の不在下で分子拡散を行い、c)b)で得た活性物質を含浸したポリマー性薬学的担体を回収し、該含浸したポリマー性薬学的担体は非多孔性であり、固体形態にあり、かつ非晶質形態であることを含んでなり、かつ追加溶媒の不在下で行われる方法に関する。本発明はまた、活性物質は非晶質形態でありかつ水溶性でありかつ超臨界COに不溶性であり、かつポリマー性薬学的担体が非架橋ポリビニルピロリドンではなくかつ超臨界COに不溶性である、本発明による方法により得ることができる、非多孔性の、活性物質を含浸した固体形態のポリマー性薬学的担体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界COを使用してポリマー性薬学的担体に活性物質を含浸する方法に関する。
【0002】
超臨界COを使用する含浸方法は、先行技術にすでに記載されている。しかしながら、ポリマー担体、特に、結合剤としてよりも崩壊剤として普通に知られているポリマー担体のタイプに関わらず使用するのに適し、かつ水性媒体に可溶か否かに関わらず任意のタイプの活性物質について使用するのに適した、迅速で実行容易な方法を記載している先行技術はない。
【0003】
このような方法について、Manna et al(The Journal of Supercritical Fluids, Volume 42, Issue 3, October 2007, pages 378−384)による論文に、ポリビニルピロリドン(PVP)にケトプロフェンを含浸する連続的方法が記載されている。しかしながら、使用されたPVPは架橋されていない。非架橋PVPは、使用される含浸方法に関わらず安定化された非晶質形態を得るための周知の結合剤である。さらに、記載された方法は、CO中における活性物質の溶解度と関連するので、非常に緩慢である(1回の試験=5日)。したがって、それは、本発明による方法と違って、超臨界COに不溶性の活性物質に使用するのには適しない。さらに、この方法では、ケトプロフェンとPVPとの事前の混合がなく、それは、反対に、事前の混合が活性物質と超臨界COとの間の混合だからである。Ugaonkar et alによる論文(International Needham Journal of Pharmaceutics,Volume 333,Issues 1−2,21 March 2007,pages 152−161)には、カルバマゼピンの結晶性形態からそれらの非晶質形態への変換に対するn−scCOの効果が記載されている。しかしながら、記載された方法は、超臨界COではなくて、ほとんど超臨界COといわれる液体CO(P=63バール、T=25℃)を使用している。さらに、各テスト前に、該著者らはポリマーの「予備乾燥」を80℃で16時間実施しており、それが該方法を長引かせる。表1に示したDRX結果に基づいて、有意であるが部分的な非晶質化が、より低い分子量のPVP、すなわち、非架橋PVPを使用してのみ得られる。これらの結果は、減衰が非常に限られるDSCによって確認される。この論文中に記載された結果で観察される非常に大きい分析的変動は、大きいポリマー粒子と活性物質との間の粒子サイズにおける非常に大きい差によって説明される。得られた溶解における差は小さなもので担体の存在に帰することができる(処理したものと処理しないもの間に差がない)。該著者らは、部分的に非晶質の形態が安定化されていることを証明していない。該著者らは、CO/ポリマー相互作用により非晶質化が可能になり(160頁)、ポリマー鎖の柔軟性が主として重要であると結論している。したがって、このように、該著者らは、満足な鎖柔軟性を有するポリマー(非架橋PVPなど)によってのみ、活性物質の非晶質化を、担体中にそれらを含浸中に達成することが可能になると述べている。したがって、このように、該著者らによれば、この論文に記載された方法を、任意の担体で、特に鎖が比較的剛直な架橋PVPなどのポリマーで使用することは可能でない。
【0004】
Banchero et al(The Journal of Supercritica Fluids,In Press,Corrected Proof,Available online 30 January 2009)による論文には、超臨界溶媒を使用してPVPにピロキシカムを含浸する方法が記載されている。しかしながら、記載された方法は特に緩慢であり、20〜48時間の間である。さらに、使用される圧力が非常に高く、約300バールである。同じことが操作温度についても言えて、約100℃である。最後に、使用されるPVPは、使用される含浸方法に関わらず安定化された非晶質形態の活性物質を得るために周知の結合剤の非架橋PVPである。
【0005】
Albertini et al(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 56(2003) p479−487)による論文には、担体としてb−ラクトース、PVP K12およびPVP K90を使用して、水蒸気を用いる(60℃、真空中)単なる顆粒化によりピロキシカムを非晶質化する方法が記載されている。これは、1年にわたり安定化された非晶質化を生じる(さらにp.387で、該著者らは、非架橋PVPが活性物質結晶化の阻害剤として周知であることを明記している)。
【0006】
Gong et al(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,Volume 48,Issue 4,1 December 2008,pages 1112−1119)による論文には、超臨界COを使用してヒドロキシプロピルメチルセルロースにインドメタシンを含浸する方法が記載されている。しかしながら、該方法は、工程中に攪拌しながら(180rpm)超臨界COを使用して実施され、このことにより、該方法は加圧攪拌系が必要になるので、非常に高い余分なコストのために、経済的に現実的でなくなる。さらに、粉末周囲における超臨界COの混合を可能にするために、オートクレーブは、部分的に充填されるだけにするべきである(加圧室中の直接粉末混合の財務コストは法外である)。さらに、記載された方法では、非常に高い温度:110℃および130℃でのテストによってのみ、非晶質化を達成することが可能になる(これらの温度は、活性物質の融点(160℃)に非常に近い)。
【0007】
本発明者らは、思いがけなく、活性物質結晶化阻害剤として知られていない担体を用いて、活性物質のタイプに関わらず、特に例えば水性媒体に可溶な活性物質を用いて、薬学的ポリマー担体にこのようにして安定化された非晶質である活性物質の含浸を達成するための、先行技術の欠点を有せず、特にポリマー性薬学的担体のタイプに関わらず使用するのに適した、簡単かつ容易で新規な方法を見出した。
【0008】
かかる方法は、超臨界COを使用する静的様式の分子拡散工程を含んでなる。
そのような工程を使用する方法は、先行技術にすでに記載されている。しかしながら、それらが、超臨界CO以外の溶媒を加えずに、本発明によるポリマー性薬学的担体、特に非多孔性担体に含浸するために、攪拌せずに使用されたことは未だかつてない。
【0009】
このような方法について、特許出願WO03/043604には、静的様式の分子拡散工程を含んでなる、多孔性基質中に活性物質を含ませる方法が記載されている。しかしながら、そのような方法により、活性物質と多孔性基質との複合体(または包接化合物)を得ることは可能になるが、活性物質を含浸したポリマー担体を得ることは可能でない。さらに、使用される基質は、シクロデキストリンであるから、多孔性であり、ポリマー担体ではない。さらに、該方法は、非常に特殊な活性物質、すなわち多孔性基質が可溶な水性媒体に難溶性の活性物質についてのみ使用される。さらに、該方法は、分子拡散工程が少なくとも16時間継続するので比較的緩慢である。最後に、この方法は、得られた複合体の超臨界COによる洗浄工程を必ず含んでなり、それは該方法をさらに長引かせる。
【0010】
特許出願WO20047/096284には、可溶性分子複合体を調製するための静的様式の分子拡散工程含んでなる方法が記載されている。しかしながら、そのような方法により、活性物質とホスト分子との複合体を得ることは可能になるが、活性物質を含浸したポリマー担体を得ることは可能でない。実際、複合化は、ゲスト分子(この場合は活性物質)のホスト分子の空洞中への包接である。それは定数Ksにより規定される複合化平衡により決定される。ホスト分子はこのように必ず空洞を有し、したがって多孔性であり、それは、本発明によるポリマー性薬学的担体の場合ではない。さらに、ホスト分子は、シクロデキストリンであるから、ポリマー担体ではない。さらに、該方法は、拡散剤(diffusion agent)と称する例えば水などの超臨界CO以外の他の溶媒の存在を必ず含んでなる。実施例に示すように、この作用剤がないことにより分子複合体の形成が防止される。それ故、そのことにより、本発明による方法と異なって、分子拡散工程後直ちに乾燥粉末を得ることが可能にならない。さらに、該方法は、非常に特殊な活性物質、すなわち、ホスト分子が可溶な水性媒体に難溶性の活性物質でのみ使用される。
【0011】
米国特許第6,414,050号には、超臨界COを使用して、ポリマー基質と二官能性材料基質とを接触させることにより組成物を調製する方法が記載されている。しかしながら、この接触のために選択される圧力および温度の条件は、ポリマーの粘度を低下させてそれを可塑化すること(すなわち軟化が起こる)またはそれを溶融および/もしくは膨潤させることが可能になるような条件である。したがって、該条件は比較的過酷であり、裸眼に可視的なポリマー構造の改変がある。さらに、ポリマーの液化が原因で、COが除去されたときに、固化工程中に泡がポリマー中に形成されるので、得られる組成物は多孔性である。さらに、全ての実施例において、接触工程は攪拌しながら実施されており、それは、余分なコストを生じさせることにより、該方法の工業化に対する問題を提起する。さらに、活性物質の物理的形態の変化はなく、すなわち、記載された方法では、この活性物質の非晶質化はない。さらに、超臨界COを用いる接触工程は攪拌下に行われるので、活性物質とポリマーとの事前の混合がない。最後に、粉末を得るためには、得られた生成物を噴霧ノズルにより噴霧することが必要であり、そのため方法が複雑になる。
【0012】
特許出願WO94/18264には、超臨界COを使用する、活性物質のポリマーへの含浸が記載されている。しかしながら、この含浸を実施するために、液体が混合物に添加され、この液体は、具体的には水であってもよいが、一般的には活性物質の可溶化剤である。さらに、実施例において、活性物質は溶液になっており(実施例24〜26、46頁、127頁)固体ではない。さらに、水の不在下で、したがって液体を添加せずに、2つの別々のフラスコ中、または同じフラスコ中のいずれかで、60度および13.8MPaで行った表の実施例2および4において、ビーズへの含浸はなく、ビーズは白色のままである。
【0013】
それ故、該方法は、文書によれば、液体の不在下特に水の不在下における実施には適しないように思われる。
【0014】
しかしながら、液体の存在は、含浸方法の終了時にそれらの除去が必要になる欠点を伴う。
【0015】
出願WO99/25322には、超臨界COを使用する連続法による架橋ポリビニルピロリドンまたは架橋ナトリウムグリコレートデンプンへのケトプロフェンなどの活性物質の含浸が開示されている。
【0016】
活性物質は、最初、超臨界流体中に可溶化された後、ポリマーに加えられる。このタイプの方法の問題は、超臨界COに可溶性の活性物質にだけに適することである。
【0017】
さらに、静的様式が文書D2に記載されているが、実施例には動的様式のみが見出される。
【0018】
この出願に記載されたデータに基づいて、1kgを処理するために必要とされるCOの量を見積もる(access)ことは容易である。実施例1において、著者は、1.225gのニメスリドを5gの架橋PVPに含浸している。このために、43kgのCO(液体CO密度=約0.9kg/リットルとして)、すなわち35トン/kg(活性物質)のCOが使用される。
【0019】
実施例2において、著者は、5gの架橋メタクリレートに1.06gのアシクロビルを含浸している。このために、130kgのCO(液体CO密度=約0.9kg/リットルとして)、すなわち122トン/kg(活性物質)のCOが使用される。
【0020】
A.Bounaceur et al./(J.of Supercritical Fluids 41(2007)429−439)による論文によれば、純CO中のケトプロフェンのモル分率は約y=4.l×10−5(200バール、65℃)である。それ故、この文書に基づいてケトプロフェンを含浸するためには、少なくとも4.3トン/kg(活性物質)のCOを使用することが必要である。
【0021】
したがって、使用すべきCO含有率が高すぎて、COコストが高すぎるこの工程を工業化することはできない。
【0022】
それ故、本発明者らは、静的様式の分子拡散工程を使用する利点と超臨界COとを、先行技術の不利点、例えば:
・多孔性担体を使用する必要性、または
・例えば過剰な工程数(超臨界COを用いる洗浄またはノズルを用いる噴霧の追加)のために時間のかかりすぎる方法、または
・ポリマーの液化もしくは少なくとも軟化もしくは方法の時間を長引かせることを含む過酷すぎる温度および圧力条件、または
・分子拡散工程中の攪拌の使用、
・過剰な量のCOの使用、または
・COに加えて他の流体の存在が必須であること
なしに組み合わせる方法を見出した。
【0023】
したがって、本発明は、ポリマー性薬学的担体に活性物質を含浸するバッチ法であって、以下の一連の工程:
a)活性物質と、非多孔性のポリマー性薬学的担体とを混合し、該ポリマー性薬学的担体は固体形態にあり、超臨界COに不溶性であり、かつ非架橋ポリビニルピロリドンではなく、
b)a)で得た混合物と超臨界COとを、80〜170バールの間の圧力および31〜90℃の間の温度で1時間から6時間の間、攪拌せずに静的様式で接触させることにより、水の不在下で分子拡散工程を行い、
c)b)で得た活性物質を含浸したポリマー性薬学的担体を回収し、該含浸したポリマー性薬学的担体は非多孔性であり、固体形態であり、かつ非晶質形態であること
を含んでなり、かつ
追加溶媒の不在下で行われる方法に関する。
【0024】
本発明による方法を使用して、1kgのASを処理するために必要になるCOの量は、粉末のかさ密度および含浸された活性物質含有率にのみ依存する。
【0025】
このようにして、以下の仮定に基づいて、
粉末のかさ密度=500g/リットル
含浸された活性物質含有率=20%
僅か10kgのCO/kg(活性物質)が使用されるべきである。
【0026】
このようにして、この方法は、特許出願WO99/25322に記載された方法におけるよりもケトプロフェンについて400倍少ないCOおよびアシクロビルについて12,000倍少ないCOを使用して実施することができる。したがって、これは「溶媒」コストを減少させ、かつ必要とされる投資を大きく減少させる。
【0027】
本発明の範囲内で、使用するポリマー性薬学的担体は非多孔性である。それ故、それはシクロデキストリンまたは籠のような形状で分子複合体の形成を可能にするホスト分子ではない。実際、本発明による方法で得られる生成物は、担体と活性物質との複合体ではなくて、活性物質を含浸した担体である。したがって得られる生成物は、ポリマー性薬学的担体と活性物質との間の分子レベルでの固体分散であり、多孔性担体の空洞中への活性物質の挿入ではない。このようにして、ポリマー担体に含浸している活性物質は非晶質形態にある。それ故、特に、活性物質の物理的改変が、その含浸中に起こる。
【0028】
本発明によれば、「ポリマー担体」という用語は、長鎖を有する任意のポリマー担体を指す。それ故、それはシクロデキストリンまたはラクトースなどのオリゴマーではない。特に、本発明によるポリマー担体のポリマー鎖は、少なくとも10単位例えば少なくとも20単位を含んでなる。
【0029】
本発明によれば、「薬学的担体」という用語は、薬学的、栄養学的または獣医学的媒体において使用するのに適した任意の担体を指す。特に、それは、希釈剤、結合剤、コーティング剤、付着防止剤、崩壊剤、可塑剤、可溶化剤、潤滑剤、安定剤、固化防止剤、防湿剤、味覚遮蔽剤または充填剤、放出プロファイル改変(例えば徐放化)剤、その他として作用する担体からなることができる。
【0030】
一つの具体的態様によれば、薬学的担体は、セルロースポリマー例えば、セルロース、微結晶性セルロース、ヒプロメロース、特にアセテートスクシネート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、もしくはカルボキシメチルセルロースなど、ワックス、植物系もしくは合成ゴム、例えば、グアーガム、アラビアゴム、キサンタンもしくはイナゴマメガムなど、ポリエチレングリコール、フタル酸ポリマー例えばセルロースアセトフタレートなど、架橋ポリビニルピロリドン、デンプンもしくはマルトデキストリンまたはそれらの混合物からなる。特に、それは、多糖および/またはポリオースからなるものではない。さらなる具体的態様によれば、ポリマー性薬学的担体は、セルロースポリマー、架橋ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群、特にカルボキシメチルセルロースの例えばナトリウム塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0031】
本発明によるポリマー性薬学的担体は、周囲温度で、したがって本発明による方法の工程a)の間は固体形態にある。さらに、それらのガラス転移点(Tg)および融点(Tf)は、ポリマー担体が工程b)の間固体形態のままであり、したがって液化されないようなものである。それ故、ポリマー担体の膨潤または可塑化はこの工程の間には起こらない。しかしながら、工程b)の間にポリマー鎖の運動性における増大があって、活性物質のポリマー担体中への浸入が、したがって活性物質のそれらへ含浸が可能になる。
【0032】
本発明によるポリマー担体は、非架橋ポリビニルピロリドンではない。実際、そのような担体は活性物質結晶化阻害剤としてすでに周知であり、したがって本発明による方法を使用して含浸する必要はない。さらに、それらのポリマー鎖の運動性は特に重要である。本発明による方法は、ポリマー鎖が特に周囲温度で比較的動き難い、架橋PVPなどのポリマー性薬学的担体に、より多く関する。
【0033】
本発明による方法における使用に適したポリマー性薬学的担体は、特に水性媒体に不溶性である。
【0034】
予期せずに、本発明者らは、使用されるポリマー性薬学的担体の官能性を過剰発現させることが、本発明による方法により可能になることを観察した。実際、担体が例えば崩壊剤(架橋ポリビニルピロリドンまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど)であれば、本発明による方法を使用して活性物質をそれらに含浸後に、それらの崩壊力はかなり増大する(すなわち、ほとんど2倍)。さらに、崩壊剤として作用する薬学的ポリマー担体に活性物質を含浸して、活性物質の安定化された非晶質形態を得ることができることは非常に驚くべきことである。
【0035】
「活性物質」という用語は、本発明により、水性媒体に可溶性でも難溶性でも任意の活性物質を指す。したがって、この方法は、水性媒体に難溶性の活性物質に限定されない。したがって含浸の目的は活性物質の水性媒体への溶解を増大させることだけではなく、本質的には、活性物質の安定化された非晶質形態を得ることを可能にすることである。このようにして、特に、非晶質形態が安定化されていない活性物質が使用されるであろう。一つの具体的態様によれば、活性物質は、工程a)の間は結晶性形態にある。さらに、工程c)の間、該活性物質は非晶質形態にある。それ故、活性物質の非晶質化は工程b)の間に、すなわちポリマー性薬学的担体への物質の含浸の間に起こる。活性物質は、薬学的成分(例として、鎮痛剤、解熱剤、アスピリンおよびそれらの誘導体、抗生物質、抗炎症剤、抗潰瘍剤、降圧剤、神経弛緩剤、抗うつ剤、治療活性を有するオリゴヌクレオチド、治療活性を有するペプチドおよび治療活性を有するタンパク質が挙げられる)、美容用または栄養補助食品成分またはそれらの混合物であってよい。特に、活性物質は超臨界COに不溶性である(ビンフルニンなど)。
【0036】
「水性媒体に難溶性の活性物質」という用語は、本発明により、水性媒体に難溶性または不溶性の、特に溶解度が少なくとも20μg/ml未満の任意の活性物質を指す。
【0037】
特に、本発明による活性物質は、アニリド誘導体、エピポドフィロトキシン誘導体、ミノキシジル、ピロキシカム、吉草酸、オクタン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、チアプロフェニン酸、オメプラゾール、エコナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、アステミゾール、シクロベンザプリン、ニメスリド、イブプロフェン、テルフェナジン、ドンペリドン、ナプロキセン、エフルシミブル、ケトプロフェン、ビンフルニン、ミルナシプラン、フェノフィブラート、硫酸鉄一水和物、硫酸鉄七水和物およびそれらの混合物からなる群、より特別には、ケトプロフェン、ビンフルニン、ミルナシプラン、フェノフィブラート、硫酸鉄一水和物、硫酸鉄七水和物およびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0038】
本発明による方法は、
・メチルセルロース、架橋PVP、HPMCおよびカルボキシメチルセルロースから選択される担体中のケトプロフェン、
・カルボキシメチルセルロース中のビンフルニン、
・HPMCまたはメチルセルロース中のミルナシプラン
の含浸について特に有利である。
【0039】
「超臨界CO」という用語は、本発明により、それらの臨界値を超える温度および圧力で使用されるCOを指す。
【0040】
「静的様式」という用語は、本発明により、全ての試薬が同時に存在して、反応を起こるに任せる反応または方法を指す。例えば、本発明の工程b)において、工程b)で得た混合物と超臨界COとをオートクレーブ中に入れて、反応を何時間も放置する。生成物の質量は反応中に変化しない。逆に、動的様式においては、反応または生成が進むにつれて反応物を加える。流体の循環または攪拌は動的様式の場合には頻繁に行う。生成物の質量は製造中に変化する。
【0041】
さらに、本発明による方法は、バッチ法である。このように、含浸に必要な全成分が工程b)の開始時に一度に加えられて、含浸されたポリマー担体が工程b)の終了時に得られる。
他の成分は添加されないか、または工程b)の開始と終了の間には除去されない。
【0042】
一つの具体的態様によれば、含浸されたポリマー性薬学的担体中における活性物質とポリマー性薬学的担体との間の質量比は、1〜60%、特に1〜50%、より具体的には20〜35%、例えば10〜35%である。
【0043】
本発明による方法の工程a)は、それにより、攪拌せずに実施される分子拡散工程の前に両成分(ポリマー性薬学的担体+活性物質)の密な混合が可能になるので、非常に重要である。AとBとの「密な混合物」という用語は、AとBとが得られた混合物内で均一に分布するAとBとの混合物を指す。したがって、工程a)により、工程b)の継続時間を短縮することが可能になる。特に、この工程は、ドラムミキサー、対流ミキサー、流動化ミキサーまたは静的ミキサーなどのミキサーを用いて実施される。
【0044】
特に、工程a)の間の活性物質は、固体形態、より具体的には粉末形態、例えば結晶性形態にある。工程a)中の一つの具体的態様によれば、活性物質およびポリマー性薬学的担体は、固体形態、特に粉末形態にある。したがって、工程a)の終了時に得られた混合物は、例えば物理的混合物、特に乾燥粉末である。
特に、工程a)は、周囲温度および圧力で実施される。
【0045】
本発明による方法の工程b)により、ポリマー性薬学的担体への含浸が可能になる。超臨界COの使用により、得られる含浸されたポリマー性薬学的担体から後で除去される必要がある有機溶媒の使用が回避される。
【0046】
一つの具体的態様によれば、工程b)は、密閉された反応器、特にオートクレーブ中で実施する。したがって、工程a)で得られた混合物は、この反応器中にCOと同時にまたは順に導入する。COはガス形態で導入する。次に、反応器を、閉じて加圧し、COが超臨界形態になるために必要とされる時間所望の温度にもたらし、前記担体を液化または軟化させずに、ポリマー性薬学的担体の活性物質による含浸を達成する。実際、工程b)の間中、ポリマー性薬学的担体は、固体形態、特に粉末形態のままである。ポリマー性薬学的担体の構造の裸眼に可視的な改変はない。特に、活性物質が固体形態、特に粉末形態にあれば、活性物質は、工程b)の間を通して固体形態、特に粉末形態のままであり、活性物質の構造に裸眼に可視的な改変がある。
【0047】
一つの具体的態様によれば、工程b)における温度は、40〜85℃、例えば50〜80℃などである。
【0048】
さらなる具体的態様によれば、工程b)における圧力は、100〜160バールであり、例えば150バールである。
【0049】
さらなる具体的態様によればは、工程b)および/または乾燥工程および/または特にノズルを使用する噴霧工程後の超臨界COによる洗浄工程がない。
【0050】
一つの具体的態様によれば、工程b)における接触時間は1〜3時間の間にあり、例えば2時間に等しい。
【0051】
本発明による方法の工程b)は、攪拌なしで実施され、工業化が容易な方法を与える。実際、本発明の範囲内で使用される薬学的担体を考慮し、また、特に担体が工程b)の間を通してその固体形態を保つので、高圧反応器における攪拌の使用は実験室規模においてのみ可能であり(2〜3リットルの反応器の使用)、工業的規模においては可能でない。実際、モータ(それは大気圧下にある)の運動を攪拌シャフト(高圧下にある)に伝達するために、「従来の」封止では気密性を提供できない。それ故、磁石がもう一つの磁石を駆動する磁気駆動が使用され、それが攪拌トルクに関して可能性を限定する。
【0052】
本発明の範囲内で、方法は、追加の溶媒不在で実施される。水は、特に、本発明による工程b)から存在しない。工程a)で得られる混合物は乾燥している。同様に、工程b)の終了時に得られる生成物も乾燥している。
【0053】
このように、本発明の工程b)の間に存在する唯一の溶媒は超臨界COである。
有利なことに、本発明による方法は、いかなる他の流体、例えば、超臨界CO以外の他の液体、例えば水の存在もなしで実施される。
【0054】
このようにして、本発明の一つの具体的態様によれば、特に工程b)の間に存在する成分は、活性物質、薬学的担体および超臨界COのみである。
【0055】
工程c)により、工程b)後に得られた含浸されたポリマー性薬学的担体を回収および単離し、場合により、ポリマー担体に含浸しなかった活性物質および/または含浸されなかったポリマー性薬学的担体からそれらを分離することが可能になる。このために、工程b)で使用される反応器は、圧力を下げて冷却する。COはガス形態で除去する。
含浸されたポリマー性薬学的担体は固体形態にある。
【0056】
ポリマー性薬学的担体が工程b)の開始時に粉末形態にあった場合に、それは、その含浸後、すなわち、工程b)の終了時および工程c)の間も粉末形態にとどまる。特に、本発明による方法の工程b)の間水が存在しないことにより、得られた粉末は乾燥粉末である。それ故、この粉末を乾燥する必要はない。
【0057】
ポリマー性薬学的担体に含浸している活性物質は、安定化された非晶質形態にある。このようにして、この活性物質は、その有効寿命を通じて、特に少なくとも2ヵ月間、特に1年までの間、その非晶質形態のままである。「安定化された非晶質形態にある活性物質」という用語は、本発明により、本発明による方法により処理されなかった場合より長い間、特に少なくとも6ヵ月の期間、より具体的には少なくとも1年の期間、非晶質形態に保たれて、結晶化または再結晶する傾向を有する任意の活性物質を指す。
【0058】
物質を含浸した薬学的担体は、非晶質形態にある活性物質の存在が必要とされる任意の薬学的、美容用または栄養学的組成物の調製に使用することができる。
【0059】
特に、それは、経口投与を意図されるピル、錠剤またはカプセルの製造に使用することができる。
【0060】
本発明による方法は、薬学的担体の機能性を強化するために特に有利である。このようにして、適当な薬学的担体を使用して、水に極めて溶けやすい活性物質について徐放性を有する活性物質を得ること、または水に難溶性の活性物質を可溶にすることが可能になる。
【0061】
本発明は、活性物質を含浸した、非多孔性固体形態にあるポリマー性薬学的担体にさらに関し、それが上記のようにして本発明による方法により得ることができること、活性物質は非晶質形態でありかつ水溶性であること、およびポリマー性薬学的担体が非架橋ポリビニルピロリドンではなくかつ超臨界COに不溶性であることを特徴とする。
【0062】
本発明の一つの具体的態様によれば、活性物質はミルナシプランであり、特に塩酸塩形態にあり、例えば(1S、2R)エナンチオマーである。
【0063】
さらなる具体的態様によれば、ポリマー性薬学的担体は充填剤であり、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの混合物から特に選択される。
【0064】
本発明は、医薬品として使用するための、本発明によるミルナシプランを含浸した固体形態にあるポリマー性薬学的担体にさらに関する。
【0065】
最後に、それは、抗鬱作用を有し、ならびに/または鬱病、例えば、重症鬱病(deep depression)、抵抗性鬱病、精神病性鬱病、インターフェロン治療により誘発された鬱病、鬱状態、躁鬱症候群、季節性鬱状態、全体的健康と関連する鬱病発症および心的状態を変える物質(altering the mood)に起因する鬱病、双極性障害、統合失調症、不安障害全般、陰鬱状態および消耗症(morose and marasmus conditions)、ストレス関連障害、パニック発作、恐怖症、心的外傷後障害、社会恐怖症、強迫性障害、行動性障害、薬剤習慣性解毒、免疫系鬱病、疲労および関連疼痛症候群、慢性疲労症候群、自閉症、機能亢進注意障害、睡眠障害、月経前不快気分障害、心臓血管疾患、神経変性性疾患および関連する不安および鬱病症候群(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病)、尿失禁、栄養障害、神経性過食症、神経性食欲不振、肥満症、無関心、偏頭痛および/もしくは過敏腸症候群を治療することを意図した、ならびに/または線維筋痛症候群および/もしくは他の機能障害を治療することを意図した、ならびに/または、精神医学的障害(psychiatric disorder)、特に中枢神経系障害、より詳細には自殺傾向のリスクを軽減しながら障害を治療するための医薬品として使用するための、ミルナシプランを、特に(1S、2R)エナンチオマー形態で含浸した、本発明による固体形態にあるポリマー性薬学的担体に関する。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、説明のためであって限定するものではない目的のために示す。
【0067】
実施例1:ケトプロフェンを使用
ケトプロフェン/架橋PVP(ポリビニルピロリドン)
粉末混合物:結晶性形態にある1gのケトプロフェン(SIGMA)+2gのPolyplasdone XL10(ISP) 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0068】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、超臨界CO(SC)を用いて、150バール、80℃で、2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0069】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0070】
1b ケトプロフェン/メチルセルロース
粉末混合物:結晶性形態にある1gのケトプロフェン(SIGMA)+2gのMetolose SM4(SEPPIC) 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0071】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、SC COを用いて150バール、80℃で2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0072】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0073】
1c ケトプロフェン/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)
粉末混合物:結晶性形態にある1gのケトプロフェン(SIGMA)+2gのBenecel MP843 HPMC(ASHLAND) 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0074】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、SC COを用いて150バール、80℃で2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0075】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0076】
1d (比較例)ケトプロフェン/ラクトース
粉末混合物:結晶性形態にある1gのケトプロフェン(SIGMA)+2gのラクトース 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0077】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、SC COを用いて150バール、80℃で2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0078】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0079】
活性物質(ケトプロフェン)の非晶質化に関する分析のプロトコルおよび結果:
示差走査熱量測定法すなわちDSCを使用して物質特有の熱的性質(脱水、結晶化、溶融、その他.)を観察する。
【0080】
これらの分析は、METTLER−TOLEDOのDSCユニットで実施した。既知量の粉末を、ユニットの「試料」坩堝中のアルミニウムカップに入れる。20℃から110℃までの温度勾配を5℃/分の速度でつくる。
【0081】
ケトプロフェンの融点は94℃であり、その溶融エンタルピーは116J/gに等しい。非晶質化は、本発明による「超臨界CO」を用いる処理後の粉末である活性物質の溶融ピークを、対応する物理的混合物の溶融ピークと比較することにより測定する。
【0082】
ケトプロフェンの溶融ピークが完全に消失すれば、その場合、非晶質化は100%に等しいとみなされる。
【0083】
下の表1に、本発明によるポリマー性薬学的賦形剤(例1a、1bおよび1c)またはラクトース(例1d)に含浸後の、T0(本発明による方法後直ちに)または2ヵ月、4ヵ月、7ヵ月または1年の間貯蔵した後における活性物質の非晶質化率(%)を示す。
【0084】
【表1】

【0085】
試料は何ら特別の注意はせずに貯蔵した。DSC分析は、1年にわたり多数回実施し、活性物質の非晶質化物が、例1a、1bおよび1cの場合に安定化されていることを示す。
【0086】
DSC分析後、ケトプロフェンの非晶質化率は、例1dの場合にはゼロであることが観察される。
【0087】
ラクトースの担体としての使用では、安定化された固体分散物は生じない。同様に、特許WO2004/096284中の種々の実施例においてシクロデキストリンを用いて実施された全てのテストについて:本発明による方法の工程b)の間に水を添加しないと複合化が妨げられ、それ故、非晶質化は起こらない。
【0088】
ラクトース(2グルコース単位)およびシクロデキストリン(7グルコース単位)はオリゴ糖でありポリマーではない。
【0089】
例1a、1bおよび1c(超崩壊剤)を用いる溶解促進の動力学
分析プロトコル:
100mlのエルレンマイヤーフラスコ中に、純粋のまたは架橋PVPに含浸している50mgのケトプロフェンに等価の正確に測定したテスト試料を導入する。50mlの水を加える。37℃+/−2℃の水浴中で400rpmの磁気攪拌下に置く。磁気攪拌下に5、15および30分に2mlの試料を取る。これらの試料を、Gelman GHP Acrodiscの0.45pmのポリプロピレンフィルターで濾過する。溶液は透明であるべきである。
【0090】
液体クロマトグラフィーによりケトプロフェン含有率を決定する。
【0091】
結果を下の表2にまとめる。
【表2】

【0092】
本発明による方法により、ケトプロフェンの溶解速度を増大させることが可能になる。
【0093】
実施例2:ビンフルニンを使用
2a:ビンフルニン塩基/カルボキシメチルセルロース
粉末混合物:結晶性形態にある1gのビンフルニン塩基+2gのクロスカルメロースナトリウム 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0094】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、SC COを用いて150バール、50℃で、2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0095】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0096】
例2a(超崩壊剤)を用いる溶解動力学の促進
分析プロトコル:
100mlのエルレンマイヤーフラスコ中に、50mgのビンフルニンに等価の正確に測定したテスト試料を導入する。pH6.8の緩衝液50mlを加える。400rpmの磁気攪拌下に置く。磁気攪拌下で15、30、60および120分に2mlの試料を取る。これらの試料をGelman GHP Acrodiscの0.45pmのポリプロピレンフィルターで濾過する。溶液は透明であるべきである。
【0097】
液体クロマトグラフィーによりビンフルニン含有率を決定する。
【0098】
結果は下の表3にまとめる。
【表3】

本発明による方法により、ビンフルニン塩基の溶解速度を増大させることが可能になる。
【0099】
例2aによるバイオアベイラビリティの増大
分析プロトコル
予備的なPkについてラットで試験を実施した:単回投与で2mg/kg、経口経路
投与ビヒクル:蒸留水(Aguettant)
絶食させたラット
ポジティブモードエレクトロスプレー(ESI+)検出LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法/質量分析法)バイオ分析法
Kinetica(Thermo Instruments、US)を用いる薬物動態学的分析
結果を下の表4にまとめる。
【表4】

本発明による方法により、ビンフルニン塩基の経口バイオアベイラビリティを増大させることが可能になる(AUCおよびCmaxにおける増大)。
【0100】
実施例3:ミルナシプランについて
3a ミルナシプラン/メチルセルロース
粉末混合物:結晶性形態にある1.5gのミルナシプラン塩酸塩(PFM)+7.5gのMetolose SM4(Seppic) 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0101】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、SC COを用いて150バール、80℃で2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0102】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0103】
3b ミルナシプラン/HPMC
粉末混合物:結晶性形態にある1.5gのミルナシプラン塩酸塩(PFM)+7.5gのHPMC(Benecel) 手で乳鉢を用いて(本発明による方法の工程a))。
【0104】
混合物を入れた温度制御高圧オートクレーブを加圧することにより、SC COを用いて150バール、80℃で2時間処理(本発明による方法の工程b))。
【0105】
オートクレーブの圧力を下げることにより粉末を回収(本発明による方法の工程c))。
【0106】
遅延効果 例3aおよび3bを用いる徐放性(制御放出系)
分析プロトコル:
100mlのエルレンマイヤーフラスコ中に、100mgのミルナシプランに等価の正確に測定したテスト試料を導入する。50mlの水を加える。400rpmの磁気攪拌下に置く。2mlの試料を磁気攪拌下で1、5、15、30および60分に取る。これらの試料をGelman GHP Acrodiscの0.45pmのポリプロピレンフィルターで濾過する。溶液は透明であるべきである。移動相で1:5希釈を行う。
【0107】
液体クロマトグラフィーによりミルナシプラン含有率を決定する。
【0108】
結果を下の表5にまとめる。
【表5】

本発明による方法により、ミルナシプラン塩酸塩(完全に可溶性の活性物質)の徐放化が可能になる。
【0109】
比較例4
この例は、特許出願WO99/25322中のプロトコルにしたがって実施した。この文書において、「飽和したCO」を得るための抽出工程は、活性物質が超臨界COに不溶性であると思われることが多いので、限界のある工程である。
【0110】
ミルナシプラン/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)抽出/パーコレーション
40グラムのミルナシプランを抽出セル中に入れ、8グラムのBenecel MP843(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)をセルより下流のカラムに入れる。5kg/hrのSC CO流を150バールおよび70℃で3時間適用する。
【0111】
カラムに回収された粉末をHPLCにより分析する:ミルナシプランの痕跡も検出されない。不溶性活性物質は抽出されず、したがってHPMCによるパーコレーションは行わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー性薬学的担体に活性物質を含浸するバッチ法であって、
以下の一連の工程:
a)活性物質と、非多孔性のポリマー性薬学的担体とを混合し、該ポリマー性薬学的担体は固体形態であり、超臨界COに不溶性であり、かつ非架橋ポリビニルピロリドンではなく、
b)a)で得た混合物と超臨界COとを、80〜170バールの間の圧力および31〜90℃の間の温度で1時間から6時間の間、攪拌せずに静的様式で接触させることにより、水の不在下で分子拡散を行い、
c)b)で得た活性物質を含浸したポリマー性薬学的担体を回収し、該含浸したポリマー性薬学的担体は非多孔性であり、固体形態であり、かつ非晶質形態にあること
を含んでなり、かつ
追加溶媒の不在下で行われる、方法。
【請求項2】
前記薬学的担体が、崩壊剤および充填剤、特に、架橋ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、例えば、そのナトリウム塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含浸したポリマー性薬学的担体中の活性物質とポリマー性薬学的担体との質量比が、1〜60%、例えば10〜35%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性物質が、ケトプロフェン、ビンフルニン、ミルナシプラン、フェノフィブラート、硫酸鉄一水和物および硫酸鉄七水和物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)における温度が、40〜85℃、例えば50〜80℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)における圧力が100〜160バールであり、例えば150バールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)における接触時間が、1〜3時間であり、例えば2時間である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)中の活性物質が、粉末形態、例えば結晶形態である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性物質が非晶質形態でありかつ水溶性でありかつ超臨界COに不溶性であり、かつ、前記ポリマー性薬学的担体が非架橋ポリビニルピロリドンではなくかつ超臨界COに不溶性である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、非多孔性の、活性物質を含浸した固体形態のポリマー性薬学的担体。
【請求項10】
前記活性物質がミルナシプランであり、例えば塩酸塩形態である、請求項9に記載の活性物質を含浸した固体形態のポリマー性薬学的担体。
【請求項11】
前記担体が、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの混合物から選択される充填剤である、請求項9または10に記載の活性物質を含浸した固体形態のポリマー性薬学的担体。
【請求項12】
ミルナシプランを含浸した、医薬品として使用するための、請求項10または11に記載の固体形態のポリマー性薬学的担体。
【請求項13】
抗鬱作用を有する医薬品、および/または、鬱病、例えば、重症鬱病、抵抗性鬱病、精神病性鬱病、インターフェロン治療により誘発された鬱病、鬱状態、躁鬱症候群、季節性鬱状態、全体的健康と関連する鬱病発症、および心的状態を変える物質に起因する鬱病、双極性障害、統合失調症、不安障害全般、陰鬱状態および消耗症、ストレス関連障害、パニック発作、恐怖症、心的外傷後障害、社会恐怖症、強迫性障害、行動性障害、薬剤習慣性解毒、免疫系鬱病、疲労および関連疼痛症候群、慢性疲労症候群、自閉症、機能亢進注意障害、睡眠障害、月経前不快気分障害、心臓血管疾患、神経変性性疾患および関連する不安および鬱病症候群(アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病)、尿失禁、栄養障害、神経性過食症、神経性食欲不振、肥満症、無関心、偏頭痛および/または過敏腸症候群を治療することを意図した医薬品、および/または、線維筋痛症候群および/または他の機能障害を治療することを意図した医薬品、および/または、精神医学的障害、特には中枢神経系障害、より詳細には自殺傾向のリスクを軽減しながら障害を治療するための医薬品として使用するための、ミルナシプランを特に(1S、2R)エナンチオマー形態で含浸した、請求項12に記載の固体形態のポリマー性薬学的担体。

【公表番号】特表2012−526775(P2012−526775A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510301(P2012−510301)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056582
【国際公開番号】WO2010/130799
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】