説明

超音波診断装置

【課題】視野領域に対する超音波スキャンの反復周波数に応じた好適な動画像記憶周波数を自動で設定することが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】この実施形態に係る超音波診断装置は、生成部と、表示部と、表示制御部と、記憶部と、記憶制御部とを有する。生成部は、あらかじめ設定された視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより、当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する。表示制御部は、逐次に生成される超音波画像データに基づく動画像を表示部に表示させる。記憶制御部は、スキャンの反復周波数と、現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定する。更に、記憶制御部は、生成部により逐次に生成される超音波画像データを、当該新たな動画像記憶周波数で記憶部に逐次に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを用いて被検体内に超音波を送信してその反射波を受信することにより、被検体の生体情報を取得するものである。
【0003】
特に、超音波診断装置は、視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより、この視野領域内の生体部位の形態や機能を表す動画像を生成し表示する。このとき、あらかじめ設定された反復周波数で視野領域内のスキャンが反復される。
【0004】
反復周波数とは、当該技術分野でフレームレートなどと呼ばれるパラメータであり、単位時間に視野領域内をスキャンする回数(換言すると、単位時間に視野領域全体を計測する回数)を示す。超音波診断装置は、一回のスキャンに対応して一枚の画像(フレーム)を生成する。なお、反復周波数としては、動画像を表示させるときのビデオレート程度の値や、その数倍程度の値などが用いられる。なお、反復周波数は、繰り返し周波数、つまり単位時間に超音波を送受信する回数とは異なる概念である。
【0005】
動画像は、その取得後に、診断やインフォームド・コンセントにて使用される。そのために、生成・表示されている動画像を保存する技術が知られている(たとえば特許文献1を参照)。動画像の保存は、あらかじめ設定された動画像記憶周波数で行われる。動画像記憶周波数とは、単位時間に記憶されるフレームの枚数を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−87640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
動画像を保存する際には動画像記憶周波数に配慮する必要がある。たとえば動画像記憶周波数が反復周波数よりも高い場合、動画像の同じフレームを重複して記憶することとなり、記憶されるデータの容量が無駄に増大してしまう。そうすると、データの保存や読み出しに時間が掛かったり、リソースを無駄に消費したりといった問題が生じる。
【0008】
また、従来においては、フレームレートに影響するパラメータ(繰り返し周波数、ビーム数など)を変更した場合、動画像記憶周波数を手動で変更していた。そのため、操作の煩雑さや変更し忘れなどが問題となっていた。
【0009】
この実施形態は、視野領域に対するスキャンの反復周波数に応じた好適な動画像記憶周波数を自動で設定することが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この実施形態に係る超音波診断装置は、生成部と、表示部と、表示制御部と、記憶部と、記憶制御部とを有する。生成部は、あらかじめ設定された視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより、当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する。表示制御部は、逐次に生成される超音波画像データに基づく動画像を表示部に表示させる。記憶制御部は、スキャンの反復周波数と、現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定する。更に、記憶制御部は、生成部により逐次に生成される超音波画像データを、当該新たな動画像記憶周波数で記憶部に逐次に記憶させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この実施形態に係る超音波診断装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
〈第1の実施形態〉
[構成]
図1に示す超音波診断装置は、超音波プローブ1と、送信部2と、受信部3と、信号処理部4と、画像生成部5と、表示制御部6と、表示部7と、制御部8と、操作部9と、画像記憶部10とを有する。
【0014】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配置された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。また、走査方向に1列に配置された複数の超音波振動子を、走査方向に直交する揺動方向に揺動させる機械式1次元アレイプローブを用いてもよい。超音波プローブ1は被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信する。
【0015】
(送信部2)
送信部2は、超音波プローブ1に電気信号を供給して所定の焦点にビームフォームした(つまり送信ビームフォームした)超音波を送信させる。
【0016】
(受信部3)
受信部3は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信し、そのエコー信号に対して遅延処理を行うことにより、アナログのエコー信号を整相された(つまり受信ビームフォームされた)デジタルのデータに変換する。
【0017】
受信部3は、例えば図示しないプリアンプ回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。プリアンプ回路は、超音波プローブ1の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。受信部3から出力される受信信号は、信号処理部4に出力される。
【0018】
(信号処理部4)
信号処理部4はBモード処理部を有する。Bモード処理部は受信信号を受信部3から受けて、受信信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、受信信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
【0019】
信号処理部4はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。
【0020】
信号処理部4はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部は受信信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。
【0021】
信号処理部4は、信号処理が施された受信信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部5に出力する。
【0022】
(画像生成部5)
画像生成部5は、信号処理部4から出力された信号処理後の受信信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部5は、例えばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部5は、走査線の信号列で表される信号処理後の受信信号を、直交座標系で表される画像データに変換する。この処理は、スキャンコンバージョン処理などと呼ばれる。例えば、画像生成部5は、Bモード処理部によって信号処理が施された受信信号にスキャンコンバージョン処理を施すことにより、被検体の組織の形態を表すBモード画像データを生成する。画像生成部5は、超音波画像データを表示制御部6に出力する。
【0023】
なお、超音波プローブ1、送信部2、受信部3、信号処理部4及び画像生成部5は、「生成部」として機能する。生成部は、視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより、この視野領域の超音波画像データを逐次に生成する。
【0024】
視野領域とは、超音波でスキャンされる被検体の領域であり、また画像として描出される領域である。視野領域は、たとえば2次元領域又は3次元領域である。生成部は、視野領域のスキャンを所定の周波数で反復する。この周波数を反復周波数と呼ぶことにする。この処理は、超音波プローブ1、送信部2及び受信部3が反復的に連動制御されることで実現される。生成部は、視野領域を一度スキャンする毎に得られる一連のエコー信号に基づいて、一枚分の超音波画像データを逐次に生成する。この処理は、超音波プローブ1、送信部2及び受信部3の反復的な連動制御に同期して信号処理部4及び画像生成部5を連動制御することにより実現される。
【0025】
なお、反復周波数と、表示用のビデオレートとの関係については、一般に前者が後者以上となる。反復周波数がビデオレートよりも高い場合、生成された超音波画像データの一部のみが表示用のフレームとして用いられる。詳細については後述するが、この場合においても全ての超音波画像データが記憶される。それにより、たとえば後にコマ送りで観察を行うときの時間分解能が高まる。
【0026】
(表示制御部6)
表示制御部6は、超音波画像データを画像生成部5から受けて、超音波画像データに基づく超音波画像を表示部7に表示させる。このとき、表示制御部6は、超音波画像データと所定の付帯情報とを組み合わせて表示用のフレームを生成する。この付帯情報としては、患者情報や撮影条件などがある。患者情報とは、当該被検者に関する情報であり、その一例として患者IDや氏名などがある。撮影条件とは、当該超音波診断において適用されているパラメータの値であり、その一例として、反復周波数、ビデオレート、動画像記憶周波数(後述)、繰り返し周波数、ビーム数などがある。超音波画像データと付帯情報の組み合わせ方法としては、これらをそれぞれ異なるレイヤーとして構成して重畳させる方法や、これらを合成して表示用のデータを生成する方法などがある。
【0027】
(表示部7)
表示部7は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。表示部7は、表示制御部6による制御を受けて超音波画像や付帯情報を表示する。
【0028】
(制御部8)
制御部8は、超音波診断装置の各部の動作を制御する。例えば、制御部8は、前述の連動制御を実行させる。また、制御部8は、超音波画像データや付帯情報を記憶させるための処理を実行する。制御部8は、図2に示すように、記憶周波数決定部81と、記憶処理部82と、モード切替部83とを有する。記憶周波数決定部81、記憶処理部82及びモード切替部83は、「記憶制御部」の一例として機能する。
【0029】
(記憶周波数決定部81)
記憶周波数決定部81は、所定の反復周波数でスキャンを繰り返す場合、つまり動画撮影を行っている場合に動作するものである。記憶周波数決定部81は、スキャンの反復周波数と、現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定する。
【0030】
動画像記憶周波数とは、動画撮影時に設定されるパラメータであり、前述のように、単位時間に記憶されるフレーム(超音波画像データ)の枚数を示す。動画像記憶周波数は、動画撮影前に設定される。その値は、デフォルト値であってもよいし、ユーザが任意に設定した値であってもよい。
【0031】
「動画像記憶周波数が実質的に反復周波数以下である」とは、前者が後者以下である場合だけでなく、この実施形態の作用・効果が得られる程度において前者が後者を超える場合も含むことを意味する。この超過範囲は、装置のハードウェア構成及び/又はソフトウェア構成や、適用される動画像記憶周波数及び/又は反復周波数の値や、動画撮影時間などに応じて任意に決定される。
【0032】
記憶周波数決定部81の実行する処理の具体例を説明する。記憶周波数決定部81は、事前に設定されたスキャンの反復周波数の情報と、現に設定されている動画像記憶周波数の情報とを受けて、これらの値を比較する。動画像記憶周波数が反復周波数以下である場合、記憶周波数決定部81は、現に設定されている動画像記憶周波数をそのまま採用する。つまり、この場合においては、新たな動画像記憶周波数は現に設定されている動画像記憶周波数と等しくなり、動画像記憶周波数の変更処理は不要である。
【0033】
一方、動画像記憶周波数が反復周波数を超えている場合、記憶周波数決定部81は、反復周波数以下の値となるように新たな動画像記憶周波数を決定する。この処理は、あらかじめソフトウェアとして定められたプロセスにしたがって実行される。
【0034】
その一例として、反復周波数と(実質的に)等しい値を採用するプロセス、反復周波数よりも所定値だけ低い値を採用するプロセス、反復周波数よりも所定割合だけ低い値を採用するプロセスなどがある。なお、「実質的に等しい」とは、この実施形態に係る作用・効果において、「等しい」場合との間に実質的な差異がない範囲での相異は許容することを意味する。また、上記超過範囲の決定要素を考慮しつつ、反復周波数よりも所定値だけ又は所定割合だけ高い値を設定するプロセスを適用してもよい。
【0035】
また、以上に列挙したプロセス等を含む複数のプロセスのうちの2つ以上を、選択的に適用可能に構成することも可能である。この選択は、操作部9を介して手動で行うようにしてもよいし、所定の要素を考慮して自動で行うようにしてもよい。この所定の要素の例としては、疾患名、検査部位、当該被検者に対する過去(たとえば前回)の検査での適用プロセス、ユーザによるプリセットなどがある。
【0036】
なお、新たな動画像記憶周波数の下限値は任意に設定される。この下限値の決定要素としては、たとえば動画表示におけるビデオレートがある。つまり、その動画の閲覧者が、これを滑らかな動画として認識できるような一般的なビデオレートの値(たとえば30フレーム/秒)を、上記の下限値とすることができる。また、たとえばインフォームド・コンセント用としてのみ動画像を使用する場合や、動画像をコマ送りでのみ閲覧する場合のように、動画の時間分解能の高さが比較的要求されないケースにおいては、一般的なビデオレート未満の値を適用してもよい。なお、動画像記憶周波数の値ゼロは超音波画像データを一つだけ記憶させることに相当するので、その下限値は正の値であればよい。
【0037】
(記憶処理部82)
記憶処理部82には、記憶周波数決定部81により決定された動画像記憶周波数が入力される。更に、記憶処理部82には、動画撮影時において画像生成部5により逐次に生成される超音波画像データが逐次に入力される。そして、記憶処理部82は、逐次に入力される超音波画像データを、当該動画像記憶周波数で画像記憶部10に記憶させる。
【0038】
動画像記憶周波数が反復周波数と等しい場合、動画像記憶周波数は、超音波画像データの生成周波数(単位時間に生成される超音波画像データの数)、更には、記憶処理部82に対する超音波画像データの入力周波数(単位時間に入力される超音波画像データの数)と等しくなる。よって、記憶処理部82は、画像生成部5から逐次に入力される超音波画像データを、その入力タイミングに同期したタイミングで逐次に画像記憶部10に記憶させる。
【0039】
動画像記憶周波数が反復周波数より低い場合、一般に、記憶処理部82は、画像生成部5から逐次に入力される超音波画像データを「間引き」して記憶させることとなる。たとえば動画像記憶周波数が反復周波数の1/nであれば、記憶処理部82は、超音波画像データがn個入力される毎に、それらのうちの1個を記憶させることとなる。より一般に、動画像記憶周波数が反復周波数のm/n(m<n)であれば、記憶処理部82は、超音波画像データがn個入力される間に、それらのうちのm個を記憶させることとなる。
【0040】
なお、動画像記憶周波数と反復周波数との差が小さく、かつ、記憶処理を実行する時間が短い(つまり記憶される超音波画像データの数が少ない)場合には、入力される全ての超音波画像データが記憶されることもある。動画像記憶周波数が反復周波数より高い場合においても、同様の理由で、入力される全ての超音波画像データを重複なく記憶させることが可能である。
【0041】
記憶処理部82は、画像記憶部10に記憶させる超音波画像データに、所定の付帯情報を付加する。この付帯情報の例として、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に準拠したDICOMタグがある。この付帯情報には、記憶周波数決定部81により決定された動画像記憶周波数に対応するフレーム間隔情報が含まれる。このフレーム間隔情報は、記憶される超音波画像データを動画像として表示させるときのビデオレートに相当するものであり、時系列的に隣接する超音波画像データ(フレーム)の間の時間間隔を示すものである。このフレーム間隔は、動画像記憶周波数の逆数として算出される。
【0042】
(モード切替部83)
モード切替部83は、記憶処理部82の動作モードを切り替える。この動作モードとしては、記憶周波数決定部81により決定された動画像記憶周波数を用いる第1モードと、ユーザが操作部9を用いてあらかじめ設定した動画像記憶周波数を用いる第2モードとが含まれる。モード切替部83は、所定の入力情報を受けて第1モード及び第2モードを含む複数の動作モードのうちのいずれか1つを選択し、その選択結果を記憶処理部82に送る。記憶処理部82は、この選択結果に示す動作モードで超音波画像データの記憶処理を実行する。
【0043】
上記の入力情報は、操作部9を介して又は自動で生成される。後者の例として、疾患名や検査部位と動作モードとをあらかじめ対応付けたテーブル情報から当該入力情報を生成するように構成することができる。また、当該被検者に対する過去(たとえば前回)の検査で適用された動作モードを記憶しておいて参照するように構成することも可能である。
【0044】
(操作部9)
操作部9は、ユーザによる操作を受けて、この操作内容に応じた信号や情報を装置各部に入力する。また、操作部9は、ネットワークやメディアを介して信号や情報の入力を受ける機能を有していてもよい。
【0045】
(画像記憶部10)
画像記憶部10は、超音波画像データや付帯情報を記憶する。画像記憶部10は、たとえばハードディスクドライブ等の記憶装置を含んで構成される。画像記憶部10の配置の例としては、当該超音波診断装置に内蔵させる構成や、直接に外付けする構成や、ネットワークを介して接続する構成などがある。
【0046】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作について説明する。この動作の一例を図3に示す。以下に説明する処理に先駆けて、視野領域、反復周波数、ビデオレートの設定などの準備作業はなされているものとする。また、動画像記憶周波数の値も設定されているものとする。
【0047】
なお、図3に示す処理は、記憶周波数決定部81により決定された動画像記憶周波数を適用するモードが選択された場合の一例である。ユーザによりあらかじめ設定された動画像記憶周波数を適用するモードが選択された場合には、従来と同様に、この動画像記憶周波数で画像データを記憶すればよい。
【0048】
(S01:検査開始)
ユーザは、超音波ゼリーを被検体に塗布し、その塗布位置に超音波プローブ1を当接させ、更に所定の操作を行うことにより検査開始を指示する。超音波プローブ1は、事前に設定された反復周波数で視野領域内を反復的にスキャンする。
【0049】
(S02:画像データの生成・画像表示の開始)
画像生成部5は、超音波プローブ1から受信部3及び信号処理部4を介して逐次に入力されるデータに基づいて、当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する。表示制御部6は、画像生成部5から逐次に入力される超音波画像データと、所定の付帯情報とに基づいて、事前に設定されたビデオレートで超音波画像(動画像)及び付帯情報を表示部7に表示させる。
【0050】
(S03:動画像記憶周波数の決定処理)
記憶周波数決定部81は、事前に設定された反復周波数と動画像記憶周波数とに基づいて、新たな動画像記憶周波数を決定する。この新たな動画像記憶周波数は、実質的に当該反復周波数以下である。
【0051】
なお、動画像記憶周波数を決定する処理は、必ずしもこのタイミングで行われる必要はない。この処理は、必要な情報(反復周波数と動画像記憶周波数)が入力されたときから、実際に超音波画像データの記憶が実行されるときまでの間における任意のタイミングで行うことが可能である。
【0052】
(S04:画像データ記憶処理の開始指示)
ユーザは、所望のタイミングで操作部9を用いて所定の操作を行うことにより、画像データの記憶処理の開始を指示する。操作部9は、この指示に対応する信号を制御部8に入力する。
【0053】
(S05:画像データ記憶処理)
この信号を受けたことに対応し、記憶処理部82は、画像生成部5により逐次に生成される超音波画像データを逐次に取得する。そして、記憶処理部82は、逐次に入力される超音波画像データを、ステップS03で決定された動画像記憶周波数で逐次に画像記憶部10に記憶させる。これら超音波画像データは一群のデータとして画像処理部10に記憶される。また、この一群のデータには、フレーム間隔情報を含む付帯情報が付加される。
【0054】
なお、画像生成部5からの超音波画像データの取得タイミングを当該動画像記憶周波数に同期させるように構成することができる。また、当該取得タイミングと反復周波数とを同期させ、かつ、画像記憶部10への超音波画像データの記憶タイミングと当該動画像記憶周波数とを同期させるように構成することもできる。
【0055】
(S06:画像データ記憶処理の終了)
ユーザは、所望のタイミングで操作部9を用いて所定の操作を行うことにより、画像データの記憶処理の終了を指示する(S06:Yes)。操作部9は、この指示に対応する信号を制御部8に送る。この信号を受けたことに対応し、記憶処理部82は、画像データの記憶処理を終了する。一方、記憶処理部82は、当該指示が入力されるまで、画像データの記憶処理を継続する(S06:No)。
【0056】
今回の処理により記憶された一連の超音波画像データは、フレーム間隔情報を含む付帯情報とともに画像記憶部10に保存される。以上で、この動作例に係る処理は終了となる。
【0057】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果について説明する。
【0058】
この超音波診断装置は、生成部と、表示部7と、表示制御部6と、画像記憶部10と、記憶制御部とを有する。
【0059】
生成部は、超音波プローブ1、送信部2、受信部3、信号処理部4及び画像生成部5を含んで構成される。生成部は、あらかじめ設定された視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより、当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する。
【0060】
表示制御部6は、逐次に生成される超音波画像データに基づく動画像を、表示部7に表示させる。
【0061】
記憶制御部は、記憶周波数決定部81と記憶処理部82とを含んで構成される。記憶周波数決定部81は、超音波スキャンの反復周波数と、現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定する。記憶処理部82は、生成部により逐次に生成される超音波画像データを、当該新たな動画像記憶周波数で画像記憶部10に逐次に記憶させる。
【0062】
このような超音波診断装置によれば、実質的に反復周波数以下の値の動画像記憶周波数を自動的に設定し、この動画像記憶周波数で超音波画像データを記憶させることができる。したがって、この動画像の同じ超音波画像データ(フレーム)を重複して記憶することがなくなり、記憶されるデータの容量が無駄に増大してしまうこともない。また、繰り返し周波数やビーム数などの反復周波数(フレームレート)に影響するパラメータを変更した場合であっても、動画像記憶周波数を手動で変更する必要がないため、操作性が向上する。このように、この超音波診断装置によれば、スキャンの反復周波数に応じた好適な動画像記憶周波数を自動で設定することが可能である。なお、動画像記憶周波数として反復周波数を超える値を適用する場合においては、その超過量又は超過度合は上記の作用・効果に影響を与えない程度に留まるように設定される。
【0063】
また、この実施形態に係る超音波診断装置は、動画像記憶周波数を手動で設定するための操作部9を有する。更に、記憶制御部はモード切替部83を有する。それにより、記憶制御部は、記憶周波数決定部81により決定された動画像記憶周波数を用いる第1モードでの動作と、ユーザが操作部9を用いてあらかじめ設定した動画像記憶周波数を用いる第2モードでの動作とを選択的に実行することが可能である。それにより、ユーザのニーズに応じた画像データ記憶処理を提供することができる。
【0064】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態では、画像生成部5により生成される超音波画像データを記憶させる例について説明した。それに対し、この実施形態では、表示制御部6により生成される表示用のデータを記憶させる例について説明する。
【0065】
この実施形態に係る超音波診断装置は、第1の実施形態とほぼ同様の全体構成を有する(図1を参照)。以下、第1の実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して説明することとする。また、第1の実施形態と同様の内容については適宜説明を省略する。
【0066】
この実施形態に係る超音波診断装置の制御系の構成例を図4に示す。第1の実施形態との相異は、表示制御部6から記憶処理部82にデータが入力される点である。
【0067】
前述のように、表示制御部6は、画像生成部5から逐次に超音波画像データを受けて、超音波画像データと付帯情報とを組み合わせて表示用のフレームを逐次に生成する。そして、表示制御部6は、逐次に生成されるフレームを、あらかじめ設定されたビデオレートで順次に切り替え表示させることにより、超音波動画像と付帯情報とを表示部7に表示させる。なお、前述のように、各表示用のフレームは2枚以上のレイヤーから構成されていてもよい。
【0068】
記憶周波数決定部81は、第1の実施形態と同様に、超音波スキャンの反復周波数と、現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定する。
【0069】
記憶処理部82は、表示制御部6により逐次に生成される表示用のフレーム(動画像のフレームと付帯情報とを含む)を、記憶周波数決定部81により決定された動画像記憶周波数で画像記憶部10に逐次に記憶させる。また、記憶処理部82は、第1の実施形態と同様に、画像記憶部10に記憶させる表示用のフレームに所定の付帯情報を付加する。
【0070】
以上のように、この実施形態に係る超音波診断装置は、生成部と、表示部7と、表示制御部6と、画像記憶部10と、記憶制御部とを有する。
【0071】
生成部は、超音波プローブ1、送信部2、受信部3、信号処理部4及び画像生成部5を含んで構成される。生成部は、あらかじめ設定された視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより、当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する。
【0072】
表示制御部6は、逐次に生成される超音波画像データに基づく動画像を、表示部7に表示させる。
【0073】
記憶制御部は、記憶周波数決定部81と記憶処理部82とを含んで構成される。記憶周波数決定部81は、超音波スキャンの反復周波数と、現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定する。記憶処理部82は、表示制御部6により逐次に生成される表示用のフレーム(動画像のフレームと付帯情報とを含む)を、当該新たな動画像記憶周波数で画像記憶部10に逐次に記憶させる。
【0074】
このような超音波診断装置によれば、第1の実施形態と同様に、スキャンの反復周波数に応じた好適な動画像記憶周波数を自動で設定することができる。また、この超音波診断装置によれば、記憶制御部の動作モードの切り替えが可能であるので、ユーザのニーズに応じた画像データ記憶処理を提供することができる。
【0075】
更に、この実施形態に特有の効果として、超音波画像だけでなく、その付帯情報も記憶できることがある。
【0076】
以上、この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 超音波プローブ
2 送信部
3 受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 表示制御部
7 表示部
8 制御部
81 記憶周波数決定部
82 記憶処理部
83 モード切替部
9 操作部
10 画像記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ設定された視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する生成部と、
表示部と、
逐次に生成される前記超音波画像データに基づく動画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
記憶部と、
前記スキャンの反復周波数と現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定し、逐次に生成される前記超音波画像データを前記新たな動画像記憶周波数で前記記憶部に逐次に記憶させる記憶制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
あらかじめ設定された視野領域内を超音波で反復的にスキャンすることにより当該視野領域の超音波画像データを逐次に生成する生成部と、
表示部と、
逐次に生成される前記超音波画像データに基づく動画像と所定の付帯情報とを前記表示部に表示させる表示制御部と、
記憶部と、
前記スキャンの反復周波数と現に設定されている動画像記憶周波数とに基づいて、実質的に当該反復周波数以下である新たな動画像記憶周波数を決定し、前記表示制御部により逐次に生成される前記動画像のフレーム及び前記付帯情報を前記新たな動画像記憶周波数で前記記憶部に逐次に記憶させる記憶制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
前記新たな動画像記憶周波数は前記反復周波数と実質的に等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
操作部を更に備え、
前記記憶制御部は、前記新たな動画像記憶周波数を用いる第1モードでの動作と、ユーザが前記操作部を用いてあらかじめ設定した動画像記憶周波数を用いる第2モードでの動作とを選択的に実行可能である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94613(P2013−94613A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243148(P2011−243148)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】