説明

踏切障害物検知装置

【課題】送信部及び受信部を内部に収容する筐体の電波透過部に付着した付着物(雪、水滴、塵など)に起因する信号レベルの低下及びこれに伴う検知漏れを抑制し、踏切道内における障害物の有無を安定して検知することのできる踏切障害物検知装置を提供する。
【解決手段】踏切障害物検知装置は、送信部から電波透過部を介して電波を送信するとともに送信された電波の反射波を前記受信部によって受信し、受信された反射波に基づいて踏切道内における障害物の有無を検知する。踏切障害物検知装置は、筐体内に付着物除去手段としての振動発生部を有する。そして、送信部による電波の送信が可能な領域内に存在する特定の固定物による反射波の信号レベルを監視し、監視された反射波の信号レベルが所定の判定レベルよりも低下すると、振動発生部を駆動して電波透過部を振動させる(ステップS1〜S3、S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切道内に取り残された障害物をミリ波などの電波を用いて検知する踏切障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からミリ波などの電波を利用して、踏切道内に取り残された人、車椅子、自転車及び自動車などの障害物を検知する踏切障害物検知装置が知られている。この種の踏切障害物検知装置は、電波を検知領域に送信し、送信した電波の障害物による反射波によって障害物の検知を行うため、障害物の大小にかかわらず、踏切道内における障害物の有無を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−325690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような踏切障害物検知装置においては、一般に、電波(ミリ波)を透過する電波透過部を有する筐体(いわゆるレドームを含む)内に送信部及び受信部が収容され、前記送信部が前記電波透過部を介して前記検知領域に電波を送信するともに、前記受信部が前記電波透過部を介して前記反射波を受信するように構成される。
しかし、前記電波透過部に、雪、水滴、塵などの異物が付着すると、この電波透過部における電波の透過損失が大きくなって前記反射波の信号レベル(受信レベル)が低下してしまうため、踏切道内における障害物の有無を精度よく検知できないおそれがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、電波を送信する送信部及び送信された電波の反射波を受信する受信部を内部に収容する筐体の電波透過部への付着物に起因する信号レベルの低下及びこれに伴う検知漏れを抑制し、踏切道内における障害物の有無を安定して検知することのできる踏切障害物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面による踏切障害物検知装置は、踏切道の近傍に設置された送受信機であって、前記踏切道側の面に電波透過部が設けられた筐体と、この筐体内に収容され前記電波透過部を介して前記踏切道を含む検知領域内に電波を送信する送信部と、前記筐体内に収容され前記電波透過部を介して前記電波の反射波を受信する受信部と、を備えた前記送受信機と;前記受信部によって受信された前記反射波に基づいて障害物の有無を判定する障害物検知部と;前記電波透過部に付着した付着物を除去する付着物除去手段と;前記送信部による前記電波の送信が可能な領域内に存在する特定の固定物による反射波の信号レベルを監視し、この監視された反射波の信号レベルがあらかじめ設定された判定レベルよりも低下した場合に前記付着物除去手段を駆動する駆動制御部と;を有する。
【発明の効果】
【0006】
通常、上記特定の固定物による反射波の信号レベルは一定の範囲内にあり、この範囲を超えるレベル低下が生じた場合には、電波透過部に雪、水滴、塵などの異物が付着している可能性が高い。上記踏切障害物検知装置によれば、上記特定の固定物による反射波の信号レベルがあらかじめ設定された判定レベルよりも低下すると、付着物除去手段を駆動するので、電波透過部に上記異物が付着している場合にはこれらが自動的に除去される。これにより、電波透過部に付着した付着物に起因する信号レベルの低下及びこれに伴う検知漏れを抑制することができ、踏切道内における障害物の有無を安定して検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態による踏切障害物検知装置の全体構成を示す図である。
【図2】上記踏切障害物検知装置の送受信機の外観を示す斜視図である。
【図3】上記送受信機の構成を概念的に示す図である。
【図4】上記踏切障害物検知装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】上記送受信機から入力したビート信号の解析・処理結果(ビート周波数(距離)−反射レベル)の一例を示す図である。
【図6】上記制御装置の駆動制御部が実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による踏切障害物検知装置の全体構成を示している。この踏切障害物検知装置1は、列車T1,T2の走行する線路51,52と道路53(破線で示す)とが交差する踏切道10における障害物の有無を検知するものであり、図1に示すように、踏切道10の近傍に配置された第1送受信器2及び第2送受信器3と、複数の反射板4a〜4c及び5a〜5cと、第1送受信器2及び第2送受信器3に接続された制御装置6と、を含む。
【0009】
第1送受信器2及び第2送受信器3は、平面視において踏切道10を挟んで互いに対角に位置するように配置されている。具体的には、第1送受信器2は、踏切道10の一方の出入口近傍で、かつ、踏切道10に直交する方向における一方の側方に(図1において左上側に)配置され、第2送受信器3は、踏切道10の他方の出入口近傍で、かつ、踏切道10に直交する方向における他方の側方に(図1において右下側に)配置されている。
【0010】
図2は、第1送受信機2及び第2送受信機3の外観を示す斜視図であり、図3は、第1送受信機2及び第2送受信機3の構成を概念的に示す図である。
図2に示すように、第1送受信機2及び第2送受信機3は、それぞれ踏切道10側の面に電波を透過させる電波透過部7aが設けられた筐体7を有する。本実施形態において、この電波透過部7a(の外面)は、その下部から上部に向かって踏切道10側へと傾斜する傾斜面となっている。但し、これに限るものではなく、電波透過部7aの外面が鉛直面であったり、曲面であったりしてもよい。また、電波透過部7aは、電波(特にミリ波)を透過させることができればよく、公知の電波透過材料を用いて形成することができる。
【0011】
筐体7内には、電波透過部7aを振動させる振動発生部8が設けられている。この振動発生部8は、電波透過部7aの近傍又は電波透過部7aの内面に設置され、後述する制御装置6の駆動制御部64から供給される駆動信号に基づいて駆動して電波透過部7aを振動させる。振動発生部8は、電波透過部7aを振動させることができればよく、その構成等は問わないが、例えば振動モータを用いることができる。振動モータとしては、偏心分銅をモータ軸に取り付けて回転させることにより振動を発生させるものや偏心ロータを回転させることによる振動を発生させるものなど公知の種々の振動モータを用いることができる。なお、本実施形態では、図2に示すように、電波透過部7aの全体を振動させるように振動発生部8を電波透過部7aの内面の上下にそれぞれ配置しているが、振動発生部8を設置する位置や個数は任意に設定することができる。
【0012】
さらに、筐体7内には、図3に示された、送受信機の各構成要素、すなわち、送信部11、送信アンテナ12a〜12c、受信アンテナ13a〜13c、及び、受信部14が収容されている。
送信部11は、送信アンテナ12a〜12c及び電波透過部7aを介して、周波数をスイープさせた電波(検知ビーム)を送信する。送信される電波(検知ビーム)は、特に制限されないが、本実施形態においては周波数帯域が30〜300GHz(波長10〜1nm)のミリ波を用いている。
受信部14は、電波透過部7a及び受信アンテナ13a〜13cを介して、送信部11から送信された電波(検知ビーム)の物体による反射波を受信し、送信波と反射波とを合成してビート信号を生成して出力する。生成されたビート信号には、物体(反射物)までの距離に応じた反射波の位相遅れが含まれており、この位相遅れ(換言すれば、物体までの距離)は、ビート信号における送信波と反射波との周波数差(ビート周波数)から算出することができる。したがって、物体までの距離とビート周波数とは相関している。
【0013】
図1に戻って、第1送受信機2は、扇形状の領域Sa〜Sc(一点鎖線で示す)に電波を送信するとともに送信した電波の反射波を受信してビート信号を生成する。同様に、第2送受信器3は、扇形状の領域Sd〜Sf(一点鎖線で示す)に電波を送信するとともに送信した電波の反射波を受信してビート信号を生成する。
例えば、第1送受信器2は領域Sa→Sb→Scの順に電波を送信するとともにその反射波を受信してビート信号を生成し、第2送受信器3は領域Sf→Se→Sdの順に電波を送信するとともにその反射波を受信してビート信号を生成する。ここで、領域Sa〜Sfは、空間的な空白領域が生じないように連続させてあり、これにより、踏切道10のほぼ全ての領域に電波(検知ビーム)が送信される。
第1送受信器2、第2送受信機3は、それぞれ領域Sa〜Sc,領域Sd〜Sfへの電波の送信を周期的(すなわち、所定の検知周期毎)に繰り返して行い、その結果、生成されるビート信号を制御装置6に出力する。
【0014】
反射板4a〜4cは、それぞれ踏切道10を挟んで第1送受信器2と対向するように設けられ、第1送受信器2から送信された電波を第1送受信器2に向けて反射する。また、反射板5a〜5cは、それぞれ踏切道10を挟んで第2送受信器3と対向するように設けられ、第2送受信器3から送信された電波を第2送受信部3に向けて反射する。
【0015】
制御装置6は、外部から入力された作動条件に基づいて第1送受信機2及び第2送受信機3の作動を制御するとともに、第1送受信機2及び第2送受信機3からビート信号を入力する。そして、入力されたビート信号を解析・処理して障害物の有無を判定し、第1送受信部2及び第2送受信部3の故障診断を行い、振動発生部20bの駆動を制御する。
【0016】
図4は、制御装置6の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、制御装置6は、第1送受信機2及び第2送受信機3から入力されたビート信号を解析・処理する信号処理部61と、踏切道10における障害物の有無を判定する障害物検知部62と、第1送受信器2及び第2送受信器3の故障診断を行う故障診断部63と、主に第1送受信機2及び第2送受信機3の振動発生部8の駆動を制御する駆動制御部64と、を含む。
【0017】
信号処理部61は、第1送受信部2及び第2送受信部3から入力したビート信号を解析・処理し、領域Sa〜Sfのそれぞれについて、ビート周波数(すなわち、距離)ごとの反射波の信号レベル(以下単に「反射レベル」という場合もある)を求める。
障害物検知部62は、信号処理部61によるビート信号の解析・処理結果に基づき障害物の有無を判定する。具体的には、障害物検知部62は、領域Sa〜Sfの少なくとも一つにおいて、反射板による反射波の信号レベル(反射板の反射レベル)以外に、あらかじめ設定された閾値THよりも大きい反射レベルが存在する場合、更に言えば、反射板の位置よりも手前側において上記閾値THよりも大きい反射レベルが存在する場合に、踏切道10内に障害物があると判定する。
【0018】
図5は、第1送受信部2から入力したビート信号に対する信号処理部61による解析・処理結果(ビート周波数(距離)−反射レベル)の一例を示している。図5に示される例は、領域Saついてのものであるが、他の領域Sb,Sc及び第2送受信機3から電波が送信される領域Sd〜Sfについても同様である(これらについての説明は省略する)。
図5に示される例の場合、反射板4aによる反射波の信号レベル(反射レベルP1)のほかに、踏切道10内の反射板4aよりも近い位置に上記閾値THよりも大きいレベルの反射レベルPaが存在するため、障害物検知部62は、踏切道10内に障害物があると判定する。
【0019】
故障診断部63は、信号処理部61によるビート信号の解析・処理結果に基づき、例えば定期的に第1送受信機2及び第2送受信機3の故障診断を行う。
例えば、第1送受信機2については、領域Sa〜Scのそれぞれにおいて、閾値THを超える反射レベルがあり、かつ、その反射レベルが反射板4a〜4cのそれぞれまでの距離に対応するものである場合に、換言すれば、反射板4a〜4cによる反射波を確認できた場合に、故障診断部63は、第1送受信機2が正常に動作している(すなわち、故障なし)と判定する。同様に、第2送受信機3については、領域Sd〜Sfのそれぞれにおいて、閾値THを超える反射レベルがあり、かつ、その反射レベルが反射板5a〜5cのそれぞれまでの距離に対応するものである場合に、換言すれば、反射板5a〜5cによる反射波を確認できた場合に、故障診断部63は、第2送受信機3が正常に動作している(すなわち、故障なし)と判定する。なお、全ての反射板の反射波を確認できない場合には、故障診断部63は、第1送受信機2及び/又は第2送受信3が故障していると判定する。
【0020】
そして、障害物検知部62による障害物の有無の判定結果及び故障診断部63による故障診断の結果を含む検知信号は、外部の装置、例えば最寄り駅の駅装置や列車の運行制御を行う地上制御装置(いずれも図示省略)へと出力され、駅係員に障害物の除去や踏切障害物検知装置1の修理等を促し、また、踏切道10に設置された遮断機(図示省略)の駆動や列車T1,T2の運行停止等の制御に用いられる。
【0021】
ところで、第1送受信機2及び第2送受信機3は、通常、野外に配置されており、降雪による電波透過部7aへの着雪や降雨による電波透過部7aへの水滴付着、あるいは塵等の電波透過部7aへの付着などが起こる場合がある。電波透過部7aに、雪、水滴、塵などの異物が付着すると、電波透過部7aにおける電波の透過損失が大きくなり、受信部14で受信される反射波の信号レベルが低下する。反射波の反射レベルが低下すると、実際には障害物が踏切道10内に存在するにもかかわらず、この障害物による反射波の信号レベル(反射レベル)が上記閾値TH以下となってしまい障害物なしと判定してしまう可能性がある。
そこで、このような検知漏れを防止するため、本実施形態においては、駆動制御部64が次のような処理を実行する。
【0022】
すなわち、駆動制御部64は、第1送受信器2による電波の送信が可能な領域内と、第2送受信器3による電波の送信が可能な領域内とのそれぞれに存在する固定物による反射波の信号レベル(固定物の反射レベル)を監視する。そして、この監視対象である反射レベルがあらかじめ設定された判定レベルPTHよりも低下した場合には、そのレベル低下は電波透過部7aへの付着物に起因するものであると判断し、これらを除去するために振動発生部8を駆動して電波透過部7aを振動させる。したがって、本実施形態においては振動発生部8が本発明の「付着物除去手段」に相当する。
ここで、上記固定物とは、上記電波の送信が可能な領域内に定常的に存在するものをいい、上記固定物としては、例えば、反射板4a〜4c、反射板5a〜5c、及び、踏切道10の内外に存在する建築物が該当する。
【0023】
図6は、駆動制御部64によって実行される処理のフローチャートである。
このフローは、例えば、信号処理部61によるビート信号の解析・処理結果を入力すると、すなわち、検知周期毎に実行される。なお、ここでは、第1送受信器2の振動発生部8を制御対象とし、上記固定物を反射板4aとした場合について説明するが、他の反射板4bや4cを上記固定物とした場合や第2送受信機3の振動発生部8を制御対象とした場合についても同様である。
【0024】
図6において、ステップS1では、第1送受信機2から入力したビート信号の解析・処理結果(図5を参照)から、監視対象である反射レベルPx、すなわち、反射板4aによる反射波の信号レベルP1を読込む。
【0025】
ステップS2では、ステップS1で読込まれた反射レベルPxが判定レベルPTH未満であるか否かを判定する。上記判定レベルPTHは上記閾値THよりも大きな値であり、第1送受信機2の温度特性等による反射レベルのばらつきを考慮して任意に設定することができる。例えば、送信電波(検知ビーム)の反射板4aによる反射波の信号レベルの設計ねらい値の75〜85%程度の値を上記判定レベルPTHとして用いることができる。そして、反射レベルPxが判定レベルPTH未満であればステップS3に進み、反射レベルPxが判定レベルPTH以上であれば本フローを終了する。
【0026】
ステップS3では、すでに振動発生部8の駆動(すなわち、電波透過部7aの振動)がN回以上連続して行われたか否かを判定する。ここで、Nは2以上の数字であり、任意に設定することができる。そして、振動発生部8の連続駆動回数がN回以上であればステップS4に進み、振動発生部8の連続駆動回数がN回未満であればステップS5に進む。
【0027】
ステップS4では、第1送受信機2に異常があると判断し、第1送受信機2に異常があることを示す異常検知信号を上記外部の装置(特に、最寄り駅の駅装置)に出力する。これにより、駅係員等に踏切障害物検知装置1の点検等を促す。
【0028】
ステップS5では、振動発生部8に駆動信号を出力し、電波透過部7aをあらかじめ設定された所定時間だけ振動させる。上述したように、電波透過部7aは、その下部から上部に向かって踏切道10側へと傾斜する傾斜面となっており、電波透過部7aを振動させることによって電波透過部7aの外面に付着した雪や水滴は除去される。ここで、電波透過部7aを所定時間だけ振動させるには、電波透過部7aを所定時間、連続して振動させることはもちろん、電波透過部7aを所定時間、間欠的に振動させることも含まれる。
【0029】
通常、上記特定の固定物による反射波の信号レベルは一定の範囲内にあり、この範囲を超えるレベル低下が生じた場合には、電波透過部7aに、雪、水滴、塵などの異物が付着している可能性が高い。本実施形態による踏切障害物検知装置1によれば、駆動制御部64が反射板による反射波の信号レベルを監視し、この監視対象である信号レベルPxがあらかじめ設定された判定レベルPTHよりも低下した場合には、振動発生部8に駆動信号を出力して電波透過部7aを振動させるので、電波透過部7aに、雪、水滴、塵などの異物が付着している場合にはこれらが自動的に除去される。これにより、電波透過部7aに付着した付着物に起因する反射波の信号レベルの低下及びこれに伴う検知漏れを抑制することができ、踏切道10内における障害物の有無を安定して検知することができる。
【0030】
また、電波透過部7aを振動させたにもかかわらず、上記監視対象である信号レベルPxが上記判定レベルPTH以上とならない場合には、上記レベル低下は、電波透過部7aを振動させるだけでは除去できない電波透過部7aの汚れ又はその他の要因によって生じたものであると考えられる。そこで、本実施形態による踏切障害物検知装置1においては、振動発生部8を連続駆動して電波透過部7aを振動させても上記監視対象である信号レベルPxが上記判定レベルPTH以上とならない場合、駆動制御部64は、送受信機に異常があることを示す異常検知信号を外部の装置(最寄り駅の駅装置等)に出力する。これにより、送受信機の故障ではないものの、障害物の有無を安定して検知できないおそれがある(具体的には、検知漏れが発生するおそれがある)場合に、駅係員等による速やかな点検等を促すことができる。
なお、ここでは監視対象である信号レベルPxが反射板による反射波の信号レベルであるので、監視対象である信号レベルPxが上記閾値THを下回る場合には、故障診断部63によって送受信機が故障していると判定されることになる。
【0031】
なお、上記実施形態においては、監視対象である反射レベルが判定レベルよりも低下した場合に振動発生部8を駆動して電波透過部7aを直接振動させているが、例えば筐体7を振動させることによって電波透過部7aを間接的に振動させてもよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、第1送受信器2、第2送受信器3による電波の送信が可能な領域内に存在する固定物として反射板を採用し、反射板による反射波の信号レベルを上記監視対象としているが、これに限るものではなく、上述したように、踏切道10の内外に存在する建築物(電架柱や遮断機など)を上記固定物とし、当該建築物による反射波の信号レベルを上記監視対象とすることもできる。
この場合には、まず当該建築物による反射波を障害物の検知に使用しないように構成する。例えば、障害物検知部62は、上記建築物による反射波(ビート周波数)をあらかじめ記憶しておき、上記建築物による反射波の信号レベル及び反射板による反射波の信号レベル以外に、あらかじめ設定された閾値THよりも大きい反射レベルが存在する場合に踏切道10内に障害物があると判定する。
【0033】
そして、駆動制御部64は、上記建築物による反射波の信号レベルを監視対象とし、ここの監視対象である反射レベルがあらかじめ設定された判定レベルよりも低下した場合には、そのレベル低下は電波透過部7aに付着した付着物に起因するものであると判断し、これらを除去するため振動発生部8を駆動して電波透過部7aを振動させる。また、電波透過部7aを振動させたにもかかわらず、上記監視された信号レベルが上記判定レベル以上とならない場合には、送受信機に異常があることを示す異常検知信号を上記外部の装置に出力する。このようにしても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
ここで、上記判定レベルは、上記実施形態における判定レベルPTHと同様、任意に設定することが可能であるが、踏切道10の内外に存在する建築物を上記固定物とした場合には、上記判定レベルとして上記閾値THを用いることもできる。すなわち、上記判定レベルは上記閾値TH以上の値であればよい。
【0035】
また、上記実施形態では、振動発生部8を電波透過部7aに付着した付着物を除去する「付着物除去手段」としているが、これに限るものではなく、「付着物除去手段」は、駆動制御部64によって制御され、駆動することにより電波透過部7aに付着した付着物を除去できるものであればよい。例えば、振動発生部8に代えて、電波透過部7aの外面にワイパーを付設するようにしてもよい。この場合、駆動制御部64は、上記監視対象である反射レベルがあらかじめ設定された判定レベルよりも低下した場合に、上記ワイパーを駆動して電波透過部7aに付着した付着物を除去するようにすればよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。もちろん、送受信機が、振動発生部8とワイパーの両方を有するように構成してもよい。
【0036】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
1…踏切障害物検知装置、2…第1送受信機、3…第2送受信機、4a〜4c…反射板、5a〜5c…反射板、6…制御装置、7…筐体、7a…電波透過部、8…振動発生部、11…送信部、12a〜c…送信アンテナ、13a〜c…受信アンテナ、14…受信部、61…信号処理部、62…障害物検知部、63…故障診断部、64…駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切道の近傍に配置された送受信機であって、前記踏切道側の面に電波透過部が設けられた筐体と、前記筐体内に収容され前記電波透過部を介して前記踏切道を含む検知領域内に電波を送信する送信部と、前記筐体内に収容され前記電波透過部を介して前記電波の反射波を受信する受信部と、を有する前記送受信機と、
前記受信部によって受信された前記反射波に基づいて障害物の有無を判定する障害物検知部と、
前記電波透過部に付着した付着物を除去する付着物除去手段と、
前記送信部による前記電波の送信が可能な領域内に存在する特定の固定物による反射波の信号レベルを監視し、この監視された反射波の信号レベルがあらかじめ設定された判定レベルよりも低下した場合に前記付着物除去手段を駆動する駆動制御部と、
を含む、踏切障害物検知装置。
【請求項2】
前記踏切道を挟んで前記送受信機と対向するように設けられ、前記送受信機から送信された電波を前記送受信機に向けて反射する反射板をさらに含み、
前記駆動制御部は、前記特定の固定物による反射波の信号レベルとして、前記反射板による反射波の信号レベルを監視する、請求項1に記載の踏切障害物検知装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記特定の固定物による反射波の信号レベルとして、前記踏切道の内外に存在する建築物による反射波の信号レベルを監視する、請求項1に記載の踏切障害物検知装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記付着物除去手段を駆動したにもかかわらず、前記特定の固定物による反射波の信号レベルが前記判定レベル以上とならない場合に前記送受信機に異常があることを示す異常検知信号を外部の装置に出力する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の踏切障害物検知装置。
【請求項5】
前記付着物除去手段は、前記電波透過部を振動させる振動発生部を含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の踏切障害物検知装置。
【請求項6】
前記付着物除去手段は、前記電波透過部の外面に付設されたワイパーを含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の踏切障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−237724(P2012−237724A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108547(P2011−108547)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】