車両の前部車体
【課題】フロントサイドフレームに連結部材を連結する部位の強度を確保でき、さらにコストを抑えることができる車両の前部車体を提供する。
【解決手段】車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側に左フロントアッパメンバ13が設けられ、左フロントアッパメンバ12のロアメンバ部43が車体下方に向けて延出されている。また、左フロントサイドフレーム12の前端部12aにアイボルト38を取付け可能なフロントブラケット31が設けられている。さらに、フロントブラケット31およびフレーム外壁部27に、左フロントサイドフレーム12およびロアメンバ部43を連結する左連結部材17が締結ボルト37で共締めされている。
【解決手段】車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側に左フロントアッパメンバ13が設けられ、左フロントアッパメンバ12のロアメンバ部43が車体下方に向けて延出されている。また、左フロントサイドフレーム12の前端部12aにアイボルト38を取付け可能なフロントブラケット31が設けられている。さらに、フロントブラケット31およびフレーム外壁部27に、左フロントサイドフレーム12およびロアメンバ部43を連結する左連結部材17が締結ボルト37で共締めされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体両側にフロントサイドフレームが設けられ、フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられた車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体のなかには、車体両側のフロントサイドフレームが車体前後方向に向けて延出され、フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられ、フロントアッパメンバの下端部およびフロントサイドフレームの前端部近傍が連結部材で連結されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
具体的には、連結部材は車幅方向に延出され、車幅方向外側の外端部がフロントアッパメンバの下端部に連結され、車幅方向内側の内端部がフロントサイドフレームの前端部近傍(外側壁)に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−18082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、フロントサイドフレームの前端部に車両前方側から荷重が入力した場合に、入力した荷重をフロントサイドフレームで支えるためにフロントサイドフレームの強度(剛性)を確保することが求められる。
このため、フロントサイドフレームの前端部近傍(外側壁)に連結部材の内端部が連結される部位の強度を確保する対策として溶接箇所を増加させる必要がある。
しかし、溶接箇所を増加させた場合、溶接費用が増し、そのことがコストを抑える妨げなっていた。
【0005】
本発明は、フロントサイドフレームに連結部材を連結する部位の強度を確保でき、さらにコストを抑えることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体両側に設けられたフロントサイドフレームが車体前後方向に向けて延出され、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側上方にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が車体下方に向けて延出されることにより前記ロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部の車幅方向外側に設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部に牽引用のアイボルトを取付け可能なフロントブラケットが設けられた車両の前部車体であって、前記フロントブラケットおよび前記フロントサイドフレームの外壁に、前記フロントサイドフレームおよび前記ロアメンバ部を連結する連結部材が締結部材で共締めされたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記連結部材は、車体前方に設けられた前部と、前記前部の車体後方に設けられて前記前部より板厚寸法が小さい後部とを有し、前記前部および前記後部で閉断面に形成され、前記前部は、前記ロアメンバ部への車体前後方向の結合範囲を前記フロントサイドフレームへの結合範囲より大きくし、前記後部は、前記フロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲を前記ロアメンバ部への結合範囲より大きくしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記前部および前記後部の結合部は、フランジ状に突出され、かつ車体後方外側に向けて斜め直線状に延出されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記連結部材は、長手方向において一定形状の断面に形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、前記後部が車体前下方に傾斜されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの前端部にフロントブラケットを設け、フロントブラケットに牽引用のアイボルトを取付け可能とした。
そして、フロントブラケットおよびフロントサイドフレームの外壁に連結部材を締結部材で一体的に共締めし、連結部材でフロントサイドフレームおよびロアメンバ部を連結した。
ここで、牽引用のアイボルトは車両を牽引するために用いるボルトであり、牽引用のアイボルトを取り付けるフロントブラケットは比較的強度(剛性)の高い部材が用いられる。
【0012】
このフロントブラケットを利用してフロントサイドフレームの外壁に連結部材を締結部材で共締めすることで、連結部材をフロントサイドフレームの外壁に強固に連結できる。
さらに、連結部材を締結部材で共締めすることで、フロントサイドフレームの外壁のうち連結部材を連結する部位の強度(剛性)を確保できる。
これにより、フロントサイドフレームの外壁に連結部材を溶接で固定する場合と比べて溶接箇所を増加させる必要がないので、溶接費用を減らしてコストを抑えることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、連結部材を前部と後部とで形成し、後部の板厚寸法を前部より小さくした。すなわち、前部の板厚寸法を後部より大きくした。
また、前部のロアメンバ部への車体前後方向の結合範囲をフロントサイドフレームへの結合範囲より大きくした。
これにより、ロアメンバ部を前部で強固に支えてロアメンバ部の剛性を確保することができる。
【0014】
一方、後部の板厚寸法を前部より小さくした。また、後部のフロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲をロアメンバ部への結合範囲より大きくした。
よって、連結部材の前部(板厚寸法の大きい部位)のフロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲を小さく抑えることができる。
【0015】
このように、連結部材の前部の結合範囲を小さく抑え、連結部材の後部の結合範囲を大きく確保することで、フロントサイドフレームの前端部に車両前方から荷重が入力した際に、入力した荷重で連結部材の後部を良好に変形させることができる。
したがって、フロントサイドフレームが圧縮変形(圧潰変形)することを後部で抑制する虞がなく、フロントサイドフレームを好適に圧縮変形させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、前部および後部の結合部をフランジ状に突出させ、かつ車体後方外側に向けて斜め直線状に延出させた。
ここで、動力源(例えば、エンジンや変速機など)の振動が取付部材を介してフロントサイドフレームおよびフロントアッパメンバに伝達される場合がある。この場合、フロントサイドフレームの基部を支点にしてフロントサイドフレームの前端部が車幅方向に振られ、前端部に首振力が発生することが考えられる。
【0017】
そこで、請求項3において、フランジ状の結合部を車体後方外側に向けて斜め直線状に延出させるようにした。
これにより、フランジ状の結合部を首振力が発生する方向に沿わせて設けることが可能である。
このフランジ状の結合部は、前部および後部がフランジ状に結合されているので高強度に形成されている。
【0018】
このように、フランジ状の結合部を首振力が発生する方向に沿わせて設け、かつ、結合部を高強度に形成することで、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに発生した首振力を結合部で効果的に支えることができる。
よって、フロントサイドフレームおよびフロントアッパメンバが相対的に変位することを防いで、フロントサイドフレームおよびフロントアッパメンバにねじれが生じることを防止できる。
これにより、フロントサイドフレームおよびロントアッパメンバの剛性やノイズ・バイブレーション性能(NV性能)を好適に確保することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、連結部材を長手方向において一定形状の断面に形成することで連結部材の剛性を高めることができる。
これにより、車両などに衝突した際に、連結部材に入力した荷重を連結部材で支えることができる。
また、連結部材を構成する後部の板厚寸法を前部より小さくした。
よって、後連結部の軽量化を図ることができる。
これにより、連結部材の剛性を高め、かつ、連結部材の軽量化を図ることができる。
このように、連結部材を一定形状の断面に形成し、さらに、後部の板厚寸法を前部より小さくすることで、連結部材の剛性を高め、かつ、連結部の軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、後部を車体前下方に傾斜させることで、連結部材の下部において車体前後方向の厚さ寸法を小さくできる。
ここで、連結部材はロアメンバ部の内壁に設けられている。
よって、連結部材に合わせてロアメンバ部の車体前後方向の厚さ寸法を小さくできる。
このロアメンバ部の車体後方に車輪が配置されている。よって、ロアメンバ部の車体前後方向の厚さ寸法を小さくすることで、ロアメンバ部の前面を車輪側に近づけることが可能になり、車体全長の寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両の前部車体を示す斜視図である。
【図2】図1の車両の前部車体を示す平面図である。
【図3】図1の3部拡大図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】(a)は図3の5a−5a線断面図、(b)は図3の5b−5b線断面図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8矢視図である。
【図9】図3の左側メンバ部を示す分解斜視図である。
【図10】図3の10矢視図である。
【図11】図3の11矢視図である。
【図12】(a)は図11の12a−12a線断面図、(b)は図11の12b−12b線断面図である。
【図13】図3の左連結部材を示す分解斜視図である。
【図14】図3の左連結部材のうち車幅方向内半部を示す斜視図である。
【図15】図3の左連結部材のうち車幅方向外半部を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る左連結部材に車体前方から荷重が入力する例を説明する図である。
【図17】本発明に係る左連結部材の上中央結合部で荷重を支える例を説明する図である。
【図18】本発明に係るロアバルクメンバで荷重を支える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0023】
実施例に係る車両の前部車体(車両の前部構造)10について説明する。
図1、図2に示すように、車両の前部車体10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム12と、左右のフロントサイドフレーム12の車幅方向外側に設けられた左右のフロントアッパメンバ13と、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に設けられたフロントバルクヘッド15とを備えている。
【0024】
さらに、車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13を連結する左連結部材(連結部材)17と、右フロントサイドフレーム12および右フロントアッパメンバ13を連結する右連結部材(連結部材)17とを備えている。
【0025】
車両の前部車体10は略左右対称に形成されているので、以下、車両の前部車体10の左側の部材(部位を含む)および右側の部材(部位を含む)に同じ符号を付して、右側の部材(部位)の説明を省略する。
【0026】
左フロントサイドフレーム12は、車両の前部左側において、右フロントサイドフレーム12に対して車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
右フロントサイドフレーム12は、車両の前部右側に設けられている。
この左フロントサイドフレーム12は、車体前後方向に向けて延出されることにより、後端部12bが左フロアフレーム21に連結された骨材である。
さらに、左フロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cは、左アウトリガー22を介して左サイドシル(骨材)に連結されている。
【0027】
図3に示すように、左フロントサイドフレーム12は、フレーム頂部26と、フレーム外壁部(外壁)27と、フレーム内壁部28と、フレーム底部29と、フロントブラケット31とを備えている。
フレーム頂部26、フレーム外壁部27、フレーム内壁部28およびフレーム底部29で断面略矩形状のフレーム部25が形成されている。
このフレーム部25の先端部(前端部)25aにフロントブラケット31が設けられている。
【0028】
図3、図4に示すように、フロントブラケット31は、ブラケット前壁部32と、ブラケット前壁部32に設けられた取付部33と、ブラケット前壁部32の外周に設けられた周壁部34とを有する。
フロントブラケット31の周壁部34がフレーム部25の先端開口25bに差し込まれた状態で、周壁部34の外壁部35(図13も参照)がフレーム外壁部27に締結ボルト(締結部材)37で締結されている。
この締結ボルト37を利用してフレーム外壁部27および外壁部35に左連結部材17が一体的に共締めされている。
左連結部材17については後で詳しく説明する。
【0029】
ブラケット前壁部32がフレーム部25の前端部25aから僅かに突出した位置に設けられている。
この状態で、フレーム部25の先端開口25bがフロントブラケット31で閉塞されている。
フレーム部25の前端部25aから僅かに突出されたブラケット前壁部32に取付部33が設けられている。
取付部33は、牽引用のアイボルト38を取付け可能な部材である。
【0030】
図1に示すように、左フロントアッパメンバ13は、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側(左側)に設けられ、後端部13aが左フロントピラー41に連結されている。
この左フロントアッパメンバ13は、左フロントピラー41から車体前方に向けて下り勾配に延出されたアッパメンバ部42と、アッパメンバ部42から車体下方に向けて延出されたロアメンバ部43とを有する。
【0031】
ロアメンバ部43は、アッパメンバ部42から前下方に向けて湾曲状に形成されることで略鉛直状に設けられ、かつ、左フロントサイドフレーム12の前端部12aより車幅方向外側に設けられている。
【0032】
図4、図5に示すように、ロアメンバ部43は、前メンバ部44のうち下端部44aが下方に向けて傾斜角θ1の傾斜角で車体後方に向けて傾斜するように傾斜状に形成されている。
前メンバ部44を傾斜状に形成することで、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向の厚み寸法T1を小さく抑えることができる。
【0033】
ロアメンバ部43は、車体前方側の前メンバ部44と、車体後方側の後メンバ部45と、前メンバ部44および後メンバ部45から車幅方向内側に張り出された内フランジ46と、前メンバ部44および後メンバ部45から車幅方向外側に張り出された外フランジ51とを有する。
【0034】
前メンバ部44は、後メンバ部45の車体前方側に設けられ、断面略コ字状に形成されている。
この前メンバ部44は、下端部44aが傾斜角θ1の傾斜角で下方に向けて車体後方に向けて傾斜するように傾斜状に形成されている。
前メンバ部44が傾斜状に形成されることで、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向に厚さ寸法を下方に向けて徐々に小さくなるように抑えることができる。
【0035】
後メンバ部45は、前メンバ部44の車体後方側において前メンバ部44に対峙するように設けられ、断面略コ字状に形成されている。
【0036】
内フランジ46は、前メンバ部44の車幅方向内側に張り出された内張出片47と、後メンバ部から車幅方向内側に張り出された内張出片48が接合されたフランジである。
【0037】
外フランジ51は、前メンバ部44の車幅方向外側に張り出された外張出片52と、後メンバ部から車幅方向外側に張り出された外張出片53が接合されたフランジである。
【0038】
図1に示すように、フロントバルクヘッド15は、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に配置され、正面視略矩形状に形成されている。
このフロントバルクヘッド15は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた左サイドステイ(サイドステイ)56と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右サイドステイ(サイドステイ)56と、左右のサイドステイ56の上端部に架け渡されたアッパバルクメンバ57と、左右のサイドステイ56の下端部56aに架け渡されたロアバルクメンバ58とを備えている。
【0039】
フロントバルクヘッド15に冷却系部品としてラジエータやコンデンサが設けられている。
このラジエータは、エンジンの冷却水を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
コンデンサは、例えば、エアコン用の冷媒ガスを冷却して液化するものである。
【0040】
図3に示すように、左サイドステイ56は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに交差するように設けられ、下端部56aがロアバルクメンバ58の上面(上部)58aに連結されている。
【0041】
図1、図2に示すように、ロアバルクメンバ58は、左右のサイドステイ56の下端部56aおよび左右のロアメンバ部43の下端部43aに連結されている。
このロアバルクメンバ58は、左右のサイドステイ56の下端部56a間に設けられた中央メンバ部61と、中央メンバ部61の左端部61aから車幅方向外側に延出された左側メンバ部66と、中央メンバ部61の右端部61bから車幅方向外側に膨出された右側メンバ部66とを有する。
【0042】
図6に示すように、中央メンバ部61は、薄板で断面略U字状に形成された梁部材62と、梁部材62の上開口63を覆う薄板の蓋部材64とで略矩形の閉断面に形成されている。
梁部材62および蓋部材64は、薄板状の板材で成形されることで、左端前壁部(前壁部)68の板厚T3(図5(a)参照)より板厚寸法T2が小さく形成されている。
【0043】
梁部材62の前上片62aに蓋部材64の前折曲片64bが溶接で接合され、梁部材62の後上片62bに蓋部材64の後折曲片64cが溶接で接合されている。
これにより、梁部材62および蓋部材64で中央メンバ部61が略矩形の閉断面に形成されている。
中央メンバ部61を略矩形の閉断面に形成することで、梁部材62および蓋部材64を薄板で形成しても中央メンバ部61の剛性を確保できる。
【0044】
図7、図8に示すように、左側メンバ部66は、薄板の断面略L字状に形成された左側梁部67と、左側梁部67の左端部67aに設けられた左端前壁部68と、左側梁部67の車体後方に設けられた左側後壁部(後壁部)69と、左側梁部67および左側後壁部69の左側上開口71を覆う薄板の左側蓋部72とを備えている。
この左側メンバ部66は、左側梁部67、左側後壁部69および左側蓋部72で略矩形の閉断面に形成されている。
【0045】
図7、図9に示すように、左側梁部67は、梁部材62と一体に形成された部位であり、梁部材62の左端部62cから車幅方向外側に延出されている。
左側梁部67は、左端前壁部68の板厚T3(図5(a)参照)より板厚寸法T2が小さく形成されている。
この左側梁部67は、前壁67bおよび底部67cで断面略L字状に形成され、底部67cの端部67dが左側後壁部69の底部69bに溶接で接合されている。
【0046】
左側後壁部69は、前メンバ部44の内フランジ46および左サイドステイ56を連結するように設けられている。
左側後壁部69は、板厚寸法T4の高強度鋼板(ハイテンション)が曲げ成形されることにより、後壁69a、底部69bおよび頂部69cで断面略Z状に形成されている。
左側後壁部69の板厚寸法T4は、左側梁部67の板厚寸法T2と略同一である。
【0047】
左側後壁部69の頂部69cが左側蓋部72の後辺72aに溶接で接合されている。
頂部69cが後辺72aに接合された状態で、張出片69gが左側蓋部72の後辺72aから車体後方に設けられている。
張出片69gは、頂部69cから車体後方に張り出された片である。
【0048】
図8、図10に示すように、張出片69gおよび蓋部材64の上面64aでロアバルクメンバ58の上面58aが形成されている。
上面58aは、補強ブラケット76で下方側から補強されている。
ロアバルクメンバ58の上面58aに左サイドステイ56の下端部56aが連結されている。
【0049】
上面58aは上方が空間77に対峙している。上面58aを空間77に対峙させることで、上面58aに下端部56aの連結部位を広く(大きく)確保できる。
よって、左サイドステイ56の下端部56aを上面58aに連結させることで、下端部56aを大きく確保できる。
これにより、左サイドステイ56の大型化が可能になり、フロントバルクヘッド15の剛性を高めて車両の前部車体10の剛性を高めることができる。
【0050】
図7、図9に示すように、左側後壁部69は、後壁69aの左端部を形成する左後壁(後壁部)69dと、底部69bの左端部を形成する左底部69eとを有する。
左後壁69dは、上方に突出された突片69fを有する。
左後壁69dは、突片69fがロアメンバ部43(内フランジ46)の下端部46aに設けられている。
【0051】
左側蓋部72は、蓋部材64と一体に形成された部位であり、蓋部材64の左端部64dから車幅方向外側に延出されている。
左側蓋部72は、左端前壁部68の板厚T3(図5参照)より板厚寸法T2が小さく形成され、左端部を形成する左端蓋部72cを有する。
この左側蓋部72は、前折曲片72bが前壁67bの上辺67eに溶接で接合されている。
【0052】
以上説明したように、左側梁部67の底部67c(端部67d)が左側後壁部69の底部69bに溶接で接合され、左側後壁部69の頂部69cが左側蓋部72の後辺72aに溶接で接合されている。
また、左側蓋部72の前折曲片72bが左側梁部67の前壁67b(上辺67e)に溶接で接合されている。
これにより、左側メンバ部66は、左側梁部67、左側後壁部69および左側蓋部72で略矩形の閉断面に形成されている。
【0053】
この左側メンバ部66の左側後壁部69が高強度鋼板で形成され、左側後壁部69でロアメンバ部43および左サイドステイ56を連結するようにした。
よって、左側メンバ部66の剛性を高めることができる。
これにより、対車両との衝突反力を増大させて、衝突荷重(衝突エネルギの吸収量)を向上させることができる。
【0054】
図5、図8に示すように、左端前壁部68は、梁部材62および蓋部材64の板厚寸法T2(図6参照)より板厚寸法T3が大きく形成されている。
この左端前壁部68は、左後壁(後壁部)69dに対峙するように左後壁(後壁部)69dの車体前方側に設けられている。
【0055】
左端前壁部68の上辺68aが左端蓋部72cの前折曲片72dに溶接で接合され、左端前壁部68の底部68bが左底部69eに溶接で接合されている。
また、左端前壁部68の内辺68cが左側梁部67の左端部67aに溶接で接合されている。
さらに、左端前壁部68の外辺68dが外フランジ51の下端部51aに溶接で接合されている。
【0056】
加えて、左端蓋部72cの後折曲片72eが、突片69fとともに内フランジ46の下端部46aに溶接で接合されている。
よって、左端前壁部68、左底部69e、左後壁69dおよび左端蓋部72cで、断面略矩形状のロアメンバ左端部(端部)74が形成されている。
このロアメンバ左端部74は、ロアバルクメンバ58の端部を構成する部位であって、左側の前メンバ部44の下端部44aに車体前方側から重ね合わせられるように設けられている。
【0057】
ここで、前メンバ部44が傾斜状に形成されることで、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向の厚み寸法T1が小さく抑えられている。
よって、左側の前メンバ部44の下端部44aにロアメンバ左端部(端部)74が車体前方側から重ね合わせられることで、ロアメンバ左端部74を車体後方に設けることができる。
【0058】
また、ロアバルクメンバ58を中央メンバ部61、および左右側のメンバ部66で形成した。そして、中央メンバ部61を梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面に形成した。
この中央メンバ部61をプレス成形で形成することが可能である。
さらに、左右側のメンバ部66を左側梁部67、左端前壁部68、左側後壁部69および左側蓋部72で略矩形の閉断面に形成した。
この左右側のメンバ部66をプレス成形で形成することが可能である。
【0059】
よって、ロアバルクメンバ58をプレス成形で形成することが可能になる。
これにより、ロアバルクメンバ58を鋼製の丸形パイプ(鋼管)で成形する場合と比べて形状を決める際の自由度を高めることができる。
これにより、ロアバルクメンバ58を動力源(エンジンや変速機など)18(図2参照)の外形に合わせてプレス成形することが可能になり、ロアバルクメンバ58および動力源18間の間隔Sを小さくできる。
ロアバルクメンバ58および動力源18間の間隔を小さくすることで、ロアバルクメンバ58を動力源18(図2参照)側に寄せることができる。
【0060】
このように、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向の厚み寸法T1を小さく抑えてロアメンバ左端部74を車体後方に設けることを可能にした。
さらに、ロアバルクメンバ58をプレス成形で形成することで、ロアバルクメンバ58を動力源18(図2参照)側に寄せることができる。
ロアメンバ左端部74を車体後方に設け、かつ、ロアバルクメンバ58を動力源18側に寄せることで車体全長の寸法を小さく抑えることができる。
【0061】
さらに、ロアバルクメンバ58のうち左側メンバ部66の左端前壁部68の板厚T3を梁部材62や蓋部材64より大きく形成することで左端前壁部68の剛性を確保できる。
これにより、左端前壁部68に歩行者の脚部が車体前方から当たったとき、左端前壁部68の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0062】
一方、ロアバルクメンバ58のうち中央メンバ部61の梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面を形成した。よって、梁部材62および蓋部材64の板厚寸法T2を小さく抑えた状態で中央メンバ部61の剛性を確保できる。
これにより、中央メンバ部61に歩行者の脚部が当たったとき、中央メンバ部61の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0063】
このように、中央メンバ部61を梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面を形成して剛性を高めることで、中央メンバ部61(すなわち、梁部材62および蓋部材64)の板厚寸法T2を小さく抑えることを可能にした。
これにより、ロアバルクメンバ58の剛性を確保でき、かつロアバルクメンバ58の軽量化を図ることができる。
【0064】
図3、図11に示すように、左側メンバ部66の上方に左連結部材17が設けられている。
左連結部材17は、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13の前メンバ部44を連結する部材である。
左連結部材17は、車体前方に設けられた前連結部(前部)81と、前連結部81の車体後方に設けられた後連結部(後部)82とを有する。
【0065】
図12に示すように、左連結部材17は、前連結部81および後連結部82で、長手方向において一定形状(略四角形)の閉断面に形成されている。
左連結部材17を一定形状(略四角形)の閉断面に形成することで、左連結部材17の剛性を高めることができる。
【0066】
これにより、車両などに衝突した際に、左連結部材17に車体前方から入力した荷重を左連結部材17で支えることができる。
また、後連結部82の板厚寸法T6を前連結部81の板厚寸法T5より小さくした。
よって、後連結部82の軽量化を図ることができる。
【0067】
このように、左連結部材17を一定形状(略四角形)の閉断面に形成し、さらに、後連結部82の板厚寸法T6を前連結部81より小さくすることで、左連結部材17の剛性を高め、かつ、後連結部82の軽量化を図ることができる。
【0068】
図3、図11に示すように、左連結部材17は、前連結部81および後連結部82の上結合部84の上中央結合部(結合部)84aが車体後方外側に向けて傾斜角θ2で斜め直線状に延出されている。
また、前連結部81および後連結部82の下結合部85(図13も参照)は車幅方向に沿って直線状に延出されている。
上中央結合部84を斜め直線状に延出させた理由については後で詳しく説明する。
【0069】
図12、図13に示すように、前連結部81は、正面視略矩形状に形成された前連結壁部87と、前連結壁部87の上辺87aから車体後方に向けて折り曲げられた前上連結部88と、前連結壁部87の下辺87bから車体後方に向けて折り曲げられた前下連結部89とを有する。
この前連結部81は、板厚寸法T5であり、後連結部82の板厚寸法T6より大きく設定されている。
【0070】
前連結壁部87は、上辺87a、下辺87b、内辺87cおよび外辺87dで正面視略矩形状に形成され、略鉛直に設けられている。
この前連結壁部87は、内辺87cから車体前方に向けて前締結フラップ91が折り曲げられ、外辺87dから車幅方向外側に向けて前接合フラップ92が張り出されている。
【0071】
前締結フラップ91には取付孔91aが形成されている。
この取付孔91aは、フレーム部25のフレーム外壁部27に形成された貫通孔27a、およびフロントブラケット31(周壁部34)の外壁部35に形成された支持孔35aに対して同軸上に形成されている。
【0072】
図4に示すように、外壁部35の内面35bに溶接ナット94が溶接されている。
溶接ナット94は、支持孔35aに対して同軸上に形成されている。
よって、前締結フラップ91側から取付孔91a、貫通孔27aおよび支持孔35aに締結ボルト37のねじ部37aが差し込まれ、差し込まれたねじ部37aが溶接ナット94にねじ結合される。
【0073】
これにより、前締結フラップ91がフレーム外壁部27にフロントブラケット31(周壁部34)の外壁部35とともに締結ボルト37で共締めされている。
すなわち、前締結フラップ91は、締結ボルト37を利用してフレーム外壁部27および外壁部35に一体的に共締めされている。
【0074】
ここで、フロントブラケット31に設けられた取付部33は、牽引用のアイボルト38(図3参照)を取付け可能な部材である。
牽引用のアイボルト38は車両を牽引するために用いるボルトである。よって、牽引用のアイボルト38を取り付けるフロントブラケット31は比較的強度(剛性)が高い部材が用いられる。
【0075】
このフロントブラケット31を利用して左フロントサイドフレーム12のフレーム外壁部27に左連結部材17を締結ボルト37で共締めすることで、締結ボルト37をフレーム外壁部27に強固に連結できる。
さらに、左連結部材17を締結ボルト37を利用して共締めすることで、フレーム外壁部27のうち左連結部材17を連結する部位の強度(剛性)を確保できる。
これにより、フレーム外壁部27に左連結部材17を溶接で固定する場合と比べて溶接箇所を増加させる必要がないので、溶接費用を減らしてコストを抑えることができる。
【0076】
一方、前連結壁部87は、前締結フラップ91に対して車幅方向外側に前接合フラップ92が設けられている。
この前接合フラップ92は、前メンバ部44に溶接で接合されている。
【0077】
図11、図13に示すように、前上連結部88は、前内端部88aが幅寸法W1に形成され、前外端部88bが幅寸法W2に形成されている。
さらに、前上連結部88は、後辺88cの中間後辺88dが前内端部88aから前外端部88bに向けて車体後方外側に傾斜角θ2となるように斜め直線状に延出されている。
中間後辺88dは、後辺88cのうち前内端部88aおよび前外端部88b間の辺である。
【0078】
また、前上連結部88の内辺88eから上方に向けて前内接合突片101が折り曲げられている。前内接合突片101は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている(図14参照)。
さらに、前上連結部88の外辺88fから上方に向けて前外接合突片102が折り曲げられている。前外接合突片102はロアメンバ部43(前メンバ部44の内側壁44b)に溶接で接合されている(図15参照)。
【0079】
加えて、前上連結部88の後辺88cから上方に向けて第1前後接合突片103、第2前後接合突片104および第3前後接合突片105が折り曲げられている。
第1前後接合突片103および第2前後接合突片104は、第1後前接合突片123および第2後前接合突片124(後述する)に溶接で接合されている(図14参照)。
また、第3前後接合突片105は、後上接合突片117に溶接で接合されている(図15参照)。
【0080】
図14、図15に示すように、前下連結部89は、内端部89aから外端部89bまでが一定の幅寸法W3に形成されている。
前下連結部89の内辺89cから下方に向けて前下内接合突片107が折り曲げられている。前下内接合突片107は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている。
【0081】
また、前下連結部89の外辺89dから下方に向けて前下外接合突片108が折り曲げられている。前下外接合突片108はロアメンバ部43(前メンバ部44の内側壁44b)に溶接で接合されている。
【0082】
さらに、前下連結部89の後辺89eから前方下方に向けて傾斜状に前下後接合突片109が折り曲げられている。
前下後接合突片109は、後下接合突片118(後述する)に溶接で接合されている。
【0083】
図11、図15に示すように、前連結部81は、前上連結部88の前内端部88aが幅寸法W1に形成され、前外端部88bが幅寸法W2に形成されている。
ここで、前外端部88bの幅寸法W2は、前内端部88aの幅寸法W1より大きい。
よって、前連結部81は、ロアメンバ部43への(車体前後方向の)結合範囲H1が左フロントサイドフレーム12への結合範囲H2より大きく設定されている。
【0084】
また、前連結部81は、板厚寸法T5(図12参照)であり、後連結部82の板厚寸法T6(図12参照)より大きく設定されている。
これにより、ロアメンバ部43を前連結部81で強固に支えてロアメンバ部43の剛性を確保することができる。
【0085】
図12、図13に示すように、後連結部82は、正面視略矩形状に形成された後連結壁部111と、後連結壁部111の上辺111aから車体前方に向けて折り曲げられた後上連結部112とを有する。
後連結部82は、板厚寸法T6であり、前連結部81の板厚寸法T5より小さく設定されている。
【0086】
後連結壁部111は、上辺111a、下辺111b、内辺111cおよび外辺111dで正面視略矩形状に形成され、上辺111aから下辺111bまで車体前下方に向けて傾斜角θ3で傾斜するように設けられている。
【0087】
後連結壁部111の内辺111cから車体後方に向けて後内接合片115が折り曲げられている。後内接合片115は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている(図8も参照)。
また、後連結壁部111の外辺111dから車体後方に向けて後外接合片116が折り曲げられている。後外接合片116はロアメンバ部43に溶接で接合されている。
【0088】
さらに、後連結壁部111の上辺111aのうち外端111eから後上接合突片117が上方に向けて張り出されている。
後上接合突片117は、前上連結部88(後辺88c)の第3前後接合突片105に溶接で接合されている。
【0089】
加えて、後連結壁部111の下辺111bから斜め前方下方に向けて後下接合突片118(図8も参照)が前下後接合突片109に沿って折り曲げられている。
後下接合突片118は前下後接合突片109に溶接で接合されている。
後下接合突片118および前下後接合突片109が接合されることで下結合部85が構成されている。この下結合部85は車幅方向に沿って直線状に延出されている。
【0090】
図11、図13に示すように、後上連結部112は、内辺112cが幅寸法W4に形成され、外辺112dが後連結壁部111(後外接合片116)を介してロアメンバ部43に溶接で接合されている。
内辺112cは、前上連結部88の内辺88eより車体後方に位置する
この後上連結部112は、前上辺112aに前上傾斜辺112bを有する。
前上傾斜辺112bは、前上連結部88の中間後辺88dに沿って車体後方外側に向けて傾斜角θ2となるように斜め直線状に延出されている。
【0091】
後上連結部112の内辺112cから一対の後上内接合突片121が上方に向けて折り曲げられている。一対の後上内接合突片121は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている。
【0092】
また、後上連結部112の前上辺112aから第1後前接合突片123および第2後前接合突片124が上方に向けて折り曲げられている。
第1後前接合突片123は、前上連結部88(後辺88c)の第1前後接合突片103に溶接で接合されている。
第2後前接合突片124は、前上連結部88(後辺88c)の第2前後接合突片104が溶接で接合されている。
【0093】
第1後前接合突片123および第1前後接合突片103が接合され、第2後前接合突片124および第2前後接合突片104が接合されている。
さらに、後上接合突片117および第3前後接合突片105が接合されている。
それぞれの突片が接合されることで、前連結部81および後連結部82の上結合部84が形成されている。
【0094】
また、第2後前接合突片124および第2前後接合突片104が接合されることで、上結合部84の上中央結合部(結合部)84aが車体後方外側に向けて傾斜角θ2で斜め直線状に延出されている。
上中央結合部84aは、上結合部84のうち車幅方向中央に位置する結合部である。
この上中央結合部84aは、前上連結部88および後上連結部112の上方に突出された突出部(フランジ)である。
なお、上中央結合部84aを傾斜角θ2で斜め直線状に延出させた理由については後で詳しく説明する。
【0095】
後上連結部112は、内辺112cが幅寸法W4に大きく形成され、外辺112dが後連結壁部111(後外接合片116)を介してロアメンバ部43に溶接で接合されている。
よって、後連結部82は、左フロントサイドフレーム12への(車体前後方向の)結合範囲H3がロアメンバ部43への(車体前後方向の)結合範囲H4より大きく設定されている。
【0096】
この後連結部82は、板厚寸法T6であり、前連結部81の板厚寸法T5より小さく設定されている。
よって、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに車両前方から荷重が入力した際に、後連結部82を好適に変形させることができる。
これにより、入力した荷重で左フロントサイドフレーム12が圧縮変形(圧潰変形)することを後部で抑制する虞がない。
【0097】
図12に示すように、後連結部82の後連結壁部111は、上辺111aから下辺111bまで車体前下方に向けて傾斜角θ3で傾斜するように形成されている。
後連結壁部111を車体前下方に傾斜させることで、左連結部材17の下部17aにおいて車体前後方向の厚さ寸法を、後連結壁部111(前下連結部89)の幅寸法W3と略同じ寸法に小さくできる。
【0098】
ここで、図15に示すように、左連結部材17は、外端部17bがロアメンバ部43の内側壁44bに設けられている。
これにより、左連結部材17に合わせてロアメンバ部43の車体前後方向の厚さ寸法T7を小さくできる。
【0099】
このロアメンバ部43の車体後方に車輪(図示せず)が配置されている。
よって、ロアメンバ部43の車体前後方向の厚さ寸法T7を小さくすることで、ロアメンバ部43の前面43bを車輪側に近づけることが可能になり、車体全長の寸法を小さく抑えることができる。
【0100】
つぎに、左連結部材17に車体前方から荷重F1が入力する例を図16に基づいて説明する。
図16に示すように、車両などに衝突した際に、左連結部材17に車体前方から荷重F1が入力する。
ここで、左連結部材17(前連結部81および後連結部82)で一定形状(略四角形)の閉断面に形成することにより左連結部材17の剛性が高められている。
これにより、車体前方から入力した荷重F1を左連結部材17で支えることができる。
【0101】
ついで、左連結部材17に備えたフランジ状の上中央結合部84aで左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13の剛性やノイズ・バイブレーション性能(NV性能)を確保する例を図17に基づいて説明する。
【0102】
図17に示すように、動力源(例えば、エンジンや変速機など)18が取付部材を介して左フロントサイドフレーム12に設けられている。
よって、動力源18の振動が取付部材を介して左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13に伝達される場合がある。この場合、左フロントサイドフレーム12の基部を支点にして前端部12aが車幅方向に振られ、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに矢印A方向への首振力が発生することが考えられる。
【0103】
ここで、左連結部材17は、前上連結部88および後上連結部112の上方にフランジ、すなわち上中央結合部84a(第2後前接合突片124および第2前後接合突片104)が突出されている。
フランジ状の上中央結合部84aは、車体後方外側に向けて傾斜角θ2で斜め直線状に延出されることで矢印A方向に沿わせて設けられている。
さらに、フランジ状の上中央結合部84aは、第2後前接合突片124および第2前後接合突片104の2つの突片(フランジ)が溶接で接合されているので高強度に形成されている。
【0104】
よって、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに発生した矢印A方向への首振力を、フランジ状の上中央結合部84aで効果的に支えることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13が相対的に変位することを防いで、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13にねじれが生じることを防止できる。
したがって、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13の剛性やノイズ・バイブレーション性能(NV性能)を好適に確保することができる。
【0105】
ところで、後上連結部112は、内辺112cが幅寸法W4に大きく形成されている。
よって、後連結部82は、左フロントサイドフレーム12への(車体前後方向の)結合範囲H3がロアメンバ部43への(車体前後方向の)結合範囲H4より大きく設定されている。
よって、前上連結部88の左フロントサイドフレーム12への車体前後方向の結合範囲を小さく抑えることができる。
【0106】
後連結部82(後上連結部112)の板厚寸法T6は、前連結部81(前上連結部88)の板厚寸法T5より小さく設定されている(図12(a)参照)。
よって、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに入力した荷重F2で後連結部82を好適に変形させることができる。
これにより、入力した荷重F2で左フロントサイドフレーム12を好適に圧縮変形(圧潰変形)させて荷重F2を吸収することができる。
【0107】
つぎに、車体前方から入力した荷重をロアバルクメンバ58で支える例を図18に基づいて説明する。
図18に示すように、ロアバルクメンバ58の中央メンバ部61に歩行者の脚部が当たった場合に、中央メンバ部61に車体前方から荷重F4が入力する。
ここで、中央メンバ部61は、梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面に形成されている。
【0108】
よって、梁部材62および蓋部材64の板厚寸法T2(図6参照)を小さく抑えた状態で中央メンバ部61の剛性が確保されている。
これにより、中央メンバ部61に歩行者の脚部が当たった場合に、中央メンバ部61の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0109】
また、ロアバルクメンバ58の左端前壁部68に歩行者の脚部が当たった場合に、左端前壁部68に車体前方から荷重F5が入力する。
ここで、左端前壁部68の板厚T3(図5(a)参照)は、梁部材62や蓋部材64より大きく形成されている。
【0110】
このように、左端前壁部68の板厚T3を梁部材62や蓋部材64より大きく形成することで、左端前壁部68の剛性が確保されている。
これにより、左端前壁部68に歩行者の脚部が車体前方から当たった場合に、左端前壁部68の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0111】
なお、本発明に係る車両の前部車体は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例で示した車両の前部車体10、左右のフロントサイドフレーム12、左右のフロントアッパメンバ13、左右の連結部材17、フレーム外壁部27、フロントブラケット31、締結ボルト37、アイボルト38、ロアメンバ部43、前連結部81、後連結部82、上中央結合部84aおよび後連結壁部111などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、車体両側にフロントサイドフレームが設けられ、フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0113】
10…車両の前部車体、12…左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12a…左右のフロントサイドフレームの前端部、13…左右のフロントアッパメンバ(フロントアッパメンバ)、17…左右の連結部材(連結部材)、27…フレーム外壁部(フロントサイドフレームの外壁)、31…フロントブラケット、37…締結ボルト(締結部材)、38…アイボルト、43…ロアメンバ部、81…前連結部(前部)、82…後連結部(後部)、84a…上中央結合部(結合部)、111…後連結壁部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体両側にフロントサイドフレームが設けられ、フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられた車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体のなかには、車体両側のフロントサイドフレームが車体前後方向に向けて延出され、フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられ、フロントアッパメンバの下端部およびフロントサイドフレームの前端部近傍が連結部材で連結されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
具体的には、連結部材は車幅方向に延出され、車幅方向外側の外端部がフロントアッパメンバの下端部に連結され、車幅方向内側の内端部がフロントサイドフレームの前端部近傍(外側壁)に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−18082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、フロントサイドフレームの前端部に車両前方側から荷重が入力した場合に、入力した荷重をフロントサイドフレームで支えるためにフロントサイドフレームの強度(剛性)を確保することが求められる。
このため、フロントサイドフレームの前端部近傍(外側壁)に連結部材の内端部が連結される部位の強度を確保する対策として溶接箇所を増加させる必要がある。
しかし、溶接箇所を増加させた場合、溶接費用が増し、そのことがコストを抑える妨げなっていた。
【0005】
本発明は、フロントサイドフレームに連結部材を連結する部位の強度を確保でき、さらにコストを抑えることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体両側に設けられたフロントサイドフレームが車体前後方向に向けて延出され、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側上方にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が車体下方に向けて延出されることにより前記ロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部の車幅方向外側に設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部に牽引用のアイボルトを取付け可能なフロントブラケットが設けられた車両の前部車体であって、前記フロントブラケットおよび前記フロントサイドフレームの外壁に、前記フロントサイドフレームおよび前記ロアメンバ部を連結する連結部材が締結部材で共締めされたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記連結部材は、車体前方に設けられた前部と、前記前部の車体後方に設けられて前記前部より板厚寸法が小さい後部とを有し、前記前部および前記後部で閉断面に形成され、前記前部は、前記ロアメンバ部への車体前後方向の結合範囲を前記フロントサイドフレームへの結合範囲より大きくし、前記後部は、前記フロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲を前記ロアメンバ部への結合範囲より大きくしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記前部および前記後部の結合部は、フランジ状に突出され、かつ車体後方外側に向けて斜め直線状に延出されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記連結部材は、長手方向において一定形状の断面に形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、前記後部が車体前下方に傾斜されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの前端部にフロントブラケットを設け、フロントブラケットに牽引用のアイボルトを取付け可能とした。
そして、フロントブラケットおよびフロントサイドフレームの外壁に連結部材を締結部材で一体的に共締めし、連結部材でフロントサイドフレームおよびロアメンバ部を連結した。
ここで、牽引用のアイボルトは車両を牽引するために用いるボルトであり、牽引用のアイボルトを取り付けるフロントブラケットは比較的強度(剛性)の高い部材が用いられる。
【0012】
このフロントブラケットを利用してフロントサイドフレームの外壁に連結部材を締結部材で共締めすることで、連結部材をフロントサイドフレームの外壁に強固に連結できる。
さらに、連結部材を締結部材で共締めすることで、フロントサイドフレームの外壁のうち連結部材を連結する部位の強度(剛性)を確保できる。
これにより、フロントサイドフレームの外壁に連結部材を溶接で固定する場合と比べて溶接箇所を増加させる必要がないので、溶接費用を減らしてコストを抑えることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、連結部材を前部と後部とで形成し、後部の板厚寸法を前部より小さくした。すなわち、前部の板厚寸法を後部より大きくした。
また、前部のロアメンバ部への車体前後方向の結合範囲をフロントサイドフレームへの結合範囲より大きくした。
これにより、ロアメンバ部を前部で強固に支えてロアメンバ部の剛性を確保することができる。
【0014】
一方、後部の板厚寸法を前部より小さくした。また、後部のフロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲をロアメンバ部への結合範囲より大きくした。
よって、連結部材の前部(板厚寸法の大きい部位)のフロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲を小さく抑えることができる。
【0015】
このように、連結部材の前部の結合範囲を小さく抑え、連結部材の後部の結合範囲を大きく確保することで、フロントサイドフレームの前端部に車両前方から荷重が入力した際に、入力した荷重で連結部材の後部を良好に変形させることができる。
したがって、フロントサイドフレームが圧縮変形(圧潰変形)することを後部で抑制する虞がなく、フロントサイドフレームを好適に圧縮変形させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、前部および後部の結合部をフランジ状に突出させ、かつ車体後方外側に向けて斜め直線状に延出させた。
ここで、動力源(例えば、エンジンや変速機など)の振動が取付部材を介してフロントサイドフレームおよびフロントアッパメンバに伝達される場合がある。この場合、フロントサイドフレームの基部を支点にしてフロントサイドフレームの前端部が車幅方向に振られ、前端部に首振力が発生することが考えられる。
【0017】
そこで、請求項3において、フランジ状の結合部を車体後方外側に向けて斜め直線状に延出させるようにした。
これにより、フランジ状の結合部を首振力が発生する方向に沿わせて設けることが可能である。
このフランジ状の結合部は、前部および後部がフランジ状に結合されているので高強度に形成されている。
【0018】
このように、フランジ状の結合部を首振力が発生する方向に沿わせて設け、かつ、結合部を高強度に形成することで、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに発生した首振力を結合部で効果的に支えることができる。
よって、フロントサイドフレームおよびフロントアッパメンバが相対的に変位することを防いで、フロントサイドフレームおよびフロントアッパメンバにねじれが生じることを防止できる。
これにより、フロントサイドフレームおよびロントアッパメンバの剛性やノイズ・バイブレーション性能(NV性能)を好適に確保することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、連結部材を長手方向において一定形状の断面に形成することで連結部材の剛性を高めることができる。
これにより、車両などに衝突した際に、連結部材に入力した荷重を連結部材で支えることができる。
また、連結部材を構成する後部の板厚寸法を前部より小さくした。
よって、後連結部の軽量化を図ることができる。
これにより、連結部材の剛性を高め、かつ、連結部材の軽量化を図ることができる。
このように、連結部材を一定形状の断面に形成し、さらに、後部の板厚寸法を前部より小さくすることで、連結部材の剛性を高め、かつ、連結部の軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、後部を車体前下方に傾斜させることで、連結部材の下部において車体前後方向の厚さ寸法を小さくできる。
ここで、連結部材はロアメンバ部の内壁に設けられている。
よって、連結部材に合わせてロアメンバ部の車体前後方向の厚さ寸法を小さくできる。
このロアメンバ部の車体後方に車輪が配置されている。よって、ロアメンバ部の車体前後方向の厚さ寸法を小さくすることで、ロアメンバ部の前面を車輪側に近づけることが可能になり、車体全長の寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両の前部車体を示す斜視図である。
【図2】図1の車両の前部車体を示す平面図である。
【図3】図1の3部拡大図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】(a)は図3の5a−5a線断面図、(b)は図3の5b−5b線断面図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8矢視図である。
【図9】図3の左側メンバ部を示す分解斜視図である。
【図10】図3の10矢視図である。
【図11】図3の11矢視図である。
【図12】(a)は図11の12a−12a線断面図、(b)は図11の12b−12b線断面図である。
【図13】図3の左連結部材を示す分解斜視図である。
【図14】図3の左連結部材のうち車幅方向内半部を示す斜視図である。
【図15】図3の左連結部材のうち車幅方向外半部を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る左連結部材に車体前方から荷重が入力する例を説明する図である。
【図17】本発明に係る左連結部材の上中央結合部で荷重を支える例を説明する図である。
【図18】本発明に係るロアバルクメンバで荷重を支える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0023】
実施例に係る車両の前部車体(車両の前部構造)10について説明する。
図1、図2に示すように、車両の前部車体10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム12と、左右のフロントサイドフレーム12の車幅方向外側に設けられた左右のフロントアッパメンバ13と、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に設けられたフロントバルクヘッド15とを備えている。
【0024】
さらに、車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13を連結する左連結部材(連結部材)17と、右フロントサイドフレーム12および右フロントアッパメンバ13を連結する右連結部材(連結部材)17とを備えている。
【0025】
車両の前部車体10は略左右対称に形成されているので、以下、車両の前部車体10の左側の部材(部位を含む)および右側の部材(部位を含む)に同じ符号を付して、右側の部材(部位)の説明を省略する。
【0026】
左フロントサイドフレーム12は、車両の前部左側において、右フロントサイドフレーム12に対して車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
右フロントサイドフレーム12は、車両の前部右側に設けられている。
この左フロントサイドフレーム12は、車体前後方向に向けて延出されることにより、後端部12bが左フロアフレーム21に連結された骨材である。
さらに、左フロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cは、左アウトリガー22を介して左サイドシル(骨材)に連結されている。
【0027】
図3に示すように、左フロントサイドフレーム12は、フレーム頂部26と、フレーム外壁部(外壁)27と、フレーム内壁部28と、フレーム底部29と、フロントブラケット31とを備えている。
フレーム頂部26、フレーム外壁部27、フレーム内壁部28およびフレーム底部29で断面略矩形状のフレーム部25が形成されている。
このフレーム部25の先端部(前端部)25aにフロントブラケット31が設けられている。
【0028】
図3、図4に示すように、フロントブラケット31は、ブラケット前壁部32と、ブラケット前壁部32に設けられた取付部33と、ブラケット前壁部32の外周に設けられた周壁部34とを有する。
フロントブラケット31の周壁部34がフレーム部25の先端開口25bに差し込まれた状態で、周壁部34の外壁部35(図13も参照)がフレーム外壁部27に締結ボルト(締結部材)37で締結されている。
この締結ボルト37を利用してフレーム外壁部27および外壁部35に左連結部材17が一体的に共締めされている。
左連結部材17については後で詳しく説明する。
【0029】
ブラケット前壁部32がフレーム部25の前端部25aから僅かに突出した位置に設けられている。
この状態で、フレーム部25の先端開口25bがフロントブラケット31で閉塞されている。
フレーム部25の前端部25aから僅かに突出されたブラケット前壁部32に取付部33が設けられている。
取付部33は、牽引用のアイボルト38を取付け可能な部材である。
【0030】
図1に示すように、左フロントアッパメンバ13は、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側(左側)に設けられ、後端部13aが左フロントピラー41に連結されている。
この左フロントアッパメンバ13は、左フロントピラー41から車体前方に向けて下り勾配に延出されたアッパメンバ部42と、アッパメンバ部42から車体下方に向けて延出されたロアメンバ部43とを有する。
【0031】
ロアメンバ部43は、アッパメンバ部42から前下方に向けて湾曲状に形成されることで略鉛直状に設けられ、かつ、左フロントサイドフレーム12の前端部12aより車幅方向外側に設けられている。
【0032】
図4、図5に示すように、ロアメンバ部43は、前メンバ部44のうち下端部44aが下方に向けて傾斜角θ1の傾斜角で車体後方に向けて傾斜するように傾斜状に形成されている。
前メンバ部44を傾斜状に形成することで、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向の厚み寸法T1を小さく抑えることができる。
【0033】
ロアメンバ部43は、車体前方側の前メンバ部44と、車体後方側の後メンバ部45と、前メンバ部44および後メンバ部45から車幅方向内側に張り出された内フランジ46と、前メンバ部44および後メンバ部45から車幅方向外側に張り出された外フランジ51とを有する。
【0034】
前メンバ部44は、後メンバ部45の車体前方側に設けられ、断面略コ字状に形成されている。
この前メンバ部44は、下端部44aが傾斜角θ1の傾斜角で下方に向けて車体後方に向けて傾斜するように傾斜状に形成されている。
前メンバ部44が傾斜状に形成されることで、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向に厚さ寸法を下方に向けて徐々に小さくなるように抑えることができる。
【0035】
後メンバ部45は、前メンバ部44の車体後方側において前メンバ部44に対峙するように設けられ、断面略コ字状に形成されている。
【0036】
内フランジ46は、前メンバ部44の車幅方向内側に張り出された内張出片47と、後メンバ部から車幅方向内側に張り出された内張出片48が接合されたフランジである。
【0037】
外フランジ51は、前メンバ部44の車幅方向外側に張り出された外張出片52と、後メンバ部から車幅方向外側に張り出された外張出片53が接合されたフランジである。
【0038】
図1に示すように、フロントバルクヘッド15は、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に配置され、正面視略矩形状に形成されている。
このフロントバルクヘッド15は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた左サイドステイ(サイドステイ)56と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右サイドステイ(サイドステイ)56と、左右のサイドステイ56の上端部に架け渡されたアッパバルクメンバ57と、左右のサイドステイ56の下端部56aに架け渡されたロアバルクメンバ58とを備えている。
【0039】
フロントバルクヘッド15に冷却系部品としてラジエータやコンデンサが設けられている。
このラジエータは、エンジンの冷却水を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
コンデンサは、例えば、エアコン用の冷媒ガスを冷却して液化するものである。
【0040】
図3に示すように、左サイドステイ56は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに交差するように設けられ、下端部56aがロアバルクメンバ58の上面(上部)58aに連結されている。
【0041】
図1、図2に示すように、ロアバルクメンバ58は、左右のサイドステイ56の下端部56aおよび左右のロアメンバ部43の下端部43aに連結されている。
このロアバルクメンバ58は、左右のサイドステイ56の下端部56a間に設けられた中央メンバ部61と、中央メンバ部61の左端部61aから車幅方向外側に延出された左側メンバ部66と、中央メンバ部61の右端部61bから車幅方向外側に膨出された右側メンバ部66とを有する。
【0042】
図6に示すように、中央メンバ部61は、薄板で断面略U字状に形成された梁部材62と、梁部材62の上開口63を覆う薄板の蓋部材64とで略矩形の閉断面に形成されている。
梁部材62および蓋部材64は、薄板状の板材で成形されることで、左端前壁部(前壁部)68の板厚T3(図5(a)参照)より板厚寸法T2が小さく形成されている。
【0043】
梁部材62の前上片62aに蓋部材64の前折曲片64bが溶接で接合され、梁部材62の後上片62bに蓋部材64の後折曲片64cが溶接で接合されている。
これにより、梁部材62および蓋部材64で中央メンバ部61が略矩形の閉断面に形成されている。
中央メンバ部61を略矩形の閉断面に形成することで、梁部材62および蓋部材64を薄板で形成しても中央メンバ部61の剛性を確保できる。
【0044】
図7、図8に示すように、左側メンバ部66は、薄板の断面略L字状に形成された左側梁部67と、左側梁部67の左端部67aに設けられた左端前壁部68と、左側梁部67の車体後方に設けられた左側後壁部(後壁部)69と、左側梁部67および左側後壁部69の左側上開口71を覆う薄板の左側蓋部72とを備えている。
この左側メンバ部66は、左側梁部67、左側後壁部69および左側蓋部72で略矩形の閉断面に形成されている。
【0045】
図7、図9に示すように、左側梁部67は、梁部材62と一体に形成された部位であり、梁部材62の左端部62cから車幅方向外側に延出されている。
左側梁部67は、左端前壁部68の板厚T3(図5(a)参照)より板厚寸法T2が小さく形成されている。
この左側梁部67は、前壁67bおよび底部67cで断面略L字状に形成され、底部67cの端部67dが左側後壁部69の底部69bに溶接で接合されている。
【0046】
左側後壁部69は、前メンバ部44の内フランジ46および左サイドステイ56を連結するように設けられている。
左側後壁部69は、板厚寸法T4の高強度鋼板(ハイテンション)が曲げ成形されることにより、後壁69a、底部69bおよび頂部69cで断面略Z状に形成されている。
左側後壁部69の板厚寸法T4は、左側梁部67の板厚寸法T2と略同一である。
【0047】
左側後壁部69の頂部69cが左側蓋部72の後辺72aに溶接で接合されている。
頂部69cが後辺72aに接合された状態で、張出片69gが左側蓋部72の後辺72aから車体後方に設けられている。
張出片69gは、頂部69cから車体後方に張り出された片である。
【0048】
図8、図10に示すように、張出片69gおよび蓋部材64の上面64aでロアバルクメンバ58の上面58aが形成されている。
上面58aは、補強ブラケット76で下方側から補強されている。
ロアバルクメンバ58の上面58aに左サイドステイ56の下端部56aが連結されている。
【0049】
上面58aは上方が空間77に対峙している。上面58aを空間77に対峙させることで、上面58aに下端部56aの連結部位を広く(大きく)確保できる。
よって、左サイドステイ56の下端部56aを上面58aに連結させることで、下端部56aを大きく確保できる。
これにより、左サイドステイ56の大型化が可能になり、フロントバルクヘッド15の剛性を高めて車両の前部車体10の剛性を高めることができる。
【0050】
図7、図9に示すように、左側後壁部69は、後壁69aの左端部を形成する左後壁(後壁部)69dと、底部69bの左端部を形成する左底部69eとを有する。
左後壁69dは、上方に突出された突片69fを有する。
左後壁69dは、突片69fがロアメンバ部43(内フランジ46)の下端部46aに設けられている。
【0051】
左側蓋部72は、蓋部材64と一体に形成された部位であり、蓋部材64の左端部64dから車幅方向外側に延出されている。
左側蓋部72は、左端前壁部68の板厚T3(図5参照)より板厚寸法T2が小さく形成され、左端部を形成する左端蓋部72cを有する。
この左側蓋部72は、前折曲片72bが前壁67bの上辺67eに溶接で接合されている。
【0052】
以上説明したように、左側梁部67の底部67c(端部67d)が左側後壁部69の底部69bに溶接で接合され、左側後壁部69の頂部69cが左側蓋部72の後辺72aに溶接で接合されている。
また、左側蓋部72の前折曲片72bが左側梁部67の前壁67b(上辺67e)に溶接で接合されている。
これにより、左側メンバ部66は、左側梁部67、左側後壁部69および左側蓋部72で略矩形の閉断面に形成されている。
【0053】
この左側メンバ部66の左側後壁部69が高強度鋼板で形成され、左側後壁部69でロアメンバ部43および左サイドステイ56を連結するようにした。
よって、左側メンバ部66の剛性を高めることができる。
これにより、対車両との衝突反力を増大させて、衝突荷重(衝突エネルギの吸収量)を向上させることができる。
【0054】
図5、図8に示すように、左端前壁部68は、梁部材62および蓋部材64の板厚寸法T2(図6参照)より板厚寸法T3が大きく形成されている。
この左端前壁部68は、左後壁(後壁部)69dに対峙するように左後壁(後壁部)69dの車体前方側に設けられている。
【0055】
左端前壁部68の上辺68aが左端蓋部72cの前折曲片72dに溶接で接合され、左端前壁部68の底部68bが左底部69eに溶接で接合されている。
また、左端前壁部68の内辺68cが左側梁部67の左端部67aに溶接で接合されている。
さらに、左端前壁部68の外辺68dが外フランジ51の下端部51aに溶接で接合されている。
【0056】
加えて、左端蓋部72cの後折曲片72eが、突片69fとともに内フランジ46の下端部46aに溶接で接合されている。
よって、左端前壁部68、左底部69e、左後壁69dおよび左端蓋部72cで、断面略矩形状のロアメンバ左端部(端部)74が形成されている。
このロアメンバ左端部74は、ロアバルクメンバ58の端部を構成する部位であって、左側の前メンバ部44の下端部44aに車体前方側から重ね合わせられるように設けられている。
【0057】
ここで、前メンバ部44が傾斜状に形成されることで、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向の厚み寸法T1が小さく抑えられている。
よって、左側の前メンバ部44の下端部44aにロアメンバ左端部(端部)74が車体前方側から重ね合わせられることで、ロアメンバ左端部74を車体後方に設けることができる。
【0058】
また、ロアバルクメンバ58を中央メンバ部61、および左右側のメンバ部66で形成した。そして、中央メンバ部61を梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面に形成した。
この中央メンバ部61をプレス成形で形成することが可能である。
さらに、左右側のメンバ部66を左側梁部67、左端前壁部68、左側後壁部69および左側蓋部72で略矩形の閉断面に形成した。
この左右側のメンバ部66をプレス成形で形成することが可能である。
【0059】
よって、ロアバルクメンバ58をプレス成形で形成することが可能になる。
これにより、ロアバルクメンバ58を鋼製の丸形パイプ(鋼管)で成形する場合と比べて形状を決める際の自由度を高めることができる。
これにより、ロアバルクメンバ58を動力源(エンジンや変速機など)18(図2参照)の外形に合わせてプレス成形することが可能になり、ロアバルクメンバ58および動力源18間の間隔Sを小さくできる。
ロアバルクメンバ58および動力源18間の間隔を小さくすることで、ロアバルクメンバ58を動力源18(図2参照)側に寄せることができる。
【0060】
このように、ロアメンバ部43の下端部43aにおいて車体前後方向の厚み寸法T1を小さく抑えてロアメンバ左端部74を車体後方に設けることを可能にした。
さらに、ロアバルクメンバ58をプレス成形で形成することで、ロアバルクメンバ58を動力源18(図2参照)側に寄せることができる。
ロアメンバ左端部74を車体後方に設け、かつ、ロアバルクメンバ58を動力源18側に寄せることで車体全長の寸法を小さく抑えることができる。
【0061】
さらに、ロアバルクメンバ58のうち左側メンバ部66の左端前壁部68の板厚T3を梁部材62や蓋部材64より大きく形成することで左端前壁部68の剛性を確保できる。
これにより、左端前壁部68に歩行者の脚部が車体前方から当たったとき、左端前壁部68の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0062】
一方、ロアバルクメンバ58のうち中央メンバ部61の梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面を形成した。よって、梁部材62および蓋部材64の板厚寸法T2を小さく抑えた状態で中央メンバ部61の剛性を確保できる。
これにより、中央メンバ部61に歩行者の脚部が当たったとき、中央メンバ部61の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0063】
このように、中央メンバ部61を梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面を形成して剛性を高めることで、中央メンバ部61(すなわち、梁部材62および蓋部材64)の板厚寸法T2を小さく抑えることを可能にした。
これにより、ロアバルクメンバ58の剛性を確保でき、かつロアバルクメンバ58の軽量化を図ることができる。
【0064】
図3、図11に示すように、左側メンバ部66の上方に左連結部材17が設けられている。
左連結部材17は、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13の前メンバ部44を連結する部材である。
左連結部材17は、車体前方に設けられた前連結部(前部)81と、前連結部81の車体後方に設けられた後連結部(後部)82とを有する。
【0065】
図12に示すように、左連結部材17は、前連結部81および後連結部82で、長手方向において一定形状(略四角形)の閉断面に形成されている。
左連結部材17を一定形状(略四角形)の閉断面に形成することで、左連結部材17の剛性を高めることができる。
【0066】
これにより、車両などに衝突した際に、左連結部材17に車体前方から入力した荷重を左連結部材17で支えることができる。
また、後連結部82の板厚寸法T6を前連結部81の板厚寸法T5より小さくした。
よって、後連結部82の軽量化を図ることができる。
【0067】
このように、左連結部材17を一定形状(略四角形)の閉断面に形成し、さらに、後連結部82の板厚寸法T6を前連結部81より小さくすることで、左連結部材17の剛性を高め、かつ、後連結部82の軽量化を図ることができる。
【0068】
図3、図11に示すように、左連結部材17は、前連結部81および後連結部82の上結合部84の上中央結合部(結合部)84aが車体後方外側に向けて傾斜角θ2で斜め直線状に延出されている。
また、前連結部81および後連結部82の下結合部85(図13も参照)は車幅方向に沿って直線状に延出されている。
上中央結合部84を斜め直線状に延出させた理由については後で詳しく説明する。
【0069】
図12、図13に示すように、前連結部81は、正面視略矩形状に形成された前連結壁部87と、前連結壁部87の上辺87aから車体後方に向けて折り曲げられた前上連結部88と、前連結壁部87の下辺87bから車体後方に向けて折り曲げられた前下連結部89とを有する。
この前連結部81は、板厚寸法T5であり、後連結部82の板厚寸法T6より大きく設定されている。
【0070】
前連結壁部87は、上辺87a、下辺87b、内辺87cおよび外辺87dで正面視略矩形状に形成され、略鉛直に設けられている。
この前連結壁部87は、内辺87cから車体前方に向けて前締結フラップ91が折り曲げられ、外辺87dから車幅方向外側に向けて前接合フラップ92が張り出されている。
【0071】
前締結フラップ91には取付孔91aが形成されている。
この取付孔91aは、フレーム部25のフレーム外壁部27に形成された貫通孔27a、およびフロントブラケット31(周壁部34)の外壁部35に形成された支持孔35aに対して同軸上に形成されている。
【0072】
図4に示すように、外壁部35の内面35bに溶接ナット94が溶接されている。
溶接ナット94は、支持孔35aに対して同軸上に形成されている。
よって、前締結フラップ91側から取付孔91a、貫通孔27aおよび支持孔35aに締結ボルト37のねじ部37aが差し込まれ、差し込まれたねじ部37aが溶接ナット94にねじ結合される。
【0073】
これにより、前締結フラップ91がフレーム外壁部27にフロントブラケット31(周壁部34)の外壁部35とともに締結ボルト37で共締めされている。
すなわち、前締結フラップ91は、締結ボルト37を利用してフレーム外壁部27および外壁部35に一体的に共締めされている。
【0074】
ここで、フロントブラケット31に設けられた取付部33は、牽引用のアイボルト38(図3参照)を取付け可能な部材である。
牽引用のアイボルト38は車両を牽引するために用いるボルトである。よって、牽引用のアイボルト38を取り付けるフロントブラケット31は比較的強度(剛性)が高い部材が用いられる。
【0075】
このフロントブラケット31を利用して左フロントサイドフレーム12のフレーム外壁部27に左連結部材17を締結ボルト37で共締めすることで、締結ボルト37をフレーム外壁部27に強固に連結できる。
さらに、左連結部材17を締結ボルト37を利用して共締めすることで、フレーム外壁部27のうち左連結部材17を連結する部位の強度(剛性)を確保できる。
これにより、フレーム外壁部27に左連結部材17を溶接で固定する場合と比べて溶接箇所を増加させる必要がないので、溶接費用を減らしてコストを抑えることができる。
【0076】
一方、前連結壁部87は、前締結フラップ91に対して車幅方向外側に前接合フラップ92が設けられている。
この前接合フラップ92は、前メンバ部44に溶接で接合されている。
【0077】
図11、図13に示すように、前上連結部88は、前内端部88aが幅寸法W1に形成され、前外端部88bが幅寸法W2に形成されている。
さらに、前上連結部88は、後辺88cの中間後辺88dが前内端部88aから前外端部88bに向けて車体後方外側に傾斜角θ2となるように斜め直線状に延出されている。
中間後辺88dは、後辺88cのうち前内端部88aおよび前外端部88b間の辺である。
【0078】
また、前上連結部88の内辺88eから上方に向けて前内接合突片101が折り曲げられている。前内接合突片101は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている(図14参照)。
さらに、前上連結部88の外辺88fから上方に向けて前外接合突片102が折り曲げられている。前外接合突片102はロアメンバ部43(前メンバ部44の内側壁44b)に溶接で接合されている(図15参照)。
【0079】
加えて、前上連結部88の後辺88cから上方に向けて第1前後接合突片103、第2前後接合突片104および第3前後接合突片105が折り曲げられている。
第1前後接合突片103および第2前後接合突片104は、第1後前接合突片123および第2後前接合突片124(後述する)に溶接で接合されている(図14参照)。
また、第3前後接合突片105は、後上接合突片117に溶接で接合されている(図15参照)。
【0080】
図14、図15に示すように、前下連結部89は、内端部89aから外端部89bまでが一定の幅寸法W3に形成されている。
前下連結部89の内辺89cから下方に向けて前下内接合突片107が折り曲げられている。前下内接合突片107は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている。
【0081】
また、前下連結部89の外辺89dから下方に向けて前下外接合突片108が折り曲げられている。前下外接合突片108はロアメンバ部43(前メンバ部44の内側壁44b)に溶接で接合されている。
【0082】
さらに、前下連結部89の後辺89eから前方下方に向けて傾斜状に前下後接合突片109が折り曲げられている。
前下後接合突片109は、後下接合突片118(後述する)に溶接で接合されている。
【0083】
図11、図15に示すように、前連結部81は、前上連結部88の前内端部88aが幅寸法W1に形成され、前外端部88bが幅寸法W2に形成されている。
ここで、前外端部88bの幅寸法W2は、前内端部88aの幅寸法W1より大きい。
よって、前連結部81は、ロアメンバ部43への(車体前後方向の)結合範囲H1が左フロントサイドフレーム12への結合範囲H2より大きく設定されている。
【0084】
また、前連結部81は、板厚寸法T5(図12参照)であり、後連結部82の板厚寸法T6(図12参照)より大きく設定されている。
これにより、ロアメンバ部43を前連結部81で強固に支えてロアメンバ部43の剛性を確保することができる。
【0085】
図12、図13に示すように、後連結部82は、正面視略矩形状に形成された後連結壁部111と、後連結壁部111の上辺111aから車体前方に向けて折り曲げられた後上連結部112とを有する。
後連結部82は、板厚寸法T6であり、前連結部81の板厚寸法T5より小さく設定されている。
【0086】
後連結壁部111は、上辺111a、下辺111b、内辺111cおよび外辺111dで正面視略矩形状に形成され、上辺111aから下辺111bまで車体前下方に向けて傾斜角θ3で傾斜するように設けられている。
【0087】
後連結壁部111の内辺111cから車体後方に向けて後内接合片115が折り曲げられている。後内接合片115は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている(図8も参照)。
また、後連結壁部111の外辺111dから車体後方に向けて後外接合片116が折り曲げられている。後外接合片116はロアメンバ部43に溶接で接合されている。
【0088】
さらに、後連結壁部111の上辺111aのうち外端111eから後上接合突片117が上方に向けて張り出されている。
後上接合突片117は、前上連結部88(後辺88c)の第3前後接合突片105に溶接で接合されている。
【0089】
加えて、後連結壁部111の下辺111bから斜め前方下方に向けて後下接合突片118(図8も参照)が前下後接合突片109に沿って折り曲げられている。
後下接合突片118は前下後接合突片109に溶接で接合されている。
後下接合突片118および前下後接合突片109が接合されることで下結合部85が構成されている。この下結合部85は車幅方向に沿って直線状に延出されている。
【0090】
図11、図13に示すように、後上連結部112は、内辺112cが幅寸法W4に形成され、外辺112dが後連結壁部111(後外接合片116)を介してロアメンバ部43に溶接で接合されている。
内辺112cは、前上連結部88の内辺88eより車体後方に位置する
この後上連結部112は、前上辺112aに前上傾斜辺112bを有する。
前上傾斜辺112bは、前上連結部88の中間後辺88dに沿って車体後方外側に向けて傾斜角θ2となるように斜め直線状に延出されている。
【0091】
後上連結部112の内辺112cから一対の後上内接合突片121が上方に向けて折り曲げられている。一対の後上内接合突片121は、フレーム部25(左フロントサイドフレーム12)のフレーム外壁部27に溶接で接合されている。
【0092】
また、後上連結部112の前上辺112aから第1後前接合突片123および第2後前接合突片124が上方に向けて折り曲げられている。
第1後前接合突片123は、前上連結部88(後辺88c)の第1前後接合突片103に溶接で接合されている。
第2後前接合突片124は、前上連結部88(後辺88c)の第2前後接合突片104が溶接で接合されている。
【0093】
第1後前接合突片123および第1前後接合突片103が接合され、第2後前接合突片124および第2前後接合突片104が接合されている。
さらに、後上接合突片117および第3前後接合突片105が接合されている。
それぞれの突片が接合されることで、前連結部81および後連結部82の上結合部84が形成されている。
【0094】
また、第2後前接合突片124および第2前後接合突片104が接合されることで、上結合部84の上中央結合部(結合部)84aが車体後方外側に向けて傾斜角θ2で斜め直線状に延出されている。
上中央結合部84aは、上結合部84のうち車幅方向中央に位置する結合部である。
この上中央結合部84aは、前上連結部88および後上連結部112の上方に突出された突出部(フランジ)である。
なお、上中央結合部84aを傾斜角θ2で斜め直線状に延出させた理由については後で詳しく説明する。
【0095】
後上連結部112は、内辺112cが幅寸法W4に大きく形成され、外辺112dが後連結壁部111(後外接合片116)を介してロアメンバ部43に溶接で接合されている。
よって、後連結部82は、左フロントサイドフレーム12への(車体前後方向の)結合範囲H3がロアメンバ部43への(車体前後方向の)結合範囲H4より大きく設定されている。
【0096】
この後連結部82は、板厚寸法T6であり、前連結部81の板厚寸法T5より小さく設定されている。
よって、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに車両前方から荷重が入力した際に、後連結部82を好適に変形させることができる。
これにより、入力した荷重で左フロントサイドフレーム12が圧縮変形(圧潰変形)することを後部で抑制する虞がない。
【0097】
図12に示すように、後連結部82の後連結壁部111は、上辺111aから下辺111bまで車体前下方に向けて傾斜角θ3で傾斜するように形成されている。
後連結壁部111を車体前下方に傾斜させることで、左連結部材17の下部17aにおいて車体前後方向の厚さ寸法を、後連結壁部111(前下連結部89)の幅寸法W3と略同じ寸法に小さくできる。
【0098】
ここで、図15に示すように、左連結部材17は、外端部17bがロアメンバ部43の内側壁44bに設けられている。
これにより、左連結部材17に合わせてロアメンバ部43の車体前後方向の厚さ寸法T7を小さくできる。
【0099】
このロアメンバ部43の車体後方に車輪(図示せず)が配置されている。
よって、ロアメンバ部43の車体前後方向の厚さ寸法T7を小さくすることで、ロアメンバ部43の前面43bを車輪側に近づけることが可能になり、車体全長の寸法を小さく抑えることができる。
【0100】
つぎに、左連結部材17に車体前方から荷重F1が入力する例を図16に基づいて説明する。
図16に示すように、車両などに衝突した際に、左連結部材17に車体前方から荷重F1が入力する。
ここで、左連結部材17(前連結部81および後連結部82)で一定形状(略四角形)の閉断面に形成することにより左連結部材17の剛性が高められている。
これにより、車体前方から入力した荷重F1を左連結部材17で支えることができる。
【0101】
ついで、左連結部材17に備えたフランジ状の上中央結合部84aで左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13の剛性やノイズ・バイブレーション性能(NV性能)を確保する例を図17に基づいて説明する。
【0102】
図17に示すように、動力源(例えば、エンジンや変速機など)18が取付部材を介して左フロントサイドフレーム12に設けられている。
よって、動力源18の振動が取付部材を介して左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13に伝達される場合がある。この場合、左フロントサイドフレーム12の基部を支点にして前端部12aが車幅方向に振られ、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに矢印A方向への首振力が発生することが考えられる。
【0103】
ここで、左連結部材17は、前上連結部88および後上連結部112の上方にフランジ、すなわち上中央結合部84a(第2後前接合突片124および第2前後接合突片104)が突出されている。
フランジ状の上中央結合部84aは、車体後方外側に向けて傾斜角θ2で斜め直線状に延出されることで矢印A方向に沿わせて設けられている。
さらに、フランジ状の上中央結合部84aは、第2後前接合突片124および第2前後接合突片104の2つの突片(フランジ)が溶接で接合されているので高強度に形成されている。
【0104】
よって、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに発生した矢印A方向への首振力を、フランジ状の上中央結合部84aで効果的に支えることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13が相対的に変位することを防いで、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13にねじれが生じることを防止できる。
したがって、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13の剛性やノイズ・バイブレーション性能(NV性能)を好適に確保することができる。
【0105】
ところで、後上連結部112は、内辺112cが幅寸法W4に大きく形成されている。
よって、後連結部82は、左フロントサイドフレーム12への(車体前後方向の)結合範囲H3がロアメンバ部43への(車体前後方向の)結合範囲H4より大きく設定されている。
よって、前上連結部88の左フロントサイドフレーム12への車体前後方向の結合範囲を小さく抑えることができる。
【0106】
後連結部82(後上連結部112)の板厚寸法T6は、前連結部81(前上連結部88)の板厚寸法T5より小さく設定されている(図12(a)参照)。
よって、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに入力した荷重F2で後連結部82を好適に変形させることができる。
これにより、入力した荷重F2で左フロントサイドフレーム12を好適に圧縮変形(圧潰変形)させて荷重F2を吸収することができる。
【0107】
つぎに、車体前方から入力した荷重をロアバルクメンバ58で支える例を図18に基づいて説明する。
図18に示すように、ロアバルクメンバ58の中央メンバ部61に歩行者の脚部が当たった場合に、中央メンバ部61に車体前方から荷重F4が入力する。
ここで、中央メンバ部61は、梁部材62および蓋部材64で略矩形の閉断面に形成されている。
【0108】
よって、梁部材62および蓋部材64の板厚寸法T2(図6参照)を小さく抑えた状態で中央メンバ部61の剛性が確保されている。
これにより、中央メンバ部61に歩行者の脚部が当たった場合に、中央メンバ部61の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0109】
また、ロアバルクメンバ58の左端前壁部68に歩行者の脚部が当たった場合に、左端前壁部68に車体前方から荷重F5が入力する。
ここで、左端前壁部68の板厚T3(図5(a)参照)は、梁部材62や蓋部材64より大きく形成されている。
【0110】
このように、左端前壁部68の板厚T3を梁部材62や蓋部材64より大きく形成することで、左端前壁部68の剛性が確保されている。
これにより、左端前壁部68に歩行者の脚部が車体前方から当たった場合に、左端前壁部68の変形を抑えて脚部の下側が局部的に車両の下方に振り込まれることを防止できる。
【0111】
なお、本発明に係る車両の前部車体は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例で示した車両の前部車体10、左右のフロントサイドフレーム12、左右のフロントアッパメンバ13、左右の連結部材17、フレーム外壁部27、フロントブラケット31、締結ボルト37、アイボルト38、ロアメンバ部43、前連結部81、後連結部82、上中央結合部84aおよび後連結壁部111などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、車体両側にフロントサイドフレームが設けられ、フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0113】
10…車両の前部車体、12…左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12a…左右のフロントサイドフレームの前端部、13…左右のフロントアッパメンバ(フロントアッパメンバ)、17…左右の連結部材(連結部材)、27…フレーム外壁部(フロントサイドフレームの外壁)、31…フロントブラケット、37…締結ボルト(締結部材)、38…アイボルト、43…ロアメンバ部、81…前連結部(前部)、82…後連結部(後部)、84a…上中央結合部(結合部)、111…後連結壁部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体両側に設けられたフロントサイドフレームが車体前後方向に向けて延出され、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側上方にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が車体下方に向けて延出されることにより前記ロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部の車幅方向外側に設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部に牽引用のアイボルトを取付け可能なフロントブラケットが設けられた車両の前部車体であって、
前記フロントブラケットおよび前記フロントサイドフレームの外壁に、前記フロントサイドフレームおよび前記ロアメンバ部を連結する連結部材が締結部材で共締めされたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記連結部材は、
車体前方に設けられた前部と、前記前部の車体後方に設けられて前記前部より板厚寸法が小さい後部とを有し、
前記前部および前記後部で閉断面に形成され、
前記前部は、
前記ロアメンバ部への車体前後方向の結合範囲を前記フロントサイドフレームへの結合範囲より大きくし、
前記後部は、
前記フロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲を前記ロアメンバ部への結合範囲より大きくしたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記前部および前記後部の結合部は、フランジ状に突出され、かつ車体後方外側に向けて斜め直線状に延出されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記連結部材は、長手方向において一定形状の断面に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【請求項5】
前記後部が車体前下方に傾斜されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【請求項1】
車体両側に設けられたフロントサイドフレームが車体前後方向に向けて延出され、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側上方にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が車体下方に向けて延出されることにより前記ロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部の車幅方向外側に設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部に牽引用のアイボルトを取付け可能なフロントブラケットが設けられた車両の前部車体であって、
前記フロントブラケットおよび前記フロントサイドフレームの外壁に、前記フロントサイドフレームおよび前記ロアメンバ部を連結する連結部材が締結部材で共締めされたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記連結部材は、
車体前方に設けられた前部と、前記前部の車体後方に設けられて前記前部より板厚寸法が小さい後部とを有し、
前記前部および前記後部で閉断面に形成され、
前記前部は、
前記ロアメンバ部への車体前後方向の結合範囲を前記フロントサイドフレームへの結合範囲より大きくし、
前記後部は、
前記フロントサイドフレームへの車体前後方向の結合範囲を前記ロアメンバ部への結合範囲より大きくしたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記前部および前記後部の結合部は、フランジ状に突出され、かつ車体後方外側に向けて斜め直線状に延出されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記連結部材は、長手方向において一定形状の断面に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【請求項5】
前記後部が車体前下方に傾斜されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−32040(P2013−32040A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167867(P2011−167867)
【出願日】平成23年7月30日(2011.7.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月30日(2011.7.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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