説明

車両の補機配設構造

【課題】車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両補機の配設とを両立させ、車両補機とダッシュパネルとの組付け性が両立でき、車両補機に対するエンジンルームの熱害や塵害の影響を防止する車両補機配設構造を提供する。
【解決手段】ダッシュ側部3B,4の車幅方向何れか一方が、ダッシュ中央凹部3Aと別体で分割して形成された分割ダッシュ側部4として形成されると共に、分割ダッシュ側部4が他方のダッシュ側部3Bより車両前方にオフセットして配設され、分割ダッシュ側部4の後方に車両補機60の少なくとも一部を配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室とエンジンルームとを車両前後方向に仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルが、車両後方に向けて凹設され車輪を駆動するためのパワートレインユニットが配設されるダッシュ中央凹部と、このダッシュ中央凹部の車幅方向両側に延びるダッシュ側部と、から形成された車両において空調ユニット等の車両補機を配設するような車両の補機配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物としてのパワートレイン(エンジンとトランスミッション)を車両前後方向の中央寄りに配設し、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性および車両の運動性能の向上を図った車両としては、図9に示す構造がある。なお、図9では、パワートレインとしてロータリエンジンおよびトランスミッションを用いた場合の構成を実線で示し、パワートレインとしてレシプロエンジンおよびトランスミッションを用いた場合の構成を点線で示している。
【0003】
図9に示す従来構造は、エンジンルームと車室とを前後方向に仕切るダッシュパネル100A,100Bを設け、このダッシュパネル100A,100Bの車幅方向中央部に、該中央部が後方に向けて窪む凹部101A,101B(ダッシュ中央凹部)を形成し、ダッシュ中央凹部の車幅方向両側にはダッシュ側部を設けて、上述のダッシュ中央凹部101A,101B内にパワートレインを構成するロータリエンジン102Aまたはレシプロエンジン102Bの後側一部を配設すると共に、トンネル部103の下部つまり車外側にはトランスミッション104A,104Bを配設し、さらに上記凹部101A,101Bに近接するように車幅方向の中央部には車両用補機ユニットの一例としての空調ユニット105A,105Bを配設したものである。
【0004】
図9の実線(ロータリエンジン搭載形態)と、点線(レシプロエンジン搭載形態)との比較において、レシプロエンジン102Bはロータリエンジン102Aよりも大きいため、ダッシュパネル100Bの凹部101Bを、ロータリエンジン搭載時のそれに対してさらに後方に設定し、かつ、車幅方向のセンタ部分に配設される空調ユニット105Bはロータリエンジン搭載時の空調ユニット105Aに対して小さいものに設定している。
【0005】
このように構成すると、ロータリエンジン102A、レシプロエンジン102Bの何れを搭載した場合においても、ヨー慣性モーメントの低減、操縦安定性および車両の運動性能の向上を達成することができる。
【0006】
しかしながら、ヨー慣性モーメントのさらなる低減、操縦安定性等のさらなる向上を図ることが要請されており、この場合、ロータリエンジン102A、レシプロエンジン102Bをさらに後方に後退させることが考えられるが、この場合、エンジンが空調ユニット105A,105Bと干渉するので、その後退(後方シフトレイアウト)は不可能であった。
【0007】
特許文献1には、図9のロータリエンジン102Aを搭載した場合の構成とほぼ同様の構造が開示されている。
一方、特許文献2、特許文献3には、パワートレインのさらなる後退配置を達成する目的で、車室内を空調する空調ユニットが車室後方に配設された補機配設構造が開示されているが、空調ユニットの占有スペースに対応して車室または荷室が狭くなるので、実用性に乏しい問題点があった。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【特許文献3】特開2005−29057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、ダッシュ中央凹部の両側に位置するダッシュ側部の車幅方向の何れか一方が、ダッシュ中央凹部と別体で分割して形成された分割ダッシュ側部として形成されると共に、該分割ダッシュ側部が他方のダッシュ側部より車両前方にオフセットして配設され、上記分割ダッシュ側部の後方に車両補機の少なくとも一部を配設することで、車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両補機の配設とを両立させることができ、また、車両補機とダッシュパネルとの組付け性が両立でき、さらに、車両補機に対するエンジンルームの熱害や塵害の影響を防止することができる車両の補機配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両の補機配設構造は、車室とエンジンルームとを車両前後方向に仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルが、車両後方に向けて凹設され車輪を駆動するパワートレインユニットが配設されるダッシュ中央凹部と、該ダッシュ中央凹部の車幅方向両側に延びるダッシュ側部と、から形成された車両において、上記ダッシュ側部の車幅方向何れか一方が、上記ダッシュ中央凹部と別体で分割して形成された分割ダッシュ側部として形成されると共に、該分割ダッシュ側部が他方のダッシュ側部より車両前方にオフセットして配設され、上記分割ダッシュ側部の後方に車両補機の少なくとも一部を配設したものである。
上述のパワートレインユニットは、レシプロエンジンとトランスミッションとの組合せでもよく、または、ロータリエンジンとトランスミッションとの組合せでもよい。また、上述の車両補機は空調ユニットに設定してもよい。
【0010】
上記構成によれば、他方のダッシュ側部より車両前方にオフセット配設された分割ダッシュ側部の後方に車両補機の少なくとも一部を配設したので、車室への影響を抑えつつ、パワートレインの後方シフトレイアウトと、車両補機の配設とを両立させることができる。また、パワートレインの後方シフトレイアウトにより、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性の向上を図ることができる。
また、上記分割ダッシュ側部はダッシュ中央凹部と別体で分割して形成されているので、車両補機とダッシュパネルとの組付け性を両立させることができ、さらに、車両補機に対するエンジンルームの熱害や塵害の影響を防止することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記車両補機は、上記他方のダッシュ側部の前後位置より後方の車室の側と、上記分割ダッシュ側部の側と、に渡って前後方向に延びて配設されたものである。
上記構成によれば、車両補機を分割ダッシュ側部の側と、車室の側とに渡って前後方向に延びて配設したので、車室への影響を抑え、かつエンジンルームとのレイアウトの両立を図りつつ、車両補機を効率的にレイアウトすることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記分割ダッシュ側部は、上記車両補機と上記エンジンルームとを仕切るように該車両補機の周囲を囲むように配設されたものである。
上記構成によれば、エンジンルーム内の熱害、塵害の車両補機に対する影響を確実に防止することができると共に、分割ダッシュ側部で車両補機の周囲を囲むので、スペース的にもエンジンルーム内のレイアウトに影響を与えない。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記分割ダッシュ側部は、上記パワートレインユニットの側部に沿って前後方向に延びて上記車両補機との間を隔絶する耐熱壁部を備えたものである。
上記構成によれば、パワートレインユニットから車両補機への熱害を上記耐熱壁部にて確実に防止することができる。なお、分割ダッシュ側部として耐熱性が高い部材を用いることにより効果的である。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュパネル後方の車室内側には、車幅方向に運転席と助手席とが並設され、該助手席側に対応したダッシュ側部に上記車両補機を配設したものである。
上記構成によれば、車室内のレイアウト、つまり居住空間の確保と、車両補機のレイアウトと、エンジンルーム内のレイアウトとを達成することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記車両補機は、上記車室内用の空調ユニットであることを特徴をする。
上記構成によれば、エンジンルームと車室との間に位置する空調ユニットが効率的に配設されるので、車室への影響を抑えつつ、パワートレインの後方シフトレイアウトと、空調ユニットの配設との両立を図ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記空調ユニットは、熱交換器ユニットと、エアミックスユニットと、ブロアユニットとを備え、上記ブロアユニットを上記分割ダッシュ側部の側に配設したものである。
上記構成によれば、空調風の配風効率を確保しつつ、空調ユニットを適切にレイアウトすることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記ブロアユニットの後方において、上記熱交換器ユニットと、エアミックスユニットとが略車幅方向に並設されたものである。
上記構成によれば、分割ダッシュ側部の側と、車室の側との間の限られたスペース内に、熱交換器ユニット、エアミックスユニット、ブロアユニットからなる空調ユニットをコンパクトにレイアウトすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ダッシュ中央凹部の両側に位置するダッシュ側部の車幅方向の何れか一方が、ダッシュ中央凹部と別体で分割して形成された分割ダッシュ側部として形成されると共に、該分割ダッシュ側部が他方のダッシュ側部より車両前方にオフセットして配設され、上記分割ダッシュ側部の後方に車両補機の少なくとも一部を配設したので、車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両補機の配設とを両立させることができ、また、車両補機とダッシュパネルとの組付け性が両立でき、さらに、車両補機に対するエンジンルームの熱害や塵害の影響を防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
車室への影響を抑えつつ、パワートレインユニットの後方シフトレイアウトと、車両補機の配設とを両立させ、また、車両補機とダッシュパネルとの組付け性を両立させ、さらに車両補機へのエンジンルームの熱害、塵害を防止するという目的を、車室とエンジンルームとを車両前後方向に仕切るダッシュパネルが設けられ、該ダッシュパネルが、車両後方に向けて凹設され車輪を駆動するパワートレインユニットが配設されるダッシュ中央凹部と、該ダッシュ中央凹部の車幅方向両側に延びるダッシュ側部と、から形成された車両において、上記ダッシュ側部の車幅方向何れか一方が、上記ダッシュ中央凹部と別体で分割して形成された分割ダッシュ側部として形成されると共に、該分割ダッシュ側部が他方のダッシュ側部より車両前方にオフセットして配設され、上記分割ダッシュ側部の後方に車両補機の少なくとも一部を配設するという構成にて実現した。
【実施例】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、車両の補機配設構造を示すが、まず、図1、図2、図3を参照して車両の全体構造について説明する。ここに、図1は車両の側面図、図2は車両の平面図、図3は車両の正面図である。
【0021】
図1、図2において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル(ダッシュパネル)3を設け、このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びて車室2の底面を形成するフロアパネル5を、一体または一体的に連設し、このフロアパネル5の後部には、上方に立上がるキックアップ部6およびリヤシートパン7を形成し、このリヤシートパン7にはバルクヘッド8を介してリヤフロア9(フロアパネル)を連設している。このリヤフロア9は後述する後部荷室48の底面を形成するものである。
【0022】
車室2とエンジンルーム1とを車両の前後方向に仕切るダッシュロアパネル3は、図2に示すように、その車幅方向の中央において車両後方に向けて凹設されたダッシュ中央凹部3Aと、このダッシュ中央凹部3Aの車幅方向両側に延びるダッシュ側部3B,4と、から形成され、これら左右のダッシュ側部3B,4の車幅方向の何れか一方(この実施例では後述する助手席シート57側に対応した右側)が、上記ダッシュ中央凹部3Aと別体で分割して形成された分割ダッシュ側部4として形成されると共に、この分割ダッシュ側部4は他方のダッシュ側部3Bよりも車両前方にオフセットして配設されている。ここで、上述の他方のダッシュ側部3Bは所謂ダッシュロアパネルの一般面に相当する。
【0023】
上述のフロアパネル5の車幅方向の中央部には、図2に平面図で示すように、車室2内に向かって上方へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部10を設けている。このトンネル部10は、ダッシュロアパネル3とバルクヘッド8との間を車両の前後方向に延びており、該トンネル部10は車体剛性の中心となるものである。なお、このトンネル部10の上部には、該トンネル部10の上部に沿って車両の前後方向に延びるトンネルメンバ(いわゆるハイマウントバックボーンフレーム)を設けてもよい。
【0024】
また、上述のフロアパネル5の左右両サイドには、図2、図3に示すように、車両の前後方向に延びるサイドシル11を接合固定している。このサイドシル11は、サイドシルインナ12とサイドシルアウタ13とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面14(図3参照)を有する車体剛性部材である。なお、上記サイドシルインナ12とサイドシルアウタ13との間には必要に応じて、サイドシルレインフォースメントを介設してもよい。
【0025】
さらに、図1、図2に示すように、ダッシュロアパネル3とキックアップ部6との前後方向の中間部において、上述のフロアパネル5上には、トンネル部10の縦壁とサイドシルインナ12との間を車幅方向に連結する左右のフロアクロスメンバ15,15を設け、断面ハット形状のこのフロアクロスメンバ15とフロアパネル5との間には、車幅方向に延びる閉断面16を形成している。
【0026】
図2、図3に示すように、上述のトンネル部10とサイドシル11との間の車幅方向の中間部において、フロアパネル5の下部には、車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム17,17を接合固定して、断面逆ハット形状のこのフロアフレーム17とフロアパネル5との間には、車両の前後方向に延びる閉断面18(図3参照)を形成している。
【0027】
また、リヤフロア9の下部両サイドには、図1、図2に示すように、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム19,19を接合固定して、(断面逆ハット形状の)このリヤサイドフレーム19とリヤフロア9との間には、車両の前後方向に延びる閉断面を形成すると共に、これら一対のリヤサイドフレーム19,19の前部を、図2に示すように、サイドシル11の後部と車両前後方向にオーバラップする位置まで前方へ延設させている。
【0028】
一方、図2に示すように、エンジンルーム1の左右両サイドを車両の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム20,20を設けている。これらの各フロントサイドフレーム20,20は図1に示すように、その後部がダッシュロアパネル3の前面に沿って下方に延び、該フロントサイドフレーム20の後端部は上述のフロアフレーム17の前端部に連結されていて、このフロントサイドフレーム20とフロアフレーム17とは、図2に示すように、平面視で車両の前後方向に略一直線状に連続するものである。
【0029】
また、左右一対のフロントサイドフレーム20,20間には、車幅方向に延びる閉断面構造のフロントクロスメンバ21(いわゆるNo.1.5クロスメンバ)を設ける一方、一対のフロントサイドフレーム20,20の前方には、クラッシュカン22,22(衝撃エネルギ吸収部材)を介して、車幅方向に延びるバンパレイン23(詳しくは、フロントバンパレインフォースメント)を設けている。
このバンパレイン23の車幅方向中間部には後方に後退する中間後退部23Aを形成すると共に、バンパレイン23の左右の両端部にも、後方に後退するサイド後退部23B,23Cを形成し、該バンパレイン23の平面から見た全体形状をW字状と成している。そして、このバンパレイン23の中間後退部23Aと上述のフロントクロスメンバ21との間を、クラッシュカン24(衝撃エネルギ吸収部材)で連結している。
【0030】
上述の左右一対のフロントサイドフレーム20,20の車外側にはホイールハウス25,25が設けられており、これら各ホイールハウス25,25における車幅方向の内側で、かつホイールハウス25の前後方向略中央部にはサスタワー26,26が一体的に取付けられている。また、左右の各ホイールハウス25,25の上部には、車両の略前後方向に延びる車体剛性部材としてのエプロンレインフォースメント27,27が設けられており、このエプロンレインフォースメント27の前部には、図5に示すように、シュラウドアッパメンバ28が接続される一方、エプロンレインフォースメント27の後部には、カウルサイド部29が接続されている。
【0031】
ところで、図1に示すように、上述のフロントクロスメンバ21の近傍において、左右一対のフロントサイドフレーム20,20間には、後部にクーリングファン30を備えたラジエータ31を、前低後高状に傾斜させて、配設している。ここで、上述のラジエータ31とクーリングファン30とは一体化されて、ラジエータユニットを構成している。また、このラジエータ31は、次に述べるエンジン32の前方に配設されたものである。
【0032】
また、図1、図2に示すように、エンジンルーム1内の後部およびトンネル部10の車外側には、エンジン32(縦置きエンジン)とトランスミッション33とから成るパワートレインユニット34(以下単にパワートレインと略記する)を配設している。該パワートレイン34は上述のダッシュ中央凹部3Aに対応して配設されたものであって、重量物としてのエンジン32およびトランスミッション33を可及的車両中心部に後退配置して所謂フロント・ミッドシップ・エンジン車と成している。上述のエンジン32としては、レシプロエンジンまたはロータリエンジンを用いることができる。
【0033】
また、上述のトンネル部10の車外側には、トランスミッション33の出力を、リヤディファレンシャル装置35に伝達するプロペラシャフト36を設け、上述のリヤディファレンシャル装置35の差動出力を、左右のドライブシャフト37,37を介して、左右の後輪38,38に伝達すべく構成して、FR(前部機関後輪駆動)タイプの車両と成している。
【0034】
一方、この車両は、図1に示すように、車両前方から後方に前低後高状に傾斜して延びるフロントノーズ部39と、このフロントノーズ部39と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部40と、この中間ノーズ部40の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラスと同意、以下単にフロントウインドと略記する)41と、を備えている。
上述のフロントウインド41は、図3に示す左右のフロントピラー42,42と、ルーフ部43の前端と、カウル部上端との間に形成されたフロントウインド開口を覆うもので、このフロントウインド41の下端部は、カウルパネルで支持される。
【0035】
さらに、上述のフロントノーズ部39より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部44を設けている。このアッパノーズ部44は、エネルギ吸収可能なEA部材(エネルギ・アブソーバ部材)としての発泡ウレタン部材45と、この発泡ウレタン部材45の外部を覆う樹脂製の外皮46とから構成されていて、上下方向にエネルギ吸収可能に設けられている。
【0036】
また、図1に示すように、上述のフロントノーズ部39とアッパノーズ部44との間には、走行風を通過させて整流可能な整流通路47を形成している。すなわち、この実施例のアッパノーズ部44は、バンパ機能と、スポイラ機能と、歩行者保護機能と、を兼ねるように構成している。
【0037】
一方、この車両は、図1に示すように、リヤフロア9上方の後部荷室48の開口を、リヤゲートウインド49を備えたリヤゲート50(開閉部材)によって開閉自在に覆うように構成しており、上述の後部荷室48は車室2内と連通していて、上述のリヤゲート50を開放することで、荷物の出し入れを容易に行なうように構成している。
【0038】
図1〜図3において、51はステアリングホイール、52はインストルメントパネル、53はステアリングラック、54はサブフレーム、55は前輪である。
一方、ダッシュロアパネル3およびインストルメントパネル52の後方の車室2内側には、車幅方向に運転席シート56と助手席シート57とが並設されている。運転席シート56はダッシュ側部3Bおよびステアリングホイール51に対応して車両左側に配設されており、この運転席シート56はシートクッション56Cとシートバック56Bとを備えている。
【0039】
助手席シート57は分割ダッシュ側部4および後述する車両補機としての空調ユニットに対応して車両右側に配設されており、この助手席シート57はシートクッション57Cとシートバック57Bとを備えている。
【0040】
運転席シート56および助手席シート57から成る前列シートの後方には、シートクッション58Cとシートバック58Bとを備えた左右のリヤシート58,58(後列シート)を配設している。ここで、これらの各シート56,57,58,58は何れもセパレート・シート(バケットシート)にて構成している。
【0041】
図4は図2の要部拡大平面図、図5は車両の補機配設構造を示す斜視図であって、上述のダッシュロアパネル3は、パワートレイン34を配設するダッシュ中央凹部3Aを有し、このダッシュ中央凹部3A前端から車幅方向左側(運転席側)に延びるダッシュ側部3Bを備えると共に、ダッシュ中央凹部3A前端からフロントサイドフレーム20の位置に相当する所定量のみ車幅方向右側(助手席側)に延びるダッシュ側片3bを備えている。
【0042】
また、図4、図5に示すように、上述のダッシュロアパネル3は、ダッシュ中央凹部3Aと別体で分割して形成された分割ダッシュ側部4を備えており、図2に示すように、該分割ダッシュ側部4を他方の運転席側のダッシュ側部3Bより車両前方にオフセットして配設している。つまり、ダッシュロアパネル3は平面視において左右非対称に形成したものである。
【0043】
さらに、上述の分割ダッシュ側部4は、図7に斜視図で示すように、パワートレイン34の側方に沿って前後方向に延びる縦壁部4aと、前輪55(図2参照)が格納されたホイールハウス25の上部に延びる横壁部4bと、この横壁部4bの車幅方向外端から後方に延びる接合片4cと、横壁部4bの下端からホイールハウス25の上部形状に沿うように後方に延びる接合片4dと、縦壁部4aの下端からフロントサイドフレーム20の上部形状に沿うように車幅方向内側に延びる接合片4eと、縦壁部4aの後端からダッシュ側片3bの前面形状に沿うように車幅方向内側に延びる接合片4fとを備え、これら各要素4a〜4fを一体形成したものである。
【0044】
そして、図4、図5に示すように、上述の接合片4fをダッシュ側片3bの前面に接合固定すると共に、接合片4eをフロントサイドフレーム20の上部に接合固定して、フロントサイドフレーム20のダッシュ接合部の剛性向上を図り、かつ、フロントサイドフレーム20の上部に接合固定して、フロントサイドフレーム20のダッシュ接合部の剛性向上を図り、かつ、フロントサイドフレーム20の強度向上を図っている。
【0045】
また、接合片4dをホイールハウス25の上部およびフロントサイドフレーム20の上部に接合固定すると共に、横壁部4bをサスタワー26によるフロントサスペンションの支持剛性の向上を図り、かつサスタワー26の内倒れを防止すべく構成している。
さらに、接合片4cを車体強度部材としてのエプロンレインフォースメント27の車幅方向内側部に接合固定することで、該エプロンレインフォースメント27の強度向上と、分割ダッシュ側部4それ自体の支持剛性の向上とを両立すべく構成している。
図7で示した分割ダッシュ側部4に代えて、図8に示す分割ダッシュ側部4を用いてもよい。
【0046】
図8に示す分割ダッシュ側部4は、図7で示した構成に加えて、サスタワー26に近接する縦壁部4aと接合片4eとの間に、少なくとも1つ、この実施例では複数のビード4g,4gを一体形成したものであって、この構造により、部品点数の増加を招くことなく、サスタワー26の内倒れをより一層良好に防止すべく構成したものである。なお、図8において図7と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0047】
図4、図5に示すように、分割ダッシュ側部4の後方には車両補機としての車室内用の空調ユニット60の少なくとも一部を配設している。
上述の空調ユニット60は、図4〜図6に示すように、周囲から熱を奪って内外気を冷却するエバポレータ(evaporator.蒸発器)61と、エンジン32冷却後のエンジン冷却水により内外気を加熱するヒータコア62と、内部に複数のドア(図示せず)を有して、空調風の配風方向を切換えるエアミックスユニット63(いわゆる配風ボックス)と、導入した内外気を後方に向けて送風するブロアユニット64とを備えていて、上述のエバポレータ61とヒータコア62とで熱交換器ユニット65を構成している。
【0048】
上述の空調ユニット60は、他方のダッシュ側部3Bの前後位置に対応する車両の前後方向の位置(ダッシュ側片3bの位置参照)よりも後方の車室2の側と、分割ダッシュ側部4の側と、に渡って前後方向に延びて配設されており、上述のブロアユニット64を分割ダッシュ側部4の側に配設している。
すなわち、熱交換器ユニット65、エアミックスユニット63、ブロアユニット64から成る空調ユニット60において、ブロアユニット64を前部に配置して、このブロアユニット64を上述の分割ダッシュ側部4の側の配設している。
【0049】
また、図4に平面図で示すように、ブロアユニット64の後方において、上述の熱交換器ユニット65と、エアミックスユニット63とは略車幅方向に並設されており、分割ダッシュ側部4の側と、車室2の側との間の限られたスペース内に、熱交換器ユニット65、エアミックスユニット63、ブロアユニット64からなる空調ユニット60をコンパクトにレイアウトするように構成している。
さらに、上述の空調ユニット60とカウルサイド部29との間は、分割ダッシュ延長部3Cで仕上られている。
【0050】
しかも、上述の分割ダッシュ側部4は、図2、図4、図5に示すように、車両補機としての空調ユニット60と、エンジンルーム1とを仕切るように該空調ユニット60の周囲を囲むように配設されると共に、該分割ダッシュ側部4は、パワートレイン34の右側の側部に沿って前後方向に延びて空調ユニット60との間を隔絶する耐熱壁部(縦壁部4a参照)を備えており、空調ユニット60に対するエンジンルーム1側からの熱害や塵害の影響を防止するように構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0051】
このように、上記実施例の車両の補機配設構造は、車室2とエンジンルーム1とを車両前後方向に仕切るダッシュロアパネル3が設けられ、該ダッシュロアパネル3が、車両後方に向けて凹設され車輪(後輪38参照)を駆動するパワートレイン34が配設されるダッシュ中央凹部3Aと、該ダッシュ中央凹部3Aの車幅方向両側に延びるダッシュ側部3B,4と、から形成された車両において、上記ダッシュ側部3B,4の車幅方向何れか一方が、上記ダッシュ中央凹部3Aと別体で分割して形成された分割ダッシュ側部4として形成されると共に、該分割ダッシュ側部4が他方のダッシュ側部3Bより車両前方にオフセットして配設され、上記分割ダッシュ側部4の後方に車両補機(空調ユニット60参照)の少なくとも一部を配設したものである(図1、図2参照)。
【0052】
この構成によれば、他方のダッシュ側部3Bより車両前方にオフセット配設された分割ダッシュ側部4の後方に車両補機(空調ユニット60参照)の少なくとも一部を配設したので、車室2への影響を抑えつつ、パワートレイン34の後方シフトレイアウトと、車両補機(空調ユニット60参照)の配設とを両立させることができる。また、パワートレイン34の後方シフトレイアウトにより、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性の向上を図ることができる。
【0053】
また、上記分割ダッシュ側部4はダッシュ中央凹部3Aと別体で分割して形成されているので、車両補機(空調ユニット60参照)とダッシュロアパネル3との組付け性を両立させることができ、さらに、車両補機(空調ユニット60参照)に対するエンジンルーム1の熱害や塵害の影響を防止することができる。
【0054】
さらに、上記車両補機(空調ユニット60参照)は、上記他方のダッシュ側部3Bの前後位置より後方の車室2の側と、上記分割ダッシュ側部4の側と、に渡って前後方向に延びて配設されたものである(図2、図4参照)。
この構成によれば、車両補機(空調ユニット60参照)を分割ダッシュ側部4の側と、車室2の側とに渡って前後方向に延びて配設したので、車室2への影響を抑え、かつエンジンルーム1とのレイアウトの両立を図りつつ、車両補機(空調ユニット60参照)を効率的にレイアウトすることができる。
【0055】
また、上記分割ダッシュ側部4は、上記車両補機(空調ユニット60参照)と上記エンジンルーム1とを仕切るように該車両補機(空調ユニット60参照)の周囲を囲むように配設されたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、エンジンルーム1内の熱害、塵害の車両補機(空調ユニット60参照)に対する影響を確実に防止することができると共に、分割ダッシュ側部4で車両補機(空調ユニット60参照)の周囲を囲むので、スペース的にもエンジンルーム1内のレイアウトに影響を与えない。
【0056】
加えて、上記分割ダッシュ側部4は、上記パワートレイン34の側部に沿って前後方向に延びて上記車両補機(空調ユニット60参照)との間を隔絶する耐熱壁部(縦壁部4a参照)を備えたものである(図2参照)。
この構成によれば、パワートレイン34から車両補機(空調ユニット34参照)への熱害を上記耐熱壁部(縦壁部4a参照)にて確実に防止することができる。ここで、分割ダッシュ側部4として耐熱性が高い部材を用いることにより効果的である。
【0057】
また、上記ダッシュロアパネル3後方の車室2内側には、車幅方向に運転席シート56と助手席シート57とが並設され、該助手席シート57側に対応したダッシュ側部(分割ダッシュ側部4参照)に上記車両補機(空調ユニット60参照)を配設したものである(図2参照)。
この構成によれば、車室2内のレイアウト、つまり居住空間の確保と、車両補機(空調ユニット60参照)のレイアウトと、エンジンルーム1内のレイアウトとを達成することができる。
【0058】
さらに、上記車両補機は、上記車室2内用の空調ユニット60であることを特徴とする(図2参照)。
この構成によれば、エンジンルーム1と車室2との間に位置する空調ユニット60が効率的に配設されるので、車室2への影響を抑えつつ、パワートレイン34の後方シフトレイアウトと、空調ユニット60の配設との両立を図ることができる。
【0059】
加えて、上記空調ユニット60は、熱交換器ユニット65と、エアミックスユニット63と、ブロアユニット64とを備え、上記ブロアユニット64を上記分割ダッシュ側部4の側に配設したものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、空調風の配風効率を確保しつつ、空調ユニット60を適切にレイアウトすることができる。
【0060】
さらに、上記ブロアユニット64の後方において、上記熱交換器ユニット65と、エアミックスユニット63とが略車幅方向に並設されたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、分割ダッシュ側部4の側と、車室2の側との間の限られたスペース内に、熱交換器ユニット65、エアミックスユニット63、ブロアユニット64からなる空調ユニット60をコンパクトにレイアウトすることができる。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
パワートレインで駆動される車輪は、後輪38に対応し、
車両補機は、空調ユニット60に対応し、
耐熱壁部は、縦壁部4aに対応し、
運転席は、運転席シート56に対応し、
助手席は、助手席シート57に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては左ハンドル車両を例示したが、これは右ハンドル車両であってもよく、車両補機は空調ユニットに限定されることなく、バッテリやECU(エンジン・コントロール・ユニット)などの他の車両補機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の車両の補機配設構造を示す側面図
【図2】車両の補機配設構造を示す平面図
【図3】車両の補機配設構造を示す正面図
【図4】図2の要部拡大平面図
【図5】要部の拡大斜視図
【図6】空調ユニットの側面図
【図7】分割ダッシュ側部を示す斜視図
【図8】分割ダッシュ側部の他の実施例を示す斜視図
【図9】従来の車両の補機配設構造を示す部分側面図
【符号の説明】
【0063】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3A…ダッシュ中央凹部
3B…ダッシュ側部
4…分割ダッシュ側部(ダッシュ側部)
4a…縦壁部(耐熱壁部)
34…パワートレイン(パワートレインユニット)
38…後輪(車輪)
56…運転席シート(運転席)
57…助手席シート(助手席)
60…空調ユニット(車両補機)
63…エアミックスユニット
64…ブロアユニット
65…熱交換器ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームとを車両前後方向に仕切るダッシュパネルが設けられ、
該ダッシュパネルが、車両後方に向けて凹設され車輪を駆動するパワートレインユニットが配設されるダッシュ中央凹部と、
該ダッシュ中央凹部の車幅方向両側に延びるダッシュ側部と、から形成された車両において、
上記ダッシュ側部の車幅方向何れか一方が、上記ダッシュ中央凹部と別体で分割して形成された分割ダッシュ側部として形成されると共に、
該分割ダッシュ側部が他方のダッシュ側部より車両前方にオフセットして配設され、
上記分割ダッシュ側部の後方に車両補機の少なくとも一部を配設した
車両の補機配設構造。
【請求項2】
上記車両補機は、上記他方のダッシュ側部の前後位置より後方の車室の側と、上記分割ダッシュ側部の側と、に渡って前後方向に延びて配設された
請求項1記載の車両の補機配設構造。
【請求項3】
上記分割ダッシュ側部は、上記車両補機と上記エンジンルームとを仕切るように該車両補機の周囲を囲むように配設された
請求項1または2記載の車両の補機配設構造。
【請求項4】
上記分割ダッシュ側部は、上記パワートレインユニットの側部に沿って前後方向に延びて上記車両補機との間を隔絶する耐熱壁部を備えた
請求項3記載の車両の補機配設構造。
【請求項5】
上記ダッシュパネル後方の車室内側には、車幅方向に運転席と助手席とが並設され、
該助手席側に対応したダッシュ側部に上記車両補機を配設した
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の補機配設構造。
【請求項6】
上記車両補機は、上記車室内用の空調ユニットである
請求項1または2記載の車両の補機配設構造。
【請求項7】
上記空調ユニットは、熱交換器ユニットと、エアミックスユニットと、ブロアユニットとを備え、
上記ブロアユニットを上記分割ダッシュ側部の側に配設した
請求項6記載の車両の補機配設構造。
【請求項8】
上記ブロアユニットの後方において、上記熱交換器ユニットと、エアミックスユニットとが略車幅方向に並設された
請求項7記載の車両の補機配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−298251(P2009−298251A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153770(P2008−153770)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】