説明

車両の走行制御装置

【課題】 実際の道路状況やドライバの意志等を経路に的確に反映させて利便性の高い自動操縦制御を実現することができる車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】 制御装置8は、基準局4との通信が確立した際に、測位される自車位置に基づいて取得した走行ルートを用いて自車両1に対する走行制御ルートを学習する走行制御ルート学習制御、或いは、各走行制御ルートの中から利用可能な所定の走行制御ルートを選択して自車両1を自動操縦する自動操縦制御の何れかを予め設定された条件に従って選択的に実行可能な構成であり、しかも、ユーザによって走行制御ルート学習制御が選択されている場合には、当該走行制御ルート学習制御を優先的に選択して実行する構成となっている。これにより、実際の道路状況やドライバの意志等を経路(走行制御ルート)に適切に反映させることができ、利便性の高い自動操縦制御を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵や自動加減速により自車両を目標進行路に沿って自動操縦制御する車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工衛星から得られる位置データに基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)が、車両用のナビゲーション装置において広く用いられており、このGPSで検出した自車位置情報や、カメラ等により検出した前方の道路情報を基に走行制御する様々な技術が提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車載用ナビゲーションシステムで、ドライバが目的地を設定し、このナビゲーションシステムにより生成される目的地までの経路を目標進行路として自動操舵や自動加減速により自動操縦制御を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−255937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の自動操縦制御においては、上述の特許文献1に開示された技術のように予めナビゲーションシステムに記憶されている一義的な情報に基づいて経路が設定されるだけでなく、実際の道路状況やドライバの意志等を経路に的確に反映できれば、利便性の一層の向上が期待できる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、実際の道路状況やドライバの意志等を経路に的確に反映させて利便性の高い自動操縦制御を実現することができる車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、予め位置が求められた基準点に設置し、衛星からの情報を基に補正情報を求めて予め設定する領域内に送信する基準局と、車両に搭載され、上記衛星からの情報に基づき車両位置を演算する移動局と、上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記基準局の情報と上記車両位置とから該車両位置を補正演算する車両位置演算手段と、上記自車位置に基づいて上記車両が走行する走行ルートを取得し、当該取得した走行ルートに基づいて上記車両に対する走行制御ルートを学習する走行制御ルート学習手段と、 上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記走行制御ルート学習手段で学習した各走行制御ルートの中から利用可能な所定の走行制御ルートを選択して目標進行路に設定し、上記車両位置に基づき、上記車両を上記目標進行路に沿って自動操縦制御する自動操縦制御手段と、上記走行制御ルート学習手段による走行制御ルートの学習制御、或いは、上記自動操縦制御手段による自動操縦制御の何れかを、予め設定された条件に従って選択して実行させる制御選択手段とを備え、上記制御選択手段は、ユーザによって上記走行制御ルート学習手段による走行制御ルートの学習制御が選択されている場合には、当該走行制御ルートの学習制御を優先的に選択して実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の走行制御装置によれば、実際の道路状況やドライバの意志等を経路に的確に反映させて利便性の高い自動操縦制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は車両の走行制御装置の全体を示す概略構成図、図2は走行制御ルーチンのフローチャート、図3はルートの表示例を示す説明図、図4は各ケースでの学習ルートの更新方法を示す説明図、図5は自動操縦制御の自動操舵サブルーチンのフローチャート、図6は自動操舵の原理の説明図である。
【0009】
図1において、符号1は、移動局としての機能を備えた自動車等の車両(自車両)を示し、この自車両1にはRTK(Real-Time Kinematic)−GPSを用いて走行制御を行う車両制御装置2が搭載されている。
【0010】
すなわち、本実施形態におけるRTK−GPSでは、地球を周回する人工衛星(GPS衛星)3からの情報(測位計算等に必要な衛星と軌道情報をはじめとするデータ等)は、使用者が自宅等に選択的に設定する基準局4と、自車両1に搭載される移動局により受信される。尚、本形態においては、自車両を移動局として説明する。
【0011】
基準局4は、予め位置が正確に求められている自宅等の地点に設けられており、GPSアンテナ4a、GPS受信機4b、無線機4cを備えて主要に構成されている。そして、基準局4は、当該基準局4で観測したGPS衛星3からの電波の位相情報、疑似距離、及び、基準局4の位置座標を、測位する地点、すなわち、移動局である自車両1に無線機4cにより送信する。基準局4からは、具体的には、誤差補正量、疑似距離補正量、座標値等のデータ等が自車両1に対して送信される。
【0012】
ここで、無線機4cは、例えば、IEEE802.11a/b/g等の規格による無線LAN(Lacal Area Network)に基づき送受信するアクセスポイントであり、通信のセキュリティを維持するためSSID(Service Set ID)、WEP(Wired Equivalent Privacy)キー、MAC(Media Access Control)アドレス認証の設定が特有になされている。そして、図5に示すように、この無線機4cを中心として、半径約50〜100m以内の領域が、通信可能領域として設定されている。
【0013】
自車両1には、移動局としての機能を実現するため、GPSアンテナ5a、GPS受信機5b、無線機5cが搭載されている。そして、自車両1が上述の基準局4と通信可能領域に入り、基準局4との通信が確立された際に、基準局4からの誤差補正量、疑似距離補正量、座標値等のデータ(無線機5cで受信されるデータ)や、自車両1で受信したGPS衛星3からの情報をGPS受信機5b内で比較解析して、自車位置(座標値)を即座に精度よく(例えば、誤差1〜5cm)得られるようになっている。
【0014】
また、自車両1には制御装置8が搭載され、制御装置8には、上述のGPS受信機5bが接続されて自車位置が入力される。また、制御装置8には、ステレオカメラ6で撮像した画像を基に前方の道路環境を認識して前方障害物を認識する障害物認識部7が接続されている。
【0015】
ステレオカメラ6は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組の(左右の)CCDカメラで構成され、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、障害物認識部7に入力する。
【0016】
障害物認識部7における、ステレオカメラ6からの画像の処理は、例えば以下のように行われる。先ず、障害物認識部7は、ステレオカメラ6のCCDカメラで撮像した自車両の進入方向の環境を示す1組のステレオ画像に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を求める処理を行って、三次元の距離分布を表す距離画像を生成する。次に、障害物認識部7は、距離画像データに周知のグルーピング処理等を行い、予め記憶しておいた3次元的な道路形状データ、側壁データ、立体物データ等と比較することで、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データを抽出する。そして、障害物認識部7は、抽出した立体物データの中から、自車進行路の領域(例えば、自車進行方向に予め設定した幅で延長した領域や前方白線・側壁間に挟まれる領域)上に存在する立体物データを障害物として検出し、制御装置8に出力する。
【0017】
制御装置8には、上述のGPS受信機5b、障害物認識部7の他、車速Vを検出する車速センサ9、ハンドル角θHを検出するハンドル角センサ10等のセンサ類と、走行制御に係る各種ユーザ設定等を行うための操作スイッチ11、ブレーキペダルスイッチ12、アクセルペダルスイッチ13等のスイッチ類が接続されている。
【0018】
また、制御装置8には、図示しないハードディスク、内蔵メモリ、或いは、CD、DVD等の読み込み書き込み自在な記憶メディアが搭載されており、そのデータベース上に、自車両1に対して自動操縦制御(後で詳述する)を行う際の走行制御ルートが格納されている。
【0019】
具体的に説明すると、制御装置8は、基準局4との通信が確立した際に、測位される自車位置に基づいて自車両1の走行ルートを取得し、取得した走行ルートに基づいて走行制御ルートを学習することが可能となっている。そして、制御装置8は、走行制御ルートを学習すると、データベースを更新する。また、制御装置8は、データベースに格納された各走行制御ルートを、例えば、ダッシュボード上に設けられた表示手段としての液晶ディスプレイ14を通じて、適宜表示することが可能となっている。
【0020】
また、制御装置8は、基準局4との通信が確立した際に、過去に学習されデータベース上に格納されている走行制御ルートの中から利用可能な所定の走行制御ルートを選択して目標進行路に設定し、測位される自車位置に基づき、自車両1を目標進行路に沿って自動操縦することが可能となっている。すなわち、制御装置8は、操作スイッチ11を通じてユーザ入力等により設定された目標車速を維持するように、電動スロットル弁制御装置15に信号を出力してスロットル弁18を駆動させ、加速、或いは、減速を実行させる。また、所定以上の大きな減速を行わせる際には、ブレーキ制御装置16に信号を出力して自動ブレーキを作動させる。また、進行方向を変える場合には、電動パワーステアリング制御装置17に信号出力して自動操舵を実行する。
【0021】
ここで、制御装置8では、これら走行制御ルートの学習制御、或いは、自動操縦制御の何れかを、予め設定された条件に従って自動的に選択して実行することが可能となっている。すなわち、制御装置8は、例えば、基準局4との通信が確立した際に、自車両1の近傍に走行制御ルートが存在しない場合には、自車位置に基づいて自車両1の走行ルートを取得し、取得した自車走行ルートを新規の走行制御ルートとして学習する。一方、制御装置8は、基準局4との通信が確立した際に、自車両1の近傍に走行制御ルートが存在する場合には、走行制御ルートの中から所定の走行制御ルートを選択して自動操縦制御を実行する。
【0022】
但し、操作スイッチ11を通じたユーザ入力等によって走行制御ルートの学習制御が選択されている場合には、制御装置8は、自車両1の近傍に走行制御ルートが存在する場合であっても、走行制御ルートの学習制御を優先的に選択して実行する。また、走行制御ルートの学習制御に際し、制御装置8は、ユーザ入力等に応じて、後述する自動学習モード或いは強制学習モードでの走行制御ルートの学習を選択的に行うことが可能となっている。
【0023】
このように、本実施形態において、制御装置8は、車両位置演算手段、走行制御ルート学習手段、自動操縦制御手段、及び、制御選択手段としての各機能を実現する。
【0024】
次に、制御装置8で実行される自車両1の走行制御について、図2に示す走行制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。
このルーチンがスタートすると、制御装置8は、先ず、ステップS101において、移動局である自車両1と基準局4との間で通信が確立されているか否かを判定し、通信が確立されていないと判定した場合には、そのまま待機する。
【0025】
一方、ステップS101において、通信が確立されていると判定した場合、制御装置8は、ステップS102に進み、自車位置の近傍に過去に学習した走行制御ルートが存在するか否かを調べる。具体的には、制御装置8は、例えば、自車両1の現在位置の近傍に、過去に学習したデータベース上の走行制御ルートのノードが存在するか否か(例えば、自車位置から±Dm以内に過去のノードが存在するか否か)を調べる。
【0026】
そして、ステップS102において、自車位置の近傍に過去に学習した走行制御ルートが存在しないと判定すると、制御装置8は、ステップS103に進み、自車両1の走行ルートを新規の走行制御ルートとして学習した後、ルーチンを抜ける。すなわち、ステップS103において、制御装置8は、先ず、基準局4との間で通信が確立された時点の自車位置を始点とし、終点まで(例えば、自車両1が基準局4との通信エリア外に移動するまで、或いは、自車両1が設定時間以上停車するまで)の自車両1の走行ルートを設定間隔(例えば、3〜5m間隔)のノード列として取得する。そして、制御装置8は、取得した走行ルートを、新規の走行制御ルートとしてデータベース上に記憶させた後、ルーチンを抜ける。
【0027】
一方、ステップS102において、自車位置の近傍に過去に学習した走行制御ルートが存在すると判定すると、制御装置8は、ステップS104に進み、例えば、図示しないナビゲーション装置等によって液晶ディスプレイ14上に表示される地図上に、自車位置の近傍に存在する全ての走行制御ルートを表示する。ここで、本実施形態では、データベース上に記憶された各走行制御ルートのうち、規定の回数以上(例えば、5回以上)学習されたもののみが自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートとして設定されるようになっている。このため、制御装置8は、このような走行制御ルートの違いをユーザに認識させるため、自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートと適用不能な走行制御ルートとを異なる形態で表示させる。例えば図3(a)に示す表示例では、会社までのルート及び買物先までのルートが自動操縦制御に適用可能なルートとして実線で表示されており、友人宅までのルートが自動操縦制御に適用不能な走行制御ルートとして破線で表示されている。同様に、例えば図3(b)に示す表示例では、ルートAが自動操縦制御に適用可能なルートとして実線で表示されており、ルートBが自動操縦制御に適用不能なルートとして破線で表示されている。
【0028】
そして、ステップS104からステップS105に進むと、制御装置8は、操作スイッチ11を通じたユーザ入力等によって走行制御ルートの学習モードが選択されているか否かを調べる。そして、ステップS105において、学習モードが選択されていると判定した場合には、制御装置8は、走行制御ルートの学習を優先させるべく、ステップS107に進む。
【0029】
一方、ステップS105において、学習モードが選択されていないと判定した場合、制御装置8は、ステップS106に進み、自車位置近傍の走行制御ルートの中に、自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートが存在するか否かを調べる。そして、制御装置8は、ステップS106において、自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートが存在すると判定するとステップS115に進み、逆に、自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートが存在しないと判定するとステップS107に進む。
【0030】
ステップS105或いはステップS106からステップS107に進むと、制御装置8は、ステップS114までの処理により、自動学習モード或いは強制学習モードを用いた走行制御ルートの学習を行う。
【0031】
すなわち、ステップS107において、制御装置8は、基準局4との間で通信が確立された時点の自車位置を始点とし、終点まで(例えば、自車両1が基準局4との通信エリア外に移動するまで、或いは、自車両1が設定時間以上停車するまで)の自車両1の走行ルートを設定間隔(例えば、3〜5m間隔)のノード列として取得する。
【0032】
ステップS107で自車両1の走行ルートを取得してステップS108に進むと、制御装置8は、操作スイッチ11を通じたユーザ入力等により、走行制御ルートの学習モードとして、強制学習モードが選択されているか否かを調べる。そして、ステップS108において、強制学習モードが選択されていないと判定した場合(すなわち、自動学習モードが選択されていると判定した場合)には、ステップS109に進む。
【0033】
ステップS108からステップS109に進むと、制御装置8は、データベースに格納されている走行制御ルートの中から、取得した走行ルートに最も対応する走行制御ルートを学習要素として抽出する。そして、制御装置8は、取得した走行ルートの全域が、抽出した走行制御ルート基準の予め設定した閾値幅(例えば、走行制御ルートに対して±dmの幅)内に存在するか否かを調べる。
【0034】
そして、ステップS109において、取得した走行ルートの全域が抽出した走行制御ルート基準の閾値幅内に存在すると判定した場合、制御装置8は、ステップS110に進み、例えば図4(a)に示すように、取得した走行ルートの全域と抽出した走行制御ルートの全域とを合成学習する(全域合成学習モード)。
【0035】
逆に、ステップS109において、取得した走行ルートの一部が抽出した走行制御ルート基準の閾値幅外に存在すると判定した場合、制御装置8は、ステップS111に進み、例えば図4(b)に示すように、閾値幅内に存在する走行ルートを対応する走行制御ルートと合成学習するとともに、閾値幅外に存在する走行ルートを新規の走行制御ルートとして学習する(一部合成学習モード)。
【0036】
また、ステップS108において、強制学習モードが選択されていると判定した場合、制御装置8は、ステップS112に進み、強制学習モードによる走行制御ルートの学習を行う。ここで、本実施形態において、強制学習モードの選択時には、操作スイッチ11を通じたユーザ入力等によって学習対象となる走行制御ルートが選択されるようになっており、制御装置8は、ユーザ選択された走行制御ルートを学習要素として抽出する。そして、この強制学習モードでは、制御装置8は、例えば図4(c)に示すように、取得した走行ルートが選択中の走行制御ルート基準の閾値幅内に存在するか否かに関係なく、取得した走行ルートの全域と選択中の走行制御ルートの全域とを合成学習する。その際、この強制学習モードでは、例えば、走行ルートの各ノードに乗算する重み係数を上述のステップS110或いはステップS111で合成学習する際に走行ルートの各ノードに乗算する重み係数よりも大きな値に設定し、取得した走行ルートの情報を走行制御ルートに強く反映させることが望ましい。
【0037】
そして、ステップS110、ステップS111、或いは、ステップS112からステップS113に進むと、制御装置8は、今回学習した走行制御ルートの学習回数が予め設定された閾値以上(例えば、5回以上)であるか否かを調べる。そして、ステップS113において、制御装置8は、今回学習した走行制御ルートの学習回数が閾値以下であると判定した場合には、そのままルーチンを抜け、逆に、今回学習した走行制御ルートの学習回数が閾値以上であると判定した場合には、ステップS114に進み、当該走行制御ルートを、自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートとして設定した後、ルーチンを抜ける。
【0038】
また、ステップS106からステップS115に進むと、制御装置8は、自車両1の現在位置の近傍に存在する走行制御ルートの中から利用可能な所定の走行制御ルートを選択し、選択した走行制御ルートのノード列を目標進行路に設定し、測位される自車位置に基づき、自車両1を目標進行路に沿って自動操縦制御した後、ルーチンを抜ける。ここで、本実施形態において、制御装置8は、自車位置の近傍に自動操縦制御に適用可能な複数の走行制御ルートが存在する場合において、所定の走行制御ルートがユーザ選択されている場合には当該選択された走行制御ルートを目標進行路に設定し、逆に、ユーザ選択されていない場合には例えば各走行制御ルートの過去の使用頻度等に応じて走行制御ルートを選択する。また、制御装置8は、例えば、障害物認識部7により前方10m以内に障害物が検出されたとき、ドライバが大きくステアリング操作した場合、ブレーキペダル、アクセルペダルを踏んだとき、或いは、ユーザ等によって自動操縦制御がOFFされた場合には、自動操縦制御をキャンセルする。
【0039】
次に、自車両1の制御装置8における自動操縦制御時の自動操舵について、図5のフローチャート及び図6の自動操舵の原理の説明図で説明する。
このルーチンがスタートすると、制御装置8は、先ず、ステップS201で必要なパラメータを読み込み、続くステップS202で、自車位置の過去の履歴の中から、例えば、現在位置より略車長長さ(例えば、5m)手前の自車測位点履歴を抽出し、この5m手前の自車測位点と現在の自車位置とを結んで得られる前方への直線方向を自車進行路として推定する。
【0040】
次いで、ステップS203に進み、制御装置8は、現在の自車位置から最も近い、目標進行路のノードを抽出する。
【0041】
その後、ステップS204に進み、現在の自車速と、予め設定しておいた前方注視時間(例えば、1.5秒)より、前方注視距離を求める。例えば、現在の自車速が20Km/hの場合は、前方注視距離は、5.6m・1.5秒(=8.34m)となる。
【0042】
次いで、ステップS205に進み、制御装置8は、ステップS204で求めた前方注視距離近傍の目標進行路上のノードを誘導目標モードとして設定する。
【0043】
次に、ステップS206に進み、制御装置8は、誘導目標ノードと自車進行路からの横方向のずれ量を目標ノード偏差ΔDとして演算する。
【0044】
次いで、ステップS207に進み、目標ノード偏差ΔDをゼロにするように目標ハンドル角δhを以下の(1)式により算出する。
δh=GP・ΔD+Gd・(d(ΔD)/dt) …(1)
ここで、GPは比例項ゲインであり、Gdは微分項ゲインである。
【0045】
次に、ステップS208に進み、制御装置8は、目標ハンドル角δhとハンドル角センサ20で検出した実際のハンドル角θHとからハンドル角偏差Δδ(=δh−θH)を演算する。
【0046】
次いで、ステップS209に進み、以下の(2)式によりハンドル角偏差Δδをゼロにするように、電流Iδを演算し、ステップS210で、この指示電流値Iδを出力してルーチンを抜ける。
Iδ=KP・Δδ+Kd・(d(Δδ)/dt)+Ki・∫Δδdt …(2)
ここで、KPは比例項ゲイン、Kdは微分項ゲイン、Kiは積分項ゲインである。
【0047】
このような実施形態によれば、制御装置8は、基準局4との通信が確立した際に、測位される自車位置に基づいて取得した走行ルートを用いて自車両1に対する走行制御ルートを学習する走行制御ルート学習制御、或いは、各走行制御ルートの中から利用可能な所定の走行制御ルートを選択して自車両1を自動操縦する自動操縦制御の何れかを予め設定された条件に従って選択的に実行可能な構成であり、しかも、ユーザによって走行制御ルート学習制御が選択されている場合には、当該走行制御ルート学習制御を優先的に選択して実行する構成であるので、実際の道路状況やドライバの意志等を経路(走行制御ルート)に適切に反映させることができ、利便性の高い自動操縦制御を実現することができる。
【0048】
その際、制御装置8による走行制御ルートの学習制御のモードとして自動学習モードを設定し、この自動学習モードでは、取得した走行ルートに最も対応する走行制御ルートを学習要素として抽出し、走行ルートの全域が抽出した走行制御ルート基準の予め設定した閾値幅内に存在するとき走行ルートの全域と走行制御ルートの全域とを合成学習する全域合成学習モードと、取得した走行ルートに最も対応する走行制御ルートを学習要素として抽出し、走行ルートの一部が抽出した走行制御ルート基準の予め設定した閾値幅外に存在するとき、閾値幅内に存在する走行ルートと走行制御ルートとを合成学習するとともに、閾値幅外に存在する走行ルートを新規の走行制御ルートとして学習する一部合成学習モードとを選択的に実行することにより、的確な走行制御ルートの学習を実現することができる。
【0049】
さらに、制御装置8による走行制御ルートの学習制御のモードとして強制学習モードを設定し、この強制学習モードでは、ユーザ選択された走行制御ルートを学習要素として抽出し、走行ルートの一部が走行制御ルート基準の予め設定した閾値幅外に存在する場合であっても、走行ルートの全域を走行制御ルートと合成学習することにより、特定の走行制御ルートに対し、過去に学習した情報を有効に活用しつつ、適切な走行制御ルートの学習を実現することができる。
【0050】
また、制御装置8は、自動操縦制御に適用が可能な走行制御ルートを、他の走行制御ルートと異なる形態で表示することにより、走行制御ルートの学習制御或いは自動操縦制御を実行するに際し、ユーザに適切な走行制御ルートを提示することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、ステレオカメラ6にて撮像した画像を基に障害物等を認識する構成となっているが、他の装置、例えば、超音波センサ等で障害物等を検出するよう構成してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、基準局4からは、一般的な無線LANの規格により自車両1に各情報を送信する構成となっているが、情報を無線送信できるものであれば、これに限ることなく、所謂、Bluetooth規格による無線で実現し、公知の携帯電話、携帯端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の無線装置で情報伝達を行えるよう構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、制御装置8により測位される自車位置に基づいて走行ルートを取得する構成について説明したが、これに限定されず、移動局による衛星からの情報に基づく車両位置を基準局側に送信し、基準局4にて、基準局の情報と車両位置とに基づいて車両位置を演算する構成とすることができる。すなわち、基準局4側に車両位置演算手段を設けても良い。この場合には、走行ルート等の情報を基準局側にて蓄積することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】車両の走行制御装置の全体を示す概略構成図
【図2】走行制御ルーチンのフローチャート
【図3】ルートの表示例を示す説明図
【図4】各ケースでの学習ルートの更新方法を示す説明図
【図5】自動操縦制御の自動操舵サブルーチンのフローチャート
【図6】自動操舵の原理の説明図
【符号の説明】
【0055】
1 … 車両(自車両、移動局)
2 … 車両制御装置
3 … 人工衛星
4 … 基準局
8 … 制御装置(車両位置演算手段、走行制御ルート学習手段、自動操縦制御手段、制御選択手段)
11 … 操作スイッチ
14 … 液晶ディスプレイ(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め位置が求められた基準点に設置し、衛星からの情報を基に補正情報を求めて予め設定する領域内に送信する基準局と、
車両に搭載され、上記衛星からの情報に基づき車両位置を演算する移動局と、
上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記基準局の情報と上記車両位置とから該車両位置を補正演算する車両位置演算手段と、
上記自車位置に基づいて上記車両が走行する走行ルートを取得し、当該取得した走行ルートに基づいて上記車両に対する走行制御ルートを学習する走行制御ルート学習手段と、
上記基準局と上記移動局との通信が確立した際に、上記走行制御ルート学習手段で学習した各走行制御ルートの中から利用可能な所定の走行制御ルートを選択して目標進行路に設定し、上記車両位置に基づき、上記車両を上記目標進行路に沿って自動操縦制御する自動操縦制御手段と、
上記走行制御ルート学習手段による走行制御ルートの学習制御、或いは、上記自動操縦制御手段による自動操縦制御の何れかを、予め設定された条件に従って選択して実行させる制御選択手段とを備え、
上記制御選択手段は、ユーザによって上記走行制御ルート学習手段による走行制御ルートの学習制御が選択されている場合には、当該走行制御ルートの学習制御を優先的に選択して実行させることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
上記走行制御ルート学習手段は、取得した上記走行ルートに対応する上記走行制御ルートが存在する場合の学習モードとして、予め設定された条件に従って上記走行制御ルートを自動学習する自動学習モードを有し、
上記自動学習モードは、
取得した上記走行ルートに対応する上記走行制御ルートを学習要素として抽出し、上記走行ルートの全域が抽出した上記走行制御ルート基準の予め設定した閾値幅内に存在するとき上記走行ルートの全域と上記走行制御ルートの全域とを合成学習する全域合成学習モードと、
取得した上記走行ルートに対応する上記走行制御ルートを学習要素として抽出し、上記走行ルートの一部が抽出した上記走行制御ルート基準の予め設定した閾値幅外に存在するとき、上記閾値幅内に存在する上記走行ルートと上記走行制御ルートとを合成学習するとともに、上記閾値幅外に存在する上記走行ルートを新規の走行制御ルートとして学習する一部合成学習モードとを有することを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
上記走行制御ルート学習手段は、取得した上記走行ルートに対応する上記走行制御ルートが存在する場合の学習モードとして、
ユーザ選択された上記走行制御ルートを学習要素として抽出し、上記走行ルートの一部が抽出した上記走行制御ルート基準の予め設定した閾値外に存在する場合であっても、上記走行ルートの全域を上記走行制御ルートと合成学習する強制学習モードを有することを特徴とする請求項2記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
上記走行制御ルート学習手段で学習した上記各走行制御ルートを表示する表示手段を有し、
上記走行制御ルート学習手段は、予め設定した回数以上学習した上記走行制御ルートを、上記自動操縦制御手段で自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートとして設定し、
上記表示手段は、上記走行制御ルート学習手段で自動操縦制御に適用可能な走行制御ルートとして設定された上記走行制御ルートを、他の上記走行制御ルートと異なる形態で表示することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の車両の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−322752(P2006−322752A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144481(P2005−144481)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】