説明

車両構造

【課題】ランプ前面が歩行者の膝部に対して体側面側から衝突しても、膝部の傷害値を軽減できる車両構造を提供する。
【解決手段】ランプ前面4が車両前面の一部を形成するヘッドランプユニットAとヘッドランプユニットAを車体Bに支持する支持部6とのうちの少なくともいずれか一方に、ランプ前面4の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットAの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように脆弱部10を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ前面が車両前面の一部を形成するヘッドランプユニットと前記ヘッドランプユニットを車体に支持する支持部とのうちの少なくともいずれか一方に、前記ランプ前面の他物との衝突時に、前記ヘッドランプユニットが車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてある車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記車両構造は、走行中におけるランプ前面の他物との衝突時に、他物に与える衝撃を緩和することができるように、ヘッドランプユニットとヘッドランプユニットを車体に支持する支持部とのうちの少なくともいずれか一方に、ヘッドランプユニットが車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてある。
従来の上記車両構造では、ランプ前面の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットの全体が車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてある(例えば、特許文献1参照)。
したがって、ランプ前面が歩行者の膝部に対して体側面側から衝突する衝突時に、ヘッドランプユニットの全体が車両後方側に向けて変位するので、膝部に与える衝撃を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−233121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両構造では、ランプ前面が歩行者の膝部に対して体側面側から衝突する衝突時に、ヘッドランプユニットの全体が車両後方側に向けて変位するので、図7(a)に例示するようにランプ前面4が歩行者20の膝部23に対して体側面側から衝突した後、車両の更なる移動に伴って、歩行者20の下腿部22が車両から離間する方向に向けて跳ね上げられるタイミングが、上腿部21が車両の側に倒れ込むタイミングよりも遅くなって、下腿部22の動きが上腿部21の動きに追い付き難く、その結果、図7 (b)に例示するように、歩行者20の下腿部22が車両から離間する方向に向けて跳ね上げられる前に上腿部21が車両の側に横向きに倒れ込んで、上腿部21と下腿部22との屈曲角度θが大きくなり、膝部23に与える傷害の大きさ(傷害値)が大きくなるおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、ランプ前面が歩行者の膝部に対して体側面側から衝突しても、膝部の傷害値を軽減できる車両構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、ランプ前面が車両前面の一部を形成するヘッドランプユニットと前記ヘッドランプユニットを車体に支持する支持部とのうちの少なくともいずれか一方に、前記ランプ前面の他物との衝突時に、前記ヘッドランプユニットが車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてある車両構造であって、前記衝突時に、前記ヘッドランプユニットの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように前記脆弱部を設けてある点にある。
【0006】
本構成の車両構造は、ランプ前面の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてある。
このため、図5(a)に例示するようにランプ前面4が歩行者20の膝部23に対して体側面側から衝突した後、車両の更なる移動に伴ってヘッドランプユニットAの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位することにより、膝部23がランプ前面4の車両後方側に向けての変位に追従して移動し易い。その結果、図5(b)に例示するように従来よりも早いタイミングで下腿部22が車両から離間する方向に向けて跳ね上げられ易くなる。
また、上腿部21は衝突時にヘッドランプユニットAの上側部分に支持されるので、上腿部21が車両の側に倒れ込む速度が抑えられる。その結果、従来よりも早いタイミングで車両から離間する方向に向けて跳ね上げられる下腿部22の動きが、車両の側に倒れ込む速度が押さえられた上腿部21の動きに追い付き易くなり、上腿部21と下腿部22との屈曲角度θが大きくなり難い。
したがって、ランプ前面が歩行者の膝部に対して体側面側から衝突しても、上腿部と下腿部との屈曲角度が大きくなり難く、膝部の傷害値を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両前面を示す正面図である。
【図2】車両前部を示す側面図である。
【図3】ヘッドランプユニットの固定構造の正面図である。
【図4】(a)はヘッドランプユニットの固定構造を一側方から見た斜視図、(b)はヘッドランプユニットの固定構造を他側方から見た斜視図である。
【図5】本発明の車両構造における、ランプ前面が歩行者の膝部に衝突した時の状況を説明する説明図である。
【図6】第2実施形態の車両構造を示し、(a)はヘッドランプユニットの固定構造を一側方から見た斜視図、(b)はヘッドランプユニットの固定構造を他側方から見た斜視図である。
【図7】従来の車両構造における、ランプ前面が歩行者の膝部に衝突した時の状況を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、自動車における本発明による車両構造を示す。
車両構造は、図1,図2に示すように、車両前部にフードアウターパネル1とフロントバンパー2と前輪3aを囲むフロントフェンダパネル3とを有し、ヘッドランプユニットAのランプ前面を形成するレンズ4をフロントフェンダパネル3に形成した開口部12から外方に臨ませて、レンズ4で車両前面の一部を形成してある。
【0009】
ヘッドランプユニットAは、図3,図4に示すように、樹脂製のレンズ4と、そのレンズ4の外周部を保持する樹脂製のランプハウジング5とを備え、ランプハウジング5を介して車体Bに支持してある。
尚、図3は、車両前部の運転席から見て右側のヘッドランプユニットAを、斜め前方上方から見た図である。
レンズ4は、車体に対する取付姿勢が車両後方側ほど車両前方側よりも高い後傾姿勢となるようにランプハウジング5に保持されている。
【0010】
ヘッドランプユニットAを車体Bに支持するユニット支持部6は、ヘッドランプユニットA(ランプハウジング5)の上部の一箇所を支持する一つの上部支持部6aと、ヘッドランプユニットA(ランプハウジング5)の下部の左右二箇所を支持する二つの下部支持部6bとで構成してある。
【0011】
上部支持部6aは、ランプハウジング5に設けてある樹脂製の上部取付脚7aを、車体Bの側に設けた上部固定用ブラケット8aにビス9aで固定してある。
二つの下部支持部6bの夫々は、ランプハウジング5に設けてある樹脂製の下部取付脚7bを、車体Bの側に設けた下部固定用ブラケット8bにビス9bで固定してある。
上部固定用ブラケット8a及び下部固定用ブラケット8bの夫々は、具体的には車体Bを構成するフロントフェンダやフロントエプロンなどに一体に設けてある。
【0012】
ユニット支持部6には、レンズ(ランプ前面)4の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットAの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように脆弱部10を設けてある。
【0013】
すなわち、レンズ4の他物との衝突時に一つの上部支持部6aに作用する上部衝突荷重と二つの下部支持部6bの夫々に作用する下部衝突荷重とを想定し、想定した上部衝突荷重では上部支持部6aが破断せず、かつ、想定した下部衝突荷重では二つの下部支持部6bの夫々が塑性変形又は破断して、ヘッドランプユニットAの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように脆弱部10を設けてある。
【0014】
具体的には、上部支持部6aは、想定した上部衝突荷重では破断しない強度を有する上部取付脚7aと上部固定用ブラケット8aとを設けて構成してあり、二つの下部支持部6bの夫々は、取付脚長手方向中間部において取付脚幅方向に沿って横断する一連の凹溝11を形成することにより肉厚が薄い薄肉部分(脆弱部)10を設けて、想定した下部衝突荷重で薄肉部分10に沿って塑性変形又は破断する下部取付脚7bを設けてある。
【0015】
したがって、図5に示すように、レンズ(ランプ前面)4が歩行者20の膝部23に対して体側面側から衝突すると(図5(a))、下部取付脚7bの夫々が上部取付脚7aに先行して塑性変形又は破断して、ヘッドランプユニットAの下側部分が上側部分に先行する車両後方側に向けての変位を開始する。
【0016】
そして、衝突開始後の車両の更なる移動に伴って、図5(b)に示すように、膝部23が体側面側からレンズ4に沿って開口部12に入り込んで、従来よりも早いタイミングで下腿部22が車両から離間する方向に向けて跳ね上げられ、上腿部21と下腿部22との屈曲角度θを小さくして、膝部23の傷害値を軽減できる。
【0017】
尚、図示しないが、上部支持部6aの上部取付脚7aに、想定した上部衝突荷重よりも大きい荷重で塑性変形又は破断するように脆弱部を設けてあってもよい。
この場合、下部取付脚7bの夫々に設ける脆弱部は、上部取付脚7aに設ける脆弱部よりも小さな衝突荷重で塑性変形又は破断するように設けておく。
【0018】
〔第2実施形態〕
図6は、自動車における本発明による車両構造の別実施形態を示す。
本実施形態では、上部支持部6aは、想定した上部衝突荷重では破断しない強度を有する上部取付脚7aと上部固定用ブラケット8aを設け、二つの下部支持部6bの夫々は、第1実施形態において下部取付脚7bに形成した凹溝11に代えて、下部固定用ブラケット8bの長手方向中間部において幅方向に沿って横断する一連の凹溝11を形成することにより肉厚が薄い薄肉部分(脆弱部)10を設けて、想定した下部衝突荷重で薄肉部分10に沿って塑性変形又は破断する下部固定用ブラケット8bを設けてある。
【0019】
尚、図示しないが、上部支持部6aの上部固定用ブラケット8aに、想定した上部衝突荷重よりも大きい荷重で塑性変形又は破断するように脆弱部を設けてあってもよい。
この場合、下部固定用ブラケット8bの夫々に設ける脆弱部は、上部固定用ブラケット8aに設ける脆弱部よりも小さな衝突荷重で塑性変形又は破断するように設けておく。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0020】
〔第3実施形態〕
図示しないが、ランプ前面(レンズ)の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットのうちの一部、例えばレンズの下側部分がレンズの上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように、ヘッドランプユニットの例えばレンズ自体やレンズとランプハウジングとの固定部などに脆弱部を設けてあってもよい。
【0021】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による車両構造は、ヘッドランプユニットとヘッドランプユニットを車体に支持する支持部との双方に、ランプ前面の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてあってもよい。
2.本発明による車両構造は、ランプ前面の車体に対する取付姿勢が車両後方側に向けて後傾しないヘッドランプユニットとヘッドランプユニットを車体に支持する支持部とのうちの少なくともいずれか一方に、ランプ前面の他物との衝突時に、ヘッドランプユニットが車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてあってもよい。
3.本発明による車両構造は、凹溝11を形成してある脆弱部10に限らず、例えば切り込み(スリット)や貫通孔或いは凹みを形成したり、下部支持部6bの下部取付脚7bや下部固定用ブラケット8b自体の形状を長手方向中間部で細い形状に形成してある脆弱部10を設けてあってもよい。
【符号の説明】
【0022】
4 ランプ前面
6 支持部
10 脆弱部
A ヘッドランプユニット
B 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ前面が車両前面の一部を形成するヘッドランプユニットと前記ヘッドランプユニットを車体に支持する支持部とのうちの少なくともいずれか一方に、前記ランプ前面の他物との衝突時に、前記ヘッドランプユニットが車両後方側に向けて変位するように脆弱部を設けてある車両構造であって、
前記衝突時に、前記ヘッドランプユニットの下側部分が上側部分に先行して車両後方側に向けて変位するように前記脆弱部を設けてある車両構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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