説明

車両用シート

【課題】シートクッションのチップアップ状態でオットマンが邪魔になることを抑制できる車両用シートを得る。
【解決手段】本車両用シート10では、シートクッション12を支持するベース部16とオットマン18との間に連動機構100の構成部材であるリンク部材104が掛け渡されており、シートクッション12のチップアップに連動してオットマン18がシートクッションの下面側へと回転される。これにより、シートクッションがチップアップした状態でオットマンが邪魔になることを抑制できる。しかも、シートクッションのチップアップとオットマンの回転とが連動するので、操作性が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップアップ機構及びオットマンを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートクッションをシートバックに向けて跳ね上げ(チップアップ)可能とされた自動車用チップアップ式シートが示されている。
【0003】
下記特許文献2には、シートクッションの前座部をオットマン風のフットレストとして使用可能とされた自動車用シートが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−74051号公報
【特許文献2】特開2003−237450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チップアップ機構とオットマンの両方を備えた車両用シートでは、シートクッションがシートバックに向けて跳ね上げられたチップアップ状態において、オットマンが邪魔になることが考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、シートクッションのチップアップ状態でオットマンが邪魔になることを抑制できる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、車体床部に支持されるベース部と、前記ベース部に連結された後端側を中心としてチップアップ可能とされたシートクッションと、前記シートクッションの前端側に連結された上端側を中心として前後に回転可能とされたオットマンと、前記ベース部と前記オットマンとの間に掛け渡されたリンク部材を有し、前記シートクッションのチップアップに連動して前記オットマンを前記シートクッションの後端側へ回転させる連動機構と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートクッションを支持するベース部とオットマンとの間に連動機構のリンク部材が掛け渡されており、シートクッションがチップアップされると、シートクッションの前端側に上端側が連結されたオットマンが、シートクッションの後端側(下面側)へ回転される。これにより、シートクッションがチップアップした状態でオットマンが邪魔になることを抑制できる。しかも、シートクッションのチップアップとオットマンの回転とが連動するので、操作性が良好である。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記オットマンは、乗員の下腿部を支持するためのオットマン本体から延出され、前記シートクッションが備えるシートクッションフレームの前端部に回転可能に連結されると共に、前記連動機構が備える付勢部材によって前記シートクッションの後端側へ付勢されたオットマンブラケットと、前記オットマン本体が前記シートクッションの前方側へ延びる状態で前記オットマンブラケットを保持するロック機構と、前記オットマンブラケットに対して所定範囲回転可能に設けられると共に前記リンク部材が連結され、前記シートクッションのチップアップ時に回転されることにより前記ロック機構と係合して前記保持を解除するオットマン側リンク部材と、を有している。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートでは、オットマンブラケットを介してシートクッションフレームの前端部に連結されたオットマン本体がシートクッションの前方側へ延びる状態で、ロック機構がオットマンブラケットを保持する。これにより、オットマンが使用可能になる。この状態で、シートクッションがチップアップすると、連動機構のリンク部材が連結されたオットマン側リンク部材が回転される。これにより、オットマン側リンク部材がロック機構と係合して、ロック機構によるオットマンブラケットの保持が解除される。その結果、オットマンブラケットすなわちオットマン本体が付勢部材の付勢力によってシートクッションの後端側(下面側)へ回転される。このように、本発明では、オットマンが使用可能な位置に位置する状態であっても、シートクッションのチップアップに連動してオットマンをシートクッションの後端側へ回転させることができるので、操作性を一層良好にすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ロック機構は、前記シートクッションフレームの前端部に取り付けられると共に前記オットマンブラケットに形成された歯と噛合うラッチを有し、前記ラッチに対する前記歯の噛合い位置を変更可能とされることにより、前記シートクッションフレームに対する前記オットマンブラケットの保持位置を複数段に調整可能とされており、前記オットマン側リンク部材には、前記シートクッションのチップアップ時に前記ラッチと係合して前記噛合いを解除する係合部が設けられている。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートでは、シートクッションフレームの前端部に取付けられたラッチが、オットマンのオットマンブラケットに形成された歯と噛合う。これにより、オットマン本体がシートクッションの前方側へ延びる状態で、オットマンブラケットが保持される。上述のラッチは、オットマンブラケットの歯との噛合い位置を変更可能とされており、これにより、シートクッションフレームに対するオットマンブラケットの保持位置、すなわちシートクッションに対するオットマン本体の調整位置を複数段に調整可能とされている。したがって、オットマンの使用時における乗員の快適性を向上させることができる。一方、シートクッションがチップアップされると、連動機構のリンク部材に連結されたオットマン側リンク部材が回転され、オットマン側リンク部材に設けられた係合部がラッチと係合する。これにより、オットマンブラケットの歯に対するラッチの噛合い状態が解除されるので、ラッチによるオットマンブラケットの保持を簡単な構成で解除することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、シートクッションのチップアップ状態でオットマンが邪魔になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの構成を示す斜視図である。
【図2】オットマンが展開した状態を示す図1に対応した斜視図である。
【図3】シートクッションがチップアップすると共にオットマンが格納された状態を示す図1に対応した斜視図である。
【図4】図1に示される車両用シートの構成部材であるシートクッションフレーム及びオットマンの主要部の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示される構成の一部を異なる角度から拡大して示す斜視図である。
【図6】図4に示される構成の一部を分解した状態で示す分解斜視図である。
【図7】同車両用シートのオットマンブラケットがラッチによりロックされた状態を示す側面図である。
【図8】ラッチによるオットマンブラケットのロックが解除される際の状況を説明するための図7に対応した側面図である。
【図9】ロックが解除されたオットマンブラケットが通常収納位置へ復帰される際の状況を説明するための図7に対応した側面図である。
【図10】シートクッションフレームがチップアップされると共にオットマンブラケットが格納位置へ回転された状態を示す図7に対応した側面図である。
【図11】オットマンブラケットが格納位置から通常使用位置へ復帰される際の状況を説明するための図7に対応した側面図である。
【図12】ラッチによりロックされたオットマンブラケットがオットマン側リンク部材の回転によってロックを解除される際の状況を説明するための図7に対応した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図13を用いて本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印OUTは車両幅方向外方を示している。
【0016】
<構成>
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、シートクッション12(座部)をシートバック14(背凭れ部)に向けて跳ね上げ可能とされたチップアップ式の車両用シートであり、図示しない車体床部に支持されたベース部16と、シートクッション12の前端側に連結されたオットマン18とを備えている。ベース部16は、ロアフレーム20(図1参照)と、ロアフレーム20の左右両側に設けられたサイドカバー22と、ロアフレーム20の前方側に設けられたフロントカバー24とを有している。
【0017】
ロアフレーム20の下端部は、前後スライド機構を構成する左右一対のスライドレールを介して車体床部(何れも図示省略)に連結されており、ロアフレーム20は、車体床部に対して前後にスライド可能とされている。このロアフレーム20には、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム(図示省略)の下端部が周知のリクライニング機構26を介して連結されている。
【0018】
また、このロアフレーム20には、シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム28(図3〜図6参照)の後端側が周知のチップアップ機構30を介して連結されている。シートクッションフレーム28は、図4に示されるように、略U字状に曲げ加工されたパイプ材からなるフレーム本体32を備えている。フレーム本体32は、左右のサイド部32Aと、左右のサイド部32Aの前端部間をシート幅方向に沿って連結したフロント部32Bとによって構成されている。
【0019】
フロント部32Bには、オットマン18を連結するための左右一対の連結部34が接合されている。これらの連結部34は、板金材料によって形成されており、板厚方向がシート幅方向に沿う状態でシート幅方向に並んで配置されており、フロント部32Bからシートクッション12の前方側へ向けて突出している。また、上述のフレーム本体32には、複数のワイヤによって格子状に形成されたワイヤフレーム36(図5及び図6参照。図4では図示省略)が接合されると共に、図3に示されるように、表皮38によって覆われた図示しないパッドが取り付けられている。
【0020】
フレーム本体32における左右のサイド部32Aの後端側は、チップアップ機構30が備える図示しないヒンジ部を介してロアフレーム20に連結されている。これにより、シートクッションフレーム28は、シート幅方向に沿った軸線S1(図4参照)回りに回転可能にロアフレーム20に連結されており、シートクッション12は、図1及び図2に示される通常位置と、図3に示されるチップアップ位置との間でベース部16に対して回転可能とされている。
【0021】
また、上述のチップアップ機構30は、図1に示されるように、シートクッション12を通常位置に拘束するロック機構42と、当該ロック機構42にケーブル46を介して連結されたチップアップレバー48とを備えている。このチップアップレバー48が操作されると、ロック機構42による上記拘束が解除され、シートクッション12が図示しないスプリングの付勢力によって、図3に示されるチップアップ位置へと跳ね上げられる構成になっている。
【0022】
一方、オットマン18は、ラチェット機構を採用したマニュアル式のオットマンであり、着座乗員の下腿部を支持するためのオットマン本体50を備えている。オットマン本体50は、板金材料等によって長尺な角盆状(浅底な箱状)に形成されたフレーム52(図6参照)を有している。このフレーム52は、長手方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、このフレーム52の表面側には、表皮54(図1〜図3参照)によって覆われた図示しないパッドが取り付けられている。
【0023】
フレーム52の裏面側には、左右一対のオットマンブラケット56(図4〜図6参照)が配置されている。左右のオットマンブラケット56は、板金材料等によって形成されたものであり、シート幅方向から見て略く字状(略L字状)に形成されたアーム部56Aと、アーム部56Aの長手方向一端部(下端部)からシート幅方向外側へ延出された固定部56Bとを備えている。左右のオットマンブラケット56の固定部56Bに対応してフレーム52の長手方向両端側の裏面には、上下一対のボルト58(図6参照)が固定されている。これらのボルト58は、固定部56Bに形成された上下一対の貫通孔60に挿通されると共にナット62に螺合している。これにより、各オットマンブラケット56のアーム部56Aがオットマン本体50の上方側へ延びる状態で各オットマンブラケット56がフレーム52の裏面に固定されている。なお、本実施形態では、オットマンブラケット56がフレーム52と別体に形成されたフレーム52に固定された構成にしたが、これに限らず、オットマンブラケット56とフレーム52が一体に形成された構成にしてもよい。
【0024】
図6に示されるように、アーム部56Aの長手方向他端部には、シート幅方向から見て円形状に形成された軸受部56Cが設けられている。この軸受部56Cの中央部には、円形の貫通孔64が形成されており、当該貫通孔64には段付ボルト66が挿通されている。この段付ボルト66は、シートクッションフレーム28の連結部34に形成された円形の貫通孔68にシート幅方向内側から挿通されており、連結部34のシート幅方向外側に配置されたナット70(図4及び図5参照)に螺合している。これにより、オットマンブラケット56の長手方向他端部が段付ボルト66回り(シート幅方向に沿った軸線回り)に回転可能に連結部34に連結されており、オットマン18はシートクッション12の前端側に連結された上端側を中心として前後に回転可能とされている。なお、連結部34には、貫通孔68の孔縁部からシート幅方向内側へ延びる円筒状のカラー72が設けられており、当該カラー72の先端がアーム部56Aに当接している。
【0025】
上記カラー72の上方で連結部34には、ロック機構75の一部を構成する支軸部74が設けられている。この支軸部74は、段付の円柱状に形成されており、連結部34からシート幅方向内側へ突出している。この支軸部74には、ロック機構75の構成部材であるラッチ76が取り付けられている。ラッチ76は、シート幅方向から見て円弧状に湾曲しており、湾曲方向中央部に形成された円形の貫通孔78に支軸部74の小径部74Aが挿入されている。これにより、ラッチ76は、支軸部74を介して連結部34に支持されている。また、小径部74Aの先端側には雄ねじが形成されており、当該雄ねじにナット80が螺合することにより、支軸部74からのラッチ76の脱落が防止されている。このラッチ76の湾曲方向一端側の上面には、凸部76A及び凹部76Bが形成されており、ラッチ76の湾曲方向一端部の下面には、凸部76Cが形成されている。また、ラッチ76の湾曲方向他端側の下面には、ラチェット歯76D及び段部76Eが形成されている。
【0026】
上述のラッチ76は、ラチェット歯76Dがオットマンブラケット56の軸受部56Cの外周面に当接するロック位置と、ラチェット歯76Dが軸受部56Cの外周面から離間するアンロック位置との間で支軸部74回りに回転可能とされている。このラッチ76と連結部34との間には、ラッチスプリング82が掛け渡されている。このラッチスプリング82は、ラッチ76がロック位置とアンロック位置との間の中央位置よりもロック位置側に位置する状態では、ラッチ76をロック位置へと付勢し、ラッチ76が上記中央位置よりもアンロック位置側に位置する状態ではラッチ76をアンロック位置へと付勢する構成になっている。
【0027】
上述のラチェット歯76Dに対応して軸受部56Cの外周面には、ラチェット歯76Dと噛合可能とされたラチェット歯56Dが形成されている。このラチェット歯56Dは、オットマンブラケット56が連結部34に対して所定の角度範囲内(図7に実線で示される位置と図8に二点鎖線で示される位置との間)に位置するときに、ラチェット歯76Dと対向するように形成されている。したがって、ラッチ76がロック位置に位置する状態で、オットマンブラケット56が上記角度範囲内に回転されると、ラッチ76のラチェット歯76Dがオットマンブラケット56のラチェット歯56Dに噛合うようになっている。そして、この噛合い状態では、下方側へのオットマンブラケット56の回転が規制される一方、上方側へのオットマンブラケット56の回転が許容されるように、ラチェット歯76D、56Dの形状が設定されている。また、上記角度範囲内では、ラチェット歯76Dに対するラチェット歯56Dの噛合い位置を複数段に変更可能とされている。
【0028】
上述の噛合い状態では、図2に示されるように、オットマン18がシートクッション12の前方側へ延びる状態(以下、展開状態という)で、オットマンブラケット56がラッチ76により保持される。これにより、シートクッション12に着座した乗員の下腿部をオットマン18によって支持することが可能になる。また、上述の如くラチェット歯76Dに対するラチェット歯56Dの噛合い位置を複数段に変更可能とされているため、シートクッション12に対するオットマン18の調整位置(傾斜角度)を複数段に調整できるようになっている(図2の矢印A参照)。
【0029】
また、図6に示されるように、オットマンブラケット56の軸受部56Cには、ラチェット歯56Dの一側に凸部56Eが形成されている。この凸部56Eは、ラッチ76がロック位置に位置する状態で、オットマンブラケット56が図8に二点鎖線で示される位置から図8に実線で示される位置へ回転される際にラッチ76の段部76Eに当る。これにより、ラッチ76がロック位置からアンロック位置へと跳ね上げられ、ラッチ76によるオットマンブラケット56の上記回転規制が解除されるようになっている。また、この凸部56Eは、ラッチ76がアンロック位置に位置する状態で、オットマンブラケット56が図9に二点鎖線で示される位置から図9に実線で示される位置へと回転される際にラッチ76の凸部76Cに当る。これにより、ラッチ76がアンロック位置からロック位置へと回転されるようになっている。なお、この際には、軸受部56Cのラチェット歯56Dがラッチ76のラチェット歯76Dと対向しない位置までオットマンブラケット56が回転しており、オットマンブラケット56の回転がラッチ76によって規制されないようになっている。
【0030】
一方、図4及び図5に示されるように、左右のオットマンブラケット56のシート幅方向内側には、それぞれオットマン側リンク部材86が設けられている。オットマン側リンク部材86は、板金材料によって長尺状に形成されており、長手方向一端部には、円形の貫通孔88(図6参照)が形成されている。この貫通孔88には、リング状のブッシュ90が嵌合しており、当該ブッシュ90の内側には、前述した段付ボルト66が挿通されている。これにより、オットマン側リンク部材86は、段付ボルト66回り、すなわちオットマンブラケット56の回転中心回りに回転可能に連結部34に支持されている。なお、オットマン側リンク部材86には、貫通孔88の孔縁部からシート幅方向外側へ延びる円筒状のカラー92が設けられており、当該カラー92の先端がオットマンブラケット56に当接している。
【0031】
オットマン側リンク部材86の長手方向一端部には、オットマンブラケット56側へ突出した円柱状のピン94(係合部)が固定されている。このピン94は、オットマン側リンク部材86が連結部34に対して相対回転した際に、段付ボルト66回りを旋回する。このピン94は、オットマン側リンク部材86が連結部34から略下方側へ延びる位置(図7〜図9に示される位置)に位置する状態では、ラッチ76の凹部76Bと対向して配置される。この状態では、アンロック位置からロック位置へのラッチ76の回転が許容されるようになっており、ラッチ76がロック位置に位置する状態では、凹部76B内にピン94が入り込むようになっている(図7参照)。このピン94は、ラッチ76がロック位置へ位置する状態で、オットマン側リンク部材86が図10に示される位置から図11に実線で示される位置へ回転される際にラッチ76の凸部76Aに当るようになっている。これにより、ラッチ76がロック位置からアンロック位置へと回転される。但し、その直後にオットマン側ブラケット56の凸部56Eがラッチ76の凸部76Cに当ることにより、ラッチ76はアンロック位置から再びロック位置へと回転されるようになっている。また、このラッチ76は、オットマン側リンク部材86が図11に実線で示される位置に位置し、且つラッチ76がロック位置に位置する状態で、オットマン側リンク部材86がシートクッションフレーム28の後端側へ回転すると、図12に示されるように、ピン94によってラッチ76の凸部76Aが押されることにより、ラッチ76がアンロック位置へと回転されるようになっている。
【0032】
また、オットマン側リンク部材86の長手方向一端部には、シート幅方向から見て円弧状に湾曲した長孔96が、貫通孔88と同心状に形成されている。この長孔96に対応してアーム部56Aの長手方向他端部には、円柱状のピン98(図6参照)が固定されている。このピン98は、アーム部56Aの長手方向他端部からシート幅方向内側へ延びている。このピン98には、円筒状のブッシュ90が回転可能に支持されており、当該ブッシュ90が長孔96に挿入されている。これにより、オットマン側リンク部材86に対するオットマンブラケット56の回転範囲が長孔96の範囲内に制限されている(オットマンブラケット56とオットマン側リンク部材86とが長孔96の範囲内で相対回転可能とされている)。
【0033】
また、図5及び図6に示されるように、オットマンブラケット56とオットマン側リンク部材86との間には、連動機構100の構成部材である捩りコイルスプリング102が設けられている。この捩りコイルスプリング102は、前述したカラー92の周りに巻き回されており、巻き方向一端部がオットマンブラケット56に係止され、巻き方向他端部がオットマン側リンク部材86に係止されている。これにより、オットマンブラケット56は、オットマン側リンク部材86に対してブッシュ90が長孔96の湾曲方向一端部96Aと当接する方向へ付勢されている。
【0034】
上記構成のオットマン18と前述したベース部16との間には、連動機構100の構成部材である左右一対のリンク部材104が掛け渡されている。これらのリンク部材104は、板金材料等によって長尺状に形成されたものであり、長手方向一端部104Aが図示しないヒンジ部を介して前述したロアフレーム20に連結されている。これにより、各リンク部材104は、ベース部16に対してシート幅方向に沿った軸線S2(図4参照)回りに回転可能とされている。この軸線S2は、ベース部16に対するシートクッション12の回転軸線S1よりもシート前方側に設定されている。
【0035】
左右のリンク部材104の長手方向他端部104Bは、左右のオットマン側リンク部材86の長手方向他端部に連結されている。具体的には、図6に示されるように、オットマン側リンク部材86の長手方向他端部には、円形の貫通孔106が形成されており、当該貫通孔106には、円筒状のブッシュ108が嵌合している。このブッシュ108の内側には、ワッシャ110が装着された段付ボルト112が挿入されている。この段付ボルト112は、リンク部材104の長手方向他端部に形成された貫通孔に挿通されると共に、ナット114(図5参照)に螺合している。これにより、リンク部材104の長手方向他端部がオットマン側リンク部材86の長手方向他端部に段付ボルト112回り(シート幅方向に沿った軸線回り)に回転可能に連結されている。
【0036】
左右のリンク部材104は、シートクッション12(シートクッションフレーム28)が通常位置に位置する状態では、図4に実線で示されるように、シートクッションフレーム28の下方側で略シート前後方向に沿って配置される。この状態では、左右のオットマン側リンク部材86は、リンク部材104の長手方向他端部(前端部)からシート上方側へ延びるように略起立した姿勢になる(図7〜図9参照)。この状態からシートクッション12がチップアップ位置へと回転されると、左右のオットマン側リンク部材86の長手方向他端部が左右のリンク部材104に引っ張られて、左右のオットマン側リンク部材86がシートクッションフレーム28の後端側(下面側)へ回転されるようになっている(図4の二点鎖線及び図10参照)。一方、シートクッション12がチップアップ位置から通常位置へと回転されると、左右のオットマン側リンク部材86の長手方向他端部が左右のリンク部材104に押されてシートクッションフレーム28の前方側へ回転されるようになっている(図11参照)。
【0037】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
上記構成の車両用シート10では、シートクッション12に着座した乗員がオットマン18を使用する際には、乗員は捩りコイルスプリング102の付勢力に抗してオットマン18を図2に示される通常収納位置からシート前方側へ回転させればよい。これにより、オットマンブラケット56が図7に二点鎖線で示される位置から図7に実線で示される位置まで回転されると、ラッチ76のラチェット歯76Dが軸受部56Cのラチェット歯56Dと噛合う。これにより、シートクッション12の後端側へのオットマンブラケット56の回転が規制され、オットマン18が展開状態となる。
【0039】
但し、図7に実線で示される位置よりもシート前方側へのオットマンブラケット56の回転は許容されており、ラッチ76のラチェット歯76Dに対する軸受部56Cのラチェット歯56Dの噛合い位置を変更可能とされている。このため、乗員は、シートクッション12に対するオットマン18(オットマンブラケット56)の調整位置を図2(図7)に実線で示される位置と図2(図8)に二点鎖線で示される位置との間で複数段に調整することができる。これにより、オットマン18を使用する乗員の快適性を向上させることができる。
【0040】
一方、乗員がオットマン18の使用を止めてオットマン18を通常収納位置に収納する際には、乗員は、オットマン18を上方側へ回転させることにより、オットマンブラケット56を図8に実線で示される位置まで回転させればよい。これにより、オットマンブラケット56の凸部56Eがラッチ76の段部76Eに当ることによりラッチ76がアンロック位置へと跳ね上げられ、ラッチスプリング82によってアンロック位置に保持される。このため、オットマンブラケット56は、捩りコイルスプリング102の付勢力によってシート後方側(シート下方側)へ回転される。この回転の際には、図9に示されるように、オットマンブラケット56の凸部56Eがラッチ76の凸部76Cに当ることにより、ラッチ76がロック位置へと回転され、ラッチスプリング82によってロック位置に保持される。
【0041】
そして、図9に実線で示される位置までオットマンブラケット56が回転すると、オットマンブラケット56に支持されたブッシュ90がオットマン側リンク部材86の長孔96の湾曲方向一端部96Aに当接し、シート後方側へのオットマンブラケット56の回転が規制される。この状態では、オットマン18は、オットマンブラケット56に作用する捩りコイルスプリング102の付勢力によって通常収納位置に保持される。
【0042】
また一方、乗員がチップアップレバー48を操作することにより、シートクッション12が通常位置からチップアップ位置へと回転されると、オットマン側リンク部材86がリンク部材104に引っ張られてシートクッション12の下面側へと回転する。このため、長孔96の湾曲方向一端部96Aにブッシュ90が当接したオットマンブラケット56が、当該当接状態を維持したまま捩りコイルスプリング102の付勢力によってシートクッション12の下面側へ回転する(図10参照)。そして、シートクッション12がチップアップした状態(図3図示状態)では、オットマン18がシートクッション12の下面に接近した格納位置に保持される。
【0043】
したがって、オットマン18が通常収納位置に位置する状態(図1図示状態)のままでシートクッション12がチップアップされる場合と比較して、シートクッション12からのオットマン18の突出量が少なくなるので、オットマン18が邪魔になることを抑制できると共に、シートクッション12の車両前方側のスペースを拡大することができる。また、上述の如くシートクッション12のチップアップに連動して、オットマン18がシートクッション12の下面側に格納されるので、乗員はチップアップレバー48の操作という1つの動作を行うだけでよく、操作性が極めて良好である。
【0044】
しかも、上述の連動は、オットマン18が展開状態(図2図示状態)の場合でも、同様に実施される。すなわち、オットマン18の展開状態では、図12に示されるように、オットマンブラケット56がシートクッションフレーム28の前方側へ延びる位置でラッチ76により保持されている。この状態で、シートクッション12がチップアップされると、オットマン側リンク部材86がリンク部材104に引っ張られてシートクッションフレーム28の後端側へ回転する。この際、オットマン側リンク部材86に設けられたピン94が、ラッチ76の凸部76Aに当ることにより、ラッチ76がアンロック位置へと回転され、ラッチ76によるオットマンブラケット56の保持が解除される。これにより、オットマンブラケット56が捩りコイルスプリング102の付勢力によってシートクッション12の後端側へと回転する。この回転の際には、オットマンブラケット56の凸部56Eがラッチ76の凸部76Cに当ることにより、ラッチ76がロック位置へと回転される。そして、オットマン側リンク部材86の長孔96の湾曲方向一端部96Aに、オットマンブラケット56のブッシュ90が当接することにより、オットマン側リンク部材86に対するオットマンブラケット56の回転が規制され、図10に示される状態になる。しかも、上述のピン94は、ラッチ76のラチェット歯76Dと軸受部56Cのラチェット歯56Dとの噛合い位置に関わらず、ラッチ76の凸部76Aと係合する。したがって、オットマン18の調整位置に関わらず、シートクッション12のチップアップに連動してオットマン18を格納位置へと格納することができるので、乗員がチップアップ前にオットマン18を通常収納位置に戻す手間を省くことができる。これにより、操作性を一層良好にすることができる。
【0045】
一方、シートクッション12がチップアップ位置から通常位置へと回転されると、オットマン側リンク部材86がリンク部材104に押されてシートクッションフレーム28の前方側へと回転する。これにより、オットマン側リンク部材86の長孔96の湾曲方向一端部96Aにブッシュ90が当接したオットマンブラケット56が、オットマン側リンク部材86と共にシートクッションフレーム28の前方側へと回転される(図11参照)。その結果、オットマン18が格納位置から通常収納位置へと回転される。この回転の際には、オットマン側オットマンブラケット56のピン94がラッチ76の凸部76Aに当ることにより、ラッチ76が一旦アンロック位置へと跳ね上げられるが、その後に、オットマンブラケット56の凸部56Eがラッチ76の凸部76Cに当ることにより、ラッチ76が再びロック位置へと回転される。
【0046】
このように、本実施形態では、シートクッション12の通常位置への回転に連動して、オットマン18が格納位置から通常収納位置へと回転されるので、乗員がオットマン18を通常収納位置に回転させる手間を省くことができる。したがって、この点でも操作性を良好にすることができる。
【0047】
<実施形態の補足説明>
上記実施形態では、ラチェット式のロック機構42が採用された場合について説明したが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、ロック機構の構成は適宜変更することができる。例えば、ロックばね式のロック機構(例えば、特開2004−147791号公報参照)のような構成を採用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、シートクッションフレーム28に対するオットマンブラケット56の保持位置を複数段に調整可能とされた構成にしたが、これに限らず、オットマンブラケットの保持位置が1段だけ設定された構成にしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、オットマン18が、オットマン側リンク部材86や捩りコイルスプリング102(付勢部材)を備えた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、オットマン側リンク部材や付勢部材が省略されると共に、連動機構のリンク部材がオットマンのオットマンブラケットに直接連結された構成にしてもよい。このような構成でも、シートクッションのチップアップに連動してオットマンを回転させることができる。但しそのような構成において、オットマンをシートクッションの前方側へ展開させるためには、リンク部材を伸縮可能に構成する必要がある。
【0050】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用シート
12 シートクッション
18 オットマン
28 シートクッションフレーム
50 オットマン本体
56 オットマンブラケット
56D ラチェット歯(歯)
75 ロック機構
76 ラッチ
86 オットマン側リンク部材
94 ピン(係合部)
100 連動機構
102 捩りコイルスプリング(付勢部材)
104 リンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体床部に支持されるベース部と、
前記ベース部に連結された後端側を中心としてチップアップ可能とされたシートクッションと、
前記シートクッションの前端側に連結された上端側を中心として前後に回転可能とされたオットマンと、
前記ベース部と前記オットマンとの間に掛け渡されたリンク部材を有し、前記シートクッションのチップアップに連動して前記オットマンを前記シートクッションの後端側へ回転させる連動機構と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記オットマンは、
乗員の下腿部を支持するためのオットマン本体から延出され、前記シートクッションが備えるシートクッションフレームの前端部に回転可能に連結されると共に、前記連動機構が備える付勢部材によって前記シートクッションの後端側へ付勢されたオットマンブラケットと、
前記オットマン本体が前記シートクッションの前方側へ延びる状態で前記オットマンブラケットを保持するロック機構と、
前記オットマンブラケットに対して所定範囲回転可能に設けられると共に前記リンク部材が連結され、前記シートクッションのチップアップ時に回転されることにより前記ロック機構と係合して前記保持を解除するオットマン側リンク部材と、
を有する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記シートクッションフレームの前端部に取り付けられると共に前記オットマンブラケットに形成された歯と噛合うラッチを有し、前記ラッチに対する前記歯の噛合い位置を変更可能とされることにより、前記シートクッションフレームに対する前記オットマンブラケットの保持位置を複数段に調整可能とされており、
前記オットマン側リンク部材には、前記シートクッションのチップアップ時に前記ラッチと係合して前記噛合いを解除する係合部が設けられている請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−112128(P2013−112128A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259309(P2011−259309)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】