説明

車両用ブレーキ装置

【課題】 本発明は車両用ブレーキ装置に係り、ブレーキペダル後方の異物によりブレーキペダルが踏み込めないために起こる衝突事故等を防ぐ車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ブレーキペダルの裏側に装着され、ブレーキペダル裏側の異物の有無を検出する異物センサと、ブレーキペダルに装着され、ペダル踏力を検出するペダル歪みセンサと、異物センサとペダル歪みセンサの検出信号を入力するコントロールユニットと、制動力発生手段に掛かるブレーキ液圧を増加させるブレーキ液圧増加装置とを備え、コントロールユニットは、異物センサが異物を検出している間、ペダル歪みセンサが検出したペダル踏力に応じブレーキ液圧増加装置を作動させて制動力発生手段に掛かるブレーキ液圧を増加させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ブレーキ装置に係り、詳しくはブレーキトラブルによる事故の危険回避を図った車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両の速度を減速したり進行を止めたり、或いは停車中に道路の傾斜等によって車両が自然に動き出すのを防ぐ目的で、車両にはブレーキ装置が装着されている。
【0003】
従来、この種の車両用ブレーキ装置は、ブレーキペダル、マスタシリンダ(ブレーキ液圧発生源)、ホイールシリンダ(制動力発生手段)やブレーキ液を伝達する管路等から構成されている。
【0004】
そして、昨今では、小さなペダル踏力(ブレーキ踏力)で大きな制動力を得るためにブレーキ倍力装置(ブレーキ液圧発生手段)がブレーキ装置に搭載され、また、特許文献1には、ブレーキ倍力装置の機能低下時や重積載時に、所定の制動力を得るために必要とするペダル踏力を軽減してドライバーの負担を軽減する車両用ブレーキ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−278765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ブレーキペダルの裏側はドライバーから死角になり、このため、例えば飲み物の空き缶等の異物がブレーキペダルの裏側に転がっていても気が付くのが難しく、異物によりブレーキペダルが踏み込めないというトラブルから衝突事故等に繋がる虞があった。
【0007】
そして、特許文献1に開示された従来例にあっても、ブレーキペダルの後方に異物があった場合にはブレーキペダルが踏み込めず、十分な制動力を得ることができないために衝突事故等を回避することができないのが実情である。
【0008】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、ブレーキペダル後方の異物によりブレーキペダルが踏み込めないために起こる衝突事故等を防ぐ車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ブレーキペダルと、ブレーキペダルに対するペダル踏力に応じてブレーキ液圧発生源にブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段と、前記ブレーキ液圧発生源と連通されて各車輪に制動力を発生させる制動力発生手段とを備えた車両用ブレーキ装置であって、前記ブレーキペダルの裏側に装着され、ブレーキペダル裏側の異物の有無を検出する異物センサと、ブレーキペダルに装着され、ペダル踏力を検出するペダル歪みセンサと、異物センサとペダル歪みセンサの検出信号を入力するコントロールユニットと、前記制動力発生手段に掛かるブレーキ液圧を増加させるブレーキ液圧増加装置とを備え、前記コントロールユニットは、前記異物センサが異物を検出している間、前記ペダル歪みセンサが検出したペダル踏力に応じ前記ブレーキ液圧増加装置を作動させて、前記制動力発生手段に掛かるブレーキ液圧を増加させることを特徴とする。
【0010】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置に於て、前記ブレーキ液圧増加装置は、前記ブレーキ液圧発生源に作用してブレーキ液圧を増加させることを特徴とし、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置に於て、前記ブレーキ液圧増加装置は、前記ブレーキ液圧発生手段に作用してブレーキ液圧を増加させることを特徴とする。
【0011】
更に、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置に於て、ドライバーに警報を発する警報手段を備え、前記コントロールユニットは、前記異物センサが異物を検出している間、前記警報手段を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至請求項3に係る発明によれば、ブレーキペダル後方の異物によってブレーキペダルを十分に踏み込むことができなくても、ブレーキ液圧増加装置によりブレーキを効かせることができるため、異物の発見が走行中であっても安全に車両を停車させることができ、事故の危険回避を図ることができる利点を有する。
【0013】
そして、請求項4に係る発明によれば、警報手段によってブレーキペダル後方の異物の存在を知らせることができるので、ドライバーは走行前に異物の存在を知ることができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】請求項1、請求項2及び請求項4の一実施形態に係る車両用ブレーキ装置の概略構成図である。
【図2】請求項1、請求項3及び請求項4の一実施形態に係る車両用ブレーキ装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は請求項1、請求項2及び請求項4の一実施形態に係る車両用ブレーキ装置(以下、「ブレーキ装置」という)を示し、図中、1はブレーキペダル、3はブレーキ倍力装置(ブレーキ液圧発生手段)で、従来と同様、本実施形態に係るブレーキ装置5も、前記ブレーキペダル1と、ブレーキペダル1に対するペダル踏力に応じて図示しないマスタシリンダ(ブレーキ液圧発生源)にブレーキ液圧を発生させるブレーキ倍力装置3と、マスタシリンダと連通されて各車輪に制動力を発生させるホイールシリンダ(制動力発生手段)7と、マスタシリンダからホイールシリンダ7にブレーキ液を伝達する管路9等を備えており、管路9にはブレーキ液を溜めるブレーキ液タンク11が接続されている。
【0017】
そして、ブレーキペダル1の裏側には、ブレーキペダル1の後方の異物の有無を検出する異物センサ13が装着されており、該異物センサ13の検出信号はコントロールユニット15に送出されている。また、ブレーキペダル1には、ペダル踏力を検出するペダル歪みセンサ17が装着されており、該ペダル歪みセンサ17の検出信号もコントロールユニット15に送出されている。
【0018】
更に、前記管路9にブレーキ液圧増加装置19が接続されている。そして、前記コントロールユニット15は、前記異物センサ13がブレーキペダル1の後方に異物を検出すると、異物を検出している間、ブレーキ液圧増加装置19を作動させるようになっており、ブレーキ液圧増加装置19はマスタシリンダに作用して、コントロールユニット15の指示に従い、ペダル歪みセンサ17が検出したペダル踏力に応じホイールシリンダ7に掛かるブレーキ液圧を増加させて、走行中の車両を停車させるようになっている。
【0019】
また、スピードメータ内には警告灯(警報手段)21が装着されており、前記異物センサ13がブレーキペダル1の裏側に異物を検出すると、異物を検出している間、コントロールユニット15は警告灯21を点灯させるようになっている。
【0020】
そして、ブレーキペダル1の裏側から異物が除去されると、異物センサ13からの検出信号を入力したコントロールユニット15は、ペダル歪みセンサ17、ブレーキ液圧増加装置19、警告灯21の機能を夫々解除するようになっている。
【0021】
その他、図中、23は車両後部のストップランプをON/OFFするブレーキスイッチである。また、前記警告灯21に代え、または警告灯21と共に、ドライバーに警告音を発するアラーム(警報手段)を装着してもよい。
【0022】
本実施形態に係るブレーキ装置5はこのように構成されているから、例えば走行中に飲み物の空き缶がブレーキペダル1の裏側に転がってドライバーがこれに気付いていなくとも、異物センサ13がブレーキペダル1後方の空き缶の存在を検出して、コントロールユニット15に検出信号を送出する。
【0023】
すると、コントロールユニット15は、ペダル歪みセンサ17をON操作し、そして、異物センサ13がブレーキペダル1の後方に異物を検出している間、ブレーキ液圧増加装置19を作動させ、ブレーキ液圧増加装置19はマスタシリンダに作用して、コントロールユニット15の指示に従い、ブレーキペダル1を十分に踏み込むことができなくとも、ペダル歪みセンサ17が検出したペダル踏力に応じてホイールシリンダ7に掛かるブレーキ液圧を増加させると共に、警告灯21を点灯させることとなる。
【0024】
この結果、ブレーキペダル1の後方の空き缶によってブレーキペダル1を十分に踏み込むことができなくても、走行中の車両を停車させるだけのブレーキ力が得られ、車両は停車する。
【0025】
そして、ブレーキペダル1の裏側から異物が除去されると、異物センサ13からの検出信号を入力したコントロールユニット15の指令で、ペダル歪みセンサ17、ブレーキ液圧増加装置19、警告灯21の機能が解除される。
【0026】
このように本実施形態によれば、ブレーキペダル1後方の異物の存在を知らせるだけでなく、異物によるブレーキトラブル時でもブレーキ液圧増加装置19によりブレーキを効かせることができるため、異物の発見が走行中であっても安全に車両を停車させることができ、事故の危険回避を図ることができる利点を有する。
【0027】
また、警告灯21によってブレーキペダル後方の異物の存在を知らせることができるので、ドライバーは走行前に異物の存在を知ることができる利点を有する。
【0028】
図2は請求項1、請求項3及び請求項4の一実施形態に係るブレーキ装置を示し、以下、本実施形態を図面を基に説明するが、図1の実施形態と同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
【0029】
図中、25はプッシュロッドで、従来、プッシュロッドはブレーキペダルと連結されており、ブレーキペダルを踏み込むことでブレーキ倍力装置27に押し込まれ、ブレーキ倍力装置27はプッシュロッドからの押し込む力を倍増するが、本実施形態は、プッシュロッド25とブレーキペダル1との連結を解除している。
【0030】
そして、プッシュロッド25にはステップモータ(ブレーキ液圧増加装置)29が取り付けられており、通常走行時にコントロールユニット15は、ペダル歪みセンサ17が検出するペダル踏力に応じステップモータ29を作動させることで、プッシュロッド25を介してブレーキ倍力装置27を制御してマスタシリンダにブレーキ液圧を発生させるようになっている。従って、本実施形態ではペダル歪みセンサ17は常時作動状態にある。
【0031】
また、前記実施形態と同様、ブレーキペダル1の裏側には、ブレーキペダル1の後方の異物の有無を検出する異物センサ13が装着されているが、コントロールユニット15は、異物センサ13がブレーキペダル1の後方に異物を検出すると、異物を検出している間、ペダル歪みセンサ17が検出するペダル踏力に応じステップモータ29を作動させることで、プッシュロッド25を介してブレーキ倍力装置27を制御して、ブレーキペダル1を十分に踏み込むことができなくともホイールシリンダ7に掛かるブレーキ液圧を増加させて走行中の車両を停車させるようになっている。
【0032】
更に、前記実施形態と同様、コントロールユニット15は、異物センサ13がブレーキペダル1の裏側に異物を検出している間、警告灯21を点灯させるようになっている。
【0033】
そして、ブレーキペダル1の裏側から異物が除去されると、異物センサ13からの検出信号を入力したコントロールユニット15は、ステップモータ29を通常モードに復帰させるようになっている。
【0034】
本実施形態に係るブレーキ装置31はこのように構成されているから、例えば走行中に飲み物の空き缶がブレーキペダル1の裏側に転がってドライバーがこれに気付いていなくとも、異物センサ13がブレーキペダル1後方の空き缶の存在を検出して、コントロールユニット15に検出信号を送出する。
【0035】
すると、コントロールユニット15は、ペダル歪みセンサ17が検出するペダル踏力に応じステップモータ29を作動させることで、プッシュロッド25を介してブレーキ倍力装置27を制御し、ブレーキペダル1を十分に踏み込むことができなくともホイールシリンダ7に掛かるブレーキ液圧を増加させると共に、警告灯21を点灯させる。
【0036】
この結果、ブレーキペダル1の後方の空き缶によってブレーキペダル1を十分に踏み込むことができなくても、走行中の車両を停車させるだけのブレーキ力が得られ、車両は停車する。
【0037】
そして、ブレーキペダル1の裏側から異物が除去されると、異物センサ13からの検出信号を入力したコントロールユニット15の指令で、ステップモータ29は通常モードに復帰する。
【0038】
このように本実施形態によっても、ブレーキペダル1後方の異物の存在を知らせるだけでなく、異物によるブレーキトラブル時でもブレーキ液圧増加装置たるステップモータ29によってブレーキを効かせることができるため、異物の発見が走行中であっても安全に車両を停車させることができ、事故の危険回避を図ることができる利点を有する。
【0039】
そして、警告灯21によってブレーキペダル後方の異物の存在を知らせることができるので、ドライバーは走行前に異物の存在を知ることができる利点を有する。
【0040】
尚、従来、空気圧を油圧に変換すると共に、圧縮空気による倍力作用をもつブレーキ倍力装置たるハイドロリックエアサーボが知られているが、斯かる圧縮空気を制御するブレーキ液圧増加装置を用いてブレーキ倍力装置を制御することで、ホイールシリンダに掛かるブレーキ液圧を増加させてもよく、斯かる請求項1及び請求項3に係る実施形態によっても、既述した各実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ブレーキペダル
3、27 ブレーキ倍力装置
5、31 ブレーキ装置
7 ホイールシリンダ
9 管路
11 ブレーキ液タンク
13 異物センサ
15 コントロールユニット
17 ペダル歪みセンサ
19 ブレーキ液圧増加装置
21 警告灯
25 プッシュロッド
29 ステップモータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルと、
ブレーキペダルに対するペダル踏力に応じてブレーキ液圧発生源にブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段と、
前記ブレーキ液圧発生源と連通されて各車輪に制動力を発生させる制動力発生手段とを備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記ブレーキペダルの裏面側に装着され、ブレーキペダル裏面側の異物の有無を検出する異物センサと、
ブレーキペダルに装着され、ペダル踏力を検出するペダル歪みセンサと、
異物センサとペダル歪みセンサの検出信号を入力するコントロールユニットと、
前記制動力発生手段に掛かるブレーキ液圧を増加させるブレーキ液圧増加装置とを備え、 前記コントロールユニットは、前記異物センサが異物を検出している間、前記ペダル歪みセンサが検出したペダル踏力に応じ前記ブレーキ液圧増加装置を作動させて、前記制動力発生手段に掛かるブレーキ液圧を増加させることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ液圧増加装置は、前記ブレーキ液圧発生源に作用してブレーキ液圧を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記ブレーキ液圧増加装置は、前記ブレーキ液圧発生手段に作用してブレーキ液圧を増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
ドライバーに警報を発する警報手段を備え、
前記コントロールユニットは、前記異物センサが異物を検出している間、前記警報手段を作動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−126403(P2011−126403A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286084(P2009−286084)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】