説明

車両用充電リッド部構造

【課題】フロントバンパカバーの前面が車両後方へ変位するような変形がフロントバンパカバーに生じても、車体前部に影響を及ぼさない、又は、車体前部に与える影響を少なくできる車両用充電リッド部構造を得る。
【解決手段】本車両用充電リッド構造では、フロントバンパカバー40の前面42がインレットブラケット26に対して車両前方に離間している。このため、車両前方からの荷重でフロントバンパカバー40に変形が生じても、前面42からインレットブラケット26までの距離だけ前面42が車両後方へ変位するまでは、前面42がインレットブラケット26、更には、ラジエータサポートアッパ16に接しない。しかも、このような変形がフロントバンパカバー40に生じると、フロントバンパカバー40とインレットブラケット26との間のインレットカバー62が変形し、インレットカバー62によってラジエータサポートアッパ16が保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部に充電用のインレットが設けられるタイプの車両に適用される車両用充電リッド部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では電気自動車のラジエータグリルにインレット(特許文献1では「充電プラグ」と称している)が設けられている。また、このインレットに対応してラジエータグリルに開口が形成され、この開口を開閉可能にリッド(特許文献1では「蓋体」と称している)が設けられている。一方、下記特許文献2では電気自動車のリヤバンパ部に収納ボックス部が設けられ、この収納ボックス部に充電用コードが収納される。この収納ボックス部にはリッド(特許文献1では「リッド部材」と称している)が設けられており、このリッドによって収納ボックス部が開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−332003号の公報
【特許文献2】特開2010−179784号の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、車両のフロントバンパカバーの後方にインレットを設け、フロントバンパカバーに形成した開口からインレットに充電ケーブルを接続するような構成も考えられている。このような構成では、フロントバンパカバーに車両前方からの荷重が作用してフロントバンパカバーが変形すると、フロントバンパカバーの前面や、インレットに対応してフロントバンパカバーに形成された開口を閉止するリッドが車両後方へ変位してラジエータサポート等の車体前部に接近して、車体前部に当接することが考えられる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、フロントバンパカバーの前面が車両後方へ変位するような変形がフロントバンパカバーに生じても、車体前部に影響を及ぼさない、又は、車体前部に与える影響を少なくできる車両用充電リッド部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造は、少なくとも一部が車体前部よりも車両前方に位置する充電用のインレットと、前面が前記車体前部から車両前方に離間した状態で設けられると共に、前記前面における前記インレットの前方に開口が形成されたフロントバンパカバーと、前記開口を開閉可能なリッド本体を有する充電リッドと、前記インレットの周囲で前記車体前部と前記フロントバンパカバーの前面との間に設けられたインレットカバーと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造によれば、充電用のインレットの少なくとも一部が車体前部よりも車両前方に設けられる。このインレットの前方にはフロントバンパカバーが設けられ、フロントバンパカバーの前面に形成された開口がインレットの前方に位置している。この開口に対応して充電リッドが設けられ、この充電リッドのリッド本体が開口を閉止する。リッド本体により閉止されている開口を開放させると、フロントバンパカバーの前方からインレットに充電用のケーブル等を接続できる。
【0008】
一方、フロントバンパカバーの前面に車両前方から荷重が付与されると、フロントバンパカバーは前面がリッド本体を伴って車両後方へ変位するように変形する。ここで、本発明に係る車両用充電リッド部構造では、フロントバンパカバーの前面は車体前部に対して車両前方へ離間しており、インレットの側方では、車体前部とフロントバンパカバーの前面との間にインレットカバーが設けられる。
【0009】
このため、フロントバンパカバーの前面と車体前部との距離(間隔)だけ、フロントバンパカバーの前面は車体前部に接触することなく車両後方へ変位(空走)しつつ、フロントバンパカバーの前面がインレットカバーを車両後方へ押圧してインレットカバーを変形させる(撓ませる)。これにより、車体前部に対する荷重の付与を防止又は軽減できる。
【0010】
また、上記のように本発明に係る車両用充電リッド部構造では、フロントバンパカバーの前面は車体前部に対して車両前方へ離間しているが、インレットの周囲では車体前部とフロントバンパカバーの前面との間にインレットカバーが設けられる。このため、フロントバンパカバーの前面に形成された開口からインレット側を見ても、インレットカバーの内側は見えてもインレットカバーの外側は見えない。これにより、インレット及びその近傍における見栄えを向上させることができる。また、異物の混入を防止又は抑制できる。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造は、請求項1に記載の本発明において、前記インレットカバーを前記車体前部に施される塗装膜よりも軟質の材料により形成している。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造によれば、インレットカバーが車体前部に施される塗装膜よりも軟質の材料により形成される。このため、車両前方から荷重によって車両後方へ変位したフロントバンパカバーの前面がインレットカバーを変形させても、このインレットカバーが車体前部を傷付けたりすることがない。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記リッド本体は上端側を中心に下端側が上下方向に回動可能に設けられ、前記フロントバンパカバーの前記前面に形成された前記開口は前記リッド本体の回動により開閉されると共に、前記リッド本体が前記開口を閉止した状態で前記リッド本体の上端部が下端部よりも車両後方に位置するように前記リッド本体による前記開口の閉止位置が設定されている。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造によれば、リッド本体は上端側を中心に下端側が上下方向に回動可能に設けられており、リッド本体を回動させることでフロントバンパカバーの前面に形成された開口が開閉される。ここで、リッド本体が開口を閉止した状態ではリッド本体の上端部が下端部よりも車両後方に位置するようにリッド本体による開口の閉止位置が設定される。このため、フロントバンパカバーの前面に車両前方から荷重が付与された場合には、リッド本体の上端側よりも先にリッド本体の下端側に荷重が付与される。このため、このような荷重がフロントバンパカバーやリッド本体に付与された場合に、リッド本体の上端側において損傷が生じ難い。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記充電リッドは、前記開口に装着されて前記フロントバンパカバーに保持される枠状体と、前記開口を開閉する方向へ前記リッド本体を回動可能に支持すると共に、前記車体前部に直接又は間接的に固定されるリッド支持部と、を含めて構成されている。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造によれば、充電リッドは枠状体を備えており、この枠状体がフロントバンパカバーの前面に形成された開口に装着された状態でフロントバンパカバーに保持される。また、充電リッドはリッド支持部を備えている。このリッド支持部にはリッド本体がバンパカバーに形成された開口を開閉する方向へ移動可能に支持される。ここで、リッド支持部は車体前部に固定される。このため、リッド支持部そのものや、リッド支持部に支持されたリッド本体をフロントバンパカバーにではなく車体前部に支持させることができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造では、フロントバンパカバーの前面に付与された荷重が車体前部に影響を及ぼすことを防止又は軽減できる。
【0018】
請求項2に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造では、車両後方へ変位したフロントバンパカバーの前面がインレットカバーを変形させても、このインレットカバーが車体前部を傷付けたりすることがない。
【0019】
請求項3に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造では、車両前方からの荷重がフロントバンパカバーや充電リッドのリッド本体に付与された場合に、リッド本体の上端側において損傷が生じ難い。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車両用充電リッド部構造では、リッド支持部そのものや、リッド支持部に支持されたリッド本体をフロントバンパカバーにではなく車体前部に支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用充電リッド部構造を適用した車両前端近傍の概略的な側面断面図である。
【図2】フロントバンパカバーの前面に付与された荷重によりフロントバンパカバーにおける充電リッド近傍部分が変形した状態を示す概略的な側面断面図である。
【図3】リッド本体がフロントバンパカバーの開口を開放した状態を示すフロントバンパカバーの車幅方向中央よりも左側の部分を破断して示す正面図である、
【図4】インレットブラケットの斜視図である。
【図5】充電リッドの斜視図である。
【図6】閉止状態での充電リッドの要部の概略的な側面断面図である。
【図7】リッド本体が第1付勢手段の付勢力で開放方向へ回動した状態を示す充電リッ
【図8】リッド本体が中立位置に到達した状態を示す充電リッドの要部の概略的な側面断面図である。
【図9】全開状態での充電リッドの要部の概略的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係る車両用充電リッド構造を適用した車両10の要部が概略的な側面断面図により示されている。この図に示されるように、本車両10では、車両10の前端近傍で且つ車幅方向中央より左側には通常充電用のインレット12が設けられる。さらに、このインレット12に対して車幅方向側方(本実施の形態では左側)に急速充電用のインレット14(図1では図示省略、図3参照)が設けられる。
【0023】
インレット12の車両上方には車体前部としてのラジエータサポートアッパ16が車幅方向に延びるように設けられており、このラジエータサポートアッパ16の車幅方向中央側では図示しないラジエータの上端側が支持されている。これに対して、インレット12の車両下方には車体前部としてのラジエータサポートロア18が車幅方向に延びるように設けられており、このラジエータサポートロア18の車幅方向中央側では上記のラジエータの下端側が支持されている。
【0024】
また、車両10の前端近傍にはインレットブラケット26が設けられている。図4にはインレットブラケット26の斜視図が示されている。この図に示されるように、インレットブラケット26の上端側には図示しないボルト等の締結手段が貫通する固定部28が形成されており、この固定部28を貫通した締結部材によってインレットブラケット26の上端側が上述したラジエータサポートアッパ16に締結固定される。
【0025】
これに対して、図4に示されるように、インレットブラケット26の下端側には図示しないボルト等の締結手段が貫通する固定部30が形成されており、この固定部30を貫通した締結部材によってインレットブラケット26の下端側が上述したラジエータサポートロア18に締結固定される。
【0026】
インレットブラケット26における上側の固定部28よりも下側には開口部32が形成されている。開口部32には上述したインレット12が貫通している。インレット12は前端側がインレットブラケット26よりも車両前方へ突出した状態でインレットブラケット26に固定されている。また、インレットブラケット26における開口部32の側方には開口部34が形成されている。開口部34には上述したインレット14が貫通している。インレット14は前端側がインレットブラケット26よりも車両前方へ突出した状態でインレットブラケット26に固定されている。
【0027】
図1に示されるように、これらのインレット12、14やインレットブラケット26は車両前方からフロントバンパを構成するフロントバンパカバー40により覆われている。このフロントバンパカバー40は断面形状が車両後方へ向けて開口した凹形状に形成されている。また、フロントバンパカバー40は、前面42の上端が下端よりも車両後方に位置するように前面42が傾斜していると共に、前面42はラジエータサポートアッパ16やラジエータサポートロア18の前端及びインレットブラケット26に対して車両前後方向に所定距離離間している。なお、インレットブラケット26は、フロントバンパカバー40の前面42(後述するリッド本体132)と略平行な傾斜面を有し、この傾斜面に開口部32、34が形成される。
【0028】
このフロントバンパカバー40の前面42には車両前後方向に貫通する開口44が形成されている。この開口44は上述したインレット12やインレット14の前方に形成されている。開口44は上辺が下辺よりも短い略台形状に形成されている。この前面42の裏面(車両後方側の面)には筒状部46が開口44の内周縁から連続するように形成されている(なお、図1及び図2では、筒状部46の断面が示されており、その上側部分と下側部分の双方に符号46を付与している)。
【0029】
また、開口44の裏面側には図5に示される充電リッド50を構成する枠状体52が設けられている。枠状体52は内周形状が筒状部46の内周形状に倣うような台形状とされている。図1に示されるように、この枠状体52に対応して筒状部46の車両後方側の端部には爪部54が形成されている。爪部54は筒状部46の周方向に連続又は断続的に形成されており、車両後方から枠状体52に係合することで枠状体52を保持している(なお、図1及び図2では、枠状体52の断面が示されており、その上側部分と下側部分の双方に符号52(50)を付与している)。
【0030】
図1に示されるように、枠状体52とインレットブラケット26との間にはインレットカバー62が設けられている。インレットカバー62は、例えば、ラジエータサポートアッパ16やラジエータサポートロア18、インレットブラケット26等に施された塗装膜よりも軟質の合成樹脂材(一例としてエラストマ樹脂)により筒状に形成されている。インレットカバー62の内側にはインレット12、14が位置している。インレットカバー62の車両前方の開口端には係合爪64が形成されており、この係合爪64が枠状体52等に係合して保持されている。
【0031】
一方、図5に示されるように、充電リッド50はリッド支持部72を備えている。リッド支持部72は、厚さ方向が車両上下方向に沿った略板状とされている。図1に示されるように、リッド支持部72の下側には連結部材としてのL字金具74が設けられている。L字金具74はリッド側連結部76を備えている。リッド側連結部76は厚さ方向が車両上下方向に沿った板状に形成されている。
【0032】
このリッド側連結部76には厚さ方向に貫通した透孔78が形成されており、第1締結部材としてのボルト80が貫通している。このボルト80はリッド支持部72に形成された透孔82を貫通しており、このボルト80によって充電リッド50のリッド支持部72とL字金具74のリッド側連結部76とが締結固定される。
【0033】
ここで、リッド側連結部76の透孔78の内径寸法はボルト80の軸部分における外径寸法よりも大きく設定されている。このため、ボルト80がリッド側連結部76の透孔78やリッド支持部72の透孔82を貫通した状態であっても、ボルト80がリッド支持部72とL字金具74のリッド側連結部76とを締結固定する前の状態であれば、リッド側連結部76の透孔78の内周部がボルト80の軸部分に当接するまでボルト80の軸方向に対して直交する向き、すなわち、車両前後方向や車両左右方向にL字金具74に対してリッド支持部72を変位させることができる。
【0034】
一方、リッド側連結部76の後端部からは車体側連結部86が車両下方へ延びるように形成されている。車体側連結部86は厚さ方向が車両前後方向に沿った略板状に形成されている。この車体側連結部86には厚さ方向に貫通した透孔88が形成されており、第2締結部材としてのボルト90が貫通している。
【0035】
この車体側連結部86の車両後方には連結ブラケット92が設けられている。連結ブラケット92は車両前後方向に貫通した透孔94が形成されている。ボルト90は連結ブラケット92の透孔94を貫通しており、このボルト90によってL字金具74の車体側連結部86と連結ブラケット92とが締結固定される。
【0036】
ここで、車体側連結部86の透孔88の内径寸法はボルト90の軸部分における外径寸法よりも大きく設定されている。このため、ボルト90が車体側連結部86の透孔88や連結ブラケット92の透孔94を貫通した状態であっても、ボルト90がL字金具74の車体側連結部86と連結ブラケット92とを締結固定する前の状態であれば、車体側連結部86の透孔88の内周部がボルト90の軸部分に当接するまでボルト90の軸方向に対して直交する向き、すなわち、車両上下方向や車両左右方向に連結ブラケット92に対してL字金具74、ひいては、リッド支持部72を変位させることができる。
【0037】
連結ブラケット92は上述したインレットブラケット26に締結固定されている。すなわち、充電リッド50のリッド支持部72は、L字金具74、連結ブラケット92、及びインレットブラケット26を介してラジエータサポートアッパ16やラジエータサポートロア18に固定されている。
【0038】
一方、図5に示されるように、リッド支持部72の上面には支持ブラケット102、104が固定されている。車両左側の支持ブラケット102は車幅方向に互いに対向する一対の縦壁112、114を備えている。この縦壁112と縦壁114との間には軸方向が車幅方向に沿ったシャフト116が設けられている。また、縦壁112と縦壁114との間にはアーム118の基端が入り込んでいる。上記のシャフト116はアーム118の基端を貫通し、アーム118をシャフト116周りに回動可能に支持している。
【0039】
また、車両右側の支持ブラケット104は車幅方向に互いに対向する一対の縦壁122、124を備えている。この縦壁122と縦壁124との間には軸方向が車幅方向に沿ったシャフト126が設けられている。また、縦壁122と縦壁124との間にはアーム128の基端が入り込んでいる。上記のシャフト126はアーム128の基端を貫通し、アーム128をシャフト126周りに回動可能に支持している。
【0040】
上記のアーム118、128の先端側はリッド本体132の裏面に固定されている。リッド本体132は外周形状がフロントバンパカバー40の前面42に形成された開口44の内周形状に対して略相似形状で開口44の内周形状よりも僅かに小さく設定されている。リッド本体132は、開口44の内側に入り込んだ状態で開口44を閉止する。
【0041】
このようにリッド本体132が開口44を閉止した状態では、リッド本体132はフロントバンパカバー40の前面42に倣うように上端が下端よりも車両後方に位置するように傾斜する。アーム118、128がシャフト116、126周りの一方に回動すると、リッド本体132はその下端が上昇するように回動し、これにより、リッド本体132がフロントバンパカバー40の前面42に形成された開口44を開放する。
【0042】
また、上記のシャフト116、126の双方には第1付勢手段として付勢手段を構成するポップアップスプリング142が設けられている。ポップアップスプリング142はコイル部144を備えており、このコイル部144をシャフト116やシャフト126が貫通している。ポップアップスプリング142におけるコイル部144よりも一端側の部分に対応して縦壁114、124には支持部側係止片146が形成されており、ポップアップスプリング142の一端側が車両下方から支持部側係止片146に圧接している。
【0043】
これに対して、ポップアップスプリング142におけるコイル部144よりも他端側の部分に対応してアーム118、128には第1係合部としてのアーム側第1係止片148が形成されており、ポップアップスプリング142の他端側が車両上方からアーム側第1係止片148に圧接している。これにより、リッド本体132はリッド支持部72に対して開口44を開放する向きである開放方向へ付勢される。
【0044】
また、ポップアップスプリング142において支持部側係止片146に圧接した部分よりも更に一端側に対応してアーム118、128には第2係合部としてのアーム側第2係止片150が形成されている。リッド本体132が開口44を閉止した状態では、アーム側第2係止片150がポップアップスプリング142の一端側よりも車両上方に離間している。
【0045】
但し、図7に示されるように、アーム118、128が開放方向へ一定角度回動すると、アーム118、128のアーム側第2係止片150がポップアップスプリング142の一端側に当接する。さらに、この状態からアーム118、128が開放方向へ回動すると、アーム側第2係止片150がポップアップスプリング142の一端側を伴って回動して、ポップアップスプリング142の一端側を縦壁114、124の支持部側係止片146から車両下方へ離間させる。
【0046】
一方、支持ブラケット102には第2付勢手段としてのターンオーバースプリング172が設けられている。ターンオーバースプリング172はコイル部174を備えている。ターンオーバースプリング172におけるコイル部174よりも一端側は縦壁112に係止されている。これに対して、ターンオーバースプリング172におけるコイル部174よりも他端側はアーム118に係止されている。
【0047】
ターンオーバースプリング172は、アーム118が開放方向へ上記の一定角度(アーム118、128のアーム側第2係止片150がポップアップスプリング142の一端側に当接する角度)、又は、図8に示されるような上記の一定角度よりも更に大きな所定角度回動して中立位置に到達するまでは、アーム118をポップアップスプリング142の付勢力よりも小さな付勢力で開放方向とは反対の閉止方向へアーム118を付勢する。但し、アーム118が上記の中立位置を越えて更に開放方向へ回動すると、ターンオーバースプリング172はアーム118を開放方向へ付勢する。
【0048】
このような充電リッド50のリッド本体132は、リッド本体132が開口44を閉止した状態で図示しないロック機構により開放方向への回動が規制される。このロック機構はケーブル等を介して車両の運転席近傍等に設けられた操作部に接続されており、この操作部を操作することでリッド本体132の回動規制が解除され、ポップアップスプリング142の付勢力で開放方向へ回動する。
【0049】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0050】
先ず、リッド本体132を回動させて開口44を開放する際の作用、効果について説明する。
【0051】
本実施の形態を適用した車両10では、図6に示されるように、リッド本体132がフロントバンパカバー40の開口44を閉止している状態で車両の室内に設けられたロック機構の操作部を操作すると、ロック機構によるリッド本体132の回動規制が解除される。回動規制が解除されると、アーム118、128のアーム側第1係止片148に付与されたポップアップスプリング142の付勢力によってアーム118、128が開放方向へ回動する。
【0052】
これにより、リッド本体132はその下端が上昇するように回動し、図7に示されるように、リッド本体132の下端がフロントバンパカバー40の開口44から離間する。ここで、アーム118、128が開放方向へ一定角度回動すると、アーム118、128に形成されたアーム側第2係止片150が車両上方からポップアップスプリング142の一端側に当接する。
【0053】
この状態で更にアーム118、128が開放方向へ回動すると、アーム118、128のアーム側第2係止片150がポップアップスプリング142の一端側を伴って回動して、ポップアップスプリング142の一端側を縦壁114、124の支持部側係止片146から車両下方へ離間させる。この状態では、ポップアップスプリング142の一端側が縦壁114、124の支持部側係止片146に圧接していない。このため、ポップアップスプリング142はアーム118、128を開放方向へ付勢できない。
【0054】
この状態では、ターンオーバースプリング172がアーム118を開放方向とは反対の閉止方向へ付勢しており、しかも、下端部が上昇したリッド本体132はその自重によって下端部を下降させるように、すなわち、閉止方向へ回動しようとする。このため、アーム118、128はアーム側第2係止片150及び縦壁114、124の支持部側係止片146にポップアップスプリング142の一端が当接した状態で停止する。これにより、ポップアップスプリング142の付勢力にばらつきが生じても、リッド本体132が開放方向へ一定角度回動した状態で停止させることができる。
【0055】
このように、リッド本体132が開放方向へ一定角度回動した状態から、リッド本体132が図8に示される中立位置を越えるようにリッド本体132を開放方向へ回動させると、リッド本体132はターンオーバースプリング172の付勢力により開放方向へ付勢される。これにより、図9に示されるように、リッド本体132は開口44を全開した状態で保持される。この状態で、充電ケーブル等をインレット12やインレット14に装着することで車両10に搭載されたバッテリーを充電できる。
【0056】
次に、フロントバンパカバー40の前面42に車両前方からの荷重が作用した場合の作用、効果について説明する。
【0057】
リッド本体132がフロントバンパカバー40の開口44を閉止した状態で車両10の前方からの所定の大きさの荷重がフロントバンパカバー40の前面42に作用すると、フロントバンパカバー40は前面42が車両後方へ変位するように変形する。ここで、本実施の形態を適用した車両10では、フロントバンパカバー40の前面42はインレットブラケット26に対して車両前方に離間している。
【0058】
このため、上記のような変形がフロントバンパカバー40に生じても、フロントバンパカバー40の前面42からインレットブラケット26までの距離だけ前面42が車両後方へ変位するまでは、前面42がインレットブラケット26に接することがない。しかも、上記のような変形がフロントバンパカバー40に生じると、図2に示されるように、フロントバンパカバー40の前面42とインレットブラケット26との間に設けられているインレットカバー62が変形し、このインレットカバー62によってインレットブラケット26が保護される。
【0059】
さらに、本実施の形態が適用された車両10では、リッド本体132はフロントバンパカバー40の開口44を閉止した状態でリッド本体132の上端が下端よりも車両後方に位置している。しかも、リッド本体132はアーム118、128を介してリッド本体132の上端よりも車両後方に位置するシャフト116、126によって支持されている。このため、上記のような荷重によってフロントバンパカバー40が変形しても、リッド支持部72におけるシャフト116、126の設定位置までは荷重の影響が及び難く、シャフト116、126が設けられた支持ブラケット102、104に損傷が生じ難い。
【0060】
次に、充電リッド50の取り付けに関する作用、効果について説明する。
【0061】
本実施の形態では、充電リッド50を構成する枠状体52は、フロントバンパカバー40の筒状部46に形成された爪部54が枠状体52に係合することでフロントバンパカバー40に保持され、これにより、フロントバンパカバー40の開口44に対する枠状体52の位置決めが成される。但し、充電リッド50のリッド支持部72はL字金具74、連結ブラケット92、及びインレットブラケット26を介して車体の一部であるラジエータサポートアッパ16及びラジエータサポートロア18に固定される。
【0062】
これにより、充電リッド50の質量がラジエータサポートアッパ16及びラジエータサポートロア18に支持され、フロントバンパカバー40に充電リッド50の質量を支持させなくてもよい。このため、充電リッド50の重さでフロントバンパカバー40が傾いて、例えば、ヘッドランプとの間に不要な隙間が形成されることがない。
【0063】
また、充電リッド50のリッド支持部72はL字金具74を介して連結ブラケット92、ひいてはインレットブラケット26に固定される。ここで、上述したように、ボルト80がリッド側連結部76の透孔78やリッド支持部72の透孔82を貫通した状態であっても、ボルト80がリッド支持部72とL字金具74のリッド側連結部76とを締結固定する前の状態であれば、リッド側連結部76の透孔78の内周部がボルト80の軸部分に当接するまで車両前後方向や車両左右方向にL字金具74に対してリッド支持部72を変位させることができる。
【0064】
また、ボルト90が車体側連結部86の透孔88や連結ブラケット92の透孔94を貫通した状態であっても、ボルト90がL字金具74の車体側連結部86と連結ブラケット92とを締結固定する前の状態であれば、車体側連結部86の透孔88の内周部がボルト90の軸部分に当接するまで車両上下方向や車両左右方向に連結ブラケット92に対して車体側連結部86を変位させることができる。
【0065】
これにより、インレットブラケット26に対するリッド支持部72の固定位置を調整でき、例えば、フロントバンパカバー40に保持された枠状体52に対して適切な位置でリッド支持部72をインレットブラケット26に固定することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 車両
12 通常充電用のインレット(インレット)
14 急速充電用のインレット(インレット)
16 ラジエータサポートアッパ(車体前部)
18 ラジエータサポートロア(車体前部)
26 インレットブラケット
40 フロントバンパカバー
42 前面
44 開口
50 充電リッド
52 枠状体
62 インレットカバー
72 リッド支持部
132 リッド本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が車体前部よりも車両前方に位置する充電用のインレットと、
前面が前記車体前部から車両前方に離間した状態で設けられると共に、前記前面における前記インレットの前方に開口が形成されたフロントバンパカバーと、
前記開口を開閉可能なリッド本体を有する充電リッドと、
前記インレットの周囲で前記車体前部と前記フロントバンパカバーの前面との間に設けられたインレットカバーと、
を備える車両用充電リッド部構造。
【請求項2】
前記インレットカバーを前記車体前部に施される塗装膜よりも軟質の材料により形成した請求項1に記載の車両用充電リッド部構造。
【請求項3】
前記リッド本体は上端側を中心に下端側が上下方向に回動可能に設けられ、前記フロントバンパカバーの前記前面に形成された前記開口は前記リッド本体の回動により開閉されると共に、前記リッド本体が前記開口を閉止した状態で前記リッド本体の上端部が下端部よりも車両後方に位置するように前記リッド本体による前記開口の閉止位置が設定された請求項1又は請求項2に記載の車両用充電リッド部構造。
【請求項4】
前記充電リッドは、
前記開口に装着されて前記フロントバンパカバーに保持される枠状体と、
前記開口を開閉する方向へ前記リッド本体を回動可能に支持すると共に、前記車体前部に直接又は間接的に固定されるリッド支持部と、
を含めて構成された請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用充電リッド部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112226(P2013−112226A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260999(P2011−260999)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】