説明

車両用照明制御装置

【課題】車室内に所望の照度分布の再現を図ることができる車両用照明制御装置の提供。
【解決手段】本発明は、車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータ及び車室内の基準照度分布のデータを格納したデータベース1と、車室内に配置され、照度を測定する光源分布測定手段2と、光源分布測定手段によって測定された照度及びデータベースから読み出された車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータに基づいて、車室内合成画像を生成する合成画像生成手段3と、車室内に配置された複数の照明手段4と、車室内合成画像から車室内の照度分布を求め、照度分布を前記データベースから読み出した基準照度分布に近づけるように、複数の照明手段を制御する照明制御手段5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明制御装置に係り、より詳細には、車外の光源によって動的に変化する車室内の照度分布に応じて、車室内の複数の照明手段を総合的に制御する車両用照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両では、前照灯及び補助灯の点灯に連動して、車室内の正面パネルに配置された機器の照明も点灯する。下記の特許文献1には、乗員の視線が向いている機器の照明を明るくし、さらに、車外が暗い場合に、機器の照明も暗くする照明制御システムが記載されている。また、下記の特許文献2には、時系列的な車外の照度変化を検出し、乗員の暗順応を考慮して車外照度が急激に低下した場合には車室内照度を高く点灯し、車外照度が徐々に低下した場合には車室内照度を低く点灯する照度制御を行う車室内の照明装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−21591号公報
【特許文献2】特開平11−255017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際の車両の車室内には、車両の窓やサンルーフから日光や街路灯のような様々な外光が入射する。しかも、走行中の車両の車室に入射する外光の強度や方向は、トンネルの出入りといった車両の走行する道路の周囲の環境変化や天候の変化を初めとする種々の外部要因によって時々刻々と動的に変化する。このため、走行中の車両の車室内では、車両設計段階のシミュレーション通りの照度分布が再現されるとは限らなかった。
【0005】
そこで、本発明は、車室内に所望の照度分布の再現を図ることができる車両用照明制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用照明制御装置は、車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータ、及び、車室内の基準照度分布のデータを格納したデータベースと、車室内に配置され、照度を測定する光源分布測定手段と、前記光源分布測定手段によって測定された照度、及び、前記データベースから読み出された車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータに基づいて、車室内合成画像を生成する合成画像生成手段と、車室内に配置された複数の照明手段と、前記車室内合成画像から車室内の照度分布を求め、前記照度分布を前記データベースから読み出した前記基準照度分布に近づけるように、前記複数の照明手段を制御する照明制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、光源分布測定手段の測定結果を使用して車室内の合成画像が生成され、車室内の照度分布が求められる。そして、この車室内の照度分布に応じて、複数の照明手段が制御される。これにより、入射する外光の強度や方向が時々刻々と動的に変化する走行中の車両の車室内であっても、車室内に所望の照度分布の再現を図ることができる。
【0008】
また、本発明において好ましくは、前記データベースは、車室内の基準色温度のデータを格納し、前記光源分布測定手段は色度を測定し、前記複数の照明手段の少なくとも一つは、色度を調節することができる色度可変照明手段であり、前記合成画像生成手段は、前記光源分布測定手段によって測定された照度及び色度と、前記データベースから読み出された車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータとに基づいて、車室内合成画像を生成し、前記照明制御手段は、前記車室内合成画像から車室内の色温度を求め、前記色温度を前記データベースから読み出した前記基準色温度に近づけるように、前記色度可変照明手段の色度を調節する。
【0009】
車室内には、様々な色度の外光が入射する。このため、車室内の色温度は、車室に入射する外光によって大きく変化することがある。例えば、夕日やアーク灯の光が入射した場合には、車室内は赤みがかった色となり、車室内の色温度が低くなる傾向がある。また、例えば、曇天の場合には、車室内は青みがかった色となり、車室内の色温度が高くなる傾向がある。
【0010】
また、車室内の色温度は、乗員の感覚に影響を与える。例えば、色温度が高い場合には、乗員の覚醒度や寒さ感が高くなる傾向がある。また、例えば、色温度が低い場合には、乗員の集中度や暖かさ感が高くなる傾向がある。
【0011】
そこで、本発明では、車室内の色温度に応じて、色度可変照明手段の色度が調節される。これにより、入射する外光の強度や方向が時々刻々と動的に変化する走行中の車両の車室内であっても、車室内に所望の色温度の再現を図ることができる。その結果、色温度によって乗員に所望の感覚の誘起を図ることができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記基準色温度は、車室内を分割した複数のゾーンごとに設定され、前記照明制御手段は、前記温度分布を前記ゾーンごとに前記基準色温度に近づけるように、前記色度可変照明手段を制御する。
【0013】
このようにゾーンごとに基準色温度を設定することにより、ゾーンごとに所望の色温度の再現を図ることができる。例えば、運転席のゾーンでは、覚醒度が高くなるように色温度のピークを高くする一方、リアシートでは、暖かさ感を与えるように色温度のピークを低くするように、車室内の色温度をゾーンごとに調節することができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記色度可変照明手段は、発光ダイオードで構成されている。
これにより、発光ダイオードの色度を調節することによって、消費電力を抑制しつつ、車室内の色度を容易に変えることができる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記光源分布測定手段は、全方位カメラである。
これにより、一つの光源分布測定手段を一つ設けることによって、車室内全体の光源分布の測定が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用照明制御装置によれば、車室内に所望の照度分布の再現を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態による車両用照明制御装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】車室内の照度センサの配置を説明する模式図である。
【図3】車室内のゾーンを説明する斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による車両用照明制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】(a)は、色温度と寒さ感との関係を示すグラフであり、(b)は、色温度と暖かさ感との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は、色温度と覚醒感との関係を示すグラフであり、(b)は、色温度と集中度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両用照明制御装置の実施形態を説明する。
図1に、本発明の実施形態による車両用照明制御装置のブロック図を示す。図1に示すように、車両用照明制御装置は、車室内を構成する部材の配置、形状といった3次元形状データ及び部材表面の各部分の反射特性のデータ、及び、車室内の基準照度分布のデータを格納したデータベース1と、車室内に配置され、照度及び色度を測定する光源分布測定手段2と、光源分布測定手段2によって測定された照度及び色度、及び、データベース1から読み出された車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータに基づいて、車室内合成画像を生成する合成画像生成手段3と、車室内に配置された複数の照明手段4と、車室内合成画像から車室内の照度分布を求め、照度分布をデータベースにから読み出された基準照度分布に近づけるように、複数の照明手段4を制御する照明制御手段5とを備えている。
【0019】
データベース1には、車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータ、及び、車室内の基準照度分布のデータを含むCADデータが格納されている。
また、データベース1には、車室内の基準照度分布のデータに加えて、車室内を分割した複数のゾーンごとに設定された基準色温度のデータも格納されている。
【0020】
図2に光源分布測定手段2である照度センサ21〜24の配置例を示す。図2に示す例では、第1の照度センサ21が、車室内のフロントのダッシュボード上に配置され、第2の照度センサ22が、運転席の右側のドアウインドウの内側に配置され、第3の照度センサ23が、助手席の左側のドアウインドウの内側に配置され、第4の照度センサ24が、リアシートの後方であって、リアウインドウの下に配置されている。そして、これらの第1〜第4の照度センサ21〜24では、照度及び色度が測定される。
【0021】
なお、図2では、4つの照度センサ21〜24を設けた例を示しているが、照度センサの配置数はこれに限定されない。例えば、光源分布測定手段2を、1つの全方位カメラで構成してもよい。全方位カメラは、車室内の天井中央部付近に配置するとよい。また、光源分布測定手段2は、ダッシュボード上に配置した1つの半球面鏡と、この球面鏡を撮像するカメラとで構成してもよい。
【0022】
また、光源分布測定手段2では、光源推定として、明るさの線形性を利用する。明るさの線形性とは、複数の光源が存在する環境において観察される物体の明るさが、それぞれの光源の下における物体の明るさの和に等しいという仮定をいう。例えば、シーン内の光源Iは、下記の式(1)で示すように、単位輝度を持つn個の基底光源I(i)の線形和で表現される。
I=Σni-1αi(i) ・・・(1)
【0023】
また、各基底光源I(i)の下で観察されるシーン内の或る点xjの明るさRj(I(i))が与えられているとすると、シーン内の光源Iの下において観察される明るさxjは、下記の式(2)で与えられる。
xj=Σiαij(I(i)) ・・・(2)
【0024】
したがって、十分多数の点における明るさxjは、下記の式(3)で与えられ、これを未知数αiについて解くことにより、画像として観察された明るさxjに基づいて光源分布Iが求められる。
【0025】
【数1】

【0026】
合成画像生成手段3は、データベース1から読み出された3次元CADデータ、すなわち、車室内を構成する部材の配置、形状、及び反射率のスペクトル分布のような反射特性のデータと、光源分布測定手段2によって測定された照度及び色度とを組み合わせて車室内合成画像を生成する。合成画像生成手段3は、3次元CADデータによる車室内のインテリアの車室内画像データに、光源分布測定手段によって測定されたデータを組み込んで、レンダリングアルゴリズムにより、車室内合成画像を生成する。例えば、CADデータ中の車室内の構成部材に、測定された光源方向から測定された色度の光が測定された照度で照射された場合の、その構成部材表面の所定の微小部分ごとの照度及び色調が、その微小部分ごとの反射特性に応じてコンピュータにより算出される。
【0027】
また、測定された色調から、例えばCIE色度図の色度座標に基づいて色温度が求められる。
【0028】
このように、光源分布測定手段の測定結果を使用して生成された車室内の合成画像は、カメラで車室内を撮像した画像よりも、より乗員が視覚認知している車室内の情景に近いものになると考えられる。このため、より正確に車室内の照度分布及び色温度が求められる。そして、この車室内の照度分布に応じて、複数の照明手段が制御される。これにより、入射する外光の強度や方向が時々刻々と動的に変化する走行中の車両の車室内であっても、車室内に所望の照度分布の再現を図ることができる。
【0029】
照明手段4の例として、図1のブロック図に示したように、インパネのメータ類411、サブインジケータモニター412、ナビゲーションシステム&ディスプレイ413、操作系スイッチ414のような、フロントシート周辺機器の照明や、ルームランプ421、カーテシランプ422、アウタハンドルランプ423、フットランプ424、中間ピラーランプ425、シートダウンライトランプ426、コンソールダウンライトランプ427及びインナハンドルランプ428のような、ルームランプ系の照明や、リアシートTVモニター431及び操作系スイッチ432のようなセカンドシート及びサードシートの周辺機器の照明が挙げられる。
【0030】
なお、これらの照明手段4の各々は、色度可変の発光ダイオードで構成されるのがよい。その結果、各照明手段4の照明の色調を調節することができる。
【0031】
そして、照明制御手段5は、車室内合成画像から車室内の照度分布を求める。車室内の照度分布は、車室内を複数の領域に分割したゾーンごとに求めるとよい。図3に、車室内のゾーンの一例を示す。図3に示す例では、車室内が、6つのゾーンZ1〜Z6に分けられている。第1のゾーンZ1は運転席の付近に設けられ、第2のゾーンZ2は助手席の付近に設けられ、第3のゾーンZ3は2列目の右席の付近に設けられ、第4のゾーンZ4は2列目の左席の付近に設けられ、第5のゾーンZ5は3列目の右席の付近に設けられ、そして、第6のゾーンZ6は3列目の左席の付近に設けられている。
【0032】
なお、ゾーンの配置は、これに限定されず、種々の配置を設定することができる。例えば、図3に示す例では、2列目を右席側の第3のゾーンと、左席側の第4のゾーンとに分けているが、2列目の左右の座席付近を一つのゾーンとして設定してもよい。同様に、3列目の左右の座席付近を一つのゾーンとして設定してもよい。
【0033】
そして、照明制御手段5は、照度分布をデータベースにから読み出された基準照度分布に近づけるように、複数の照明手段4を制御する。
【0034】
なお、データベースに格納されている基準照度分布及び基準色温度は、1つに限定する必要はなく、様々な環境条件に対応付けられたものを格納しておくとよい。そして、照明制御手段は、環境条件に対応する基準照度分布及び色温度を読み出すのがよい。
【0035】
種々の環境条件の例として、車室内の各乗員席の乗員の着座の有無が挙げられる。着座の有無は、例えば、フロント座席センサ601、セカンドシート座席センサ602及びサードシート座席センサ603によって検出される。また、種々の環境条件の例として、車両のドアの開閉や操作状況が挙げられる。ドアの開閉や操作状況は、例えば、ドアポジションセンサ604、ドアスイッチ605、アウタハンドル操作センサ606、インナハンドル操作センサ607、ドア開閉操作センサ609及びドアロックセンサ613によって検出される。また、種々の環境条件の例として、車両の停止、走行状況が挙げられる。車両の停止、走行状況は、例えば、パーキングブレーキセンサ610、ギヤレンジセンサ611及び速度センサ612によって検出される。
【0036】
そして、照明手段4を制御するために、照明制御手段5は、フロントシート周辺機器照明制御部51と、ルームランプ系照明制御部52と、セカンド・サードシート周辺機器照明制御部53とを有する。
【0037】
フロントシート周辺機器照明制御部51は、インパネのメータ類411、サブインジケータモニター412、ナビゲーションシステム&ディスプレイ413、操作系スイッチ414のような、フロントシート周辺機器の照明を制御する。また、ルームランプ系照明制御部52は、ルームランプ421、カーテシランプ422、アウタハンドルランプ423、フットランプ424、中間ピラーランプ425、シートダウンライトランプ426、コンソールダウンライトランプ427及びインナハンドルランプ428のような、ルームランプ系の照明を制御する。また、セカンド・サードシート周辺機器照明制御部53は、リアシートTVモニター431及び操作系スイッチ432のようなセカンドシート及びサードシートの周辺機器の照明を制御する。
【0038】
また、照明制御手段5は、温度分布をゾーンごとに基準色温度に近づけるように、LEDの照明手段の色調をそれぞれ制御する。
【0039】
次に、図4のフローチャートを参照して、本発明の実施形態による車両用照明制御装置の動作例を説明する。
なお、図4のフローチャートに示す動作は、所定の周期で(例えば、100ミリ秒ごとに)繰り返し実行されるとよい。これにより、入射する外光の強度や方向が時々刻々と動的に変化する走行中の車両の車室内の照度等が逐次測定され、照度分布に応じて、複数の照明手段が逐次制御される。
【0040】
先ず、光源分布測定手段2の4つの照度センサ21〜24によって、照度及び色調が検出される(ステップS1)。下記の表1に各照度センサ21〜24の照度の測定結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
上記の表1に示すように、第1照度センサ21の測定照度は80ルクスであり、第2照度センサ22の測定照度は90ルクスであり、第3照度センサ23の測定照度は70ルクスであり、第4照度センサ24の測定照度は20ルクスである。
また、各照度センサ21〜24では、照度の他に、色調も測定している。色調は、例えば、三原色のバランスとして測定するとよい。
【0043】
次に、合成画像生成手段3によって、車室内合成画像が生成される(ステップS2)。そして、照明制御手段5によって、車室内合成画像から車室内の照度分布及び色温度分布が求められる(ステップS3)。下記の表2に、ゾーンごとに検出された照度分布を示す。
【0044】
【表2】

【0045】
上記の表2に示すように、運転席のゾーンZ1の検出照度は「レベル9」であり、助手席のゾーンZ2の検出照度は「レベル7」であり、2列目右席のゾーンZ3の検出照度は「レベル3」であり、2列目左席のゾーンZ4の検出照度は「レベル3」であり、3列目右席のゾーンZ5の検出照度は「レベル2」であり、3列目左席のゾーンZ6の検出照度は「レベル2」である。
なお、ここでは、照度が高いほど、照度のレベルの数値が大きい。また、レベルの数値区分は任意に設定するとよい。
【0046】
また、下記の表3に、ゾーンごとの色温度分布を示す。
【表3】

【0047】
上記の表2に示すように、運転席のゾーンZ1の検出照度は「レベルII」であり、助手席のゾーンZ2の検出色温度は「レベルII」であり、2列目右席のゾーンZ3の検出色温度は「レベルII」であり、2列目左席のゾーンZ4の検出色温度は「レベルII」であり、3列目右席のゾーンZ5の検出色温度は「レベルI」であり、3列目左席のゾーンZ6の検出色温度は「レベルI」である。
【0048】
なお、下記の表4のように、色温度の「レベルI」は、色温度「3000〜4000K」に対応し、色温度の「レベルII」は、色温度「4000〜5000K」に対応し、色温度の「レベルIII」は、色温度「5000〜6000K」に対応し、色温度の「レベルIV」は、色温度「6000〜7000K」に対応している。
【0049】
【表4】

【0050】
次に、照明制御手段5によって、検出された照度分布及び色温度分布を、データベース1から読み出された基準照度分布及び基準色温度分布に近づけるように、複数の照明手段4が制御される(ステップS4)。
【0051】
データベース1から読み出された基準照度分布を、上記の表2の最下段に示す。この基準照度分布は、運転席のゾーンZ1の検出照度は「レベル9」であり、助手席のゾーンZ2の検出照度は「レベル7」であり、2列目右席のゾーンZ3の検出照度は「レベル4」であり、2列目左席のゾーンZ4の検出照度は「レベル4」であり、3列目右席のゾーンZ5の検出照度は「レベル2」であり、3列目左席のゾーンZ6の検出照度は「レベル2」である。
【0052】
表2の検出照度分布と基準照度分布とを比較すると、2列目右席のゾーンZ3及び2列目左席のゾーンZ4の検出照度「レベル3」が、同ゾーンの基準照度「レベル4」よりも低くなっている。そこで、照度制御手段5は、これらのゾーンZ3及びZ4の照度を「レベル3」から「レベル4」へ高めるように、照明手段4を制御する。
【0053】
まず、運転席(ゾーンZ1)及び助手席(ゾーンZ2)の照度は変更する必要がないため、下記の表5に示すように、フロントシート周辺照明制御部51による制御の前後では対応する照明手段の照度は変化しない。
【0054】
【表5】

【0055】
また、下記の表6及び表7に示すように、ルームランプ系照明制御部52は、ゾーンZ3及びZ4の照度を「レベル3」から「レベル4」へ高めるように、ルームランプ421を「OFF」から「レベル1」へ変更し、中間ピラーランプ425も「OFF」から「レベル1」へ変更し、更に、シートダウンライトランプ426を「レベル2」から「レベル3」へ変更する。
【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
さらに、下記の表8に示すように、セカンド・サードシート周辺機器照明制御部53は、操作系スイッチ432の照度を「レベル3」から「レベル4」へ変更し、ゾーンZ3及びZ4の照度を向上させる。
【0059】
【表8】

【0060】
このように、照明制御部4のフロントシート周辺照明制御部51、ルームランプ系照明制御部52及びセカンド・サードシート周辺機器照明制御部53が種々の照明手段4の照度を制御することによって、各ゾーンの照度分布が基準照度分布に近づけるように調節される。このように、車室内の種々の照明手段を総合的に制御することによって、車室内に所望の照度分布の再現を図ることができる。
【0061】
なお、サードシート着座センサ603によって、3列目のシートに乗員が着座していないことが検出された場合には、かかる場合に対応する基準照度分布が読み出されるとよい。かかる場合の基準照度分布は、例えば、表2に示した3列目右席(ゾーンZ5)及び3列目左席(ゾーンZ6)の照度が最低レベルの「レベル1」に設定されている。そして、照度制御手段5のセカンド・サードシート周辺機器照明制御部53は、例えば、3列目の操作系スイッチ432を「OFF」とするとよい。
【0062】
このように、車室内の各シートに着座した乗員の有無を検出し、ゾーン内のシートに着座する乗員の有無に応じて照明手段を制御することにより、照明手段の消費電力の抑制を図ることができる。
【0063】
さらに、照明制御部5は、ゾーンごとの色温度も調節する。
データベース1から読み出された基準色温度分布を、上記の表3の最下段に示す。運転席のゾーンZ1の基準色温度は「レベルIV」であり、助手席のゾーンZ2の基準色温度は「レベルIII」であり、2列目右席のゾーンZ3、2列目左席のゾーンZ4、3列目右席のゾーンZ5及び3列目左席のゾーンZ6の基準色温度は「レベルI」である。一方、上記の表3に示したように、運転席のゾーンZ1、助手席のゾーンZ2、2列目右席のゾーンZ3及び2列目左席のゾーンZ4の検出色温度は「レベルII」であり、3列目右席のゾーンZ5及び3列目左席のゾーンZ6の検出色温度は「レベルI」である。
【0064】
したがって、照明制御部5は、各ゾーンの色温度分布を基準色温度分布に近づけるために、運転席のゾーンZ1の色温度を「レベルII」から「レベルIV」へ引き上げ、助手席のゾーンZ2の色温度を「レベルII」から「レベルIII」へ引き上げるように、照明手段の色調を調節する。そのためには、例えば、フロントシート周辺照明制御部51が、メータ類411、サブインジケータモニター412、及び操作系スイッチ414の色調を、色温度が高くなるように調整するとよい。
【0065】
ここで、図5(a)のグラフを参照する。グラフ中の曲線Iは、色温度(K)に対する覚醒度の官能評価の傾向を示している。曲線Iで示すように、色温度が高いときに覚醒度が高くなる傾向がある。したがって、運転席のゾーンZ1の色温度を「レベルIV」(6000〜7000K)に調節することによって、運転者の覚醒度の向上を図ることができる。運転者の覚醒度が高いほど、安全運転に寄与すると考えられる。
【0066】
なお、図5(b)のグラフを参照すると、グラフ中の曲線IIは、色温度(K)に対する集中度の官能評価の傾向を示している。曲線IIで示すように、色温度が低いときに集中度が高くなる傾向がある。したがって、運転席のゾーンZ1の色温度を、例えば「レベルI」(3000〜4000K)に下げることによって、運転者の集中度の向上を図ることができる。
【0067】
また、照明制御部5は、各ゾーンの色温度分布を基準色温度分布に近づけるために、2列目右席のゾーンZ3及2列目左席のゾーンZ4の色温度を「レベルII」から「レベルI」へ引き上げるように、照明手段の色調を調節する。そのためには、例えば、ルームランプ系照明制御部52が、ルームランプ421、中間ピラーランプ425及びシートダウンライトランプ426の色調を、色温度が低くなるように調整するとよい。
【0068】
ここで、図6(a)のグラフを参照する。グラフ中の曲線IIIは、色温度(K)に対する暖かさ感の官能評価の傾向を示している。曲線IIIで示すように、色温度が低いときに暖かさ感が高くなる傾向がある。従って、2列目及び3列目のゾーンZ3〜Z6の色温度を、「レベルI」(3000〜4000K)に下げることによって、乗員の暖かさ感の向上を図ることができる。暖かさ感を向上させることにより、特に、寒い時期に乗員の快適性の向上に寄与すると考えられる。
【0069】
なお、図6(B)のグラフを参照すると、グラフ中の曲線IVは、色温度(K)に対する寒さ感の官能評価の傾向を示している。曲線IVで示すように、色温度が高いときに寒さ感が高くなる傾向がある。したがって、2列目のゾーンZ3及びZ4の色温度を、例えば、「レベルIV」(6000〜7000K)に上げることによって、乗員の寒さ感の向上を図ることができる。寒さ感を向上させることにより、特に、暑い時期に乗員快適性の向上に寄与すると考えられる。
【0070】
上述の実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、分布測定手段が照度と共に色調を測定した例を説明したが、本発明では、色調を測定せずに照度分布を求めてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 データベース
2 光源分布測定手段
3 合成画像生成手段
4 照明手段
5 照明制御手段
51 フロントシート周辺機器照明制御部
52 ルームランプ系照明制御部
53 セカンド、サードシート周辺機器照明制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータ、及び、車室内の基準照度分布のデータを格納したデータベースと、
車室内に配置され、照度を測定する光源分布測定手段と、
前記光源分布測定手段によって測定された照度、及び、前記データベースから読み出された車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータに基づいて、車室内合成画像を生成する合成画像生成手段と、
車室内に配置された複数の照明手段と、
前記車室内合成画像から車室内の照度分布を求め、前記照度分布を前記データベースから読み出した前記基準照度分布に近づけるように、前記複数の照明手段を制御する照明制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用照明制御装置。
【請求項2】
前記データベースは、車室内の基準色温度のデータを格納し、
前記光源分布測定手段は色度を測定し、
前記複数の照明手段の少なくとも一つは、色度を調節することができる色度可変照明手段であり、
前記合成画像生成手段は、前記光源分布測定手段によって測定された照度及び色度と、前記データベースから読み出された車室内を構成する部材の3次元形状及び反射特性のデータとに基づいて、車室内合成画像を生成し、
前記照明制御手段は、前記車室内合成画像から車室内の色温度を求め、前記色温度を前記データベースから読み出した前記基準色温度に近づけるように、前記色度可変照明手段の色度を調節する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明制御装置。
【請求項3】
前記基準色温度は、車室内を分割した複数のゾーンごとに設定され、
前記照明制御手段は、前記温度分布を前記ゾーンごとに前記基準色温度に近づけるように、前記色度可変照明手段を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の車両用照明制御装置。
【請求項4】
前記色度可変照明手段は、発光ダイオードで構成されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用照明制御装置。
【請求項5】
前記光源分布測定手段は、全方位カメラである
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用照明制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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