説明

車両用燃料電池モジュール

【課題】車両用燃料電池モジュールの発電セル間の短絡を防止する。
【解決手段】積層した発電セル16から電力を取り出す電気出力端子21,23を備える少なくとも1つのセル積層体15と、セル積層体15が収納される金属製のケース12と、を含む車両用燃料電池モジュール11において、少なくとも1つのセル積層体15は、発電セル16の積層方向が車両の前後方向であって、電気出力端子21,23が車両前方側となるように車両前方のボンネット10内に配置され、ケース12を介した発電セル16間の短絡を防止するようにケース12とセル積層体15の車両側面に向いた面との間に絶縁板49を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用燃料電池モジュールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への取り組みの一つとして、燃料電池を駆動エネルギー源に用いた自動車が注目を浴び、最近では燃料電池を車両前方部に搭載することも検討されている。このように燃料電池を車両前方に搭載した燃料電池自動車では、燃料電池の発電セルは車両の左右方向に積層され、燃料電池からの電力を取り出す電気出力端子や電流遮断器は車両の側面側に配置されている。そして、燃料電池はケースに収納されて保護されるよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、燃料電池から電気を取り出す電気出力端子は熱膨張によって移動するため、電気出力端子をベローズに収納した燃料電池の出力端や(例えば、特許文献2参照)、燃料電池からの電気を取り出す出力ケーブルを絶縁体によって蓋ったものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3767423号明細書
【特許文献2】特開平5−74473号公報
【特許文献3】特開2002−208314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、燃料電池は次第に高圧、大容量のものが製作できるようになってきており、これを積載して高性能の燃料電池車が検討されている。しかし、燃料電池が高圧大容量となるに従って、その幅、長さ等が大きくなり、車両の左右方向に発電セルを積層し、車両の横方向に燃料電池を積載することができなくなる場合がある。このような場合には、車両の前後方向に発電セルを積層し、燃料電池を車両の前後方向に積載することが必要となる場合がある。
【0006】
車両の前方部において、前後方向に燃料電池を搭載する場合には、安全を考慮して燃料電池への燃料配管などを燃料電池搭載スペースの車両後方側に配置することから、発電セルの積層方向に向かって、燃料配管等の接続口と反対側に設けられている発電セルからの電気出力端子が、車両前方部の車両前方側に配置される場合がある。
【0007】
車両前方側に電気出力端子が配置された場合には、車両が物体に前面から衝突した場合に、燃料電池に隣接した車体の変形によって燃料電池が収納されているケースが変形を起こす場合がある。燃料電池のケースの内面には絶縁塗装が施されているが、変形したケースと電気出力端子との接触によってこの絶縁塗装が剥がれてしまい、電気出力端子とケースとが導通して、短絡が発生してしまう可能性がある。
【0008】
また、上記のように車両前方側に燃料電池が搭載された場合には、発電セルの積層方向は車両の前後方向となり、セル積層体の側面が車両側面側となる。他の車両などが車両側面から衝突した場合には、車体側面の変形によって燃料電池が収納されているケースの側面が変形を起こす場合がある。ケースの側面が変形すると、変形したケースがセル積層体の側面に接触し、金属製のケースを介して積層された各発電セルの間に短絡が発生する可能性がある。また、金属製ケースの内面に絶縁塗装がされている場合であっても金属ケースが発電セルに接触することによって絶縁塗装が剥がれてしまい、上記と同様の短絡が発生する可能性がある。
【0009】
燃料電池の電気出力端子あるいは発電セル間で短絡が発生すると、発電セル内で異常電位が生じ、例えば触媒のシンタリングや担持カーボンの酸化などを生じ、触媒の劣化を招くという問題があった。
【0010】
本発明は、車両用燃料電池モジュールの発電セル間の短絡を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の燃料電池モジュールは、積層した発電セルから電力を取り出す電気出力端子を備える少なくとも1つのセル積層体と、前記セル積層体が収納される金属製ケースと、を含む車両用燃料電池モジュールにおいて、少なくとも1つの前記セル積層体は、前記発電セルの積層方向が車両の前後方向であって、前記電気出力端子が車両前方側となるように車両前方ボンネット内に配置され、前記金属製ケースを介した前記発電セル間の短絡を防止するように前記金属製ケースと前記セル積層体の車両側面に向いた面との間に絶縁体を設けること、を特徴とする。
【0012】
本発明の燃料電池モジュールにおいて、複数の前記発電セル積層体の間に、前記絶縁体よりも薄い絶縁シートを設けること、としても好適であるし、前記金属ケースは内面に絶縁層を備え、前記絶縁体は前記絶縁層よりも厚いこと、としても好適であるし、前記金属ケースは内面に絶縁層を備え、前記絶縁体は前記絶縁層よりも厚く、前記絶縁シートは前記絶縁層よりも厚いこと、としても好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、車両用燃料電池モジュールの発電セル間の短絡を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の参考例における燃料電池モジュールを車両に搭載した状態を示す平面模式図である。
【図2】本発明の参考例にかかる燃料電池モジュールにおける発電セルの接続状態を示す説明図である。
【図3】本発明の参考例における燃料電池モジュールを車両に搭載した状態を示す立面模式図である。
【図4】本発明の参考例における燃料電池モジュールの電気出力端子を含む面での部分断面図である。
【図5】本発明の参考例における絶縁カバーの組み合わせ状態と開放状態とを示す斜視図である。
【図6】本発明の参考例における燃料電池モジュールの電気出力端子に絶縁カバーを取り付けた状態の平面断面と立面断面を示す説明図である。
【図7】本発明の参考例における燃料電池モジュールを搭載した車両の前面が物体に衝突した際の車両と燃料電池モジュールの変形状態を示す立面模式図である。
【図8】本発明の他の参考例における燃料電池モジュールの断面を示す模式図である。
【図9】本発明の他の参考例における燃料電池モジュールの断面を示す模式図である。
【図10】本発明の実施形態における燃料電池モジュールを車両に搭載した状態を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する前に、参考例を説明する。
【0016】
図1は、本参考例の燃料電池モジュールを搭載した燃料電池自動車の車両前方部の模式的な平面図である。図1において、燃料電池モジュール11は車両前方部のボンネット10内に配置されている。燃料電池モジュール11はセル積層体15が収納されたケース12を有している。ケース12はケース本体12aと蓋14とを有し、セル積層体15を密閉収納するが、ここでは説明の都合上、蓋14と各電気出力端子21,23に取り付けられた絶縁カバーを取り除いて、内部のセル積層体15やケーブル等の構造が分かるように図示している。
【0017】
セル積層体15は、それぞれ板状の単電池である発電セル16の積層体である第1のセルスタック17と第2のセルスタック18と、各セルスタック17,18の一端に積層された電極板21a,23aと、各電極板21a,23aの両側に設けられたエンドプレート19,20とを備えている。並列配置された各セルスタック17,18は、互いに同数の発電セル16を含み、それぞれ同じ電圧を発生するように構成される。ここで第1のセルスタック17及び第2のセルスタック18の積層方向は共に車両前後方向であり、その前後端に配置された比較的厚め(例えば厚さ15mm程度)の金属のエンドプレート19,20によって各セルタック17,18及び各電極板21a,23aは積層方向に押さえ付けられている。
【0018】
図2に示すように、第1のセルスタック17と第2のセルスタック18とは発電セル16の極性が互いに反対向きに積層され、第1のセルスタック17は図1に示す車両前方側が正極、車両後方側が負極であり、第2のセルスタック18は図1に示す車両前方が負極、車両後方側が正極である。第1のセルスタック17及び第2のセルスタック18のエンドプレート20側の端部は互いに電気的に接続されて、これにより両セルスタック17,18は一つの発電セル16の単電池直列接続体を構成し、所望の高電圧が得られる。また、互いに電気的に接続されているエンドプレート20側の単部は、車体にも接続されており、この接続点が接地電位となっている。
【0019】
従って、第1のセルスタック17及び第2のセルスタック18のエンドプレート19側の端部に積層されている電極板21aの電気出力端子21は接地電位よりも電圧が高い正電気出力端子となり、第2のセルスタック18に積層される電極板23aの電気出力端子23は接地電位よりも電圧が低い負電気出力端子となる。また、車体に取り付けられている金属製のケース12は接地電位となる。
【0020】
エンドプレート19,20はケース12に固定されるが、セルスタック17,18は温度による膨張、収縮等によって積層方向の寸法が変化し得る。そこで、エンドプレート19と電極板21aとの間、及びエンドプレート19と電極板23aとの間には皿バネの積層体(図示せず)が配置され、セルスタック17,18を構成する単電池である発電セル16が常に適度な力で互いに圧接されるように構成される。
【0021】
ケース12の中にはセル積層体15からの電力を外部に取り出すための被覆ケーブル31,33、ハーネス35と電気回路の遮断を行うリレー25、その電気回路や図示しない分配器などが配置される。リレー25と正極、負極それぞれの電気出力端子21,23との間は柔軟性を有した被覆ケーブル31,33で電気的に接続される。被覆ケーブル31,33は正負の各電気出力端子21,23及びリレー25の端子にそれぞれボルト26及びナット28によって固定されている。
【0022】
ケース12の側面の車両後方寄りの位置にサービスプラグ27が取り付けられ、リレー25とサービスプラグ27との間には被覆のあるハーネス35によって正極、負極毎に電気的に接続されている。そして、サービスプラグ27からケース12の外側へ電源出力ケーブル37が引き出され、ハーネス35と電源出力ケーブル37との間はサービスプラグ27によって電気的に接続されている。
【0023】
以上のように燃料電池モジュール11で発生した電力は、リレー25及びサービスプラグ27を経由して電源出力ケーブル37から出力される構成であり、この出力はリレー25及びサービスプラグ27によって遮断可能である。リレー25は外部からの制御信号に応じて、正極、負極それぞれについて被覆ケーブル31,33が接続された端子とハーネス35が接続された端子との間の電気的断続を行う。例えば、リレー25は車両走行時等の通常時にはオン状態に保たれ、燃料電池モジュール11からの出力が可能とされるが、一方、衝突センサ(図示せず)が自車の衝突を検知した場合などに発せられる制御信号に応じてオフ状態に切り替えられ、燃料電池モジュール11からの出力が遮断される。
【0024】
また、セル積層体15のエンドプレート20には燃料入口管41と、排ガス吐出管43とが設けられている。これらの各配管は、ケース12が配置されている車両前部のボンネット10の車両後方側に設けられている。
【0025】
車両前部のボンネット10の内部には、セル積層体15が収納されたケース12の他に、車両の駆動に必要なラジェータ51などの補機が収納され、側面には前輪57が取りつけられている。ラジェータ51はボンネット10の前面のフロントグリル53とケース12との間に設けられており、燃料電池モジュール11を循環している冷却水管路と接続され、冷却水管路を循環する冷却水を冷却するように構成されている。
【0026】
図3は車両前部のボンネット10に配置された燃料電池モジュール11を示す立面模式図である。図3に示すように、車両前部のボンネット10は、車両前部に突き出した形状となっている。そしてハンドル59などが設けられている車室63とボンネット10とは仕切り壁61によって仕切られている。
【0027】
燃料電池モジュール11は、ボンネット10の略中央部に、発電セル16の積層方向が車両の前後方向となるように配置され、車体に固定されている。セル積層体15はケース本体12aの中に収納され、ケース本体12a上部に蓋14が取り付けられてケース12に密閉収納されている。ケース本体12aと蓋14とは、それぞれ内面側に絶縁層13を有している。セル積層体15の車両前方側には、正極、負極の各電極板21a,23aが積層され、各電極板21a,23aからは車両上部に向かって突出した突片である各電気出力端子21,23,が設けられている。そして、蓋14は各電気出力端子21,23との間に必要なクリアランスを持つように、各電気出力端子21,23のある前部上面が上部に盛り上がった形状となっている。
【0028】
図4に示すように、正極、負極の各電極板21a,23aは中間の仕切りによってそれぞれが絶縁されるように構成され、それぞれ正極、負極の各電気出力端子21,23が突出するように設けられている。ケース12の蓋14は各電気出力端子21,23とのクリアランスを確保できるよう、図に示すように接合面よりも上部に向かって盛り上がり、内面には絶縁層13が設けられている。この絶縁層13は絶縁塗装等によって設けられてもよい。各電気出力端子21,23は銅等の導電性材料からなる四角板であり、その中心に孔が開いている。一方、各電気出力端子21,23から電力を取り出す被覆ケーブル31,33はフレキシブルケーブルであり、各被覆ケーブル31,33の一端には各電気出力端子21,23と接続するための取付端子29,30が取りつけられている。取付端子は先端がL字形に折り曲げられた金属板製で、中心固定用の孔が開いている。各電気出力端子21,23の中心に設けられた孔と取付端子29,30に設けられた孔にボルト26を貫通させて、ナット28によって締付固定することによって、被覆ケーブル31,33の取付端子29,30は各電気出力端子21,23に取付、固定される。
【0029】
各電気出力端子21,23と各電気出力端子21,23に取付固定された取付端子29,30の外表面を覆うように絶縁体である絶縁カバー22,24が取りつけられている。絶縁カバー22,24は熱伝導性の良いゴムなどの材料で構成するのが好適である。図5(a)に示すように、各絶縁カバー22,24は、例えば、各電気出力端子21,23のナット側22a,24aとボルト側22b,24bとによって構成され、それぞれの一端が一体で他端が開くような構造で各電気出力端子21,23に取り付けやすいような構造となっている。絶縁カバー22,24は電気出力端子21,23や取付端子29,30やボルト26,ナット28を包み込むような個所の内面側は各形状に合わせた窪みが設けられており、外面はこのくぼみに合わせて外側に突出して、絶縁体としての厚みがなるべく均一となるように構成している。そして、開口側には締付バンド32,34が取りつけられている。締付バンド32,34は一端に孔を開いており、他端にはフックが取りつけられている。そして、図5(b)に示すように、絶縁カバー22,24を各電気出力端子21,23及び取付端子29,30に取り付けた後に、締付バンド32,34の孔にフックを掛けて、各絶縁カバー22,24を各電気出力端子21,23に密着固定できるように構成されている。
【0030】
図6は、絶縁カバー22,24が各電気出力端子21,23及び取付端子29,30の外面に取り付けられた状態の断面を示している。図6(a)に示すように、各絶縁カバー22,24は各電気出力端子21,23に締付バンド32,34によって締付固定された状態では、材質のゴムの弾性で内面が各電気出力端子21,23及び取付端子29,30及びボルト26、ナット28の各表面に密着するようになっている。このため、発熱体でもある各電気出力端子21,23からの熱が各絶縁カバー22,24に伝達されて、外面から放出されやすく、各電気出力端子21,23の温度の上昇を抑えことができる。更に、絶縁カバー22,24は各電気出力端子21,23及び取付端子29,30に対して略均等な厚さを持っていることから、各面からの放熱に偏りがなく、各電気出力端子21,23からの熱を全周から満遍なく放出することができ、温度の偏りをなくすことができる。
【0031】
図6に示すように、絶縁カバー22,24の厚みは、他の絶縁塗装などの厚みに比較して厚くなっていることから外部から衝撃を受けた場合に、その衝撃を吸収することができると共に、その厚みによって絶縁カバー22,24の損傷の発生が低減されることから、各電気出力端子21,23の絶縁状態を保持することができる。
【0032】
以上のように構成された燃料電池モジュール11を搭載した燃料電池車両の前面が他の物体に衝突した場合のボンネット10及び燃料電池モジュール11の変形と各電気出力端子21,23の絶縁状態の保持について説明する。
【0033】
図7に示すように、燃料電池車両の前面が他の物体に衝突すると、図示しない衝突センサが衝突を検知し、リレー25をオフ状態に切り替えて燃料電池モジュール11からの出力が遮断される。前面が衝突することによって車両の前面に設けられているバンパー55が車両後方に向かって押し付けられる。更に、車両の前面にあるフロントグリル53を含むボンネット10が圧縮変形を起こしてその長さが短くなってくる。そして、フロントグリル53と燃料電池モジュール11との間にあるラジェータ51が車両後方に向かって移動し、燃料電池モジュール11のケース本体12a、及び蓋14に押し付けられる。ケース本体12aと蓋14は、例えば、アルミニウム合金等の金属製であることから、塑性変形して前方がつぶれる。この際、蓋14は、車両の前後方向に圧縮されるような変形をするのみでなく、蓋14の上部にある盛り上がり部分が下方向、すなわち各電気出力端子21,23に向かって変形する。この変形によって蓋14の内面が各電気出力端子21,23外側に取り付けられた絶縁カバー22,24に接触する。先に説明したように、電気出力端子21は接地電位よりも電圧の高い正電気出力端子であり、電気出力端子23は接地電位より電圧の低い負電気出力端子であり、蓋14とケース本体12aとは金属製で接地電位となっていることから、変形によって金属製の蓋14と電気出力端子21,23のいずれか一方との絶縁が損傷して蓋14と電気出力端子21,23のいずれか一方とが接触すると、接地電位と正電圧、あるいは接地電位と負電圧との間の電圧差による短絡が発生する。リレー25によって燃料電池モジュール11の電気出力が遮断された状態であっても、燃料電池モジュール11の各電極板21a,23aは高い正電圧と負電圧の状態であるため、上記の短絡が発生すると、発電セル16内で異常電位が生じ、例えば触媒のシンタリングや担持カーボンの酸化などによって触媒の劣化を招く。更に、両方の電気出力端子21,23が導通体である蓋14との間の絶縁が損傷を受け、蓋14を介して電気出力端子21,23間で短絡が発生すると、蓋14といずれか一方の電気出力端子21,23との間で発生する短絡の倍の電圧差の短絡が発生し、触媒の損傷がより大きくなる。
【0034】
しかし、本参考例では、各電気出力端子21,23には、厚いゴム製の絶縁カバー22,24が取りつけられていることから、蓋14が各電気出力端子21,23の外面に接触しても、やわらかい絶縁塗装でできている絶縁層13を損傷することがないので、金属製の蓋14と各電気出力端子21,23とが接触することを防止することができる。このため、蓋14と各電気出力端子21、23との間および、電気出力端子21、23の間の短絡を効果的に防止することができ、発電セル16内で異常電位が生じ、例えば触媒のシンタリングや担持カーボンの酸化などによって触媒の劣化を招くことを防止することができるという効果を奏する。
【0035】
また、蓋14の内面の絶縁層13が絶縁塗装等によって構成されており、金属製の蓋14の大きな塑性変形に追従することができず塗装面が金属面から剥がれて金属面が蓋14の内面に露出しても、各電気出力端子21,23に取りつけられている絶縁カバー22,24によって、絶縁状態を保持することができ、電気出力端子の短絡の発生を効果的に防止することができるという効果を奏する。
【0036】
図8を参照しながら、第2の参考例について説明する。先に説明した参考例と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本参考例の燃料電池モジュール11は、セル積層体15を収納しているケース12の蓋14の内面に樹脂製の絶縁板45を樹脂製の絶縁ボルト47によって取り付けたものである。絶縁板45は電気出力端子21,23と蓋14内面の絶縁層13との間に設けられていればよく、その幅は燃料電池モジュール11の全横幅となっていてもよいし、電気出力端子部分のみとなるよう構成されていてもよい。また、取り付けは樹脂性の絶縁ボルト47として、絶縁ボルト47が電気出力端子21,23に接触した場合でも、蓋14と電気出力端子21,23との間あるいは蓋14を介して電気出力端子21,23同士の短絡を防止することができるような構成としている。
【0037】
樹脂製の絶縁板45は蓋14の内面に設けられている絶縁層13よりも厚みが厚いものであり、衝突によって蓋14の盛り上がり部が下向きに変形しても、その厚みによって各電気出力端子21,23と蓋14の金属部分とが接触して短絡が発生することを防止することができるように構成されている。
【0038】
図9を参照しながら、もう1つの他の参考例について説明する。先の参考例と同様の部位には同様の符号を付して説明を省略する。本参考例では、ケース12に収納されたセル積層体15のエンドプレート19あるいは図示しないテンションプレート等の発電セル16を締結する締結部材に樹脂製の絶縁板46を取り付けたものである。本参考例では、絶縁板46は、エンドプレート19に絶縁ボルト48によって固定されている。絶縁板46は電気出力端子21,23と蓋14内面に設けられた絶縁層13との間に設けられて、衝突によって蓋14の盛り上がり部が電気出力端子21,23に向かって変形しても、蓋14の金属部と電気出力端子21,23とが接触して短絡が発生しないように、絶縁層13よりも厚く構成されている。絶縁板46は、燃料電池モジュール11の幅方向全面に取り付けられるように構成してもよいし、電気出力端子21,23の部分にのみ取り付けられるように構成してもよい。本参考例も、先の参考例同様、蓋14と各電気出力端子21,23との間及び、電気出力端子21,23同士の短絡を効果的に防止することができるという効果を奏する。
【0039】
図8、図9を参照して説明した他の参考例においては、各電気出力端子21,23には、絶縁カバー22,24をつけないことで説明したが、樹脂の絶縁板45,46に加えて図1から図6に示した参考例同様に絶縁カバー22,24を重ねて取り付けることとしても好適である。
【0040】
図10を参照しながら本発明の実施形態について説明する。先に述べた参考例と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。本実施形態では、燃料電池モジュール11のケース12の中にはセル積層体15を構成する第1、第2のセルスタック17,18が収納されている。図10においてセルスタック17の左側の面であるセルスタック17の車両側面に向かった側面とケース12との間には絶縁板49が設けられている。図10においてセルスタック18右側の面であるセルスタック18の車両側面に向かった側面とケース12との間にも絶縁板49が設けられている。また、第1、第2のセルスタック17,18の間には、絶縁シート50が設けられている。絶縁板49は、ゴム板あるいは樹脂板等によって構成してもよい。また絶縁シートは絶縁板49よりも薄いゴム板あるいは樹脂板などによって構成してもよい。絶縁板49、絶縁シート50は絶縁ボルトなどによってケース12に取り付けてもよいし、各セルスタック17,18に取り付けるように構成してもよい。
【0041】
ケース12の内面に絶縁塗装などによって絶縁層が設けられるように構成してもよいし、絶縁板49が絶縁層よりも厚くなるように構成してもよい。
【0042】
このように構成することによって、側面からの衝突の際に、ケースの変形によってケースを介した発電セル間の短絡の発生を効果的に防止することができるという効果を奏する。また、変形しやすい側面の絶縁性が高くなるように、側面に厚い絶縁体を配置することによって、全体に厚い絶縁体を設けるよりも絶縁体を少なくすることができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0043】
10 ボンネット、11 燃料電池モジュール、12 ケース、12a ケース本体、13 絶縁層、14 蓋、15 セル積層体、16 発電セル、17,18 セルスタック、19,20 エンドプレート、21,23 電気出力端子、21a,23a 電極板、22,24 絶縁カバー、25 リレー、26 ボルト、27 サービスプラグ、28 ナット、29,30 取付端子、31,33 被覆ケーブル、32,34 締付バンド、35 ハーネス、37 電源出力ケーブル、41 燃料入口管、43 排ガス吐出管、45,46,49 絶縁板、47,48 絶縁ボルト、50 絶縁シート、51 ラジェータ、53 フロントグリル、55 バンパー、57 前輪、59 ハンドル、61 仕切り壁、63 車室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層した発電セルから電力を取り出す電気出力端子を備える少なくとも1つのセル積層体と、
前記セル積層体が収納される金属製ケースと、を含む車両用燃料電池モジュールにおいて、
少なくとも1つの前記セル積層体は、前記発電セルの積層方向が車両の前後方向であって、前記電気出力端子が車両前方側となるように車両前方ボンネット内に配置され、
前記金属製ケースを介した前記発電セル間の短絡を防止するように前記金属製ケースと前記セル積層体の車両側面に向いた面との間に絶縁体を設けること、
を特徴とする車両用燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用燃料電池モジュールにおいて、
複数の前記発電セル積層体の間に、前記絶縁体よりも薄い絶縁シートを設けること、
を特徴とする車両用燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用燃料電池モジュールにおいて、
前記金属ケースは内面に絶縁層を備え、
前記絶縁体は前記絶縁層よりも厚いこと、
を特徴とする車両用燃料電池モジュール。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用燃料電池モジュールにおいて、
前記金属ケースは内面に絶縁層を備え、
前記絶縁体は前記絶縁層よりも厚く、前記絶縁シートは前記絶縁層よりも厚いこと、
を特徴とする車両用燃料電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−12478(P2013−12478A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162470(P2012−162470)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2007−6859(P2007−6859)の分割
【原出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】