説明

車両用空気調和装置

【課題】吹き出し口の変化による風系騒音の変化が抑えられ、乗員に違和感を与えない揺らぎ風制御を行うことができる車両用空気調和装置を提供すること。
【解決手段】車室内に向けて設定された複数の吹き出し口から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御を行う車両用空気調和装置において、複数の吹き出し口17,18のそれぞれに設定した複数のモードドア11,12と、複数のモードドア11,12を、設定した揺らぎ風制御周期に応じて交互に開閉制御する揺らぎ風制御手段(図4)と、揺らぎ風制御手段による揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口17,18からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量を制御する風量制御手段(図5)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に向けて設定された複数の吹き出し口から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御を行う車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員に不快感や違和感を与えることなく揺らぎを発生させて空調フィーリングを向上することを目的とし、吹き出しモードとして、フットモードまたはフット・デフロスタモードが選定されたときに揺らぎ風制御を行う場合、フットドアとデフロスタドアとを所定の範囲内で周期的に往復揺動させる車両用空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3855802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用空気調和装置にあっては、揺らぎ風制御を行う場合、送風機からの風量は一定のままで行われていたため、フットドアが開くときの乗員が感じる騒音レベルとデフロスタドアが開くときの乗員が感じる騒音レベルとが異なり、揺らぎ風制御中、周期的に風系騒音が変化し、この騒音変化により乗員に違和感を与えてしまう、という問題があった。
【0004】
すなわち、空調ケース内からフット吹き出し口に至るまでの経路と、空調ケース内からデフ吹き出し口に至るまでの経路は異なり、経路が異なることにより、当然に通気抵抗には差がある。この通気抵抗が大きいほど騒音レベルが高くなるというように、通気抵抗差が吹き出し風の騒音レベル差となることによる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、吹き出し口の変化による風系騒音の変化が抑えられ、乗員に違和感を与えない揺らぎ風制御を行うことができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、車室内に向けて設定された複数の吹き出し口から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御を行う車両用空気調和装置において、
前記複数の吹き出し口のそれぞれに設定した複数のモードドアと、
前記複数のモードドアを、設定した揺らぎ風制御周期に応じて交互に開閉制御する揺らぎ風制御手段と、
前記揺らぎ風制御手段による揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量を制御する風量制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の車両用空気調和装置にあっては、風量制御手段において、揺らぎ風制御手段による揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量が制御される。
すなわち、異なるモードドアを開くとき、通気抵抗が小さい側のモードドアを開いたときに比べ、通気抵抗が大きい側のモードドアを開いたときの方が吹き出し風の騒音レベルが高くなる。一方、同じモードドアを開いたとき、送風機からの風量を増すと騒音レベルは増大し、風量を減じると騒音レベルは低下する。
したがって、揺らぎ風制御中に風量制御を加え、通気抵抗が大きいモードドアを開いたときに風量を減じ、通気抵抗が小さいモードドアを開いたときに風量を増すことで、乗員が受ける騒音レベルを一定に保つことが可能である。
この結果、吹き出し口の変化による風系騒音の変化が抑えられ、乗員に違和感を与えない揺らぎ風制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の車両用空気調和装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の空調ユニット1(車両用空気調和装置の一例)を示す全体システム図である。図2は実施例1の空調ユニット1の空調風の吹き出し口が設けられた自動車のインストルメントパネルを示す斜視図である。
【0010】
実施例1の空調ユニット1は、図1に示すように、空調コントローラ2と、暖房用熱交換器3と、冷房用熱交換器4と、ブロワファン5(送風機)と、ブロワモータ6と、インテークドア7と、エアミックスドア8と、内気吸込み口13と、外気吸込み口14と、空調ユニットケース19と、揺らぎスイッチ20と、エンジン21と、コンプレッサ22と、コンデンサ23と、レシーバドライヤー24と、膨張弁25と、を備えている。
【0011】
前記空調コントローラ2は、所定の入力情報に基づいて、ブロワモータ6の回転数と、図外のコンプレッサクラッチの接続/切断と、インテークドア7のドア開度と、エアミックスドア8のドア開度と、後述する各モードドア9,10,11,12のドア開度を制御する。
【0012】
前記暖房用熱交換器3は、ヒータコアと呼ばれるもので、エンジン21を冷却するエンジン冷却水を熱交換媒体とする。
【0013】
前記冷房用熱交換器4は、エバポレータと呼ばれるもので、冷凍サイクルにより作り出された冷媒を熱交換媒体とする。冷凍サイクルは、エンジン21により駆動されるコンプレッサ22と、コンデンサ23と、レシーバドライヤー24と、膨張弁25と、冷房用熱交換器4と、により構成される。
【0014】
前記ブロワファン5は、ブロワモータ6により回転駆動され、インテークドア7の切り換えにより選択された外気吸込み口14からの外気、または、内気吸込み口13からの内気を吸入し、冷房用熱交換器4に向かって空調ユニットケース19内へ送風する。
【0015】
前記エアミックスドア8は、冷房用熱交換器4と暖房用熱交換器3の間の位置に配置され、冷房用熱交換器4を通過する冷風と、冷房用熱交換器4及び暖房用熱交換器3を通過する温風の混合比を可変に制御する。
【0016】
実施例1の空調ユニット1は、図1に示すように、モードドアとして、デフモードの選択時に開かれるデフドア9と、ベントモードの選択時であってフルクール時に開かれるアッパーベントドア10と、ベントモードの選択時に開かれるベントドア11と、フットモードの選択時に開かれるフットドア12と、を備えている。
【0017】
実施例1の空調ユニット1は、図1に示すように、車室内に向けて設定された複数の吹き出し口として、デフドア9に対応するデフ吹き出し口15と、アッパーベントドア10に対応するアッパーベント吹き出し口16と、ベントドア11に対応するベント吹き出し口17と、フットドア12に対応するフット吹き出し口18と、を備えている。
【0018】
自動車の前席の前方側には、図2に示すように、インストルメントパネル26とセンターコンソール27が配置される。このインストルメントパネル26とセンターコンソール27に、図外のフロントガラスの内面に向かって温風等を吹き出すデフ吹き出し口15と、上方に向かって冷風等を吹き出すアッパーベント吹き出し口16と、左右位置と中央位置の三方から乗員の上半身に向かって冷風等を吹き出すベント吹き出し口17と、左右位置から乗員の足元に温風等を吹き出すフットドア12に対応するフット吹き出し口18と、が設けられている。なお、各吹き出し口15,16,17,18の位置には、風の向きをコントロールするグリルが設けられている。
【0019】
図3は実施例1の空調ユニット1の空調コントローラ2にて実行される空調制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0020】
ステップS1は、各制御に必要な入力情報(信号)を読み込む。
具体的には、吹き出し温センサ、外気温センサ、室内温センサ、吸い込み温センサ、日射量センサからのセンサ情報と、コントロールパネルからの各設定情報やスイッチ情報を読み込む。
【0021】
ステップS2は、ステップS1での信号読み込みに続き、入力されたセンサ情報に基づいて入力データ処理を行った後、目標吹出温度の算出を行う。
この目標吹出温度の算出は、例えば、温度設定ダイアルに対する操作で乗員が希望する温度に設定すると、この設定温度を読み込み、外気温に応じて設定温度に対して乗員の体感温度に合わせるように設定温度の補正を行い目標吹出温度を算出する。
【0022】
ステップS3は、ステップS2での目標吹出温度の算出に続き、図6に示すフローチャートにしたがって、通常の風量制御時における送風機制御値と、揺らぎ風制御時における送風機制御値の算出を行う。
【0023】
ステップS4は、ステップS3での送風機制御値の算出に続き、ステップS1で算出した目標吹出温度に基づき、温調ドアであるエアミックスドア8のドアアクチュエータへの制御値を算出する。
この温調ドア制御値の算出は、例えば、目標吹出温度に応じてエアミックスドア8の目標ドア開度値を決定し、目標ドア開度値と現時点のドア開度値に基づいてドアアクチュエータへの制御値を算出する。
【0024】
ステップS5は、ステップS4での温調ドア制御値の算出に続き、図4に示すフローチャートにしたがって、通常の吹出口制御(モード制御)におけるモードドア制御値と、揺らぎ風制御時におけるモードドア制御値の算出を行う。
【0025】
ステップS6では、ステップS5でのモードドア制御値の算出に続き、ステップS3で算出された送風機制御値と、ステップS4で算出された温調ドア制御値と、ステップS5で算出されたモードドア制御値を出力する。
なお、上記制御以外に、インテークドア7のドア位置制御による外気導入か内気循環かの吸込口制御、冷凍サイクルに設定されたコンプレッサ22の作動制御等も併せて行う。
【0026】
図4は実施例1の空調コントローラ2にて実行される空調制御処理のうちモードドア制御値の算出処理(図3のフローチャートのステップS5)を示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0027】
ステップS51は、揺らぎスイッチ20からのスイッチ信号がOFFかONかを判断する。スイッチ信号がOFFと判断された場合はステップS52へ移行し、スイッチ信号がONと判断された場合はステップS53へ移行する。
ここで、実施例1では、揺らぎスイッチ20をONとし、揺らぎ風制御に入ると、ベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる制御が行われる。
【0028】
ステップS52は、ステップS51でのスイッチ信号がOFFとの判断に続き、通常制御にしたがって選択モードに応じたドア開度が算出される。
この通常のモードドア開度制御のうち、手動制御では、吹き出しモードスイッチにて選択された吹出口モード(ベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフモード等)を得るようにモードドアの開閉を制御する。また、自動制御では、目標温調ドア開度や日射量等に基づいて算出した吹出風温度に応じて、吹出口モードのいずれかを自動選択する。この場合、開くドアのドア開度値を100%とし、閉じるドアのドア開度値を0%とする。
【0029】
ステップS53は、ステップS51でのスイッチ信号がONとの判断に続き、予め設定した揺らぎ風制御周期に応じて、ベントドア11のドア開度の変化を算出する。
【0030】
ステップS54は、ステップS53でのベントドア11のドア開度変化算出に続き、予め設定した揺らぎ風制御周期に応じて、フットドア12のドア開度の変化を算出する。
【0031】
ステップS55は、ステップS52での選択モードに応じたドア開度の算出、あるいは、ステップS54でのフットドア12のドア開度変化算出に続き、算出されたドア開度を目標ドア開度とし、実ドア開度を目標ドア開度に一致させるように、ドアアクチュエータへのモードドア制御値を算出する。
なお、ステップS51→ステップS53→ステップS54→ステップS55へと進む流れは、揺らぎ風制御手段に相当する。
【0032】
図5は実施例1の空調コントローラ2にて実行される空調制御処理のうち送風機制御値の算出処理(図3のフローチャートのステップS3)を示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。
【0033】
ステップS31は、揺らぎスイッチ20からのスイッチ信号がOFFかONかを判断する。スイッチ信号がOFFと判断された場合はステップS32へ移行し、スイッチ信号がONと判断された場合はステップS33へ移行する。
【0034】
ステップS32は、ステップS31でのスイッチ信号がOFFとの判断に続き、通常制御にしたがって手動又は自動での風量要求に応じてブロワモータ6への目標デューティ比が算出される。
【0035】
ステップS33は、ステップS31でのスイッチ信号がONとの判断に続き、揺らぎ風制御にしたがって、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるようにブロワモータ6への目標デューティ比変化が算出される。
【0036】
ステップS34は、ステップS32での風量要求に応じた目標デューティ比の算出、あるいは、ステップS34での揺らぎ風制御に基づく目標デューティ比変化の算出に続き、ブロワモータ6への実デューティ比を算出された目標デューティ比に一致させるように、ブロワモータ6への送風機制御値を算出する。
なお、ステップS31→ステップS33→ステップS34へと進む流れは、風量制御手段に相当する。
【0037】
次に、本発明に至る経緯について説明する。
乗員の空調フィーリングを向上させるために、例えば、ベント吹き出し口とフット吹き出し口を交互に切り換える揺らぎ風制御を行う場合、ベントドアが開くときの乗員が感じる騒音レベルとフットドアが開くときの乗員が感じる騒音レベルとが異なり、揺らぎ風制御中、周期的に風系騒音が変化し、この騒音変化により乗員に違和感を与えてしまう。
【0038】
すなわち、空調ケース内からベント吹き出し口に至るまでの経路と、空調ケース内からフット吹き出し口に至るまでの経路は異なり、経路が異なることにより、当然に通気抵抗には差がある。この通気抵抗が大きいほど騒音レベルが高くなるというように、通気抵抗差が吹き出し風の騒音変化となってあらわれる。
【0039】
そして、吹き出し口を交互に切り換える揺らぎ風制御を行う場合、風系騒音が揺らぎ風制御の本来の目的である乗員の空調フィーリングを損なわせるため、揺らぎ風制御中においては、吹き出し口の切り換え揺らぎのみとし、風系騒音の揺らぎについては、これを極力抑えたいという要求がある。
【0040】
本発明者は、揺らぎ風制御中に生じる風系騒音の揺らぎを抑えたいという要求に対し、制御周期に同期させた風量の揺らぎ制御を組み合わせることで、違和感となっていた風系騒音を抑えることができる点に着目した。
上記着目点に基づき、揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量を制御する構成を採用した。
したがって、吹き出し口の変化による風系騒音の変化が抑えられ、乗員に違和感を与えない揺らぎ風制御を行うことができる。
【0041】
次に、作用を説明する。
以下、実施例1の空調ユニット1における作用を、「揺らぎスイッチOFF時の作用」と「揺らぎスイッチON時の揺らぎ風制御作用」に分けて説明する。
【0042】
[揺らぎスイッチOFF時の作用]
揺らぎスイッチOFF時には、図4のフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS52→ステップS55→リターンという流れが繰り返される。そして、ステップS52において、選択モードに応じたドア開度が算出され、ステップS55において、算出されたドア開度を目標ドア開度とし、実ドア開度を目標ドア開度に一致させるように、ドアアクチュエータへのモードドア制御値が算出される。
【0043】
揺らぎスイッチOFF時には、図5のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS34→リターンという流れが繰り返される。そして、ステップS32において、手動又は自動での風量要求に応じてブロワモータ6への目標デューティ比が算出され、ステップS34において、ブロワモータ6への実デューティ比を算出された目標デューティ比に一致させるように、ブロワモータ6への送風機制御値が算出される。
【0044】
このように、揺らぎスイッチOFF時には、手動又は自動での風量要求に応じてブロワモータ6が一定の風量を出すように作動し、また、手動選択又は自動選択された吹出口モード(ベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフモード等)を得るように特定のモードドアを開き、他のモードドアは閉じたままとされる。
【0045】
したがって、例えば、夏季にベントモードを選択しているときは、風量要求に変更がない限り風量は一定のままで風系騒音に変化が無く、ベント吹出し口17から冷風が乗員の上半身に向かって吹き出されることになる。
【0046】
[揺らぎスイッチON時の揺らぎ風制御作用]
揺らぎスイッチON時には、図4に示すフローチャートにおいて、ステップS51→ステップS53→ステップS54→ステップS55→リターンという流れが繰り返される。そして、ステップS53において、予め設定した揺らぎ風制御周期に応じて、ベントドア11のドア開度の変化が算出され、ステップS54において、予め設定した揺らぎ風制御周期に応じて、フットドア12のドア開度の変化が算出され、ステップS55において、算出されたドア開度を目標ドア開度とし、実ドア開度を目標ドア開度に一致させるように、ドアアクチュエータへのモードドア制御値が算出される。
このように、揺らぎスイッチON時における吹き出し口の揺らぎ風制御は、予め設定した揺らぎ風制御周期に応じて、ベントドア11とフットドア12を交互に開閉制御することで行われる。
【0047】
揺らぎスイッチON時には、図5のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS33→ステップS34→リターンという流れが繰り返される。そして、ステップS33において、揺らぎ風制御にしたがって、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるようにブロワモータ6への目標デューティ比変化が算出され、ステップS34において、ブロワモータ6への実デューティ比を算出された目標デューティ比に一致させるように、ブロワモータ6への送風機制御値が算出される。
このように、揺らぎスイッチON時における風量制御は、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風量を変化させる制御が行われる。
【0048】
図6は実施例1で採用したベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御における吹き出し配風比特性図である。以下、吹き出し口の揺らぎ風制御を説明する。
【0049】
例えば、揺らぎ風制御開始時にベントドア11のドア開度を100%とし、フットドア12のドア開度を0%とする。この場合、1制御周期の中間時点でベントドア11のドア開度を0%にするように徐々に閉じてゆくのに同期させ、1制御周期の中間時点でフットドア12のドア開度を100%にするように徐々に開いてゆく。そして、1制御周期の終了時点でベントドア11のドア開度を100%に戻すように徐々に開いてゆくのに同期させ、1制御周期の終了時点でフットドア12のドア開度を0%に戻すように徐々に閉じてゆく。さらに、ベントドア11とフットドア12の100%開度と0%開度を除くドア開度変更過程では、ドア開度の変化と配風比の変化がリニアに比例する関係にないため、図6に示すように、ベント吹き出し口17とフット吹き出し口18からの配風比の和が一定で、徐々に配風比を変化させるように、ドア開度の変化を決めることで吹き出し口の揺らぎ風制御が行われる。
【0050】
図7はベント吹き出し口17からの吹き出し時とフット吹き出し口18からの吹き出し時の騒音と風量の関係特性図である。図8はベント吹き出し口17からの吹き出し時とフット吹き出し口18からの吹き出し時の騒音とブロワモータ6へのデューティ比の関係特性図である。図9は実施例1で採用したベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御中におけるブロワモータ6へのデューティ比変化特性図である。以下、揺らぎ風制御中の風量制御を説明する。
【0051】
実施例1の揺らぎ風制御で用いるベント吹き出し口17とフット吹き出し口18とは、ベント風の通風経路とフット風の通風経路の通風抵抗を比較した場合、断面積変化や曲がりが大きいため、フット風の通風経路の方がベント風の通風経路より通風抵抗が大きい。
すなわち、騒音と風量の関係特性をみると、図7に示すように、同じ風量位置ではフット吹き出し口18から風を吹き出している時の騒音レベルがベント吹き出し口17から風を吹き出している時の騒音レベルより大きくなる。したがって、ベント吹き出し口17とフット吹き出し口18のいずれの選択時にも、同じ騒音レベルにするには、フット吹き出し口18から風を吹き出している時に風量を低減する必要がある。
この騒音と風量の関係は、風量とブロワモータ6へのデューティ比が比例関係にあることで、図8に示すように、騒音とブロワモータ6へのデューティ比の関係特性についても同じことが言える。
このため、揺らぎ制御を開始すると、予め測定することで得られた図8に示すデューティ比と騒音の関係に基づき、図9に示すように、ベント吹き出し口17からの吹き出し配風比が最大のときに最高デューティ比Aとし、フット吹き出し口18からの吹き出し配風比が最大のときに最低デューティ比Bとし、2つの吹き出し口からの配風比の変化に応じて徐々にデューティ比を変化させることで揺らぎ風制御中の風量制御を行う。
【0052】
したがって、ベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御に、揺らぎ風制御周期に同期して送風量を変化させる風量制御を組み合わせることで、風系騒音の変化による違和感の無い揺らぎ風制御を行うことができる。
【0053】
次に、効果を説明する。
実施例1の空調ユニット1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0054】
(1) 車室内に向けて設定された複数の吹き出し口17,18から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御を行う車両用空気調和装置において、前記複数の吹き出し口17,18のそれぞれに設定した複数のモードドア11,12と、前記複数のモードドア11,12を、設定した揺らぎ風制御周期に応じて交互に開閉制御する揺らぎ風制御手段(図4)と、前記揺らぎ風制御手段による揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口17,18からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量を制御する風量制御手段(図5)と、を備えたため、吹き出し口の変化による風系騒音の変化が抑えられ、乗員に違和感を与えない揺らぎ風制御を行うことができる。
【0055】
(2) 前記風量制御手段(図5)は、各吹き出し口17,18の通気抵抗差を考慮し、吹き出しモードが変更される過程で、吹き出し風騒音レベルが一定になるように、予め測定することで得られた騒音と風量の関係特性に基づき、ブロワファン5の風量を制御するため、揺らぎ風制御時、吹き出し口の変化による風系騒音の変化を精度良く抑えることができる。
【0056】
(3) 前記揺らぎ風制御手段(図4)は、揺らぎ制御を開始すると、第1ドア(ベントドア11)と第2ドア(フットドア12)を、予め設定された揺らぎ風制御周期に応じ、吹き出し配風比を徐々に変化させながら交互に開閉制御し、前記風量制御手段(図5)は、揺らぎ制御を開始すると、ブロワファン5を駆動するブロワモータ6へのデューティ比を、配風比の変化に応じて徐々に変化させるデューティ比制御を行うため、揺らぎ風制御時、吹き出し口を変更する過渡期において風系騒音の変化を精度良く抑えることができる。
【0057】
(4) 前記揺らぎ風制御手段(図4)は、前記第1ドアをベントドア11とし、前記第2ドアをフットドア12とし、揺らぎ制御を開始すると、ベント吹き出し口17とフット吹き出し口18からの吹き出し配風比を徐々に変化させながら交互に開閉制御し、前記風量制御手段(図5)は、揺らぎ制御を開始すると、予め測定することで得られたデューティ比と騒音の関係に基づき、ベント吹き出し口17からの吹き出し配風比が最大のときに最高デューティ比Aとし、フット吹き出し口18からの吹き出し配風比が最大のときに最低デューティ比Bとし、2つの吹き出し口17,18からの配風比の変化に応じて徐々にデューティ比を変化させるため、ベントとフットの2つの吹き出し口17,18を交互に開閉制御する揺らぎ風制御時、吹き出し口17,18の変化による風系騒音の変化を整然と抑えた違和感の無い揺らぎ風制御を行うことができる。
【0058】
以上、本発明の車両用空気調和装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
実施例1では、揺らぎ風制御モードとして、ベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる例を示した。しかし、実施例1の場合、揺らぎ風制御モードとして、
(a)ベント:フット、(b)フット:デフ、(c)ベント:アッパーベント、(d)ベント:デフ、(e)フット:アッパーベント、(f)デフ:アッパーベント
のうち、いずれのパターンを用いても良い。さらに、3つ以上の吹き出し口を交互に開閉するような制御としても良い。要するに、揺らぎ風制御手段による揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量を制御する風量制御手段を備えたものであれば、実施例1には限られることはない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
実施例1では、エンジン車へ車両用空気調和装置を適用する例を示したが、ハイブリッド車や電気自動車等の他の車両用空気調和装置に対しても適用することができる。要するに、車室内に向けて設定された複数の吹き出し口から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御を行う車両用空気調和装置であれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1の空調ユニット1(車両用空気調和装置の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の空調ユニット1の空調風の吹き出し口が設けられた自動車のインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図3】実施例1の空調ユニット1の空調コントローラ2にて実行される空調制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の空調コントローラ2にて実行される空調制御処理のうちモードドア制御値の算出処理(図3のフローチャートのステップS5)を示すフローチャートである。
【図5】実施例1の空調コントローラ2にて実行される空調制御処理のうち送風機制御値の算出処理(図3のフローチャートのステップS3)を示すフローチャートである。
【図6】実施例1で採用したベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御における吹き出し配風比特性図である。
【図7】ベント吹き出し口17からの吹き出し時とフット吹き出し口18からの吹き出し時の騒音と風量の関係特性図である。
【図8】ベント吹き出し口17からの吹き出し時とフット吹き出し口18からの吹き出し時の騒音とブロワモータ6へのデューティ比の関係特性図である。
【図9】実施例1で採用したベント吹き出し口17とフット吹き出し口18から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御中におけるブロワモータ6へのデューティ比変化特性図である。
【符号の説明】
【0062】
1 空調ユニット(車両用空気調和装置の一例)
2 空調コントローラ
3 暖房用熱交換器
4 冷房用熱交換器
5 ブロワファン(送風機)
6 ブロワモータ
7 インテークドア
8 エアミックスドア
9 デフドア
10 アッパーベントドア
11 ベントドア
12 フットドア
13 内気吸込み口
14 外気吸込み口
15 デフ吹き出し口
16 アッパーベント吹き出し口
17 ベント吹き出し口
18 フット吹き出し口
19 空調ユニットケース
20 揺らぎスイッチ
21 エンジン
22 コンプレッサ
23 コンデンサ
24 レシーバドライヤー
25 膨張弁
26 インストルメントパネル
27 センターコンソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に向けて設定された複数の吹き出し口から交互に風を吹き出させる揺らぎ風制御を行う車両用空気調和装置において、
前記複数の吹き出し口のそれぞれに設定した複数のモードドアと、
前記複数のモードドアを、設定した揺らぎ風制御周期に応じて交互に開閉制御する揺らぎ風制御手段と、
前記揺らぎ風制御手段による揺らぎ風制御中、乗員が受ける各吹き出し口からの吹き出し風騒音レベルが一定になるように送風機の風量を制御する風量制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用空気調和装置において、
前記風量制御手段は、各吹き出し口の通気抵抗差を考慮し、吹き出しモードが変更される過程で、吹き出し風騒音レベルが一定になるように、予め測定することで得られた騒音と風量の関係特性に基づき、送風機の風量を制御することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用空気調和装置において、
前記揺らぎ風制御手段は、揺らぎ制御を開始すると、第1ドアと第2ドアを、予め設定された揺らぎ風制御周期に応じ、吹き出し配風比を徐々に変化させながら交互に開閉制御し、
前記風量制御手段は、揺らぎ制御を開始すると、送風機を駆動するブロワモータへのデューティ比を、配風比の変化に応じて徐々に変化させるデューティ比制御を行うことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用空気調和装置において、
前記揺らぎ風制御手段は、前記第1ドアをベントドアとし、前記第2ドアをフットドアとし、揺らぎ制御を開始すると、ベント吹き出し口とフット吹き出し口からの吹き出し配風比を徐々に変化させながら交互に開閉制御し、
前記風量制御手段は、揺らぎ制御を開始すると、予め測定することで得られたデューティ比と騒音の関係に基づき、ベント吹き出し口からの吹き出し配風比が最大のときに最高デューティ比とし、フット吹き出し口からの吹き出し配風比が最大のときに最低デューティ比とし、2つの吹き出し口からの配風比の変化に応じて徐々にデューティ比を変化させることを特徴とする車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−302839(P2008−302839A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152678(P2007−152678)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】