説明

車両用空調システム

【課題】プレ空調実行時、ユーザが乗車しようとするときに、空調モードの変化により生ずるユーザの不快感を和らげることが可能な車両用空調システムを提供する。
【解決手段】ユーザが携帯する携帯機からの、ユーザが乗車する前に車室内を予め空調するプレ空調を実行させるためのプレ空調指示を受信したときに、プレ空調開始条件が成立したか否かに基づいて、空調装置の動作制御を行う第1プレ空調を実施し、第1プレ空調を実施中に、ユーザに乗車意思があると判定したとき、ユーザが乗車しようとする座席の特定結果に基づいて空調装置の動作制御を行う第2プレ空調を実施することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関し、特に、乗員が乗車する前に車室内を予め空調するプレ空調機能を備えた車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用空調システムにおいて、夏場など車室内温度が非常に高くなる環境下において、ユーザの乗車前に予め空調(プレ空調)を行うことで、乗車時の不快感を低減する方法が考案されている。
【0003】
例えば、乗員が乗車するときの空調快適性について考慮し、乗員が乗車する前に車両に近接したことを検知して空調を静穏モードで制御することにより、空調風の嫌みとコンプレッサの騒音を軽減して乗員が快適に乗車できるようにするとともに、空調を再始動させるまでの空調停止を回避して厳しい環境下でも十分な空調を行うことのできる車両用空調装置の制御システムが考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−069657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレ空調は室内環境を整えるための動作モードであるため、ユーザの有無に関係なく動作しており、必ずしも快適とはいえない。特に、プレ空調が起動後、短時間で乗車した場合は快適な室内環境とはなっていない。また、特許文献1のように、ユーザ乗車時に空調を抑える場合、空調風の嫌みの軽減およびコンプレッサの騒音の軽減という点では効果があるが、温度の観点では快適とは限らず十分な効果をユーザに与えられないという問題がある。
【0006】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、プレ空調実行時、ユーザが乗車しようとするときに、空調モードの変化により生ずるユーザの不快感を和らげることが可能な車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するための車両用空調システムは、車両の車室内の空調を行う空調装置と、ユーザが携帯する携帯機からの、ユーザが乗車する前に車室内を予め空調するプレ空調を実行させるためのプレ空調指示を受信する受信部と、受信部がプレ空調指示を受信したときに、プレ空調を開始するためのプレ空調開始条件が成立したか否かを判定するプレ空調条件判定部と、プレ空調開始条件が成立したか否かに基づいて、空調装置の動作制御を行う第1プレ空調を実施する空調制御部と、ユーザの乗車意思の有無を判定する乗車意思判定部と、ユーザに乗車意思があると判定したとき、ユーザが乗車しようとする座席を特定する座席特定部と、を備え、空調制御部は、第1プレ空調を実施中に、乗車意思判定部がユーザに乗車意思があると判定したとき、座席特定部の特定結果に基づいて空調装置の動作制御を行う第2プレ空調を実施することを特徴とする。
【0008】
上記構成によって、プレ空調実行時、ユーザが乗車しようとするときに、空調モードの変化により生ずるユーザの不快感を和らげることが可能となる。また、ユーザ乗車時に必ずしも空調を抑えないため、空調風の嫌みのおよびコンプレッサの騒音が軽減しないこともありうるが、温度の観点では快適さを保つことができる。
【0009】
また、本発明の車両用空調システムは、車両が駐車状態にあるか否かを判定する駐車状態判定部を備え、プレ空調条件判定部は、駐車状態判定部が、車両が駐車状態にあると判定したときに、プレ空調開始条件が成立した判定する。
【0010】
上記構成によって、駐車時にのみプレ空調を行うことで、燃料あるいはバッテリ電力の無駄な消費を押さえることができる。
【0011】
また、本発明の車両用空調システムにおける空調制御部は、第1プレ空調時には空調装置を予め定められた自動空調モードで動作させ、第2プレ空調時には座席特定部が特定したユーザが乗車しようとする座席の全てを空調の対象として空調装置を動作させる。
【0012】
上記構成によって、ユーザの乗車する前には、車室内がある程度快適な状態となり、さらに、ユーザの乗車時には、乗車しようとしている座席に対して集中的に空調を行うことで、空調効率を向上でき、ユーザの快適性をより向上することができる。
【0013】
また、本発明の車両用空調システムは、車両に搭載されたバッテリの充電電力を含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部を備え、空調制御部は、プレ空調条件判定部が、プレ空調開始条件が成立したと判定したとき、第1プレ空調時にはバッテリの充電電力に基づいて空調装置の動作制御を行い、第2プレ空調時には座席特定部が特定したユーザが乗車しようとする座席の全てを空調の対象として空調装置を動作させる。
【0014】
上記構成によって、バッテリに過度な負担をかけることなくプレ空調を行い、ユーザの快適性を維持することができる。
【0015】
また、本発明の車両用空調システムにおける空調制御部は、バッテリの充電電力が予め定められた第1閾値を上回るとき、第1プレ空調時には予め定められた自動空調モードで空調装置を動作させる。
【0016】
上記構成によっても、ユーザの乗車する前には、車室内がある程度快適な状態となり、さらに、ユーザの乗車時には、乗車しようとしている座席に対して集中的に空調を行うことで、空調効率を向上でき、ユーザの快適性をより向上することができる。
【0017】
また、本発明の車両用空調システムにおける空調制御部は、バッテリの充電電力が予め定められた第1閾値を下回り、かつ予め定められた第2閾値を上回るとき、第1プレ空調時には車両の運転席のみを空調の対象として空調装置を動作させる。
【0018】
車両の運転に運転者は不可欠であるため、上記構成によって、少なくとも運転者の快適性を維持することができる。また、バッテリに過度な負担をかけることなく、プレ空調を行うことができる。さらに、ユーザの乗車時には、乗車しようとしている座席に対して集中的に空調を行うことで、空調効率を向上でき、ユーザの快適性をより向上することができる。
【0019】
また、本発明の車両用空調システムにおける空調制御部は、バッテリの充電電力が予め定められた第1閾値を下回り、かつ予め定められた第2閾値を上回るとき、第1プレ空調時には車両の操舵ハンドルのみを空調の対象として空調装置を動作させる。
【0020】
車両のステアリングは、特に夏場には、握ることができない程度にまで暖められることがある。上記構成によって、ステアリングに空調を集中することで、乗車後すぐに運転可能な状態とすることができる。
【0021】
また、本発明の車両用空調システムにおける空調制御部は、バッテリの充電電力が予め定められた第2閾値を下回り、かつ予め定められた第3閾値を上回るとき、第1プレ空調時には空調装置を動作させない。
【0022】
上記構成によって、例えば冷房する際には、ユーザの乗車時に空調装置のダクト内の暑い空気を取り除き、かつ直接ユーザに風をあてることにより、バッテリの負担を軽減しつつ快適性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の車両用空調システムは、車両のドアの操作状況を含むドア操作状況情報を取得するドア操作状況情報取得部を備え、乗車意思判定部は、ドア操作状況情報にユーザがドアの開操作を行った旨の情報を含むときに、ユーザに乗車意思があると判定する。
【0024】
近年、ドアの開閉検知により様々な制御が行われているので、上記構成によって、新たな部品を追加することなく、ユーザの乗車意思の有無を判定することができる。
【0025】
また、本発明の車両用空調システムは、ユーザが車両から予め定められた距離以内に接近したか否かを判定する接近判定部を備え、乗車意思判定部は、接近判定部が、ユーザが車両から予め定められた距離以内に接近したと判定したときに、ユーザに乗車意思があると判定する。
【0026】
例えば、スマートキーレスエントリーシステムや車両盗難防止システムでは、ユーザの車両への接近を検出するセンサあるいは装置が備えられている。上記構成によっても、新たな部品を追加することなく、ユーザの乗車意思の有無を判定することができる。
【0027】
また、本発明の車両用空調システムにおける空調制御部は、プレ空調開始条件が成立してからの時間が、予め定められた時間閾値を超えたときに、空調装置の動作を停止させて、第1および第2のプレ空調を終了する。
【0028】
上記構成によって、バッテリに過度な負担をかけないようにすることができる。また、ユーザのプレ空調の中止操作を忘れたとき、あるいはユーザに乗車意思がなかったときにも、特殊な操作を行うことなくプレ空調を終了できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両用空調システムの構成を示すブロック図。
【図2】空調装置の詳細構成を示すブロック図。
【図3】前席の各吹出口の配置を示す図。
【図4】後席の各吹出口の配置を示す図。
【図5】プレ空調制御処理を説明するフロー図。
【図6】吹出口開閉制御処理を説明するフロー図。
【図7】プレ空調制御処理の別例を説明するフロー図。
【図8】通常モード処理を説明するフロー図。
【図9】バッテリ低下モード1処理を説明するフロー図。
【図10】バッテリ低下モード2処理を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の車両用空調システムの一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、車両用空調システム1の構成を示す。車両用空調システム1は、制御ECU201と、ユーザが携帯する携帯機300を含んで構成される。
【0031】
制御ECU201には、携帯機300との通信を行うためのLF通信機210,RF通信機211,ドアカーテシSW(スイッチ)212,ドアロックモータ213,イグニッション(IG)スイッチの状態を示すIGリレー214,アクセサリ(ACC)スイッチの状態を示すACCリレー215,シフトレバー位置を検出するシフトセンサ216,車両の速度を検出する車速センサ217,バッテリ219の充電状態を監視する電源状態監視部218,バッテリ219,ドアノブSW220,および空調装置100が接続されている。なお、電源状態監視部218が本発明のバッテリ情報取得部に相当する。
【0032】
LF通信機210は、携帯機300へ信号を送信するためのもので、少なくとも送信機能が備わっていればよい。LF通信機210は、セキュリティの観点から、通信エリアを車両の周囲に限定するため、LF帯(例えば、100kHz帯)の電波を用いて通信を行う。また、LF通信機210から送信される無線信号は、運転席(D席),助手席(P席),後部右側座席(RR席),後部左側座席(RL席)の各ドア(外側)にあるドアアンテナ,車両の室内の室内アンテナ,トランク内のトランク内アンテナ,およびトランク外側のトランク外アンテナ(図1では、「アンテナ群201a」と総称)を介して、ドア近傍(車室外),車室内,トランク内,トランク外近傍の、限られた通信エリア内に対してのみ到達するようになっている(例えば、特許文献1の図3参照)。
【0033】
RF通信機211は、携帯機300からの信号を受信するためのもので、少なくとも受信機能が備わっていればよい。RF通信機211は、出力の割に比較的遠距離まで送信できるUHF帯(例えば、国内なら300MHz帯)の電波を用いて通信を行う。なお、RF通信機211が本発明の受信部に相当する。
【0034】
ドアカーテシSW212は、ドアの開閉に応じてドアカーテシランプを点灯/消灯させるためのスイッチで、このスイッチの状態を検出することで、ドアの開閉状態を判定できる。なお、ドアカーテシSW212は、D席,P席,RR席,RL席のドアのそれぞれに設けられているものを総称したものである。
【0035】
ドアロックモータ213は、ドアのロック/アンロックの動作を行うためのもので、モータ駆動回路を含み、制御ECU201の制御によってロック/アンロック動作を行う。なお、ドアロックモータ213は、D席,P席,RR席,RL席のドアのそれぞれに設けられているものを総称したものである。
【0036】
ドアノブSW220は、ドアノブあるいはその近傍に設けられたメカニカルスイッチあるいはタッチセンサとして構成され、ドアの開閉操作を行うために用いる。なお、ドアノブSW220は、D席,P席,RR席,RL席のドアのそれぞれに設けられているものを総称したものである。
【0037】
制御ECU201は、通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU,ROM,RAM,A/D変換部,入出力回路,およびこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)が備えられている。制御ECU201では、CPUがROMに記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することで、車両用空調システム1としての機能を実現する。なお、制御ECU201が本発明のプレ空調条件判定部,乗車意思判定部,座席特定部,駐車状態判定部,ドア操作状況情報取得部,接近判定部に相当する。
【0038】
また、制御ECU201と空調装置100に含まれるエアコンECU101とは、相互にデータ通信可能に接続されている。データ通信は、周知の車内LANを介して行ってもよいし、直接接続(いわゆる「直線(じかせん)接続」)してもよい。制御ECU201およびエアコンECU101には、データ通信を行うために必要な通信インターフェース回路が含まれている。
【0039】
携帯機300は、制御部301と、制御部301に接続され、例えばメカニカルスイッチで構成されてユーザが各種の操作を行う操作部302,制御ECU201のRF通信機211との通信を行うためのLF通信機303(少なくとも受信機能のみあればよい),制御ECU201のRF通信機211との通信を行うためのRF通信機304(少なくとも送信機能のみあればよい)とを含んで構成される。制御部301は、周知のCPU,ROM,RAM(いずれも図示せず)等を含む通常のコンピュータとして構成されており、CPUがROMに記憶された携帯機制御プログラムを実行することで、携帯機300の各種機能を実現する。
【0040】
上述のような構成は、一般に、キーレスエントリーシステムあるいはスマートキーレスエントリーシステムと呼ばれている。キーレスエントリーシステムは、携帯機300の操作部302でロック/アンロック操作を行うと、RF通信機304→RF通信機211へロック/アンロック操作指示信号が送信され、制御ECU201では受信した操作指示に基づいて、該当するドアのドアロックモータ213の駆動制御を行う。この場合、LF通信機210,LF通信機303は、なくてもよい。
【0041】
上述のように、RF通信には、送信出力が微弱でも数十m、もう少し出力を上げれば数百〜千m程度の通信距離を確保でき、検出エリアを容易に広く設定できることが好ましいので、UHF帯が適している。また、LF通信には、特にスマートキーレスエントリーシステムにおいて、車両周囲の通信範囲を限定する必要があるため、LF帯が適している。
【0042】
また、スマートキーレスエントリーシステムは、制御ECU201のLF通信機210が携帯機300のLF通信機303へ応答要求信号を送信し、携帯機300のRF通信機304がROMに予め記憶された照合用のIDコードを応答信号として送信する。RF通信機211にてIDコードを受信した制御ECU201は、IDコードを自身のROMに予め記憶された照合用のデータと照合し、正しく照合されたときに、ドアのロック/アンロック動作あるいはエンジン始動の許可を行う。
【0043】
図2に、エアコンECU101と、該エアコンECU101により制御されるエアコンユニットUとからなる空調装置100の全体構成を概略的に示す。空調装置100の主制御部をなすエアコンECU101には、空調用センサ120、および空調用操作部140が接続する構成を有している。エアコンユニットUは、いわゆるHVAC(Heating, Ventilating and Air-Conditioning)ユニットであり、例えば、車室内の空調状態を運転席側と助手席側とで独立して調整可能に構成されている。また、後部座席も座席毎に独立して調整可能に構成してもよい。
【0044】
空調装置100は、エアコンユニットUの冷房出力用に、周知の冷凍サイクルRCを備えている。冷凍サイクルRCは、エンジンあるいは電動モータにより駆動され、よりガス状の冷媒を吸入・圧縮して高温・高圧ガスとして送り出すコンプレッサ(圧縮器)COMPと、送り出された冷媒(高温・高圧ガス)を車外空気(クーリングファンによって取り入れる)によって冷却し、凝縮の潜熱を奪って液化するコンデンサ(凝縮器,図示せず)と、液化された冷媒をガスと液とに分離して液冷媒のみを送り出すレシーバ(受液器,図示せず)と、送り出された液冷媒を膨張させ、低温・低圧の霧状冷媒とするエキスパンションバルブ(膨張弁,図示せず)と、その低温・低圧の霧状冷媒によって車室内の空気から潜熱を奪って車室内空気を冷却するとともに、このとき気化された冷媒を電動コンプレッサCOMPに送り出すエバポレータ22とで構成されている。
【0045】
エアコンユニットUのダクト28には、車内空気を循環させるための内気吸込口42と、車外の空気を取込む外気吸込口41とが形成されており、内外気切替ダンパー24によりいずれかに切り替えて使用される。これら内気吸込口42ないし外気吸込口41からの空気は、ブロワ21によってダクト28内に吸い込まれる。ダクト28内には、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ22が設けられている。そして、エバポレータ22よりも下流側(吹出口側)は、運転席側の吹出口43〜45へ至る経路と助手席側の吹出口46,47へ至る経路に分岐している。
【0046】
図3にも示すように、エアコンユニットUには吹出口として、フロントガラス曇り止め用のデフロスタ吹出口[DEF]43がフロントガラスの内面下縁に対応するインパネ(インストルメントパネル)上方奥に、運転席(2D)側フット吹出口[FOOT]44がインパネ下面右奥の運転席側足元に、運転席側フェイス吹出口[FACE]45がインパネの正面中央右寄りと右隅に、助手席(2P)側フェイス吹出口[FACE]46がインパネの正面中央左寄りと左隅に、助手席側フット吹出口[FOOT]47がインパネ下面左奥の助手席側足元に、それぞれ開口しており、吹出口切替用ダンパー32〜36によってそれぞれ開閉状態が切り替えられる。
【0047】
図2に戻り、エアコンECU101には、エバポレータ22で冷却された空気とヒータコア23で暖められた空気とを混合するためのエアミックスダンパー25,26、上記吹出口切替用ダンパー32〜36の開閉状態を切り替えるダンパー駆動ギア機構31、内外気切替ダンパー24、それらを駆動するサーボモータ71〜74、およびサーボモータ71〜74を駆動する駆動回路131〜134を含む空調用駆動部130が接続されている。これらサーボモータ71〜74は、エアコンECU101によって回転制御されるとともに、ロータの回転位置や回転速度等の情報を検出してエアコンECU101にフィードバックする。具体的には、駆動回路131〜134がエアコンECU101から駆動指令信号の入力を受けて、対応するサーボモータ71〜74を駆動する。
【0048】
図4にも示すように、ダクト28(運転席側,助手席側,あるいはこれらよりも上流側でもよい)から分岐した後席用ダクト151が例えばセンターコンソール150の下に設けられ、その先端には、車室内後席右側の吹出口である後席右フェイス吹出口152および車室内後席左側の吹出口である後席左フェイス吹出口153が設けられている。また、それぞれの吹出口には、吹出口を開閉するためのダンパー(152a,153a)およびアクチュエータ(図示せず)が備えられている。
【0049】
また、運転席側フェイス吹出口45,助手席側フェイス吹出口46,後席右フェイス吹出口152,および後席左フェイス吹出口153には、それぞれスインググリル45a,46a,152b,153bが取り付けられている(図3,図4参照)。スインググリルは、車両の高さ方向に延びる細長い板が車両の幅方向に複数列設された垂直ルーバーと車両の幅方向に延びる細長い板が車両の高さ方向に複数列設された水平ルーバーとを有し、これらルーバーはエアコンECU101の指令によるステップモータの駆動によって所定の範囲内で揺動して、空調空気が吹き出される方向が左右あるいは上下に変化する。なお、スインググリルの構成および動作については、例えば特開2006−264485号公報に詳細が記載されている。
【0050】
図2に戻り、エアコンECU101に接続される空調用センサ120は、車内温度を検出する内気温センサ121,車外温度を検出する外気温センサ122,エバポレータを通過した直後の空気の温度を検出するエバポレータ後センサ123,日射量を検出する日射センサ124,車内湿度を検出する湿度センサ125,等の周知のセンサを含んで構成される。
【0051】
エアコンECU101に接続される空調用操作部140は、運転者及び助手席搭乗者により操作可能なインパネ正面中央に設けられたエアコンパネルに設けられており、ON/OFFスイッチ,風量切替スイッチ,温度設定スイッチ,吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ),内外気切替スイッチ,デフロスタスイッチ,A/Cスイッチ,独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)といったスイッチを含んで構成される。これらのスイッチは、各々周知の押圧操作部やダイアル操作部として構成されている。
【0052】
エアコンECU101は、CPU,ROM,RAM等を備える周知の構成を有し、各種空調用操作部140の操作状態,各種空調用センサ120の検出結果に基づいて空調用駆動部130を駆動制御することにより、吹出温度制御,風量制御,内気吸気・外気吸気切替制御,および吹出口切替制御等の周知の空調制御を実行する。これらの空調制御は、エアコンECU101のCPUが自身のROMに格納される空調制御プログラムを実行する形で実行される。なお、エアコンECU101が本発明の空調制御部に相当する。
【0053】
図5を用いて、車両用空調システム1におけるプレ空調制御処理について説明する。なお、本処理は、制御ECU201に含まれるROMに記憶された制御プログラムに含まれ、CPUが該プログラムに含まれる他の処理とともに繰り返し実行する。
【0054】
まず、ユーザは携帯機300の操作部302の操作により、プレ空調開始を指示する(S11)。プレ空調開始が指示されると、RF通信機304から、プレ空調開始指示信号を送信する。制御ECU201は、RF通信機211を介してプレ空調開始指示信号を受信すると、プレ空調開始条件が成立したか否かを判定する。例えば、車両が駐車状態にあると判定したときに、プレ空調開始条件が成立したと判定する。
【0055】
車両が駐車状態にあるか否かの判定は、以下のうちの少なくとも一つを用いる。
・全てのドアのドアカーテシSW212が消灯状態にあるとき(すなわち、全てのドアが閉状態)、駐車状態にあると判定する。
・全てのドアのドアロックモータ213が施錠制御されていることを検出したとき、駐車状態にあると判定する。
・IGリレー214の状態がオフ状態のとき(すなわち、エンジン停止状態)、駐車状態にあると判定する。
・ACCリレー215の状態がオフ状態のとき(すなわち、エンジン停止状態)、駐車状態にあると判定する。
・シフトセンサ216が検出したシフト位置が「パーキング」位置のとき、駐車状態にあると判定する。
・車速センサ217が検出した車速が0km/hのとき、駐車状態にあると判定する。
【0056】
プレ空調開始条件が成立したと判定したとき(S12:Yes)、プレ空調を開始するように、エアコンECU101にプレ空調開始指令を送信する。エアコンECU101は、プレ空調指令を受信すると、予め定められた空調モードであるAUTOモードとなるように空調用駆動部130を駆動制御する(第1プレ空調)。AUTOモードは、本発明の自動モードに相当し、例えば、「設定温度25℃,全席のフェイス吹出口:開,風量:自動」とする。
【0057】
次に、ユーザが乗車したときの、吹出口開閉制御処理を実行する(S14,第2プレ空調,詳細は後述)。
【0058】
次に、プレ空調停止条件が成立したか否かを判定する。プレ空調停止条件は、以下のうちの少なくとも一つを用いる。
・IGリレー214の状態がオフ状態からオン状態(すなわち、エンジン始動状態)に遷移したとき、プレ空調停止条件が成立したと判定する。
・プレ空調開始条件が成立してから、例えば3分のような予め定められた時間閾値を超えたとき、プレ空調停止条件が成立したと判定する。
・第1プレ空調を開始してから、例えば3分のような予め定められた時間が経過したとき、プレ空調停止条件が成立したと判定する。
・第2プレ空調を開始してから、例えば2分のような予め定められた時間が経過したとき、プレ空調停止条件が成立したと判定する。
・ユーザが携帯機300の操作部302を操作してプレ空調停止を指示し、携帯機300(RF通信機304)からのプレ空調停止指示をRF通信機211が受信したとき、プレ空調停止条件が成立したと判定する。
【0059】
プレ空調停止条件が成立したと判定したとき(S15:Yes)、プレ空調を停止するように、エアコンECU101にプレ空調停止指令を送信する(S16)。エアコンECU101は、プレ空調停止指令を受信すると、空調用駆動部130の駆動を停止する。
【0060】
図6を用いて、図5のステップS14に相当する、吹出口開閉制御処理(本発明の第2プレ空調)について説明する。まず、以下のうちの少なくとも一つを用いて、ユーザの乗車意思の有無を判定する(S30)。
・ドアが閉状態から開状態に遷移したとき、ユーザに乗車意思があると判定する。例えば、ドアカーテシSW212が消灯状態から点灯状態に遷移したとき、あるいは、ドアロックモータ213がドアのアンロックのため動作を行ったとき、ドアが閉状態から開状態に遷移したと見なす。
・ユーザがドアノブSW220を操作したことを検出したとき、ユーザに乗車意思があると判定する。
・ユーザが車両に接近したことを検知したとき、ユーザに乗車意思があると判定する。
・上述のスマートキーレスエントリーシステムとして構成される場合、携帯機300とドアアンテナ群210aのいずれかのアンテナとの通信で上述の照合が正しく行われたとき、ユーザに乗車意思があると判定する。
【0061】
ドアカーテシSW212,ドアロックモータ213,ドアノブSW220,ドアアンテナは、各ドアに備えられているので、ユーザがどのドアから乗車するか(すなわち、どの席に乗車するか)を特定することができる。
【0062】
ユーザに乗車意思があると判定したとき、第2プレ空調を実施する。すなわち、ユーザがD席に乗車しようとしているとき(S31:Yes)、運転席側フェイス吹出口45を開状態とするよう、エアコンECU101に指令を送る(S32)。ユーザがP席に乗車しようとしているとき(S33:Yes)、助手席側フェイス吹出口46を開状態とするよう、エアコンECU101に指令を送る(S34)。このとき、各席に2個あるフェイス吹出口をダンパーにより個別に開閉制御可能であるときには、ドア側の吹出口のみ開状態とするよう、エアコンECU101に指令を送る。また、各吹出口に上述のスインググリル(45a,46a)が備えられているときには、各座席のドア側に空気を吹き出すようにスインググリルの角度を調整するよう、エアコンECU101に指令を送る。
【0063】
ユーザがRR席に乗車しようとしているとき(S35:Yes)、後席右フェイス吹出口152を開状態とするよう、エアコンECU101に指令を送る(S36)。ユーザがRL席に乗車しようとしているとき(S37:Yes)、後席左フェイス吹出口153を開状態とするよう、エアコンECU101に指令を送る(S38)。また、各吹出口に上述のスインググリル(152b,153b)が備えられているときには、各座席のドア側に空気を吹き出すようにスインググリルの角度を調整するよう、エアコンECU101に指令を送る。
【0064】
エアコンECU101は、制御ECU201から送られてきた指令に基づいて、各吹出口の開閉制御を行う。また、吹出口からの風量は、予め定められた風量でもよいし、上述のAUTOモードに基づいて設定された風量でもよい。
【0065】
いずれのドアからも乗車の意思のないときには、AUTOモードによるプレ空調(第1プレ空調)を継続する。
【0066】
図7を用いて、車両用空調システム1におけるプレ空調制御処理の別例について説明する。なお、本処理は、図5の処理の変形例であるため、同一の処理ステップについては、同一の番号を付与し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0067】
制御ECU201は、RF通信機211を介して、携帯機300からプレ空調開始指示信号を受信すると(S11)、プレ空調開始条件が成立したか否かを判定する。プレ空調開始条件が成立したと判定したとき(S12:Yes)、電源状態監視部218からバッテリ219の充電状態を取得して、バッテリ残量(すなわち、充電電力)を判定する(S120)。
【0068】
バッテリ219の充電電力が予め定められた第1閾値C1を上回るとき(S121:Yes)、プレ空調における通常モード処理を実行する(S122,後述)。
【0069】
バッテリ219の充電電力が第1閾値C1を下回るが(S121:No)、予め定められた第2閾値C2を上回るとき(S123:Yes)、プレ空調におけるバッテリ低下モード1処理を実行する(S124,後述)。
【0070】
バッテリ219の充電電力が第2閾値C2を下回るが(S123:No)、予め定められた第3閾値C3を上回るとき(S125:Yes)、プレ空調におけるバッテリ低下モード2処理を実行する(S126,後述)。また、第3閾値C3を下回るとき(S125:No)、本処理を終了する(すなわち、プレ空調を行わない)。
【0071】
そして、プレ空調停止条件が成立したと判定したとき(S15:Yes)、プレ空調を停止するように、エアコンECU101にプレ空調停止指令を送信する(S16)。
【0072】
図8を用いて、図7のステップS122に相当する、通常モード処理について説明する。まず、第1プレ空調としてAUTOモードで空調を実施する(S51)。これは、図5のステップS13と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。次に、ユーザが乗車したときの、吹出口開閉制御処理(第2プレ空調)を実行する(S52)。これは、図6の処理と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0073】
図9を用いて、図7のステップS124に相当する、バッテリ低下モード1処理について説明する。まず、第1プレ空調としてD席FACEモードでプレ空調を開始する(S71)。これは、運転席側フェイス吹出口45のみから空気を吹き出すように、エアコンECU101へ指令を行うものである。このとき、運転席側フェイス吹出口に上述のスインググリル(45a)が備えられているときには、D席(2D)に吹き出した空気があたるようにスインググリルの角度を調整するよう、エアコンECUに指令を送る。また、操舵ハンドル8に吹き出した空気があたるようにスインググリルの角度を調整するよう、エアコンECU101に指令を送ってもよい。
【0074】
次に、ユーザが乗車したときの、吹出口開閉制御処理(第2プレ空調)を実行する(S72)。これは、図6の処理と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0075】
図10を用いて、図7のステップS126に相当する、バッテリ低下モード2処理について説明する。本処理では、プレ空調開始条件が成立しても第1プレ空調を行わず、ユーザが乗車したときの、吹出口開閉制御処理(第2プレ空調)のみを実行する(S91)。これは、図6の処理と同様であるため、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0076】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用空調システム
100 空調装置
101 エアコンECU(空調制御部)
U 空調ユニット
201 制御ECU(プレ空調条件判定部,乗車意思判定部,座席特定部,駐車状態判定部,ドア操作状況情報取得部,接近判定部)
210 LF通信機
211 RF通信機(受信部)
212 ドアカーテシSW
213 ドアロックモータ
214 IGリレー
215 ACCリレー
216 シフトセンサ
217 車速センサ
218 電源状態監視部(バッテリ情報取得部)
219 バッテリ
220 ドアノブSW
300 携帯機
301 制御部
302 操作部
303 LF通信機
304 RF通信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内の空調を行う空調装置と、
ユーザが携帯する携帯機からの、前記ユーザが乗車する前に前記車室内を予め空調するプレ空調を実行させるためのプレ空調指示を受信する受信部と、
前記受信部が前記プレ空調指示を受信したときに、前記プレ空調を開始するためのプレ空調開始条件が成立したか否かを判定するプレ空調条件判定部と、
前記プレ空調開始条件が成立したか否かに基づいて、前記空調装置の動作制御を行う第1プレ空調を実施する空調制御部と、
前記ユーザの乗車意思の有無を判定する乗車意思判定部と、
前記ユーザに乗車意思があると判定したとき、前記ユーザが乗車しようとする座席を特定する座席特定部と、
を備え、
前記空調制御部は、前記第1プレ空調を実施中に、前記乗車意思判定部が前記ユーザに乗車意思があると判定したとき、前記座席特定部の特定結果に基づいて前記空調装置の動作制御を行う第2プレ空調を実施することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記車両が駐車状態にあるか否かを判定する駐車状態判定部を備え、
前記プレ空調条件判定部は、前記駐車状態判定部が、前記車両が駐車状態にあると判定したときに、前記プレ空調開始条件が成立した判定する請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記空調制御部は、前記第1プレ空調時には前記空調装置を予め定められた自動空調モードで動作させ、前記第2プレ空調時には前記座席特定部が特定した前記ユーザが乗車しようとする座席の全てを空調の対象として前記空調装置を動作させる請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記車両に搭載されたバッテリの充電電力を含むバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得部を備え、
前記空調制御部は、前記プレ空調条件判定部が、前記プレ空調開始条件が成立したと判定したとき、前記第1プレ空調時には前記バッテリの充電電力に基づいて前記空調装置の動作制御を行い、前記第2プレ空調時には前記座席特定部が特定した前記ユーザが乗車しようとする座席の全てを空調の対象として前記空調装置を動作させる請求項2に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記空調制御部は、前記バッテリの充電電力が予め定められた第1閾値を上回るとき、前記第1プレ空調時には予め定められた自動空調モードで前記空調装置を動作させる請求項4に記載の車両用空調システム。
【請求項6】
前記空調制御部は、前記バッテリの充電電力が予め定められた第1閾値を下回り、かつ予め定められた第2閾値を上回るとき、前記第1プレ空調時には前記車両の運転席のみを空調の対象として前記空調装置を動作させる請求項4または請求項5に記載の車両用空調システム。
【請求項7】
前記空調制御部は、前記バッテリの充電電力が予め定められた第1閾値を下回り、かつ予め定められた第2閾値を上回るとき、前記第1プレ空調時には前記車両の操舵ハンドルのみを空調の対象として前記空調装置を動作させる請求項4または請求項5に記載の車両用空調システム。
【請求項8】
前記空調制御部は、前記バッテリの充電電力が予め定められた第2閾値を下回り、かつ予め定められた第3閾値を上回るとき、前記第1プレ空調時には前記空調装置を動作させない請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項9】
前記車両のドアの操作状況を含むドア操作状況情報を取得するドア操作状況情報取得部を備え、
前記乗車意思判定部は、前記ドア操作状況情報に前記ユーザが前記ドアの開操作を行った旨の情報を含むときに、前記ユーザに乗車意思があると判定する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項10】
前記ユーザが前記車両から予め定められた距離以内に接近したか否かを判定する接近判定部を備え、
前記乗車意思判定部は、前記接近判定部が、前記ユーザが前記車両から予め定められた距離以内に接近したと判定したときに、前記ユーザに乗車意思があると判定する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用空調システム。
【請求項11】
前記空調制御部は、前記プレ空調開始条件が成立してからの時間が、予め定められた時間閾値を超えたときに、前記空調装置の動作を停止させて、前記第1および第2のプレ空調を終了する請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−46085(P2012−46085A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190452(P2010−190452)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】