説明

車両用空調装置

【課題】一つの湿度センサで内気、外気の湿度を検出できる車両用空調装置を実現する。
【解決手段】内気、外気の少なくとも一方を吸込み空気として選択切替えする内外気切替えドア14aを有し、選択切替えされた吸込み空気を空調ケース11内に圧送する内外気切替え手段14を備える車両用空調装置において、内外気切替えドア14aの空気流れ上流側の内気、外気の湿度を一つの湿度センサ15aによって交互に検出するように構成された湿度検出手段15を有する。これにより、一つの湿度センサで内気、外気の湿度を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外気切替え手段を備える車両用空調装置に関するものであり、特に、車室内空気、車室外空気のいずれか一方の湿度を検出する湿度検出手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。すなわち、蒸発器からの臭いを抑制するために目標蒸発器温度を、蒸発器の吸込み空気の湿球温度以下で、かつ吸込み空気の露点温度より高い温度に設定している。
【0003】
これにより、蒸発器温度の上限を、蒸発器の吸込み空気の湿球温度以下に制限して、凝縮水が乾ききる前に、蒸発器温度を低下させることができる。従って、蒸発器表面は常に凝縮水で濡れた状態となることで臭い成分の離脱を防ぎ、臭い発生を抑制できる。
【特許文献1】特開2002−114026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような車両用空調装置では、車室内空気、車室外空気のいずれか一方を切替えるための内外気切替え手段が設けられている。つまり、内外気切替え手段により、内気モードによる車室内空気、外気モードによる車室外空気のいずれか一方の空気が蒸発器への吸込み空気として圧送されている。
【0005】
また、蒸発器への吸込み空気の湿度を検出するためには湿度センサが必要であり、車室内空気と車室内空気との両方の湿度を検出するためには少なくとも湿度センサが2個必要となる。つまり、二つの湿度センサの搭載スペースが必要となるとともに製品コストの上昇を招く問題がある。さらに、湿度センサは一般的な温度センサよりも応答遅れが大きい問題がある。
【0006】
そこで、本発明の第1の目的は、車室内空気、車室外空気の湿度を一つの湿度センサで検出できる車両用空調装置を提供することにある。また、第2の目的は正確な湿度を検出できる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項8に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車室内空気、車室外空気の少なくとも一方を吸込み空気として選択切替えする内外気切替えドア(14a)を有し、選択切替えされた吸込み空気を空調ケース(11)内に圧送する内外気切替え手段(14)を備える車両用空調装置において、
内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の車室内空気、車室外空気の湿度を湿度センサ(15a)によって交互に検出するように構成された湿度検出手段(15)を有することを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、車室内空気、車室外空気の湿度を一つの湿度センサ(15a)で検出することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、湿度検出手段(15)には、内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側に配設され、内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の車室内空気、車室外空気のいずれか一方の湿度を湿度センサ(15a)で検出可能なように選択切替えを行う切替え機構(15b、15c)が設けられたことを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、切替え機構(15b、15c)の切替えにより車室内空気、車室外空気のいずれか一方の空気を交互に湿度センサ(15a)に供給できる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、湿度検出手段(15)は、アスピレータ方式によって、内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の車室内空気、車室外空気のいずれか一方の空気を湿度センサ(15a)に導いて湿度を検出するように構成したことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、車室内空気、車室外空気の湿度を一つの湿度センサ(15a)で検出することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、湿度検出手段(15)には、内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側に配設され、内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の車室内空気、車室外空気のいずれか一方の湿度を湿度センサ(15a)で検出可能なように選択切替えを行う切替え機構(15b、15c)が設けられたことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、切替え機構(15b、15c)の切替えにより、車室内空気、車室外空気のいずれか一方の空気を交互に湿度センサ(15a)に供給できる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、湿度検出手段(15)を制御する制御手段(5)が設けられ、この制御手段(5)は、切替え機構(15b、15c)を切替え制御して、車室内空気、車室外空気のいずれか一方の湿度を湿度センサ(15a)により所定時間、繰り返して検出し、所定時間経過後に切替え機構(15b、15c)を切替え制御して、車室内空気、車室外空気のいずれか他方の湿度を湿度センサ(15a)により所定時間、繰り返して検出することを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、所定時間の間、繰り返して湿度を検出することで、湿度センサ(15a)の切替え直後のセンサの応答遅れを解消できるとともに、最終の湿度を正確に検出することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、制御手段(5)は、車室内空気、車室外空気のいずれか一方の湿度を湿度センサ(15a)により検出し、検出された湿度の変化率を算出し、その変化率が所定値以下となったときに、車室内空気、車室外空気のいずれか他方の湿度を検出するように切替え機構(15b、15c)を切替え制御することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、変化率が所定値以下となるように繰り返して湿度を検出することで、変化率が所定値以下であれば最終湿度として検出できる。これにより、湿度センサ(15a)の切替え直後のセンサの応答遅れを解消できるとともに、最終の湿度を正確に検出することができる。また、所定時間を設定するよりもより早く他方の空気への切替えができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、制御手段(5)は、通常のときに、車室内空気の湿度を検出するように切替え機構(15b、15c)が切替え制御されており、所定のタイミングにおいて、切替え機構(15b、15c)を切替え制御して、車室外空気の湿度を湿度センサ(15a)により所定時間、繰り返して検出することを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、頻繁な変化がない車室外空気よりも頻繁な変化を有する車室内空気の湿度を監視することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、制御手段(5)は、湿度センサ(15a)で検出された湿度の変化率を算出し、その変化率が所定値以下となったときに、車室内空気の湿度を検出するように切替え機構(15b、15c)を切替え制御することを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、変化率が所定値以下となるように繰り返して湿度を検出することで、変化率が所定値以下であれば最終湿度として検出できる。これにより、湿度センサ(15a)の切替え直後のセンサの応答遅れを解消できるとともに、最終の湿度を正確に検出することができる。また、所定時間を設定するよりもより早く他方の空気への切替えができる。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における車両用空調装置を図1ないし図4に基づいて説明する。図1は本実施形態における車両用空調装置100の全体構成を示す模式図である。図2は図1に示すII部拡大図である。図3は空調制御装置5における湿度検出制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。図4は(a)に示す切替え機構15b、15cの制御処理および(b)に示す湿度センサ15aで検出された湿度の挙動を示すタイムチャートである。
【0025】
車両用空調装置100は、図1に示すように、冷凍サイクル110には冷媒を吸入、圧縮、吐出する圧縮機1が備えられている。圧縮機1は動力断続用の電磁クラッチ2を有し、圧縮機1には電磁クラッチ2およびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達される。電磁クラッチ2への通電は制御手段である空調制御装置5により断続され、電磁クラッチ2への通電の断続により圧縮機1の運転が断続される。
【0026】
圧縮機1から吐出された高温、高圧の過熱ガス冷媒は凝縮器6に流入し、凝縮器6において、冷媒は図示しない冷却ファンより送風される外気と熱交換されて、冷却凝縮される。この凝縮器6で凝縮された冷媒は次に受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクル110内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。
【0027】
この受液器7からの液冷媒は、膨張弁8により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。膨張弁8は蒸発器9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁である。この膨張弁8からの低圧冷媒は蒸発器9に流入する。
【0028】
蒸発器9は車両用空調装置100の空調ユニット120の空調ケース10内に設置される。蒸発器9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。空調ケース10内の空気は、この時の蒸発潜熱によって冷却される。蒸発器9の出口は圧縮機1の吸入側に結合され、上記したサイクル構成部品によって閉回路が形成されている。
【0029】
空調ケース10において、蒸発器9の上流側には送風機11が配置され、送風機11には遠心式送風ファン12と駆動用モータ13が備えられている。送風ファン12の吸入側には内外気切替え手段としての内外気切替え箱14が配置され、この内外気切替え箱14内の内外気切替えドア14aによって、外気導入口14bと内気導入口14cとが開閉されるようになっている。
【0030】
これにより、内外気切替え箱14内に内気(車室内空気)、または外気(車室外空気)の少なくとも一方が切替え導入される。内外気切替えドア14aはサーボモータからなる電気駆動装置14dにより駆動される。
【0031】
内外気切替えドア14aの空気流れ上流側、即ち、外気導入口14bおよび内気導入口14cの上流側には、外気ダクト14eと内気ダクト14fとが隣接して配置されている。外気ダクト14eと内気ダクト14fとは区画壁14gを介して一体的に形成されている。この区画壁14gには、湿度検出手段15が配置され、内気、外気のいずれか一方の相対湿度RHを検出できるようになっている。
【0032】
湿度検出手段15は、湿度センサ15aと切替え機構15b、15cとから構成される。切替え機構15b、15cは回転ドア15bと電気駆動装置15cから構成される。回転ドア15bは、図2に示すように、湾曲状に形成された外周部151と、この外周部の両端に設けられた端板部152と、端板部152のそれぞれに形成された回転軸153とを有し、かつ断面が略扇状に形成されたドラム状のロータリドアである。
【0033】
区画壁14gは回転ドア15bの外周部151を摺動可能に形成され、区画壁14gの両端面に回転軸153を回動自在に支持するようになっている。回転軸153はサーボモータからなる電気駆動装置15cにより駆動される。湿度センサ15aは回転ドア15bの外周部151の内周側に配置され、回転ドア15bによって、外気ダクト14eと内気ダクト14fとが開閉するようになっている。
【0034】
換言すると、図2に示す位置に回転ドア15bが切替え制御されると、湿度センサ15aと外気ダクト14eとが連通することで、湿度センサ15aにより外気の相対湿度RHの検出ができる。また、回転ドア15bが図2に示す位置の対向側に切替え制御されると、湿度センサ15aと内気ダクト14fとが連通することで、湿度センサ15aにより内気の相対湿度RHの検出ができる。
【0035】
これにより、回転ドア15bが外気ダクト14e側または内気ダクト14f側のいずれか一方に回転させることで内気、外気のいずれか一方の相対湿度RHが湿度センサ15aで検出できるようになっている。
【0036】
次に、送風機11により送風される空気は空調ケース10内の蒸発器9の上流部に流入する。空調ケース10内で、蒸発器9の下流側にはエアミックスドア19が配置されている。このエアミックスドア19の下流側には車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア20が設置されている。この温水式ヒータコア20の側方(上方部)には、温水式ヒータコア20をバイパスして空気を流すバイパス通路21が形成されている。
【0037】
エアミックスドア19は回動可能な板状ドアであり、サーボモータからなる電気駆動装置22により駆動される。エアミックスドア19は、温水式ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであって、この冷温風の風量割合の調節により車室内への吹き出し空気温度を調節する。
【0038】
温水式ヒータコア20の下流側には下側から上方へ延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風とバイパス通路21からの冷風が空気混合部24で混合して、所望温度の空気を作り出すことができるようになっている。
【0039】
更に、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側に吹出しモード切替え部が構成されている。即ち、空調ケース10の上面部には車両フロントガラス内面に空気を吹き出すデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は回動自在な板状のデフロスタドア26により開閉される。
【0040】
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位に、車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は回動自在な板状のフェイスドア28により開閉される。
【0041】
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位に車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すフット開口部29が形成され、このフット開口部29は回動自在な板状のフットドア30により開閉される。
【0042】
上記した吹出しモード切替え用の各ドア26、28、30は共通のリンク機構(図示せず)に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置31により駆動される。
【0043】
次に、空調制御装置5はCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。蒸発器9の温度センサとしてサーミスタからなる温度センサ32を有している。この温度センサ32は、具体的には空調ケース10内で蒸発器9の空気吹出直後の部位に配置され、蒸発器吹出温度Teを検出する。本実施形態では上述したように、内気、外気のいずれか一方の相対湿度RHを検出する湿度センサ15aを備えている。
【0044】
さらに、空調制御装置5には、上記のセンサ32、15aの他に、空調制御のために、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する周知のセンサ34〜37から検出信号が入力される。また、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル38には乗員により手動操作される操作スイッチ38a〜38eが備えられ、この操作スイッチ38a〜38eの操作信号も空調制御装置5に入力される。
【0045】
この操作スイッチとして、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ38a、風量切替信号を発生する風量スイッチ38b、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ38c、内外気切替信号を発生する内外気切替えスイッチ38d、エアコンスイッチ38e等が設けられている。吹出モードスイッチ38cは、フェイス、フット、バイレベル、フットデフ、デフロスタの各モードを手動操作で切替えるものである。また、エアコンスイッチ38eは圧縮機1のオンオフ信号を発生する。
【0046】
以上の構成による車両用空調装置100では、内外気モードの制御を行う中で蒸発器9での臭いの発生を制御する臭い抑制と圧縮機1の省動力効果の向上とを図る制御を行っている。具体的には、目標蒸発器温度が蒸発器9の吸込み空気の湿球温度以下で、かつ吸込み空気の露点温度よりも高い温度になるように設定している。これにより、蒸発器吹出温度Teの上限を蒸発器9の吸込み空気の湿球温度以下に制限して凝縮水が乾ききる前に蒸発器吹出温度Te低下させることができる。
【0047】
ここで、吸込み空気の露点温度は、吸込み空気の乾球温度と吸込み空気の湿球温度により空気線図から求める。このために、外気または内気の湿球温度と乾球温度を検出するためのセンサが必要である。本実施形態では、外気または内気の湿球温度を検出するための
湿度センサ15aを備え、外気または内気の乾球温度を検出するための内気温Tr、外気温Tam、センサを備えている。
【0048】
しかし、実際の車両用空調装置100においては、内外気モードの制御では外気が蒸発器9に吸込まれる外気モードと、内気が蒸発器9に吸込まれる内気モードとに分かれているため、例えば、内外気切替えドア14aの空気流れ下流側と蒸発器9の上流側との間に湿度センサを装着すれば、それぞれの内外気モードにおける吸込み空気の湿度を検出できる。
【0049】
内気モードのときには、内気の湿度を検出できるが外気の湿度が検出することができない。また、内気のみ検出できる湿度センサを装着すれば、外気モードにおいて、外気の湿度が分からないため、臭い抑制のために目標蒸発器温度を低めに設定することで圧縮機1の省動力を低下させている。
【0050】
さらに、内気の湿度を検出する湿度センサと外気の湿度を検出する湿度センサの両方を装着すればよいが、コストアップが伴うとともに設置スペースが必要となる。
【0051】
そこで、本実施形態では、何れの内外気モードであっても、一つの湿度センサ15aを内外気切替えドア14aの空気流れ上流側に配置させて、内気、外気の両方の湿度を検出する湿度検出制御プログラムを設けている。
【0052】
以下、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。ステップS110でセンサ位置を検知する。つまり、切替え機構15b、15cより、現在選択されている回転ドア15bの回転位置が内気ダクト14f側もしくは外気ダクト14e側のどちらに開かれているかを検知する。
【0053】
例えば、回転ドア15bの回転位置が湿度センサ15aと内気ダクト14fとが連通する開口位置であれば内気が湿度センサ15aに供給されている。従って、次のステップS120で内気の湿度を湿度センサ15aにより検出するとともに、その湿度データを記憶する。
【0054】
次に、ステップS130にて、湿度を検出する検出時間を監視する。ここでは、検出時間が所定時間T1に達したか否かを判定する手段であり、所定時間T1に達する間は、ステップS120を繰り返して内気の湿度を湿度センサ15aにより検出する。そして、所定時間T1経過した後に、ステップS140で所定時間T1に達する直前の最終湿度を読み込む。
【0055】
次に、ステップS150にて、読み込んだ最終湿度を最新の内気の湿度データとして更新する。そして、ステップS160で切替え機構15b、15cを切替え制御して、回転ドア15bの回転位置が湿度センサ15aと外気ダクト14eとが連通する開口位置に切替える。
【0056】
そして、ステップS110に戻り、ステップS120で外気の湿度を湿度センサ15aにより検出し、所定時間T1に達する間は、ステップS120を繰り返して外気の湿度を湿度センサ15aにより検出する。さらに、ステップS150で所定時間T1に達する直前の最終湿度を最新の外気の湿度データとして更新する。
【0057】
以上のような制御処理によれば、一つの湿度センサ15aで内気と外気の両方の湿度を交互に検出することができる。ここで、検出時間を所定時間(例えば、30秒)T1と設定したのは、正確な湿度を検出するために設けている。
【0058】
この種の湿度センサ15aでは、図4に示すように、切替え機構15b、15cが切替わった直後ではセンサの応答遅れがあるため、所定時間(例えば、30秒)T1の間、制御周期に基づいて何度も湿度を検出させている。
【0059】
これにより、所定時間T1経過した直前の湿度データを最終湿度として検出できる。従って、所定時間T1経過したときに、湿度センサ15aの切替え直後のセンサの応答遅れを解消できるとともに、最終の湿度を正確に検出できる。
【0060】
また、湿度検出手段15には、内外気切替えドア14aの空気流れ上流側に配設され、内外気切替えドア14aの空気流れ上流側の内気、外気のいずれか一方の湿度を湿度センサ15aで検出可能なように選択切替えを行う切替え機構15b、15cが設けたことにより、この切替え機構15b、15cの切替えにより内気、外気の湿度を交互にひとつの湿度センサ15aで検出できる。
【0061】
例えば、内外気モードの切替え制御において、臭いが発生しそうな場合は、この切替えを行わないことで臭いの発生を抑制できる。さらに、例えば、内気モード中に露点温度の変化によって臭いが発生しそうな場合は、外気モードに切替えて臭いの発生を抑制できる。
【0062】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、湿度検出手段15において、内気と外気との切替えを行うために回転ドア式の切替え機構15b、15cで構成したが、これに限らず、スライド式の切替え機構15b、15cで構成しても良い。
【0063】
具体的には、図5に示すように、区画壁14gの中途に貫通孔14hを形成し、この貫通孔14hをスライドするとともに、内気ダクト14fまたは外気ダクト14eのいずれか一方が閉塞するように湿度検出手段15を構成している。湿度検出手段15は、湿度センサ15a、筐体15d、スライド式の切替え機構15bおよび電気駆動装置15cから構成される。
【0064】
筐体15dは一対の仕切り壁154で形成しており、切替え機構15bが左方向にスライドしたときに、図中に示す右側の仕切り壁154が貫通孔14hを閉塞するように形成されている。また、切替え機構15bが右方向にスライドしたときには、図中に示す左側の仕切り壁154が貫通孔14hを閉塞するように形成されている。
【0065】
湿度センサ15aは一対の仕切り壁154の中間に配設され、切替え機構15bが右方向にスライドしたときに、内気ダクト14f側の内気の湿度を検出できるようになっている。切替え機構15bが左方向にスライドしたときに、外気ダクト14e側の外気の湿度を検出できるようになっている。
【0066】
筐体15dはスライド式の切替え機構15bと一体的に構成され、サーボモータからなる電気駆動装置15cで駆動される。以上の構成による湿度検出手段15は、スライド式の切替え機構15b、15cの切替え制御により一つの湿度センサ15aで、内気または外気のいずれか一方の湿度が交互に検出できる。
【0067】
(第3実施形態)
以上の実施形態では、内外気切替えドア14aの空気流れ上流側に湿度検出手段15を配置するように構成したが、これに限らず、アスピレータ方式による湿度検出手段15を構成しても良い。
【0068】
つまり、内外気切替えドア14aの空気流れ上流側、即ち、内気ダクト14fもしくは外気ダクト14eの内気または外気をアスピレータ方式によって吸引させて一つの湿度センサ15aで、内気または外気のいずれか一方の湿度が交互に検出するように構成しても良い。
【0069】
湿度検出手段15は、図6に示すように、アスピレータ方式による流路ダクト15gを形成し、この流路ダクト15g内に湿度センサ15aを配設するように構成している。流路ダクト15gには、湿度センサ15aの上流側に切替え機構である切替えドア15bを配設している。
【0070】
切替えドア15bの上流側には、一方が内気ダクト14fともう一方が外気ダクト14eに連通する吸込みダクト15e、15fが設けられている。また、湿度センサ15aの空気流れの下流側には、副流路ダクト15hが設けられている。
【0071】
副流路ダクト15hの下流端は空調ケース10の主流路に連通するように配設されている。切替えドア15bはサーボモータからなる電気駆動装置15cで駆動される。以上の構成によれば、空調ケース10の主流路に流れる空気の流れにより、切替えドア15bで切替えられた上流側の内気または外気のいずれかが湿度センサ15aに流れる。これにより、内気または外気のいずれか一方の空気の湿度を検出できる。
【0072】
切替えドア15bが、図中に示すように、外気ダクト14e側に連通するように切替えられていると、図中に示す矢印のように空気流れが発生して、湿度センサ15aで外気の湿度を検出できる。一方、切替えドア15bが、内気ダクト14f側に連通するように切替えられていると、湿度センサ15aには内気が流れて湿度センサ15aで内気の湿度を検出できる。
【0073】
(第4実施形態)
第1実施形態では、湿度検出制御プログラムにおいて、湿度を検出する検出時間を所定時間T1として設定し、その所定時間T1の間に、繰り返して湿度を検出するように構成したが、これに限らず、湿度検出制御プログラムを検出された湿度の変化率が所定値以下となるように、繰り返して湿度を検出し、その変化率が所定値以下となったときの湿度を最終湿度として更新させるように構成しても良い。
【0074】
本実施形態では、図7に示すように、ステップS120とステップS140との間に、ステップS125とステップS135の制御処理を設けている。つまり、ステップS135では変化率が所定値以下か否かを判定する判定手段を設けている。換言すると、変化率が所定値以下となっていない間は、ステップS120に戻り湿度センサ15aで湿度を何度も繰り返して検出するとともに、その湿度データを記憶する。
【0075】
そして、ステップS125にて、ステップS120にて検出された湿度の変化率を算出する。ここで、変化率は今回検出した湿度と先回検出した湿度との差によって求める。そして、ステップS135で変化率と所定値とを比較して所定値以下であればステップS140以降に移行する。
【0076】
つまり、今回検出した湿度が先回検出した湿度よりも変化が小さければ、今回検出した湿度を真の湿度と判定してステップS140以降に移行する。これにより、変化率が所定値以下となった湿度を最終湿度として検出できる。
【0077】
従って、所定時間T1経過したときに、湿度センサ15aの切替え直後のセンサの応答遅れを解消できるとともに、最終の湿度を正確に検出できる。さらに、検出時間を設定するよりもより早く最終の湿度を検出できる。
【0078】
(第5実施形態)
外気の湿度は気候条件によるため変化が少ないが、内気の湿度においては湿度の変化が頻繁にある。そこで、本実施形態では、通常は内気の湿度を主流に検出するようにし、所定のタイミングにおいて、外気の湿度を検出するように湿度検出制御プログラムを構成している。
【0079】
具体的には、図8に示すように、ステップS105で吸込みモードが内気か外気かを判定する。つまり、車両用空調装置100が内気モードで運転しているのか、外気モードで運転しているのかを判定する。ここで、内気モードであれば湿度検出制御プログラムを介してステップS115aに移行する。つまり、内気モードのときに本実施形態の制御処理を実行する。
【0080】
ステップS115aで、切替え機構15b、15cを切替え制御して、例えば、回転ドア15bの回転位置が湿度センサ15aと内気ダクト14fとが連通する開口位置に切替える。これにより、内気の湿度が湿度センサ15aで検出できる。従って、ステップS120で内気の湿度を検出する。そして、ステップS150aで今回検出した湿度を最終データとして更新する。
【0081】
ステップS130aにて、湿度を検出する検出時間を監視する。ここでは、検出時間が所定時間(例えば、10分)T1に達したか否かを判定している。つまり、所定時間(例えば、10分)T1に達するまでの間は、ステップS120を繰り返して内気の湿度を湿度センサ15aで検出するとともに、ステップS150aで最新の湿度データを最終データとして更新している。
【0082】
ここで、所定時間T1を、例えば10分と、比較的長くしたのは、変化が頻繁にある内気側の湿度を正確に検出するためである。つまり、所定時間T1が経過したときを所定のタイミングであると判定して、外気側の湿度を検出するようにしている。
【0083】
ステップS130aで所定時間(例えば、10分)T1に達したときは、ステップS115bに移行する。このステップS115bで切替え機構15b、15cを切替え制御して、例えば、回転ドア15bの回転位置が湿度センサ15aと外気ダクト14eとが連通する開口位置に切替える。これにより、外気の湿度が湿度センサ15aで検出できる。
【0084】
次のステップS120aで外気の湿度を検出する。ステップS125にて、ステップS120aにて検出された湿度の変化率を算出する。そして、ステップS135でその変化率と所定値とを比較して所定値以下であればステップS140以降に移行する。ここで、変化率が所定値以上であれば、変化率が所定値以下となるまでステップS120aおよびステップS125の制御処理を繰り返す。
【0085】
そして、ステップS140で変化率が所定値以下となった湿度データを最終湿度として読み込む。ステップS150にて、読み込んだ最終湿度を最新の外気の湿度データとして更新する。そして、ステップS105に戻る。
【0086】
以上のような制御処理によれば、一つの湿度センサ15aで内気と外気の両方の湿度を交互に検出できる。また、頻繁な変化がない外気よりも頻繁な変化を有する内気の湿度を監視することができる。
【0087】
なお、本実施形態の制御処理では、外気の最終の湿度を更新するために、変化率が所定値以下となるように湿度を繰り返して検出するように構成したが、これに限らず、第1実施形態と同じように、湿度の検出時間を所定時間(例えば、30秒)T1として設定し、検出時間が所定時間T1になるまで、繰り返して湿度を検出し、所定時間T1に達したときの湿度を最終湿度として更新するように構成しても良い。
【0088】
また、ステップS105にて、車両用空調装置100が外気モードのときは、本実施形態の制御処理を実行しなかったが、外気モードであれば、図3もしくは図7に示す湿度検出制御プログラムに基づいて、外気、内気のいずれか一方の湿度を検出すれば良い。
【0089】
ここでは、所定のタイミングとして、検出時間を監視するように構成したが、これに限らず、内外気モードがオートもしくはマニアルによって操作されたときに、切替え機構15b、15cを内気から外気に切替え制御して、もう一方の湿度を検出するように構成しても良い。
【0090】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、電磁クラッチ2の断続制御によって駆動される圧縮機1を用いたが、これに限らず、図示しない直流電源から電力が供給されて駆動するインバータの制御により駆動される電動圧縮機を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置100の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すII部拡大図である。
【図3】第1実施形態における空調制御装置5における湿度検出制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。
【図4】(a)に示す切替え機構15b、15cの制御処理および湿度センサ15aで検出された湿度の挙動を示すタイムチャートである。
【図5】第2実施形態における湿度検出手段15の概略構成を示す模式図である。
【図6】第3実施形態における湿度検出手段15の概略構成を示す模式図である。
【図7】第4実施形態における空調制御装置5における湿度検出制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第5実施形態における空調制御装置5における湿度検出制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0092】
5…空調制御装置(制御手段)
11…空調ケース
14…内外気切替え手段
14a…内外気切替えドア
15…湿度検出手段
15a…湿度センサ
15b…回転ドア、切替え機構、切替えドア
15c…電気駆動装置(切替え機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内空気、車室外空気の少なくとも一方を吸込み空気として選択切替えする内外気切替えドア(14a)を有し、選択切替えされた前記吸込み空気を空調ケース(11)内に圧送する内外気切替え手段(14)を備える車両用空調装置において、
前記内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の前記車室内空気、前記車室外空気の湿度を湿度センサ(15a)によって交互に検出するように構成された湿度検出手段(15)を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記湿度検出手段(15)には、前記内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側に配設され、前記内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか一方の湿度を前記湿度センサ(15a)で検出可能なように選択切替えを行う切替え機構(15b、15c)が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記湿度検出手段(15)は、アスピレータ方式によって、前記内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか一方の空気を前記湿度センサ(15a)に導いて湿度を検出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記湿度検出手段(15)には、前記内外気切替えドア(14a)の空気流れ上流側の前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか一方の湿度を前記湿度センサ(15a)で検出可能なように選択切替えを行う切替え機構(15b、15c)が設けられることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記湿度検出手段(15)を制御する制御手段(5)が設けられ、
前記制御手段(5)は、前記切替え機構(15b、15c)を切替え制御して、前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか一方の湿度を前記湿度センサ(15a)により所定時間、繰り返して検出し、所定時間経過後に前記切替え機構(15b、15c)を切替え制御して、前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか他方の湿度を前記湿度センサ(15a)により所定時間、繰り返して検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御手段(5)は、前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか一方の湿度を前記湿度センサ(15a)により検出し、検出された湿度の変化率を算出し、その変化率が所定値以下となったときに、前記車室内空気、前記車室外空気のいずれか他方の湿度を検出するように前記切替え機構(15b、15c)を切替え制御することを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御手段(5)は、通常のときに、前記車室内空気の湿度を検出するように前記切替え機構(15b、15c)が切替え制御されており、所定のタイミングにおいて、前記切替え機構(15b、15c)を切替え制御して、前記車室外空気の湿度を前記湿度センサ(15a)により所定時間、繰り返して検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記制御手段(5)は、前記湿度センサ(15a)で検出された湿度の変化率を算出し、その変化率が所定値以下となったときに、前記車室内空気の湿度を検出するように前記切替え機構(15b、15c)を切替え制御することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−179257(P2008−179257A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14275(P2007−14275)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】