説明

車両用錠制御装置及び車両用錠制御方法

【課題】ユーザに対して鍵の管理を強いることなく施錠又は開錠を可能とする。
【解決手段】ユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を予め取得する第一取得装置31と、施錠又は開錠時にユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を取得する第二取得装置54と、第二取得装置54により取得された情報により特定される物品が、第一取得装置31により取得された情報により特定される物品の中の所定の組み合わせを含むときに開錠する制御装置53,56と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用錠制御装置及び車両用錠制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザによりオンまたはオフ操作される複数のスイッチを使用し、該複数のスイッチのオンまたはオフの組み合わせを予め記憶しておき、ユーザの操作によるスイッチのオンまたはオフの組み合わせが予め記憶しておいた組み合わせと一致したときに開錠する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、鍵の紛失により第三者に施錠または開錠されないようにすることができる。また、鍵を持ち歩く必要がなくなる。しかし、ユーザはスイッチの組み合わせを記憶しておかなくてはならず、この組み合わせを忘れてしまうと、たとえ正規のユーザであっても施錠及び開錠をすることができなくなる。
【0003】
また、複数の鍵を組み合わせることにより施錠及び開錠する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この技術では、鍵を一つでも紛失すると施錠及び開錠することができなくなってしまう。このように、施錠及び開錠するために専用の鍵を用いる場合には、該鍵を紛失してしまうと正規のユーザであっても施錠及び開錠ができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−197490号公報
【特許文献2】特開2004−11116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザに対して鍵の管理を強いることなく施錠又は開錠を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために本発明による車両用錠制御装置は、以下の手段を採用した。すなわち、本発明による車両用錠制御装置は、
ユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を予め取得する第一取得装置と、
施錠又は開錠時にユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を取得する第二取得装置と、
前記第二取得装置により取得された情報により特定される物品が、前記第一取得装置により取得された情報により特定される物品の所定の組み合わせを含むときに開錠する制御装置と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
第一取得装置及び第二取得装置が取得する情報は、それ自体では物品を特定することができなくても、データベースに照らし合わせることで物品を特定できる情報であれば良い。例えば物品毎に付与されるユニークな情報であれば良い。物品には、身に付けている物(服、時計、眼鏡等)、ポケットに入れている物(財布等)、手に持っている物(鞄等)、鞄に入れている物(携帯電話等)を含むことができる。
【0008】
第一取得装置は、ユーザが身に付けている物品や携行している物品を予め把握するため
に情報を取得している。これは、例えばユーザが自宅から外出するときの情報としても良い。このときには、ユーザが身に付けている物品や携行している物品の情報を全て取得しても良いし、予め設定しておいた特定の物品の情報を取得しても良い。なお、情報を取得する物品は複数あったほうが良い。一方、第二取得装置は、施錠又は開錠時に正規のユーザであるか否か判断するための情報を取得している。
【0009】
そして、制御装置は、第一取得装置及び第二取得装置により取得された情報により特定される物品の比較を行なっている。ここで、外出時に身に付けている物品や携行している物品は、帰宅時まで殆ど変化しないと考えられる。また、外出時に身に付けている物品や携行している物品は、人によって夫々異なる。このことから、正規のユーザが外出時に身に付けている物品や携行している物品と同じ物品を身に付けているか携行しているユーザは、正規のユーザと同一人物であると判断できる。すなわち、第一取得装置及び第二取得装置により特定される物品が一致すれば、正規のユーザであるとして開錠する。
【0010】
しかし、ユーザが身に付けている物品や携行している物品の中には、紛失し易いものなども存在する。このような物品が不足しているだけで正規のユーザでないと判断してしまうと、実際には正規のユーザであっても開錠されないことが多くなり、不便である。そこで、第二取得装置により特定される物品が、第一取得装置により特定される物品の中の所定の組み合わせを含むときに開錠することとしている。
【0011】
所定の組み合わせとは、正規のユーザであると判断しても良い組み合わせである。この所定の組み合わせは、複数存在していても良い。物品には、上述のように紛失し易いものも存在すれば、下着やズボンのように常に身に付けていて紛失することが殆どないものも存在する。従って、所定の組み合わせの中には、正規のユーザであれば身に付けているか携行しているのが当然の物品や、身に付けているか携行している可能性の高い物品が含まれる。また、所定の組み合わせを含んでいれば良いため、所定の組み合わせの他に、他の物品が含まれていても良い。
【0012】
また、本発明においては、前記第一取得装置及び前記第二取得装置は、前記物品に夫々取り付けられ且つ前記物品を識別するための情報が記憶されているRFIDタグから前記物品を特定するための情報を取得することができる。
【0013】
物品に夫々ユニークな情報が記憶されているRFIDタグが取り付けられていれば、該RFIDタグから情報を取得することにより物品を特定することができる。また、無線通信により情報を取得することができるため、ポケットに入れた物品等の外部から見えない物品の情報も取得することができる。
【0014】
また、本発明においては、ユーザが身に付けているか又は携行している物品の夫々に設定される数値であって該ユーザを識別する上での価値の大きさに応じた数値である係数を記憶している係数データベースと、
前記第一取得装置により取得された情報により特定される物品の夫々に設定されている前記係数の積算値を算出する開錠条件リスト生成部と、
前記開錠条件リスト生成部により算出される積算値を記憶する開錠条件リスト記憶部と、
を備え、
前記制御装置は、前記第二取得装置により取得された情報により特定される物品の夫々に設定されている前記係数の積算値を算出し、この積算値が、前記開錠条件リスト記憶部に記憶されている積算値に対して所定の割合以上のときに開錠することができる。
【0015】
上述のように紛失し易い物品も存在すれば、常に身に付けていて紛失することが殆どな
い物品も存在する。そこで、正規のユーザが開錠時に身に付けているか又は携行している可能性が高い物については、ユーザを識別する上での価値が大きいものとして重み付けを行なって係数を設定している。なお、ユーザを識別する上での価値が大きいほど、係数は大きな値となる。物品と係数との関係は予め設定しておき、係数データベースに記憶しておく。そして、第一取得装置により得られる物品の係数の積算値は、開錠の条件を定めるための基準となる。第一取得手段により得られる係数の積算値は記憶され、その後、第二取得装置により得られる物品の係数の積算値と比較される。
【0016】
第二取得装置により得られる物品の係数の積算値は、該物品に変化が無ければ開錠条件リスト生成部により算出された積算値と同じになる。しかし、物品に変化があると、第二取得装置により得られる物品の係数の積算値は、不足している物品のユーザを識別する上での価値に応じて小さくなる。すなわち、ユーザを識別する上での価値の大きな物品が不足していれば、それに応じて積算値も小さくなるため、前記所定の割合以上を確保できなくなる可能性が高い。一方、ユーザを識別する上での価値の小さな物品が不足していても、積算値はさほど小さくならないため、前記所定の割合以上を確保できる可能性が高い。すなわち、不足している物品が、ユーザを識別する上での価値が比較的大きな物品である場合には開錠されず、ユーザを識別する上での価値が比較的小さな物品である場合には開錠されることとなる。
【0017】
従って、紛失し易い物品が不足している場合であっても開錠されるので、正規のユーザであるにも関わらず開錠されないことを抑制できる。また、紛失し易い物品を拾得した第三者が開錠しようとしても、その物品はユーザを識別する上での価値が小さいために係数の積算値は小さくなるので、開錠されることはない。
【0018】
また、本発明においては、正規のユーザであるか否か判断する他の認証手段を備え、
前記第二取得装置により取得された情報により特定される物品の夫々に設定されている前記係数の積算値が、前記開錠条件リスト生成部により算出される積算値に対して所定の割合未満のときであっても、該所定の割合よりも小さい第二の所定の割合以上であり且つ前記他の認証手段による認証が成功した場合には開錠することができる。
【0019】
他の認証手段とは、第一取得手段により取得される情報を用いずに、正規のユーザであるか否か判断する手段である。例えば、チャレンジ&レスポンスによる認証を行う。このような他の認証手段を併用することで、物品の組み合わせのみでは正規のユーザであるか否か判断できない場合であっても、開錠するか否か判断することができる。すなわち、正規のユーザが多くの物品を紛失した場合や、ユーザを識別する上での価値の大きな物品を紛失した場合であっても、他の認証手段により開錠することができる。また、他の認証手段による認証手続は、係数の積算値が小さくて正規のユーザと断定できない場合にのみ行なうので、ユーザの利便性も確保できる。
【0020】
また、上記課題を達成するために本発明による車両用錠制御方法は、以下の手段を採用した。すなわち、本発明による車両用錠制御方法は、
ユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を予め取得する第一工程と、
施錠又は開錠時にユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を取得する第二工程と、
前記第二工程により取得された情報により特定される物品が、前記第一工程により取得された情報により特定される物品の中の所定の組み合わせを含むときに開錠する第三工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ユーザに対して鍵の管理を強いることなく施錠又は開錠が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例に係る車両用錠制御装置を示すブロック図である。
【図2】IDと係数との関係の一例を示した図である。
【図3】開錠条件リストの例を示した図である。
【図4】サーバにおける処理のフローを示したフローチャートである。
【図5】開錠条件リストを受信したときの車両部の処理のフローを示したフローチャートである。
【図6】評価値と閾値との関係を示した図である。
【図7】実施例1に係る車両部における処理のフローを示したフローチャートである。
【図8】評価値と閾値との関係を示した図である。
【図9】実施例2に係る車両部における処理のフローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車両用錠制御装置及び車両用錠制御方法の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本実施例に係る車両用錠制御装置1を示すブロック図である。本実施例に係る車両用錠制御装置1は、ユーザが身に付けている物品や携行している物品(以下、これらをまとめて所持物品という。)毎に取り付けられているRFIDタグ2から情報を受信して開錠又は施錠を行なう装置である。なお、本実施例では開錠の場合を例に挙げて説明する。
【0025】
RFIDタグ2には、ID記憶部21が備わる。ID記憶部21は、物品毎に付与されるIDが記憶されている。例えば、シャツ、ズボン、ジャケット、財布、時計、ベルト等のユーザが身に着ける物や、鞄等のユーザが手に持って運ぶ物に対してRFIDタグ2が夫々取り付けられており、夫々異なるID(ユニークID)が付与されている。なお、同種類の物品には同じIDが付与されていても良いが、ユーザ毎に所有している物品を把握するために、所有している物品のIDを予め後述するサーバ4に記憶しておく。RFIDタグ2には、例えばパッシブタグを利用することができるが、アクティブタグ又はセミアクティブタグであっても構わない。
【0026】
車両用錠制御装置1は、タグリーダ3、サーバ4、車両部5を備えて構成されている。タグリーダ3は、無線通信によりRFIDタグ2からIDを読み取り、この情報を後述するサーバ4へ出力する。このタグリーダ3は、例えば自宅の玄関等その日のユーザの所持物品を特定できる場所に設置される。そして、ユーザが外出するときに、該ユーザの所持物品に取り付けられているRFIDタグ2からIDを読み取る。タグリーダ3は、RFIDタグ2からの信号を受信するID受信部31、及び後述するサーバ4へIDを出力するサーバ通信部32を備えている。なお、タグリーダ3は、携帯端末に組み込まれていても良い。そうすると、ユーザが外出先で着替えをしたなどで所持物品が変化したであっても新たな所持物品のIDをサーバ4へ送信することができる。また、タグリーダ3を複数個所に設置しておき、夫々のタグリーダ3で所持物品のIDが読み取られるごとに該IDをサーバ4へ出力しても良い。なお、本実施例ではID受信部31が、本発明における第一取得装置に相当する。
【0027】
サーバ4は、タグリーダ通信部41、IDリスト生成部42、係数データベース43(係数DB43)、開錠条件リスト生成部44、車両通信部45を備えている。タグリーダ通信部41は、タグリーダ3のサーバ通信部32が発信する所持物品のIDを取得する。IDリスト生成部42は、タグリーダ通信部41で取得されるIDをリスト化する。このときに係数DB43に記憶されている係数が参照される。なお、係数DB43は、IDに応じた係数を記憶しているデータベースである。この係数は、ユーザが常時身につけている物や比較的大きな物は、ユーザを識別する上での価値が大きいとして大きな値が付与され、紛失し易い物や忘れ易い物、さらには比較的小さな物については、ユーザを識別する上での価値が小さいとして小さな値が付与される。すなわち、タグリーダ3により所持物品のIDが取得されてから、車両の開錠を行なうまでの間に、入れ替わったり紛失したりする可能性の低いものほど、係数を大きくしている。なお、ユーザは、自己の所有物に付与されているIDを予めサーバ4に登録させておく。
【0028】
図2は、IDと係数との関係の一例を示した図である。例えばYシャツを脱いでそれをどこかに忘れる確率に対して、ジャケットを脱いでそれをどこかに忘れる確率のほうが高いため、該ジャケットの係数はYシャツと比較して小さくなる。また、財布等の比較的紛失し易いものは係数が小さくなる。係数は、物品のカテゴリ(上着、下着、時計等)に応じて自動的に付与されるが、ユーザが任意に設定しても良い。IDリスト生成部42がタグリーダ通信部41で取得されるIDに対して夫々係数DB43を参照してリストアップすることでIDリストを得る。
【0029】
開錠条件リスト生成部44は、IDリスト生成部42により生成されたIDリストに基づいて、開錠条件となるリスト(開錠条件リスト)を生成する。開錠条件リストは、ユーザの所持物品全てを対象にしたものであっても良く、特定の所持物品を対象にしたものであっても良い。ここで、図3は、開錠条件リストの例を示した図である。ユーザの所持物品であるYシャツ、ジャケット、スラックス、財布、腕時計、ベルトに基づいて開錠条件リストを作成している。開錠リストは、所持物品のIDと、このIDに対応する評価値と、からなる。評価値とは、IDリストの各係数に比例する値であり、所持物品のIDに対応する評価値を合計すると1になるように設定される値である。
【0030】
そして、車両通信部45は、車両部5へ開錠条件リストを送信する。この開錠条件リストは、タグリーダ3によりIDを受信する毎に生成され、その都度車両部5へ送信される。
【0031】
図4は、サーバ4における処理のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、タグリーダ3からIDを受信すると実行される。
【0032】
ステップS101では、ユーザの所持物品のIDを全て受信したか否か判定される。例えば、最後のIDを受信してから所定時間が経過したときに肯定判定がなされる。ステップS101で肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS101を再度繰り返す。
【0033】
次に、ステップS102では、IDリスト生成部42が係数DB43を参照し、ステップS103では、受信された全てのIDに対応する係数がリストアップされる。
【0034】
ステップS104では、開錠条件リスト生成部44が受信した全てのIDに対する評価値が算出され、ステップS105では、開錠条件リストが作成される。そして、ステップS106では、車両通信部45が開錠条件リストを車両部5へ送信する。
【0035】
次に、車両部5は、車両に搭載されており、サーバ通信部51、開錠条件リスト記憶部52、開錠判断部53、ID受信部54、閾値記憶部55、開錠制御部56を備えている。
【0036】
サーバ通信部51は、サーバ4の車両通信部45と通信して開錠条件リストを得る。この通信は、無線により行なわれる。開錠条件リスト記憶部52は、サーバ通信部51により取得された開錠条件リストを記憶しておく。サーバ4により開錠条件リストが作成されるごとに、開錠条件リスト記憶部52の記憶内容が更新される。
【0037】
図5は、開錠条件リストを受信したときの車両部5の処理のフローを示したフローチャートである。ステップS201において、開錠条件リストが開錠条件リスト記憶部52に記憶されている。
【0038】
そして、開錠判断部53は、開錠条件リスト記憶部52により記憶されている開錠条件リストと、ID受信部54により取得されるIDと、から正規のユーザであるか否か判断する。ID受信部54は、タグリーダ3のID受信部31と同様にしてユーザの所持物品のIDを得る。ID受信部54により取得されるIDを、開錠条件リストに示されるIDと比較し、一致するものがあれば、そのID対して設定されている評価値を積算していく。
【0039】
この評価値の積算値は、正規のユーザである可能性が高いほど大きな値となり、ユーザの所持物品に全く変化がなければ1となる。ところで、正規のユーザであっても例えば財布や時計を紛失する場合もあり、この場合には評価値の積算値が1よりも小さくなる。このように所持物品は変化することがあるため、本実施例では閾値を設定し、評価値の積算値が閾値以上であれば、正規のユーザであると判断している。この閾値は、閾値記憶部55に記憶されている。閾値は、IDに応じて設定されている係数が比較的小さな所持物品が例えば1つ足りなくても評価値の積算値が該閾値以上となるように設定される。これは、開錠時の所持物品が、IDリストに示される物品の中の所定の組み合わせを含むときに、評価値の積算値が閾値以上となるように該閾値が設定されているともいえる。なお、本実施例ではID受信部54が、本発明における第二取得装置に相当する。
【0040】
図6は、評価値と閾値との関係を示した図である。例えば閾値を0.9に設定しておくと、紛失し易い財布(評価値0.05)が不足する場合であっても、評価値の積算値は0.95となり、これは閾値(0.9)以上であるので、正規のユーザであると判断される。同様に、腕時計(評価値0.1)が不足する場合であっても、評価値の積算値は0.90となり、これは閾値(0.9)以上であるので、正規のユーザであると判断される。しかし、財布及び腕時計の両方がない場合には、評価値の積算値が0.85となり閾値(0.9)未満となるので、正規のユーザではないと判断される。一方、紛失し易い財布や腕時計を他人が拾得したとしても、少数であれば評価値の積算値は0.9未満となるので、正規のユーザでないと判断される。
【0041】
このように、開錠時の所持物品が、IDリストに示される物品の中の所定の組み合わせを含むときに正規のユーザであると判断される。なお、本実施例の場合には、所定の組み合わせが2つあり、1つ目は、Yシャツ、スラックス、ベルト、ジャケット、及び腕時計の組み合わせである。また、2つ目は、Yシャツ、スラックス、ベルト、ジャケット、及び財布の組み合わせである。この2つのうちの何れかの組み合わせを含むときに正規のユーザであると判断される。
【0042】
そして、開錠判断部53において、評価値の積算値が0.9以上であると判断されると、開錠制御部56に信号を出力する。開錠制御部56は、開錠判断部53からの信号を受
けると、開錠を行なう。この開錠は、車両のドアに設けられている錠を開くものであっても良く、エンジンを始動させないための装置を解除するものであっても良い。なお、本実施例では開錠判断部53及び開錠制御部56が、本発明における制御装置に相当する。
【0043】
図7は、本実施例に係る車両部5における処理のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ID受信部54がIDを受信すると実行される。
【0044】
ステップS301では、ID受信部54がユーザの所持物品のIDを全て受信したか否か判定される。本ステップでは、ステップS101と同様の処理がなされる。ステップS301で肯定判定がなされた場合にはステップS302へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS301を再度繰り返す。
【0045】
ステップS302では、開錠判断部53が、ID受信部54から全てのIDを受け取り、ステップS303では、開錠判断部53が、開錠条件リスト記憶部52から開錠条件リストを取り出す。
【0046】
ステップS304では、ID受信部54が受信した全てのIDの中で開錠条件リストに存在するIDの評価値を積算する。そして、ステップS305では、開錠判断部53が閾値記憶部55から閾値を取り出す。
【0047】
ステップS306では、評価値の積算値が閾値以上であるか否か判定される。ステップS306で肯定判定がなされた場合にはステップS307へ進んで開錠制御部56へ信号を送る。一方、否定判定がなされた場合には、開錠制御部56に信号を送ることなく本ルーチンを終了させる。すなわち、開錠を行なわない。
【0048】
以上説明したように本実施例によれば、ユーザの外出時の所持物品に基づいて開錠の判断を行なうため、ユーザが鍵を携行する必要がなく、パスワード等を記憶する必要もない。さらに、所持物品に重み付けがなされているため、紛失し易いものを紛失したとしても、その数が少なければ開錠することができる。また、ユーザの所持物品を他人が拾得しても、その数が少なければ開錠することはない。自宅の玄関にタグリーダ3を設置しておけば、外出するたびに所持物品が異なっていても、その都度IDを読み込むことができる。
【0049】
なお、本実施例では係数に基づいて評価値を算出し、該評価値を利用して開錠の判断を行なっているが、係数をそのまま利用して開錠の判断を行なっても良い。すなわち、タグリーダ3により読み込まれたIDから、所持物品の夫々の係数を求め、該係数の積算値を算出する。また、車両部5のID受信部54により読み込まれたIDからも同様にして、係数の積算値を算出する。この車両部5のID受信部54により得られる係数の積算値が、タグリーダ3により得られる係数の積算値の例えば9割以上であれば開錠する。つまり、タグリーダ3により得られる係数の積算値に上述の閾値を乗じた値以上であれば開錠する。従って、本実施例では閾値が、本発明における所定の割合に相当する。
【0050】
なお、本実施例では開錠する場合について説明したが、本実施例に係る開錠の条件が成立しない場合には施錠しても良い。例えば、ID受信部54が定期的にIDを受信し、開錠判断部53は、開錠条件リスト記憶部52により記憶されている開錠条件リストと、ID受信部54により取得されるIDと、から正規のユーザが存在するか否か判断する。そして、正規のユーザが存在せず且つ車両が停止している状態であれば施錠する。
【実施例2】
【0051】
本実施例では、評価値の積算値が閾値未満であり且つ第二閾値以上の場合には、他の認証手段により開錠の判断を行なう。この第二閾値は、実施例1で説明した閾値よりも小さ
な値であり、例えば0.7である。第二閾値は、所持物品が複数不足する状態ではあるが、正規のユーザの可能性があるような値に設定される。逆に、第二閾値未満であれば、正規のユーザではないと判断できる値として該第二閾値を設定しても良い。第二閾値は、閾値記憶部55に記憶される。
【0052】
図8は、評価値と閾値との関係を示した図である。例えば閾値を0.9に設定し、第二閾値を0.7に設定しておくと、例えば財布、腕時計、及びジャケットが足りない場合には評価値の積算値は0.7となり、この値は第二閾値(0.7)以上で且つ閾値(0.9)未満であるので、他の認証手段により開錠の判断を行なう。
【0053】
他の認証手段は、タグリーダ3により取得された所持物品の情報とは関係なく開錠の判断を行なう。例えば、携帯電話UI等を利用したチャレンジ&レスポンスによる認証、PIN情報の入力による認証、ユーザしか知らない事項の質問に対する回答を得ることによる認証、または生体認証を行なう。
【0054】
図9は、本実施例に係る車両部5における処理のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ID受信部54がIDを受信すると実行される。なお、図7に示したフローと同じ処理がなされるステップについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
ステップS401では、開錠判断部53が閾値記憶部55から閾値及び第二閾値を取り出す。そして、ステップS402では、評価値の積算値が第二閾値以上で且つ閾値未満であるか否か判定される。ステップS402で肯定判定がなされた場合にはステップS403へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS306へ進む。
【0056】
ステップS403では、開錠判断部53が他の認証手段による認証に成功したか否か判定される。ステップS403で肯定判定がなされた場合にはステップS307へ進んで開錠制御部56へ信号を送る。一方、否定判定がなされた場合には、開錠制御部56に信号を送ることなく本ルーチンを終了させる。すなわち、開錠を行なわない。
【0057】
以上説明したように本実施例によれば、正規のユーザであるか疑いがあるときには、別途他の認証手段を併用することにより、正規のユーザであるか否かの判断の精度を高めることができる。これにより、正規のユーザであるにも関わらず開錠されないことを抑制できる。また、正規のユーザの所持物品を拾得した第三者により開錠されることを抑制できる。そして、他の認証手段により認証を行なうのは、評価値の積算値が比較的小さな場合に限られるために、ユーザがこの認証を強いられることもあまり無いので、利便性も確保できる。
【0058】
なお、本実施例においても、係数をそのまま利用して開錠の判断を行なっても良い。従って、本実施例では第二閾値が、本発明における第二の所定の割合に相当する。
【符号の説明】
【0059】
1 施錠装置
2 RFIDタグ
3 タグリーダ
4 サーバ
5 車両部
21 ID記憶部
31 ID受信部
32 サーバ通信部
41 タグリーダ通信部
42 IDリスト生成部
43 係数DB
44 開錠条件リスト生成部
45 車両通信部
51 サーバ通信部
52 開錠条件リスト記憶部
53 開錠判断部
54 ID受信部
55 閾値記憶部
56 開錠制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を予め取得する第一取得装置と、
施錠又は開錠時にユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を取得する第二取得装置と、
前記第二取得装置により取得された情報により特定される物品が、前記第一取得装置により取得された情報により特定される物品の中の所定の組み合わせを含むときに開錠する制御装置と、
を備えることを特徴とする車両用錠制御装置。
【請求項2】
前記第一取得装置及び前記第二取得装置は、前記物品に夫々取り付けられ且つ前記物品を識別するための情報が記憶されているRFIDタグから前記物品を特定するための情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の車両用錠制御装置。
【請求項3】
ユーザが身に付けているか又は携行している物品の夫々に設定される数値であって該ユーザを識別する上での価値の大きさに応じた数値である係数を記憶している係数データベースと、
前記第一取得装置により取得された情報により特定される物品の夫々に設定されている前記係数の積算値を算出する開錠条件リスト生成部と、
前記開錠条件リスト生成部により算出される積算値を記憶する開錠条件リスト記憶部と、
を備え、
前記制御装置は、前記第二取得装置により取得された情報により特定される物品の夫々に設定されている前記係数の積算値を算出し、この積算値が、前記開錠条件リスト記憶部に記憶されている積算値に対して所定の割合以上のときに開錠することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用錠制御装置。
【請求項4】
正規のユーザであるか否か判断する他の認証手段を備え、
前記第二取得装置により取得された情報により特定される物品の夫々に設定されている前記係数の積算値が、前記開錠条件リスト生成部により算出される積算値に対して所定の割合未満のときであっても、該所定の割合よりも小さい第二の所定の割合以上であり且つ前記他の認証手段による認証が成功した場合には開錠することを特徴とする請求項3に記載の車両用錠制御装置。
【請求項5】
ユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を予め取得する第一工程と、
施錠又は開錠時にユーザが身に付けているか又は携行している物品を特定するための情報を取得する第二工程と、
前記第二工程により取得された情報により特定される物品が、前記第一工程により取得された情報により特定される物品の中の所定の組み合わせを含むときに開錠する第三工程と、
を含むことを特徴とする車両用錠制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−132674(P2011−132674A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290274(P2009−290274)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】