説明

車両用電磁波シールドカバー

【課題】従来より軽量化でかつ、低コストで製造可能な車両用電磁波シールドカバーの提供を目的とする。
【解決手段】
本発明に係る車両アンダーカバー10は、車底壁92の一部を構成して、バッテリーモジュール群30全体を下方から覆い、カバー本体17の上面に、アルミ層12を1対の樹脂層13,13で挟んでなるノイズ遮蔽シート11を敷設して備えている。また、ノイズ遮蔽シート11の上面には、アルミ層12と導通接続した接続部20が露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の電源部等の電磁波を遮蔽する車両用電磁波シールドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気自動車として、図6に示すように、複数のバッテリーセルからなるバッテリーモジュール群3を車両本体2の底部に備えた電気自動車1が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電気自動車1では、バッテリーモジュール群3から発生する電磁波ノイズの影響を抑えるために、バッテリーモジュール群3の下方に配置される車両アンダーカバー4に金属メッシュ5を敷設していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83599号公報(請求項3、[0053])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車両アンダーカバー4では、金属メッシュ5が重くいため、車両の軽量化の妨げになっていた。また、腐食防止のために金属メッシュ5をステンレス製にしていたので、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より軽量でかつ低コストで製造可能な車両用電磁波シールドカバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑みてなされた請求項1の発明に係る車両用電磁波シールドカバーは、電気自動車に設置されたバッテリーモジュール群をカバーする車両用電磁波シールドカバーであって、車両用電磁波シールドカバーは、樹脂製のカバー本体の一方の面に、導電金属層を1対の樹脂層で挟んだノイズ遮断シートをバッテリーモジュール群に対応する部位に敷設して備え、ノイズ遮断シートをカバー本体に固定したシート固定手段と、ノイズ遮断シートの外面に設けられて、樹脂層を貫通して導電金属層に導通接続されると共に、電気自動車の車両本体における導電金属塊に導通接続可能な接続部とを有するところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用電磁波シールドカバーにおいて、板状端子金具と、板状端子金具に形成した貫通孔とノイズ遮断シートに形成した貫通孔とに挿通した状態でカシメられて、板状端子金具と導電金属層とを導通接続した状態に固定したリベットとで接続部を構成したところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両用電磁波シールドカバーにおいて、ノイズ遮断シートの貫通孔は、その中心からスリットが放射状に広がった形状をなし、その貫通孔の縁部における複数の突片がリベットにて押し広げられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の車両用電磁波シールドカバーにおいて、シート固定手段として、ノイズ遮断シートの樹脂層とカバー本体の一方の面とを溶着した溶着部を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1の発明に係る車両用電磁波シールドカバーは、導電金属層を1対の樹脂層で挟んでなるノイズ遮断シートが敷設された構成になっているので、従来の金属メッシュと比較して、軽量化を図ることができる。また、1対の樹脂層により導電金属層の露出が防がれるので、防錆処理を施した金属を用いる必要がなくなり、低コストで製造が可能になる。
【0011】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、リベットによって板状端子金具とノイズ遮断シートが挟持されるので、板状端子金具と導電金属層とを安定して導通接続させることが可能になる。
【0012】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、貫通孔の内側面で露出した導電金属層とリベットとを接触させることができるので、導電金属層と板状端子金具とを確実に導電接続することができる。
【0013】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、ノイズ遮断シートを樹脂製のカバー本体の一方の面に敷設することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両アンダーカバー及びバッテリーモジュール群の斜視図
【図2】車両アンダーカバーの斜視図
【図3】車両アンダーカバー及びバッテリーモジュール群の側断面図
【図4】ノイズ遮断シート及び金属プレートの側断面図
【図5】ノイズ遮断シートの一部拡大平面図
【図6】従来の電気自動車の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電気自動車90は、車両本体91の底部に複数のバッテリーモジュール31を備えている。バッテリーモジュール31を車両の前後方向、左右方向に複数個ずつマトリクス状に並べて配置され、それら複数のバッテリーモジュール31にてバッテリーモジュール群30が構成されている。なお、各バッテリーモジュール31には、バッテリーセル及び電気部品が備えられている。
【0016】
図3に示すように、バッテリーモジュール群30は、路面に対向した車底壁92にて下側が覆われている。そして、車底壁92のうちバッテリーモジュール群30の下方に配置された部分が、本発明の「車両用電磁波シールドカバー」に相当する車両アンダーカバー10になっている。
【0017】
車両アンダーカバー10は、合成樹脂の射出成形品であって、バッテリーモジュール群30よりも面積が大きな平坦部10Hを底部に備えた容器状のカバー本体17を有している。そして、図2に示すように、平坦部10Hの上面、即ち、バッテリーモジュール群30との対向面全体に、ノイズ遮断シート11を敷設して備えている。図4に示すように、ノイズ遮断シート11は、アルミ層12(厚さ40μm以上)を1対の樹脂層13(厚さ20μm以上)で挟んでなるサンドイッチ構造になっている。
【0018】
詳細には、樹脂層13とカバー本体17は共にポリプロピレン樹脂で構成されていて、樹脂層13をカバー本体17の上面に複数箇所、溶着することでノイズ遮断シート11がカバー本体17に固定されている。
【0019】
図3に示すように、ノイズ遮断シート11の上面には、アルミ層12と車両本体91を接続してアースを取るための接続部20が露出している。具体的には、同図に示すように、導線23の一端部を接続部20に接続し、導線23の他端部を車両本体91に接続することで、ノイズ遮断シート11のアルミ層12のアースを取ることが可能になっている。
【0020】
図4に示すように、接続部20は、ノイズ遮断シート11の上面に沿って配置された金属プレート22(本発明の「板状端子金具」に相当する)と、ノイズ遮断シート11に形成された貫通孔11Aと金属プレート22に形成された貫通孔22Aの両方に挿通したハトメ21(本発明の「リベット」に相当する)とで構成されている。そして、ハトメ21の両端に形成されたフランジ部21Fにノイズ遮断シート11とハトメ21が挟持されることで、ハトメ21とアルミ層12とが導通接続した状態に固定されている。
【0021】
図5には、ハトメ21を挿通する前の状態のノイズ遮断シート11が示されている。ノイズ遮断シート11の貫通孔11Aは、断面形状が中心から、例えば、4つのスリット15が放射状に広がった形状をなし、それらスリットの先端同士を結んだ外接円(図5の一点鎖線で示す円)の径が、ハトメ21の軸部21J(図4参照)の外径とほぼ同じになっている。そして、貫通孔11Aにハトメ21を挿通すると、隣接するスリット15に挟まれた複数の突片16がハトメ21にて押し広げられる。これにより、突片21の端面で露出していたアルミ層12を、ハトメ21或いは金属プレート22と接触させることができ、アルミ層12と金属プレート22とを確実に導通接続することができる。また、前記突片16部分を覆っている樹脂層13を剥がして、アルミ層12を露出させておくことで、アルミ層12と金属プレート22の導通接続をさらに確実にできる。なお、樹脂層13を剥がす方法としては、例えば、カッター等によりノイズ遮断シート11の表面に切れ目を入れて樹脂層13を切除することが挙げられる。
【0022】
本実施形態の車両アンダーカバー10に関する構成の説明は以上である。本実施形態の車両アンダーカバー10では、アルミ層12を1対の樹脂層13,13で挟んでなるノイズ遮断シート11がカバー本体17の上面に敷設された構成になっているので、従来の金属メッシュが敷設された車両アンダーカバーと比較して、軽量化を図ることができる。また、1対の樹脂層13,13によりアルミ層12の露出が防がれるので、防錆処理を施した金属を用いる必要がなくなり、低コストで製造が可能になる。
【0023】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0024】
(1)上記実施形態では、ノイズ遮断シート11の貫通孔11Aのスリット15が4つであったが、3つであっても、5つ以上であってもよい。
【0025】
(2)カバー本体17の上面から突出した上面突部を設け、その上面突部をノイズ遮断シート11に貫通させた状態で熱カシメすることで、ノイズ遮断シート11をカバー本体17に固定してもよい。
【0026】
また、金属プレート22の内側に上面突部を挿通した状態で熱カシメしてもよい。
【0027】
(3)上記実施形態では、溶着によってノイズ遮断シート11をカバー本体17に固定していたが、例えば、クリップ止め等の機械的手段によって固定してもよいし、接着材によって固定してもよい。
【0028】
(4)上記実施形態では、車両下に取り付けられる車両アンダーカバー10に本発明を適用した例を示したが、車載されたバッテリーモジュール群30を上から覆う電磁波シールドカバーに適用してもよい。
【0029】
なお、本発明の技術的範囲には含まれないが、本発明の車両用電磁波シールドカバーをハイブリッド車の車両アンダーカバーに適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 車両アンダーカバー(車両用電磁波シールドカバー)
11 ノイズ遮断シート
12 アルミ層(導電金属層)
13 樹脂層
15 スリット
16 突片
17 カバー本体
20 接続部
21 ハトメ
22 金属プレート(板状端子金具)
30 バッテリーモジュール群
90 電気自動車
91 車両本体
92 車底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に設置されたバッテリーモジュール群をカバーする車両用電磁波シールドカバーであって、
前記車両用電磁波シールドカバーは、樹脂製のカバー本体の一方の面に、導電金属層を1対の樹脂層で挟んだノイズ遮断シートを前記バッテリーモジュール群に対応する部位に敷設して備え、
前記ノイズ遮断シートを前記カバー本体に固定したシート固定手段と、
前記ノイズ遮断シートの外面に設けられて、前記樹脂層を貫通して前記導電金属層に導通接続されると共に、前記電気自動車の車両本体における導電金属塊に導通接続可能な接続部とを有することを特徴とする車両用電磁波シールドカバー。
【請求項2】
板状端子金具と、
前記板状端子金具に形成した貫通孔と前記ノイズ遮断シートに形成した貫通孔とに挿通した状態でカシメられて、前記板状端子金具と前記導電金属層とを導通接続した状態に固定したリベットとで前記接続部を構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用電磁波シールドカバー。
【請求項3】
前記ノイズ遮断シートの貫通孔は、その中心からスリットが放射状に広がった形状をなし、その貫通孔の縁部における複数の突片が前記リベットにて押し広げられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用電磁波シールドカバー。
【請求項4】
前記シート固定手段として、前記ノイズ遮断シートの前記樹脂層と前記カバー本体の一方の面とを溶着した溶着部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の車両用電磁波シールドカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71702(P2013−71702A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213877(P2011−213877)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】