説明

車両移動用器具

【課題】 車両の移動のために使用される器具の実用性を向上させることを課題とする。
【解決手段】 第1回転ローラ14を有し、その第1回転ローラがそれの回転軸線が車輪44ML,MRの軸線と平行となる状態で車輪と走行面とによって挟まれるようにセットされ、セットされた状態において、第1回転ローラが車輪の回転によって回転軸線回りに回転することで、第1回転ローラが走行面を転動し、車両40が車輪の軸線と直角な方向に移動するように構成された車両移動用器具であって、第1回転ローラの外周に、当該車両移動用器具がセットされた状態においてローラの回転軸線に平行な方向の車輪と走行面との相対移動を許容するための第2回転ローラ16を設ける。この車両移動用器具を用いれば、走行面上において、車両を任意の方向に移動させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の移動のために使用される器具に関する。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車などの車両は、一般的に、自身の駆動力によって、容易に、前後方向へ移動したり、車体を転向させながら移動したりできるが、車両を横方向(車幅方向)あるいは斜め方向に移動することは不可能である。下記特許文献では、車両移動用器具、つまり、車両を移動させるための器具が提案されており、それらの車両移動用器具を用いることで、車両をその場で転向させたり横方向に移動させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平2−19022号公報
【特許文献2】実開平5−94040号公報
【特許文献3】特開平9−207730号公報
【特許文献4】特開平11−286262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両移動用器具は、上記特許文献に記載されているように、用途に応じて、その用途に限定して使用される様々なタイプのものが存在しており、それぞれの用途に便利に用いられている。したがって、新たな用途に対して、その用途に応じた新たなタイプのものを開発することにより、その用途に適した実用的な車両移動用器具が得られることになる。そのような実情に鑑み、本発明は、実用性の高い車両移動用器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の車両移動用器具は、ローラを有し、そのローラがそれの回転軸線が車輪の軸線と平行となる状態で車輪と走行面とによって挟まれるようにセットされ、セットされた状態において、ローラが車輪の回転によって回転軸線回りに回転することで、ローラが走行面を転動し、車両が車輪の軸線と直角な方向に移動するように構成された車両移動用器具であって、ローラの外周に、当該車両移動用器具がセットされた状態においてローラの回転軸線に平行な方向の車輪と走行面との相対移動を許容するための軸線方向移動許容機構が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の車両移動用器具によれば車両移動用器具は、車輪の回転によるローラの回転によって、ローラの転がる方向、つまり、車輪軸線と直角な方向へと移動し、かつ、軸線方向移動許容機構によって、車輪軸線方向への移動が許容されている。したがって、本車両移動用器具を用いれば、走行面上において、車体の向きを変えずに車両を任意の方向に移動させることが可能となる。つまり、車両を斜めに移動させるために本車両移動用器具を使用することができる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の態様のうちのいくつかのものが、特許請求の範囲に記載した請求項に係る発明に相当する。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に相当し、(3)項が請求項3に相当し、(4)項が請求項4に相当し、(5)項と(6)項とを合わせたものが請求項5に、(7)項が請求項6に、(9)項が請求項7に、(10)項が請求項8に、(12)項が請求項9に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)ローラを有し、そのローラがそれの回転軸線が車輪軸線と平行となる状態で車輪と走行面とによって挟まれるようにセットされ、セットされた状態において、前記ローラが車輪の回転を伴って前記回転軸線回りに回転することで、前記ローラが走行面を転動し、車両を前記車輪軸線と直角な方向に移動させることができる車両移動用器具であって、
前記ローラの外周に、当該車両移動用器具がセットされた状態において前記ローラの回転軸線に平行な方向の当該車両移動用器具と走行面との相対移動を許容するための軸線方向移動許容機構が設けられたことを特徴とする車両移動用器具。
【0010】
本車両移動用器具が車輪にセットされると、車輪はローラに乗って走行面から浮いている状態となる。また、そのセットされた状態で、車輪と車両移動用器具とは、車輪の回転を伴いながら車輪軸線に直角な方向、つまり、車輪の転がる方向に移動することになる。それに加え、本車両移動用器具によれば、軸線方向移動許容機構によって、車輪は、走行面に対する車輪軸線方向への移動が許容されている。つまり、本車両移動用器具によれば、本車両移動用器具がセットされた車両を、任意の方向に移動させることができるのである。
【0011】
例えば、前方と後方とに1つずつ配置された転舵輪と、それら転舵輪の中間において左右にそれぞれ配置された転舵することのできない2つの駆動輪を有する車両、言わば、車輪が菱形の各頂点に配置されているような車両(以下、「菱形車輪配置車両」という場合がある)において、本車両移動用器具が2つの駆動輪の各々にセットされ、2つの転舵輪が同じ方向に同じ角度だけ転舵させられている場合には、運転者がアクセル操作によってそれら駆動輪を回転駆動させれば、車体の向きを変えずに車両を転舵輪の転舵する方向へと移動させることができる。したがって、本車両移動用器具を用いれば、そのような菱形車輪配置車両を、自身の駆動力で、斜め方向に移動させることができる。
【0012】
なお、本車両移動用器具は、車両の駆動輪だけではなく、駆動輪ではない車輪、つまり、自由に回転可能とされている車輪においてセットされていてもよい。その場合、その車輪の車輪軸線と直角な方向に力が作用した場合には、その車輪とローラとがともに回転し、走行面に対するその車輪の車輪軸線と直角な方向への移動が許容されることになる。
【0013】
(2)当該車両移動用器具が、車輪の前記ローラに対する前記車輪軸線方向の移動を制限する車輪移動制限機構を有する(1)項に記載の車両移動用器具。
【0014】
本車両移動用器具では、上記車両移動制限機構によって、車輪が車両移動用器具に対して車輪軸線方向に移動して車両移動用器具からずれ落ちるのを防止することができる。換言すれば、車両移動用器具のセットが解除されてしまうのを防止することができる。車両移動制限機構は、例えば、車両移動用器具がセットされた状態において、車輪を係止することで車輪の車輪軸線方向の移動を制限するようなものであればよい。
【0015】
(3)当該車両移動用器具が、それぞれが前記ローラである2つのローラを有し、
当該車両移動用器具がセットされた状態において、前記2つのローラの一方が、前記車輪軸線の前方において車輪と走行面とに挟まれる位置に、かつ、前記2つのローラの他方が、前記車輪軸線の後方において車輪と走行面とに挟まれる位置に配置される(2)項に記載の車両移動用器具。
【0016】
本車両移動用器具によれば、本車両移動用器具がセットされている場合、車輪は、言わば、車輪の転がる方向に並べられた2つのローラに乗って走行面から浮いている状態となる。また、その状態において、車輪は、車輪軸線の前後にそれぞれ配置される2つのローラの間に嵌まり込んでいる状態となる。そのため、本車両移動用器具では、2つのローラの軸線間距離が固定されている場合には、その嵌まり込みによって、本車両移動用器具は車輪軸線に直角な方向において安定する位置で車輪にセットされることになる。つまり、その嵌まり込みによって、本車両移動用器具を車体に固定することなく、車輪と車輪移動用器具との車輪軸線に直角な方向の相対移動が禁止されるため、他にその相対移動を禁止するための手段を設ける必要がない。また、車輪が駆動されても、ローラが回転するため、車輪は容易にローラを乗り越えることはできない。その意味においても、本車両移動用器具は安定してセットされることになる。したがって、本車両移動用器具によれば、本車両移動用器具に車輪を乗せるだけで、車両移動用器具を車輪に対して安定した状態でセットすることができる。
【0017】
なお、本車両移動用器具は、例えば、車体に連結された状態で位置が固定されることで、安定する位置にセットされるようなものであってもよい。また、このような車体に固定される車両移動用器具であれば、本項の態様とは異なる態様の車両移動用器具ではあるが、例えば、ローラを1つだけ有する車両移動用器具であっても、その車両移動用器具を車輪に対して安定した位置にセットすることができる。
【0018】
(4)当該車両移動用器具が、当該車両移動用器具のセットの際に前記2つのローラを互いに接近させるためのローラ接近機構を有する(3)項に記載の車両移動用器具。
【0019】
本車両移動用器具によれば、上記ローラ接近機構を利用して2つのローラを互いに接近させれば、2つのローラの間に嵌まり込む車輪は、押し上げられることになる。そのことを利用すれば、例えば、車輪が走行面に接している状態で、2つのローラをそれぞれ車輪の前後に配置してから2つのローラを互いに接近させれば、車輪を走行面から浮かせることができる。つまり、2つのローラを互いに接近させることで、車両移動用器具をセットすることができる。また、セットされた状態において接近しているローラを離間させれば、車両移動用器具のセットを解除することができる。
【0020】
(5)当該車両移動用器具が、前記2つのローラの各々の両端部を保持するフレームを有する(4)項に記載の車両移動用器具。
【0021】
本車両移動器具では、2つのローラが、それぞれ、フレームによって保持されることになる。また、フレームによって、2つのローラは、それらの軸線間距離が固定された状態で保持されることになる。
【0022】
(6)前記フレームが、前記2つのローラの各々の両端部のうち、前記車輪軸線方向において同じ側に位置する前記2つのローラの各端部を保持する2つのローラ保持部を有し、それら2つのローラ保持部の少なくとも一方が、前記2つのローラの一方の端部を保持する部分と他方の端部を保持する部分とを分離させるための分離機構を有する(5)項に記載の車両移動用器具。
【0023】
本車両移動用器具によれば、上記分離機構を利用してローラ保持部を分離することで、車輪の接地部、つまり、車輪が走行面に接する部分の前後に2つのローラがそれぞれ配置されるように、車両移動用器具を配置することができる。そのように車両移動用器具を配置した後に分離しているローラ保持部を連結し、その後に、例えば、前述のローラ接近機構によって2つのローラを互いに接近させれば、車両移動用器具を車輪にセットすることができる。したがって、本車両移動用器具によれば、車両を移動させずに車両移動用器具をセットすることができるため、比較的容易に車両移動用器具をセットすることができる。
【0024】
なお、本車両移動用器具では、2つのローラ保持部の一方だけではなく、両方が分離機構を有していてもよい。したがって、2つのローラ保持部が、それぞれ、分離機構を有している場合には、当該車両移動用器具自体が、それぞれが1つのローラを保持する2つの部分に分離することになる。
【0025】
(7)前記2つのローラ保持部の一方が前記分離機構を有しており、前記2つのローラ保持部の他方が、前記2つのローラの一方の端部を保持する部分と他方の端部を保持する部分とを前記2つのローラが互いに離間する方向へ相対回動させるための回動機構を有する(6)項に記載の車両移動用器具
【0026】
本車両移動用器具によれば、2つのローラ保持部の一方を分離し、他方のローラ保持部において、2つのローラの間隔を拡げるようにそれらを回動させることができる。したがって、前述のように、車輪の接地部の前後に2つのローラを配置する場合に、2つのローラの間隔を拡げながらそれらを配置することができる。
【0027】
(8)前記車輪移動制限機構が、前記フレームに車輪の側面が当接することで車輪の前記ローラに対する前記車輪軸線方向の移動を制限するように構成された(5)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両移動用器具。
【0028】
本車両移動用器具では、フレームは、例えば、車輪のタイヤのサイドウォール部に当接するような構造とされていればよい。そのような車両移動用器具であれば、その当接によって、車輪が車両移動用器具からずれ落ちるのを防止することができる。
【0029】
(9)当該車両移動用器具が、前記ローラの回転を禁止するローラ回転禁止機構を有する(1)ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両移動用器具。
【0030】
本車両移動用器具によれば、ローラの回転を禁止することで、車輪軸線と直角な方向への車両移動用器具の移動が禁止されることになる。そのため、例えば、2つのローラを有する前述の車両移動用器具の場合には、車両が車両移動用器具に向かって自走し、ローラに車輪を乗り上げ、2つのローラの間に車輪を嵌め込むことで、車両移動用器具を車輪にセットすることができる。したがって、本車両移動用器具によれば、車両の自走によって、比較的容易に車両移動用器具をセットすることができる。また、ローラの回転を禁止することによって、反対に、車両移動用器具のセットを解除することもできる。つまり、ローラの回転が禁止されてる状態で車両が自走すれば、車輪は、2つのローラに嵌まり込んだ状態から、ローラを乗り越えて車両移動用器具から降りることができるのである。
【0031】
ローラ回転禁止機構におけるローラの回転を禁止する手段は特に限定されず、例えば、ローラの両端部を保持する前述のフレームにローラを固定するような手段であればよい。具体的には、ローラ回転禁止機構は、その手段として、例えば、フレームとローラとの間に発生する摩擦に依拠してフレームにローラを固定する機構を採用することができる。あるいは、ローラ保持部に設けられた穴とローラに設けられた穴とに挿し込まれたピンによってローラを係止することで、フレームにローラを固定するような機構を採用することもできる。
【0032】
(10)前記ローラの外周に、前記ローラの全長にわたって列をなしかつその列が全周にわたって複数存在するように配置され、それぞれが前記ローラの回転軸線と立体交差する回転軸線回りに回転可能な複数の回転体が設けられており、それら複数の回転体のうちの走行面と接するものが走行面を転動するようにされたことで、前記軸線方向移動許容機構が構成された(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両移動用器具。
【0033】
本車両移動用器具では、ローラの回転軸線方向への本車両移動用器具の移動を許容する回転体が、言わば、ローラの外周の全域にわたって設けられている。したがって、ローラの回転位置に拘らず、いずれかの回転体が走行面に接しており、それによって、ローラの回転軸線に平行な方向の車両移動用器具と走行面との相対移動が常に許容されている。一方、このように回転体が配設されたローラによって、ローラの回転位置に拘らず、車輪は回転体を介してローラに接しており、回転体によって、車輪の車両移動用器具に対する車輪軸線方向の移動が許容されることになる。そのことを考慮すれば、本車両移動用器具には、前述の車両移動制限機構が設けられていることが望ましい。
【0034】
また、本車両移動用器具の回転体が形成する各列の形態は特に限定されていない。例えば、回転体が、ローラの回転軸線に対して平行,斜め,あるいは,千鳥状に並んでいる場合など、回転体が様々な形態で並ぶ状態が、回転体が列をなす状態として解釈される。なお、各回転体は、それの構造が特に限定されるものではなく、例えば、ボールあるいはローラのようなものであればよい。また、各回転体の回転軸線は、ローラの回転軸線と立体交差すればよく、例えば、ローラにおいて各回転体が配設される箇所におけるローラの接線方向に平行に延びていればよい。そのような回転軸線を有する回転体であれば、車両移動用器具が走行面に対してローラの回転軸線に平行な方向に移動する際、その移動は、すなわち、回転体の回転軸線に直角な方向の移動となるため、スムースにその移動を行うことができる。
【0035】
また、本項の態様とは異なる態様の車両移動用器具ではあるが、ローラの両端においてそれぞれ回転可能に保持された2つのベルト車と、それら2つのベルト車に架け渡されたベルトとによって構成されるベルト機構が、ローラの全周にわたって複数存在し、いずれかのベルト機構のベルトが走行面に接するように構成された軸線移動許容機構であってもよい。このような軸線移動許容機構であれば、ローラの回転位置に拘らず、走行面に接するベルトが循環することによって、ローラの回転軸線に平行な方向の車両移動用器具と走行面との相対移動が常に許容されることになる。
【0036】
(11)前方に位置して転舵させられる1つの前方転舵輪と、後方に位置して転舵させられる1つの後方転舵輪と、それら前方転舵輪と後方転舵輪との中間において左右にそれぞれ配設されて駆動させられる2つの駆動輪とを備えた車両を斜め方向に移動させる車両斜行方法であって、
前記(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両移動用器具を前記2つの駆動輪の各々にセットし、
前記前方転舵輪と前記後方転舵輪とを同じ方向に同じ角度だけ転舵させ、
その状態で前記2つの駆動輪を駆動させることを特徴とする車両斜行方法。
【0037】
本車両斜行方法は、簡単に言えば、前述の菱形車輪配置車両を、車両移動用器具を用いて斜め方向に移動させる方法である。通常、つまり、車両移動用器具が使用されていない場合に、菱形車輪配置車両の前輪および後輪を同じ方向に同じ角度だけ転舵させて駆動輪を駆動させても、本菱形車輪配置車両は前後輪を転舵させた方向に移動することはできない。しかし、前述の車両移動用器具が駆動輪にセットされている場合には、ローラと軸線方向移動許容機構とによって駆動輪は斜め方向に移動することができるため、本菱形車輪配置車両を、車体の向きを変えずに前後輪を転舵させた方向に容易に移動させることができる。
【0038】
(12)前方に位置して転舵させられる1つの前方転舵輪と、後方に位置して転舵させられる1つの後方転舵輪と、それら前方転舵輪と後方転舵輪との中間において左右にそれぞれ配設されて駆動させられる2つの駆動輪とを備えた車両を、平行に延びる1対の車輪通過帯が形成された駐車エリアに駐車させる車両駐車方法であって、
前記前方転舵輪と前記2つの駆動輪の一方とが前記1対の車輪通過帯の一方の延長線上に、前記後方転舵輪と前記2つの駆動輪の他方とが前記1対の車輪通過帯の他方の延長線上に、それぞれ、位置するように前記車両を停車させ、
前記(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両移動用器具を前記2つの駆動輪の各々にセットし、
前記前方転舵輪および前記後方転舵輪の各々を、その各々が自身の位置する前記車輪通過帯の延長線と平行となる角度に転舵させ、
前記2つの駆動輪を駆動させて前記駐車エリアに前記車両を進入させることを特徴とする車両駐車方法。
【0039】
本車両駐車方法は、簡単に言えば、一般的な車両、つまり、車体の四隅に車輪が配置されている車両のために作られた駐車エリアに、前述の菱形車輪配置車両を駐車するための駐車方法である。一般的な車両のための駐車エリアには、車両の左側の前輪と後輪とが走行するための車輪通過帯と、右側の前輪と後輪とが走行する車輪通過帯とが設けられているものがある。また、このような駐車エリアの中には、車輪通過帯以外の位置を車輪が通過しないように、例えば、車輪通過帯とそれ以外の部分とで段差が設けられているような駐車エリアもある。このような駐車エリアに菱形車輪配置車両を駐車する場合、2つの駆動輪の中間に配置された前方転舵輪および後方転舵輪のための車輪通過帯が設けられていないため、菱形車輪配置車両を直進させて駐車エリアに駐車させることはできない。しかしながら、このような菱形車輪配置車両であっても、車両を車輪通過帯に対して斜めに配置することで、上記2つの車輪通過帯に合わせて車輪を配置することができる。そのことに鑑み、前述の車両移動用器具を用れば、車体が車輪通過帯の延長線上に対して斜めになっている状態から車両を斜め方向に移動させることで、一般的な車両のために作られた駐車エリアに菱形車輪配置車両を駐車させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例の車両移動用器具を示す斜視図である。
【図2】図1の車両移動用器具のローラを示す図である。
【図3】図1の車両移動用器具が菱形車輪配置車両にセットされた状態における斜視図である。
【図4】図1の車両移動用器具が菱形車輪配置車両にセットされた状態における平面図である
【図5】図1の車両移動用器具を使用して菱形車輪配置車両を駐車エリアに駐車するまでの過程を説明するための図である。
【図6】変形例の車両移動用器具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0042】
図1は、実施例の車両移動用器具10を示している。車両移動用器具10は、車両を移動させるための器具であり、2つの細長い形状とされたプレート12と、プレート12に固定される2つのシャフト13と、シャフト13に回転可能に保持された2つの第1回転ローラ14と、第1回転ローラ14の外周に回転可能に保持された複数の第2回転ローラ16とを有している。
【0043】
図2(a)および(b)は、それぞれ、第1回転ローラ14の斜視図および正面図である。第1回転ローラ14は、両端に配設された2つのエンドプレート18と、それらのエンドプレート18に自身の両端部がそれぞれ固定された6つの梁20とから構成されている。2つのエンドプレート18の各々の中心には、孔22が設けられている。2つの第1回転ローラ14の各々は、これらの孔22にシャフト13が挿通されることで、シャフト13にそれの周りで回転可能に保持されている。つまり、2つのプレート12と2つのシャフト13とによって、2つの第1回転ローラ14の各々の両端部を保持するフレームが構成されている。また、2つのシャフト13の各々の軸線は、2つの第1回転ローラ14の各々の回転軸線となっている。なお、2つの第1回転ローラ14は、それらの各々の回転軸線の軸線間距離が固定された状態で、各回転軸線が互いに平行になるようにして保持されている。
【0044】
6つの梁20の各々は、互いに向かい合うように配置された1対のローラ保持部材26によって構成されている。また、6つの梁20は、各第1回転ローラ14の周方向において等間隔、つまり、60°間隔となるようにして配置されている。このように配置された6つの梁20によって、各第1回転ローラ14では、自身の外周部が形成されている。また、各梁20では、向かい合うローラ保持部材26の間において、それぞれが回転体とされている5つの第2回転ローラ16の各々が、シャフト27が1対のローラ保持部材26に固定されることで、シャフト27の周りに回転可能に保持されている。詳しく説明すると、各梁20では、5つの第2回転ローラ16が、第1回転ローラ14の全長にわたって列をなして配設されている。また、それら第2回転ローラ16の各々は、シャフト27の軸線、つまり、第2回転ローラ16の回転軸線が、第1回転ローラ14の回転軸線と立体交差するように、より具体的には、第1回転ローラ14の接線と平行となるようにして配設されている。したがって、2つの第1回転ローラ14の各々には、合計30個の第2回転ローラ16が配設されている。
【0045】
各第1回転ローラ14の2つのエンドプレート18の一方には、各梁20の間に位置する6つの孔28が設けられている。また、プレート12の一方にも、エンドプレート18の孔28と重なり合う位置において、孔30が設けられている。車両移動用器具10では、これら孔28および孔30に、ピン32を挿し込むことができる。そのピン32の挿し込みによって、第1回転ローラ14は、ピン32に係止され、プレート12に固定されることになる。つまり、本車両移動用器具10では、孔28,30,ピン32によって、第1回転ローラ14の回転を禁止するローラ回転禁止機構が構成されている。
【0046】
図3および図4は、本車両移動用器具10が車両40にセットされている状態を示している。本車両40は、車体42に対して菱形状に配設された4つの車輪44を有している。詳しく説明すると、車両の前方側に配設された前輪44Fと、車両の後方側に配設された後輪44Rと、前後44Fと後輪44Rとの中間において車両の左側に配設された左輪44MLと、右側に配設された右輪44MRとを有している。これらの車輪44のうち、前輪44Fおよび後輪44Rは、本車両40における転舵輪とされている。また、本車両40には、いわゆるステアバイワイヤ型とされたステアリングシステム46が搭載されている。つまり、ステアリングシステム46では、運転者によって操作されるステアリングホイール48を主要構成要素とするステアリング操作装置50と、前輪44Fおよび後輪44Rの各々を転舵させるために設けられた2つの転舵装置52F,52Rとが、機械的に分離されている。詳しい説明は省略するが、前輪44F,後輪44Rは、ステアリングホイール48に加えられる操作力によらずに、2つの転舵装置52F,52Rの各々が有する動力源の動力によって転舵させられる。また、左輪44MLおよび右輪44MRは、本車両40における駆動輪とされている。詳しい説明は省略するが、左輪44MLおよび右輪44MRは、図示を省略する駆動装置に連結されており、運転者のアクセル操作に応じて回転駆動させられる。なお、本車両40には、4つの車輪44の各々に対応して、サスペンション装置およびブレーキ装置が設けられている。
【0047】
本車両移動用器具10は、2つの第1回転ローラ14が、左輪44MLおよび右輪44MRと車両の走行する走行面とによって挟まれるようにしてセットされている。詳しく言うと、2つの第1回転ローラ14の一方が、それらの車輪の車輪軸線の前方において左輪44MLまたは右輪44MRと走行面とに挟まれる位置に、2つの第1回転ローラ14の他方が、車輪軸線の後方において左輪44MLまたは右輪44MRと走行面とに挟まれる位置に配置される状態で、車両移動用器具10はセットされている。この状態で、左輪44MLおよび右輪44MRの車輪軸線は、それぞれ、第1回転ローラ14の回転軸線と平行となっている。また、この状態で、左輪44MLおよび右輪44MRは、それぞれ、走行面から浮いて2つの第1回転ローラ14に乗っている。換言すれば、車両移動用器具10がセットされた状態で、左輪44MLおよび右輪44MRは、それぞれ、2つの第1回転ローラ14の間に嵌まり込んでおり、その嵌まり込みによって、左輪44MLおよび右輪44MRの各々と車輪移動用器具10との車輪軸線に直角な方向、つまり、車両40の前後方向の相対移動は禁止されている。なお、各第1回転ローラ14では、前述のように、梁20に第2回転ローラ16が配設されているため、左輪44MLおよび右輪44MRは、それぞれ、いずれかの第2回転ローラ16を介して第1回転ローラ14に乗っている。また、各第1回転ローラ14は、それら左輪44MLおよび右輪44MRが接する第2回転ローラ16とは別の第2回転ローラ16のいずれかを介して、走行面に接している。
【0048】
したがって、左輪44MLおよび右輪44MRが回転駆動されると、2つの第1回転ローラ14は回転させられ、それらの回転によって、車両移動用器具10は、車両40の前後方向に移動する。つまり、本車両移動用器具10において、第1回転ローラ14は、走行面を転動することで車両40を左輪44MLおよび右輪44MRの各々の車輪軸線と直角な方向に移動させるローラとなっている。なお、車両40の移動方向は、通常の場合、つまり、車両移動用器具10を用いていない場合の移動方向とは逆となる。詳しく言うと、車両40が前進するように左輪44MLおよび右輪44MRが駆動させられると、車両移動用器具10を用いている場合には、車両40は後退するように移動することになり、逆に、車両40が後退するように左輪44MLおよび右輪44MRが駆動させられると、車両40は前進するように移動することになる。
【0049】
また、左輪44MLおよび右輪44MRは、走行面に接する第2回転ローラ16によって、それぞれ、車輪軸線方向、つまり、車両40の横方向への移動が許容されることになる。つまり、車両移動用器具10では、列をなして第1回転ローラ14の全周にわたって配置される第2回転ローラ16が、左輪44MLおよび右輪44MRと走行面との第1回転ローラ14の回転軸線に平行な方向の相対移動を許容するための軸線方向移動許容機構となっている。
【0050】
したがって、本車両移動用器具10によれば、車両40は、前輪44Fおよび後輪44Rを同じ方向に同じ角度だけ転舵させた状態で左輪44MLおよび右輪44MRを回転駆動することで、車両40を斜め方向に移動させることができる。
【0051】
なお、前輪44Fおよび後輪44Rを90°、つまり、真横に転舵させた場合には、車両40の横方向に外部から力を加えれば、その力によって、車両40を真横に移動させることもできる。したがって、本車両移動用器具10によれば、車両40は、走行面上において任意の方向に移動することができる。
【0052】
なお、車両移動用器具10がセットされた状態において、左輪44MLおよび右輪44MRは、前述のように、第2回転ローラ16に接しているため、車両移動用器具10に対して、第1回転ローラ14の回転軸線方向への移動が許容されることになる。しかしながら、車両移動用器具10は、車両移動用器具10がセットされた状態において、左輪44MLおよび右輪44MRの各々のタイヤのサイドウォールが、各プレート12に当接するように構成されている。つまり、各プレート12は、その当接によって、上記の移動を制限する車輪移動制限機構となっている。この機構によって、各プレート12は、左輪44MLおよび右輪44MRが、第1回転ローラ14の回転軸線方向において、車両移動用器具10からずれ落ちるのを防止している。
【0053】
図5は、図示を省略する一般的な立体駐車場において、車両移動用器具10を使用して車両40を駐車する際の過程を示している。この立体駐車場は、車両を1台ずつ載せるための複数のパレット60を有しており、パレット60に駐車した車両を、パレット60とともに上下方向に移動させることができる駐車場となっている。つまり、この立体駐車場では、各パレット60が、車両を駐車するための駐車エリアになっている。パレット60には、一般的な車両、つまり、車体の四隅に車輪が配置されている車両の車輪が走行するための車輪通過帯として、1対の凹状のガイド溝62が平行に形成されている。換言すれば、パレット60には、一般的な車両のトレッドに概ね相当する間隔が設けられた1対のガイド溝62が、車両の前進または後退する方向に沿って設けられている。したがって、パレット60では、車幅方向中央に相当する位置にガイド溝が形成されていないため、車輪44が菱形状に配置された車両40は、普通に前進または後退してパレット60に駐車するはできない。
【0054】
その車両40を、本車両移動用器具10を使用してパレット60に駐車する方法について、図5(a)〜(d)に従って順に説明する。図5(a)では、まず、車両40は、1対のガイド溝62の延長線上の外側の位置、より具体的に言えば、直進することでそれら延長線上に斜めに進入することができる位置にいる。また、車両40が前進した場合に、左輪44MLおよび右輪44MRがガイド溝62の延長線と交わる位置の各々には、車両移動用器具10が、それの第1回転ローラの回転軸線が車両40の直進する方向に直交するようにして配置されている。なお、各車両移動用器具10では、孔28および孔30にピン32が挿し込まれており、第1回転ローラ14のプレート12に対する回転が禁止されている。つまり、車両移動用器具10は、図5(a)における車両40の前進する方向において、移動が禁止された状態となっている。
【0055】
次に、車両40を前進させ、図5(b)に示すように、車両40の前輪44Fと左輪44MLとが1対のガイド溝62の一方の延長線上に位置し、後輪44Rと右輪44MRとが1対のガイド溝62の他方の延長線上に位置するように車両40を停車させる。その際、左輪44MLおよび右輪44MRは、それぞれ、移動が禁止された車両移動用器具10に乗り上げる。したがって、左輪44MLおよび右輪44MRは、それぞれ、2つの第1回転ローラ14の間に嵌まり込み、車両移動用器具10は、それぞれ、左輪44MLおよび右輪44MRと走行面とによって挟まれるようにセットされる。つまり、本車両移動用器具10によれば、車両40の自走によって、比較的容易に車両移動用器具10をセットすることができる。
【0056】
次に、各ピン32を車両移動用器具10から抜き取り、第1回転ローラ14の回転を許容する。つまり、第1回転ローラ14を、左輪44MLおよび右輪44MRとともに回転することができる状態とする。
【0057】
ところで、車両40には、車両移動用器具10を使用して車両40を駐車させるための駐車モードが設けられており、車両40は、図5(b)に示す位置に停車させられた後、駐車モードに切り換えられる。駐車モードへの切り換えは、図示を省略する運転席近傍に設けられたスイッチを運転者が操作することによって行われる。駐車モードでは、前輪44Fおよび後輪44Rが、ステアリングホイール46の操作に対して、同じ方向に同じ角度だけ転舵される。また、駐車モードにおいて車両40が「前進」にシフト操作されている場合には、車両移動用器具10がセットされた左輪44MLおよび右輪44MRは、通常において車両40を後退させる方向に回転することになる。つまり、その回転によって、前述のように、車両40は前進する方向へと移動することになる。したがって、駐車モードを切り換えることで、車両移動用器具10がセットされた後、シフト操作をすることなく車両40を前進させることができる。
【0058】
次に、運転者のステアリング操作によって、図5(c)に示すように、前輪44Fおよび後輪44Rを、それぞれの位置するガイド溝62の延長線と平行となる角度に転舵させる。
【0059】
その状態で運転者がアクセル操作をすると、車両40は、パレット60に向かって移動していくことになる。したがって、車両40は、車体42がガイド溝62の延長線に対して斜めになった状態でパレット60に進入し、図5(d)に示すように、パレット60上のガイド溝62に各車輪44が位置する状態で、車両40を駐車することができる。このように、本車両移動装置10を用いれば、一般的な車両に向けて作られたパレット60のような駐車エリアにも、車輪44が菱形状に配置された車両40を駐車することができるのである。
【0060】
また、車両40をパレット60から退出させる場合には、上記駐車方法の手順の概ね逆の手順に従えばよい。具体的に言うと、図5(d)の状態でパレット60に駐車する車両40を「後退」にシフト操作する。このシフト操作によって、車両移動用器具10がセットされた左輪44MLおよび右輪44MRは、通常において車両40を前進させる方向に回転することになり、前述のように、車両40は後退する方向へと移動することになる。したがって、アクセル操作をすれば、車両40を図5(c)に示す位置に移動させることができる。次いで、前輪44Fおよび後輪44Rを車両40が直進できるように転舵し、車両40を駐車モードから通常のモードへと切り換える。また、各車両移動用器具10にピン32を挿し込み、第1回転ローラ14の回転を禁止する。そしてアクセル操作をすれば、車両40の後退に伴って、左輪44MLおよび右輪44MRの各々は、第1回転ローラ14を乗り越えて車両移動用器具10から降りることができる。
【0061】
≪変形例≫
図6は、実施例の車両移動用器具10の変形例の車両移動用器具80を示す。車両移動用器具80は、プレート12を除いて、実施例の車両移動用器具10と殆ど同じ構成とされている。以下の車両移動用器具80の説明では、説明の簡略化に配慮して、車両移動用器具10と同様の構成やそれを使用した車両の駐車方法についての説明を省略する。
【0062】
車両移動用器具80では、2つのプレート12に代えて、2つのサポータによって、2つのシャフト13が固定されている。2つのサポータのうちの一方は、回動サポータ82となっている。回動サポータ82は、2つのシャフト13の一端部をそれぞれ固定する2つの固定部84と、それら2つの固定部84を連結する連結バー86とから主に構成されている。なお、2つの固定部84の各々と連結バー86との連結部は、ヒンジになっている。また、2つのサポータのうちの他方は、分離サポータ88となっている。分離サポータ88は、2つのシャフト13のうちの一方の他端部を固定する固定部90と、他方の他端部を固定する分離用固定部92と、それら固定部90と分離用固定部92とを連結することができる分離用連結ロッド94とから主に構成されている。分離用連結ロッド94の一端部は固定部90に連結されており、その連結部はヒンジになっている。分離用連結ロッド94の他端部には、ねじが形成されており、そのねじには、手動のナット96が螺合されている。また、分離用固定部92には、分離用連結ロッド94の外径よりも若干幅広のスロット98が形成されている。このように構成された車両移動用器具80では、固定部84,90,連結バー86,分離用連結ロッド94が、ヒンジによって互いに自在に回動することができ、それらの回動によって、分離用連結ロッド94は、スロット98に出入可能となっている。また、スロット98に分離用連結ロッド94が入っている状態でナット96を締め込むと、固定部90と分離用保持部ラケット92とが接近、つまり、2つの第1回転ローラ14が互いに接近する。
【0063】
このように構成された車両移動用器具80では、2つのシャフト13,回動サポータ82,分離サポータ88によって、2つの第1回転ローラ14の各々の両端部を保持するフレームが構成されている。また、2つのシャフト13の各々の一端部および回動サポータ82とが、車輪軸線方向において同じ側に位置する2つのローラの各端部を保持する2つのローラ保持部の一方となっており、2つのシャフト13の各々の他端部および分離サポータ88とが、その2つのローラ保持部の他方となっている。さらに、回動サポータ82は、2つの第1回転ローラ14の一方の端部を保持する固定部84と、他方の端部を保持する固定部84とを、2つの第1回転ローラ14が互いに離間する方向へ相対回動させるための回動機構になっていると考えることができる。分離サポータ88は、2つの第1回転ローラ14の一方の端部を保持する固定部90と、他方の端部を保持する分離用固定部92とに分離させるための分離機構になっていると考えることができる。また、分離用固定部92,分離用連結ロッド94,ナット96,スロット98を含んで、2つの第1回転ローラ14を互いに接近させるためのローラ接近機構が構成されていると考えることができる。
【0064】
車両移動用器具80を用いれば、前述の車両40が停止している状態で、左輪44MLおよび右輪44MRに車両移動用器具80をセットすることができる。具体的には、まず、分離用連結ロッド94をスロット98から離脱させた状態で、左輪44MLおよび右輪44MRの接地部、つまり、車輪が走行面に接する部分の各々を取り囲むようにして車両移動用器具80を配置する。その際、回動サポータ82によって、2つの第1回転ローラ14の間隔を拡げるように回動させながら、2つの第1回転ローラ14を、それぞれ、接地部の前後にそれぞれ配置する。次いで、分離用連結ロッド94を分離用固定部92のスロット98に装着し、さらに、2つの第1回転ローラ14が平行になるまで、ナット96を締め込む。この締め込みによって、2つの第1回転ローラ14は互いに接近し、左輪44MLおよび右輪44MRは、それぞれ、2つの第1回転ローラ14に挟まれることで押し上げられる。車両移動用器具80は、2つの第1回転ローラ14が平行になる状態で、左輪44MLおよび右輪44MRが、それぞれ、走行面から僅かに浮くように構成されている。つまり、2つの第1回転ローラ14が平行になるようにナット96が締め込まれた際に、左輪44MLおよび右輪44MRへの車両移動用器具80のセットが完了する。また、ナット96を緩めれば、左輪44MLおよび右輪44MRの各々は走行面に着地し、分離用連結ロッド94を分離用固定部92のスロット98から離脱させることで、車両移動用器具80を取外すことができる。
【0065】
また、本車両移動用器具80によれば、第1実施例の車両移動用器具10と同様に、車両40を立体駐車場のパレット60に駐車することができる。この場合、図5(a)に示すように、車両移動用器具80を、パレット60の2つのガイド溝62の延長線上にあらかじめ配置しておく必要はない。つまり、車両40が図5(b)または図5(c)に示す位置にある状態において、車両移動用器具80を、上述した要領で、左輪44MLおよび右輪44MRにそれぞれセットすればよい。したがって、本車両移動用器具80によれば、車両移動用器具80をあらかじめ走行面に配置しておく必要がなく、また、車両40を移動させずに車両移動用器具80をセットすることができるため、比較的容易に車両移動用器具80をセットすることができる。
【符号の説明】
【0066】
10:車両移動用装置 12:プレート(フレーム) 13:シャフト(フレーム,ローラ保持部) 14:第1回転ローラ(ローラ) 16:第2回転ローラ(軸線方向移動許容機構,回転体) 28:孔(ローラ回転禁止機構) 30:孔(ローラ回転禁止機構) 32:ピン(ローラ回転禁止機構) 40:車両 42:車体 44F:前輪(前方転舵輪) 44R:後輪(後方転舵輪) 44ML:左輪(駆動輪) 44MR:右輪(駆動輪) 60:パレット(駐車エリア) 62:ガイド溝(車輪通過帯) 80:車両移動用装置 82:回動サポータ(フレーム,ローラ保持部,回動機構) 88:分離サポータ(フレーム,ローラ保持部,分離機構) 92:分離用固定部(ローラ接近機構) 94:分離用連結ロッド(ローラ接近機構) 96:ナット(ローラ接近機構) 98:スロット(ローラ接近機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラを有し、そのローラがそれの回転軸線が車輪軸線と平行となる状態で車輪と走行面とによって挟まれるようにセットされ、セットされた状態において、前記ローラが車輪の回転を伴って前記回転軸線回りに回転することで、前記ローラが走行面を転動し、車両を前記車輪軸線と直角な方向に移動させるための車両移動用器具であって、
前記ローラの外周に、当該車両移動用器具がセットされた状態において前記ローラの回転軸線に平行な方向の当該車両移動用器具と走行面との相対移動を許容するための軸線方向移動許容機構が設けられたことを特徴とする車両移動用器具。
【請求項2】
当該車両移動用器具が、車輪の前記ローラに対する前記車輪軸線方向の移動を制限する車輪移動制限機構を有する請求項1に記載の車両移動用器具。
【請求項3】
当該車両移動用器具が、それぞれが前記ローラである2つのローラを有し、
当該車両移動用器具がセットされた状態において、前記2つのローラの一方が、前記車輪軸線の前方において車輪と走行面とに挟まれる位置に、かつ、前記2つのローラの他方が、前記車輪軸線の後方において車輪と走行面とに挟まれる位置に配置される請求項2に記載の車両移動用器具。
【請求項4】
当該車両移動用器具が、当該車両移動用器具のセットの際に前記2つのローラを互いに接近させるためのローラ接近機構を有する請求項3に記載の車両移動用器具。
【請求項5】
当該車両移動用器具が、前記2つのローラの各々の両端部を保持するフレームを有し、
そのフレームが、それぞれが、前記車輪軸線方向において同じ側に位置する前記2つのローラの各端部を保持する2つのローラ保持部を有し、それら2つのローラ保持部の少なくとも一方が、前記2つのローラの一方の端部を保持する部分と他方の端部を保持する部分とを分離させるための分離機構を有する請求項4に記載の車両移動用器具。
【請求項6】
前記2つのローラ保持部の一方が前記分離機構を有しており、前記2つのローラ保持部の他方が、前記2つのローラの一方の端部を保持する部分と他方の端部を保持する部分とを前記2つのローラが互いに離間する方向へ相対回動させるための回動機構を有する請求項5に記載の車両移動用器具
【請求項7】
当該車両移動用器具が、前記ローラの回転を禁止するローラ回転禁止機構を有する請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両移動用器具。
【請求項8】
前記ローラの外周に、前記ローラの全長にわたって列をなしかつその列が全周にわたって複数存在するように配置され、それぞれが前記ローラの回転軸線と立体交差する回転軸線回りに回転可能な複数の回転体が設けられており、それら複数の回転体のうちの走行面と接するものが走行面を転動するようにされたことで、前記軸線方向移動許容機構が構成された請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の車両移動用器具。
【請求項9】
前方に位置して転舵させられる1つの前方転舵輪と、後方に位置して転舵させられる1つの後方転舵輪と、それら前方転舵輪と後方転舵輪との中間において左右にそれぞれ配設されて駆動させられる2つの駆動輪とを備えた車両を、平行に延びる1対の車輪通過帯が形成された駐車エリアに駐車させる車両駐車方法であって、
前記前方転舵輪と前記2つの駆動輪の一方とが前記1対の車輪通過帯の一方の延長線上に、前記後方転舵輪と前記2つの駆動輪の他方とが前記1対の車輪通過帯の他方の延長線上に、それぞれ、位置するように前記車両を停車させ、
前記請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の車両移動用器具を前記2つの駆動輪の各々にセットし、
前記前方転舵輪および前記後方転舵輪の各々を、その各々が自身の位置する前記車輪通過帯の延長線と平行となる角度に転舵させ、
前記2つの駆動輪を駆動させて前記駐車エリアに前記車両を進入させることを特徴とする車両駐車方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−224240(P2012−224240A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94211(P2011−94211)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】