説明

車体側部構造

【課題】サイドシルの軽量化と衝突に対するサイドシルの強度確保の両立を図り、センタピラーの車室内への侵入量を抑制した車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造11は、フロアパネル45の端115に連なる左のサイドシル66と、左のサイドシル66にほぼ対称な右のサイドシルと、センタピラー81と、を備える。センタピラー81近傍で、左・右のサイドシル66を結合しているクロスメンバー(フロア前クロスメンバー48)に一端を結合し、他端をサイドシル66の縦辺部(インナ縦辺部94)に結合し、側突荷重に対するサイドシル66の強度及びクロスメンバー(フロア前クロスメンバー48)の強度より強度が小さいガセット151を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の床に連続するサイドシルを有する車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部構造には、車室の床の左右端に連続した管状のサイドシル内に補強部材を設けたサイドシル補強構造がある。サイドシル補強構造は、補強部材(シルレインフォース)をサイドシルの前端から溝形に延ばし、シルレインフォースの中央から溝の深さ、幅を漸減することで、正面衝突したときの応力集中を防ぎ、サイドシルの局部的な変形を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、サイドシルを補強するために、サイドシル内に溝形のシルレインフォースを重ねるように配置するので、サイドシルの重量が増加するという問題がある。
また、シルレインフォースの無いサイドシルの中央は、補強されず、側面衝突で荷重が加わると、サイドシルの中央に立設したセンタピラーが車室内に侵入し、サイドシルの侵入量が大きくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3159231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、サイドシルの軽量化と衝突に対するサイドシルの強度確保の両立を図り、センタピラーの車室内への侵入量を抑制した車体側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車室のフロアパネルの端に連なり、車室の左側壁の下部をなし車室の前から後まで延びる左のサイドシルと、左のサイドシルにほぼ対称な右のサイドシルと、左・右のサイドシルの中央に立設したセンタピラーと、を備えた車体側部構造において、センタピラー近傍で、左・右のサイドシルを結合しているクロスメンバーに一端を結合し、他端をサイドシルの縦辺部に結合し、側突荷重に対するサイドシルの強度及びクロスメンバーの強度より強度が小さいガセットを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、サイドシルの縦辺部に沿ってサイドシル補強フレームが、車室の中央へ上面部を向けて沿設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、センタピラーに含まれるセンタピラースチフナの下端をフロアパネルの端に一体化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、フロアパネルの端に連なる左のサイドシルと、右のサイドシルと、センタピラーと、を備え、センタピラー近傍で、左・右のサイドシルを結合しているクロスメンバーに一端を結合し、他端をサイドシルの縦辺部に結合し、側突荷重に対するサイドシルの強度及びクロスメンバーの強度より強度が小さいガセットを備えているので、側面衝突時の側突荷重がサイドシルに入力されると、ガセットが優先的に潰れて荷重を吸収し、クロスメンバーの曲げ変形が抑制され、センタピラーの車室内への侵入量を抑制することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、サイドシルの縦辺部に沿ってサイドシル補強フレームが、車室の中央へ上面部を向けて沿設されているので、サイドシル補強フレームの上面部の上方で交差しているクロスメンバーの両端は、上面部に沿って傾斜して上面部によって補強され、サイドシルのねじれに伴うクロスメンバーの端の曲がりを抑制することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、センタピラーに含まれるセンタピラースチフナの下端をフロアパネルの端に一体化しているので、側面衝突時の側突荷重がセンタピラーに入力されると、側突荷重をセンタピラースチフナの下端によってフロアパネルの端に伝えて分散させることができ、センタピラーの車室内方への曲がり量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る車体側部構造を採用した車体の斜視図である。
【図2】実施例に係る車体側部構造を採用した車体のアンダボデーの平面図兼作用図である。
【図3】実施例に係る車体側部構造を採用した車体のアンダボデーの側面図兼作用図である。
【図4】図1の4−4線断面図兼作用図である。
【図5】図1の5−5線断面図兼作用図である。
【図6】図1の6−6線断面図兼作用図である。
【図7】本発明の実施例に係る車体側部構造の分解図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】実施例に係る車体側部構造の側面衝突時における強度確保と軽量化を両立する機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
実施例に係る車体側部構造11は、図1に示すように、車両12の車体13の下部14に採用され、衝突したときの強度を高め、且つ、軽量化を図っている。以降で具体的に説明していく。
【0015】
車両12は、図1〜図3に示すように、4ドアセダンで、前乗降口17に図に示していない前ドアが設けられ、後乗降口18に図に示していない後ドアが設けられ、フロントのエンジンルーム21にエンジン22が配置される。24は、車体13に支持される前輪である。
【0016】
車体13は、車室26の床をなすアンダボデー27、車室26前のフロントボデー28、車室26の左のサイドボデー31、右のサイドボデー32、車室26後のリヤボデー33、ルーフ34を備えている。そして、車両12の中央の中心軸線Cを基準に左右がほぼ左右対称である。
【0017】
フロントボデー28は、エンジンルーム21を有し、エンジンルーム21の下部を形成している左のフロントサイドフレーム36と、右のフロントサイドフレーム37と、左右のアッパメンバー38と、を備えている。そして、フロントサイドフレーム36、37が車両12の正面41からアンダボデー27まで延びている。
フロントボデー28には、図3に示すようにフロントボデー28の下方からエンジン22などを載せたサブボデー43(図10も参照)が取付けられる。
【0018】
アンダボデー27は、左のサイドボデー31と右のサイドボデー32に取付けられたフロアパネル45と、中央に形成されたトンネル部46と、これらのトンネル部46やフロアパネル45や左右のサイドボデー31、32に接合しているフロア前クロスメンバー48と、フロア前クロスメンバー48に略平行に車両12後方に所定距離だけ離して設けたフロア中央クロスメンバー52と、を備える。
【0019】
また、アンダボデー27は、フロア中央クロスメンバー52より後方に設けたミドルクロスメンバー53と、車室26とエンジンルーム21を隔絶しているダッシュボード54と、ダッシュボード54より車両12前方に設けた前突荷重支持部材56と、を備える。
【0020】
フロア前クロスメンバー48には、図2の運転席の座席の前部58及び助手席の座席の前部61が固定される。
フロア中央クロスメンバー52には、運転席の座席の後部62及び助手席の座席の後部63が固定される。
ミドルクロスメンバー53には、後部座席64が固定される。
【0021】
さらに、アンダボデー27は、左のサイドボデー31に設けた左のサイドシル66の後端67、右のサイドボデー32に設けた右のサイドシル71の後端72にリヤフレーム73を結合している。
リヤフレーム73は、図2、図3に示すように、サイドシル66、71の後端67、72にそれぞれ接合した前部75が車両12上方へ向け傾斜し、且つ、車両12の内方へ向け曲げて延ばして形成され、前部75に連ねて後部76が車両12後方へ延びている。
【0022】
左のサイドボデー31と右のサイドボデー32は対称なので、左のサイドボデー31を主体に説明する。
サイドボデー31は、フロントピラー78と、センタピラー81と、リヤピラー82と、サイドシル66と、これらの表面を形成するサイドアウタパネル83と、を備えている。フロントピラー78にはダッシュボード54の左端を接合している。
【0023】
センタピラー81は、上端をルーフ34のルーフサイドレール85に接合し、下端156(図7参照)をサイドシル66に接合している。
左のサイドシル66の後端67、右のサイドシル71の後端72にミドルクロスメンバー53を結合している。
ここで、図2に示す通り、センタピラー81からフロントピラー78までの距離をL1とし、センタピラー81からミドルクロスメンバー53までの距離をL2とし、距離L2は距離L1より短い。
【0024】
次に、サイドシル66を詳しく説明する。
サイドシル66は、図1、図4〜図7に示す通り、閉断面形状で、サイドシルインナ86と、サイドシルインナ86に接合しているサイドシルアウタ87と、からなり、閉断面の形状がサイドシル66の前部88と中央部91と後部92で異なる。
【0025】
サイドシル66の前部88は、図4に示す通り、断面L字形で、サイドシルインナ86のインナ縦辺部94がほぼ垂直に形成され、インナ縦辺部94に直行して連なるインナ横辺部96が形成されている。一方、サイドシルアウタ87では、インナ縦辺部94に対向させてアウタ縦辺部97がほぼ垂直に形成され、アウタ縦辺部97に連ねて直行しているアウタ横辺部98が形成され、アウタ横辺部98に連ねて直行しているアウタ縦辺部101が形成され、アウタ縦辺部101に連ねて直行している水平底辺部102が形成されている。
【0026】
より詳しくは、サイドシル66の前部88は、Lの字を天地反転させて逆L字形に設け、インナ縦辺部94を車室26側に配置し、言い換えると、インナ縦辺部94を車両12の内側へ向けて配置し、フロアパネル45を車両12の外側(矢印a1の方向)へ向けて延ばしたフロアパネル45(傾斜辺部117を含めて)とで、断面形状がおおむね三角形(傾斜辺部117、インナ縦辺部94、インナ横辺部96)若しくは三角形(傾斜辺部117、アウタ横辺部98、アウタ縦辺部101)である。
【0027】
サイドシル66の中央部91は、図5に示す通り、図4に示したアウタ横辺部98及びアウタ縦辺部101に連続して滑らかにアウタ傾斜辺部104を形成したもので、断面を五角形にした部位である。すなわち、中央部91はインナ縦辺部94、インナ横辺部96、アウタ縦辺部97、水平底辺部102、アウタ傾斜辺部104からなる。
【0028】
サイドシル66の後部92は、図6に示す通り、図5に示したアウタ傾斜辺部104に連続して滑らかにアウタ縦辺部97を車両12下方へ延長した延長部106を形成し、水平底辺部102を車両12の外側へ延長した延長部107を形成して延長部106に連続させることで、断面を四角形にした部位である。すなわち、後部92はインナ縦辺部94、インナ横辺部96、アウタ縦辺部97(延長部106を含む)、水平底辺部102(延長部107を含む)からなる。
【0029】
なお、サイドシル66には、図8に示す、サイドシル補強フレーム111が取付けられているが、図4〜図6ではサイドシル補強フレーム111を省略している。
【0030】
次に、フロアパネル45について説明する。
フロアパネル45は、図4、図5に示す通り、下方へ向いているフロア底部121の端115をサイドシル66の水平底辺部102に接合し、端115に連ねて傾斜辺部117をサイドシル66のアウタ縦辺部97まで斜め上方へ延ばし、傾斜辺部117の端122をアウタ縦辺部97にサイドアウタパネル83を介して接合している。
【0031】
傾斜辺部117は、アウタ縦辺部97に重ねたサイドアウタパネル83に端122を重ねて接合している。そして、サイドシル66の前端116から図5に示すように、サイドシル66の中央部91以上後方へ延びている。
【0032】
フロアパネル45はまた、図7に示すように、サイドシル66、71の前端116同士の間からダッシュボード54に連続している。
ダッシュボード54の前には、前突荷重支持部材56が配置されている。
【0033】
次に、実施例に係る車体側部構造11を主体に図1〜図8で説明する。
車体側部構造11は、既に説明したように、車室26のフロアパネル45の端115に連なり、車室26の左側壁(左のサイドボデー31)の下部をなし車室26の前から後まで延びる左のサイドシル66と、左のサイドシル66にほぼ対称な右のサイドシル71と、左・右のサイドシル66、71の中央(中央部91)に立設したセンタピラー81と、を備える。また、図2、図7、図8に示すように、センタピラー81近傍で、左・右のサイドシル66、71を結合しているクロスメンバー(フロア前クロスメンバー48)に一端を結合し、他端をサイドシル66の縦辺部(インナ縦辺部94)に結合し、側突荷重に対するサイドシル66の強度及びクロスメンバー(フロア前クロスメンバー48)の強度より強度が小さいガセット151を備えている。
【0034】
ガセット151の他端をサイドシル66の縦辺部(インナ縦辺部94)に結合したが、インナ縦辺部94近傍のサイドシル66のインナ横辺部96に接合してもよい。
【0035】
「ほぼ対称」とは、一部に非対称な部位が含まれるということである。例えば、運転席の形態と助手席の形態との違いによって左右で異なる箇所が生まれる。逆に、「ほぼ」を省いて「対称」と限定しても、一部に非対称な部位が含まれるものとする。
【0036】
サイドシル66の縦辺部(インナ縦辺部94)に沿ってサイドシル補強フレーム111が、車室26の中央へ上面部153を向けて(矢印d1の方向)沿設されている。
【0037】
センタピラー81に含まれるセンタピラースチフナ155の下端156をフロアパネル45の端115に一体化している。
「一体化している」とは、図5に示す通り、フロアパネル45の端115に傾斜辺部117を介してセンタピラースチフナ155の下端156を一体的に結合している状態。詳しくは、傾斜辺部117とセンタピラースチフナ155の下端156とをサイドシル66で結合している。
【0038】
センタピラー81はまた、図7に示すように、車両12の外側から順に配置したサイドアウタパネル83に含まれるセンタピラーアウタ161と、センタピラースチフナ155と、センタピラースチフナ155とで閉断面を形成しているセンタピラーインナ162と、からなる。そして、センタピラースチフナ155及びセンタピラーインナ162がサイドシル66のインナ横辺部96に立設している。なお、必要に応じて閉断面の内外に部材を追加してもよい。
【0039】
次に、サイドシル補強フレーム111、フロア前クロスメンバー48について図8で説明する。
サイドシル補強フレーム111の長さは、サイドシル66の前端116から後端67までである。
サイドシル補強フレーム111は、車両12の正面から見たときに(図8の視点)、閉断面で、断面形状を三角形に形成し、フロアパネル45に重ねている底辺部164が形成され、底辺部164に連ねて直行している補強縦辺部165が形成されてサイドシル66に接合し、補強縦辺部165及び底辺部164に連なることで傾斜した補強斜辺部(上面部153)が形成されている。上面部153にフロア前クロスメンバー48の両端を配置している。
【0040】
フロア前クロスメンバー48は、上クロスメンバー168と、上クロスメンバー168の下方に配置されている下クロスメンバー171と、からなる。上クロスメンバー168に下クロスメンバー171を結合して、図2、図7に示す通り、車両12前後方向において、フロントピラー78とセンタピラー81との間に配置されて、一端を左のサイドシル66に接合し、他端を右のサイドシル71に接合している。
【0041】
上クロスメンバー168は、本体172が閉断面に形成され、本体172の一端173がサイドシル66に接合し、中央部174がトンネル部46に接合している。一端173は、下部にテーパ部175を形成して細くした先端部176が形成されている。テーパ部175をサイドシル補強フレーム111の上面部(補強斜辺部)153に接合している。
【0042】
また、本体172に第1連結部177及び第2連結部178がフロアパネル45に向けて所望の高さだけ垂下して形成されて、第1連結部177が下クロスメンバー171に結合している。第2連結部178がトンネルフレーム181に結合している。
【0043】
下クロスメンバー171は、本体183が溝形に形成され、溝の縁をフロアパネル45に接合し、本体183の一端(外端)184がサイドシル補強フレーム111に接合し、本体183の他端(内端)185がトンネルフレーム181に結合している。
トンネルフレーム181は、管状に形成され、トンネル部46に沿って延びている。
なお、フロア前クロスメンバー48は、図1の中心軸線Cを基準に左右対称である。
【0044】
フロア前クロスメンバー48はまた、上クロスメンバー168の一端173、他端(図2を参照)にガセット151が結合されている。
ガセット151は、図7、図8に示すように、車両12正面視(図8の視点)で三角形に形成され、車両12側面視でコ字形に形成され、傾斜部187と、前側部188と、後側部191と、稜線部192と、折れビード193と、からなる。
傾斜部187が、上クロスメンバー168の天部からサイドシル66のインナ横辺部96まで延びている。前側部188及び後側部191が傾斜部187に連ねて上クロスメンバー168の側辺部に沿い重なり接合している
【0045】
傾斜部187には、折れビード193が形成されている。詳しくは、折れビード193は、傾斜部187と前側部188とで形成された角(稜線部192)、傾斜部187と後側部191とで形成された角(稜線部192)に、V溝を形成したものである。
【0046】
なお、折れビード193としてV溝を形成したが、折れビード193の形状は任意である。側突荷重に対するサイドシル66の強度及びフロア前クロスメンバー48の強度よりガセット151の強度が小さくなる形態であればよい。
【0047】
次に、実施例に係る車体側部構造11の作用を説明する。
車体側部構造11は、図1、図2、図4に示す通り、車両12が正面衝突したときに、前輪24から入力される荷重をサイドシル66の前端116のうち、図4に示すように、主にインナ縦辺部94及びアウタ縦辺部101に入力するので、正面衝突の衝突性能を確保することができる。
【0048】
すなわち、車体側部構造11は、車両12が正面衝突すると、前輪24から入力される荷重は、サイドシル66のインナ縦辺部94の全体と水平底辺部102とインナ横辺部96の車室26側とによって前端116から後端67へ伝達されるので、正面衝突の衝突性能を確保することができる。
【0049】
具体的には、サイドシル66の前端116は、前輪24のうち車両後方へ向いている後面に接触して圧縮荷重を受けるインナ縦辺部94とインナ縦辺部94に直行している上のインナ横辺部96とで逆L字形としたので、前輪24からの荷重をサイドシルインナ86を主体に効率よく伝達することができる。
また、前輪24からの荷重をサイドシルインナ86を主体に効率よく伝達するので、サイドシルアウタ87の板厚を薄くすることができ、サイドシル66の軽量化を図ることができる。
【0050】
さらに、車体側部構造11は、車両12が側面衝突されたときに、サイドシル66の傾斜辺部104によって、サイドシル66は、四角形に比べ、菱形に変形し難く、側面衝突の衝突性能を確保することができる。
【0051】
その上、車体側部構造11は、車両12の後に追突されたときや後乗降口18の後ドアに側面衝突したときに、サイドシル66の後部92の断面形状を四角形の構造としたことで、圧縮や曲げや捩りに対する反力を確保することができ、追突や側面衝突に対する衝突性能を確保することができる。
【0052】
詳しくは、サイドシル66を含む車体13の下部14は、図2に示す通り、側面衝突の際に、相手車両がセンタピラー81に矢印a2のように衝突すると、センタピラー81の下端145に連結しているサイドシル66は、車両12の左右方向の内側(矢印a3の方向)、言い換えると、車室26内へ向かって二点鎖線で示すように変形し始める。センタピラー81からミドルクロスメンバー53までの距離L2がセンタピラー81からフロントピラー78までの距離L1より短いので、ミドルクロスメンバー53は、前突荷重支持部材56に比べ、大きな荷重が入力され、サイドシル66の後端67は曲げ変形の傾向が顕著になるが、断面形状を四角形としたことで曲げに対する反力を確保することができる。
【0053】
また、図1、図2に示す通り、相手車両が左のフロントサイドフレーム36に矢印a4のように衝突しても、前突荷重支持部材56によって荷重をフロントピラー78や接合している部材にほぼ均一に分散するので、サイドシル66の前端116に生じる捩れ変形の量は小さい。
【0054】
一方、図3に示すように、相手車両がリヤフレーム73に矢印a5のように衝突すると、リヤフレーム73がサイドシル66に対して上位(矢印a6)に配置されているので、サイドシル66手前のリヤフレーム73の前部75とリヤフレーム73の屈曲部73aに応力が集中する。つまり、図2及び図3に示している通り、リヤフレーム73の前部75が二点鎖線で示すように上方へ折れ曲げ変形することで、後突エネルギーを吸収する。サイドシル66の後端67は曲げ変形が大きくなるが、断面形状を四角形としたことで曲げに対する反力を確保することができる。
【0055】
次に、図9で実施例に係る車体側部構造11の作用を説明する。
図9(a)は図8に相当し側面衝突前の状態、図9(b)は側面衝突後の状態を示している。
【0056】
車体側部構造11では、図9(b)に示す通り、側面衝突した際に、主にガセット151によって荷重が吸収され、センタピラー81は大きく倒れることがない。
【0057】
具体的には、ガセット151は、フロア前クロスメンバー48とサイドシル66との結合箇所に設置されて、車両12の側面に相手車両が矢印d2のように接触する側面衝突でセンタピラー81に荷重が入力されると、センタピラー81が車室26へ向かって倒れ始め、サイドシル66が矢印d3のように回動(捩れ)するのに伴い、ガセット151は押されて潰れ、圧縮変形する。つまり、ガセット151は側面衝突の衝撃を吸収する。その際、ガセット151は、圧縮の荷重が加わると、折れビード193に加わる荷重が大きくなり、フロア前クロスメンバー48が変形し始める前、且つ、サイドシル66の変形が大きくなる前に折れビード193を起点に圧縮変形する。その結果、フロア前クロスメンバー48は、圧縮変形することなく、サイドシル66の回転力を分散する。従って、センタピラー81の車室26内に倒れる量を抑制することができる。
【0058】
また、車体側部構造11では、側面衝突でセンタピラー81及びサイドシル66が変形し始めると、フロア前クロスメンバー48の上クロスメンバー168に形成したテーパ部175及びサイドシル補強フレーム111の上面部153に荷重が伝わるので、フロア前クロスメンバー48(上クロスメンバー168)の一端173の変形を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の車体側部構造は、車両に好適である。
【符号の説明】
【0060】
11…車体側部構造、26…車室、31…左側壁(左のサイドボデー)、45…フロアパネル、48…クロスメンバー(フロア前クロスメンバー)、66…左のサイドシル、71…右のサイドシル、81…センタピラー、91…左・右のサイドシルの中央(中央部)、94…縦辺部(インナ縦辺部)、111…サイドシル補強フレーム、115…フロアパネルの端、151…ガセット、153…サイドシル補強フレームの上面部、155…センタピラースチフナ、156…センタピラースチフナの下端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のフロアパネルの端に連なり、前記車室の左側壁の下部をなし前記車室の前から後まで延びる左のサイドシルと、該左のサイドシルにほぼ対称な右のサイドシルと、前記左・右のサイドシルの中央に立設したセンタピラーと、を備えた車体側部構造において、
前記センタピラー近傍で、前記左・右のサイドシルを結合しているクロスメンバーに一端を結合し、他端を前記サイドシルの縦辺部に結合し、側突荷重に対する前記サイドシルの強度及び前記クロスメンバーの強度より強度が小さいガセットを備えていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記サイドシルの縦辺部に沿ってサイドシル補強フレームが、前記車室の中央へ上面部を向けて沿設されていることを特徴とする請求項1記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記センタピラーに含まれるセンタピラースチフナの下端を前記フロアパネルの端に一体化していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−46301(P2011−46301A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197005(P2009−197005)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】