説明

車体前部の衝撃吸収構造

【課題】ラジエータグリルの揺動軸に向かう荷重や、車体前後方向に対して傾いた方向からの荷重に対して衝突物が受ける衝撃を効率良く緩和し得る車体前部の衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】フロントバルクヘッド11にラジエータグリル23が取付けられ、このラジエータグリル23の下方にバンパビーム16が設けられた車体前部の衝撃吸収構造において、フロントバルクヘッド11の上部を構成するバルクヘッドアッパービーム13と、バンパビーム16とのそれぞれにステイ24が掛け渡され、このステイ24に衝撃吸収材34が取付けられ、ラジエータグリル23の背面に軸部材31が取付けられ、この軸部材31と衝撃吸収材34とが球面軸受32で連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の衝撃吸収構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車体前部の衝撃吸収構造として、ラジエータグリルの下部を車体側にヒンジ軸を介して取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭58−30874号公報
【0003】
特許文献1の第3図を以下の図8で説明する。なお、符号は振り直した。
図8は従来の車体前部の衝撃吸収構造を示す断面図であり、サイドメンバ101の前端に衝撃吸収バンパ102及びブラケット103が取付けられ、ラジエータグリル104の下端部がヒンジ軸105を介してブラケット103に前後揺動自在に取付けられ、ラジエータグリル104の上端部側が、ラジエータコア・アッパサポート106側にショックアブソーバ107及び引張ばね108を介して連結されている。なお、109はエンジンフード111の前端に取付けられた弾性体である。
【0004】
上記の車体前部に衝突物があった場合、衝突物は、まず、衝撃吸収バンパ102に当たり、次にラジエータグリル104及びエンジンフード111の弾性体109に当たる。この結果、弾性体109が撓むとともにラジエータグリル104がヒンジ軸105を中心にして後方へ揺動し、衝突物への衝撃が吸収される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、衝突物がラジエータグリル104の下部に当たった場合には、ラジエータグリル104がヒンジ軸105を中心にして揺動しにくくなるため、衝突物には剛性の高いサイドメンバ101及びブラケット103からの大きな反力を受け、大きな衝撃を受けることになる。
【0006】
また、ラジエータグリル104は車体前後方向に倒れるだけであるから、例えば、車体前後方向に対して傾いた方向から衝突物があった場合には、衝突時に衝突物が受ける衝撃を効率良く緩和しにくい。
【0007】
本発明の目的は、ラジエータグリルの揺動軸に向かう荷重や、車体前後方向に対して傾いた方向からの荷重に対して衝突物が受ける衝撃を効率良く緩和し得る車体前部の衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、フロントバルクヘッドにラジエータグリルが取付けられ、このラジエータグリルの下方にバンパビームが設けられた車体前部の衝撃吸収構造において、フロントバルクヘッドの上部を構成するバルクヘッドアッパービームと、バンパビームとのそれぞれにステイが掛け渡され、このステイに衝撃吸収材が取付けられ、ラジエータグリルの背面に軸が取付けられ、この軸と衝撃吸収材とが球面軸受で連結されていることを特徴とする。
【0009】
ラジエータグリルに作用する荷重が、(1)ラジエータグリルの揺動軸となる球面軸受に向かう荷重である場合には、その荷重の車体前後方向の成分がラジエータグリルから軸、球面軸受を介して衝撃吸収材に伝わり、衝撃吸収材が変形することで衝撃が吸収される。
【0010】
また、ラジエータグリルに作用する荷重が、(2)ラジエータグリルの揺動軸となる球面軸受に向かう荷重ではなく、且つ車体前後方向に対して傾いた方向の荷重である場合には、ラジエータグリルから衝撃吸収材に伝わった荷重により衝撃吸収材が変形して衝撃が吸収されるとともに、ラジエータグリル及び軸が球面軸受を中心に三次元的に揺動して衝突物が移動しようとする挙動を妨げないから、衝突物との接触面積が大きくなり、局所的な入力荷重が発生しないので、衝撃が緩和される。
【0011】
請求項2に係る発明は、ラジエータグリルの外周縁が、バンパーフェイスと、ラジエータグリルの両側方に配置されたヘッドランプと、フロントバルクヘッドの上方から後方に延びるエンジンフードの前端と、衝撃力によりラジエータグリルが軸回転した際、連続面を形成することを特徴とする。
【0012】
車体前部に設けられたラジエータグリル、バンパフェイス、ヘッドランプ、エンジンフードの前端が連続した面を形成するため、例えば、車体の前方から車体前面に衝突物があった場合には、衝突物が車体前部の上方又は両側方へ移動しやすくなり、衝突物との接触面積が大きくなり、局所的な入力荷重が発生しないので、衝撃が緩和される。
【0013】
請求項3に係る発明は、衝撃吸収材が、車体前後方向成分の入力荷重のみにより、変形して衝撃を吸収することを特徴とする。
車体の前方斜め上方、前方斜め側方から衝突物があった場合は、衝突時に作用する荷重の大部分を占める車体前後方向成分で衝撃吸収材が変形することで衝撃が吸収され、車体前後方向成分以外の入力荷重に対しては、球面軸受を中心にしてラジエータグリルと軸とが揺動することで衝突物への入力荷重が低減され、衝撃が吸収される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、フロントバルクヘッドの上部を構成するバルクヘッドアッパービームと、バンパビームとのそれぞれにステイが掛け渡され、このステイに衝撃吸収材が取付けられ、ラジエータグリルの背面に軸が取付けられ、この軸と衝撃吸収材とが球面軸受で連結されているので、車体前部に衝突物があり、ラジエータグリルに作用する荷重が球面軸受に向かう荷重である場合には、その荷重によって衝撃吸収材が変形することで衝突時の衝撃を吸収することができる。
【0015】
また、車体前部に衝突物があり、ラジエータグリルに作用する荷重が球面軸受に向かう荷重ではなく、且つ車体前後方向に対して傾いた方向の荷重である場合には、その荷重によって衝撃吸収材が変形することで衝突時の衝撃を吸収することができるとともに、ラジエータグリル及び軸が球面軸受を中心に三次元的に揺動して衝突物が移動しようとする挙動を妨げないようにすることができ、衝突物への局所的な入力荷重を低下させて衝突時の衝撃を緩和することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、ラジエータグリルの外周縁が、バンパーフェイスと、ラジエータグリルの両側方に配置されたヘッドランプと、フロントバルクヘッドの上方から後方に延びるエンジンフードの前端と、衝撃力によりラジエータグリルが軸回転した際、連続面を形成するので、車体の前方から車体前部に衝突物があった場合には、衝突物を車体前部の上方又は両側方へ移動しやすくすることができ、衝突物への入力荷重を低減することができて、衝突物が受ける衝撃を緩和することができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、衝撃吸収材が、車体前後方向成分の入力荷重のみにより、変形して衝撃を吸収するので、車体の前方斜め上方、前方斜め側方から衝突物があった場合は、衝突時に作用する荷重の大部分を占める車体前後方向成分で衝撃吸収材が変形することで衝撃を吸収することができ、車体前後方向成分以外の入力荷重に対しては、球面軸受を中心にしてラジエータグリルと軸とを揺動させることで衝突物への局所的な入力荷重を低減して衝撃を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る衝撃吸収構造を備えた車両の車体前部を示す断面図であり、図中の矢印(FRONT)は車両前方を示している。
車体前部には、フロントバルクヘッド11と、このフロントバルクヘッド11の前方に配置されたフロントバンパ12とが設けられる。
【0019】
フロントバルクヘッド11は、その上部がフロントバルクヘッドアッパビーム13、下部がフロントロアクロスメンバ14で構成され、フロントバンパ12は、バンパビーム16と、このバンパビーム16の前方を覆うバンパフェイス17とから構成される。
【0020】
フロントバルクヘッドアッパビーム13とフロントロアクロスメンバ14との間には、ラジエータ18と、このラジエータ18の前方に位置するエアコンディショナ用のコンデンサ21とが配置されている。
【0021】
ラジエータ18の前方で且つフロントバンパ12の上方には、上部がフロントバルクヘッドアッパビーム13に取付けられたラジエータグリル23が配置され、また、フロントバルクヘッドアッパビーム13とバンパビーム16とにはステイ24が渡され、これらのラジエータグリル23とステイ24との間に衝撃吸収装置26が取付けられている。
図中の符号27はエンジンルームの上方を覆うエンジンフード、28はフロントバルクヘッドアッパビーム13にエンジンフード27を係合させるロック装置である。
【0022】
衝撃吸収装置26は、ラジエータグリル23の背面に取付けられた軸部材31と、この軸部材31の後端に設けられた球面軸受(不図示)と、この球面軸受を支持する軸受支持部材33と、この軸受支持部材33が前面に取付けられるとともに背面がステイ24に取付けられた衝撃吸収材34とからなり、車体前部に衝突物があった場合に、衝撃吸収材34で衝撃を吸収するとともに、球面軸受によりラジエータグリル23を荷重入力方向へ傾かせて衝突物の移動を妨げないようにするものである。
図中に示した符号30は、バンパフェイス17、ラジエータグリル23及びエンジンフード27のそれぞれの前端に沿う直線であり、車体前部が上下に直線状に連続している。
【0023】
図2は本発明に係る衝撃吸収装置の取付構造を示す分解斜視図であり、ラジエータグリル23の背面に軸部材31が車体後方に延びるように取付けられ、この軸部材31の後端に球面軸受32の構成部材36(詳細は後述する。)が取付けられ、軸受支持部材33の中央部に球面軸受32の構成部材37(詳細は後述する。)が取付けられ、フロントバルクヘッドアッパビーム13の車幅方向の中央部とバンパビーム16の車幅方向の中央部とに上下に渡されたステイ24に衝撃吸収材34が取付けられる。
【0024】
図中の符号41は軸受支持部材33を衝撃吸収材34に取付ける際にボルトを通すために軸受支持部材33に形成されたボルト挿通穴、42は上記ボルトをねじ込むために衝撃吸収材34の前面に形成されたねじ穴である。
【0025】
図3は本発明に係る球面軸受を示す断面図であり、球面軸受32は、内周面に凹状の球面37aが形成された構成部材37としての外輪37と、この外輪37の球面37aに滑り自在に嵌合する凸状の球面36aが外周面に形成された構成部材36としての内輪36とからなり、外輪37は、軸受支持部材33に開けられた軸受取付穴33aに嵌合し、内輪36は、軸部材31の後端に形成された小径部31aに嵌合している。
【0026】
図中の符号33bは軸受支持部材33の軸受取付穴33aに設けられた段部、44は外輪37の抜け止めをするために軸受取付穴33aに装着された止め輪、45は内輪36の抜け止めをするために小径部31aに装着された止め輪である。
【0027】
図4(a),(b)は本発明に係る車体前部を示す平面図である。
(a)において、車両前後方向に延びるとともに車幅方向の中央を通る車体中心線50に沿うように衝撃吸収装置26が配置され、前方に凸状に湾曲したラジエータグリル23の両側にそれぞれヘッドランプ51,52が配置され、ラジエータグリル23の前面23aと、ヘッドランプ51,52の前面51a,52aと、バンパフェイス17の前面17aとが連続した曲面上に位置する。なお、符号55はフロントフェンダである。
【0028】
このように、ラジエータグリル23の前面23a、ヘッドランプ51,52の前面51a,52a、バンパフェイス17の前面17aが連続した曲面上に連続するように位置する、即ち、車体前部が左右に連続していることで、例えば、車体前部に衝突物があった場合に、衝突物を車体側方へスムーズに移動させることが可能になる。
【0029】
(b)はバンパフェイス17とラジエータグリル23との合わせ部を示す断面図であり、バンパフェイス17の内側端部には車幅方向内方に延びる受け部17bが一体に形成され、、ラジエータグリル23の外側端部には車幅方向内方に折り曲げられた折曲げ部23bが一体に形成され、受け部17bの前側に折曲げ部23bが被さった構造とされている。
【0030】
図1及び図4において、バンパフェイス17、ラジエータグリル23及びエンジンフード27のそれぞれの前端が直線30に沿うように配置されているのと同様に、バンパフェイス17、ヘッドランプ51(又はヘッドランプ52)及びエンジンフード27も、それぞれの前端が直線に沿うように配置されている。
【0031】
以上より、ラジエータグリル23、バンパフェイス17、ヘッドランプ51,52、エンジンフード27の前端で構成された車体前部の前面が、上下方向に直線状に連続し、且つ左右方向に連続した曲面を形成している。
【0032】
以上に述べた衝撃吸収装置26の作用を次に説明する。
図5(a)〜(c)は本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第1作用図である。
(a)は、車体前部に衝突物60が衝突する前の状態を示している。
(b)は衝突物60が車体前部に衝突した直後の状態を示している。
衝突物60は、車体前部の形状(車体前部下部が車体前部上部よりも前方に突出している形状)や衝突物60の上下方向の重量分布(衝突物下部よりも衝突物上部が重くなっているような重量分布)の影響を受けて、白抜き矢印で示す向きに移動しようとする挙動を示す。
【0033】
このとき、衝突物60からラジエータグリル23、軸部材31、球面軸受32、軸受支持部材33を介して衝撃吸収材34に衝突時の荷重の車体前後方向成分が伝わり、衝撃吸収材34が前後方向に変形して衝突時の衝撃を吸収する。
【0034】
そして、衝撃吸収材34が衝突時の衝撃を吸収しながら、(c)において、上記衝突物60からラジエータグリル23へ入力される荷重の入力方向へラジエータグリル23が球面軸受32を中心にして矢印Aに示すように傾くため、衝突物60は、白抜き矢印Bで示す方向にスムーズに移動するとともに、白抜き矢印Cで示すように、エンジンフード27に倒れる。
衝突物60はラジエータグリル23が回転して衝突物60との接触面積が広くなるため、衝突物60へ局所的に荷重が作用せず、衝突物60への衝撃が緩和される。
【0035】
図6(a),(b)は本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第2作用図であり、球面軸受32の作用を示している。
(a)はラジエータグリル23へ衝突物が衝突する前の状態を示している。
【0036】
(b)において、ラジエータグリル23へ衝突物があると、衝突物からラジエータグリルへの荷重入力方向に応じてラジエータグリル23は、球面軸受32を中心にして矢印の向きに揺動する。
球面軸受32では、外輪37の凹状の球面37aに対して内輪36の凸状の球面36aが滑り、軸受支持部材33に対して軸部材31が揺動する。なお、符号65は軸部材31の揺動中心である。
【0037】
球面軸受32において、外輪37と内輪36とは球面で滑るから、ラジエータグリル23及び軸部材31は、図に示した矢印の向きに限らず、荷重入力方向に応じて紙面の表裏方向など三次元的なあらゆる方向に揺動可能である。
【0038】
図7(a),(b)は本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第3作用図であり、車体前部での作用を平面図で示している。
(a)は車体前部に衝突物60が衝突する前の状態を示している。
【0039】
(b)は衝突物60が車体前部に衝突したときの状態を示している。
衝突物60が、例えば、車体中心線50に対して、右側にオフセットして衝突した場合、ラジエータグリル23は、球面軸受32を中心にして矢印Eの向きに揺動する。この衝突によって、衝突物60には白抜き矢印Fで示す向きに荷重成分が発生する。
【0040】
衝突物60は、上記白抜き矢印Fの向きの荷重成分によって車両側方へ逃げやすくなり、衝突物60が受ける衝撃が緩和される。
このとき、バンパフェイス17の前面17aは、矢印Gで示すように、揺動したラジエータグリル23の端部に押し付けられて変形する。
【0041】
図8(a),(b)は本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第4作用図である。
(a)は図7(b)におけるラジエータグリル23の右端部とバンパフェイス17の右端部との位置関係を断面にて示している。即ち、ラジエータグリル23の右端の折曲げ部23bが、バンパフェイス17の右端の受け部17bを車体後方へ押付け、バンパフェイス17が変形した状態を示している。この状態でも、ラジエータグリル23とバンパフェイス17とは連続している。従って、衝突物60(図7(b)参照)の車両側方への移動がスムーズに行われる。
【0042】
(b)は図7(b)におけるラジエータグリル23の左端部とバンパフェイス17の左端部との位置関係を断面にて示している。即ち、ラジエータグリル23の揺動によって、ラジエータグリル23の左端の折曲げ部23bが、矢印Hで示すように、バンパフェイス17の左端の受け部17bから遠ざかった状態を示している。
【0043】
以上の図1、図3、図5に示したように、フロントバルクヘッド11にラジエータグリル23が取付けられ、このラジエータグリル23の下方にバンパビーム16が設けられた車体前部の衝撃吸収構造において、フロントバルクヘッド11の上部を構成するバルクヘッドアッパービーム13と、バンパビーム16とのそれぞれにステイ24が掛け渡され、このステイ24に衝撃吸収材34が取付けられ、ラジエータグリル23の背面に軸としての軸部材31が取付けられ、この軸部材31と衝撃吸収材34とが球面軸受32で連結されているので、車体前部に衝突物60があり、ラジエータグリル23に作用する荷重が球面軸受32に向かう荷重である場合には、その荷重によって衝撃吸収材34が変形することで衝突時の衝撃を吸収することができる。
【0044】
また、車体前部に衝突物60があり、ラジエータグリル23に作用する荷重が球面軸受32に向かう荷重ではなく、且つ車体前後方向に対して傾いた方向の荷重である場合には、その荷重によって衝撃吸収材34が変形することで衝突時の衝撃を吸収することができるとともに、ラジエータグリル23及び軸部材31が球面軸受32を中心に三次元的に揺動して衝突物60が移動しようとする挙動を妨げないようにすることができ、衝突物60への局所的な入力荷重を低下させて衝突時の衝撃を緩和することができる。
以上より、車体前部の衝撃吸収構造、即ち、衝撃吸収装置26によって、衝突物60が受ける衝撃を緩和することができる。
【0045】
また、図1、図4、図7に示したように、ラジエータグリル23の外周縁が、バンパーフェイス17と、ラジエータグリル23の両側方に配置されたヘッドランプ51,52と、フロントバルクヘッド11の上方から後方に延びるエンジンフード27の前端と、衝撃力によりラジエータグリル23が軸回転した際、連続面を形成するので、車体の前方から車体前部に衝突物60があった場合には、衝突物60を車体前部の上方又は両側方などへ移動しやすくすることができ、衝突物60への局所的な入力荷重を低減することができて、衝突物60が受ける衝撃を緩和することができる。
【0046】
更に、図1、図5、図6に示したように、衝撃吸収材34が、車体前後方向成分の入力荷重のみにより、変形して衝撃を吸収するので、車体の前方斜め上方、前方斜め側方から衝突物60があった場合は、衝突時に作用する荷重の大部分を占める車体前後方向成分で衝撃吸収材34が変形することで衝撃を吸収することができ、車体前後方向成分以外の入力荷重に対しては、球面軸受32を中心にしてラジエータグリル23と軸部材31とを揺動させることで衝突物60への入力荷重を低減して衝撃を吸収することができる。
【0047】
尚、本実施形態では、図3に示したように、球面軸受32を、外輪37と、この外輪37と球面にて滑り自在に嵌合する内輪36とから構成したが、このような形式に限らず、球面にて滑る構造の球面軸受であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の車体前部の衝撃吸収構造は、四輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る衝撃吸収構造を備えた車両の車体前部を示す断面図である。
【図2】本発明に係る衝撃吸収装置の取付構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係る球面軸受を示す断面図である。
【図4】本発明に係る車体前部を示す平面図である。
【図5】本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第1作用図である。
【図6】本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第2作用図である。
【図7】本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第3作用図である。
【図8】本発明に係る衝撃吸収装置の作用を示す第4作用図である。
【図9】従来の車体前部の衝撃吸収構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11…フロントバルクヘッド、13…フロントバルクヘッドアッパビーム、16…バンパビーム、17…バンパフェイス、23…ラジエータグリル、24…ステイ、27…エンジンフード、30…直線、31…軸(軸部材)、32…球面軸受、34…衝撃吸収材、51,52…ヘッドランプ、51a,52a…前面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバルクヘッドにラジエータグリルが取付けられ、このラジエータグリルの下方にバンパビームが設けられた車体前部の衝撃吸収構造において、
前記フロントバルクヘッドの上部を構成するバルクヘッドアッパービームと、前記バンパビームとのそれぞれにステイが掛け渡され、このステイに衝撃吸収材が取付けられ、前記ラジエータグリルの背面に軸が取付けられ、この軸と前記衝撃吸収材とが球面軸受で連結されていることを特徴とする車体前部の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記ラジエータグリルの外周縁は、前記バンパーフェイスと、前記ラジエータグリルの両側方に配置されたヘッドランプと、前記フロントバルクヘッドの上方から後方に延びるエンジンフードの前端と、衝撃力によりラジエータグリルが軸回転した際、連続面を形成することを特徴とする請求項1記載の車体前部の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収材は、車体前後方向成分の入力荷重のみにより、変形して衝撃を吸収することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体前部の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−6238(P2010−6238A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167885(P2008−167885)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】