説明

車体前部構造体

【課題】エンジンフードを閉じる際に、エンジンフードがヘッドランプの上部に接触することを防ぎ、かつ外観性を良好に確保することができる車体前部構造体を提供する。
【解決手段】車体前部構造体10は、エンジンフード16の開閉軌跡28上に左右のヘッドランプ13が設けられている。この車体前部構造体10は、左右のヘッドランプの上方で、かつ閉位置P2のエンジンフードで覆われる部位に左右のサイドアッパカバー22が設けられている。さらに、左右のアッパカバーに、エンジンフードの移動を規制するストッパ部77が設けられている。そして、閉位置を超えたエンジンフードをストッパ部に当接させてエンジンフードが左右のヘッドランプに接触することを防ぐようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームを開閉するエンジンフードを設け、このエンジンフードの開閉軌跡上にヘッドランプを設けた車体前部構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造体として、エンジンルームの前部をバルクヘッドで仕切り、バルクヘッドの上部に樹脂製のバルクヘッドカバー(以下、「アッパカバー」という)を設け、アッパカバーの前部をバルクヘッドより車体前方側に張り出し、アッパカバーの前部にバンパフェイスの上部を取り付けるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
バルクヘッドは、正面視で略矩形状に形成され、車幅方向中央にフードロックステイを備えている。このフードロックステイの上部にフード施錠部が設けられ、フード施錠部でエンジンフードを閉位置に施錠する。
エンジンフードは、エンジンルームを開閉する部材で、エンジンルームの上部において上下方向にスイング移動自在に設けられている。
【0004】
さらに、バルクヘッドは、車幅方向両側に左右のランプブラケットを備えている。左右のランプブラケットにヘッドランプが設けられることで、左右のヘッドランプがバルクヘッドの左右側で、かつエンジンフードの下側に設けられている。
さらに、左右のヘッドランプはエンジンフードが開閉する際の軌跡(以下、「開閉軌跡」という)上に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−218930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ヘッドランプをエンジンフードの開閉軌跡上に設けることで、エンジンフードを閉じる際に、エンジンフードの慣性力でエンジンフードが閉位置を超えて下降(いわゆる、オーバーストローク)することが考えられる。
そこで、閉位置を超えたエンジンフードがヘッドランプの上部に接触しないように、ヘッドランプの上部に比較的大きな凹部を形成している。
このため、ヘッドランプの凹部が車外から目視可能な位置に設けられ、車両の外観性の観点から改良の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、エンジンフードを閉じる際に、エンジンフードがヘッドランプの上部に接触することを防ぎ、かつ外観性を良好に確保することができる車体前部構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前部のエンジンルームを開閉するために開位置および閉位置間で移動自在に設けられたエンジンフードと、前記エンジンルームの近傍に設けられ、少なくとも一部が前記エンジンフードの開閉軌跡上に設けられたヘッドランプ(ヘッドライト)と、を備えた車体前部構造体において、前記ヘッドランプの上方で、かつ前記閉位置のエンジンフードで覆われる部位にアッパカバーを設け、このアッパカバーに、前記エンジンフードの移動を規制するストッパ部を設け、前記エンジンフードを閉じたとき、前記閉位置を超えた前記エンジンフードを前記ストッパ部に当接させて前記エンジンフードが前記ヘッドランプに接触することを防ぐことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記アッパカバーは、前記ヘッドランプの上部に設けられ、前記ストッパ部は、前記閉位置に保持された前記エンジンフードに対して非接触状態を保つことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記アッパカバーで前記ヘッドランプの上部を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、閉位置のエンジンフードで覆われる部位にアッパカバーを設けた。このアッパカバーに、エンジンフードの移動を規制(阻止)するストッパ部を設けた。
そして、エンジンフードを閉じたとき、閉位置を超えたエンジンフードをストッパ部に当接させてエンジンフードがヘッドランプの上部に接触することを防ぐようにした。
これにより、エンジンフードを閉じる際にエンジンフードがヘッドランプの上部に接触することを防ぐことができる。
【0012】
さらに、閉位置のエンジンフードで覆われる部位にアッパカバーを設けることで、アッパカバーをエンジンフードで隠すことができる。
これにより、アッパカバーを車外から目視できないようにして、車両の外観性を良好に確保することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、アッパカバーをヘッドランプの上部に設けることで、アッパカバーを強固に取り付けることができる。
これにより、閉位置を超えたエンジンフードがストッパ部に当接した際に、ストッパ部でエンジンフードの移動を確実に規制することができる。
【0014】
さらに、閉位置に保持されたエンジンフードに対してストッパ部を非接触状態に保つようにした。
よって、エンジンフードの自重(荷重)がストッパ部を介してヘッドランプに常時作用することを防ぐことができる。
これにより、エンジンフードから常時作用する荷重で、ヘッドランプのレンズとヘッドランプのハウジングとの接着部が剥離することを防ぐことができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、アッパカバーでヘッドランプの上部を覆うようにした。
これにより、エンジンフードを開放した状態において、ヘッドランプの上部を車外から目視できないように隠すことができ、車両の外観性を一層良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車体前部構造体を示す斜視図である。
【図2】図1の車体前部構造体からエンジンフードを外した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】(a)は図3の4a部拡大図、(b)は図3の4b部拡大図である。
【図5】本発明に係る車体前部構造体のセンタアッパカバーを示す斜視図である。
【図6】図2の6部拡大図である。
【図7】図6のサイドアッパカバーを示す分解斜視図である。
【図8】図1の8−8線断面図である。
【図9】図6の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る車体前部構造体のエンジンフードを閉じる例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0018】
実施例に係る車体前部構造体10について説明する。
図1、図2に示すように、車体前部構造体10は、エンジンルーム11の左右側に設けられた左右のフロントフェンダ12と、左右のフロントフェンダ12に設けられた左右のヘッドランプ13と、左右のヘッドランプ13間に設けられたバルクヘッド14と、バルクヘッド14の車体前側に設けられたバンパフェイス15と、バンパフェイス15の車体後方に設けられたエンジンフード(ボンネット)16とを備えている。
【0019】
さらに、車体前部構造体10は、バルクヘッド14の上部に設けられたセンタアッパカバー21と、センタアッパカバー21の左右側に設けられた左右のサイドアッパカバー(アッパカバー)22と備えている。
センタアッパカバー21は、バンパフェイス15を支える部材である
サイドアッパカバー22は、エンジンフード16の移動を規制(阻止)する部材である。
なお、センタアッパカバー21およびサイドアッパカバー22については後で詳しく説明する。
【0020】
左ヘッドランプ13は、レンズ24がハウジング25に接着剤で接着され(図8参照)、左フロントフェンダ12の前部12aおよびバンパフェイス15の左側部15aで形成された空間27に設けられている。
この空間27は、エンジンルーム11の前左側部近傍に形成されている。
【0021】
左ヘッドランプ13は、レンズ24の上辺24aが略水平に形成され、レンズ24の前辺24bが車体後方に向けて上り勾配に形成され、上辺24aおよび前辺24bの交差部に前上角部(左ヘッドランプ13の少なくとも一部)24cを有している。
前上角部24cは、バンパフェイス15の左上側突部15bおよび左フロントフェンダ12の前下突部12b間に配置され(図7も参照)、エンジンフード16(左前凸角部16b)の開閉軌跡28上に設けられている。
【0022】
なお、左右のヘッドランプ13は左右対称の部材なので、以下左ヘッドランプ13について説明して右ヘッドランプ13の説明を省略する。
また、左右のフロントフェンダ12は左右対称の部材なので、以下左フロントフェンダ12について説明して右フロントフェンダ12の説明を省略する。
【0023】
バルクヘッド14は、左脚部31の上端部31aおよび右脚部32の上端部32aにアッパメンバー33(図3、図5も参照)が架け渡され、左脚部31の下端部および右脚部32の下端部にロアメンバー34が架け渡されることで略矩形状に形成された部材である。
このバルクヘッド14はエンジンルーム11の前部を仕切る部材である。
【0024】
バンパフェイス15は、センタアッパカバー21に上部15cが係止され(掛けられ)、バルクヘッド14のロアメンバー34などにクリップやボルト(図示せず)で取り付けられている。
バンパフェイス15の上部15cにはシール材18(図6、図7参照)が設けられている。
【0025】
このバンパフェイス15は、車幅方向中央にグリル開口部35を備えている。
グリル開口部35に冷却用の空気を取り入れるラジエータグリル(図示せず)が取り付けられている。
バンパフェイス15の車体後方にエンジンフード16が設けられている。
【0026】
前述したように、バンパフェイス15は、左上側突部15bが左フロントフェンダ12の前下突部12bに対して車体前方側に所定の空間27(図6参照)をおいて配置されている。
この空間27に左ヘッドランプ13の前上角部24cが配置されている。
【0027】
エンジンフード16は、エンジンルーム11の後上部側(具体的には、エンジンルーム11の左右側を仕切る左右のアッパメンバー)に左右の後端部16aが回動自在にそれぞれ支持されている。
左右の後端部16aを回動自在に支持することで、エンジンフード16が開位置P1および閉位置P2間でスイング移動自在(移動自在)に設けられている。
【0028】
このエンジンフード16は、フード表面を形成するフードスキン(アウタパネル)37と、フードスキン37の裏面側に設けられたフードフレーム(インナパネル)38(図8参照)とが重ねられた部材である。
エンジンフード16を開位置P1に配置することでエンジンルーム11の上部が開放される。
一方、エンジンフード16を閉位置P2に配置することでエンジンルーム11の上部が閉塞される。
【0029】
このエンジンフード16は、車体幅方向の両側部で、かつ前端部に左右の前凸角部16bを備えている。
左前凸角部16bは、エンジンフード16の開閉軌跡28上に沿って移動する。
よって、左前凸角部16bは、エンジンフード16が閉位置P2に配置された状態において、空間27の前上角部24cに臨むように配置される。
【0030】
図3〜図5に示すように、センタアッパカバー21は、一例として、ガラス繊維入りの樹脂(繊維強化プラスチック)で形成された部材である。
センタアッパカバー21は、バルクヘッド14のアッパメンバー33に沿って上方から載置され、この状態において複数のクリップ41や段付きボルト42で取り付けられている(図2も参照)。
【0031】
このセンタアッパカバー21は、アッパメンバー33に沿って延びるカバービーム部44と、カバービーム部44の裏面44aからアッパメンバー33の前壁部33aに沿って張り出されたサポート部45と、サポート部45およびアッパメンバー33に設けられた複数の前向き補強リブ46,47と、アッパメンバー33に設けられた横向き補強リブ48とを備えている。
【0032】
カバービーム部44は、アッパメンバー33の上部33bに後部44bが複数のクリップ41で設けられ、上部33bから車体前方に向けて張り出されている。
カバービーム部44を上部33bから車体前方に向けて張り出すことで、上部33bの車体前方側空間50(図3参照)上方をカバービーム部44で覆うことができる。
これにより、車体前方側空間50を上方から目視できないようにカバービーム部44で隠すことができるので外観性を高めることができる。
【0033】
このカバービーム部44は、前端に下向きの折曲部51が車体幅方向に延びるように形成され、折曲部51の近傍に段差部52が車体幅方向に延びるように形成され、折曲部51から上方に突出する複数の係止爪53が車体幅方向に所定間隔をおいて設けられ、段差部52の車体後方に車体幅方向に延びる凹状部54が形成されている。
【0034】
段差部52および複数の係止爪53で複数の係止溝部55が形成されている。複数の係止溝部55にバンパフェイス15の上係止部57が載置された状態に係止されている。
上係止部57は、バンパフェイス15の上部15cに形成された部位である。
複数の係止溝部55に上係止部57が載置された状態で係止されることで、バンパフェイス15がカバービーム部44の前端部44cに支持されている。
【0035】
サポート部45は、カバービーム部44の車体幅方向中央部で、かつ、カバービーム部44の裏面44aに車体幅方向に延びるように形成された張出部である。
具体的には、サポート部45は、カバービーム部44の裏面44aにおいて後部44b近傍の部位44dからアッパメンバー33の前壁33aに沿って下向きに張り出され、車体幅方向の中央部45aに略逆U字状の取付溝61が形成されている。
【0036】
取付溝61に段付きボルト42が差し込まれることで、段付きボルト42の段部42aが取付溝61に嵌合される。
取付溝61から突出したねじ部42bが、前壁部33aの取付孔62を経て溶接ナット63にねじ結合される。
これにより、段付きボルト42の段部42aに取付溝61が嵌合された状態に保持される。
【0037】
ここで、段付きボルト42は、段部42aの高さ寸法Hがサポート部45の板厚寸法Wより僅かに大きく設定されている。
よって、段付きボルト42の段部42aに取付溝61を嵌合することで、サポート部45が下方に移動することを規制することができ、さらに、サポート部45が車体前後方向に移動することを規制することができる。
【0038】
よって、カバービーム部44の後部44bを複数のクリップ41でアッパメンバー33に支持するとともに、サポート部45を段付きボルト42でアッパメンバー33に支持することができる。
このように、センタアッパカバー21をアッパメンバー33に2箇所で取り付けることで、センタアッパカバー21を強固に取り付けることができる。
具体的には、カバービーム部44の前端部44cが下方に向けて下がることをサポート部45で防ぐことができる。
【0039】
また、段付きボルト42の段部42aに取付溝61を嵌合することで、段付きボルト42を締め付けた状態で、サポート部45を段部42aから上方に向けて外すことができる。
よって、カバービーム部44の後部44bから複数のクリップ41を外すだけの簡単な作業で、センタアッパカバー21をアッパメンバー33から容易に取り外すことができる。
【0040】
サポート部45およびアッパメンバー33に複数の前向き補強リブ46および複数の前向き補強リブ47が車体幅方向に所定間隔をおいて下向きに張り出されている。
さらに、アッパメンバー33に車幅方向に延びる横向き補強リブ48が下向きに張り出されている。
【0041】
前向き補強リブ46は、サポート部45から横向き補強リブ48を超えて車体前方まで延びたリブである。
この前向き補強リブ46は、サポート部45および段差部52間に設けられ、下辺46aがサポート部45から段差部52まで車体前方に向けて上り勾配に延出されている。
すなわち、前向き補強リブ46は、カバービーム部44の衝撃吸収部位49のうち部位49a(折曲部51および係止溝部55)に設けられていない。
衝撃吸収部位49の部位49aに前向き補強リブ46を設けない理由については後述する。
【0042】
前向き補強リブ47は、サポート部45から横向き補強リブ48まで延びたリブである。
この前向き補強リブ47は、サポート部45および横向き補強リブ48間に設けられ、下辺47aがサポート部45から横向き補強リブ48まで車体前方に向けて上り勾配に延出されている。
すなわち、前向き補強リブ47は、カバービーム部44の衝撃吸収部位(折曲部51および横向き補強リブ48間の部位)49に設けられていない。
衝撃吸収部位49に前向き補強リブ47を設けない理由については後述する。
【0043】
複数の前向き補強リブ46および複数の前向き補強リブ47でセンタアッパカバー21のカバービーム部44が補強されている。
具体的には、センタアッパカバー21に複数の前向き補強リブ46および複数の前向き補強リブ47を備えることで、カバービーム部44のうち車体前方側の部位44eが下方に下がることを抑えることができる。
よって、カバービーム部44の前端部44cが下方に向けて曲がることを抑えて、バンパフェイス15を所定の取付位置に支持することができる。
【0044】
さらに、前述したように、センタアッパカバー21をガラス繊維入りの樹脂(繊維強化プラスチック)で形成することで、鋼製部材に比して剛性を抑えるようにした。
加えて、複数の前向き補強リブ46を衝撃吸収部位49の部位49aに設けないようにし、かつ、複数の前向き補強リブ47を衝撃吸収部位49に設けないようにした。
よって、折曲部51に車体前方から衝突荷重(荷重)F1が作用した場合に、まず、衝撃吸収部位49の部位49aを好適に変形させることができる。
そして、衝撃吸収部位49の部位49aが変形した後、衝撃吸収部位49の残りの部位49bを好適に変形させることができる。
【0045】
これにより、衝撃吸収部位49で衝突荷重(荷重)F1を効率よく吸収することができる。
このように、複数の前向き補強リブ46および複数の前向き補強リブ47の形状を、前述したように調整する(変える)ことで、衝突荷重(荷重)F1を効率よく吸収することができる。
【0046】
ここで、従来技術で説明したように、樹脂製のアッパカバーの前部にバンパフェイスを取り付けた場合、バンパフェイスの自重でアッパカバーが変形することが考えられる。
アッパカバーが変形することで、バンパフェイスを正規の位置に保持することが難しくなる虞がある。
【0047】
そこで、前述したように、センタアッパカバー21を、ガラス繊維入りの樹脂(繊維強化プラスチック)で形成することで、通常の樹脂製部材と比較して剛性を高くした。
さらに、センタアッパカバー21によれば、カバービーム部44の後部44bを複数のクリップ41で支持するとともに、サポート部45を段付きボルト42で支持した。
加えて、複数の前向き補強リブ46および複数の前向き補強リブ47を設けた。
これにより、カバービーム部44の前端部44cが下方に向けて下がる(変形)ことを防いで、カバービーム部44の前端部44cに係止したバンパフェイス15を所定位置に、強固に取り付けることができる。
【0048】
また、センタアッパカバー21によれば、段付きボルト42の段部42aに取付溝61を嵌合することで、段付きボルト42を溶接ナット63に締め付けた状態で、段付きボルト42の段部42aからサポート部45を上方に向けて外すことができる。
これにより、カバービーム部44の前端部44cにバンパフェイス15を取り付けたままの状態で、カバービーム部44の後部44bから複数のクリップ41を外すだけでセンタアッパカバー21をアッパメンバー33から容易に取り外すことができる。
【0049】
図6〜図7に示すように、左サイドアッパカバー22は、一例として、樹脂製の部材であり、センタアッパカバー21(カバービーム部44)の左側部44fおよび左フロントフェンダ12の前端部12c間で、かつ、左ヘッドランプ13の上方(上部)の空間71に設けられている。
【0050】
空間71は、図1に示すエンジンフード16(具体的には、閉位置P2に配置されたエンジンフード16)で覆われる空間である。
すなわち、左サイドアッパカバー22は、閉位置P2に配置されたエンジンフード16で覆われる部位に設けられている。
【0051】
このように、エンジンフード16で左サイドアッパカバー22を覆うことにより、左サイドアッパカバー22をエンジンフード16で隠すことができる。
これにより、左サイドアッパカバー22を車外から目視できないようにして、車両の外観性を良好に確保することができる。
【0052】
この左サイドアッパカバー22は、下端部73が略水平に形成されるとともに上端部74が略水平に形成され、下端部73および上端部74間の側壁部75に膨出部76が形成され、膨出部76にストッパ部77が形成されている。
【0053】
下端部73は、前半部73aがカバービーム部44の前左側部44gに載置された状態においてクリップ81で締結され、後半部73bが左ヘッドランプ13(レンズ24)の前上部(上部)24dに載置された状態で接着剤を用いて接着されている。
【0054】
上端部74は、カバービーム部44の左側部44fおよびアッパメンバー33の左上部33cに載置されている。
この上端部74は、カバービーム部44の係止孔44hに上前端部74aの係止爪(図示せず)が係止されるとともに、アッパメンバー33の左上部33cに上後端部74bがクリップ82で締結されている。
【0055】
このように、下端部73および上端部74をカバービーム部44やアッパメンバー33などに取り付けることで、左サイドアッパカバー22が所定の部位に取り付けられる。
この状態で、左サイドアッパカバー22の前端部78がカバービーム部44の左側部44fに重ねられた状態で設けられている。
また、左サイドアッパカバー22の後端部79がフロントフェンダ12の前端部12cに重ねられた状態で設けられている。
【0056】
よって、左サイドアッパカバー22は、センタアッパカバー21(カバービーム部44)の左側部44fおよび左フロントフェンダ12の前端部12c間の空間71(左ヘッドランプ13(レンズ24)の前上部24dを含む)を覆うことができる。
これにより、図1に示すエンジンフード16を開位置P1に開放した状態において、左ヘッドランプ13の前上部24dを車外から目視できないように隠すことができ、車両の外観性を一層良好に確保することができる。
【0057】
膨出部76は、側壁部75から車体幅方向外側に向けて膨出されることで、左ヘッドランプ13の前上部24dに非接触状態に形成されている。
これにより、左ヘッドランプ13の前上部24dを膨出部76で覆うことができる。
【0058】
また、膨出部76は、車幅方向外側に向けて下り勾配で形成されることで、下半部76aがフロントフェンダ12の近傍に配置されている。
膨出部76の下半部76aにストッパ部77が形成されることで、ストッパ部77はフロントフェンダ12の近傍に配置されている。
【0059】
図8〜図9に示すように、ストッパ部77は、膨出部76の下半部76aに対して車体幅方向に膨出された略四角形状の部位で(図6参照)、膨出部76に設けられた外周壁84と、外周壁84の先端部に設けられた頂部85と、頂部85および外周壁84で形成された凹部86に設けられたストッパリブ87とを有する。
【0060】
外周壁84は、膨出部76から左ヘッドランプ13の前上部24dに向けて基部84aが張り出され、張り出された基部84aが左ヘッドランプ13の前上部24dに接触されている。
【0061】
頂部85は、閉位置P2に配置されたエンジンフード16に対して略平行に配置されるとともに、閉位置P2のエンジンフード16に対して距離Lだけ車体幅方向内側に配置されている。
すなわち、ストッパ部77は、閉位置P2のエンジンフード16に対して非接触状態に配置されている。
【0062】
よって、エンジンフード16の自重(荷重)がストッパ部77を介して左ヘッドランプ13(レンズ24)に常時作用することを防ぐことができる。
これにより、エンジンフード16から常時作用する荷重で、左ヘッドランプ13のレンズ24と左ヘッドランプ13のハウジング25との接着部26が剥離することを防ぐことができる。
ここで、閉位置P2のエンジンフード16は、フードスキン37の外表面37aが左ヘッドランプ13(レンズ24)の外表面24eに対して面一に配置されている。
【0063】
ストッパリブ87は、凹部86に設けられるとともに、頂部85から左ヘッドランプ13の前上部24dに向けて張り出され、張り出されたリブ基部87aが左ヘッドランプ13の前上部24dに接触されている。
ストッパリブ87は、ストッパ部77を補強する部材で、厚さ寸法Tに設定されている。
【0064】
左右のサイドアッパカバー22は左右対称の部材なので、左サイドアッパカバー22について説明して右サイドアッパカバー22の説明を省略する。
【0065】
つぎに、エンジンフード16を閉じた際にエンジンフード16の移動をストッパ部77で規制する例を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、エンジンフード16を閉じる際には、エンジンフード16が下方に向けて矢印Aの如く移動する。
エンジンフード16が閉位置P2に到達したとき下向きの慣性力F2が作用している。
よって、エンジンフード16は、閉位置P2に到達した後、閉位置P2を超えて左ヘッドランプ13側に向けて移動(いわゆる、オーバーストローク)することが考えられる。
【0066】
そこで、左サイドアッパカバー22にストッパ部77を設けることで、ストッパ部77にエンジンフード16の左前凸角部16bを当接させるようにした。
よって、エンジンフード16を閉じたとき、閉位置P2を超えた左前凸角部16bをストッパ部77に当接させて、エンジンフード16の移動(オーバーストローク)を規制することができる。
このように、エンジンフード16の移動(オーバーストローク)を規制することで、エンジンフード16が左ヘッドランプ13に接触することを防ぐことができる。
【0067】
加えて、左サイドアッパカバー22を左ヘッドランプ13の前上部24dに設けることで、左サイドアッパカバー22を強固に取り付ける(支持する)ことができる。
これにより、閉位置P2を超えた左前凸角部16bがストッパ部77に当接した際に、ストッパ部77でエンジンフード16の移動を確実に規制することができる。
【0068】
ここで、ストッパリブ87の厚さ寸法T(図9参照)を調整することでストッパ部77の剛性を調節することができる。
ストッパ部77の剛性を調節することで、閉位置を超えた左前凸角部16bがストッパ部77に当接したときに、ストッパ部77から左前凸角部16bに作用する反力を良好に調節することができる。
【0069】
なお、本発明に係る車体前部構造体10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、センタアッパカバー21を取り付ける締結部材としてクリップ41を例示したが、これに限らないで、ボルトなどの他の締結部材を用いることも可能である。
【0070】
また、前記実施例では、左サイドアッパカバー22を取り付ける締結部材としてクリップ81やクリップ82を例示したが、これに限らないで、ボルトなどの他の締結部材を用いることも可能である。
【0071】
さらに、前記実施例では、左サイドアッパカバー22を左ヘッドランプ13の前上部24dに設けた例について説明したが、これに限らないで、左サイドアッパカバー22を他の部位に設けて左ヘッドランプ13の上方に配置することも可能である。
これにより、左サイドアッパカバー22を他の部位に設けることで、設計の自由度を高めることができる。
【0072】
また、前記実施例で示したエンジンルーム11、左右のヘッドランプ13、エンジンフード16、左右のサイドアッパカバー22、前上角部24c、前上部24dおよびストッパ部77などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の車体前部構造体は、エンジンルームを開閉するエンジンフードを設け、このエンジンフードの開閉軌跡上にヘッドランプを設けた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0074】
10…車体前部構造体、11…エンジンルーム、13…左右のヘッドランプ(ヘッドランプ)、16…エンジンフード、22…左右のサイドアッパカバー(アッパカバー)、24c…前上角部(左ヘッドランプ13の少なくとも一部)、24d…前上部(ヘッドランプの上部)、28…開閉軌跡、77…ストッパ部、P1…開位置、P2…閉位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のエンジンルームを開閉するために開位置および閉位置間で移動自在に設けられたエンジンフードと、
前記エンジンルームの近傍に設けられ、少なくとも一部が前記エンジンフードの開閉軌跡上に設けられたヘッドランプ(ヘッドライト)と、を備えた車体前部構造体において、
前記ヘッドランプの上方で、かつ前記閉位置のエンジンフードで覆われる部位にアッパカバーを設け、
このアッパカバーに、前記エンジンフードの移動を規制するストッパ部を設け、
前記エンジンフードを閉じたとき、前記閉位置を超えた前記エンジンフードを前記ストッパ部に当接させて前記エンジンフードが前記ヘッドランプに接触することを防ぐことを特徴とする車体前部構造体。
【請求項2】
前記アッパカバーは、
前記ヘッドランプの上部に設けられ、
前記ストッパ部は、
前記閉位置に保持された前記エンジンフードに対して非接触状態を保つことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造体。
【請求項3】
前記アッパカバーで前記ヘッドランプの上部を覆うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体前部構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−84172(P2011−84172A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238567(P2009−238567)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】