説明

車体前部構造

【課題】車高の高い相手車両がオフセット衝突した場合でも、オフセット衝突による衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左アッパメンバー16の前端部からフロントバルクヘッド13の左側壁部27に向けて延びることで、左アッパメンバー16の前端部および左側壁部27を連結する左中間メンバー31を備え、左中間メンバー31、左バルクヘッドアッパメンバー24および左側壁部27で左鉛直枠体84が構成され、左中間メンバー31、左水平連結メンバー21および左ロアメンバー18で左水平枠体85が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームにフロントバルクヘッドが設けられ、アッパメンバーがロアメンバーを介してフロントサイドフレームに連結された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、通常、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、このフロントサイドフレームの外側に、フロントピラーから車体前方向に向かって延びるアッパメンバーが設けられ、アッパメンバーから車体前下方向に向かって延びるロアメンバーが設けられている。
そして、このロアメンバーの前端部がフロントサイドフレームの前端部に連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173号公報
【0003】
特許文献1のロアメンバーは前端部が上下に拡大されている。よって、万が一、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合でも、相手車両に当てることができる。
これにより、ロアメンバーで衝撃荷重を受け、ロアメンバーに作用した衝撃荷重をアッパメンバーに伝えて好適に分散、吸収することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、ロアメンバーの上方に比較的大きな空間が形成されている。
よって、車高の高い相手車両がオフセット衝突した場合に、相手車両(具体的には、相手車両のフロントサイドフレーム)が、ロアメンバー上方の空間に侵入することが考えられる。
【0005】
相手車両が空間に侵入することで、オフセット衝突による衝撃荷重を吸収する領域を充分に確保することが難しくなる。
このため、車高の高い相手車両がオフセット衝突した場合に、オフセット衝突による衝撃荷重を良好に吸収するための工夫が求められていた。
【0006】
本発明は、車高の高い相手車両がオフセット衝突した場合でも、オフセット衝突による衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部にフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、前記アッパメンバーの前端部から前記フロントサイドフレームの前端部に向けてロアメンバーが延出され、ロアメンバーの前端部が前記フロントサイドフレームの前端部に水平連結メンバーで連結され、前記アッパメンバーの前端部および前記フロントバルクヘッドの上端部がバルクヘッドアッパメンバーで連結された車体前部構造において、前記アッパメンバーの前端部から前記フロントバルクヘッドの側壁部に向けて延びることで、前記アッパメンバーの前端部および前記側壁部を連結する中間メンバーを備え、前記中間メンバー、前記バルクヘッドアッパメンバーおよび前記フロントバルクヘッドの側壁部で、車体前方に向けて広がる略三角形の鉛直枠体を構成し、前記中間メンバー、前記水平連結メンバーおよび前記ロアメンバーで、車体前方に向けて広がる略三角形の水平枠体を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、アッパメンバーの前端部からフロントバルクヘッドの側壁部に向けて中間メンバーを延出させて、アッパメンバーの前端部および側壁部を中間メンバーで連結した。
よって、ロアメンバーの上方の空間に中間メンバーを設けることができる。
これにより、車高の高い相手車両がオフセット衝突した場合でも、相手車両(具体的には、相手車両のフロントサイドフレーム)を中間メンバーに当て、衝撃荷重を良好に吸収することができるという利点がある。
【0009】
さらに、中間メンバー、バルクヘッドアッパメンバーおよびフロントバルクヘッドの側壁部で略三角形の鉛直枠体を構成した。
さらに、中間メンバー、水平連結メンバーおよびロアメンバーの側壁部で略三角形の水平枠体を構成した。
【0010】
ここで、鉛直枠体の前枠を構成するフロントバルクヘッドの左側壁部は鉛直方向を向いて設けられている。また、水平枠体の前枠を構成する左水平連結メンバーは水平方向を向いて設けられている。
よって、鉛直枠体および水平枠体を交差するように設けることができるので、鉛直枠体および水平枠体の剛性を高めることができる。
これにより、相手車両がオフセット衝突した場合に、衝撃荷重をそれぞれ枠体に分散させて良好に吸収することができるという利点がある。
【0011】
加えて、鉛直枠体および水平枠体を、それぞれ車体前方に向けて広がるように形成した。
これにより、相手車両がオフセット衝突した場合に、相手車両に当てる領域を広範囲に確保して、オフセット衝突時の衝撃荷重を良好に吸収することができるという利点がある
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0013】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに設けられたフロントバルクヘッド13と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに架け渡されたフロントバンパビーム14と、左右のフロントサイドフレーム11,12の外側に設けられた左右のアッパメンバー(アッパメンバー)16,17とを備えている。
【0014】
また、車体前部構造10は、左アッパメンバー16の前端部16aから左フロントサイドフレーム11の前端部11aに向けて延出された左ロアメンバー(ロアメンバー)18と、右アッパメンバー17の前端部17aから右フロントサイドフレーム12の前端部12aに向けて延出された右ロアメンバー(ロアメンバー)19と、左ロアメンバー18の前端部18aを左フロントサイドフレーム11の前端部11aに連結する左水平連結メンバー(水平連結メンバー)21と、右ロアメンバー19の前端部19aを右フロントサイドフレーム12の前端部12aに連結する右水平連結メンバー(水平連結メンバー)22とを備えている。
【0015】
さらに、車体前部構造10は、左アッパメンバー16の前端部16aおよびフロントバルクヘッド13の左上端部(上端部)13aを連結する左バルクヘッドアッパメンバー(バルクヘッドアッパメンバー)24と、右アッパメンバー17の前端部17aおよびフロントバルクヘッド13の右上端部(上端部)13bを連結する右バルクヘッドアッパメンバー(バルクヘッドアッパメンバー)25と、左アッパメンバー16の前端部16aおよびフロントバルクヘッド13の左側壁部(側壁部)27を連結する左中間メンバー(中間メンバー)31と、右アッパメンバー17の前端部17aおよびフロントバルクヘッド13の右側壁部(側壁部)28を連結する右中間メンバー(中間メンバー)32とを備えている。
【0016】
加えて、車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー16間に設けられた左ホイールハウス34と、右フロントサイドフレーム12および右アッパメンバー17間に設けられた右ホイールハウス35と、左右のフロントサイドフレーム11,12の下側に設けられたフロントサブフレーム36とを備えている。
【0017】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部方向を向いて車体前部の左側に配置され、後端部11bが左フロントサイドフレームリヤエンド38を介して左フロアフレーム(図示せず)に連結されたフレーム部材である。
【0018】
右フロントサイドフレーム12は、車体前後方向を向いて車体前部の右側に配置されたフレーム部材である。
なお、右フロントサイドフレーム12は、左フロントサイドフレーム11と左右対称の部材であり、以下右フロントサイドフレーム12の説明を省略する。
【0019】
左アッパメンバー16は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー41から車体前方向に向かって延出された部材である。
右アッパメンバー17は、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、右フロントピラー42から車体前方向に向かって延出された部材である。
なお、右アッパメンバー17は、左アッパメンバー16と左右対称の部材であり、以下右アッパメンバー17の説明を省略する。
【0020】
図2は第1実施の形態に係る車体前部構造の左側構成部材を示す斜視図、図3は第1実施の形態に係る左アッパメンバーの前端部を示す分解斜視図、図4は図2の4−4線断面図である。
左アッパメンバー16は、図3に示すように、車体内側に配置されたインナパネル44と、インナパネル44に溶接で接合されたアウタパネル45とを備えている。
この左アッパメンバー16は、図2に示すように、前端部16aに、上分岐部46、中間分岐部47および下分岐部48が形成されている。
【0021】
インナパネル44は、インナパネル前端部44aに、インナパネル上分岐部51、インナパネル中間分岐部52およびインナパネル下分岐部53が形成されている。
インナパネル上分岐部51、インナパネル中間分岐部52およびインナパネル下分岐部53は、それぞれ平坦に形成されている。
【0022】
アウタパネル45は、アウタパネル前端部45aに、アウタパネル上分岐部55、アウタパネル中間分岐部56およびアウタパネル下分岐部57が形成されている。
アウタパネル上分岐部55、アウタパネル中間分岐部56およびアウタパネル下分岐部57は、それぞれ断面略コ字状に形成されている。
【0023】
上分岐部46は、インナパネル上分岐部51の上下の辺51aにアウタパネル上分岐部55の上下の辺55aが溶接で接合されている。
インナパネル上分岐部51およびアウタパネル上分岐部55間に、左バルクヘッドアッパメンバー24の基端部24aが挟持された状態で溶接によって接合されている。
すなわち、上分岐部46は、図2に示すように、車体前方に向けて略水平に突出され、左バルクヘッドアッパメンバー24の基端部24aが連結された部位である。
【0024】
左バルクヘッドアッパメンバー24は、図2に示すように、左アッパメンバー16の上分岐部46から車体前方に向けて直線状に延出され、前端部24bがフロントバルクヘッド13の左上端部13aに連結されている。
右バルクヘッドアッパメンバー25(図1参照)は、左バルクヘッドアッパメンバー24と左右対称の部材であり、以下右バルクヘッドアッパメンバー25の説明を省略する。
【0025】
下分岐部48は、インナパネル下分岐部53の上下の辺53aにアウタパネル下分岐部57の上下の辺57aが溶接で接合されている。
インナパネル下分岐部53およびアウタパネル下分岐部57間に、左ロアメンバー18の基端部18bが挟持された状態で溶接によって接合されている。
すなわち、下分岐部48は、図2に示すように、車体前下方向に向けて傾斜状に突出され、左ロアメンバー18の基端部18bが連結された部位である。
【0026】
左ロアメンバー18は、図2に示すように、左アッパメンバー16の下分岐部48から車体前下方に向けて傾斜状に延出され、前端部18aが左水平連結メンバー21に連結されている。
左水平連結メンバー21は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの外壁61に連結されている。
よって、左ロアメンバー18の前端部18aは、左水平連結メンバー21を介在させた状態で左フロントサイドフレーム11の前端部11aの外壁61に連結されている。
右ロアメンバー19(図1参照)は、左ロアメンバー18と左右対称の部材であり、以下右ロアメンバー19の説明を省略する。
【0027】
左水平連結メンバー21は、内端部21aが左フロントサイドフレーム11の前端部11aの外壁61に連結され、外端部21bが左ロアメンバー18の前端部18aの内壁(図示せず)に連結されている。
右水平連結メンバー22(図1参照)は、左水平連結メンバー21と左右対称の部材であり、以下右水平連結メンバー22の説明を省略する。
【0028】
中間分岐部47は、インナパネル中間分岐部52の上下の辺52aにアウタパネル中間分岐部56の上下の辺56aが溶接で接合されている。
インナパネル中間分岐部52およびアウタパネル中間分岐部56間に、左中間メンバー31の基端部31aが挟持された状態で溶接によって接合されている。
すなわち、中間分岐部47は、図2に示すように、上分岐部46および下分岐部48間から車体前下方向に向けて傾斜状に突出され、左中間メンバー31の基端部31aが連結された部位である。
【0029】
左中間メンバー31は、図2に示すように、左アッパメンバー16の中間分岐部47から車体前下方に向けて傾斜状にフロントバルクヘッド13の左側壁部27に向けて延出されている。
この左中間メンバー31は、前端部31bが、フロントバルクヘッド13の左側壁部27に連結されるとともに、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に連結されている。
右中間メンバー32(図1参照)は、左中間メンバー31と左右対称の部材であり、以下右中間メンバー32の説明を省略する。
【0030】
図5は第1実施の形態に係る左中間メンバーを左フロントサイドフレームから分解した状態を示す分解斜視図、図6は図2の6−6線断面図である。
左中間メンバー31は、インナパネル65と、インナパネル65に溶接で接合されたアウタパネル66とを備えている(図3も参照)。
インナパネル65は、平坦な板材で、前端部65aが車体内側に向けて折り曲げられている。
アウタパネル66は、断面略コ字状に形成され、上下の辺66a(下辺66aは図4参照)がインナパネル65の上下の辺65bに溶接で接合されている。
よって、左中間メンバー31は、略ロ字状の閉断面に形成されている。
【0031】
左中間メンバー31の前端部31bは、フロントバルクヘッド13の左側壁部27の側面27aに対向する上内側接合片71と、左側壁部27の前面27bに対向する前内側接合片72と、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に対向する前下側接合片73と、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの内壁63に対向する下内側接合片74を備えている。
【0032】
フロントバルクヘッド13の左側壁部27の側面27aに上内側接合片71が溶接で接合され、左側壁部27の前面27bに前内側接合片72が溶接で接合されている。
また、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に前下側接合片73が溶接で接合され、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの内壁63に下内側接合片74が溶接で接合されている。
なお、下内側接合片74は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの内壁63に溶接で接合されるとともに、左側壁部27の側面27aにも溶接で接合されている。
【0033】
さらに、左中間メンバー31の前端部31bの外壁部75にアングル部材76の上接合片76aが溶接で接合され、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62にアングル部材76の下接合片76bが溶接で接合されている。
よって、左中間メンバー31の前端部31bが、フロントバルクヘッド13の左側壁部27および左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に連結されている。
【0034】
これにより、図2に示すように、左ロアメンバー18の上方の空間78(詳しくは、左ロアメンバー18および左バルクヘッドアッパメンバー24間の空間78)に左中間メンバー31を設けることができる。
これにより、車高の高い相手車両81(図7参照)がオフセット衝突した場合に、相手車両81(具体的には、相手車両81のフロントサイドフレーム82)を左中間メンバー31に当て、衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0035】
図7は第1実施の形態に係る車体前部構造の左側構成部材を示す正面図である。
車体前部構造10は、左中間メンバー31、左バルクヘッドアッパメンバー24およびフロントバルクヘッド13の左側壁部27からなる3部材で、車体前方に向けて広がる略三角形の左鉛直枠体(鉛直枠体)84が構成され、かつ、左中間メンバー31、左水平連結メンバー21および左ロアメンバー18からなる3部材で、車体前方に向けて広がる略三角形の左水平枠体(水平枠体)85が構成されている(図2も参照)。
【0036】
ここで、左鉛直枠体84の前枠を構成するフロントバルクヘッド13の左側壁部27は鉛直方向を向いて設けられている。
また、左水平枠体85の前枠を構成する左水平連結メンバー21は水平方向を向いて設けられている。
よって、左鉛直枠体84および左水平枠体85を交差するように設けることができるので、左鉛直枠体84および左水平枠体85の剛性を高めることができる。
【0037】
加えて、左鉛直枠体84および左水平枠体85は、それぞれ車体前方に向けて広がるように形成されている(図2も参照)。
これにより、相手車両81が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両81に当てる領域を広範囲に確保することができる。
【0038】
具体的には、相手車両81が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82がP1〜P4に位置することが考えられる。
すなわち、車高が略同じ高さの相手車両81が、P1位置にオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82に左フロントサイドフレーム11の前端部11aを当て、衝撃荷重を吸収することができる。
【0039】
また、車高が略同じ高さの相手車両81が、P2位置にオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82に左水平連結メンバー21を当て、衝撃荷重を吸収することができる。
【0040】
さらに、車高が高い相手車両81が、P3位置にオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82に左中間メンバー31の前端部31bを当て、衝撃荷重を吸収することができる。
【0041】
加えて、車高が高い相手車両81が、P4位置にオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82に左中間メンバー31の中央部31cを当て、衝撃荷重を吸収することができる。
【0042】
このように、相手車両81が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両に、左フロントサイドフレーム11の前端部11a、左水平連結メンバー21、左中間メンバー31の前端部31bや左中間メンバー31の中央部31cを当てることができる。
これにより、相手車両81が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両に当てる領域を広範囲に確保することができる。
【0043】
なお、車体前部構造10は、右側に、図示しない右鉛直枠体(鉛直枠体)が構成され、かつ、図示しない右水平枠体(水平枠体)が構成されている。
右鉛直枠体は、左鉛直枠体(鉛直枠体)84と左右対称の部材である。
右水平枠体は、左水平枠体(鉛直枠体)85と左右対称の部材である。
【0044】
つぎに、車体前部構造10の左側構成部材に相手車両81が、図7に示すP1位置、すなわち、左フロントサイドフレーム11の前端部11aにオフセット衝突した場合を図8に基づいて説明する。
図8(a),(b)は第1実施の形態に係る車体前部構造の左フロントサイドフレームに相手車両が前方からオフセット衝突した場合を説明する図である。
(a)は、車高が略同じ高さの相手車両81がP1位置(図7参照)にオフセット衝突した場合を示す。(b)は、車高が高い相手車両81がP3位置(図7参照)にオフセット衝突した場合を示す。
【0045】
(a)において、車高が略同じ高さの相手車両81が、図7に示すP1位置にオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82に左フロントサイドフレーム11の前端部11aを当てることができる。
【0046】
ここで、車体前部構造10は、前述したように、左中間メンバー31、左バルクヘッドアッパメンバー24およびフロントバルクヘッド13の左側壁部27からなる3部材で左鉛直枠体84が構成され、かつ、左中間メンバー31、左水平連結メンバー21および左ロアメンバー18からなる3部材で左水平枠体85が構成されている。
【0047】
よって、相手車両81のフロントサイドフレーム82からの衝撃荷重F1を、左フロントサイドフレーム11の前端部11aから、左フロントサイドフレーム11に衝撃荷重F2として伝えるとともに、フロントバルクヘッド13の左側壁部27、左中間メンバー31および左ロアメンバー18に分散することができる。
【0048】
フロントバルクヘッド13の左側壁部27に分散された衝撃荷重F3は、左バルクヘッドアッパメンバー24を経て左アッパメンバー16に矢印の如く伝わる。
また、左中間メンバー31に分散された衝撃荷重F4も、左アッパメンバー16に矢印の如く伝わる。
さらに、左ロアメンバー18に分散された衝撃荷重F5も、左アッパメンバー16に矢印の如く伝わる。
【0049】
このように、車体前部構造10に左鉛直枠体84および左水平枠体85を構成することで、衝撃荷重F1の一部を左フロントサイドフレーム11に衝撃荷重F2として伝えるとともに、左鉛直枠体84および左水平枠体85(すなわち、フロントバルクヘッド13の左側壁部27、左中間メンバー31および左ロアメンバー18)の3部材に分散できる。
そして、3部材27,31,18に分散した衝撃荷重を、左アッパメンバー16に良好に伝えることができる。
【0050】
ここで、左アッパメンバー16は、左ホイールハウス34を介して左フロントサイドフレーム11に連結されている。すなわち、左アッパメンバー16は充分に剛性の高い部材である。
よって、左アッパメンバー16に伝えられた衝撃荷重(F3,F4,F5)を良好に吸収することができる。
これにより、相手車両81のフロントサイドフレーム82からの衝撃荷重F1を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0051】
(b)において、車高が高い相手車両81が、図7に示すP3位置にオフセット衝突した場合に、相手車両81のフロントサイドフレーム82に左中間メンバー31の前端部31bを当てることができる。
【0052】
ここで、車体前部構造10は、前述したように、左中間メンバー31、左バルクヘッドアッパメンバー24およびフロントバルクヘッド13の左側壁部27からなる3部材で左鉛直枠体84が構成され、かつ、左中間メンバー31、左水平連結メンバー21および左ロアメンバー18からなる3部材で左水平枠体85が構成されている。
【0053】
よって、相手車両81のフロントサイドフレーム82からの衝撃荷重F1を、左中間メンバー31の前端部31bから、左中間メンバー31に衝撃荷重F6として伝えるとともに、左フロントサイドフレーム11、フロントバルクヘッド13の左側壁部27および左ロアメンバー18に分散することができる。
【0054】
ここで、左フロントサイドフレーム11は、車体前部構造10の主骨格を構成するため剛性が高い部材である。
よって、左フロントサイドフレーム11に分散された衝撃荷重F7は、左フロントサイドフレーム11で良好に吸収することができる。
【0055】
一方、左中間メンバー31に伝えられた衝撃荷重F6は、左アッパメンバー16に矢印の如く伝わる。
また、フロントバルクヘッド13の左側壁部27に分散された衝撃荷重F8も、左バルクヘッドアッパメンバー24を経て左アッパメンバー16に矢印の如く伝わる。
さらに、左ロアメンバー18に分散された衝撃荷重F9も、左アッパメンバー16に矢印の如く伝わる。
【0056】
このように、車体前部構造10に左鉛直枠体84および左水平枠体85を構成することで、衝撃荷重F1を左フロントサイドフレーム11に分散するとともに、左鉛直枠体84および左水平枠体85(すなわち、フロントバルクヘッド13の左側壁部27、左中間メンバー31および左ロアメンバー18)に分散できる。
そして、左フロントサイドフレーム11に分散した衝撃荷重F7を左フロントサイドフレーム11で良好に吸収するとともに、3部材27,31,18に分散した衝撃荷重を、左アッパメンバー16に良好に伝えることができる。
【0057】
ここで、左アッパメンバー16は、左ホイールハウス34を介して左フロントサイドフレーム11に連結されている。よって、左アッパメンバー16は充分に剛性の高い部材である。
よって、左アッパメンバー16に伝えられた衝撃荷重(F6,F8,F9)を良好に吸収することができる。
これにより、相手車両81のフロントサイドフレーム82からの衝撃荷重F1を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0058】
なお、図8(a),(b)においては、相手車両81がP1位置、P3位置(図7参照)にオフセット衝突した場合について説明したが、図7に示すP2位置やP4位置に相手車両81がオフセット衝突した場合も、図8(a),(b)と同様に衝撃荷重F1を分散させて良好に吸収することができる。
【0059】
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
第2実施の形態の車体前部構造100は、左中間メンバー31の前端部31bをボルト91およびナット92で左フロントサイドフレーム11の前端部11aに取り付けたもので、その他の構成は第1実施の形態の車体前部構造10と同じである。
【0060】
車体前部構造100は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62および下壁64に上下の貫通孔62a,64aが同軸上に形成され、前端部11a内にロアカラー94が上下の貫通孔62a,64aと同軸上に配置され、ロアカラー94の上端部94aが上壁62に溶接で接合され、ロアカラー94の下端部94bが下壁64に溶接で接合されている。
ロアカラー94は中空に形成された筒体である。
【0061】
また、車体前部構造100は、左中間メンバー31の前端部31bの上壁96および下壁97に上下の貫通孔96a,97aが貫通孔62a,64aと同軸上に形成され、前端部31b内にアッパカラー98が上下の貫通孔96a,97aと同軸上に配置され、アッパカラー98の上端部98aが上壁96に溶接で接合され、アッパカラー98の下端部98bが下壁97に溶接で接合されている。
アッパカラー98は中空に形成された筒体である。
【0062】
さらに、車体前部構造100は、左中間メンバー31の上壁96の上面に貫通孔96aと同軸上にナット92が溶接で接合されている。
すなわち、下貫通孔64a、ロアカラー94、上貫通孔62a、下貫通孔97a、アッパカラー98、上貫通孔96aおよびナット92が同軸上に設けられている。
【0063】
下貫通孔64a、ロアカラー94、上貫通孔62a、下貫通孔97a、アッパカラー98および上貫通孔96aにボルト91が差し込まれ、ねじ部91aがナット92にねじ結合されている。
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に、左中間メンバー31の前端部31bがボルト91およびナット92で連結されている。
【0064】
ここで、左中間メンバー31の前端部31bは、第1実施の形態と同様に、フロントバルクヘッド13の左側壁部27の側面27aに上内側接合片71が溶接で接合され、図5に示すように、左側壁部27の前面27bに前内側接合片72が溶接で接合されている。
これにより、フロントバルクヘッド13の左側壁部27に、左中間メンバー31の前端部31bが連結されている。
【0065】
このように、左中間メンバー31の前端部31bを、フロントバルクヘッド13の左側壁部27に連結するとともに、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に連結することで、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
加えて、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上壁62に、左中間メンバー31の前端部31bをボルト91・ナット92で連結することで、溶接作業による接合箇所を減らすことができる。
【0066】
また、前記第1、第2の実施の形態で示した左右のロアメンバー18,19、左右の水平連結メンバー21,22、左右の左バルクヘッドアッパメンバー24,25、左右の中間メンバー31,32などの形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、フロントサイドフレームにフロントバルクヘッドが設けられ、アッパメンバーがロアメンバーを介してフロントサイドフレームに連結された自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造の左側構成部材を示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係る左アッパメンバーの前端部を示す分解斜視図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】第1実施の形態に係る左中間メンバーを左フロントサイドフレームから分解した状態を示す分解斜視図である。
【図6】図2の6−6線断面図である。
【図7】第1実施の形態に係る車体前部構造の左側構成部材を示す正面図である。
【図8】第1実施の形態に係る車体前部構造の左フロントサイドフレームに相手車両が前方からオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10,100…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a…左フロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12a…右フロントサイドフレームの前端部、13…フロントバルクヘッド、13a…フロントバルクヘッドの左上端部(上端部)、13b…フロントバルクヘッドの右上端部(上端部)、16…左アッパメンバー(アッパメンバー)、16a…左アッパメンバーの前端部、17…右アッパメンバー(アッパメンバー)、17a…右アッパメンバーの前端部、18…左ロアメンバー(ロアメンバー)、18a…左ロアメンバーの前端部、19…右ロアメンバー(ロアメンバー)、19a…右ロアメンバーの前端部、21…左水平連結メンバー(水平連結メンバー)、22…右水平連結メンバー(水平連結メンバー)、24…左バルクヘッドアッパメンバー(バルクヘッドアッパメンバー)、25…右バルクヘッドアッパメンバー(バルクヘッドアッパメンバー)、27…フロントバルクヘッドの左側壁部(側壁部)、28…フロントバルクヘッドの右側壁部(側壁部)、31…左中間メンバー(中間メンバー)、32…右中間メンバー(中間メンバー)、84…左鉛直枠体(鉛直枠体)、85…左水平枠体(水平枠体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの前端部にフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、前記アッパメンバーの前端部から前記フロントサイドフレームの前端部に向けてロアメンバーが延出され、ロアメンバーの前端部が前記フロントサイドフレームの前端部に水平連結メンバーで連結され、前記アッパメンバーの前端部および前記フロントバルクヘッドの上端部がバルクヘッドアッパメンバーで連結された車体前部構造において、
前記アッパメンバーの前端部から前記フロントバルクヘッドの側壁部に向けて延びることで、前記アッパメンバーの前端部および前記側壁部を連結する中間メンバーを備え、
前記中間メンバー、前記バルクヘッドアッパメンバーおよび前記フロントバルクヘッドの側壁部で、車体前方に向けて広がる略三角形の鉛直枠体を構成し、
前記中間メンバー、前記水平連結メンバーおよび前記ロアメンバーで、車体前方に向けて広がる略三角形の水平枠体を構成したことを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−166613(P2009−166613A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5977(P2008−5977)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】