説明

車体前部構造

【課題】車体前部に衝突する相手車両が小さい場合でも、衝突により発生した衝撃荷重を十分に吸収することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、フロントバルクヘッド14の下部に取り付けられた前結合ブラケット51と、前結合ブラケット51およびサブフレーム21間に介装されたサポートメンバ52とを備えている。前結合ブラケット51は、フロントバルクヘッド14に取り付けられた結合部54と、サポートメンバ52の前端部52aに取り付けられた取付部55と、結合部54および取付部55間に設けられた衝撃エネルギ吸収部56とを有する。衝撃エネルギ吸収部56は、フロントバルクヘッド14の下部に作用する衝撃荷重を吸収する部位である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向を向いて設けられたサイドフレームにフロントバルクヘッドが設けられ、フロントバルクヘッドの後方でかつサイドフレームの下部にサブフレームが設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、サイドフレームが車体前後方向を向いて設けられ、このサイドフレームの下部にサブフレームが設けられ、このサイドフレームの前端部近傍にフロントバルクヘッドが設けられ、このフロントバルクヘッドの下端部にサブフレームの前端部が設けられたものが知られている。
サイドフレームの前端部は、サブフレームの前端部に対して車体前方に位置している。
【0003】
この車体前部構造に相手車両が車体前方から衝突した場合に、サイドフレームの前端部に衝撃荷重が作用する。
このように、サイドフレームの前端部に衝撃荷重が作用した場合、サイドフレームの前端部を変形させて(潰して)衝撃荷重を吸収することが可能である。
そして、残りの衝撃荷重をサイドフレームやサブフレームに分散させて、それぞれのフレームで残りの衝撃荷重を支えることが可能であるとされている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−231157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車体前部に車体前方から衝突する相手車両が小さい場合、フロントバルクヘッドの下端部に衝突することが考えられる。
小さい相手車両がフロントバルクヘッドの下端部に衝突した場合、サブフレームの前端部に衝撃荷重が作用する。
【0005】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、サブフレームに衝撃吸収部を備えていない。
このため、小さい相手車両がサブフレームの前端部に衝突した場合に、サブフレームの前端部を変形させて(潰して)衝撃荷重を十分に吸収することは難しい。
【0006】
本発明は、車体前部に衝突する相手車両が小さい場合でも、衝突により発生した衝撃荷重を十分に吸収することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向を向いてサイドフレームが設けられ、前記サイドフレームの前端部にフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントバルクヘッドの後方でかつ前記サイドフレームの下部にサブフレームが設けられた車体前部構造において、前記フロントバルクヘッドの下部に取り付けられた結合ブラケットと、前記結合ブラケットに前端部が取り付けられるとともに、前記サブフレームに後端部が取り付けられたサポートメンバと、を備え、前記結合ブラケットは、前記フロントバルクヘッドに取り付けられた結合部と、前記サポートメンバの前端部に取り付けられた取付部と、前記結合部および前記取付部間に設けられ、車体前方から前記フロントバルクヘッドの下部に作用する衝撃荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記結合ブラケットは、軽合金で押出成形され、押出成形の際の押出方向が上下を向いて配置された部材であって、前記衝撃エネルギ吸収部に、前記結合部から前記取付部まで車体後方に向けて延出された中間リブを有し、前記中間リブは、前記衝撃荷重で車体幅方向に変形可能に車体幅方向の肉厚寸法が設定され、前記肉厚寸法に対して上下方向の高さ寸法が大きく設定されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記サポートメンバは、前記前端部が前記後端部に対して車体幅方向外側に位置するように、平面視で傾斜状に設けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項4は、前記フロントバルクヘッドに、前記サイドフレームの前端部から下方に延出された支柱部を備え、前記支柱部の下端部に前記結合ブラケットが設けられ、前記結合ブラケットは、前記支柱部のうち、車体中心側に設けられた内壁部に当接する係止部を有することを特徴とする。
【0011】
ここで、サポートメンバは前端部が後端部に対して車体幅方向外側に配置されている。そして、サポートメンバの前端部を結合ブラケットに取り付けた。
よって、フロントバルクヘッドの下端部(すなわち、支柱部の下端部)から結合ブラケットに衝撃荷重が伝わった場合、結合ブラケットに車体外側に向けて分力荷重が作用する。
【0012】
このため、結合ブラケットがフロントバルクヘッドの下端部(支柱部の下端部)から車体外側に離れようとする。
そこで、請求項4において、フロントバルクヘッドに、サイドフレームの前端部に設けられた支柱部を備え、支柱部の下端部に結合ブラケットを設けた。
そして、結合ブラケットに係止部を備え、この係止部を支柱部の内壁部に当接させるようにした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、フロントバルクヘッドの下部に結合ブラケットを取り付けた。この結合ブラケットにサポートメンバの前端部を取り付けるとともに、サブフレームにサポートメンバの後端部を取り付けた。
よって、サポートメンバは、結合ブラケットおよびサブフレームに連結されている。
結合ブラケットは、結合部および取付部間に衝撃エネルギ吸収部を有している。
この衝撃エネルギ吸収部は、車体前方からフロントバルクヘッドの下部に作用する衝撃荷重を吸収することができる。
【0014】
ここで、フロントバルクヘッドの下端部に車体前方から、小さい相手車両が衝突した場合、結合ブラケットに衝撃荷重が作用する。
結合ブラケットに衝撃荷重が作用した場合に、作用した衝撃荷重を結合ブラケットの衝撃エネルギ吸収部に伝えることができる。
これにより、車体前部に衝突する相手車両が小さい場合でも、衝突により発生した衝撃荷重を衝撃エネルギ吸収部を変形させて(潰して)衝撃荷重を十分に吸収することができるという利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明では、結合ブラケットの衝撃エネルギ吸収部に、結合部から取付部まで車体後方に向けて延出された中間リブを備えた。
この中間リブは、結合ブラケットに作用した衝撃荷重で車体幅方向に変形するように肉厚寸法が設定されている。
これにより、結合ブラケットに衝撃荷重が作用した場合に、中間リブを車体幅方向に変形させて衝撃荷重を十分に吸収することができるという利点がある。
【0016】
ここで、結合ブラケットは、軽合金で押出成形され、押出成形の際の押出方向が上下を向いて配置された部材である。
よって、車体後方に延出した中間リブの高さ寸法を、肉厚寸法に対して大きく設定することが可能になり、上下方向に作用する荷重に対して中間リブの剛性を高めることができる。
これにより、例えば、フロントサスペンションに入力される上下方向に作用する荷重を中間リブで良好に支えることができるという利点がある。
【0017】
さらに、中間リブの肉厚寸法を変えるだけの簡単な方法で、中間リブが車体幅方向に変形する衝撃荷重を調整することができる。
これにより、中間リブで吸収する衝撃荷重をコストを上げることなく調整することができるという利点がある。
【0018】
請求項3に係る発明では、サポートメンバの前端部を後端部に対して車体幅方向外側に配置してサポートメンバを傾斜状に設けた。
ここで、サポートメンバの前端部は結合ブラケットに取り付けられている。
よって、結合ブラケットに比較的大きな衝撃荷重が作用して、衝撃エネルギ吸収部が破断した場合に、サポートメンバの前端部を衝撃エネルギ吸収部から切り離すことができる。
【0019】
サポートメンバの前端部は車体幅方向外側に配置されているので、切り離されたサポートメンバの前端部は車体外側に移動する。
よって、サポートメンバを後端部を支点にして車体外側に揺動させることができる(逃がすことができる)。
これにより、サポートメンバがサブフレームを車体後方に押圧することを防いで、サブフレームが車体後方の車室側に侵入することを阻止することができるという利点がある。
【0020】
請求項4に係る発明では、結合ブラケットに係止部を備え、この係止部を支柱部の内壁部に当接させた。
係止部を支柱部の内壁部に当接させることで、作用した衝撃荷重で結合ブラケットが支柱部の下端部から車体外側に離れることを防止できる。
【0021】
よって、支柱部の下端部に作用した衝撃荷重を、結合ブラケットを経てサポートメンバに効率よく伝えることができる。
これにより、サポートメンバに伝えられた衝撃荷重をサポートメンバで効率よく支えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0023】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
車体前部構造10は、車体の左右側に所定間隔をおいて設けられた左右のサイドフレーム(サイドフレーム)12,13と、左右のサイドフレーム12,13の前端部12a,13aに設けられたフロントバルクヘッド14と、フロントバルクヘッド14から車体後方に向けて延出された左右のアッパメンバー16,17と、左アッパメンバー16および左サイドフレーム12間に設けられた左ダンパハウジング18と、右アッパメンバー17および右サイドフレーム13間に設けられた右ダンパハウジング19とを備えている。
【0024】
さらに、車体前部構造10は、左右のダンパハウジング18,19の下方に設けられたサブフレーム21と、サブフレーム21およびフロントバルクヘッド14間に介装されたサポート構造22とを備えている。
【0025】
左サイドフレーム12は、車体の左側部に車体前後方向を向いて設けられている。
左サイドフレーム12は、後端部12bが左アウトリガー26を介して左サイドシル(図示せず)に連結されている。
右サイドフレーム13は、左サイドフレーム12と左右対称の部材で、車体の右側部に車体前後方向を向いて設けられている。
右サイドフレーム13は、後端部13bが右アウトリガー27を介して右サイドシル(図示せず)に連結されている。
【0026】
フロントバルクヘッド14は、左右のサイドフレーム12,13の上部前端部12c,13cに設けられたアッパバルクヘッド31と、左右のサイドフレーム12,13の下部前端部12d,13dに設けられたロアバルクヘッド32とを備えている。
ロアバルクヘッド32は、左サイドフレーム12の下部前端部12dから下方に垂下された左ステイ(支柱部)33と、右サイドフレーム13の下部前端部13dから下方に垂下された右ステイ(支柱部)34と、左ステイ33の下端部33aおよび右ステイ34の下端部(フロントバルクヘッドの下部)34aに架け渡されたロアメンバー35とを備えている。
【0027】
左ステイ33は、図6に示すように、前壁部36、後壁部37、内壁部38および外壁部39で断面略矩形状に形成されている。
右ステイ34は、左ステイ33と左右対称の部材であり、前壁部、外壁部、内壁部および後壁部に左ステイ33と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0028】
左アッパメンバー16は、アッパバルクヘッド31の左端部31aから車体後方に向けて左フロントピラーまで延出され、左サイドフレーム12の上方に設けられている。
右アッパメンバー17は、左アッパメンバー16と左右対称の部材で、アッパバルクヘッド31の右端部31bから車体後方に向けて右フロントピラーまで延出され、右サイドフレーム13の上方に設けられている。
【0029】
左ダンパハウジング18は、左アッパメンバー16および左サイドフレーム12間に架け渡されることで左前輪の上方に配置され、頂部18aに左フロントダンパ(図示せず)が設けられている。
左フロントダンパに設けられた左フロントハブ(図示せず)に左前輪が設けられている。
右ダンパハウジング19は、左ダンパハウジング18と左右対称の部材で、右アッパメンバー17および右サイドフレーム13間に架け渡されることで右前輪の上方に配置され、頂部19aに右フロントダンパ(図示せず)が設けられている。
右フロントダンパに設けられた右フロントハブ(図示せず)に右前輪が設けられている。
【0030】
サブフレーム21は、ロアバルクヘッド32の後方で、かつ、左右のサイドフレーム12,13の下部に設けられている。
このサブフレーム21は、平面視で略矩形状に形成され、左右の側部41,42が左右のサイドフレーム12,13の下部にそれぞれ設けられている。
【0031】
すなわち、左側部41の前上端部41aおよび後上端部41bが左サイドフレーム12の下部中央部(下部)12eにボルト(図示せず)で締結されている。
同様に、右側部42の前上端部42aおよび後上端部42bが右サイドフレーム13の下部中央部(下部)13eにボルト(図示せず)で締結されている。
【0032】
サブフレーム21は、左側部に左ロアリンクを介して左フロントダンパが連結され、右側部に右ロアリンクを介して右フロントダンパが連結され、平面視で略矩形状の部位にパワーユニット(図示せず)が載置されている。
パワーユニットは、一例として、エンジンにトランスミッションが一体に連結されたユニットである。
【0033】
サポート構造22は、サブフレーム21の左前端部43および左ステイ33の下端部33a間に介装された左サポート手段23と、サブフレーム21の右前端部(図示せず)および右ステイ34の下端部34a間に介装された右サポート手段24とを備えている。
なお、右サポート手段24は、左サポート手段23と左右対称の部材であり、各構成部材に左サポート手段23と同じ符号を付して説明を省略する。
【0034】
図3は図1の3部拡大図、図4は図3の左サポート手段を分解した状態を示す分解斜視図である。
左サポート手段23は、左ステイ33の下端部(フロントバルクヘッド14の下部)33aに取り付けられた前結合ブラケット(結合ブラケット)51と、前結合ブラケット51に前端部52aが取り付けられるとともに、サブフレーム21の左前端部43に後端部52bが取り付けられたサポートメンバ52とを備えている。
【0035】
前結合ブラケット51は、アルミニウム合金(軽合金)で押出成形された部材である。
前結合ブラケット51は、押出成形機を用いてアルミニウム合金を矢印A方向に押し出すことにより長尺材を形成し、この長尺材を所定の間隔(高さ寸法)Hで切断することにより形成された部材である。
【0036】
この前結合ブラケット51は、左ステイ33の下端部33aに取り付けられた結合部54と、サポートメンバ52の前端部52aに取り付けられた取付部55と、結合部54および取付部55間に設けられた衝撃エネルギ吸収部56とを有する。
【0037】
図5(a)は本発明に係る結合ブラケットを示す斜視図、図5(b)は本発明に係る結合ブラケットを示す平面図である。
結合部54は、左ステイ33の下端部33aのうち、後壁部37に当接された略矩形状の結合プレート部61と、結合プレート部61の内端部61aから内壁部38に沿って突出された内側係止部(係止部)62と、結合プレート部61の外端部61bから外壁部39に沿って突出された外側係止部63とを有する。
【0038】
ここで、内側係止部62は、車体前方に向けて突出寸法S1と大きく突出され、左ステイ33の内壁部38に当接されている。
内側係止部62の突出寸法S1は、外側係止部63の突出寸法に対して大きく設定されている。
内側係止部62の突出寸法S1を外側係止部63に対して大きく設定した理由については図6で詳しく説明する。
【0039】
取付部55は、結合部54に対して車体後方に所定間隔S2をおいて配置されるとともに、結合部54に対して車体幅方向の中心60(図1参照)寄りに所定間隔S3をおいて配置されている。
この取付部55は、内側円筒部65および外側円筒部66が一体に形成され、平面視で略8字状に形成されている。
【0040】
この取付部55の車体幅方向の寸法は、結合部54の車体幅方向の寸法と略同じ大きさに形成されている。
内側円筒部65および外側円筒部66の中心には内外のねじ孔65a,66aが押出方向と同じ方向を向いてそれぞれ貫通されている。
【0041】
衝撃エネルギ吸収部56は、結合部54および取付部55間に設けられた内外のリブ71,72と、内外のリブ71,72間に設けられた中間リブ73とを有する。
内リブ71は、結合プレート部61の内端部61aから取付部55の内端部55aに向けて延出されたリブである。
【0042】
外リブ72は、結合プレート部61の外端部61bから取付部55の外端部55bに向けて延出されたリブである。
内外のリブ71,72、結合部54および取付部55で空間74が形成されている。空間74内に中間リブ73が設けられている。
中間リブ73は、結合プレート部61の中央部61cから取付部55の中央部55cに向けて延出されたリブである。
内リブ71、外リブ72および中間リブ73は、互いに平行に形成されている。
【0043】
ここで、前述したように、取付部55は、結合部54に対して車体後方に所定間隔S2をおいて配置されるとともに、結合部54に対して車体幅方向の中心60(図1参照)寄りに所定間隔S3をおいて配置されている。
よって、内リブ71、外リブ72および中間リブ73は、結合プレート部61から取付部55に向けて徐々に車体幅方向の中心60(図1参照)寄りに近づくように傾斜角θで傾斜状に形成されている。
【0044】
内外のリブ71,72は、衝撃荷重で車体幅方向に変形可能に車体幅方向の肉厚寸法T1が設定され、肉厚寸法T1に対して上下方向の高さ寸法Hが大きく設定されている。
また、中間リブ73は、衝撃荷重で車体幅方向に変形可能に車体幅方向の肉厚寸法T2が設定され、肉厚寸法T2に対して上下方向の高さ寸法Hが大きく設定されている。
【0045】
この衝撃エネルギ吸収部56は、車体前方から左ステイ33の下端部33aに衝撃荷重が作用した場合に、内リブ71、外リブ72および中間リブ73が車幅方向に変形する(潰れる)ことで衝撃荷重を吸収する部位である。
なお、内外のリブ71,72の肉厚寸法T1や中間リブ73の肉厚寸法T2に対して高さ寸法Hを大きく設定した理由については後で詳しく説明する。
【0046】
図3、図4に戻って、サポートメンバ52は、前結合ブラケット51およびサブフレーム21の左前端部43間に介装された部材である。
サブフレーム21は左前端部43に後結合ブラケット76を備えている。
後結合ブラケット76は、サブフレーム21の左前端部43から車体前方に向けて張り出された張出片である。
この後結合ブラケット76に内外の後取付孔76a,76bが形成されている。
【0047】
サポートメンバ52は、前結合ブラケット51からサポートメンバ52の左前端部43(後結合ブラケット76)に向けて延出された断面略矩形状の中空部材である。
サポートメンバ52の前端部52aに内外の前貫通孔77a,77bが上下方向に向けて貫通され、サポートメンバ52の後端部52bに内外の後貫通孔78a,78bが上下方向に向けて貫通されている。
【0048】
サポートメンバ52の前端部52aが前結合ブラケット51(取付部55)の下面に当接され、内外の前貫通孔77a,77bにボルト81,81がそれぞれ差し込まれ、内外の前貫通孔77a,77bから突出したねじ部81a,81aが内外のねじ孔65a,66aにねじ結合されている。
内外のねじ孔65a,66aは、取付部55に形成されている。
【0049】
一方、サポートメンバ52の後端部52bが後結合ブラケット76の下面に当接され、内外の後貫通孔78a,78bにボルト82,82がそれぞれ差し込まれ、内外の後貫通孔78a,78bおよび内外の後取付孔76a,76bから突出したねじ部82a,82aがナット83,83にねじ結合されている。
これにより、サポートメンバ52の前端部52aが前結合ブラケット51に連結されるとともに、サポートメンバ52の後端部52bが後結合ブラケット76に連結されている。
【0050】
図6は図3の左サポート手段を示す平面図である。
前結合ブラケット51は、後結合ブラケット76に対して車体幅方向外側に配置されている。
よって、サポートメンバ52は、前端部52aが後端部52bに対して車体幅方向外側に位置する。これにより、サポートメンバ52は、平面視で傾斜角θになるように傾斜状に設けられている。
【0051】
ここで、図1に示す右サポート手段24も、左サポート手段23と同様に、サポートメンバ52(すなわち、右側のサポートメンバ52)を備えている。
左右のサポートメンバ52は、図1に示すように、それぞれの部材が左右対称に傾斜されることで、車体前方に向けて徐々に広がるように略ハ字状に形成されている。
【0052】
図6に示すように、前結合ブラケット51は、衝撃エネルギ吸収部56の内リブ71、外リブ72および中間リブ73が結合プレート部61から取付部55に向けて徐々に車体幅方向の中心60(図1参照)寄りに近づくように傾斜角θで傾斜状に形成されている。
すなわち、前結合ブラケット51およびサポートメンバ52は同一直線上に配置されている。
【0053】
ここで、左ステイ33の下端部33aに衝撃荷重F1が作用した場合、衝撃荷重F1の一部が前結合ブラケット51を経てサポートメンバ52に衝撃荷重F2として伝わる。
前結合ブラケット51およびサポートメンバ52は、傾斜角θの傾斜状に設けられている。よって、衝撃荷重F2は、長手方向の分力荷重F2と、長手方向に対して直交する分力荷重F2とに分けられる。
【0054】
分力荷重F2は、前結合ブラケット51およびサポートメンバ52の長手方向に沿った方向に分けられた荷重である。
分力荷重F2は、前結合ブラケット51およびサポートメンバ52の長手方向に対して直交する方向に分けられた荷重である。
【0055】
長手方向に対して直交する分力荷重F2は、前結合ブラケット51を車体外側に向けて押し出すように作用する。
このため、前結合ブラケット51が左ステイ33の下端部33aから車体外側に離れようとする。
そこで、前結合ブラケット51に内側係止部62を備えて、内側係止部62を左ステイ33の内壁部38に当接させた。
【0056】
内側係止部62を左ステイ33の内壁部38に当接させることで、分力荷重F2で前結合ブラケット51が左ステイ33の下端部33aから車体外側に離れることを防止できる。
よって、左ステイ33の下端部33aに作用した衝撃荷重F1を、前結合ブラケット51を経てサポートメンバ52に効率よく伝えることができる。
これにより、サポートメンバ52に伝えられた衝撃荷重F2をサポートメンバ52で効率よく支えることができる。
【0057】
ところで、図5で説明したように、前結合ブラケット51は、結合部54および取付部55間に衝撃エネルギ吸収部56を有している。
この衝撃エネルギ吸収部56は、ロアバルクヘッド32の下部、すなわち左ステイ33の下端部33aに車体前方から作用する衝撃荷重F1を吸収可能な部位である。
前結合ブラケット51に衝撃エネルギ吸収部56を備えた例を以下に説明する。
【0058】
すなわち、車体前方から左ステイ33の下端部33aに、小さい相手車両が衝突して前結合ブラケット51に比較的小さな衝撃荷重が作用することが考えられる。
前結合ブラケット51に作用した衝撃荷重は、前結合ブラケット51の衝撃エネルギ吸収部56に伝えられる。
【0059】
衝撃エネルギ吸収部56の内リブ71、外リブ72および中間リブ73が車幅方向に変形する(潰れる)。
衝撃エネルギ吸収部56を車幅方向に変形させる(潰す)ことで、比較的小さい衝撃荷重を十分に吸収することが可能である。
【0060】
一方、車体前方から左ステイ33の下端部33aに、小さい相手車両が衝突して前結合ブラケット51に比較的大きな衝撃荷重が作用することが考えられる。
前結合ブラケット51に比較的大きな衝撃荷重が作用した場合、衝撃エネルギ吸収部56(内外のリブ71,72および中間リブ73)が破断される。
【0061】
衝撃エネルギ吸収部56を破断させることで、サポートメンバ52の前端部52aを衝撃エネルギ吸収部56から切り離すことができる。
サポートメンバ52の前端部52aは、後端部52bに対して車体幅方向外側に配置されている。
よって、切り離されたサポートメンバ52の前端部52aは車体外側に移動する。
【0062】
サポートメンバ52の前端部52aが車体外側に移動することで、サポートメンバ52を、後端部52bを支点にして車体外側に揺動させる(逃がす)ことが可能になる。
これにより、サポートメンバ52でサブフレーム21を車体後方に押圧することを防いで、サブフレーム21が車体後方の車室側に侵入することを防ぐことが可能になる。
【0063】
図5に戻って、前結合ブラケット51がアルミニウム合金で押出成形された部材であり、押出成形の際の押出方向が矢印A方向、すなわち上下を向いて配置されている。
前結合ブラケット51の衝撃エネルギ吸収部56に、結合部54から取付部55まで車体後方に向けて延出された中間リブ73が設けられている。
【0064】
ここで、前結合ブラケット51が押出成形された部材であり、押出方向が上下を向くように配置されることで、前結合ブラケット51を上下方向に張り出した状態に形成できる。
よって、中間リブ73は、車体後方に延出されるとともに、上下方向に張り出された状態に形成されている。
【0065】
この中間リブ73は、前結合ブラケット51に作用した衝撃荷重(比較的小さな衝撃荷重)で車体幅方向に変形するように肉厚寸法T2が設定されている。
これにより、前結合ブラケット51に衝撃荷重が作用した場合に、中間リブ73を車体幅方向に変形させて衝撃荷重を十分に吸収することが可能になる。
【0066】
また、前結合ブラケット51は、アルミニウム合金で押出成形され、押出成形の際の押出方向が上下を向いて配置された部材である。
よって、前述したように、車体後方に延出した中間リブ73の高さ寸法Hを、肉厚寸法T2に対して大きく設定(確保)することが可能である。
【0067】
このように、中間リブ73の高さ寸法Hを大きく確保することで、上下方向に作用する荷重に対して中間リブ73の剛性を高めることができる。
これにより、例えば、図示しないサスペンションに入力される上下方向に作用する荷重を中間リブ73で良好に支えることが可能になる。
【0068】
さらに、中間リブ73の肉厚寸法T2を変えるだけの簡単な方法で、中間リブ73の剛性を調整することができる。
よって、中間リブ73が車体幅方向に変形する衝撃荷重を簡単に調整することができる。
これにより、中間リブ73で吸収する衝撃荷重をコストを上げることなく調整することが可能になる。
【0069】
つぎに、一例として、小さい相手車両が車体前部構造10に衝突してロアバルクヘッド32に比較的小さな衝撃荷重が作用した場合を図7〜図8に基づいて説明する。
図7(a),(b)は本発明に係る車体前部構造のロアバルクヘッドに比較的小さな衝撃荷重が作用した場合を説明する図である。
(a)において、ロアバルクヘッド32に車体前方側から比較的小さな衝撃荷重F3が作用する。
【0070】
(b)において、比較的小さな衝撃荷重F3(図7(a)参照)のうち、左ステイ33の下端部33aに衝撃荷重F4が作用する。
衝撃荷重F4は前結合ブラケット51を経てサポートメンバ52に伝わる。
前結合ブラケット51およびサポートメンバ52が傾斜角θの傾斜状に設けられているので、衝撃荷重F4は、長手方向の分力荷重F4と、長手方向に対して直交する分力荷重F4とに分けられる。
【0071】
ここで、前結合ブラケット51に内側係止部62を備えて、内側係止部62を左ステイ33の内壁部38に当接させている。
よって、分力荷重F4で前結合ブラケット51が左ステイ33の下端部33aから車体外側に離れることを防止できる。
【0072】
これにより、前結合ブラケット51の衝撃エネルギ吸収部56に衝撃荷重F4が作用する。
衝撃エネルギ吸収部56に衝撃荷重F4が作用することで、衝撃エネルギ吸収部56の内外のリブ71,72および中間リブ73が車体幅方向に変形を開始する。
【0073】
図8は本発明に係る車体前部構造の衝撃エネルギ吸収部で比較的小さな衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
衝撃エネルギ吸収部56の内外のリブ71,72および中間リブ73が車体幅方向に変形する(潰れる)。
衝撃エネルギ吸収部56が車体幅方向に変形することで(潰れることで)、比較的小さな衝撃荷重F4を吸収することができる。
【0074】
つぎに、一例として、小さい相手車両が車体前部構造10に衝突してロアバルクヘッド32に比較的大きな衝撃荷重が作用した場合を図9〜図10に基づいて説明する。
図9(a),(b)は本発明に係る車体前部構造のロアバルクヘッドに比較的大きな衝撃荷重が作用した場合を説明する図である。
(a)において、ロアバルクヘッド32に車体前方側から比較的大きな衝撃荷重F5が作用する。
【0075】
(b)において、比較的大きな衝撃荷重F5のうち、左ステイ33の下端部33aに衝撃荷重F6が作用する。
衝撃荷重F6は前結合ブラケット51を経てサポートメンバ52に伝わる。
前結合ブラケット51およびサポートメンバ52が傾斜角θの傾斜状に設けられているので、衝撃荷重F6は、長手方向の分力荷重F6と、長手方向に対して直交する分力荷重F6とに分けられる。
【0076】
ここで、前結合ブラケット51に内側係止部62を備えて、内側係止部62を左ステイ33の内壁部38に当接させている。
よって、分力荷重F6で前結合ブラケット51が左ステイ33の下端部33aから車体外側に離れることを防止できる。
【0077】
ここで、衝撃荷重F6が比較的大きな荷重なので、分力荷重F6は比較的大きな荷重になる。
比較的大きな分力荷重F6が含まれた衝撃荷重F6が、前結合ブラケット51の衝撃エネルギ吸収部56に作用する。
よって、衝撃エネルギ吸収部56の内外のリブ71,72および中間リブ73に比較的大きな分力荷重F6が作用する。
【0078】
図10(a),(b)は本発明に係る車体前部構造のサポートメンバを車体外側に揺動させる例を説明する図である。
(a)において、衝撃エネルギ吸収部56の内外のリブ71,72および中間リブ73に比較的大きな分力荷重F6が作用することで、それぞれのリブ71,72,73が破断する。
内外のリブ71,72および中間リブ73を破断することで、サポートメンバ52の前端部52aを衝撃エネルギ吸収部56から切り離すことができる。
【0079】
(b)において、内外のリブ71,72および中間リブ73が破断した状態で、破断した部位を介して結合部54および取付部55が当接する。
この取付部55はサポートメンバ52の前端部52aに取り付けられている。
よって、結合部54による押圧力が取付部55を経てサポートメンバ52の前端部52aに伝わる。
【0080】
ここで、サポートメンバ52の前端部52aは、後端部52bに対して車体幅方向外側に配置されている。
よって、切り離されたサポートメンバ52の前端部52aは車体外側に移動を開始する。
【0081】
サポートメンバ52の前端部52aが車体外側に移動することで、サポートメンバ52を、後端部52bを支点にして車体外側に矢印Bの如く揺動させる(逃がす)ことが可能になる。
これにより、サポートメンバ52でサブフレーム21を車体後方に押圧することを防いで、サブフレーム21が車体後方の車室側に侵入することを防ぐことができる。
【0082】
なお、前記実施の形態では、衝撃エネルギ吸収部56による衝撃荷重を中間リブ73の肉厚寸法T2を変えて調整する例について説明したが、これに限らないで、内外のリブ71,72の肉厚寸法T1を変えて調整することも可能である。
【0083】
また、前記実施の形態では、軽合金としてアルミニウム合金を例示したが、これに限定しないで、チタン合金などの他の軽合金を用いることも可能である。
【0084】
さらに、前記実施の形態では、結合ブラケット51として、軽合金を押出成形した部材を用いた例について説明したが、これに限らないで、結合ブラケット51を鋳造などの他の製造方法で形成することも可能である。
【0085】
また、前記実施の形態で示したフロントバルクヘッド14、サブフレーム21、左ステイ33、右ステイ34、前結合ブラケット51、サポートメンバ52、結合部54、取付部55、衝撃エネルギ吸収部56、内側係止部62、中間リブ73などは、例示した形状に限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の車体前部構造は、サイドフレームにフロントバルクヘッドを設け、この後方でかつサイドフレームの下部にサブフレームを設けた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図3】図1の3部拡大図である。
【図4】図3の左サポート手段を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図5】(a)は本発明に係る結合ブラケットを示す斜視図、(b)は本発明に係る結合ブラケットを示す平面図である。
【図6】図3の左サポート手段を示す平面図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造のロアバルクヘッドに比較的小さな衝撃荷重が作用した場合を説明する図である。
【図8】本発明に係る車体前部構造の衝撃エネルギ吸収部で比較的小さな衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造のロアバルクヘッドに比較的大きな衝撃荷重が作用した場合を説明する図である。
【図10】本発明に係る車体前部構造のサポートメンバを車体外側に揺動させる例を説明する図である。
【符号の説明】
【0088】
10…車体前部構造、12…左サイドフレーム(サイドフレーム)、12a…左サイドフレームの前端部、12e…左サイドフレームの下部中央部(下部)、13…右サイドフレーム(サイドフレーム)、13a…右サイドフレームの前端部、13e…右サイドフレームの下部中央部(下部)、14…フロントバルクヘッド、21…サブフレーム、22…サポート構造、23…左サポート手段、24…右サポート手段、33…左ステイ(支柱部)、33a…左ステイの下端部(フロントバルクヘッドの下部)、34…右ステイ(支柱部)、34a…右ステイの下端部(フロントバルクヘッドの下部)、38…内壁部、51…前結合ブラケット(結合ブラケット)、52…サポートメンバ、52a…サポートメンバの前端部、52b…サポートメンバの後端部、54…結合部、55…取付部、56…衝撃エネルギ吸収部、60…車体幅方向の中心、62…内側係止部(係止部)、73…中間リブ、H…高さ寸法、T2…中間リブの肉厚寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向を向いてサイドフレームが設けられ、前記サイドフレームの前端部にフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントバルクヘッドの後方でかつ前記サイドフレームの下部にサブフレームが設けられた車体前部構造において、
前記フロントバルクヘッドの下部に取り付けられた結合ブラケットと、
前記結合ブラケットに前端部が取り付けられるとともに、前記サブフレームに後端部が取り付けられたサポートメンバと、
を備え、
前記結合ブラケットは、
前記フロントバルクヘッドに取り付けられた結合部と、
前記サポートメンバの前端部に取り付けられた取付部と、
前記結合部および前記取付部間に設けられ、車体前方から前記フロントバルクヘッドの下部に作用する衝撃荷重を吸収する衝撃エネルギ吸収部と、
を有することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記結合ブラケットは、
軽合金で押出成形され、押出成形の際の押出方向が上下を向いて配置された部材であって、
前記衝撃エネルギ吸収部に、前記結合部から前記取付部まで車体後方に向けて延出された中間リブを有し、
前記中間リブは、
前記衝撃荷重で車体幅方向に変形可能に車体幅方向の肉厚寸法が設定され、
前記肉厚寸法に対して上下方向の高さ寸法が大きく設定されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記サポートメンバは、
前記前端部が前記後端部に対して車体幅方向外側に位置するように、平面視で傾斜状に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記フロントバルクヘッドに、前記サイドフレームの前端部から下方に延出された支柱部を備え、
前記支柱部の下端部に前記結合ブラケットが設けられ、
前記結合ブラケットは、前記支柱部のうち、車体中心側に設けられた内壁部に当接する係止部を有することを特徴とする請求項3記載の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−58580(P2010−58580A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224617(P2008−224617)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】