説明

転写シート及びこれを用いた化粧材

【課題】層間密着、塗料の硬化収縮に耐え、かつ印刷時に転写シートを巻き取ったときにインキが基材シートから剥離する通称ブロッキングという現象が起きにくい転写シート及びこれを用いた化粧材を提供すること。
【解決手段】基材シート上に転写性を有するガラス転移点5℃以下のインキからなる転写層を設けてなる転写シートであって、前記インキ中にメジウム100重量部に対してシリカを10〜100重量部を含有したことを特徴とし、化粧材基材上に下地塗料層を設け、転写シートの転写層を転写し、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗等の建築物の内装、壁、天井、キッチンバックパネル、ユニットバス壁面等の表面に用いる化粧材およびこれに用いる転写シートであって、特には印刷時に巻き取った後ブッロッキングしにくく、転写後の密着の良い転写シート及びこれを用いた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷時に転写シートを巻き取ったときにインキが基材シートから剥離する通称ブロッキングという現象がおこることが多かった。表面保護層/転写層/下地塗膜の層間密着、塗料の硬化収縮に耐えるために、転写層のインキのガラス転移点を温度 20±15℃、相対湿度 65±20%RH(JIS Z 8703)より低い氷点下以下にすれば層間密着、塗料の硬化収縮に耐えるようになるが、印刷時に転写シートを巻き取ったときにインキが基材シートから剥離する通称ブロッキングという現象がおこることが多かった。
【0003】
インキとしては、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、ウレタン系樹脂、及びこれらの混合物のインキが知られている。この中で、印刷時にブロッキングしにくく、2液ウレタン樹脂を塗工した無機系基材に転写した後に密着が良いインキがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4212660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、層間密着、塗料の硬化収縮に耐え、かつ印刷時に転写シートを巻き取ったときにインキが基材シートから剥離する通称ブロッキングという現象が起きにくい転写シート及びこれを用いた化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決したものでありすなわちその請求項1記載の発明は、基材シート上に転写性を有するガラス転移点5℃以下のインキからなる転写層を設けてなる転写シートであって、前記インキ中にメジウム100重量部に対してシリカを10〜100重量部を含有したことを特徴とする転写シートである。
【0007】
またその請求項2記載の発明は、化粧材基材上に下地塗料層を設け、請求項1記載の転写シートの転写層を転写し、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けてなることを特徴とする化粧材である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明は、インキのガラス転移点を5℃未満とすることで層間密着にすぐれたものとなり、かつインキ中にシリカを10−100重量部含有することでブロッキングを防止することが可能となった。
【0009】
またその請求項2記載の発明により、請求項1記載の転写シートを用いて化粧材を設ける際の表面保護層に用いる電離放射線硬化型樹脂の硬化収縮に耐えるインキとなり意匠性の優れた化粧材を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の転写シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。
図1に、本発明の転写シートの一実施例の断面の構造を示す。転写シートは基材シート1と表面層2と転写層3とからなる。
【0012】
基材シート1としては、後述する転写層3を、転写性を有しつつ印刷などにより設けることが可能とするものであれば特に限定されるものではない。特には坪量30〜100g/m2程度の上質紙が好適である。
【0013】
表面層2は基材シート1の表面にラミネートあるいはコーティングにより設けられる。表面層に用いられるものとしてはポリオレフィン系樹脂たとえばポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポロメチルペンテン樹脂などが使用可能である。これらの単体あるいは混合物からなる単層あるいは複層のものが適用可能である。
【0014】
転写層3は本発明で定められるインキが用いられる。用いるインキのバインダーの樹脂系としては、要求品質により塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリビニルブチラール樹脂系、消化綿系樹脂及びこれらの混合物等が使える。転写層3はグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インキジェット法、リソグラフィー法等の公知の方法により設け得る。
【0015】
本発明で用いるインキのガラス転移点は、インキ密着を考慮して5℃未満のものを用いる。また、タックを切るためにインキ中の体質顔料を適宜添加するのが好ましい。そして、ブロッキングを防止するために、各色インキのメジウム樹脂100重量部中にシリカを10〜100重量部添加する。絵柄の濃度を低くする為の透明のインキとして使うメジウムインキにはメジウム樹脂100重量部中にシリカを50〜100重量部添加するのが好ましい。共に10重量部未満ではブロッキングしやすくなり、100重量部を越えるとインキ層間密着が弱くなる。
【0016】
また、インキ中には、被転写材であるウレタン樹脂塗料、アクリル系樹脂の紫外線硬化型樹脂への熱転写性を確保するために、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂またはアクリル樹脂を適宜添加するのが好ましい。具体的なそれぞれの添加量としては、インキ樹脂分100重量部中、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂が1〜30重量部程度であることが好ましい。
【0017】
転写層3としては、例えば住宅、店舗等の建築物や、電車、自動車等の車両や、飛行機、船舶等の内装材や外装材、床材等の表面を化粧するための化粧柄や、模様、彩色、木目柄、目地、木目導管柄等の絵柄模様が適用可能であるが、特に限定されるものではない。
【0018】
図2に、本発明の化粧材の一実施例の断面の構造を示す。化粧材基材4に下地塗料層5、前記転写シートの転写層3、表面保護層6が設けられてなる。
【0019】
化粧材基材4としては、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、石膏スラグ板等の無機板状基材が使用可能であり、この表面をシーラー処理、表面研磨処理等を施したものであって、厚みとしては5〜25mm程度が好適である。表面はフラットでも凹凸でも良い。
【0020】
下地塗料層5としては、ポリイソシアネートを硬化剤としたウレタン系の塗料や紫外線硬化型塗料が好適に用いられる。紫外線硬化型塗料の場合は、酸素によって硬化阻害を生じないものを使用する。ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリル酸エステルオリゴマー、またはメタクリル酸エステルオリゴマーに、単官能または多官能のアクリル酸エステルモノマーまたはメタクリル酸エステルモノマーを加えたものが使用できる。また、マット剤、表面に浮き出るワックスなどの添加剤を添加し、光開始剤を添加しても良い。
【0021】
転写方法としては、転写シートの転写層3側と化粧材の下地塗料層5側とを合わせて、加熱したシリコンゴムロール等で加熱加圧することで転写可能である。
【0022】
表面保護層6としては、公知の電離放射線硬化型樹脂からなるものが用いられる。例えば前記紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂が使用可能である。透明であれば転写絵柄が表面からより立体的に見えるようになり、意匠的にも好ましいものとなる。表面保護層6を設ける方法としては、これに溶剤を配合して0.01Pa・s〜9Pa・s(数十から数千cps程度)に調整し、塗工により設ける。塗布量は5〜数百g/m2が適当であり、通常は20〜150g/m2が好ましい。
【実施例1】
【0023】
<転写シートの作成1>
基材シート1として、坪量52.3g/m2のフォーム印刷用紙を用い、表面層2として厚さ20μmのポリプロピレン樹脂シートと貼り合わせた。
【0024】
<インキの作成>
ウレタン樹脂85重量部に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂15重量部を添加したものに対してシリカ10重量部を添加して、これをアルコールとエステル系溶剤で溶解して黄、赤、藍、墨のグラビアインキを作成した。ガラス転移度は4℃であった。また、同様にシリカの添加量を50重量部とした透明メジウムのグラビアインキを作成した。
【0025】
<転写シートの作成2>
前記基材シート1の表面層2側に、前記インキを、グラビア印刷法にて1μmの印刷膜厚の線状柄のパターンを印刷して、転写層3とした。印刷時に巻き取った転写シートを常温で7日放置後巻替え検査をしたが、ブロッキングは発生しなかった。
【0026】
<化粧材の作成1>
化粧材基材4として厚さ5mmの珪酸カルシウム板を用い、ウレタン系樹脂によるシーラーを施した。その後、下地塗料層5の下地塗料として、紫外線硬化型樹脂(ダイセルユーシービー(株)製:「エベクリル810」)100部、2官能アクリル酸エステルモノマー40部、顔料(酸化チタン)80部、光開始剤(2エトキシ−2フェニルアセトフェノン)0.5部からなるものを用い、これを200cpsに調整してフローコーターにて50g/m2塗布した後、ライン速度10m/minで、120W/cmの高圧水銀灯6灯で紫外線を照射し表面と内部を硬化させた。常温雰囲気中で指にて指触乾燥を確認した。
【0027】
<転写層3の転写>
前記転写シートの転写層3側と下地塗料層5側とを合わせてゴム硬度80度で160℃に加熱したシリコンゴムロールで線圧20kgf/cm、ライン速度10m/minで転写した。
【0028】
<表面保護層の作成>
表面保護層6として、紫外線硬化型樹脂(ダイセルユーシービー(株)製:「エベクリル810」)100部、2官能アクリル酸エステルモノマー40部、ワックス(大日本インキ化学工業(株)製:「RS−401」)1部、光開始剤(チバガイギー(株)製:「ダロキュア#1173」)0.5部を用い、これを前記転写層3の上から40g/m2塗布し、空気中で120W/cmの高圧水銀灯6灯で紫外線を照射して硬化させて化粧材を得た。得られた化粧材は、各層が完全に密着して一体化しており、耐汚染性(5%水酸化ナトリウム水溶液6時間被覆で問題無し)、耐光性(フェードメーター(スガ試験機株式会社製200時間変色無し)等の諸物性に優れたものであった。
【0029】
<比較例1>
前記インキのシリカの部数を3重量部とした他は実施例1と同様にして転写シートを作成し多。印刷時に巻き取った転写シートを常温で7日放置後巻替え検査したらブロッキングしていた。
【0030】
<比較例2>
前記インキのシリカの部数を130重量部とした他は実施例1と同様にして転写シートを作成した。印刷時に巻き取ったらブロッキングは問題なかったが、実施例1と同様にして化粧材を作成したところ、紫外線硬化型樹脂の硬化収縮により転写層と表面保護層6との界面剥離が発生した。
【0031】
<ブロッキング試験方法>
転写シートの印刷面/印刷面、及び転写シート印刷面/転写シート裏面を重ねた。次に9.8N/cm2の荷重をかけた後に40℃90%RH(相対湿度)の雰囲気中に24時間おいた後に各層間のインキのブロッキングの度合いを外観観察した。
【0032】
<塗膜密着試験方法>
化粧材の表面保護層6に2mm間隔の碁盤目状にカッターにて切れ目を入れた後、幅25のセラファンテープを貼り1分経ってから45度方向に引張り、剥離した個数を調べた。剥離が0個から5個は合格:○、6個以上は不合格:×とした。以上の結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、住宅、店舗等の建築物の内装、壁、天井、キッチンバックパネル、ユニットバス壁面等の表面に用いる化粧材およびそれに模様などを転写する転写シートであって、印刷時に巻き取った後ブッロッキングしにくく、転写後の密着より転写シート及び化粧材であり、特に転写法を用いた意匠性の高い化粧板等を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…基材シート
2…表面層
3…転写層
4…化粧材基材
5…下地塗料層
6…表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に転写性を有するガラス転移点5℃以下のインキからなる転写層を設けてなる転写シートであって、前記インキ中にメジウム100重量部に対してシリカを10〜100重量部を含有したことを特徴とする転写シート。
【請求項2】
化粧材基材上に下地塗料層を設け、請求項1記載の転写シートの転写層を転写し、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設けてなることを特徴とする化粧材。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−183662(P2011−183662A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51201(P2010−51201)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】