説明

転写ロール、転写装置、及び画像形成装置

【課題】転写ロールの最外層にイオン導電剤を含む構成において、画像形成の速度が上がった場合でも広い温度範囲及び湿度範囲で放電欠陥を抑制することができる転写ロール、転写装置、及び画像形成装置を得る。
【解決手段】一次転写ロール42は、電圧が印加される円柱状の芯金46と、イオン導電剤を含み芯金46の外周面を覆って形成された最内層47と、導電性フィラーを分散した樹脂を含み最内層47の外周面に積層された中間層48と、イオン導電剤を含み中間層48の外周面に積層された最外層49と、を有している。ここで、中間層48によって、温度及び湿度が変化したときの電気抵抗の変化が抑制される。さらに、最外層49によって、電荷の蓄積が抑制される。これにより、画像形成の速度が上がった場合でも広い温度範囲及び湿度範囲で放電欠陥を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ロール、転写装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の導電性ロールは、軸芯金と、軸芯金の外周に設けられイオン導電剤を含む高分子エラストマーからなるイオン導電性層と、イオン導電性層の外周に設けられ電子導電剤を含む高分子エラストマーからなる電子導電性層と、電子導電性層の外周に設けられたトナー汚染防止層と、を有している。
【0003】
特許文献2の現像ロールは、軸体の外周に沿って順に最内層、中間層、最外層が積層された構成となっており、中間層の電気抵抗に比べて最外層の電気抵抗が高抵抗となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−179539号公報
【特許文献2】特開2004−302126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、転写ロールの最外層にイオン導電剤を含む構成において、画像形成の速度が上がった場合でも広い温度範囲及び湿度範囲で放電欠陥を抑制することができる転写ロール、転写装置、及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る転写ロールは、電圧が印加される電極材と、イオン導電剤を含み前記電極材の外周面を覆って形成された最内層と、導電性フィラーを分散した樹脂を含み前記最内層の外周側に積層された中間層と、イオン導電剤を含み前記中間層の外周側に積層された最外層と、を有する。
【0007】
本発明の請求項2に係る転写ロールは、前記中間層の電気抵抗が前記最外層の電気抵抗よりも高い。
【0008】
本発明の請求項3に係る転写ロールは、前記最内層及び前記最外層の厚さよりも前記中間層の厚さが薄い。
【0009】
本発明の請求項4に係る転写装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写ロールと、被転写媒体に転写される現像剤像の極性とは逆の極性の電圧を前記電極材に印加する電圧印加手段と、を有する。
【0010】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、現像剤像を外周面に保持する像保持部材と、前記像保持部材で保持された現像剤像を前記被転写媒体に転写する請求項4に記載の転写装置と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、最外層にイオン導電剤を含む構成において、導電性フィラーを含む中間層を有していない構成に比べて、画像形成の速度が上がった場合でも広い温度範囲及び湿度範囲で放電欠陥を抑制することができる。
【0012】
請求項2の発明は、中間層の電気抵抗が最外層の電気抵抗よりも低い構成に比べて、温度及び湿度が変化したときの放電欠陥を抑制することができる。
【0013】
請求項3の発明は、最内層及び最外層の厚さに比べて中間層の厚さが厚い構成に比べて、中間層での電気抵抗のばらつきを低減することができる。
【0014】
請求項4の発明は、導電性フィラーを含む中間層を有していない転写ロールを備えた構成に比べて、転写ロール外周面での放電による転写不良を抑制することができる。
【0015】
請求項5の発明は、導電性フィラーを含む中間層を有していない転写ロールを備えた構成に比べて、転写不良による画質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成部及び一次転写ユニットの構成図である。
【図3】(A)本発明の実施形態に係る一次転写ロールの軸方向と直交する方向の断面図である。(B)本発明の実施形態に係る一次転写ロールの軸方向と平行な方向の断面図である。
【図4】(A)比較例1の一次転写ロールの断面図である。(B)比較例2の一次転写ロールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る転写ロール、転写装置、及び画像形成装置の一例について説明する。
【0018】
図1には、画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、装置本体としての筐体12を有している。そして、筐体12内には、矢印A方向(図示の反時計回り方向)に周回移動する円筒状の被転写媒体及び像保持部材の一例としての中間転写ベルト14と、該中間転写ベルト14の移動方向に沿って配列された複数の画像形成部20Y、20M、20C、20Kと、各画像形成部20Y、20M、20C、20Kに対応して中間転写ベルト14の内側に設けられた後述する転写装置の一例としての一次転写ユニット40Y、40M、40C、40Kと、画像形成装置10の各部を制御する主制御部16と、が設けられている。
【0019】
画像形成部20Yは、円筒状で矢印R方向(図示の時計回り方向)に回転すると共に外周面に現像剤像(トナー像)を保持する像保持部材の一例としての感光体22Yと、感光体22Yの外周面を帯電する帯電ロール24Yと、帯電された感光体22Yの外周面をY色(イエロー色)の画像情報に基づいて変調された露光光LYにより露光し、感光体22Y上に静電潜像を形成する露光装置26Yと、露光装置26Yの動作を制御する像形成制御部27Yと、Y色現像剤(トナー)を保持する現像ロール28Yを有し感光体22Y上に形成された静電潜像をY色トナーで現像してトナー像(Y色)を形成する現像器32Yと、を含んで構成されている。なお、感光体22Yの外周面と対向する位置には、トナー画像の一次転写後において感光体22Yの表面の残留電荷を除去する除電器が設けられているが、この除電器の図示は省略している。
【0020】
ここで、画像形成部20M、20C、20Kは、画像形成部20Yとトナーの色が異なるだけで他の構成は同じであるため、各部材の符号の末尾にトナー色を表す添字M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)を付与して区別し、説明は省略する。なお、以後の説明では、トナー色(Y、M、C、K)毎の区別が不要のとき、添字Y、M、C、Kを省略した符号で説明する場合がある。
【0021】
主制御部16は、記録用紙Pに形成する画像のデータを含む印刷データが、入出力部(図示省略)を介して入力されるようになっている。そして、この印刷データは、主制御部16において各色(Y、M、C、K)の画像情報に分解された後に、各色に対応する像形成制御部27Y、27M、27C、27Kに出力される。また、像形成制御部27の制御によって、各画像形成部20における露光装置26が動作制御され、露光光Lが変調されるようになっている。なお、画像形成装置10に設けられた装置各部は、主制御部16に電気的に接続されている。
【0022】
一方、中間転写ベルト14は、一例として、ポリイミド樹脂を主成分として形成された円筒状の部材であり、導電剤としてカーボンブラックを含むことにより、表面抵抗率が9logΩ/□から12logΩ/□までに調整されている。中間転写ベルト14の内側には、矢印A方向の上流側から下流側へ向けて順番に、中間転写ベルト14を移動させる駆動ロール34と、後述する一次転写ロール42Y、42M、42C、42Kと、中間転写ベルト14に張力を付与する張力付与ロール36と、中間転写ベルト14を内側から支持する支持ロール35と、中間転写ベルト14の二次転写位置の内側に配置されたバックアップロール38と、がそれぞれ矢印−R方向(図示の反時計回り方向)回転可能に設けられている。そして、中間転写ベルト14は、駆動ロール34、一次転写ロール42Y、42M、42C、42K、張力付与ロール36、支持ロール35、及びバックアップロール38に巻き掛けられて支持されており、駆動ロール34が駆動手段(図示省略)によって回転駆動されることで、矢印A方向に周回移動するようになっている。
【0023】
また、中間転写ベルト14の外側には、中間転写ベルト14と接触して表面をクリーニングするベルトクリーナ15が設けられている。さらに、中間転写ベルト14を挟んでバックアップロール38側とは反対側には、中間転写ベルト14上のトナー画像を記録用紙Pに転写する二次転写ロール41が設けられている。二次転写ロール41は、電圧印加手段(図示省略)が接続されており、トナーと逆極性の電圧が印加されると共にバックアップロール38との電位差によりトナー画像を記録用紙Pに転写させる。
【0024】
筐体12内の下部で中間転写ベルト14の下側には、記録用紙Pを収納する箱状の収納部17が設けられている。収納部17には、二次転写ロール41に近い側の上方に記録用紙Pを1枚ずつ送り出す送出ロール17Aが回転可能に設けられている。また、筐体12内には、送出ロール17Aから二次転写ロール41を経由して筐体12の上面に繋がる用紙搬送路19が設けられている。そして、用紙搬送路19の記録用紙Pの搬送方向における二次転写ロール41よりも下流側には、記録用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着部30が設けられている。
【0025】
定着部30は、記録用紙Pのトナー画像面側に配置され内部に熱源を有する定着ロール31Aと、定着ロール31Aに向けて記録用紙Pを加圧する加圧ロール31Bと、を有している。そして、記録用紙Pが定着ロール31Aと加圧ロール31Bとの接触部(ニップ部)に進入して加熱及び加圧されることで、トナー画像が記録用紙Pに定着される。
【0026】
次に、一次転写ユニット40について説明する。
【0027】
図2に示すように、一次転写ユニット40は、転写ロールの一例としての一次転写ロール42と、一次転写ロール42の後述する芯金46(図3(A)参照)に電圧を印加する電圧印加手段の一例としての電圧印加部44と、を含んで構成されている。一次転写ロール42は、ベアリング(図示省略)により両端部が回転可能に支持され、外周面が中間転写ベルト14の内周面と接触している。また、電圧印加部44は、中間転写ベルト14に転写されるトナー像Tの極性(一例として、マイナス極性)とは逆の極性(プラス極性)の電圧を芯金46に印加するようになっている。
【0028】
ここで、感光体22は接地されており、一次転写ロール42の芯金46(図3(A)参照)には、電圧印加部44によりプラス極性の電圧が印加される。これにより、感光体22の電位と一次転写ロール42の電位との間には、電位差が生じている。そして、この電位差で形成される電界の作用によって、感光体22に保持されているトナーT(トナー画像)が、中間転写ベルト14に転写される。
【0029】
次に、画像形成装置10の画像形成工程について説明する。
【0030】
図1に示すように、画像形成装置10では、記録用紙Pに形成する画像の画像データを含む印刷データが主制御部16へ入力されると、この印刷データが、主制御部16において各色(Y、M、C、K)の画像情報に分解され、各色に対応する像形成制御部27に出力される。そして、像形成制御部27の制御によって、各画像形成部20における露光装置26が制御され、各色に対応した露光光Lが変調される。さらに、この変調された露光光Lは、帯電ロール24で帯電された感光体22の表面に照射される。このようにして、各感光体22表面に露光光Lが照射されることで、各感光体22上には、対応する色の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0031】
続いて、各現像器32によって、各感光体22上の静電潜像がトナーにより現像され、各感光体22上にトナー画像が形成される。そして、各感光体22上に形成されたトナー画像は、一次転写ユニット40によって、中間転写ベルト14の外周面に順次、一次転写される。なお、トナーの一次転写が終了した各感光体22は、表面に付着した残留トナーなどの付着物がクリーニング手段(図示省略)によって除去されると共に、一例として感光体22への光照射を行う除電器(図示省略)により残留電荷が除去される。
【0032】
続いて、中間転写ベルト14の外周面に順次、一次転写されて重ねられたトナー画像は、中間転写ベルト14の移動によって二次転写ロール41まで搬送される。そして、このトナー画像は、収納部17から搬送されてきた記録用紙Pに二次転写ロール41によって二次転写される。さらに、記録用紙Pに二次転写されたトナー画像は、定着部30により記録用紙P上に定着される。このようにしてトナー画像が定着された記録用紙Pは、筐体12の上面に排出される。
【0033】
次に、一次転写ロール42について説明する。
【0034】
図3(A)、(B)に示すように、一次転写ロール42は、電圧印加部44(図2参照)により電圧が印加される円柱状の電極材の一例としての芯金46と、イオン導電剤を含み芯金46の外周面を覆って形成された最内層47と、導電性フィラーを分散した樹脂を含み最内層47の外周側(本実施形態では外周面)に積層された中間層48と、イオン導電剤を含み中間層48の外周側(本実施形態では外周面)に積層された最外層49と、を有している。
【0035】
また、一次転写ロール42は、最内層47の電気抵抗(体積抵抗)をR1、中間層48の電気抵抗(体積抵抗)をR2、最外層49の電気抵抗(体積抵抗)をR3とすると、一例として、R1<R2、R2>R3となっている。即ち、最外層49の電気抵抗R3よりも中間層48の電気抵抗R2の方が高くなっている。
【0036】
なお、最内層47、中間層48、最外層49の電気抵抗R1、R2、R3(体積抵抗の常用対数値)の測定は、3本の芯金46に別々に最内層47、中間層48、最外層49を形成して測定を行った。また、電気抵抗R1、R2、R3(体積抵抗)の測定は、測定対象の層を備えたロールをその両端に各々4.9Nの荷重がかかるように銅板表面に載せ、微小電流測定器(Advantest社製R8320)を用い、28℃−85%RHの環境下、及び10℃−15%RHの環境下において、芯金46と銅板との電圧差が1000Vとなる電圧(V)を印加し10秒後の電流値(I)を測定して、R=V/Iから求めた。最内層47、中間層48、最外層49については、それぞれ異なる膜厚として測定している。
【0037】
ここで、最内層47の電気抵抗R1は、高温高湿下(28℃−85%RHの環境下)で5.0LogΩから7.0LogΩまで、低温低湿下(10℃−15%RHの環境下)で7.0LogΩから9.0LogΩまでの範囲とするのがよい。そして、中間層48の電気抵抗R2は、高温高湿下で6.0LogΩから8.0LogΩまで、低温低湿下で6.0LogΩから8.0LogΩまでの範囲とするのがよい。さらに、最外層49の電気抵抗R3は、高温高湿下、低温低湿下ともに、6.0LogΩ以下とするのがよい。
【0038】
加えて、一次転写ロール42は、最内層47の膜厚(厚さ)をd1、中間層48の膜厚をd2、最外層49の膜厚をd3とすると、一例として、d1>d2、d2<d3となっている。即ち、中間層48の膜厚d2は、最内層47の膜厚d1及び最外層49の膜厚d3よりも薄くなっている。なお、最内層47の膜厚d1は1mmから25mmまで、中間層48の膜厚d2は10μmから400μmまで、最外層49の膜厚d3は0.5mmから5mmまでとするのがよい。
【0039】
(芯金46)
芯金46は、一次転写ロール42の電極及び支持部材として機能する円柱状の部材であり、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼(SUS)などの金属又は合金;クロム、ニッケルなどで鍍金処理を施した鉄;導電性樹脂;などの導電性を有する材質で構成される。ここでは一例として、SUSを用いている。
【0040】
(最内層47)
最内層47は、ゴム材料(弾性材料)と、イオン導電剤と、必要に応じて、その他の添加剤と、を含んで構成される。
【0041】
ゴム材料(弾性材料)としては、少なくとも化学構造中に二重結合を有する、所謂、弾性材料が挙げられる。具体的には、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
【0042】
イオン導電剤としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(例えば、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。なお、イオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。イオン導電剤の含有量は、一例として、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下の範囲で設定される。
【0043】
その他の添加剤としては、発泡剤、発泡助剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)等の通常、弾性層に添加され得る材料が挙げられる。
【0044】
(中間層48)
中間層48は、樹脂材料と、導電性フィラー(電子導電剤)と、必要に応じて、その他の添加剤と、を含んで構成される。
【0045】
樹脂材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂が挙げられる。
【0046】
導電性フィラーとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの粉末が挙げられる。具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。なお、導電性フィラーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電性フィラーの含有量は、一例として、ゴム材料100質量部に対して、30質量部以上〜60質量部以下の範囲で設定される。
【0047】
その他の添加剤としては、最内層47で説明した材料と同様のものが挙げられる。
【0048】
(最外層49)
最外層49は、ゴム材料(弾性材料)と、イオン導電剤と、導電性フィラーと、必要に応じて、その他の添加剤と、を含んで構成される。なお、一例として、ゴム材料及びイオン導電剤は、最内層47と同じ材料を用いており、導電性フィラーは、中間層48と同じ材料を用いている。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明との比較を行うため、比較例1、2を用いている。
【0050】
(本実施例)
図3(A)、(B)に示すように、一例として、φ8mmの芯金46上に既述のイオン導電剤を添加したニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混成物を膜厚d1=14mmとなる様に押し出し製法にて成形、加硫を行い、基材発泡層である最内層47を形成した。続いて、カーボンブラックを分散したポリイミド樹脂を膜厚d2=100μmとなる様にフローコート製法で塗布、乾燥、焼成を行い、中間層48を形成した。続いて、既述のイオン導電剤及びカーボンブラックを添加したニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混成物を膜厚d3=16mmとなる様に押し出し製法にて成形、加硫を行い、最外発泡層である最外層49を形成した。
【0051】
上記の一次転写ロール42について、平板電極上で体積抵抗を測定(既述の方法で測定)したところ、表1に示すように、低温低湿下(温度10℃、湿度15RH%)で7.5LogΩとなり、高温高湿下(温度28℃、湿度85RH%)で7.0LogΩとなった。また、最内層47、中間層48、及び最外層49を上記と同様の製法で別々に作成し、平板電極上で体積抵抗を測定したところ、最内層47は、低温低湿下で7.0LogΩ、高温高湿下で5.5LogΩとなった。そして、中間層48は、低温低湿下及び高温高湿下で7.0LogΩ(ほとんど変化無し)となった。さらに、最外層49は、低温低湿下及び高温高湿下で5.0LogΩ以下となった。
【表1】

【0052】
(比較例1)
図4(A)に示すように、比較例1の一次転写ロール60では、φ8mmの芯金46上に既述のイオン導電剤を添加したニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混成物を膜厚14mmとなる様に押し出し製法にて成形、加硫を行い、基材発泡層である内層62を形成した。続いて、カーボンブラックを分散したポリイミド樹脂を膜厚100μmとなる様にフローコート製法で塗布、乾燥、焼成を行い、外層64を形成した。
【0053】
比較例1の一次転写ロール60について、平板電極上で体積抵抗を測定(既述の方法で測定)したところ、表1に示すように、低温低湿下で7.5LogΩとなり、高温高湿下で7.0LogΩとなった。また、内層62及び外層64を上記と同様の製法で別々に作成し、平板電極上で体積抵抗を測定したところ、内層62は、低温低湿下で7.0LogΩとなり、高温高湿下で5.5LogΩとなった。また、外層64は、低温低湿下及び高温高湿下で7.0LogΩとなった。
【0054】
(比較例2)
図4(B)に示すように、比較例2の一次転写ロール70では、φ8mmの芯金46上に既述のイオン導電剤を添加したニトリルゴムとエピクロルヒドリンゴムの混成物を膜厚14mmとなる様に押し出し製法にて成形、加硫を行い、基材発泡層72を形成した。
【0055】
比較例2の一次転写ロール70について、平板電極上で体積抵抗を測定(既述の方法で測定)したところ、表1に示すように、低温低湿下で7.0LogΩとなり、高温高湿下で5.5LogΩとなった。
【0056】
次に、得られた一次転写ロール42(実施例)、一次転写ロール60(比較例1)、一次転写ロール70(比較例2)を交換して画像形成装置10(図1参照)に搭載し、放電欠陥、画質ムラの評価を行った。
【0057】
(放電欠陥、画質ムラの評価)
富士ゼロックス社製A4紙を使用し、文字とパッチのある総合パターンにて合計80万枚プリントアウトした後、全面ハーフトーン画像をプリントして、放電欠陥及び画質ムラの官能評価(目視評価)を行なった。放電欠陥は、白点(白抜け)の有無として検出される評価項目であり、○:良好、×:悪い、の2段階で評価した。また、画質ムラは、画像の濃淡の違いで検出される評価項目であり、○:良好、×:悪い、の2段階で評価した。
【0058】
なお、放電欠陥及び画質ムラの評価は、画像形成装置10におけるA4紙の縦方向の搬送速度を30ppm(30枚/分)、60ppm(60枚/分)の2通りとし、環境条件を高温高湿(温度28℃、湿度85RH%)、低温低湿(温度10℃、湿度15RH%)の2通りとして、合計4通りの組合せにおいて行った。
【0059】
(評価結果)
表2に放電欠陥、画質ムラの評価結果を示す。
【表2】

【0060】
表1の結果から、本実施例は、比較例2に比べ、体積抵抗の環境条件による変動が小さいことが分かった。なお、比較例1とは同様の結果であった。このことから、本実施例では、中間層48として樹脂層が設けられていることで、環境変動時の最内層47の体積抵抗変化が、全体(最内層47、中間層48、及び最外層49)の体積抵抗変化として表れにくくなっていると推定される。
【0061】
次に、表2の結果から、本実施例は、比較例1、2に比べ、放電欠陥及び画質ムラが少なく、画像形成の速度が30ppmから60ppmへ上がった場合でも、広い温度範囲及び湿度範囲でトナー画像の転写性が良好、即ち、放電欠陥が抑制されることが分かった。
【0062】
ここで、表2において、画像形成装置10のプリント速度が速い場合(60ppmの場合)について、本実施例と比較例1の結果を比べると、比較例1の方がトナー画像の転写性が低いことが分かる。これは、比較例1の一次転写ロール60において、表面(外周面)に樹脂層である外層64があることで転写時に電荷が蓄積されてしまい、さらに、一次転写ロール60の回転速度が高速のため、外層64が除電される(減衰する)前に次の転写サイクルを迎えることで、表面電荷が増加し続けて、放電が発生することが原因と考えられる。つまり、比較例1の一次転写ロール60では、高速プリント時に一次転写ロール60の外周に電荷が蓄積されてしまうという課題がある。
【0063】
一方、本実施例の一次転写ロール42では、イオン導電剤を含む最外層49が樹脂層である中間層48を覆っているので、連続的に一次転写が行われたときに、最外層49に電荷が蓄積されにくい。特に、最外層49の体積抵抗R3が中間層48の体積抵抗R2よりも低い場合に最外層49で電荷が拡散し易くなる。このように、本実施例の一次転写ロール42を用いた場合は、比較例1、2に比べて、画像形成装置10のプリント速度が上昇しても電荷が最外層49に蓄積されにくく、放電による転写不良が抑制され、画質低下が抑制される。
【0064】
また、本実施例の一次転写ロール42では、中間層48にカーボンブラックを添加している。ここで、カーボンブラックは、一次転写ロール42の軸方向における体積抵抗のばらつきの要因となり得るが、本実施例では、中間層48の膜厚d2が最内層47の膜厚d1及び最外層49の膜厚d3よりも薄くなっているので、中間層48の膜厚d2が最内層47の膜厚d1及び最外層49の膜厚d3よりも厚い場合に比べて、ばらつきの度合いが低減される。
【0065】
体積抵抗のばらつきが大きい場合、抵抗が高い箇所で電流が小さくなり、抵抗が低い箇所でより多くの電流が流れることになる。このとき、膜厚が厚くなると、流れる電流量の差がより顕著になり、抵抗ばらつきが顕著になると考えられる。このため、抵抗ばらつきの大きいカーボンブラックを添加した中間層48の厚みを薄くした場合の方が、一次転写ロール42全体の抵抗ばらつきも小さくなると考えられる。
【0066】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0067】
転写ロールとしての構成は、一次転写ロール42への適用に限らず、二次転写ロール41に適用してもよい。この場合、中間転写ベルト14が像保持部材の一例となる。また、最内層47及び最外層49は、発泡体でなくともよく、発泡していない弾性体で構成してもよい。
【0068】
さらに、一次転写ロール42が中間転写ベルト14と接触する位置は、感光体22の反対側となる位置だけでなく、一次転写ロール42の移動方向で感光体22が接触する位置よりも上流側又は下流側にずれていてもよい。加えて、最内層47の体積抵抗R1と中間層48の体積抵抗R2について、R1>R2でもよい。
【0069】
また、最内層47と中間層48との間、あるいは、中間層48と最外層49との間に接着層などの他の層が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 画像形成装置
14 中間転写ベルト(被転写媒体、像保持部材の一例)
22 感光体(像保持部材の一例)
40 一次転写ユニット(転写装置の一例)
42 一次転写ロール(転写ロールの一例)
44 電圧印加部(電圧印加手段の一例)
46 芯金(電極材の一例)
47 最内層
48 中間層
49 最外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加される電極材と、
イオン導電剤を含み前記電極材の外周面を覆って形成された最内層と、
導電性フィラーを分散した樹脂を含み前記最内層の外周側に積層された中間層と、
イオン導電剤を含み前記中間層の外周側に積層された最外層と、
を有する転写ロール。
【請求項2】
前記中間層の電気抵抗が前記最外層の電気抵抗よりも高い請求項1に記載の転写ロール。
【請求項3】
前記最内層及び前記最外層の厚さよりも前記中間層の厚さが薄い請求項2に記載の転写ロール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写ロールと、
被転写媒体に転写される現像剤像の極性とは逆の極性の電圧を前記電極材に印加する電圧印加手段と、
を有する転写装置。
【請求項5】
現像剤像を外周面に保持する像保持部材と、
前記像保持部材で保持された現像剤像を前記被転写媒体に転写する請求項4に記載の転写装置と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57885(P2013−57885A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197306(P2011−197306)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】