説明

転写箔とその製造方法

【課題】転写後の表面での不要な外光反射光を抑え、被転写体が布のような柔軟なものであっても基材の折り曲げによる変化で壊れにくい光学効果層を備えた転写箔とその製造方法を提供すること。
【解決手段】直径1μm以下の粒子を50%以上の割合で含有し、該粒子の平均粒子径の2倍以下の厚みで設けられた光学効果層を有する転写箔であって、該光学効果層の粒子凹凸形状が、転写後に最表面に露出することを特徴とする転写箔とその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に転写して使う転写箔であって、偽造防止や真贋判定に利用でき、さらに意匠性を高める光学効果を有する転写箔に関する。特に布等の表面が粗く伸縮性のある被転写体に用いる転写箔とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホログラム等の光学効果素子は、取り付けられる媒体の真偽性を示すために用いられてきた。媒体は紙やカードなどの他、特許文献1で開示されている転写箔のように人工レザー、織布、不織布、皮革等の服飾品、洋服などに取り付けられる事例も増加している。
このような商品等の媒体に光学効果素子を取り付けることによって、媒体へ高級感を付与し価値を高め、また媒体の偽造品や模造品による被害を抑えることが可能となる。
ただし、布等の媒体の場合にはその伸縮性が大きいことと表面が粗いことによって従来の転写箔ではいくつかの問題があった。
【0003】
通常の場合、金属反射層を含む転写箔を被転写体に転写すると、被転写体の最表面が平滑な面になるので、下部に金属反射層がない透明な領域でも表面で外光を反射して光ってしまう。
この結果、転写箔から転写された領域の表面が無用に目立ち、被転写体表面の下基材の柄が見えにくくなったり、ホログラムやカラーシフト等の光学効果が妨げられたりすることがある。
【0004】
ここで、図4から図6を援用して上記の事情を説明する。
図4は従来の転写箔の層構成の一例を示す断面模式図である。図5は従来の転写箔による転写物の一例を示す断面模式図である。図6は従来の転写箔による転写物(布)の一例を示す模式図である。
【0005】
従来の転写箔は通常複数の層の積層体からなっており、代表的には、例えば図4に示したように、プラスチックフィルム等の支持体(1)上に離型層(2)、保護層(3)、接着層(4)の順で積層された転写箔が挙げられる。
さらに必要に応じて他の層が含まれることがある。たとえばホログラムやカラーシフト等の光学効果を付与する場合には、被転写体に転移する保護層(3)と接着層(4)の間に、真空蒸着等の手法を用いて部分的に金属反射層(6)を設けた層構成もよく用いられる。
【0006】
この転写箔を用いて被転写体(7)の表面に接着層(4)を圧着して支持体(1)の側から熱ロール等で加熱すると、接着層(4)が被転写体(7)に接着するとともに離型層(2)と保護層(3)の界面(5)から剥離して転写物が得られる。
このようにして得られた転写物の層構成を模式的に示したのが図5である。
図5の転写物では、被転写体(7)の表面に接着層(4)を介して透明な保護層(3)が最表面に形成されており、透明な保護層(3)と接着層(4)の間には部分的に設けられた金属反射層(6)が配置されている。
【0007】
図5に示したような転写物は、布のように表面が柔らかく伸縮性に富んだ被転写体に用いる光学効果を有する表面層としては外観的に欠陥があるのみならず、物性的にもいくつかの問題を残していた。
その一つは、転写後の転写領域における転写物の最表面が平滑な面になるので図5に矢
印で示したように、外部からの光が転写領域全体の保護層(3)の最表面で反射して光ってしまい、いわゆるテカテカ感が出てしまうことである。
【0008】
本来、光学効果層によってホログラムやカラーシフト等の光学効果を付与するためには、部分的に設けられた金属反射層(6)で反射する光の視認性が優れていることが必要であるが、保護層(3)の最表面で反射した光によって、金属反射層(6)で反射した光が見にくくなるので光学効果が劣るという結果になる。
【0009】
さらに、転写物の転写領域の最表面が平滑であることによって、最表面で反射した光は金属反射層のない透明領域でも反射して光ってしまい、転写領域が無用に目立ってしまう。この問題は、特に表面の光沢のない布のような被転写体において顕著であり、被転写体表面の柄が見えにくくなるというような不都合を生じさせる。
【0010】
図6には布のような被転写体(7)の上に接着層(4)を介して部分的に設けられた金属反射層(6)とその上の最表面の保護層(3)を表面側から見た模式図を示した。
保護層(3)は透明であり、表面側から見たときに保護層(3)を通して部分的に設けられた金属反射層(6)と被転写体(7)が見えることが望ましいが、最表面が平滑であることによって上記のような不都合が生じることとなる。
【0011】
もう一つの問題は、被転写体(7)として表面が粗く伸縮性や折り曲げに対する柔軟性がある布のような素材を用いた場合に、転写された部分の層とくに金属反射層(6)にクラックが入りやすいことである。
とくに、伸縮性と柔軟性のある素材への転写箔としては転写された被膜は被転写体の素材表面への追随性が要求されるので伸縮性の少ない金属反射層へのクラックはより入り易くなる。
金属反射層(6)にクラックが入ると光学効果層によってホログラムやカラーシフト等の光学効果を発現することが十分に出来ないので意匠的な効果が低下する。のみならず、真贋判定に用いるためには必要な判定等の精度に支障を来たしてしまうことも考えられる。
【0012】
以上のような事情から、転写後の表面での不要な外光反射光を抑え、被転写体が布のような柔軟なものであっても基材の折り曲げによる変化で壊れにくい光学効果層を備えた転写箔が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−179480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、転写後の表面での不要な外光反射光を抑え、被転写体が布のような柔軟なものであっても基材の折り曲げによる変化で壊れにくい光学効果層を備えた転写箔とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明は、直径1μm以下の粒子を50%以上の割合で含有し、該粒子の平均粒子径の2倍以下の厚みで設けられた光学効果層を有する転写箔であって、該光学効果層の粒子凹凸形状が、転写後に最表面に露出することを特徴とする転写箔である。
【0016】
請求項2に係る発明は、前記粒子の表面の少なくとも一部に、反射層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の転写箔である。
【0017】
請求項3に係る発明は、単一の繊維または繊維が撚り合わされてなる糸が周期的またはランダムに配置されて構成された基材上に貼付する転写箔であって、前記粒子の平均粒子径が、該繊維または該糸の直径より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転写箔である。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の転写箔を用いて転写された物品である。
【0019】
請求項5に係る発明は、前記粒子を含む塗液を離型層上に塗布形成し、その後ローラーで押し込むことで粒子の表面が離型層側に浮き出ることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転写箔の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る転写箔によれば、直径1μm以下の粒子を50%以上の割合で含有し、該粒子の平均粒子径の2倍以下の厚みで設けられた光学効果層を有する転写箔であって、該光学効果層の粒子凹凸形状が、転写後に最表面に露出する転写箔であることによって、転写後の表面での不要な外光反射光を抑え、被転写体が布のような柔軟なものであっても基材の折り曲げによる変化で壊れにくい光学効果層を備えた転写箔とすることが出来る。
【0021】
被転写体である布等の転写後の表面となる光学効果層を、布基材の繊維縫い目より小さく白濁が起こりにくい直径1μm以下の粒子の集合体として、転写後に光学効果層の粒子凹凸形状を最表面に露出させることによって、転写領域の特に反射層のない透明領域のテカテカ感をなくすことが出来る。
【0022】
粒子として直径が1μmを超える粒子を用いた場合には光学効果層の白濁が激しくなり不透明になってしまう。また粒子の含有割合が少ない場合、とくに光学効果層の50%未満の割合であると表面凹凸が少なく、不要な外光反射光を抑えてテカテカ感をなくすことが難しい。
【0023】
本発明に係る転写箔は、とくに、布基材に転写すると、布基材の繊維の表面の凹凸と転写後の基材表面に露出した粒子の凹凸によって転写領域表面の外光反射によるテカテカ感がさらに目立たなくなる。
金属反射層が施されている領域が連続した平面ではなく粒子の集合体なので、布基材等の折り曲げに対してクラックが入りにくく、光学効果層が壊れにくい。
光学効果層の厚みが粒子径の2倍を超えると、転写後に転写物の表面に露出する粒子表面が減少して、粒子表面の凹凸によってもたらされる外光反射によるテカテカ感の減少効果がすくなくなってしまう。
【0024】
さらに、粒子に接するように部分的に反射層を設けることによって、転写物の表面から見た場合に反射層の有無で模様を作ることも出来る等、転写物の意匠性を高めることも出来る。
【0025】
請求項3に係る転写箔によれば、単一の繊維または繊維が撚り合わされてなる糸が周期的またはランダムに配置されて構成された基材上に貼付する転写箔であって、前記粒子の平均粒子径が、該繊維または該糸の直径より小さいことによって、それぞれ分離した粒子が伸縮性の高い基材上でも強度を保つことが出来る。
【0026】
のみならず、粒子上に形成された金属箔等の反射層は粒子表面においては基材の伸縮に合わせてクラックしない。粒子間の金属箔にひび割れが入るのみであるので、反射層のひび割れが外観的に目立ちにくいという意匠効果としての利点もある。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、前記粒子を含む塗液を離型層上に塗布形成し、その後塗布形成した塗膜を離型層側に向けてローラーで押し込むことで粒子の表面を離型層側に浮き出させる。
【0028】
ローラーで押し込むことによって、粒子表面の凹凸形状が離型層側に賦型されて浮き出るので、被転写体に転写した際に物品の最表面に凹凸が生じる。
これによって、物品の最表面で反射する光が散乱してさまざまな方向に反射して外光反射によるテカテカ感が減少する効果を有する転写箔を安定して簡単に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の転写箔の層構成の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の転写箔による転写物の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の転写箔による転写物(布)の一例を示す模式図である。
【図4】従来の転写箔の層構成の一例を示す断面模式図である。
【図5】従来の転写箔による転写物の一例を示す断面模式図である。
【図6】従来の転写箔による転写物(布)の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の転写箔の製造方法の一例(離型層と光学効果層の形成)を示す模式図である。
【図8】本発明の転写箔の製造方法の一例(熱圧ロールで粒子埋め込み)を示す模式図である。
【図9】本発明の転写箔の製造方法の一例(金属反射層の部分形成)を示す模式図である。
【図10】本発明の転写箔の製造方法の一例(接着層の形成)を示す模式図である。
【図11】本発明の転写箔による転写物の製造方法の一例(転写後剥離)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の転写箔の実施形態の一例について必要に応じて図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の転写箔の層構成の一例を示す断面模式図である。図2は本発明の転写箔による転写物の一例を示す断面模式図である。図3は本発明の転写箔による転写物(布)の一例を示す模式図である。
【0031】
本発明に係る転写箔は、直径1μm以下の粒子を50%以上の割合で含有し、該粒子の平均粒子径の2倍以下の厚みで設けられた光学効果層(10)を有する転写箔であって、光学効果層(10)の粒子(12)の凹凸形状が、転写後に転写物の最表面に露出することを特徴とする転写箔である。
【0032】
この転写箔はポリエチレンテレフタレートフィルム等からなる支持体(1)の片面に離型層(2)を形成し、離型層(2)の表面に粒子(12)を含む光学効果層(10)が積層されて、その表面に接着層(4)が積層された層構成となっている。
離型層(2)の表面に積層された粒子(12)を含む光学効果層(10)の一部には部分的に金属反射層(6)が形成されている。
【0033】
この転写箔による転写物の一例の断面を図2に示した。
転写後の転写物の表面は、転写箔から転移した光学効果層(10)が露出しており、その一部の領域には部分的に設けられた金属反射層(6)が存在する。
図の矢印で表示した外部からの光は部分的に設けられた金属反射層(6)の表面で反射する光(8)と露出した粒子(12)の表面で乱反射する光(9)および図示しないが被転写体(7)の表面で反射する光とがある。
【0034】
金属反射層(6)で反射した光(8)は光学効果の視認性を確保するために重要であり、粒子の表面で反射する光(9)が乱反射することはこの領域のテカテカ感をなくし、無用に目立つことを避けるために役立っている。
【0035】
この、被転写体が布の場合の転写物の一例を図3に示した。
被転写体である布(7)の上(紙面の手前側)から図の中心部に四角状の転写領域(10)がありそのほぼ中心に円形に設けられた金属反射層(6)が位置している。本発明の転写箔を用いると図2で説明したように転写領域(10)の表面での外光反射が被転写体である布(7)表面での外光反射と近似した状態になり、目立たなくなるようにすることが出来る。
【0036】
本発明の転写箔の製造方法の一実施形態について以下に説明する。
図7、図8、図9、図10、は本発明の転写箔の製造方法を説明した模式図であり、図11は転写物の製造方法を説明した模式図である。
【0037】
最初に、図7に示すように、ポリエチレンテレフタレートフィルムのような耐熱性フィルムからなる支持体(1)の表面に離型層(2)を形成する。
支持体(1)には樹脂フィルムやシートが使用され、樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、耐熱ポリ塩化ビニル樹脂等からなるフィルムやシート等が挙げられる。
【0038】
これらの樹脂の中ではとくに、耐熱性が比較的高く膜厚とその分布が安定していることから、延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂のシートやフィルムが通常使われることが多い。
支持体(1)の厚みとしては10μmから50μm程度の厚みが好ましく、これらの樹脂シートやフィルムには、帯電防止処理、マット加工、エンボス処理、文字や絵柄の印刷、レーザーマーキング等の加工を施したフィルムやシートも使用することが出来る。
【0039】
離型層(2)は光学効果層(10)を被転写体(7)に転写し支持体(1)から剥離するための層である。
離型層(2)としてのインキの主たる材料の例としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系の樹脂が挙げられる。その他、塩化ゴム系樹脂およびニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ポリスチレン、塩化ビニル、塩酢ビ系樹脂等が使用できる。
【0040】
さらには、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の使用も可能であり、シリコーン樹脂、パラフィンワックス、反応形フッ素樹脂等の使用も可能である。
離型層(2)の形成はグラビア印刷法やマイクログラビア法等の公知の塗工方法によって行うことが出来、乾燥後膜厚としては、0.5μm〜5.0μmが好ましい。
【0041】
さらに離型層(2)の表面に光学効果層(10)を形成する。
光学効果層(10)に用いる材料の一つとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等の樹脂が挙げられる。本発明において重要な光学効果層(
10)に用いるもう一つの材料は球状粒子(12)である。
【0042】
光学効果層(10)に用いる樹脂としてはたとえば熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。
また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたポリウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。
また、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0043】
光学効果層(10)に用いる球状粒子(12)は、無色または有色の透明材料からなる。通常は球状粒子(12)は、無色の有機もしくは無機の透明材料からなる。
有機材料としては、たとえば、ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチルのようなアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリルアミド樹脂、またはそれらの一つ以上を含んだ共重合体を使用することが出来る。
【0044】
無機材料としては、たとえば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸マグネシウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、珪酸亜鉛、珪酸アルミニウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸銅、硫化亜鉛またはガラスを使用することが出来る。
【0045】
光学効果層(10)の形成方法としては水に溶解した樹脂と分散した球状粒子(12)からなる塗工液をグラビア塗工法等の公知の方法で塗工乾燥する方法が挙げられる。光学効果層の乾燥後塗工厚みは必要な効果を得られる範囲でとくに限定はないが、加工が可能でエンボス等の形状付与が安定して出来る範囲でなるべく薄いほう(たとえば0.5μm程度)が望ましい。
【0046】
次に、図8に示すように、離型層(2)と光学効果層(10)の形成された支持体(1)フィルムの光学効果層側から、加熱したゴムロール(11)を用いて加熱圧接処理を行う。これによって光学効果層(10)中に分散した球状粒子(12)が離型層(2)中に押し込まれて離型層(2)と光学効果層(10)の界面で剥離したときに、光学効果層(10)の被転写体(7)の最表面となる面が球状粒子(12)の露出した凹凸面となり、外光反射によるテカテカ感の少ない表面とすることが出来る。
加熱したゴムロール(11)は支持体(1)の背面からの平板(図示せず)との間に所要の圧力をかけながら回転して光学効果層(10)中の球状粒子(12)を図の上部の離型層(2)中に押し込む。
【0047】
ゴムロール(11)の加熱温度は光学効果層(10)の樹脂を軟化させる程度であればとくに限定はなく、樹脂の軟化温度と圧接時間との関係で決めることが出来る。
通常の熱可塑性樹脂を光学効果層(10)に使用した場合には加工速度が40m/minの場合で加熱温度160℃程度で圧力が線圧で500N/cm程度の場合が多い。
【0048】
次に、金属反射層(6)として、支持体(1)の反対面から真空蒸着法を用いてアルミニウム等の薄膜層を一部に設ける(図9参照)。金属反射層(6)と球状粒子(12)との界面は光反射性を有している。
金属反射層(6)に用いる材料としては、金属または合金を使用することが出来る。金
属または合金としては、たとえば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、銅、金、銀、またはそれらの1つ以上を含んだ合金を使用することが出来る。
【0049】
金属反射層(6)を設ける方法としては、マスクを用いた部分蒸着法がよく用いられる。球状粒子(12)が露出した凹凸面に対して金属薄膜を均一に付ける方法としては他の方法よりも優れている。
金属反射層(6)の膜厚は主に必要な反射性および隠蔽性によって決まり、とくに限定はないが、通常は価格の問題と加工の難易度からアルミニウムを材料として使う場合が多く、その場合は膜厚は40nm程度でよい。
【0050】
次に、接着層(4)として、支持体(1)の反対面からグラビア印刷法等の方法を用いてポリアミドエラストマー等の塗工をおこない転写箔を作成する(図10参照)。
被転写体である布基材等(7)に光学効果層(2)を貼着するための接着層(4)の材料としては被転写体の材質に応じて、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂、エチレンー酢ビ共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸共重合樹脂等の熱可塑性樹脂の中から選択して使用することが出来る。
【0051】
接着層(4)は公知のグラビア印刷やマイクログラビア印刷等の方法で塗工乾燥することで形成できる。乾燥後の必要な膜厚は被転写体(7)の表面状態によっても異なるが1μmから20μmの範囲が好ましい。
【0052】
図11には以上のように作成した本発明の転写箔を被転写体(7)に転写してから離型層(2)の表面の剥離界面から剥離した状態の転写物の断面を示した。
被転写体(7)は特に限定されないが、本発明の転写箔の特徴からいうと、平織、綾織、朱子織等の織物からなる布基材への転写の場合に利用することによりもっとも顕著な効果が認められる。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体の片面に、離型層として下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法により、乾燥温度120℃で乾燥後塗布厚が1μmとなるように塗布し離型層を形成した。
(離型層塗工液組成)
ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂 200重量部
シリコーンアルキドオイルフリー樹脂 30重量部
非イオン性湿潤剤 5重量部
低粘性ニトロセルロース 1200重量部
メチルエチルケトン/トルエン混合溶剤 2000重量部
【0054】
次に光学効果層として下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法により、乾燥温度100℃で乾燥後塗布厚が0.5μmとなるように離型層表面に塗布し光学効果層を形成した。
(光学効果層塗工液組成)
ポリビニルアルコール樹脂 10重量部
ポリスチレン球状透明粒子(平均粒子径350nm) 10重量部
精製水 3000重量部
【0055】
次に、離型層と光学効果層の形成された上記支持体フィルムの光学効果層側から、160℃に加熱したゴムロールを用いて線圧500N/cm、速度40m/minで加熱圧接処理を行なった。加熱圧接後には支持体上に設けられた積層物の厚みは1.1μmとなった。
【0056】
次に、金属薄膜層として、真空蒸着法を用いて膜厚40nmのアルミニウム薄膜層を全面に設けた。その後、パターンマスクを特定の形状にて一時的に設けた後、酸アルカリ処理によって、パターンマスクが設けられていない部分の金属薄膜層を除去した。
【0057】
次に、接着層として、下記の配合比からなる組成物をグラビア印刷法により、上記フィルム表面から、乾燥温度100℃で乾燥後塗膜厚が7.0μmとなるように塗布して接着層を形成して転写箔を作成した。
(接着層塗工液組成)
ポリアミドエラストマー樹脂 30重量部
エタノール/トルエン混合溶剤 70重量部
【0058】
<比較例1>
加熱したゴムロールによる加熱圧接処理を行なわなかった以外は実施例1と同様にして転写箔を作成した。
【0059】
<比較例2>
光学効果層塗工液組成から、ポリスチレン球状透明粒子を除き、加熱したゴムロールによる加熱圧接処理を行なわなかった以外は実施例1と同様にして転写箔を作成した。
【0060】
以上のように作成した転写箔を、布媒体(ポリエステルサテン)に転写して偽造防止物品とした。目視により外観と折り曲げ性を評価した。
比較例2の転写箔を用いた場合に比べて、実施例1の本発明の転写箔を用いた場合には、反射層のない透明部分の最表面による外光反射が目立たなくなりギラギラ感のない外観となった。また、布基材の折り曲げ変形に対して壊れにくくなった。
比較例1の転写箔を用いた場合に比べて、実施例1の本発明の転写箔を用いた場合には、反射層のない透明部分の最表面による外光反射が目立たなくなりギラギラ感のない外観となった。
【0061】
以上のように、本発明の転写箔は粒子を含む塗工液を離型層上に塗布形成し、その後ローラーで押し込むことで粒子の形状(凹凸)が離型層側に浮き出るので転写箔を物品に転写した際に、露出した面に凹凸が生じることによって、反射した外光の散乱が大きくなりテカリが軽減する。
【0062】
また、本発明の転写箔では光学効果層の粒子はそれぞれ分離しているため、伸縮性の高い基材に転写した場合でも強度を保つことが出来、粒子上に形成された金属箔はクラックしないので反射層のひび割れが目立ちにくいという点でも、特に布への転写に適した転写箔であるということが言える。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、物品に転写して使う転写箔として、特に布等の表面が粗く伸縮性のある被転写体に適しているが、偽造防止や真贋判定に利用でき、さらに意匠性を高める光学効果を活用できる被転写体に広く利用することが出来る。
【符号の説明】
【0064】
1…支持体
2…離型層
3…保護層
4…接着層
5…剥離界面
6…金属反射層
7…被転写体
8…金属反射層での反射光
9…転写領域の最表面での反射光
10…光学効果層
11…熱圧ロール
12…粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径1μm以下の粒子を50%以上の割合で含有し、該粒子の平均粒子径の2倍以下の厚みで設けられた光学効果層を有する転写箔であって、該光学効果層の粒子凹凸形状が、転写後に最表面に露出することを特徴とする転写箔。
【請求項2】
前記粒子が表面の少なくとも一部に、反射層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の転写箔。
【請求項3】
単一の繊維または繊維が撚り合わされてなる糸が周期的またはランダムに配置されて構成された基材上に貼付する転写箔であって、前記粒子の平均粒子径が、該繊維または該糸の直径より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転写箔。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の転写箔を用いて転写された物品。
【請求項5】
前記粒子を含む塗液を離型層上に塗布形成し、その後ローラーで押し込むことで粒子の形状が離型層側に浮き出ることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転写箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図6】
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