転動型入力装置とプログラム
【課題】 タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に応用せしめ、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行えるようにすること。
【解決手段】 指とタッチパネルの間に回転、併進、傾斜可能に支持された転動体を介在させることによって、正確な座標入力を可能とし、指から転動体に加える多様な操作を区別して、多様な情報を入力することを可能とした。
【解決手段】 指とタッチパネルの間に回転、併進、傾斜可能に支持された転動体を介在させることによって、正確な座標入力を可能とし、指から転動体に加える多様な操作を区別して、多様な情報を入力することを可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコンピュータ用の入力装置に係り、特に手指で加圧しながら転がすことによって操作する転動型入力装置とプログラムに関する。
【0002】
近年、タッチパッド、タッチパネル、タッチディスプレイといった指やスタイラスでタッチして操作する接触位置検出装置(以下タッチパネルと総称する)が普及している。こうした装置では指や器具でタッチパネル表面を接触した地点の座標の入力が基本になる。本発明では、指とタッチパネルの間に転動体と呼ぶ機構を介在させて、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行うための装置とプログラムを与える。またスクロールやメニュー選択等においては、タッチしたり表面を擦ったりする感触よりも、ロータを回転したり転がしたりする感触の方が入力する情報と連想が取れて直感にそぐう場面も多い。本発明では、従来にはなかった「転がす(転動する)操作」に基づく新たな入力装置とその操作感と直感的に対応する応用プログラムを与える。
【背景技術】
【0003】
指で直接タッチパッドに触れる場合には、指が柔軟なために接触範囲は広がった領域となり、点とは見なせなくなる。このように広がりのある領域で接触している場合には、現在のタッチパネルでは、接触領域の重心の位置や中心位置を算出し、それを接触点とみなして、1点の座標情報を出力している。指をタッチパッドに押し付けて加圧して行くと柔軟な指は潰れて接触する領域の面積は次第に広くなる。逆に指がタッチパッドから離反して行く過程では、接触する領域の面積は次第に縮小して行く。このように指が接触したり離反したりする過程で、接触している領域は必ずしも中心を一定に保ったまま周辺が均一に増大、縮小して行くわけではない。指の傾け方によっては接触領域の面積は特定の方位にのみ増大し、その場合に重心で座標を定めると意図しない座標情報の変化が入力されてしまう。指で座標入力する場合に生じるこうした問題を解決する最も簡易な方法はスタイラスと呼ばれるペン状の器具の利用である。しかしながら一度スタイラスを持ってしまうと、ボタンを押すなどの他の操作ができなくなることが問題となる。
【0004】
そこで、本発明では、指が特定の器具を持つことによる束縛を避け、かつ指が直接タッチすることによる不正確さを排除するために、タッチパネル上で回転、並進移動、かつ傾斜可能な自由度を持って支持されて指とタッチパネルの間に介在する器具を導入し、指がこの器具を介在してタッチパネルに接触することによって精度良く座標情報を入力すると共に、器具を前後に転がしたり左右に傾けたりする操作を通じて、十字キー入力やスクロール、さらには文字入力といった多様な情報の入力を能率良く行うための装置とプログラムを与える。
【0005】
本発明に関連する特許文献を以下に示す。
【特許文献1】特開平9−128149号公報
【特許文献2】特開2001−306238号公報
【特許文献3】特開2005−63230号公報
【特許文献4】特開2006−301736号公報
【特許文献5】特開2006−302348号公報
【0006】
特許文献1と2では、タッチパネル上でローラ状の転動体を転がす操作によってデータや指令を入力する方法が示されている。いずれも通常のペン先による座標入力とローラによる座標入力を区別できるように特殊な形態のローラを利用している。特許文献1では、2枚の円盤を同じ回転軸に離して取り付けた形態のものをローラとして使用している。2つの円盤はそれぞれ、周縁部が中心から一定の角度毎に交互に切り除かれていて、残った部分を転がしたときに2つの円盤の周縁部がタッチパネルと交互に接触するように構成されている。この交互の接触によって入力する座標系列は、特定の周期と振幅で位置を変えることから、通常のペン先による座標入力と区別している。また特許文献2では、ローラをタッチパッド上で転がすときに、ローラ表面上に隆起するように設けられた波形状のパターンがタッチパッド表面に接触することで、入力する座標点列もこの周期的な波形パターンに従ったものとなるため、そのことを利用して通常のペン先による座標入力と区別している。このようにローラの入力を通常のペン先による入力を区別することで、例えば、ローラ入力時には消去モードとみなして、描画データを消去する目的に利用している。
【0007】
次に特許文献3から5は本特許で使われる要素技術に関わるもので、特許文献3では、傾斜センサを利用して検出する本体の姿勢と座標入力を組み合わせて多様な操作を行う方法が示されている。また特許文献4と5は、帯状のタッチパネルを利用した情報入力装置に関するもので、前者では触れた位置に応じて、また後者では帯状タッチパネル上で指を動かす速さに応じて動画の再生速度を決定する方法が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みて考案されたものであり、指とタッチパネルの間に特殊な器具を介在させることによって、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に応用せしめ、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行うことのできる転動型入力装置とプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の転動型入力装置は、パネルと、該パネルに接触しながら転動かつ傾動可能に形成される転動体と、前記パネルに設けられ、前記転動体下部の表面が前記パネルに接触する接触位置(x、y)を検出する接触位置検出手段とを具備し、前記パネルおよび前記転動体の各表面を、前記転動体が前記パネルに接触するときに、一点のみで接触する形状に形成し、前記接触位置(x、y)は、前記パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めたときの接触位置であり、前記接触位置(x、y)のxを、前記転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、前記接触位置(x、y)のyを、前記転動体を前記パネル上で接触させながら転がすことによって定めることを特徴とする。
【0010】
本発明では、たとえば転動体をパネルから所定間隔をもって浮動的に支持し、転動体を加圧することによってパネルに一点で接触しながら転がるように回転させ接触位置が移動するようにした。さらに転動体は加圧位置を変えることによって傾斜する構造とし、転がり方向と直交する方向にも接触位置が移動可能にした。なお、「傾動」とは、ある地点のパネル表面と転動体との相対的な角度あるいは位置関係が変われば足りる趣旨である。
ここで、パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めると、接触位置(x,y)のxは、転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、yは、前記転動体を転がすことによって接触位置をy軸方向に変化させて定めることを特徴とする。x軸は転動体の回転軸と平行な方向に設けられた軸であり、その軸上の加圧位置に応じて、転動体は後の図4に示すように傾きを変えて、接触点のxが加圧位置のxに一致するのである。またy軸は転動体が転がる方向に設けられた軸であるから、転動体が転がると図5に示すように接触点のyが変化するのである。
【0011】
ここで、「一点のみで接触する」とは、接触を検知する箇所が一点のみになるように形成することを意味する。したがって、接触を検知しない態様、たとえば電気的導通状態によって接触を検知するような場合に絶縁体などの接触部位が他に存在しても、これによって一点のみで接触するという要件を満たさないというものではない。
【0012】
本発明の請求項2に記載の転動型入力装置では、さらに、前記接触位置検出手段は、加圧センサ、静電センサ、電磁センサ、電気抵抗値または電極の導通関係を通じて接触位置を検出する部材で形成したことを特徴とする。
【0013】
接触位置検出手段として上記のセンサ等を用いることによって、実用的な精度で位置検出が可能となる。
【0014】
本発明の請求項3に記載の転動型入力装置は、平面状のパネルと、その表面に接触しながら転がり、かつ傾斜することができるように、平面状のパネルに対して回転かつ移動かつ傾斜可能となるように支持された転動体とを備えていている。この転動体の下部表面は転がる方向に断面縁形状がほぼ円弧となるように湾曲した曲面を形成することによって、転がりやすくなっている。また、転がる方向と直交する方向にも、パネル表面と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲し、これらの湾曲によってパネル表面は転動体下部表面と1点のみで接触するように構成されている。すなわち分かりやすく言えば、転動体の下部表面はラグビーボールのように表面が直交する2方向に湾曲しているために平面との接点が1つになるのである。
【0015】
本発明の請求項4に記載の転動型入力装置は、上述した発明が平面状のパネルを用いていたのに対して、一方向に湾曲した曲面状のパネルを用いている点に違いがある。上述の発明と同様に、その表面に接触しながら転がってかつ傾斜できるように回転かつ移動かつ傾斜可能となるように支持された転動体を用いているが、今度は、転動体の下部表面は転がる方向に断面縁形状が概円弧となるように湾曲するだけで良い。すなわち転動体の形状は円筒のように定めても良い。それでも、パネル表面が、転動体が転がる方向と直交する方向に、転動体と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲しているため、パネル表面が転動体下部表面と接触する点は1点のみとなる。パネル表面上に前述したのと同様のx−y座標系を定めるときに、パネルは、その表面と転動体下部表面の接触位置(x,y)を、加圧センサ、静電センサ、電磁センサ、電気抵抗値または電極の接触関係を通じて検出する手段を備えている。そして接触位置(x,y)のxは、転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、yは、転動体を転がすことによって定めることを特徴とする。今度はパネル側が湾曲しているが、x軸上の加圧位置に応じて転動体は傾斜角度を変えて、接触点のx座標値は加圧位置のx座標値と一致するようになる。また転動体の転がり角度によって接触位置のy座標値が定まるようになる。
【0016】
本発明の請求項5に記載の転動型入力装置は、以上の転動型入力装置において、転動体の上部表面の指と接する部分が、転動体の下部に対して、転動体の回転軸と平行な方向にスライド移動するように構成されたことを特徴とする。このように構成することによって、転動体の上に乗せた指を離すことなく乗せたまま左右に動かすことが可能になる。またこのときに転動体とパネルは接触したまま接触点を移動して、接触点のx座標値だけを変化させることになる。このように接触したままの状態でx座標値の変化が検出されれば、それは指を転動体に乗せたまま左右にスライド移動する操作が加えられたためであると判断し、その操作に応じた指令やデータを入力することができる。
【0017】
本発明の請求項6に記載の転動型入力装置は、手指の触覚に応答を返すために振動生成器を備えている。そしてこの振動生成器は、転動体の転動角度が所定量に到達した時、または接触位置(x,y)が所定位置に到達したとき、あるいはその他所定の動作が達成されたとき、または外部機器からの指令により振動して、手指に操作の達成やその他のメッセージを通知するように構成されている。
【0018】
本発明の請求項7に記載の転動型入力装置は、姿勢検出センサを備え、検出される装置本体の姿勢と接触位置(x,y)をそのまま外部機器へ伝送してそこでの処理に委ねるか、または装置本体内部で処理して所定の動作を実行することを特徴とする。このように姿勢情報を組み合わせることにより多様な情報の入力が可能になり、特に姿勢の変化と直感的に連携の取れる指令を入力する際に用いると良い。例えば、図11では、スクロールやカーソル移動の方向が姿勢の方向と対応が取れるようにすることで、転がす操作と姿勢の設定とコンピュータの動作が直感的に関連付くようになっている。
【0019】
本発明の請求項8に記載の転動型入力装置は、装置本体において転動体の設けられている側の裏側にタクトスイッチを設けたことを特徴とする。上述した姿勢の変化や転がしの操作だけでは、最終的な入力の確定までせずに、カーソルの移動やスクロールのみを行い。そうして選択した項目を確定して入力する際にこのタクトスイッチを用いると良い。またタッチパネルへの不測の接触により誤入力が生じることを防ぎたい場合に、タクトスイッチを押すことで始めてタイミングを確定するようにすると良い。あるいは図1に示すように3つのタクトスイッチ20を転動体の背後に設ければ、これらの押す位置でx座標方向の位置情報を3種区別して指定することも可能である。
【0020】
本発明の請求項9に記載の転動型入力装置は、転動体と接触位置検出手段と別構成とし、使用時に一体として使用するものである。
たとえば、接触位置検出装置については既存の装置のタッチパネルを使い、製品としてはタッチパネルを除いた本願発明の転動体部分だけを販売し、ユーザはそれを手持ちのPDA等に付けて利用することが可能となる。
【0021】
本発明の請求項10に記載の発明は、以上の述べた転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムであって、転動体とパネルの接触位置(x,y)のxの値に基づいてメニューの項目配列中の列を指定し、yの値またはその変化量に基づき、メニューの項目配列中の行または行の移動量を指定することを特徴とする。通常のマウスでカーソル(またはフォーカス)を移動してメニュー項目を選択する場合には、目標地点にまでカーソルが移動するのに時間がかかり、そのために入力能率が低いことが問題であった。本発明の転動型入力装置とプログラムでは、この問題を次のように解決している。まずx軸方向については、途中のカーソルの移動の処理を経ずに、指の着地点によって直接的にxの値を指定することができる。その際に操作者がxの値の目安をつけるために転動体の指が接触する表面上には、凹凸が設けられており、例えば、図1の例では、3つの隆起がある。こうした凹凸手掛かりに基づき、xの値を直接的に指定して、yの値のみを転動体を転がしてカーソルやフォーカスを移動して指定することによって、入力能率を向上することができる。通常、ディスプレイの表示内容は横方向よりも縦方向にスクロールする場合が多く、横方向については、ディスプレイに表示されている内容のx座標の位置がスクロールによって動いてしまうことなく確定していることから、画面上の表示内容の横方向の絶対位置と転動体上のx軸方向の絶対位置との対応が取れるので、上述したように指の着地点でx座標の値を直接指定するようにした。一方、y座標についてはスクロールにより表示内容が上下に動くため絶対位置が固定せずに、また表示内容にy軸方向にエンドレスに動く自由度が必要とされる場合が多いため、入力能率が落ちることには妥協して、y軸方向については従来通りにカーソルを移動させながら項目を指定する方法を採用した。この場合にはy座標の値はその相対的な変化量を、転動体を転がす際の相対的な回転角度によって指定することになる。なお従来のホイールのような回転体を操作するときと本発明の転動体を操作する場合の本質的な違いは、同じ角度だけ回転させるのに後者は前者の2倍の指の運動量が必要となる点であり、タッチパネルの位置検出精度が、人が指の位置決めをする精度よりも高くなっている実情を考慮すると、後者の方がタッチパネルの性能を引き出す上で有利なことが分かる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、指とタッチパネルの間に回転、併進、傾斜可能に支持された転動体を介在させることによって、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に応用せしめ、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行うことを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に本発明の実施の形態による転動型入力装置60の全体像を示す。側面図であるが、外観図になっている部分と内部構造を示している透視部分が混在して図示されている。この図では転動体50は、その上部1が下部8に対して左にスライドしている状態で示されている。このスライド移動は操作者が指で力を加えることによって起こり、指を離せばスライド移動しない状態に復帰する。転動体上部の隆起部分3は操作者に指の位置に関する触覚的な手掛かりを与えるために設けられている。また転動体下部のパネル接触部は、接触した場合の衝撃を柔らかくし、また滑り止めのためにゴムカバー8bで覆われている。このゴムカバーの断面形状は円弧になっており、転動体はタッチパネル2の表面に接触した後で、その上をタイヤが転がるように、所定の角度の範囲内で前後に回転する。本実施例ではニュートラルの角度を基準にして前後に45度まで回転して転がるように設計されている。この角度の範囲であれば、最大角度まで転がしても指は転動体上部に常に触れることになる。転動体の半径をRとするときに45度転がると転動体はπR/4だけパネル上を移動するが、このときに転動体上部に乗せた指の移動量はπR/2となり、指の移動量が半分に縮小されてパネルに伝わる。現状のパネルの解像度は十分に高く、指が震えなどのために位置指定困難になることによる人の能力の限界を超える解像度を備えている。したがって、このように指の移動量が縮小されると指の震えも半分に縮小されて伝わり、パネルの解像度をより高く引き出すことができる。なお転動体はパネルの上にバネ4を通じて支持されており、バネの回転や伸縮によって、パネルに対して相対的に回転、並進、傾斜のいずれの運動も自由にできるようになっており、それにより上述したパネル上での転がり運動と傾斜角度の変化が可能になっている。
【0024】
次に転動体とタッチパネル以外の構造であるが、同じ図1に今度は透視図で筐体内部の様子が示されている。まずタクトスイッチ20が3つ設けられており、これは前述したように入力を確定したり、転動体の回転軸の方向に沿って3つの位置情報を与えたりするために用いる。あるいは指で転動体を強くタッチパネルに押し付けると背後からタクトスイッチも押すことになるので、転動体のタッチパネルへの接触と同時にタクトスイッチも押し込まれるように構成しておけば、転動体がタッチパネルに接触したタイミングをタクトスイッチがONとなるタイミングとして検出できる。また21は振動生成器であり、所定の操作が行われて入力が確かに受け入れられたことを操作者の触覚を通じて通知する目的に使用する。例えば転動体が所定の角度転がるたびに発生することもあるし、ディスプレイの表示内容に同期して、カーソルが目標地点に到達したとき等に振動するようにしても良い。さらには外部機器からの指令によって振動させて、任意のメッセージを通知する目的に使用しても良い。22は姿勢センサであり、本体が重力に対して、あるいは外部機器に対して相対的にどのような姿勢でいるのかを検出する。この姿勢の結果を、タッチパネルが検出した接触位置の情報と組み合わせて多様な情報を指定することが可能になる。
【0025】
図1のままでは本実施形態の転動型入力装置の形状が分かりにくいので図2に斜視図を示す。(a)は転動体上部が下部に対してスライドしていない場合の図であり、(b)は転動体上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。
【0026】
また図6に、さらに転動体部分の立体形状を把握しやすくなるように、3次元的に陰影をつけて形状を表示した図を示す。(a)(b)(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の図であり、(d)(e)(f)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。(c)の図で転動体下部に見える歯車状の隆起は後に述べるように転動体とタッチパネルとの接触パターンを特殊なものにするために設けているが、これはなくても構わない。タッチパネルが高解像度に位置検出する能力を活用して、連続的にカーソルを移動したい場合には、むしろこのような歯車状の突起は設けずに単純にラグビーボール状の滑らかな曲面にしておいた方が良い。転動体の形状において重要な点は、転動体下部の表面形状がラグビーボールの曲面の形状をしており、回転軸の方向にも、それと直交する方向にも表面が湾曲しており、タッチパネルとの接触点が1つに制限されることである。なお歯車状の突起を設けた場合には後に述べるように2つの歯車の先端が同時にタッチパルに接触する場合があるが、その場合には2つの接触点の中間点が検出されて、1つの接触点として解釈されることになる。
【0027】
図3には、本実施形態の転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す。(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図である。ここで新しく加わった符号を以下に説明する。まず6は転動体下部8を支持するために台5から立つ支柱であり、そこにバネ4の端部を係合ピン9でつなげて転動体をタッチパネル2の上に支持する。バネの他端は転動体下部8につながっており、その下部に対して(c)に示すように上部1が回転軸方向に平行にスライド移動できるようになっている。7は転動体下部に設けられた歯車状の突起であるがこれはなくても構わない。
【0028】
図4には図3に示した三面図において、指で転動部の左側を押し下げて転動部をタッチパネルに接触させた状態を示す。まず指は転動体上部の隆起部分10を触覚的に把握して、そこを押し込むようにして転動体をタッチパネルに押し付ける。すると(b)に示すようにバネ4が伸びて、転動体は左側に傾斜して、指で押す部分が率先して下がり、押した位置でもってタッチパネルに接触する。この時にタッチパネル下部はラグビーボールの表面のように、転がる方向にもそれと直交する方向にも湾曲しているため、接触点が1つに制限される。この接触点は図4(b)中に11の黒丸で示されている。タッチパネル上で転動体が転がる方向をy軸、それと直交する方向(転動体の回転軸の方向)をx軸として座標系を定めると、x軸方向の接触位置は、こうして指が転動体上部表面上で下方向に(転動体をタッチパネルに押し付けるように)力を加える位置で定まることになる。以上のようにして転動体の下部表面をタッチパネル表面に一点11で接触させている状態で、今度は(c)に示すように指14を左方向に動かすと、その動きに追随して転動体上部1が下部8に対して図に示すようにスライド移動する。この時に転動体下部が回転軸と平行な方向に湾曲しているため、転動体の傾斜角度が変わり、接触点11は(c)の15にまで移動する。この移動は転動体がタッチパネルに接触したまま行われる。
【0029】
以上の説明の中で注意するべき点は、バネの張力の設定が悪いと、転動体を指で押している点の直下でなく、別の点で最初の接触が起こり、その後、転動体の傾斜角度が変わって、徐々に接触点が移動して、最終的に転動体を指で押している点の直下が接触点になるような動作も起こり得るという点である。この場合は、操作者が意図しない点で最初の接触が起こり、この接触後の入力は上述したスライド移動時の入力と区別できなくなってしまう。そこでこの問題を防ぐために転動体下部の湾曲の曲率とパネルと転動体の間隔そしてバネの張力を最適に決定する必要がある。あるいはそれが難しい場合には、タッチパネルの裏側に設けたタクトスイッチで接触のタイミングを指定して、タクトスイッチがONするタイミング以外でのタッチパネルと転動体の接触は接触とみなさないようにする方法もある。こうした工夫によって、想定外の接触と接触したままの接点移動の誤入力を排除すれば、転動体がタッチパネルに接触したまま接触点がx軸方向に移動することは、上述したように指を転動体上部に乗せて転動体をタッチパネルに押し付けた後で、転動体上部と下部とのスライド機構を利用して、指を左右に動かす場合にしか起こりえない。したがってそのような指の運動を他の運動と区別して多様な情報を指定することが可能になる。
【0030】
図5には、今度は指を転動体の中央部の隆起10の上において、転動体をタッチパネルに押し付けて、転がす様子を示す。図5(b)に示すように最初の接触点は11となるが、その状態で転動体を転がすと(d)と(e)に示すように接触点はy軸方向に移動する。この移動は接触状態を維持したまま行われる。(d)では歯車状の突起7が最初に接触しているが、歯車状の突起を導入しない場合には、半円形の断面の円周上の一転が接触し、それが連続的に移動して行くのでyの値は連続的に変化する。一方、歯車を導入すると後述するように移動は跳躍的に起こる。なお(c)にはさらに指を左右に動かして転動体上部を下部に対してスライド移動する操作を組み合わせて接触点を15に移動した例を示す。以上のように接触点のy軸上の位置は転動体を転がすことで指定する。図に示した例では、転がす角度はニュートラル位置に対して前後方向にそれぞれ45度までと限られているので、yの値は絶対位置でなく、相対的な移動量を指定するようにした方が良い。ただしメニューの行数が少ない場合等、y軸の移動範囲が少なくて済む場合にはyの絶対的な位置を絶対的な転がし量に応じて定めても良い。
【0031】
図7には転動部下部がタッチパネルに接触して転がる様子を断面図で示す。(a)(b)(c)は転動部下部が単純に湾曲した曲面でラグビーボールの表面状である場合の図であり、(d)(e)(f)は転動部下部が周期的に歯車状に隆起する歯を持つ曲面の場合の図である。タッチパネルとの接触点を黒丸で示しているが、前者では転動体の転がりと共に接触点が連続的に移動するに対して、後者では接触点は跳躍しながら移動する。まず(d)で歯車状突起の1つがタッチパネルに接触し、その接触点を検出した後で、さらに転がると(e)のようにもう1つの歯車状突起がタッチパネルに接触し、その接触の瞬間に、検出される接触点は(e)の黒丸に示すように、実際に接触している2つの歯車状突起の2つの接触点の中間位置に跳躍する。これはタッチパネル自体が複数の点が同時接触したときにその重心位置を検出する特性を持つためである。その後さらに転がって行くと、(f)に示すように最初に接触した歯車状突起が離反した瞬間に、検出される接触点は2つ目の歯車状突起の接触点にと跳躍する。このような跳躍的な座標点の変化を特徴的な接触パターンとして登録しておき、そのような接触パターンが検出された場合に、所定の指令が実行されるようにしても良い。あるいは跳躍が生じた場合に同期するように、スクロールの行送りが生じるようにしても良い。その場合に歯車状突起がパネルにコツコツとぶつかる触感と同期して行が送られるので送った行数が触覚を通じて把握できるようになる。さらに転動体の一部にのみ歯車状突起を儲け、他は通常の滑らかな曲面とすれば、転動体上で指で押し込む位置に応じて、転がしたときの触感と入力する情報の内容を変えることができ、多様な情報を触覚で区別して入力できるようになる。ただしyの値を連続的に入力したい場合には歯車状の突起は導入しない方が良い。
【0032】
本実施形態では、転動体とタッチパネルの接触点を1つに制限する方法として、タッチパネルは平面とするが、転動体下部表面を転がす方向とそれと直交する方向の両方向に湾曲させる構成例と、転動体下部表面を転がす方向にしか湾曲させずに円筒状の曲面とするが、タッチパネルを点動体が転がる方向と直交する方向に湾曲した曲面とする構成例とを提案している。図8はこの2つの構成例を比較した図であり、(a)(b)には、パネル18が平面の場合に転動体16がラグビーボールの形状を取ることで両者の接触点31を1つに制限している様子を、側面図(a)と、その破線30における断面図(b)に示す。また、(c)(d)はパネル19が、点動体が転がる方向と直交する方向に湾曲した曲面である場合に、転動体17が円筒形状を取ることで両者の接触点32を1つに制限している様子を示す側面図(c)とその破線30における断面図(d)である。
【0033】
本実施形態の転動型入力装置で、姿勢検出センサを利用しない場合について、メニュー選択と文字入力を行う場合のプログラムのGUI(グラフィカルユーザインターフェイス)をそれぞれ図9の(a)(b)と(c)(d)に示す。まず(a)ではメインメニューの3つの項目(L、C、R)がディスプレイ画面の下部に表示されている。この状態で転動体の3つの隆起の1つを押し込むとその位置に応じた項目が選択される。この例では左側の隆起を押したため、それに対応した項目Lが選択され、その項目に対応したサブメニューがポップアップして(b)に示されるように表示されている。続いて左側隆起を押し込んだまま転動体上部を下部に対してスライドさせて指を左側に動かすと、(b)の矢印に示されるように、フォーカスの当たっているメニュー項目が左に移動する。フォーカスを上下に移動するには転動体を前後に転がせば良い。こうして選択したメニュー項目は転動体が離反するタイミングか、背後のタクトスイッチを押すタイミングで確定して入力する。この原理をアルファベットの入力に応用したものが図9の(c)(d)であり、上述したメインメニューの3つの項目で、QWERTY方式のキーボードを近似するキー配列の3つのエリアを選択するようにし、ザブメニューでは各エリア内の3行3列の文字を項目として、その1つを選択することで、QWERTY方式のキーボードに慣れ親しんだ操作者が文字入力を容易に行えるGUIを構成している。
【0034】
メニュー選択の具体的な手順の一例は次のようになる。
(1)接触位置(x,y)を検出する。(2)接触位置のxの値に基づき、それが予めメニューの列数に応じて規定した複数の候補範囲のいずれに含まれるのかを判断する。選ばれた範囲をIとする。(3)Iに対応する列にフォーカスを移す。(4)接触後接触を維持したまま接触位置のyが変化するときに、その変化量をΔyとする。(5)Δyの値に応じてメニューのフォーカスの当たる行を移動する。
上記は本実施形態の転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムの一実施例である。
【0035】
図10には、図9に示した方法と同じ原理で、携帯電話で標準となっているキー配列のキー入力を行うためのGUIを示している。この場合には本実施形態の転動型入力装置を図に示すように縦にして画面と関連付けて操作する。この場合のメインメニューは、携帯電話のキー配列を上下の2つのエリア25と26に分けて、各エリアに対応する2つの項目で構成する。まずは転動体上部表面の2つの隆起をこれらのエリアに対応付け、押し込んだ隆起に対応するエリアが選択されてフォーカスが当たるようにする。続いて押し込んだまま、転動体上部を下部に対してスライドさせると、そのスライド方向に応じてフォーカスの当たっているエリア内で選択されるキーの位置27が上下に動くことになる。また転動体を転がすとその転がす方向に応じて、フォーカスの当たっているエリア内で選択されるキーの位置が左右に動くことになる。こうして目的のキーを選択した後で転動体から指を離して転動体をタッチパネルから離反させると、その時のタイミングで選択されていたキーに対応する文字や指令が入力するようにする。または背後のタクトスイッチを押すか離すタイミングで入力するキーを確定するようにしても良い。これは本実施形態の転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムの一実施例である。
【0036】
図11には、本実施形態の転動型入力装置に姿勢センサを導入し、そのセンサの検出結果を使用して本体を水平にした場合と垂直にした場合を区別して、スクロールやカーソル(フォーカス)の動きの方向を切り替える方式を示す。図中のGの矢印は重力の方向を示している。本実施例では姿勢検出センサはGの方向を基準にして相対的な本体の姿勢を検出しているが、例えば外部機器のディスプレイなどにマーカーを付けて、そのマーカーの位置と方向を基準にして本体の姿勢を検出しても良い。まず本体を垂直に立てた場合には、転動体を転がすとその上部表面の隆起のどこを押して転がすかということに応じて、横方向のカーソル移動、フォーカス移動、スクロールのいずれかが選択されて、転がす方向(この場合には左右の方向)に移動またはスクロールが行われる。本実施形態の転動型入力装置ではx軸上の値を連続的に区別できるので、さらに細かく押す位置を区分してその位置に応じてカーソル移動やスクロールの速さを連続的に変更できるようにしても良い。同様に本体の姿勢を水平にすると、上述した原理で転動体の押し込む位置に応じてカーソル移動、フォーカス移動、スクロールのいずれかが選択されて、転がす方向(この場合には上下の方向)に移動またはスクロールが行われる。この例では、本体の姿勢設定と転がすという操作がカーソル移動やスクロールの動きと直感的に対応が取れて、本実施形態の転動型入力装置がその特徴を発揮できるプログラムの構成例になっている。
【0037】
以上の説明ではいずれも転動体をタッチパネルの上に支持するために、バネを用いる構成例を用いてきたが、支持方法としては、バネを用いなくとも、転動体がタッチパネルに対して、回転、並進、傾斜の相対的運動ができるように支持するのであれば、他の方法でも良い。図12にはそのような別方式の1つを示し、柔軟に変形し得るが力を加えるのを止めれば元の形状に復帰するシリコンゴムのような素材を用いて構成した支持膜23でタッチパネル2の上に転動体の下部8を支持する方法を示す。(b)(c)(d)の断面図には、このような方法で支持した場合に転動体に上から力を加えてタッチパネルに接触させた後で接触を保ったまま転動体を転がす様子を示す。通常では(b)のように転動体はシリコンゴムの膜によってパネルの上に持ち上げられているが、転動体の上部1に上から力を加えてパネルに押し付けると(c)のように転動体の下部8がパネル2に接触点24で接触する。そのまま転がすと接触点24は(d)のように移動する。なおこれらの図を見るとシリコンゴム膜23が転動体の動きと共に変形する様子が分かる。なおこの場合にも転動体の上部は下部に対して図中の黒い太線を境に分離されており、上部は下部に対して相対的にスライド移動するように構成されている。
【0038】
本実施形態の効果的な応用例の一つとして音楽プレイヤ用のリモコンが挙げられる。ヘッドホンケーブルの途中に本実施形態の転動型入力装置を取り付けて、前記接触位置(x,y)のxの値に応じて音楽の再生速度の調整や、音量調整、アルバム・曲選択の機能を選び、選択した機能について今度はyの値を変えて、具体的に再生速度や音量、チャンネルを定めれば良い。
【0039】
またテレビや映像レコーダのリモコンとして利用しても良い。前記接触位置(x,y)のxの値に応じて画面の再生速度の調整や、音量調整、チャンネル選択の機能を選び、選択した機能について今度はyの値を変えて、具体的に再生速度や音量、チャンネルを定めればよい。また番組表を選択する場合には、本体の姿勢を変えて番組表上のフォーカスを移動する方向を変えて、選んだ方向に対して転動体を転がしてフォーカスを移動すれば良い。なおその場合には本装置の裏側に手や指に留めるためのバンドを設けておくと指を転動体から自由に離すことができるので便利である。
【0040】
あるいは筆記用あるいはスタイラスのペンにおいて、指で保持する部分に本実施形態の転動型入力装置を取り付けてペンと一体化した構成にしても良い。そうすれば書類記入の最中にペンの姿勢を変えてディスプレイ上のスクロールやカーソルの移動方向を変え、さらに転動体を転がすことでカーソルやフォーカスを目標地点にまで移動することができるので、ペンで筆記しながら、同時にコンピュータに対して基本的なGUIの操作を実行できる。
【0041】
以上の説明で本実施形態の重要な構成部材の1つであるタッチパネルとしては、次の各方式(センサ)との組み合わせで、接触、接近、加圧位置を検出するものがあり、これらの方式如何に関わらず上述した原理の中で利用することができる。(1)抵抗膜を用いて接触(加圧)位置に応じて変化する抵抗値を用いて(x,y)の座標値を算出する方式、(2)物体の接近によって変化する静電容量、あるいは電界を検出して接近位置を算出する静電容量方式、(3)圧電素子を使って加圧地点を検出する方式、(4)光学的に物体の接近を光の反射や遮蔽を通じて検出する方式、(5)ホール素子のように磁界の変化を通じて接触位置、接近位置を検出する方式、さらには最も単純に(6)加圧した地点で接触する電極の導通関係を通じて加圧位置を検出する方式。これらの方式による接触位置検出手段を設けることにより、実用的な精度で位置検出が可能となる。
【0042】
本発明は、上述の実施の形態に限定されること無く、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。たとえば、上記の実施形態では、転動体50をバネ4によって、タッチパネル2から所定の隙間をもって浮動的に支持しているが、バネ4に替えて、ゴム材、板バネ等の弾性材を使用して台5あるいはタッチパネル2から転動体50を回動可能に支持する軸部材を介して支持させるようにしても良い。勿論、タッチパネル2の感度を低く調整すれば、転動体を浮動させず常時タッチパネル2に接触した状態でも、加圧力が弱いときは接触を検知せず、所定の加圧力で押したときにのみ検知するように形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態による転動型入力装置の全体像を示す側面図であり、部分的に内部構造も示している。
【図2】本発明の実施の形態による転動型入力装置の全体像を示す斜視図であり、(a)は転動体上部が下部に対してスライド移動していない場合の図で、(b)は転動体上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。
【図3】本発明の実施の形態による転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す図であり、(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図である。
【図4】本発明の実施の形態による転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す図であり、指で転動部の左側を押し下げてタッチパネルに接触させた状態を示す。(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図である。
【図5】本発明の実施の形態による転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す図であり、指で転動部の中央部を押し下げてタッチパネルに接触させた状態を示す。(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図、(e)は転動部をタッチパネル上で前方へ向けて転がした時の左側側面図である。
【図6】転動部の形状を分かりやすくするために3次元的に陰影をつけて形状を表示した図である。(a)(b)(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の図であり、(d)(e)(f)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。
【図7】転動部下部がタッチパネルに接触して転がる様子を示す断面図であり、(a)(b)(c)は転動部下部が単純に湾曲した曲面の場合の図、(d)(e)(f)は転動部下部が周期的に歯車状に隆起する歯を持つ曲面の場合の図である。
【図8】本発明の実施の形態の2つの構成例を比較した図であり、(a)(b)はパネルが平面の場合に転動体がラグビーボールの形状を取ることで両者の接触点を1つにしている様子を示す側面図(a)とその破線30における断面図(b)であり、(c)(d)はパネルが曲面の場合に転動体が円筒形状を取ることで両者の接触点を1つにしている様子を示す側面図(c)とその破線30における断面図(d)である。
【図9】本発明の実施の形態による転動型入力装置でメニュー選択(a)(b)と文字入力(c)(d)を行う場合のプログラムのGUI(グラフィカルユーザインターフェイス)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態による転動型入力装置で携帯電話のキーパッドと互換性のある形式でテンキー入力を行う場合のプログラムのGUIを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態による転動型入力装置で姿勢センサを使用して本体を水平にした場合と垂直にした場合を区別して、スクロールやカーソル(フォーカス)の動きの方向を切り替える方式を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態による転動型入力装置でタッチパネル上に転動体を支持する別方式を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコンピュータ用の入力装置に係り、特に手指で加圧しながら転がすことによって操作する転動型入力装置とプログラムに関する。
【0002】
近年、タッチパッド、タッチパネル、タッチディスプレイといった指やスタイラスでタッチして操作する接触位置検出装置(以下タッチパネルと総称する)が普及している。こうした装置では指や器具でタッチパネル表面を接触した地点の座標の入力が基本になる。本発明では、指とタッチパネルの間に転動体と呼ぶ機構を介在させて、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行うための装置とプログラムを与える。またスクロールやメニュー選択等においては、タッチしたり表面を擦ったりする感触よりも、ロータを回転したり転がしたりする感触の方が入力する情報と連想が取れて直感にそぐう場面も多い。本発明では、従来にはなかった「転がす(転動する)操作」に基づく新たな入力装置とその操作感と直感的に対応する応用プログラムを与える。
【背景技術】
【0003】
指で直接タッチパッドに触れる場合には、指が柔軟なために接触範囲は広がった領域となり、点とは見なせなくなる。このように広がりのある領域で接触している場合には、現在のタッチパネルでは、接触領域の重心の位置や中心位置を算出し、それを接触点とみなして、1点の座標情報を出力している。指をタッチパッドに押し付けて加圧して行くと柔軟な指は潰れて接触する領域の面積は次第に広くなる。逆に指がタッチパッドから離反して行く過程では、接触する領域の面積は次第に縮小して行く。このように指が接触したり離反したりする過程で、接触している領域は必ずしも中心を一定に保ったまま周辺が均一に増大、縮小して行くわけではない。指の傾け方によっては接触領域の面積は特定の方位にのみ増大し、その場合に重心で座標を定めると意図しない座標情報の変化が入力されてしまう。指で座標入力する場合に生じるこうした問題を解決する最も簡易な方法はスタイラスと呼ばれるペン状の器具の利用である。しかしながら一度スタイラスを持ってしまうと、ボタンを押すなどの他の操作ができなくなることが問題となる。
【0004】
そこで、本発明では、指が特定の器具を持つことによる束縛を避け、かつ指が直接タッチすることによる不正確さを排除するために、タッチパネル上で回転、並進移動、かつ傾斜可能な自由度を持って支持されて指とタッチパネルの間に介在する器具を導入し、指がこの器具を介在してタッチパネルに接触することによって精度良く座標情報を入力すると共に、器具を前後に転がしたり左右に傾けたりする操作を通じて、十字キー入力やスクロール、さらには文字入力といった多様な情報の入力を能率良く行うための装置とプログラムを与える。
【0005】
本発明に関連する特許文献を以下に示す。
【特許文献1】特開平9−128149号公報
【特許文献2】特開2001−306238号公報
【特許文献3】特開2005−63230号公報
【特許文献4】特開2006−301736号公報
【特許文献5】特開2006−302348号公報
【0006】
特許文献1と2では、タッチパネル上でローラ状の転動体を転がす操作によってデータや指令を入力する方法が示されている。いずれも通常のペン先による座標入力とローラによる座標入力を区別できるように特殊な形態のローラを利用している。特許文献1では、2枚の円盤を同じ回転軸に離して取り付けた形態のものをローラとして使用している。2つの円盤はそれぞれ、周縁部が中心から一定の角度毎に交互に切り除かれていて、残った部分を転がしたときに2つの円盤の周縁部がタッチパネルと交互に接触するように構成されている。この交互の接触によって入力する座標系列は、特定の周期と振幅で位置を変えることから、通常のペン先による座標入力と区別している。また特許文献2では、ローラをタッチパッド上で転がすときに、ローラ表面上に隆起するように設けられた波形状のパターンがタッチパッド表面に接触することで、入力する座標点列もこの周期的な波形パターンに従ったものとなるため、そのことを利用して通常のペン先による座標入力と区別している。このようにローラの入力を通常のペン先による入力を区別することで、例えば、ローラ入力時には消去モードとみなして、描画データを消去する目的に利用している。
【0007】
次に特許文献3から5は本特許で使われる要素技術に関わるもので、特許文献3では、傾斜センサを利用して検出する本体の姿勢と座標入力を組み合わせて多様な操作を行う方法が示されている。また特許文献4と5は、帯状のタッチパネルを利用した情報入力装置に関するもので、前者では触れた位置に応じて、また後者では帯状タッチパネル上で指を動かす速さに応じて動画の再生速度を決定する方法が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みて考案されたものであり、指とタッチパネルの間に特殊な器具を介在させることによって、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に応用せしめ、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行うことのできる転動型入力装置とプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の転動型入力装置は、パネルと、該パネルに接触しながら転動かつ傾動可能に形成される転動体と、前記パネルに設けられ、前記転動体下部の表面が前記パネルに接触する接触位置(x、y)を検出する接触位置検出手段とを具備し、前記パネルおよび前記転動体の各表面を、前記転動体が前記パネルに接触するときに、一点のみで接触する形状に形成し、前記接触位置(x、y)は、前記パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めたときの接触位置であり、前記接触位置(x、y)のxを、前記転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、前記接触位置(x、y)のyを、前記転動体を前記パネル上で接触させながら転がすことによって定めることを特徴とする。
【0010】
本発明では、たとえば転動体をパネルから所定間隔をもって浮動的に支持し、転動体を加圧することによってパネルに一点で接触しながら転がるように回転させ接触位置が移動するようにした。さらに転動体は加圧位置を変えることによって傾斜する構造とし、転がり方向と直交する方向にも接触位置が移動可能にした。なお、「傾動」とは、ある地点のパネル表面と転動体との相対的な角度あるいは位置関係が変われば足りる趣旨である。
ここで、パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めると、接触位置(x,y)のxは、転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、yは、前記転動体を転がすことによって接触位置をy軸方向に変化させて定めることを特徴とする。x軸は転動体の回転軸と平行な方向に設けられた軸であり、その軸上の加圧位置に応じて、転動体は後の図4に示すように傾きを変えて、接触点のxが加圧位置のxに一致するのである。またy軸は転動体が転がる方向に設けられた軸であるから、転動体が転がると図5に示すように接触点のyが変化するのである。
【0011】
ここで、「一点のみで接触する」とは、接触を検知する箇所が一点のみになるように形成することを意味する。したがって、接触を検知しない態様、たとえば電気的導通状態によって接触を検知するような場合に絶縁体などの接触部位が他に存在しても、これによって一点のみで接触するという要件を満たさないというものではない。
【0012】
本発明の請求項2に記載の転動型入力装置では、さらに、前記接触位置検出手段は、加圧センサ、静電センサ、電磁センサ、電気抵抗値または電極の導通関係を通じて接触位置を検出する部材で形成したことを特徴とする。
【0013】
接触位置検出手段として上記のセンサ等を用いることによって、実用的な精度で位置検出が可能となる。
【0014】
本発明の請求項3に記載の転動型入力装置は、平面状のパネルと、その表面に接触しながら転がり、かつ傾斜することができるように、平面状のパネルに対して回転かつ移動かつ傾斜可能となるように支持された転動体とを備えていている。この転動体の下部表面は転がる方向に断面縁形状がほぼ円弧となるように湾曲した曲面を形成することによって、転がりやすくなっている。また、転がる方向と直交する方向にも、パネル表面と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲し、これらの湾曲によってパネル表面は転動体下部表面と1点のみで接触するように構成されている。すなわち分かりやすく言えば、転動体の下部表面はラグビーボールのように表面が直交する2方向に湾曲しているために平面との接点が1つになるのである。
【0015】
本発明の請求項4に記載の転動型入力装置は、上述した発明が平面状のパネルを用いていたのに対して、一方向に湾曲した曲面状のパネルを用いている点に違いがある。上述の発明と同様に、その表面に接触しながら転がってかつ傾斜できるように回転かつ移動かつ傾斜可能となるように支持された転動体を用いているが、今度は、転動体の下部表面は転がる方向に断面縁形状が概円弧となるように湾曲するだけで良い。すなわち転動体の形状は円筒のように定めても良い。それでも、パネル表面が、転動体が転がる方向と直交する方向に、転動体と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲しているため、パネル表面が転動体下部表面と接触する点は1点のみとなる。パネル表面上に前述したのと同様のx−y座標系を定めるときに、パネルは、その表面と転動体下部表面の接触位置(x,y)を、加圧センサ、静電センサ、電磁センサ、電気抵抗値または電極の接触関係を通じて検出する手段を備えている。そして接触位置(x,y)のxは、転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、yは、転動体を転がすことによって定めることを特徴とする。今度はパネル側が湾曲しているが、x軸上の加圧位置に応じて転動体は傾斜角度を変えて、接触点のx座標値は加圧位置のx座標値と一致するようになる。また転動体の転がり角度によって接触位置のy座標値が定まるようになる。
【0016】
本発明の請求項5に記載の転動型入力装置は、以上の転動型入力装置において、転動体の上部表面の指と接する部分が、転動体の下部に対して、転動体の回転軸と平行な方向にスライド移動するように構成されたことを特徴とする。このように構成することによって、転動体の上に乗せた指を離すことなく乗せたまま左右に動かすことが可能になる。またこのときに転動体とパネルは接触したまま接触点を移動して、接触点のx座標値だけを変化させることになる。このように接触したままの状態でx座標値の変化が検出されれば、それは指を転動体に乗せたまま左右にスライド移動する操作が加えられたためであると判断し、その操作に応じた指令やデータを入力することができる。
【0017】
本発明の請求項6に記載の転動型入力装置は、手指の触覚に応答を返すために振動生成器を備えている。そしてこの振動生成器は、転動体の転動角度が所定量に到達した時、または接触位置(x,y)が所定位置に到達したとき、あるいはその他所定の動作が達成されたとき、または外部機器からの指令により振動して、手指に操作の達成やその他のメッセージを通知するように構成されている。
【0018】
本発明の請求項7に記載の転動型入力装置は、姿勢検出センサを備え、検出される装置本体の姿勢と接触位置(x,y)をそのまま外部機器へ伝送してそこでの処理に委ねるか、または装置本体内部で処理して所定の動作を実行することを特徴とする。このように姿勢情報を組み合わせることにより多様な情報の入力が可能になり、特に姿勢の変化と直感的に連携の取れる指令を入力する際に用いると良い。例えば、図11では、スクロールやカーソル移動の方向が姿勢の方向と対応が取れるようにすることで、転がす操作と姿勢の設定とコンピュータの動作が直感的に関連付くようになっている。
【0019】
本発明の請求項8に記載の転動型入力装置は、装置本体において転動体の設けられている側の裏側にタクトスイッチを設けたことを特徴とする。上述した姿勢の変化や転がしの操作だけでは、最終的な入力の確定までせずに、カーソルの移動やスクロールのみを行い。そうして選択した項目を確定して入力する際にこのタクトスイッチを用いると良い。またタッチパネルへの不測の接触により誤入力が生じることを防ぎたい場合に、タクトスイッチを押すことで始めてタイミングを確定するようにすると良い。あるいは図1に示すように3つのタクトスイッチ20を転動体の背後に設ければ、これらの押す位置でx座標方向の位置情報を3種区別して指定することも可能である。
【0020】
本発明の請求項9に記載の転動型入力装置は、転動体と接触位置検出手段と別構成とし、使用時に一体として使用するものである。
たとえば、接触位置検出装置については既存の装置のタッチパネルを使い、製品としてはタッチパネルを除いた本願発明の転動体部分だけを販売し、ユーザはそれを手持ちのPDA等に付けて利用することが可能となる。
【0021】
本発明の請求項10に記載の発明は、以上の述べた転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムであって、転動体とパネルの接触位置(x,y)のxの値に基づいてメニューの項目配列中の列を指定し、yの値またはその変化量に基づき、メニューの項目配列中の行または行の移動量を指定することを特徴とする。通常のマウスでカーソル(またはフォーカス)を移動してメニュー項目を選択する場合には、目標地点にまでカーソルが移動するのに時間がかかり、そのために入力能率が低いことが問題であった。本発明の転動型入力装置とプログラムでは、この問題を次のように解決している。まずx軸方向については、途中のカーソルの移動の処理を経ずに、指の着地点によって直接的にxの値を指定することができる。その際に操作者がxの値の目安をつけるために転動体の指が接触する表面上には、凹凸が設けられており、例えば、図1の例では、3つの隆起がある。こうした凹凸手掛かりに基づき、xの値を直接的に指定して、yの値のみを転動体を転がしてカーソルやフォーカスを移動して指定することによって、入力能率を向上することができる。通常、ディスプレイの表示内容は横方向よりも縦方向にスクロールする場合が多く、横方向については、ディスプレイに表示されている内容のx座標の位置がスクロールによって動いてしまうことなく確定していることから、画面上の表示内容の横方向の絶対位置と転動体上のx軸方向の絶対位置との対応が取れるので、上述したように指の着地点でx座標の値を直接指定するようにした。一方、y座標についてはスクロールにより表示内容が上下に動くため絶対位置が固定せずに、また表示内容にy軸方向にエンドレスに動く自由度が必要とされる場合が多いため、入力能率が落ちることには妥協して、y軸方向については従来通りにカーソルを移動させながら項目を指定する方法を採用した。この場合にはy座標の値はその相対的な変化量を、転動体を転がす際の相対的な回転角度によって指定することになる。なお従来のホイールのような回転体を操作するときと本発明の転動体を操作する場合の本質的な違いは、同じ角度だけ回転させるのに後者は前者の2倍の指の運動量が必要となる点であり、タッチパネルの位置検出精度が、人が指の位置決めをする精度よりも高くなっている実情を考慮すると、後者の方がタッチパネルの性能を引き出す上で有利なことが分かる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、指とタッチパネルの間に回転、併進、傾斜可能に支持された転動体を介在させることによって、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に応用せしめ、単に座標を入力することに留まらず、ダイヤルやホイール、あるいはボタンや十字キー、キーボード等の入力デバイスの機能を兼ねて多様な情報入力を行うことを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に本発明の実施の形態による転動型入力装置60の全体像を示す。側面図であるが、外観図になっている部分と内部構造を示している透視部分が混在して図示されている。この図では転動体50は、その上部1が下部8に対して左にスライドしている状態で示されている。このスライド移動は操作者が指で力を加えることによって起こり、指を離せばスライド移動しない状態に復帰する。転動体上部の隆起部分3は操作者に指の位置に関する触覚的な手掛かりを与えるために設けられている。また転動体下部のパネル接触部は、接触した場合の衝撃を柔らかくし、また滑り止めのためにゴムカバー8bで覆われている。このゴムカバーの断面形状は円弧になっており、転動体はタッチパネル2の表面に接触した後で、その上をタイヤが転がるように、所定の角度の範囲内で前後に回転する。本実施例ではニュートラルの角度を基準にして前後に45度まで回転して転がるように設計されている。この角度の範囲であれば、最大角度まで転がしても指は転動体上部に常に触れることになる。転動体の半径をRとするときに45度転がると転動体はπR/4だけパネル上を移動するが、このときに転動体上部に乗せた指の移動量はπR/2となり、指の移動量が半分に縮小されてパネルに伝わる。現状のパネルの解像度は十分に高く、指が震えなどのために位置指定困難になることによる人の能力の限界を超える解像度を備えている。したがって、このように指の移動量が縮小されると指の震えも半分に縮小されて伝わり、パネルの解像度をより高く引き出すことができる。なお転動体はパネルの上にバネ4を通じて支持されており、バネの回転や伸縮によって、パネルに対して相対的に回転、並進、傾斜のいずれの運動も自由にできるようになっており、それにより上述したパネル上での転がり運動と傾斜角度の変化が可能になっている。
【0024】
次に転動体とタッチパネル以外の構造であるが、同じ図1に今度は透視図で筐体内部の様子が示されている。まずタクトスイッチ20が3つ設けられており、これは前述したように入力を確定したり、転動体の回転軸の方向に沿って3つの位置情報を与えたりするために用いる。あるいは指で転動体を強くタッチパネルに押し付けると背後からタクトスイッチも押すことになるので、転動体のタッチパネルへの接触と同時にタクトスイッチも押し込まれるように構成しておけば、転動体がタッチパネルに接触したタイミングをタクトスイッチがONとなるタイミングとして検出できる。また21は振動生成器であり、所定の操作が行われて入力が確かに受け入れられたことを操作者の触覚を通じて通知する目的に使用する。例えば転動体が所定の角度転がるたびに発生することもあるし、ディスプレイの表示内容に同期して、カーソルが目標地点に到達したとき等に振動するようにしても良い。さらには外部機器からの指令によって振動させて、任意のメッセージを通知する目的に使用しても良い。22は姿勢センサであり、本体が重力に対して、あるいは外部機器に対して相対的にどのような姿勢でいるのかを検出する。この姿勢の結果を、タッチパネルが検出した接触位置の情報と組み合わせて多様な情報を指定することが可能になる。
【0025】
図1のままでは本実施形態の転動型入力装置の形状が分かりにくいので図2に斜視図を示す。(a)は転動体上部が下部に対してスライドしていない場合の図であり、(b)は転動体上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。
【0026】
また図6に、さらに転動体部分の立体形状を把握しやすくなるように、3次元的に陰影をつけて形状を表示した図を示す。(a)(b)(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の図であり、(d)(e)(f)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。(c)の図で転動体下部に見える歯車状の隆起は後に述べるように転動体とタッチパネルとの接触パターンを特殊なものにするために設けているが、これはなくても構わない。タッチパネルが高解像度に位置検出する能力を活用して、連続的にカーソルを移動したい場合には、むしろこのような歯車状の突起は設けずに単純にラグビーボール状の滑らかな曲面にしておいた方が良い。転動体の形状において重要な点は、転動体下部の表面形状がラグビーボールの曲面の形状をしており、回転軸の方向にも、それと直交する方向にも表面が湾曲しており、タッチパネルとの接触点が1つに制限されることである。なお歯車状の突起を設けた場合には後に述べるように2つの歯車の先端が同時にタッチパルに接触する場合があるが、その場合には2つの接触点の中間点が検出されて、1つの接触点として解釈されることになる。
【0027】
図3には、本実施形態の転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す。(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図である。ここで新しく加わった符号を以下に説明する。まず6は転動体下部8を支持するために台5から立つ支柱であり、そこにバネ4の端部を係合ピン9でつなげて転動体をタッチパネル2の上に支持する。バネの他端は転動体下部8につながっており、その下部に対して(c)に示すように上部1が回転軸方向に平行にスライド移動できるようになっている。7は転動体下部に設けられた歯車状の突起であるがこれはなくても構わない。
【0028】
図4には図3に示した三面図において、指で転動部の左側を押し下げて転動部をタッチパネルに接触させた状態を示す。まず指は転動体上部の隆起部分10を触覚的に把握して、そこを押し込むようにして転動体をタッチパネルに押し付ける。すると(b)に示すようにバネ4が伸びて、転動体は左側に傾斜して、指で押す部分が率先して下がり、押した位置でもってタッチパネルに接触する。この時にタッチパネル下部はラグビーボールの表面のように、転がる方向にもそれと直交する方向にも湾曲しているため、接触点が1つに制限される。この接触点は図4(b)中に11の黒丸で示されている。タッチパネル上で転動体が転がる方向をy軸、それと直交する方向(転動体の回転軸の方向)をx軸として座標系を定めると、x軸方向の接触位置は、こうして指が転動体上部表面上で下方向に(転動体をタッチパネルに押し付けるように)力を加える位置で定まることになる。以上のようにして転動体の下部表面をタッチパネル表面に一点11で接触させている状態で、今度は(c)に示すように指14を左方向に動かすと、その動きに追随して転動体上部1が下部8に対して図に示すようにスライド移動する。この時に転動体下部が回転軸と平行な方向に湾曲しているため、転動体の傾斜角度が変わり、接触点11は(c)の15にまで移動する。この移動は転動体がタッチパネルに接触したまま行われる。
【0029】
以上の説明の中で注意するべき点は、バネの張力の設定が悪いと、転動体を指で押している点の直下でなく、別の点で最初の接触が起こり、その後、転動体の傾斜角度が変わって、徐々に接触点が移動して、最終的に転動体を指で押している点の直下が接触点になるような動作も起こり得るという点である。この場合は、操作者が意図しない点で最初の接触が起こり、この接触後の入力は上述したスライド移動時の入力と区別できなくなってしまう。そこでこの問題を防ぐために転動体下部の湾曲の曲率とパネルと転動体の間隔そしてバネの張力を最適に決定する必要がある。あるいはそれが難しい場合には、タッチパネルの裏側に設けたタクトスイッチで接触のタイミングを指定して、タクトスイッチがONするタイミング以外でのタッチパネルと転動体の接触は接触とみなさないようにする方法もある。こうした工夫によって、想定外の接触と接触したままの接点移動の誤入力を排除すれば、転動体がタッチパネルに接触したまま接触点がx軸方向に移動することは、上述したように指を転動体上部に乗せて転動体をタッチパネルに押し付けた後で、転動体上部と下部とのスライド機構を利用して、指を左右に動かす場合にしか起こりえない。したがってそのような指の運動を他の運動と区別して多様な情報を指定することが可能になる。
【0030】
図5には、今度は指を転動体の中央部の隆起10の上において、転動体をタッチパネルに押し付けて、転がす様子を示す。図5(b)に示すように最初の接触点は11となるが、その状態で転動体を転がすと(d)と(e)に示すように接触点はy軸方向に移動する。この移動は接触状態を維持したまま行われる。(d)では歯車状の突起7が最初に接触しているが、歯車状の突起を導入しない場合には、半円形の断面の円周上の一転が接触し、それが連続的に移動して行くのでyの値は連続的に変化する。一方、歯車を導入すると後述するように移動は跳躍的に起こる。なお(c)にはさらに指を左右に動かして転動体上部を下部に対してスライド移動する操作を組み合わせて接触点を15に移動した例を示す。以上のように接触点のy軸上の位置は転動体を転がすことで指定する。図に示した例では、転がす角度はニュートラル位置に対して前後方向にそれぞれ45度までと限られているので、yの値は絶対位置でなく、相対的な移動量を指定するようにした方が良い。ただしメニューの行数が少ない場合等、y軸の移動範囲が少なくて済む場合にはyの絶対的な位置を絶対的な転がし量に応じて定めても良い。
【0031】
図7には転動部下部がタッチパネルに接触して転がる様子を断面図で示す。(a)(b)(c)は転動部下部が単純に湾曲した曲面でラグビーボールの表面状である場合の図であり、(d)(e)(f)は転動部下部が周期的に歯車状に隆起する歯を持つ曲面の場合の図である。タッチパネルとの接触点を黒丸で示しているが、前者では転動体の転がりと共に接触点が連続的に移動するに対して、後者では接触点は跳躍しながら移動する。まず(d)で歯車状突起の1つがタッチパネルに接触し、その接触点を検出した後で、さらに転がると(e)のようにもう1つの歯車状突起がタッチパネルに接触し、その接触の瞬間に、検出される接触点は(e)の黒丸に示すように、実際に接触している2つの歯車状突起の2つの接触点の中間位置に跳躍する。これはタッチパネル自体が複数の点が同時接触したときにその重心位置を検出する特性を持つためである。その後さらに転がって行くと、(f)に示すように最初に接触した歯車状突起が離反した瞬間に、検出される接触点は2つ目の歯車状突起の接触点にと跳躍する。このような跳躍的な座標点の変化を特徴的な接触パターンとして登録しておき、そのような接触パターンが検出された場合に、所定の指令が実行されるようにしても良い。あるいは跳躍が生じた場合に同期するように、スクロールの行送りが生じるようにしても良い。その場合に歯車状突起がパネルにコツコツとぶつかる触感と同期して行が送られるので送った行数が触覚を通じて把握できるようになる。さらに転動体の一部にのみ歯車状突起を儲け、他は通常の滑らかな曲面とすれば、転動体上で指で押し込む位置に応じて、転がしたときの触感と入力する情報の内容を変えることができ、多様な情報を触覚で区別して入力できるようになる。ただしyの値を連続的に入力したい場合には歯車状の突起は導入しない方が良い。
【0032】
本実施形態では、転動体とタッチパネルの接触点を1つに制限する方法として、タッチパネルは平面とするが、転動体下部表面を転がす方向とそれと直交する方向の両方向に湾曲させる構成例と、転動体下部表面を転がす方向にしか湾曲させずに円筒状の曲面とするが、タッチパネルを点動体が転がる方向と直交する方向に湾曲した曲面とする構成例とを提案している。図8はこの2つの構成例を比較した図であり、(a)(b)には、パネル18が平面の場合に転動体16がラグビーボールの形状を取ることで両者の接触点31を1つに制限している様子を、側面図(a)と、その破線30における断面図(b)に示す。また、(c)(d)はパネル19が、点動体が転がる方向と直交する方向に湾曲した曲面である場合に、転動体17が円筒形状を取ることで両者の接触点32を1つに制限している様子を示す側面図(c)とその破線30における断面図(d)である。
【0033】
本実施形態の転動型入力装置で、姿勢検出センサを利用しない場合について、メニュー選択と文字入力を行う場合のプログラムのGUI(グラフィカルユーザインターフェイス)をそれぞれ図9の(a)(b)と(c)(d)に示す。まず(a)ではメインメニューの3つの項目(L、C、R)がディスプレイ画面の下部に表示されている。この状態で転動体の3つの隆起の1つを押し込むとその位置に応じた項目が選択される。この例では左側の隆起を押したため、それに対応した項目Lが選択され、その項目に対応したサブメニューがポップアップして(b)に示されるように表示されている。続いて左側隆起を押し込んだまま転動体上部を下部に対してスライドさせて指を左側に動かすと、(b)の矢印に示されるように、フォーカスの当たっているメニュー項目が左に移動する。フォーカスを上下に移動するには転動体を前後に転がせば良い。こうして選択したメニュー項目は転動体が離反するタイミングか、背後のタクトスイッチを押すタイミングで確定して入力する。この原理をアルファベットの入力に応用したものが図9の(c)(d)であり、上述したメインメニューの3つの項目で、QWERTY方式のキーボードを近似するキー配列の3つのエリアを選択するようにし、ザブメニューでは各エリア内の3行3列の文字を項目として、その1つを選択することで、QWERTY方式のキーボードに慣れ親しんだ操作者が文字入力を容易に行えるGUIを構成している。
【0034】
メニュー選択の具体的な手順の一例は次のようになる。
(1)接触位置(x,y)を検出する。(2)接触位置のxの値に基づき、それが予めメニューの列数に応じて規定した複数の候補範囲のいずれに含まれるのかを判断する。選ばれた範囲をIとする。(3)Iに対応する列にフォーカスを移す。(4)接触後接触を維持したまま接触位置のyが変化するときに、その変化量をΔyとする。(5)Δyの値に応じてメニューのフォーカスの当たる行を移動する。
上記は本実施形態の転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムの一実施例である。
【0035】
図10には、図9に示した方法と同じ原理で、携帯電話で標準となっているキー配列のキー入力を行うためのGUIを示している。この場合には本実施形態の転動型入力装置を図に示すように縦にして画面と関連付けて操作する。この場合のメインメニューは、携帯電話のキー配列を上下の2つのエリア25と26に分けて、各エリアに対応する2つの項目で構成する。まずは転動体上部表面の2つの隆起をこれらのエリアに対応付け、押し込んだ隆起に対応するエリアが選択されてフォーカスが当たるようにする。続いて押し込んだまま、転動体上部を下部に対してスライドさせると、そのスライド方向に応じてフォーカスの当たっているエリア内で選択されるキーの位置27が上下に動くことになる。また転動体を転がすとその転がす方向に応じて、フォーカスの当たっているエリア内で選択されるキーの位置が左右に動くことになる。こうして目的のキーを選択した後で転動体から指を離して転動体をタッチパネルから離反させると、その時のタイミングで選択されていたキーに対応する文字や指令が入力するようにする。または背後のタクトスイッチを押すか離すタイミングで入力するキーを確定するようにしても良い。これは本実施形態の転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムの一実施例である。
【0036】
図11には、本実施形態の転動型入力装置に姿勢センサを導入し、そのセンサの検出結果を使用して本体を水平にした場合と垂直にした場合を区別して、スクロールやカーソル(フォーカス)の動きの方向を切り替える方式を示す。図中のGの矢印は重力の方向を示している。本実施例では姿勢検出センサはGの方向を基準にして相対的な本体の姿勢を検出しているが、例えば外部機器のディスプレイなどにマーカーを付けて、そのマーカーの位置と方向を基準にして本体の姿勢を検出しても良い。まず本体を垂直に立てた場合には、転動体を転がすとその上部表面の隆起のどこを押して転がすかということに応じて、横方向のカーソル移動、フォーカス移動、スクロールのいずれかが選択されて、転がす方向(この場合には左右の方向)に移動またはスクロールが行われる。本実施形態の転動型入力装置ではx軸上の値を連続的に区別できるので、さらに細かく押す位置を区分してその位置に応じてカーソル移動やスクロールの速さを連続的に変更できるようにしても良い。同様に本体の姿勢を水平にすると、上述した原理で転動体の押し込む位置に応じてカーソル移動、フォーカス移動、スクロールのいずれかが選択されて、転がす方向(この場合には上下の方向)に移動またはスクロールが行われる。この例では、本体の姿勢設定と転がすという操作がカーソル移動やスクロールの動きと直感的に対応が取れて、本実施形態の転動型入力装置がその特徴を発揮できるプログラムの構成例になっている。
【0037】
以上の説明ではいずれも転動体をタッチパネルの上に支持するために、バネを用いる構成例を用いてきたが、支持方法としては、バネを用いなくとも、転動体がタッチパネルに対して、回転、並進、傾斜の相対的運動ができるように支持するのであれば、他の方法でも良い。図12にはそのような別方式の1つを示し、柔軟に変形し得るが力を加えるのを止めれば元の形状に復帰するシリコンゴムのような素材を用いて構成した支持膜23でタッチパネル2の上に転動体の下部8を支持する方法を示す。(b)(c)(d)の断面図には、このような方法で支持した場合に転動体に上から力を加えてタッチパネルに接触させた後で接触を保ったまま転動体を転がす様子を示す。通常では(b)のように転動体はシリコンゴムの膜によってパネルの上に持ち上げられているが、転動体の上部1に上から力を加えてパネルに押し付けると(c)のように転動体の下部8がパネル2に接触点24で接触する。そのまま転がすと接触点24は(d)のように移動する。なおこれらの図を見るとシリコンゴム膜23が転動体の動きと共に変形する様子が分かる。なおこの場合にも転動体の上部は下部に対して図中の黒い太線を境に分離されており、上部は下部に対して相対的にスライド移動するように構成されている。
【0038】
本実施形態の効果的な応用例の一つとして音楽プレイヤ用のリモコンが挙げられる。ヘッドホンケーブルの途中に本実施形態の転動型入力装置を取り付けて、前記接触位置(x,y)のxの値に応じて音楽の再生速度の調整や、音量調整、アルバム・曲選択の機能を選び、選択した機能について今度はyの値を変えて、具体的に再生速度や音量、チャンネルを定めれば良い。
【0039】
またテレビや映像レコーダのリモコンとして利用しても良い。前記接触位置(x,y)のxの値に応じて画面の再生速度の調整や、音量調整、チャンネル選択の機能を選び、選択した機能について今度はyの値を変えて、具体的に再生速度や音量、チャンネルを定めればよい。また番組表を選択する場合には、本体の姿勢を変えて番組表上のフォーカスを移動する方向を変えて、選んだ方向に対して転動体を転がしてフォーカスを移動すれば良い。なおその場合には本装置の裏側に手や指に留めるためのバンドを設けておくと指を転動体から自由に離すことができるので便利である。
【0040】
あるいは筆記用あるいはスタイラスのペンにおいて、指で保持する部分に本実施形態の転動型入力装置を取り付けてペンと一体化した構成にしても良い。そうすれば書類記入の最中にペンの姿勢を変えてディスプレイ上のスクロールやカーソルの移動方向を変え、さらに転動体を転がすことでカーソルやフォーカスを目標地点にまで移動することができるので、ペンで筆記しながら、同時にコンピュータに対して基本的なGUIの操作を実行できる。
【0041】
以上の説明で本実施形態の重要な構成部材の1つであるタッチパネルとしては、次の各方式(センサ)との組み合わせで、接触、接近、加圧位置を検出するものがあり、これらの方式如何に関わらず上述した原理の中で利用することができる。(1)抵抗膜を用いて接触(加圧)位置に応じて変化する抵抗値を用いて(x,y)の座標値を算出する方式、(2)物体の接近によって変化する静電容量、あるいは電界を検出して接近位置を算出する静電容量方式、(3)圧電素子を使って加圧地点を検出する方式、(4)光学的に物体の接近を光の反射や遮蔽を通じて検出する方式、(5)ホール素子のように磁界の変化を通じて接触位置、接近位置を検出する方式、さらには最も単純に(6)加圧した地点で接触する電極の導通関係を通じて加圧位置を検出する方式。これらの方式による接触位置検出手段を設けることにより、実用的な精度で位置検出が可能となる。
【0042】
本発明は、上述の実施の形態に限定されること無く、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。たとえば、上記の実施形態では、転動体50をバネ4によって、タッチパネル2から所定の隙間をもって浮動的に支持しているが、バネ4に替えて、ゴム材、板バネ等の弾性材を使用して台5あるいはタッチパネル2から転動体50を回動可能に支持する軸部材を介して支持させるようにしても良い。勿論、タッチパネル2の感度を低く調整すれば、転動体を浮動させず常時タッチパネル2に接触した状態でも、加圧力が弱いときは接触を検知せず、所定の加圧力で押したときにのみ検知するように形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態による転動型入力装置の全体像を示す側面図であり、部分的に内部構造も示している。
【図2】本発明の実施の形態による転動型入力装置の全体像を示す斜視図であり、(a)は転動体上部が下部に対してスライド移動していない場合の図で、(b)は転動体上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。
【図3】本発明の実施の形態による転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す図であり、(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図である。
【図4】本発明の実施の形態による転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す図であり、指で転動部の左側を押し下げてタッチパネルに接触させた状態を示す。(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図である。
【図5】本発明の実施の形態による転動型入力装置のパネルと転動部及びその支持機構のみを示す図であり、指で転動部の中央部を押し下げてタッチパネルに接触させた状態を示す。(a)は上面図、(b)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の手前側側面図、(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の手前側側面図、(d)は左側側面図、(e)は転動部をタッチパネル上で前方へ向けて転がした時の左側側面図である。
【図6】転動部の形状を分かりやすくするために3次元的に陰影をつけて形状を表示した図である。(a)(b)(c)は転動部上部が下部に対してスライド移動していない場合の図であり、(d)(e)(f)は転動部上部が下部に対してスライド移動している場合の図である。
【図7】転動部下部がタッチパネルに接触して転がる様子を示す断面図であり、(a)(b)(c)は転動部下部が単純に湾曲した曲面の場合の図、(d)(e)(f)は転動部下部が周期的に歯車状に隆起する歯を持つ曲面の場合の図である。
【図8】本発明の実施の形態の2つの構成例を比較した図であり、(a)(b)はパネルが平面の場合に転動体がラグビーボールの形状を取ることで両者の接触点を1つにしている様子を示す側面図(a)とその破線30における断面図(b)であり、(c)(d)はパネルが曲面の場合に転動体が円筒形状を取ることで両者の接触点を1つにしている様子を示す側面図(c)とその破線30における断面図(d)である。
【図9】本発明の実施の形態による転動型入力装置でメニュー選択(a)(b)と文字入力(c)(d)を行う場合のプログラムのGUI(グラフィカルユーザインターフェイス)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態による転動型入力装置で携帯電話のキーパッドと互換性のある形式でテンキー入力を行う場合のプログラムのGUIを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態による転動型入力装置で姿勢センサを使用して本体を水平にした場合と垂直にした場合を区別して、スクロールやカーソル(フォーカス)の動きの方向を切り替える方式を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態による転動型入力装置でタッチパネル上に転動体を支持する別方式を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、該パネルに接触しながら転動かつ傾動可能に形成される転動体と、前記パネルに設けられ、前記転動体下部の表面が前記パネルに接触する接触位置(x、y)を検出する接触位置検出手段とを具備し、
前記パネルおよび前記転動体の各表面を、前記転動体が前記パネルに接触するときに、一点のみで接触する形状に形成し、
前記接触位置(x、y)は、前記パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めたときの接触位置であり、
前記接触位置(x、y)のxを、前記転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、前記接触位置(x、y)のyを、前記転動体を前記パネル上で接触させながら転がすことによって定めることを特徴とする転動型入力装置。
【請求項2】
前記接触位置検出手段は、加圧センサ、静電センサ、電磁センサ、電気抵抗値または電極の導通関係を通じて接触位置を検出する部材で形成したことを特徴とする請求項1記載の転動型入力装置。
【請求項3】
前記パネルは、平面状のパネルであって、
前記転動体の下部表面は、転がる方向に断面縁形状が概円弧となるように湾曲すると共に、転がる方向と直交する方向にも、前記パネル表面と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲し、これらの湾曲によって前記パネル表面が前記転動体下部表面と1点のみで接触することを特徴とする請求項1または2に記載の転動型入力装置。
【請求項4】
前記パネルは、曲面状のパネルであって、
前記転動体の下部表面は、転がる方向に断面縁形状が概円弧となるように湾曲すると共に、前記パネル表面は、前記転動体の転がる方向と直交する方向に、前記転動体と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲し、これらの湾曲によって前記パネル表面が前記転動体下部表面と1点のみで接触することを特徴とする請求項1または2に記載の転動型入力装置。
【請求項5】
前記転動体の上部表面の指と接する部分は、前記転動体の下部に対して、前記転動体の回転軸と平行な方向にスライド移動するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項6】
振動生成器を備え、前記転動体の転動角度が所定量に到達する時に、または前記接触位置(x,y)が所定位置に到達する時に、または外部機器からの指令により、前記振動生成器が振動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項7】
姿勢検出センサを備え、検出される装置本体の姿勢と前記接触位置(x,y)を外部機器へ伝送するか、または内部で処理して所定の動作を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項8】
前記パネルにおいて前記転動体の設けられている側の裏側にタクトスイッチを設けたことを特徴とする請求項1乃至7に記載のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項9】
外部機器に実装されている接触位置検出手段を備えたパネルに対して、データ入力を行うための転動型入力装置であって、
前記パネルに接触しながら転動かつ傾動可能に形成される転動体と、
前記転動体の表面を、前記転動体が前記パネルに接触するときに、一点のみで接触する形状に形成し、
前記接触位置(x、y)は、前記パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めたときの接触位置であり、
前記接触位置(x、y)のxを、前記転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、前記接触位置(x、y)のyを、前記転動体を前記パネル上で接触させながら転がすことによって定めることを特徴とする転動型入力装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムであって、前記接触位置(x,y)のxの値に基づいてメニューの項目配列の中の列を指定する処理し、yの値またはその変化量に基づき、メニューの項目配列の中の行または行の移動量を指定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
パネルと、該パネルに接触しながら転動かつ傾動可能に形成される転動体と、前記パネルに設けられ、前記転動体下部の表面が前記パネルに接触する接触位置(x、y)を検出する接触位置検出手段とを具備し、
前記パネルおよび前記転動体の各表面を、前記転動体が前記パネルに接触するときに、一点のみで接触する形状に形成し、
前記接触位置(x、y)は、前記パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めたときの接触位置であり、
前記接触位置(x、y)のxを、前記転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、前記接触位置(x、y)のyを、前記転動体を前記パネル上で接触させながら転がすことによって定めることを特徴とする転動型入力装置。
【請求項2】
前記接触位置検出手段は、加圧センサ、静電センサ、電磁センサ、電気抵抗値または電極の導通関係を通じて接触位置を検出する部材で形成したことを特徴とする請求項1記載の転動型入力装置。
【請求項3】
前記パネルは、平面状のパネルであって、
前記転動体の下部表面は、転がる方向に断面縁形状が概円弧となるように湾曲すると共に、転がる方向と直交する方向にも、前記パネル表面と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲し、これらの湾曲によって前記パネル表面が前記転動体下部表面と1点のみで接触することを特徴とする請求項1または2に記載の転動型入力装置。
【請求項4】
前記パネルは、曲面状のパネルであって、
前記転動体の下部表面は、転がる方向に断面縁形状が概円弧となるように湾曲すると共に、前記パネル表面は、前記転動体の転がる方向と直交する方向に、前記転動体と向き合う側が凸となるように緩やかに湾曲し、これらの湾曲によって前記パネル表面が前記転動体下部表面と1点のみで接触することを特徴とする請求項1または2に記載の転動型入力装置。
【請求項5】
前記転動体の上部表面の指と接する部分は、前記転動体の下部に対して、前記転動体の回転軸と平行な方向にスライド移動するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項6】
振動生成器を備え、前記転動体の転動角度が所定量に到達する時に、または前記接触位置(x,y)が所定位置に到達する時に、または外部機器からの指令により、前記振動生成器が振動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項7】
姿勢検出センサを備え、検出される装置本体の姿勢と前記接触位置(x,y)を外部機器へ伝送するか、または内部で処理して所定の動作を実行することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項8】
前記パネルにおいて前記転動体の設けられている側の裏側にタクトスイッチを設けたことを特徴とする請求項1乃至7に記載のいずれか一に記載の転動型入力装置。
【請求項9】
外部機器に実装されている接触位置検出手段を備えたパネルに対して、データ入力を行うための転動型入力装置であって、
前記パネルに接触しながら転動かつ傾動可能に形成される転動体と、
前記転動体の表面を、前記転動体が前記パネルに接触するときに、一点のみで接触する形状に形成し、
前記接触位置(x、y)は、前記パネル表面上で前記転動体が転がる方向をy軸方向とし、y軸と直交する方向をx軸方向としてx−y座標系を定めたときの接触位置であり、
前記接触位置(x、y)のxを、前記転動体を上方から指で加圧する位置によって定め、前記接触位置(x、y)のyを、前記転動体を前記パネル上で接触させながら転がすことによって定めることを特徴とする転動型入力装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の転動型入力装置と組み合わせて使用するプログラムであって、前記接触位置(x,y)のxの値に基づいてメニューの項目配列の中の列を指定する処理し、yの値またはその変化量に基づき、メニューの項目配列の中の行または行の移動量を指定する処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【公開番号】特開2008−257296(P2008−257296A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95709(P2007−95709)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進「機器の簡単確実な操作を実現するハプティックユーザインターフェースの研究開発」にかかる委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進「機器の簡単確実な操作を実現するハプティックユーザインターフェースの研究開発」にかかる委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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