説明

転動装置及び転動装置の異常検出方法

【課題】転動装置の異常を高い精度で検出する。
【解決手段】転動装置は、第1の軌道部材及び第2の軌道部材の何れかに取り付けられ、振動時の加速度に応じた電圧を出力する加速度センサ11と、加速度センサ11の出力電圧値を増幅するアンプ12と、アンプ12の出力電圧について、設定した周波数成分を減衰させるローパスフィルタ13とを備える。ローパスフィルタ13は、第1の軌道部材と第2の軌道部材との相対運動に伴い転動体循環路を転動体が移動するときに幾何学的に算出される特定周波数に対して、8倍、好ましくは6倍を超える周波数を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材間に設けた転動路に複数の転動体を配置し、軌道部材同士を相対移動させる転動装置、及びそのような転動装置の異常を検出する異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、転がり軸受の軌道面に何らかの原因で欠陥が生じた場合には、その部分を転動体が通過するたびに衝撃が伴い、振動が発生する。このように発生する装置や転がり要素からの振動を測定し、その測定した振動の変化を基に異常を判定する方法が、従来より種々提案されている。しかし、いずれも、一般的な測定周波数範囲内で異常を判定しているので、高い精度で異常を検出することはできない。
【0003】
例えば、特許文献1では、転がり軸受の異常を検出すために、測定周波数範囲の下限側を9kHz〜10kHzとし、加速度検出器の特性等を基に、測定周波数範囲の上限側を25kHz〜30kHzとしている。そして、測定した振動加速度を周波数解析し、その解析結果から得た周波数スペクトルのピーク値を基に、異常を検出している。また、そのような周波数解析を必要としない方法として、特許文献2では、一般的な機械設備の測定周波数範囲を20kHz〜50kHzとしている。そして、振動波形の絶対値の累積度数分布を求め、等価実効値、振動波形の最大値、及びそのピーク比の大きさを基に、異常を診断している。
【0004】
ここで、振動を検出するセンサとして振動センサがある。特許文献3には、そのような振動センサが開示されている。特許文献3では、ボールねじにおける振動を振動センサで検出する技術が開示されている。そのような振動センサとしては、小型で扱いやすく、検出周波数帯やダイナミックレンジが広い圧電式加速度センサ(加速度ピックアップ)が広く普及している。この振動センサは、振動(加速度、速度、変位)を電気信号に変換するものであり、大別して、チャージ出力型加速度ピックアップと、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップとがある。チャージ出力型加速度ピックアップは、検出した振動を電荷として出力する電荷出力型のピックアップであり、出力された電荷を電圧にチャージアンプにより変換する。また、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップは、検出した振動を電圧として出力する。
【特許文献1】特開昭61−288126号公報
【特許文献2】特開2001−304954号公報
【特許文献3】特開2001−349407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1や特許文献2のように、一般的な測定周波数範囲をもって、異常を検出しようとすると、異常(異常を示す振動)が生じても、それが正常時の振動や他のノイズに隠れてしまい、発生している異常を見逃すという問題があった。
特に、ボールねじや直動案内軸受装置等のような転動装置の場合では、転動体がほぼ一定間隔で並び常にほぼ一定の拘束状態にある回転転がり軸受のような転動装置とは異なること等、特有な問題があるため、そのような傾向が顕著であった。
【0006】
本発明の課題は、転動装置の異常を高い精度で検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る請求項1に記載の転動装置は、第1の軌道部材、第2の軌道部材及び複数の転動体からなり、前記第1の軌道部材と第2の軌道部材それぞれに設けられた軌道溝、及び一方の軌道部材内に設けられた戻し路により構成される少なくとも1つの転動体循環路内に転動自在に前記転動体を介挿することで、前記第1の軌道部材と第2の軌道部材とを相対移動させる転動装置において、前記第1の軌道部材及び第2の軌道部材の何れかに取り付けられ、振動時の加速度に応じた電圧を出力する加速度センサと、前記加速度センサの出力電圧を増幅する増幅手段と、前記加速度センサの出力電圧、又は増幅手段の出力電圧について、設定した周波数成分を減衰させるフィルタ手段とを備え、前記フィルタ手段は、前記第1の軌道部材と第2の軌道部材との相対運動に伴い前記転動体循環路を前記転動体が移動するときに幾何学的に算出される特定周波数に対して、8倍を超える周波数を減衰させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る請求項2に記載の転動装置は、請求項1に記載の転動装置において、前記フィルタ手段が、20dB/dec以上の減衰特性を持つことを特徴とする。
また、本発明に係る請求項3に記載の転動装置は、請求項1に記載の転動装置において、前記フィルタ手段が、前記転動体の計算通過周波数、並びに該転動体の計算通過周波数に対して、4倍、6倍及び8倍の周波数のうちの少なくとも何れかを6dB/oct以上の減衰特性で減衰させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る請求項4に記載の転動装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の転動装置において、前記加速度センサの周波数特性が10KHz以上に渡り略線形であり、前記増幅手段が、前記加速度センサからの出力電圧を基に、非線形出力を行うことを特徴とする。
また、本発明に係る請求項5に記載の転動装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の転動装置において、前記フィルタ手段が、弾性体で構成される機械的フィルタであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る請求項6に記載の転動装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の転動装置において、前記第1の軌道部材の軌道溝及び第2の軌道部材の軌道溝の何れかがゴシックアーチ形状であることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項7に記載の転動装置は、請求項1〜6の何れか1項に記載の転動装置において、前記第1及び第2の軌道部材、並びに前記転動体が、金属又はセラミックで形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る請求項8に記載の転動装置の異常検出方法は、請求項1〜7の何れか1項に記載の転動装置の前記第1の軌道部材及び第2の軌道部材の何れかが直動したときの振動を検出し、その検出値から前記転動装置の異常を検出する転動装置の異常検出方法において、特定周波数の振動を監視して、前記転動装置の異常を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び8に係る発明によれば、転動装置において、特定周波数に対して、8倍を超える周波数を減衰させることで、監視対象の振動を正確に検出し、監視対象の異常を正確に検出できる。
また、請求項3に係る発明によれば、個別の事象を加味してフィルタリングができるので、監視対象の振動をより正確に検出できる。
また、請求項5に係る発明によれば、フィルタ手段を簡単に構成できる。
【0013】
また、軌道溝がゴシックアーチ形状に形成されている場合、研削砥石を左右に振る超仕上げができないので、転動体が軌道溝を転走するときにその凹凸により振動が発生するのは必至である。請求項6に係る発明によれば、このような場合に発生する振動検出の監視対象外となる周波数の振動に応じた出力電圧を低下させる、すなわち検出感度を下げることができる。
また、軌道部材や転動体が金属又はセラミックで形成される場合、転動体が軌道溝を転走するときにその凹凸により振動が発生するのは必至である。請求項7に係る発明によれば、このような場合に発生する振動検出の監視対象外の周波数の振動に応じた出力電圧を低下させる、すなわち検出感度を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず第1の実施形態を説明する。
(構成)
第1の実施形態は振動センサを構成する加速度ピックアップであり、図1は、その加速度ピックアップ10の構成を示す。図1に示すように、加速度ピックアップ10は、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップである。すなわち、加速度ピックアップ10は、振動時の加速度に応じた電圧を出力する圧電式の加速度センサ11と、加速度センサの出力電圧値を増幅するアンプ12と、電気的フィルタであるローパスフィルタ13とを備える。ここで、加速度センサ11は、長さ方向に伸縮する圧電素子2枚を接合し、 一方が伸びると他方が縮むように構成した撓み振動子、いわゆるバイモルフ型の圧電加速度センサである。加速度センサ11の特性は、例えば最大出力電圧範囲又は振動周波数が1KHz時の加速度1Gでの出力電圧範囲が定められている。例えば、出力電圧範囲は±5Vである。
【0015】
ローパスフィルタ13は、加速度ピックアップ10が取り付けられる被測定物又は監視対象(転動装置の軌道部材又は転がり要素部材)の固有振動数以上の振動周波数帯(振動周波数成分)をフィルタリング(濾波)するように設定されている。具体的には、ローパスフィルタ13は、加速度ピックアップ10が取り付けられる被測定物で得られる特定の周波数に対してn倍にある周波数帯をフィルタリングする。ここで、特定の周波数とは、例えば、以下の(1)式〜(3)式により算出される転動体の計算通過周波数である。また、n倍とは、8倍好ましくは6倍である。なお、この(1)式〜(3)式は、転動装置がボールねじに対応した式である。
z・f=z・(1−(D・cosα・cosβ/d))・f/2[Hz] ・・・(1)
z・f=z・(1+(D・cosα・cosβ/d))・f/2[Hz] ・・・(2)
2・f=2・(d/(D・cosα・cosβ)−(D・cosα・cosβ/d))・f/2[Hz] ・・・(3)
【0016】
ここで、zは1リード当たりの負荷玉数である(z=π・d/(D・cosβ))。また、fは、玉の公転周波数[Hz]である。すなわち、fは1個の転動体が1リード分を公転する周波数であり、ナットに対する転動体の運動を示す。また、fは、玉の公転周波数に対するねじ軸の相対回転周波数[Hz]である。すなわち、fは、玉の公転周波数fを基準にねじ軸が1リード分公転する周波数であり、転動体に対する軸の運動を示す。また、fは、玉の自転周波数[Hz]であり、fは軸回転周波数[Hz]である。また、Dは玉径[mm]であり、dは玉ピッチ径[mm]であり、αは接触角[°]であり、βはリード角[°]である。
【0017】
前記(1)式、(2)式及び(3)式によって算出される周波数は、ボールねじに発生する損傷発生部位と高い相関がある。このようなことから、各式で算出される周波数のスペクトルピークの増大によって、どの部位に損傷が発生したかわかる。具体的には、(1)式では、玉によりナットが受ける損傷(損傷時の周波数)がわかり、(2)式では、玉により軸が受ける損傷(損傷時の周波数)がわかり、前記(3)式では、玉の損傷(損傷時の周波数)がわかる。このような(1)式〜(3)式で求められるもののうち最も大きなものを特定の周波数としている。
【0018】
ローパスフィルタ13は、前記(1)式〜(3)式に基づいて算出した転動体の計算通過周波数に対し、8倍、好ましくは6倍の周波数帯をフィルタリングして出力する。このローパスフィルタ13は、20dB/dec以上の減衰特性を有している。図2は、その減衰特性を示す。また、図3は、そのような減衰特性を実現するローパスフィルタ13の構成の一例を示す。
【0019】
図4〜図7は、加速度ピックアップ10(振動センサ)の取り付け例を示す。図4に示すように、加速度ピックアップ10は、ボールねじ30におけるナット32のフランジ部32aの外周面に取り付けられる。また、図5に示すように、加速度ピックアップ10は、ナット32のフランジ部32aの移動方向に向く側面に取り付けられる。また、図6に示すように、加速度ピックアップ10は、案内レール91とスライダ92とからなるリニアガイド(直動案内装置)90の該スライダ92の移動方向に対して平行な側面に取り付けられる。また、図7に示すように、加速度ピックアップ10は、スライダ92の移動方向に向く側面に取り付けられる。
【0020】
(動作、作用及び効果)
動作、作用及び効果は次のようになる。
前記図4〜図7の例に示すように、軌道部材(ナット32やスライダ92)に加速度ピックアップ10を取り付ける。これにより、加速度ピックアップ10では、軌道部材の移動で該軌道部材に生じた振動(加速度)に応じて加速度センサ11が信号を出力する。そして、アンプ12が、その加速度センサ11の出力信号を増幅して、ローパスフィルタ13に出力する。ローパスフィルタ13は、アンプ12からの信号をフィルタリングして、外部出力する。
【0021】
ここで、このようなボールねじやリニアガイドでは、循環する転動体が非負荷圏から負荷圏に進入する際に軌道面と衝突し、その衝突による軌道面側の軌道部材の自由振動が励起されて、軌道部材の固有振動数を周波数とする振動が発生する。このような軌道部材に加速度ピックアップ10を取り付けると、加速度ピックアップ10は、転動体と軌道面との衝突により励振される自由振動に起因する軌道部材の固有振動数を高い感度で検出してしまう。このようなことから、本実施形態では、ローパスフィルタ13は、加速度ピックアップ10を取り付ける軌道部材の固有振動数以上の振動周波数帯をフィルタリングしている。すなわち、ローパスフィルタ13は、転動体の計算通過周波数に対して8倍、好ましくは6倍の周波数帯をフィルタリングしている。ここで、被測定物がボールねじの場合には、前記(1)式〜(3)式を基に転動体の計算通過周波数を算出している。
【0022】
ここで、次のような理由から転動体の計算通過周波数に対して8倍、好ましくは6倍の周波数帯をローパスフィルタ13でフィルタリングしている。
図8は、ボールねじの振動加速度の周波数解析の結果を示す。この結果は、ボールねじにおいて転動体が剥離するといった異常が発生したときのものであり、その異常発生前後の振動周波数解析結果を示す。同図中、太線は異常発生前の結果であり、細線は異常発生後の結果である。同図に示すように、異常発生前及び異常発生後ともに、5kHz付近の周波数帯において、転勤体と軌道面との衝突により、加速度ピックアップが取り付けてある軌道部材であるナットの自由振動が励起されて、該軌道部材の固有振動数を周波数とする振動が発生しているのがわかる。しかし、6kHz以上の周波数帯では、異常発生前後による明確な差異が認められなくなる。その一方で、3kHz以下の周波数帯では、回転速度に対して幾何学的比例関係にある周波数成分の振動が明確に現れる。このようなことから、異常発生前後における加速度ピックアップによって検出する振動加速度信号について、5kHz、好ましくは6kHz以上の周波数帯をフィルタリングすれば、振動加速度信号のピーク値又はrms値に明確な差異が現れることとなる。
【0023】
このとき、このような振動特性を有するボールねじについて、前記(1)式〜(3)式により得られる前記転動体の計算通過周波数は500Hz〜750Hzである。このようなことから、この転動体の計算通過周波数500Hz〜750Hzの8倍以上となる5kHz、好ましくは6kHz以上の周波数帯をローパスフィルタ13でフィルタリングすることで、振動加速度信号のピーク値又はrms値に明確な差異を得ることができるようになる。または、(1)〜(3)式で求められる周波数のうち最も大きなものを基準(特定の周波数)とし、その8倍以上となるようにローパスフィルタを設定しても良い。
【0024】
また、次のような個別の事象を加味して、ローパスフィルタ13によりフィルタリングする周波数帯を決定することもできる。
図9は、異常発生前後の振動加速度信号(加速度ピックアップの出力信号)のピーク−ピーク値変化率を示す。同図では、縦軸に、ピーク−ピーク値変化率として、異常発生後のピークと異常発生前のピークの比(異常発生後のピーク/異常発生前のピーク)をとっている。フィルタをかけない場合(同図中の●印)には、ピーク−ピーク値変化率について、異常発生前後で明確な差異を得ることはできない。すなわち、異常を検出することができない。また、6kHzのローパスフィルタをかけて、異常発生前後で明確な差異が生じない範囲である6kHz以上の周波数帯をフィルタリングして得た振動加速度信号のピーク−ピーク値変化率(同図中の■印)についても、異常発生前後で明確な差異が現れにくくなっている。これは、5kHz付近に発生する固有振動の周波数成分を除去できていないためである。これに対して、3kHzのローパスフィルタをかけた場合、固有振動の周波数成分等からなる5kHz以上の固有振動周波数帯を充分にフィルタリングでき、差異が明確に現れるようになる。
【0025】
一般的には、転動体と軌道面との衝突によって励振される軌道部材の固有振動数が4kHz〜100kHzの範囲にあること(下記図10参照)、さらに、回転速度に対して幾何学的比例関係にある周波数成分の振動の影響が顕著に現れる周波数範囲が約3kHzまでである。このようなことから、ローパスフィルタ13の設定値を3kHzにして、固有振動の周波数成分をフィルタリングすることで、幾何学的な振動の影響が顕著に現れる周波数範囲の振動を測定することの両方の目的を達成できる。なお、軌道部材の固有振動の周波数成分を予め確認できる場合にはその固有振動数以上の振動周波数帯を充分にフィルタリングできるように、ローパスフィルタを設定することもできる。
【0026】
また、極小の周波数帯(図8中、丸で囲う周波数帯)についても、ローパスフィルタ13でフィルタリングするようにしても良い。すなわち、転動体の計算通過周波数に満たない周波数を減衰させる。例えば、転動体の計算通過周波数に満たない周波数として、ボールねじのねじ軸の共振周波数や転動装置外部からの振動によるもの、等がある。これにより、これらの振動を遮断することができ、振動加速度信号のピーク値又はrms値をより明確な差異として得ることができるようになる。
【0027】
なお、以上のように複数の周波数帯をフィルタリングするため、減衰周波数の異なるフィルタ、特定の周波数のみを減衰させるノッチフィルタを用いると有効である。
図10は、ボールねじに関し、周波数と振動強さ(db)との関係を示す。同図(a)はφ50のボールねじの結果であり、同図(b)はφ32のボールねじの結果である。前述のように、ボールねじでは、循環する転動体が非負荷圏から負荷圏に進入する際に軌道面と衝突し、その衝突による軌道面側の要素部材の自由振動が励起されて、要素部材の固有振動数を周波数とする振動が発生する。このような転動体と軌道面との衝突による固有振動の周波数帯は、ボールねじのナットの大きさで多少異なるものの、同図に丸で囲んで示すように、一般的には、4kHz〜100kHzを超えるものとなる。
【0028】
また、転動体と軌道面との衝突により発生する振動の振幅は、その衝突エネルギーにより変化するため、例えば、個々の転動体の軌道面への進入角度の違いによって容易に変化する、又は往復する直動要素等においては往行時(図11(a))と復行時(図11(b))の違い等によって容易に変化する。このため、循環部を持つ転がり要素においては、従来の方法では、異常を誤検出する可能性も高い。しかし、本発明を適用することで、このような条件下でも、特定の周波数、例えば、転動体の計算通過周波数の8倍以上となる周波数帯をフィルタリングすることで、異常を高い精度で検出できるようになる。
【0029】
図12は、加速度ピックアップ10の出力信号の利用例である。ここでは、加速度ピックアップ10の出力信号を基に、転動装置(具体的には軌道部材、本例ではボールねじ30やリニアガイド90)120の異常を検出する異常検出システム130の構成を示す。
図12に示すように、異常検出システム130は、転動装置120(例えばナット32やスライダ92)に取り付けられた加速度ピックアップ10の出力信号を記憶する記憶部131と、記憶部131に記憶された出力信号を基に、振動加速度を外部出力(表示)する振動加速度表示部132と、記憶部131に記憶された出力信号を基に、異常判定を行う異常判定部133を備える。異常判定部133は、記憶部131に記憶された信号、すなわち、加速度ピックアップ10の出力信号(振動加速度信号)の時系列信号を基に、該出力信号におけるピーク値又は該出力信号のrms値を得て、それらピーク値又はrms値を基に、転動装置120の異常を判定する。例えば、所定のしきい値と対比して、転動装置120の異常を判定する。
【0030】
これにより、加速度ピックアップ10の出力信号(振動加速度振動)を用いて、高い精度で異常の判定をすることができる。また、出力信号の時系列変化を基に軌道部材の異常を判定するため、異常を高い精度で検出できる。また、周波数解析装置や複数の演算装置を用いることなく、フィルタ及びピーク値表示装置(振動加速度表示装置)だけで異常を検出することが可能となるため、簡単な構成でありながら、異常を高い精度で検出できる。
【0031】
なお、この第1の実施形態を次のような構成により実現することもできる。
すなわち、この第1の実施形態では、前記(1)式〜(3)式は、ボールねじの転動体の計算通過周波数を得るためのものである。しかし、他の転動装置、例えばリニアガイドについて転動体の計算通過周波数を得る場合には、そのリニアガイドの寸法諸元や運転速度等の諸条件に応じて前記(1)式〜(3)式を変形する。これにより、リニアガイドについて転動体の計算通過周波数を算出し、その転動体の計算通過周波数の8倍好ましくは6倍の周波数帯をフィルタリングすることで、リニアガイドの軌道部材(案内レールやスライダ)で発生する振動を高い精度で検出でき、異常を高い精度で検出できる。
【0032】
また、ローパスフィルタ13は、転動体の計算通過周波数、並びに該転動体の計算通過周波数に対して、4倍、6倍及び8倍の周波数のうちの少なくとも何れかを6dB/oct以上の減衰特性で減衰させることもできる。これにより、減衰させたい周波数と異常検出の対象としたい周波数との適宜選別して、高い精度で異常検出できるようになる。例えば、転動体の計算通過周波数に対して4倍の周波数が目的以外の外乱周波数と一致する場合、これも減衰させ、転動体の計算通過周波数と6倍の周波数で異常検出を行うことにより、検出精度を向上させることができる。
また、この第1の実施形態では、加速度センサ11の出力電圧をアンプ12を介してローパスフィルタ13に出力している。これに対して、加速度センサ11の出力電圧をローパスフィルタ13に直接出力し、フィルタリングしても、前述と同様な効果として、異常を高い精度で検出できる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を説明する。
(構成)
第2の実施形態も本発明を適用した振動センサである。
図13は、振動センサ20の構成を示す。図13に示すように、振動センサ20は、加速度ピックアップ21と被測定物(転動装置の軌道部材)200との間に機械的なフィルタ手段をなす弾性体25を配置して、この弾性体25を介して被測定物200に対して加速度ピックアップ21を固定している。加速度ピックアップ21は、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップである。この加速度ピックアップ21は、弾性体25を介して被測定物200とねじ止めにより固定されている。
【0034】
図14は、加速度ピックアップ21の構成を示す。図14に示すように、加速度ピックアップ21は、振動時の加速度に応じた電圧を出力する圧電式の加速度センサ22と、加速度センサの出力電圧値を増幅するアンプ23とを備える。例えば、加速度センサ22は、前記第1の実施形態と同様に、いわゆるバイモルフ型の圧電加速度センサである。
図15は、加速度ピックアップ21(具体的には加速度センサ22)の特性を示す。図15に示すように、加速度ピックアップ21(具体的には加速度センサ22)の周波数特性が10KHz以上に渡り略線形となる。アンプ23は、このような特性を有する加速度センサ22からの出力電圧値を基に、非線形出力を行う。
【0035】
弾性体25は、ゴム又はエラストマ材等により形成されている。図13に示すように、弾性体25の中心にねじ挿通用の孔25aを設けて、この孔25aにねじ26を挿通して、加速度ピックアップ21と被測定物200とをねじ止めしている。そして、対象測定周波数範囲外の振動を遮断できるように、弾性体25の形状又は物性値等を決定している。すなわち、特定の周波数、例えば、転動装置について得られる転動体の計算通過周波数(転動装置がボールねじの場合は前記(1)〜(3)式参照)に対して8倍、好ましくは6倍の周波数帯を機械的にフィルタリングできるように、弾性体25の形状又は物性値等を決定している。
【0036】
図16〜図18を用いて、振動センサ20を備えた転動装置であるボールねじの構成例を説明する。図16〜図18に示すように、ボールねじ30は、一の軌道部材であるねじ軸31と、このねじ軸31の回転に伴って軸方向に相対移動する他の軌道部材であるナット32と、このナット32とねじ軸31との間に転動自在に組み込まれた多数のボール33と、これらのボール33を循環させるボール循環部材としてのサイドキャップ34とを備える。ねじ軸31は軸方向と直交する断面が円形に形成されており、その外周面には軌道溝である螺旋状のボールねじ溝41が形成されている。ボールねじ溝41はナット32の内周面に形成された軌道溝である螺旋状のボールねじ溝42と対向しており、ねじ軸31又はナット32の一方が軸回りに回転すると、これに同期してボール33がボールねじ溝41,42間に形成された転動路となるボール負荷転動路43を転動するようになっている。
【0037】
ナット32は、外周面にサイドキャップ取付け面51を有しており、このサイドキャップ取付け面51には、ボール33を循環させるためのボール循環孔52,52が形成されている。サイドキャップ34は、例えば、樹脂或いは金属等の成形材料を所定の形状に射出成形して形成されている。サイドキャップ34はボール循環孔52,52に嵌合する一対の柱状ボールすくい上げ部34a,34bと、これらの柱状ボールすくい上げ部34a,34b内に形成されたボール戻し案内路53,53と連通するボール戻し路54を内部に有するプレート状のサイドキャップ本体部34cとから構成されている。ここで、ボール負荷転動路43、ボール戻し案内路53及びボール戻し路54を含む構造として、ボール33を循環させる転動体循環路が構成されている。
【0038】
ボールすくい上げ部34a,34bは、その横断面が円形に形成されており、従って、ボールすくい上げ部34a,34bが嵌め込まれるボール循環孔52の横断面も円形となっている。ボールすくい上げ部34a,34bは、不図示のタング部をそれぞれ有しており、ボール負荷転動路43を転動するボール33は、図18に示すように、ボールすくい上げ部34a又は34bのタング部によりボールねじ溝41,42のリード角方向にすくい上げられてボール戻し路54に導入されるようになっている。
【0039】
以上のように構成されるボールねじ30のナット32側の部材となるサイドキャップ34に、図5に示すように振動センサ20を装着している。このとき、加速度ピックアップ21とナット32との間に弾性体25が介在するように振動センサ20を装着している。振動センサ20は、検出信号(電圧値)をセンサケーブル27により外部出力している。
【0040】
(動作、作用及び効果)
動作、作用及び効果は次のようになる。
ナット32とねじ軸31とが相対移動したときの、ボールねじ30における振動を振動センサ20(具体的には加速度ピックアップ21)により検出する。そして、振動センサ20は、検出信号をセンサケーブル27により外部出力している。このとき、加速度ピックアップ21と被測定物200との間に弾性体25が存在するため、被測定物200の振動信号が弾性体25を介して加速度ピックアップ21に伝達するようになる。これにより、弾性体25がフィルタとして作用して、加速度ピックアップ21に入力される前段階で、対象測定周波数範囲外の振動信号が遮断されるようになる。よって、加速度ピックアップ21では、広い周波数範囲で高いレベルで振動を測定できる。また、フィルタ手段を弾性体25とすることで、フィルタ手段を簡単に構成できる。
【0041】
ここで、ボールねじ、リニアガイド及びラックピニオン等の往復運動を繰り返す直動要素の振動検出にチャージ出力型加速度ピックアップを用いると、ケーブルの屈曲に伴うノイズが振動検出信号に乗ってしまうという問題があった。これに対して、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップは、ケーブルの屈曲に伴うノイズが振動検出信号に乗ってしまうことはほとんどない。しかし、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップは、チャージ出力型加速度ピックアップと比べて、ダイナミックレンジが狭く、オーバーロードし易いという問題があった。すなわち、アンプ内蔵型ピックアップでは、フィルタリングせずに振動が直接入力されるため、その振動が大きい場合には、内蔵するアンプがオーバーロードしてしまう(低周波数の振動より高周波数の振動の感度が大きくなる)。これにより、アンプ内蔵型ピックアップの用途は、内蔵するアンプがオーバーロードしない振動レベルの範囲内での振動測定に限られるものとなっていた。よって、ボールねじ、リニアガイド又はラックピニオン等の直動要素の振動では、研削痕をボールが走る振動等で高周波成分が強くなっているため、そのような振動の検出においては、アンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップがオーバーロードし易くなるという問題が発生する。
【0042】
なお、外部アンプを使用するチャージ出力型加速度ピックアップでは、外部フィルタをかけて対象測定周波数範囲(監視対象の周波数範囲)を絞ることができるため、広周波数範囲にわたり高いレベルにある振動信号でも入力することができ、対象測定周波数範囲の振動を特定し、測定できる。しかし、チャージ出力型加速度ピックアップでは、前述のように、ボールねじ、リニアガイド及びラックピニオン等の往復運動を繰り返す直動要素の振動検出において、ケーブルの屈曲に伴うノイズが信号に乗ってしまうという問題を解消できない。
【0043】
以上のような種々の問題に対して、対象測定周波数範囲外の高周波成分からなる振動を加速度ピックアップ21に入力される前段階で遮断することで、対象測定周波数範囲外の高周波成分に埋もれていた監視対象の振動(高周波成分の振動も含む)を検出できるようになる。また、対象測定周波数範囲外の高周波成分からなる振動を加速度ピックアップ21に入力される前段階で遮断することで、加速度ピックアップ21のオーバーロードの発生を防止して、監視対象の振動を確実に検出できるようになる。そして、加速度ピックアップ21がアンプ内蔵型圧電式加速度ピックアップであることで、ケーブル屈曲によるノイズの影響を小さくできる。
【0044】
また、以下のような個別の事象を加味して、フィルタリングする周波数範囲を決定することもできる。
例えば、直動転がり要素の最高速度は、ボールねじの場合、DN=160000mm/minに達しており、このときの転動体と軌道溝との相対速度は、約1.5m/sである。また、軌道面は、超仕上げが実施されていないことにより、研削砥粒による研削痕を有しており、それによる転動体転走方向の凹凸のピッチは、加工条件にもよるが、およそ150μm以下、主には50μm程度である。これより、転動体が最高速度で軌道溝を転走するとき、該軌道溝にある凹凸による振動周波数は、小さく見積もっても、10KHz(=1.5・E6/150)であり、主には、30KHz(=1.5・E6/50)になる。このような周波数の振動に対する感度を下げて、加速度ピックアップ21でモニタできれば、軌道面の剥離や玉詰まりに伴い発生する、より低周波の振動を検出できる。
【0045】
このようなことから、ボールと転動路(軌道溝)との衝突による30kHz以上の高周波数成分の振動が、対象測定周波数範囲外の振動となるように、弾性体25の形状、物性値等を決定する。このようにすることで、ボールと転動路(軌道溝)との衝突による振動に対する感度を下げて、軌道面の剥離や玉詰まりに伴い発生する、より低周波の振動を加速度ピックアップ21で検出できる。
【0046】
なお、直動転がり要素において軌道面の超仕上げを実施していない理由は例えば次のようになる。直動転がり要素(以下、軸受)では、一般的に軌道面の超仕上げを実施しているが、軌道溝は、軸受と異なり、有端の直線、又は螺旋状であることより、その長さ別の多品種少量生産とならざるを得ず、コスト的に難しいこと、及び、軌道溝が有端であることよりその使用速度が自ずと制限されるので、超仕上げに見合う性能を発揮し得ないこと、さらに、転動体が循環路と軌道溝を出入する際の振動により、超仕上げによる効果がマスキングされること、が挙げられる。
【0047】
また、特に、ねじ軸やナットのボールねじ溝がゴシックアーチ形状に形成されている場合、研削砥石を左右に振る超仕上げができないので、転動体がボールねじ溝を転走するときにその凹凸により振動が発生するのは必至である。このようなことから、その周波数の振動に対する感度を下げて、加速度ピックアップ21でモニタすることにより、ボールねじ溝の軌道面の剥離や玉詰まりに伴い発生する、より低周波の振動を検出できる。
【0048】
また、特に、ねじ軸やナット(具体的にはそれらのボールねじ溝)、又は転動体が研削加工仕上げによる金属(例え鋼)やセラミックで形成されている場合にも、転動体がボールねじ溝を転走するときにその凹凸により振動が発生するのは必至である。このようなことから、その周波数の振動に対する感度を下げて、加速度ピックアップ21でモニタすることにより、ボールねじ溝の軌道面の剥離や玉詰まりに伴い発生する、より低周波の振動を検出できる。
【0049】
また、超仕上げを行った場合、レベルは低下するものの、直動転がり要素では概ね同程度の高周波成分の振動を検出できる。この振動は、転動体が循環路と軌道溝とを出入する際に発生する高周波成分の振動と考えられる。このような場合でも、本発明を適用することで、そのような周波数の振動に対する感度を下げて、加速度ピックアップ21でモニタすることにより、軌道面の剥離や玉詰まりに伴い発生する、より低周波の振動を検出できる。
【0050】
なお、この第2の実施形態を次のような構成により実現することもできる。
すなわち、この第2の実施形態では、ねじにより加速度ピックアップ21及び弾性体25を被測定物200に固定している。これに対して、ワックス、接着剤、両面テープ又はマグネット等の他の固定手段で固定することもできる。例えば、加速度ピックアップ21と弾性体25、弾性体25と被測定物200との一方又は両方をワックス、接着剤、両面テープ又はマグネット等で固定する。
【0051】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態を説明する。
第3の実施形態も振動センサであり、図19は、その振動センサ60の構成を示す。図19に示すように、第3の実施形態における振動センサ60は、加速度ピックアップ21に質量部材61を備えている。質量部材61は、振動センサ60(特に加速度ピックアップ21)が所定の固有振動数になるように決定されている。このように、振動センサ60(特に加速度ピックアップ21)の固有振動数を質量部材61により調整することで、該振動センサ60で遮断対象となる高周波振動成分の範囲を調整できる。
【0052】
ここで、下記(4)式は、1次のバネマス系の固有振動数fを示す。
=1/(2π)・√(k/M) ・・・(4)
kはバネ定数であり、Mは質量である。この(4)式を振動センサ60の構成に適用すると、kは弾性体25のばね定数であり、Mは質量部材61を含めた加速度ピックアップ21の質量である。よって、この(4)式からもわかるように、加速度ピックアップ21に質量部材61を付加することで、質量部材61を含めた加速度ピックアップ21の固有振動数fを変化させることができ、この結果、該振動センサ60で遮断対象となる高周波振動成分の範囲(転動体の計算通過周波数に対して8倍、好ましくは6倍の周波数帯)を調整できるようになる。
【0053】
なお、この第3の実施形態では、加速度ピックアップ21に質量部材61を付加して、固有振動数を変化させているが、他の方法により固有振動数を変化させることもできる。すなわち、加速度ピックアップ21と弾性体25との固定方法、又は加速度ピックアップ21と被測定物200との固定方法を適宜変化させることでも、固有振動数を変化させることができる。また、弾性体25の厚さや材料(物性値)等、加速度ピックアップ21自体の重量を適宜変化させることでも、固有振動数を変化させることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
次に第4の実施形態を説明する。第4の実施形態も振動センサであり、図20は、その振動センサ70の構成を示す。図20に示すように、第4の実施形態における振動センサ70は、加速度ピックアップ21と弾性体25、弾性体25と被測定物200それぞれをねじ71,72により個別に固定している。例えば、このような構成にすることで、振動センサ70の固有振動数を変化させることができ、該振動センサ70で遮断対象となる高周波振動成分の範囲を調整できる。
【0055】
(第5の実施形態)
次に第5の実施形態を説明する。第5の実施形態も振動センサであり、図21は、その振動センサ80の構成を示す。図21に示すように、振動センサ80は、加速度ピックアップ21と弾性体25、弾性体25と被測定物200それぞれを個別に固定している。第5の実施形態では、前記第4の実施形態の場合と異なり、弾性体25の外周部を囲うような取り付け部材82を用いて、該弾性体25を被測定物200に固定している。例えば、このような構成にすることで、振動センサ80の固有振動数を変化させることができ、該振動センサ80で遮断対象となる高周波振動成分の範囲を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態の転動装置が備える振動センサ(加速度ピックアップ)の構成を示すブロック図である。
【図2】加速度ピックアップのローパスフィルタの減衰特性を示す特性図である。
【図3】ローパスフィルタの構成の一例を示す回路図である。
【図4】ボールねじへの加速度ピックアップの取り付け例を示す図である。
【図5】ボールねじへの加速度ピックアップの他の取り付け例を示す図である。
【図6】リニアガイドへの加速度ピックアップの取り付け例を示す図である。
【図7】リニアガイドへの加速度ピックアップの他の取り付け例を示す図である。
【図8】ボールねじの振動加速度の周波数解析の結果を示す特性図である。
【図9】異常発生前後の振動加速度信号(加速度ピックアップの出力信号)のピーク−ピーク値変化率を示す特性図である。
【図10】ボールねじに関し、周波数と振動強さ(db)との関係を示す特性図である。
【図11】直動要素等における往復時の振動の違いの説明に使用した特性図である。
【図12】速度ピックアップを備えた異常検出システムの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の転動装置が備える振動センサの構成を示す図である。
【図14】第2の実施形態における振動センサ(加速度ピックアップ)の構成を示すブロック図である。
【図15】第2の実施形態における加速度ピックアップの特性を示す特性図である。
【図16】振動センサを備えたボールねじの構成を示す平面図である。
【図17】振動センサを備えたボールねじの構成を示す軸方向断面図である。
【図18】振動センサを備えたボールねじの構成を示す径方向断面図である。
【図19】第3の実施形態の転動装置が備える振動センサの構成を示す図である。
【図20】第4の実施形態の転動装置が備える振動センサの構成を示す図である。
【図21】第5の実施形態の転動装置が備える振動センサの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 加速度ピックアップ(振動センサ)、11 加速度センサ、12 アンプ、13 ローパスフィルタ、20 振動センサ、21 加速度ピックアップ、25 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軌道部材、第2の軌道部材及び複数の転動体からなり、前記第1の軌道部材と第2の軌道部材それぞれに設けられた軌道溝、及び一方の軌道部材内に設けられた戻し路により構成される少なくとも1つの転動体循環路内に転動自在に前記転動体を介挿することで、前記第1の軌道部材と第2の軌道部材とを相対移動させる転動装置において、
前記第1の軌道部材及び第2の軌道部材の何れかに取り付けられ、振動時の加速度に応じた電圧を出力する加速度センサと、前記加速度センサの出力電圧を増幅する増幅手段と、前記加速度センサの出力電圧、又は増幅手段の出力電圧について、設定した周波数成分を減衰させるフィルタ手段とを備え、
前記フィルタ手段は、前記第1の軌道部材と第2の軌道部材との相対運動に伴い前記転動体循環路を前記転動体が移動するときに幾何学的に算出される特定周波数に対して、8倍を超える周波数を減衰させることを特徴とする転動装置。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、20dB/dec以上の減衰特性を持つことを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
【請求項3】
前記フィルタ手段は、前記特定周波数に対して、4倍、6倍及び8倍の周波数のうちの少なくとも何れかを6dB/oct以上の減衰特性で減衰させることを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
【請求項4】
前記加速度センサの周波数特性が10KHz以上に渡り略線形であり、前記増幅手段は、前記加速度センサからの出力電圧を基に、非線形出力を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の転動装置。
【請求項5】
前記フィルタ手段は、弾性体で構成される機械的フィルタであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の転動装置。
【請求項6】
前記第1の軌道部材の軌道溝及び第2の軌道部材の軌道溝の何れかがゴシックアーチ形状であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の転動装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の軌道部材、並びに前記転動体は、金属又はセラミックで形成されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の転動装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の転動装置の前記第1の軌道部材及び第2の軌道部材の何れかが直動したときの振動を検出し、その検出値から前記転動装置の異常を検出する転動装置の異常検出方法において、
特定周波数の振動を監視して、前記転動装置の異常を検出することを特徴とする転動装置の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−210301(P2009−210301A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51246(P2008−51246)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】