説明

透明導電性フィルム

【課題】どのような方向から観察しても色むら(干渉色)が生じにくい透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】透明導電性フィルム10は、透明接着層11と、透明接着層11の一方の面に積層された第1ポリシクロオレフィンフィルム12と、透明接着層11の他方の面に積層された第2ポリシクロオレフィンフィルム13と、第1ポリシクロオレフィンフィルム12上に形成された第1透明電極パターン14と、第2ポリシクロオレフィンフィルム13上に形成された第2透明電極パターン15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式タッチパネルなどに用いられる透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明なアクリル酸系粘着剤を介して接着された積層フィルムの、外側両面に、透明電極パターンが形成された透明導電性フィルムが知られている(例えば特許文献1:特開2009−70191)。しかし、従来の透明導電性フィルムは、ポリエチレンテレフタレートの面内の位相差値が2,000nm以上と大きいため、斜め方向から観察したとき、虹色の色むら(干渉色)が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−70191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、どのような方向から観察しても色むら(干渉色)が生じにくい透明導電性フィルムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の透明導電性フィルムは、透明接着層と、第1ポリシクロオレフィンフィルムと、第2ポリシクロオレフィンフィルムと、第1透明電極パターンと、第2透明電極パターンとを有する。第1ポリシクロオレフィンフィルムは透明接着層の一方の面に積層される。第2ポリシクロオレフィンフィルムは透明接着層の他方の面に積層される。第1透明電極パターンは、第1ポリシクロオレフィンフィルムの、透明接着層とは反対側の面に形成される。第2透明電極パターンは、第2ポリシクロオレフィンフィルムの、透明接着層とは反対側の面に形成される。
(2)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値および第2ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値は、波長590nmにおいて20nm以下である。
(3)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1ポリシクロオレフィンフィルムの誘電率および第2ポリシクロオレフィンフィルムの誘電率は、1MHzにおいて2.1〜2.5である。
(4)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1ポリシクロオレフィンフィルムの透過率および第2ポリシクロオレフィンフィルムの透過率は、波長590nmにおいて85%以上である。
(5)本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1透明電極パターンおよび第2透明電極パターンは、インジウムスズ酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかにより形成される。
(6)本発明の透明導電性フィルムにおいて、透明接着層は感圧性接着剤層または硬化接着剤層である。感圧性接着剤は粘着剤とも呼ばれる。
(7)本発明の透明導電性フィルムにおいて、感圧性接着剤層はアクリル系粘着剤層である。
(8)本発明の透明導電性フィルムにおいて、硬化接着剤層は紫外線硬化型接着剤層である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、どの方向から観察しても色むらがほとんど生じない透明導電性フィルムを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の透明導電性フィルムの平面図および断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、透明な接着層を介して2枚のポリシクロオレフィンフィルムが接着された積層フィルムの外側両面に、透明電極パターンが形成された透明導電性フィルムを開発した。この透明導電性フィルムは、どの方向から観察しても色むらがほとんど生じないという特徴をもつ。
【0009】
[透明導電性フィルム]
本発明の透明導電性フィルム10は、図1に示すように、透明接着層11と、第1ポリシクロオレフィンフィルム12と、第2ポリシクロオレフィンフィルム13と、第1透明電極パターン14と、第2透明電極パターン15とを有する。第1ポリシクロオレフィンフィルム12は透明接着層11の一方の面(図1では上面)に積層される。第2ポリシクロオレフィンフィルム13は透明接着層11の他方の面(図1では下面)に積層される。第1透明電極パターン14は、第1ポリシクロオレフィンフィルム12の、透明接着層11とは反対側の面(図1では上面)に形成される。第2透明電極パターン15は、第2ポリシクロオレフィンフィルム13の、透明接着層11とは反対側の面(図1では下面)に形成される。
【0010】
[ポリシクロオレフィンフィルム(polycycloolefin film)]
本発明に用いられる第1ポリシクロオレフィンフィルム12は、代表的には、ジシクロペンタジエンまたはその誘導体を、開環メタセシス重合および水素化し、得られた重合体をフィルム状に成形することにより得られる。第2ポリシクロオレフィンフィルム13も第1ポリシクロオレフィンフィルム12と同様にして得られる。第1ポリシクロオレフィンフィルム12および第2ポリシクロオレフィンフィルム13には、同種のポリシクロオレフィンフィルムを用いることができる。本発明に用いるポリシクロオレフィンフィルムとして、例えば、日本ゼオン社から市販されているポリシクロオレフィンフィルムが利用できる。
【0011】
ポリシクロオレフィンフィルムは、透明性に優れ、かつ面内の位相差が小さいという特徴を有する。このため、ポリシクロオレフィンフィルムを用いた本発明の透明導電性フィルムは、斜め方向から観察しても、色むらが生じにくい。ポリシクロオレフィンフィルムの透過率は、代表的には、波長590nmにおいて85%以上であり、面内の位相差値は、代表的には、波長590nmにおいて20nm以下である。
【0012】
さらに、ポリシクロオレフィンフィルムは誘電率が小さいという特徴を有する。1MHzにおける誘電率(比誘電率)を他の高分子フィルムと比較すると、ポリエチレンテレフタレートフィルムは3.2、ポリカーボネートフィルムは2.9であるのに対し、ポリシクロオレフィンフィルムは2.1〜2.5(代表的には2.3)である。このため、本発明の透明導電性フィルムは、静電容量方式タッチパネルに用いた場合、タッチ感度に優れる。静電容量方式タッチパネルにおいて、指が透明導電性フィルムに接近したときに生じる静電容量の変化は非常に小さい。そのため、電極間の静電容量が小さい方が、指が接近したときの静電容量の変化率が大きくなり、タッチ感度が高くなる。電極間の静電容量は、電極間にある高分子フィルムの誘電率にほぼ比例する。そのため、誘電率の小さいポリシクロオレフィンフィルムを用いると、電極間の静電容量が小さくなる。
【0013】
静電容量方式タッチパネルのタッチ感度を高くするためには、第1透明電極パターン14と第2透明電極パターン15との距離(電極間距離という)は、ある程度大きいことが好ましい。電極間の静電容量は、電極間距離にほぼ反比例する。そのため、電極間距離が大きくなると電極間の静電容量が小さくなり、指が接近したときの静電容量の変化率が大きくなり、タッチ感度が高くなる。図1において、第1透明電極パターン14と第2透明電極パターン15との距離(電極間距離t)は、第1ポリシクロオレフィンフィルム12の厚さt2と、透明接着層11の厚さt1と、第2ポリシクロオレフィンフィルム13の厚さt3の合計である(t=t2+t1+t3)。適正な電極間距離tを得る観点から、第1ポリシクロオレフィンフィルム12の厚さt2は、好ましくは20μm〜200μmであり、さらに好ましくは40μm〜200μmであり、特に好ましくは50μm〜200μmである。第2ポリシクロオレフィンフィルム13の好ましい厚さt3も、第1ポリシクロオレフィンフィルム12の好ましい厚さt2と同様である。
【0014】
一般に、高分子フィルムの位相差は厚さに比例するため、高分子フィルムの厚さを大きくすると、色むらが発生しやすくなる。しかし本発明に用いられるポリシクロオレフィンフィルムは、厚さを大きくしても位相差が十分小さいため、色むらが発生しにくい。そのため、タッチ感度を高くするため、ポリシクロオレフィンフィルムの厚さを大きくし、必要に応じて電極間距離tを大きくすることが容易にできる。
【0015】
第1ポリシクロオレフィンフィルム12は、その片面または両面に、透明電極パターン14との密着性を高めるための易接着層(図示しない)、反射率を調整するための屈折率調整層(index matching layer)(図示しない)、耐擦傷性を付与するためのハードコート層(図示しない)などを備えてもよい。第2ポリシクロオレフィンフィルム13も同様である。
【0016】
[透明接着層]
本発明に用いられる透明接着層11は、第1ポリシクロオレフィンフィルム12と第2ポリシクロオレフィンフィルム13を接合するために、両者の間に設けられる。透明接着層11は、好ましくは感圧性接着剤層(粘着剤層)または硬化接着剤層である。透明接着層11の厚さt1は、感圧性接着剤層である場合は、好ましくは15μm〜50μmであり、硬化接着剤層である場合は、好ましくは0.1μm〜10μmである。
【0017】
感圧性接着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤層である。また、市販の光学透明粘着剤(OCA: Optical Clear Adhesive)も利用できる。硬化接着剤層は、積層するポリシクロオレフィンフィルムに悪影響がないような温度で硬化できる点で、好ましくは紫外線硬化型接着剤層である。ポリシクロオレフィンフィルムは、紫外線硬化型接着剤の硬化に利用される光源(例えば、高圧水銀ランプ)の波長365nmの光をよく透過させるため、紫外線硬化型接着剤を短時間で硬化させることができる。
【0018】
[透明電極パターン]
本発明に用いられる第1透明電極パターン14および第2透明電極パターン15は、タッチ位置を検出するためのセンサとして用いられる。第1透明電極パターン14は、通常、第1ポリシクロオレフィンフィルム12の周辺部に形成された引き回し配線(図示しない)に電気的に接続され、引き回し配線はコントローラIC(図示しない)に接続される。第2透明電極パターン15も同様である。
【0019】
第1透明電極パターン14および第2透明電極パターン15は、いずれか一方をX座標用の電極とし、もう一方をY座標用の電極として、格子状に配置される。第1透明電極パターン14のパターン形状は、ストライプ状(図1)や菱形状(図示しない)など任意である。第2透明電極パターン15のパターン形状も同様である。
【0020】
第1透明電極パターン14および第2透明電極パターン15は、代表的には、透明導電体により形成される。透明導電体とは、可視光領域(380nm〜780nm)で透過率が高く(80%以上)、かつ単位面積当たりの表面抵抗値(単位:Ω/□:ohms per square)が、500Ω/□以下である材料をいう。透明導電体は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物から形成される。第1透明電極パターン14の高さ(厚さ)は、好ましくは10nm〜100nmであり、さらに好ましくは10nm〜50nmである。第2透明電極パターン15の高さ(厚さ)も同様である。
【0021】
第1透明電極パターン14は、第1ポリシクロオレフィンフィルム12に、例えば、スパッタ法または真空蒸着法により透明導電体層を形成した後、透明導電体層の表面に所望のパターンのフォトレジストを形成し、塩酸に浸漬して透明導電体層の不要な部分を除去して得ることができる。第2透明電極パターン15も同様にして得られる。
【実施例】
【0022】
酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%のインジウムスズ酸化物の焼結体ターゲットを有するスパッタ装置を用いて、ポリシクロオレフィンフィルムの一方の面に、厚さ27nmのインジウムスズ酸化物層を形成した。ポリシクロオレフィンフィルムとして、日本ゼオン社製「ZEONOR」(登録商標)フィルムを用いた。ポリシクロオレフィンフィルムの、厚さは60μm、1MHzにおける誘電率は2.3、波長590nmにおける面内の位相差値は3nmであった。
【0023】
インジウムスズ酸化物層が片面に形成されたポリシクロオレフィンフィルムを2枚準備した。一方が第1ポリシクロオレフィンフィルム12であり、他方が第2ポリシクロオレフィンフィルム13である。各ポリシクロオレフィンフィルムを、それぞれのインジウムスズ酸化物層が外側になるように、厚さ5μmの紫外線硬化型接着剤(Nagase ChemteX Corporation製DA-141)を用いて接合し、高圧水銀ランプから紫外線(波長365nm)を照射して、紫外線硬化型接着剤を硬化させ、積層体とした。
【0024】
上記の積層体の一方のインジウムスズ酸化物層を保護フィルム(株式会社サンエー化研製アクリル粘着剤付ポリエステルフィルム)で保護し、他方のインジウムスズ酸化物層の表面にストライプ状のフォトレジストパターンを形成した。積層体を塩酸に浸漬して不要なインジウムスズ酸化物層を除去し、ストライプ状の透明電極パターン(幅2mm、ピッチ6mm)を形成した。次に、積層体の他方のインジウムスズ酸化物層にも上記の操作を行ない、各ポリシクロオレフィンフィルムの外側に、ストライプ状の透明電極パターンを形成し、透明導電性フィルムを得た。
【0025】
得られた透明導電性フィルムにおいては、第1ポリシクロオレフィンフィルムの厚さt2が60μm、透明接着層の厚さt1が5μm、第2ポリシクロオレフィンフィルムの厚さt3が60μmであるから、その電極間距離tは、t=t2+t1+t3=60μm+5μm+60μm=125μmであった。
【0026】
得られた透明導電性フィルムを斜め方向から観察したが、色むらがほとんど観察されなかった。この透明導電性フィルムは、誘電率の小さい(1MHzにて2.3)ポリシクロオレフィンフィルムが用いられているため、静電容量方式タッチパネルに用いた場合、タッチ感度が、従来の透明導電性フィルムを用いた場合に比べて優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の透明導電性フィルムの用途に制限は無いが、本発明の透明導電性フィルムは静電容量方式タッチパネル、特に投影型の静電容量方式タッチパネルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0028】
10 透明導電性フィルム
11 透明接着層
12 第1ポリシクロオレフィンフィルム
13 第2ポリシクロオレフィンフィルム
14 第1透明電極パターン
15 第2透明電極パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明接着層と、
前記透明接着層の一方の面に積層された第1ポリシクロオレフィンフィルムと、
前記透明接着層の他方の面に積層された第2ポリシクロオレフィンフィルムと、
前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第1透明電極パターンと、
前記第2ポリシクロオレフィンフィルムの、前記透明接着層とは反対側の面に形成された第2透明電極パターンとを有する透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値および第2ポリシクロオレフィンフィルムの面内の位相差値が、いずれも波長590nmにおいて20nm以下である請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの誘電率および第2ポリシクロオレフィンフィルムの誘電率が、いずれも1MHzにおいて2.1〜2.5である請求項1〜2のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第1ポリシクロオレフィンフィルムの透過率および第2ポリシクロオレフィンフィルムの透過率が、いずれも波長590nmにおいて85%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記第1透明電極パターンおよび第2透明電極パターンが、インジウムスズ酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物、あるいは酸化インジウム―酸化亜鉛複合酸化物のいずれかにより形成される請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記透明接着層が感圧性接着剤層または硬化接着剤層である請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記感圧性接着剤層がアクリル系粘着剤層である請求項6に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記硬化接着剤層が紫外線硬化型接着剤層である請求項6に記載の透明導電性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−89007(P2013−89007A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228660(P2011−228660)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】