説明

透明被膜形成用塗料および透明被膜付基材

【課題】厚みの薄い基材であってもカーリング(湾曲)が抑制され、基材との密着性、硬度、耐擦傷性、透明性等に優れた透明被膜を形成可能な透明被膜形成用塗料を提供する。
【解決手段】官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と、官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と、平均粒子径が5〜500nmの範囲にある金属酸化物微粒子(C)と、有機溶媒(D)とからなり、アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)とアクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)が0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みの薄い基材であってもカーリング(湾曲)が抑制され、基材との密着性、硬度、耐擦傷性、透明性等に優れた透明被膜を形成することのできる透明被膜形成用塗料と透明被膜付基材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
このとき、塗料あるいは塗膜の厚さによっては透明被膜付基材がカーリング(湾曲)する問題があった。
さらに、近年、透明性を向上させるために、あるいは透明被膜付基材を使用した表示装置、携帯電話等の軽量化のために厚みの薄い基材が志向されている。
【0004】
従来このような樹脂製透明被膜には、アクリレート樹脂が使用されていた。たとえば、特許文献1(特開2002-055203号公報)、特許文献2(特表2007-524724号公報)などには、ウレタン系アクリレートや多官能アクリレート樹脂を用いた透明被膜が開示されている。
【0005】
また、本発明者らも、特許文献3(特開2010-001396号公報)、特許文献4(特開2011-137097号公報)に多官能アクリレート樹脂を用いた透明被膜を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-055203号公報
【特許文献2】特表2007-524724号公報
【特許文献3】特開2010-001396号公報
【特許文献4】特開2011-137097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、厚みの薄い基材に従来の透明被膜形成用塗料を用いて透明被膜を形成したところ、透明被膜形成時の収縮によって、カーリング(湾曲)が顕著になり、場合によっては透明被膜が基材から剥離する場合があり、まったく使用に耐えないことが判明した。
【0008】
特許文献3には、導電性酸化物微粒子と、マトリックス形成成分としてグリコール系アクリレート樹脂、非グリコール系アクリレート樹脂からなる塗料が記載されている。
しかしながら、この塗料を用いても、基材が薄い場合、カーリングを抑制することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、このようなカーリング(湾曲)の抑制について鋭意検討した結果、4官能以上のアクリレート樹脂(A)と、2官能トリシクロデカン系アクリレート樹脂および/または3官能ペンタエリスリトール系トリアクリレート樹脂(B)とを組み合わせることにより、特に4官能以上のウレタンアクリレート樹脂オリゴマーとトリシクロデカン系2官能ないしペンタエリスリトール系3官能アクリレート樹脂を混合した樹脂にシリカなどの無機酸化物微粒子を配合した透明被膜形成用塗料を用いるとカーリング(湾曲)が抑制され、基材との密着性に優れ、硬度、耐擦傷性の高い透明被膜付基材が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
[1]官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と、
官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と、
平均粒子径が5〜500nmの範囲にある金属酸化物微粒子(C)と、
有機溶媒(D)とからなり、
アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)とアクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)が0.05〜0.5の範囲にある透明被膜形成用塗料。
【0011】
[2]前記アクリレート樹脂(A)がウレタンアクリレート樹脂であり、該樹脂の平均分子量が500〜5000の範囲にある[1]の透明被膜形成用塗料。
[3]前記アクリレート樹脂(B)が2官能トリシクロデカン系アクリレート樹脂および/または3官能ペンタエリスリトール系トリアクリレート樹脂であり、該樹脂の平均分子量が200〜500の範囲にある[1]または[2]の透明被膜形成用塗料。
【0012】
[4]前記樹脂(A)の濃度(CA)が固形分として0.95〜45重量%の範囲にあり、
前記樹脂(B)の濃度(CB)が固形分として0.05〜12重量%の範囲にあり、
前記金属酸化物微粒子(C)の濃度が固形分として0.25〜48重量%の範囲にあり、
濃度比(C)/{(A)+(B)+(C)}が0.2〜0.7の範囲にあり、合計の濃度{(A)+(B)+(C)}が固形分として5〜60重量%の範囲にある[1]〜[3]の透明被膜形成用塗料。
【0013】
[5]基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、
基材の厚みが20〜70μmの範囲にあり、該透明被膜が[1]〜[4]の透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜であることを特徴とする透明被膜付基材。
【0014】
[6]前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)である[5]の透明被膜付基材。
[7]前記透明被膜の膜厚が1〜10μmの範囲にある[5]または[6]の透明被膜付基材。
[8]前記透明被膜のカーリング性が20mm以下である[5]〜[7]の透明被膜付基材。
【0015】
[9]前記透明被膜の鉛筆硬度が3H以上である[5]〜[8]の透明被膜付基材。
[10]透明被膜を設けた基材の光透過率が92%以上である[5]〜[9]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、厚みの薄い基材であってもカーリング(湾曲)が抑制され、透明性、硬度、耐擦傷性等に優れた透明被膜を形成することのできる透明被膜形成用塗料と該透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜付基材とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、まず、本発明に係る透明被膜形成用塗料について説明する。
[透明被膜形成用塗料]
本発明に係る透明被膜形成用塗料は、官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と平均粒子径が5〜500nmの範囲にある金属酸化物微粒子(C)と有機溶媒(D)とからなる。
【0018】
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)としては、ペンタエリストールテトラアクリレート等の4官能アクリレート樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルアクリレート等のエポキシ基含有4官能アクリレート樹脂、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート等の6官能アクリレート樹脂、6官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、8官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、9官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、12官能ウレタンアクレートオリゴマー樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物等のエポキシ基を含有する4官能以上のアクリレート樹脂等が挙げられ、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0019】
このようなアクリレート樹脂(A)としては、市販されているNKオリゴUA−33H,NKオリゴUA−6LR,NKオリゴUA−8LR,NKオリゴUA−12LR(新中村化学(株)製)等は好適に用いることができる。
【0020】
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)のなかでも、官能基数が6〜12のアクリレート樹脂は、カーリング抑制効果が高く好適に用いることができる。
特に、このような官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)は、ウレタンアクリレート樹脂であることが好ましい。
【0021】
ウレタンアクリレート樹脂を用いるとカーリング抑制効果がより高く、しかも硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
また、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)の平均分子量が500〜5000、さらには600〜4000の範囲にあることが好ましい。
【0022】
ウレタンアクリレート樹脂(A)の平均分子量が低いと、透明被膜形成時の膜の収縮が大きいためにカーリング抑制効果が不十分となる場合がある。ウレタンアクリレート樹脂(A)の平均分子量が高すぎても、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0023】
ウレタンアクリレート樹脂(A)として、平均分子量が前記範囲にあるオリゴマーを用いると、さらにカーリングが抑制され、硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0024】
官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)
2官能アクリレート樹脂としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のグリコール系アクリレートが挙げられる。さらに、1.4−ブタンジオールジメタクレート、1.6−ヘキサンジオールジメタクレート、1.9−ノナンジオールジメタクレート、1.10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ−3-アクリロイロキシプロピルメタクレート等の非グリコール系アクリレートが挙げられる。
【0025】
3官能アクリレート樹脂としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の3官能アクリレート樹脂、ペンタエリスリトールヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等の3官能ウレタンアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物等のエポキシ基含有3官能アクリレート樹脂等が挙げられ、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0026】
このような官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)を用いると、硬度、耐擦傷性を損なうことなく基材との密着性に優れた透明被膜を得ることができる。そして、前記4官能以上のアクリレート(A)と組み合わせることで、基材との密着性が向上し、カーリングが抑制され、硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜付基材となる。
【0027】
なかでも、2官能アクリレート樹脂(B)としてはトリシクロデカン系アクリレート樹脂、官能基数が3のアクリレート樹脂(B)としては、ペンタエリスリトール系トリアクリレート樹脂が好適に用いられる。これらは、前記した4官能以上のウレタンアクリレートと組み合わせることでより基材との密着性に優れ、カーリングが抑制され、硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜付基材となる。その結果、カーリング抑制効果、硬度を低下させることなくより密着性を向上することができるので好適に用いることができる。
【0028】
また、官能基数が2、3のアクリレート樹脂(B)の平均分子量が200〜500の範囲にあることが好ましい。
前記アクリレート樹脂(B)の平均分子量が低すぎると、カーリング抑制が不十分となる場合があり、平均分子量が高すぎても、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0029】
金属酸化物微粒子(C)
金属酸化物微粒子(C)としては、従来公知の金属酸化物微粒子を用いることができる。
【0030】
金属酸化物微粒子(C)を配合して用いると、添加量によるものの、基材との密着性、膜強度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア等の他、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタン等の導電性金属酸化物微粒子も好適に用いることができる。
【0031】
また、金属酸化物微粒子は、従来公知の方法によりシランカップリング剤処理等の分散性を高める処理をして用いることもできる。
金属酸化物微粒子は平均粒子径が5〜500nm、さらには10〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0032】
金属酸化物微粒子が小さすぎると、透明被膜形成用塗料中で粒子が凝集しやすく、得られる透明被膜の基材との密着性、膜強度、耐擦傷性等が不充分になる場合があり、さらに金属酸化物微粒子が導電性微粒子である場合は粒界抵抗が大きくなるため、得られる透明被膜の帯電防止性能が不充分となる場合がある。
【0033】
また、金属酸化物微粒子が非伝導性微粒子である場合、なかでもシリカ微粒子を好適に用いることができる。特に球状のシリカコロイド粒子に由来するシリカ微粒子を用いると、基材との密着性に優れ、カーリングが抑制され、硬度、耐擦傷性に優れるとともに、基材がTACである場合に、基材との屈折率差のない透明被膜を形成することができ、このため、干渉縞がなく透明性に優れた透明被膜付基材を得ることができる。
【0034】
金属酸化物微粒子が大きすぎても、得られる透明被膜の透明性が低下したり、ヘーズが高くなる場合がある。また、金属酸化物微粒子が導電性微粒子である場合は透明被膜中で導電パスを形成しにくく、帯電防止性能が不充分となる場合がある。
【0035】
有機溶媒(D)
本発明に用いる有機溶媒としては前記官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と官能基数が2のアクリレート樹脂(B)、重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに金属酸化物微粒子を均一に分散することができる従来公知の溶媒を用いることができる。
【0036】
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、
ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピル、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;トルエン等極性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0037】
重合開始剤
本発明では、必要に応じて光重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)2、4、4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。また、上記以外に、レベリング剤などが含まれていてよい。
【0038】
組成
前記各成分を含む透明被膜形成用塗料中の樹脂(A)の濃度(CA)は固形分として0.95〜45重量%、さらには2.0〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
【0039】
透明被膜形成用塗料中の樹脂(A)の濃度(CA)が少なすぎると、得られる透明被膜がカーリングする場合がある。透明被膜形成用塗料中の樹脂(A)の濃度(CA)が多すぎても、得られる透明被膜の硬度が不十分となる場合がある。
【0040】
また、樹脂(B)の濃度(CB)は固形分として0.05〜12重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
樹脂(B)の濃度(CB)が少ないと、透明被膜と基材との密着性が不十分となる場合がある。樹脂(B)の濃度(CB)が多すぎても、得られる透明被膜の硬度が不十分となる場合がある。
【0041】
透明被膜形成用塗料中の金属酸化物微粒子(C)の濃度は固形分として0.25〜48重量%、さらには0.5〜42重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗料中の金属酸化物微粒子(C)が少ないと、カーリング抑制効果、硬度および耐擦傷性が不十分となる場合がある。透明被膜形成用塗料中の金属酸化物微粒子(C)が多すぎても、得られる透明被膜と基材との密着性が不十分となり、厚膜化した場合にクラックを生じる場合がある。
【0042】
透明被膜形成用塗料中の(A)〜(C)の合計濃度は固形分として5〜60重量%、さらには10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗料の合計濃度が低すぎると、1回の塗布で膜厚が0.5μm以上の透明被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥して形成した場合、得られる透明被膜の硬度や耐擦傷性が不充分となったり、ヘーズあるいは外観が悪くなったり、生産性、製造信頼性等が低下する。透明被膜形成用塗料の合計濃度が高すぎても、塗料の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、得られる透明被膜のヘーズが高くなったり、表面粗さが大きく耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0043】
前記アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)と前記アクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)は0.05〜0.50、さらには0.05〜0.43の範囲にあることが好ましい。
前記濃度比(CB)/(CA)が小さ過ぎると、樹脂(B)が少ないため、密着性が不十分となる場合があり、前記濃度比(CB)/(CA)が多すぎると、樹脂(A)が少ないために、カーリング抑制効果および硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0044】
全固形分濃度{(A)+(B)+(C)}に対する金属酸化物微粒子の濃度(C)の割合、(C)/{(A)+(B)+(C)}は0.2〜0.7、0.25〜0.6の範囲にあることが好ましい。
【0045】
前記(C)/{(A)+(B)+(C)}が小さいと、カーリング抑制効果、硬度および耐擦傷性が不十分となる場合がある。
前記(C)/{(A)+(B)+(C)}が多すぎても、得られる透明被膜と基材との密着性が不十分となり、厚膜化した場合にクラックを生じる場合がある。
【0046】
このような透明被膜形成塗料を用いた透明被膜の形成方法は、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射する等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
得られた透明被膜付基材の透明被膜の膜厚は1〜10μm、さらには2〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次ぎに、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
【0047】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に形成された前記塗料を用いてい形成された透明被膜とからなる。
【0048】
基材
本発明に用いる基材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。
中でも厚みの薄い基材に好適に用いることができ、特にTAC基材は基材の厚みが薄い場合にカーリングしやすく、カーリングを抑制することのできる本発明の透明被膜付基材としては好適に用いることができる。
【0049】
基材の厚みは20〜70μm、さらには30〜60μmの範囲にあることが好ましい。
基材が薄いものでは、前記した本発明の透明被膜形成塗料を用いてもカーリングを抑制することが困難となることがある。
【0050】
基材の厚いものでは、従来公知の塗料を用いても顕著にカーリングすることなく透明性、硬度、耐擦傷性等に優れた透明被膜を形成することができる。なお、このことは、本発明の透明被膜形成塗料を用いて厚みが70μmを越える基材上に透明被膜を形成することを排除するものではない。
【0051】
透明被膜
本発明に係る透明被膜は、前記した官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)とが、硬化したマトリックスと平均粒子径が5〜500nmの範囲にある金属酸化物微粒子(C)とからなっている。
【0052】
塗料中の各成分(A)〜(C)の割合が通常、そのまま透明被膜中の割合となる。
透明被膜中の官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)の含有量(WA)は固形分として1.58〜75重量%、さらには3.33〜66.7重量%の範囲にあることが好ましい。アクリレート樹脂(A)のが少ないと、透明被膜がカーリングする場合がある。アクリレート樹脂(A)が多すぎても、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0053】
透明被膜中の官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)含有量(WB)は固形分として0.08〜20重量%、さらには0.17〜16.7重量%の範囲にあることが好ましい。アクリレート樹脂(B)が少なすぎても、基材との密着性が不十分となる場合がある。アクリレート樹脂(B)が多すぎても、硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0054】
前記樹脂(A)の含有量(WA)と前記樹脂(B)の含有量(WB)との含有量比(WB)/(WA)は0.05〜0.5、さらには0.05〜0.43の範囲にあることが好ましい。
含有量比(WB)/(WA)が0.05未満の場合は、密着性が不十分となる場合がある。
含有量比(WB)/(WA)が0.4を越えると、透明被膜がカーリングしたり硬度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0055】
透明被膜の膜厚は1〜10μm、さらには2〜10μmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が薄いと、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不充分となる場合がある。透明被膜の膜厚が厚すぎても、基材との密着性が不十分となったり、クラックが発生する場合がある。
【0056】
本発明では、透明被膜のカーリング性が20mm以下、さらには10mm以下であることが好ましい。
ここで、本発明でカーリング性とは、所定の形状(14cm×25cm×厚み:40μm)のTACフィルム基材上に所定の厚み(8μm)の透明被膜が形成できるように透明被膜形成用塗料を塗布し、20時間静置し、その後、フィルムを10cm×10cmサイズにカットし、塗布面を下にしてフィルムを平板上に置き、カーリング(湾曲)して浮上した基材の頂点の平板からの高さ(Amm)として定義される。
【0057】
透明被膜のカーリング性が大きいと、偏光板等の基材と接着する際にハンドリングが悪く、透明被膜が基板に均一に密着した透明被膜付基材が得られない場合がある。
また、本発明の透明被膜の鉛筆硬度は3H以上、さらには4H以上であることが好ましい。透明被膜の鉛筆硬度が3H未満の場合は、耐擦傷性が不十分である。
また、透明被膜付基材の光透過率が92%以上、さらには92.5%以上であることが好ましい。
【0058】
透明被膜付基材の光透過率が上記範囲よりも低いとの場合は、表示装置等に用いた場合、画像の鮮明度不充分となる場合がある。
このような透明被膜基材は、光電気セル、液晶表示セルや携帯電話、パソコン等の軽量化のために厚みの薄く、かつ軽量も求められる用途に好適である。
【0059】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
透明被膜形成用塗料(1)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)59.26gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)14.40gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)1.60gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で固形分濃度30%に溶解)3.20gとPGME11.34gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(1)を調製した。
【0061】
透明被膜付基材(1)の製造
透明被膜形成用塗料(1)を、TACフィルム(富士フィルム(株)製:FT−PB40UL−M、厚さ:40μm、屈折率:1.51)にバーコーター法(#14)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
【0062】
得られた透明被膜付基材(1)について、全光線透過率およびヘイズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定した。なお、未塗布のTACフィルムは全光線透過率が93.2%、ヘイズが0.2%であった。
また、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を以下の方法、評価基準で評価し、結果を表に示す。
【0063】
カーリング性評価
14cm×25cm×40μm(厚み)のTACフィルム基材上に厚みが8μmの透明被膜が形成できるように透明被膜形成用塗料(1)を塗布し、20時間静置し、その後、フィルムを10cm×10cmサイズにカットし、塗布面を下にしてフィルムを平板上に置き、カーリング(湾曲)して浮上した基材の頂点の平板からの高さを測定し、以下の基準で評価した。
【0064】
〈評価基準〉
10mm未満 :◎
10〜20mm未満 :○
20〜30mm未満 :△
30mm以上 :×
【0065】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5600に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重2kg/cm2で10回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0066】
[実施例2]
透明被膜形成用塗料(2)の調製
実施例1において、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)15.20gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)0.8gとを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(2)を調製した。
【0067】
透明被膜付基材(2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(2)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0068】
[実施例3]
透明被膜形成用塗料(3)の調製
実施例1において、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)11.2gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)4.8gとを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(3)を調製した。
【0069】
透明被膜付基材(3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(3)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0070】
[実施例4]
透明被膜形成用塗料(4)の調製
実施例1において、官能基数が8のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−8LR、平均分子量=3000)14.4gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(4)を調製した。
【0071】
透明被膜付基材(4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(4)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0072】
[実施例5]
透明被膜形成用塗料(5)の調製
実施例1において、官能基数が12のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−12LR、平均分子量=4400)14.4gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(5)を調製した。
【0073】
透明被膜付基材(5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(5)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0074】
[実施例6]
透明被膜形成用塗料(6)の調製
実施例1において、官能基数が3のアクリレート樹脂(B)としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、平均分子量=298)1.60gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(6)を調製した。
【0075】
透明被膜付基材(6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(6)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(6)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0076】
[実施例7]
透明被膜形成用塗料(7)の調製
シリカゾル分散液(日揮触媒化成(株)製;SI−45P;平均粒子径45nm、SiO2濃度40.5重量%)1000gにイオン交換水6000gを加え、ついで陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SK−1BH)800gを添加し、1時間攪拌して脱アルカリ処理した。
【0077】
ついで陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)400gを添加し、1時間攪拌して脱アニオン処理した。ついで、再び陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SK−1BH)400gを添加し、1時間攪拌して脱アルカリ処理してSiO2濃度5重量%のシリカ粒子(RA)分散液を調製した。
【0078】
この分散液を、限外濾過膜を用いてメタノールにて溶媒置換して固形分濃度40重量%のメタノール分散液を得た。
ついで、このメタノール分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン3.00g(信越シリコ−ン(株)製:KBM−503、SiО2成分81.2%)を混合し50℃で20時間攪拌して表面処理した45nmのシリカゾル分散液を得た(固形分濃度40.5重量%)。
その後、ロータリーエバポレーターでプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGME)に溶剤置換した(固形分40.5%)。
【0079】
実施例1において、上記方法で調製した固形分濃度40.5重量%のシリカゾル(1)のプロピレングリコールモノプロピルエーテル分散液59.26gを用いた以外は同様にして固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(7)を調製した。
【0080】
透明被膜付基材(7)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(7)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(7)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0081】
[実施例8]
透明被膜形成用塗料(8)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)69.14gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)10.8gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)1.20gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度30%に溶解)2.4gとPGME6.26gとアセトン10gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(8)を調製した。
【0082】
透明被膜付基材(8)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(8)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(8)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0083】
[実施例9]
透明被膜形成用塗料(9)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)29.63gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)25.20gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)2.8gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.2gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度30%に溶解)5.6gとPGME26.57gとアセトン10gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(9)を調製した。
【0084】
透明被膜付基材(9)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(9)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(9)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0085】
[実施例10]
透明被膜付基材(10)の製造
実施例1において、TACフィルム(富士フィルム(株)製:FT−PB40UL−M、厚さ:60μm、屈折率:1.51)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(10)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。
得られた透明被膜付基材(12)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0086】
[比較例1]
透明被膜形成用塗料(R1)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)59.26gと、官能基数が9のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)16.0gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.2gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度30%に溶解)3.2gとPGME11.34gとアセトン10gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R1)を調製した。
【0087】
透明被膜付基材(R1)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R1)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(R1)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0088】
[比較例2]
透明被膜形成用塗料(R2)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)59.26gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)16.0gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度30%に溶解)3.20gとPGME11.34gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R2)を調製した。
【0089】
透明被膜付基材(R2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R2)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(R2)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0090】
[比較例3]
透明被膜形成用塗料(R3)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)59.26gと、官能基数が6のアクリレート樹脂(共栄社化学社(株)製:DPE−6A、平均分子量=578)16.0gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度30%に溶解)3.20gとPGME11.34gとアセトン10gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R3)を調製した。
【0091】
透明被膜付基材(R3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(R3)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0092】
[比較例4]
透明被膜形成用塗料(R4)の調製
シリカオルガノゾル分散液(日揮触媒化成(株)製:OSCAL1842;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:メチルイソブチルケトン、粒子屈折率1.46)59.26gと、ポリエステルアクリレート樹脂(大阪有機化学社(株)製:V#1000、平均分子量=1000〜2000)16.0gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度30%に溶解)3.20gとPGME11.34gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R4)を調製した。
【0093】
透明被膜付基材(R4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R4)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(R4)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0094】
[比較例5]
透明被膜形成用塗料(R5)の調製
官能基数が9官能のアクリレート樹脂(A)としてウレタンアクリレートオリゴマー樹脂(新中村化学(株)製:NKオリゴ UA−33H、平均分子量=4000)36.0gと、官能基数が2のアクリレート樹脂(B)としてジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A、平均分子量=302)4.0gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロンNSH−8430HF)0.20gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で固形分濃度30%に溶解)8.0gとPGME41.8gとアセトン10.0gを充分に混合して固形分濃度40.0重量%の透明被膜形成用塗料(R5)を調製した。
【0095】
透明被膜付基材(R5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗料(R5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R5)を得た。透明被膜の膜厚は8μmであった。得られた透明被膜付基材(R5)について、全光線透過率、ヘイズ、カーリング性、耐擦傷性および鉛筆硬度を測定し、結果を表に示す。
【0096】
【表1−1】

【0097】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基数が4以上のアクリレート樹脂(A)と、
官能基数が2および/または3のアクリレート樹脂(B)と、
平均粒子径が5〜500nmの範囲にある金属酸化物微粒子(C)と、
有機溶媒(D)とからなり、
アクリレート樹脂(A)の濃度(CA)とアクリレート樹脂(B)の濃度(CB)との濃度比(CB)/(CA)が0.05〜0.5の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗料。
【請求項2】
前記アクリレート樹脂(A)がウレタンアクリレート樹脂であり、該樹脂の平均分子量が500〜5000の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項3】
前記アクリレート樹脂(B)が2官能トリシクロデカン系アクリレート樹脂および/または3官能ペンタエリスリトール系トリアクリレート樹脂であり、該樹脂の平均分子量が200〜500の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項4】
前記樹脂(A)の濃度(CA)が固形分として0.95〜45重量%の範囲にあり、
前記樹脂(B)の濃度(CB)が固形分として0.05〜12重量%の範囲にあり、
前記金属酸化物微粒子(C)の濃度が固形分として0.25〜48重量%の範囲にあり、
濃度比(C)/{(A)+(B)+(C)}が0.2〜0.7の範囲にあり、合計の濃度{(A)+(B)+(C)}が固形分として5〜60重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料。
【請求項5】
基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、
基材の厚みが20〜70μmの範囲にあり、該透明被膜が請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗料を用いて形成された透明被膜であることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項6】
前記基材がトリアセチルセルロース(TAC)であることを特徴とする請求項5に記載の透明被膜付基材。
【請求項7】
前記透明被膜の膜厚が1〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項5または6に記載の透明被膜付基材。
【請求項8】
前記透明被膜のカーリング性が20mm以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項9】
前記透明被膜の鉛筆硬度が3H以上であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項10】
透明被膜を設けた基材の光透過率が92%以上であることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の透明被膜付基材。

【公開番号】特開2013−64038(P2013−64038A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202157(P2011−202157)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】