説明

連動式逆回転二重錠前

【課題】同一鍵を使用する2つの錠前を逆回転構造とし、且つ、2つの錠前が連動して互いの動作を拘束することで操作順序を固定化し、使用者の複雑な操作なしで不正解錠のリスクを従来よりも低減できるようにする。
【解決手段】同じ鍵で施錠・解錠できるが施錠・解錠によるシリンダー11・21の回転方向が互いに逆回転となっている第1の錠前10及び第2の錠前20と、第1の錠前のシリンダー11の回転に連動し、その解錠時には第2の錠前のシリンダー21の回転を拘束し、施錠時には第2の錠前のシリンダー21の回転を許容する第1の制御棒13と、第2の錠前のシリンダー21の回転に連動し、その解錠時には第1の錠前のシリンダー11の回転を許容し、施錠時には第1の錠前のシリンダー11の回転を拘束する第2の制御棒23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア等を2つの錠前により二重ロックする二重錠前に関する。詳しくは、2つの錠前を連動させ、施錠・解錠による回転方向を互いに逆回転とするとともに、解錠順序も固定化することにより、不正解錠にかかる所要時間の増加を図った連動式逆回転二重錠前に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来提供されている二重錠前は、図8に示すように、シリンダー51aとかんぬき機構部51bとを有する第1の錠前51と、同じくシリンダー52aとかんぬき機構部52bとを有する第2の錠前52とが独立して動作するため、次のような問題があった。
第1の問題は、2つの錠前が独立して動作するため、解錠順序が決まっておらず、どちらの錠前からでも解錠可能であった。
第2の問題は、2つの錠前の解錠する回転方向が同じであるため、2つの錠前が同一手順で解錠可能であった。
第3の問題は、異なる錠前を使用する場合、使用者は2種類の鍵が必要であった。
【0003】
特許文献に開示された二重錠前としては、例えば次のようなようなものがある。
<特許文献1(特開2001−164806号公報)>
扉に配設される錠箱に対しスライド移動自在に設けられ回転操作されるサムターンにより扉の前端面から進退されるガードボルトと、このガードボルトを突出させる際のサムターンの回転に従動し、ガードボルトが突出した状態で、ストッパーにより回転が規制され、ガードボルトを後退させる方向のキー操作が不能になる第一シリンダー錠と、該第一シリンダー錠に使用される同一のキー又はサムターンにより操作されストッパーの第一シリンダー錠に対する回転規制を解除する第二シリンダー錠とを具備し、屋外側からの操作では、第二シリンダー錠を操作し、第一シリンダー錠の回転規制を解除してからでなくては、第一シリンダー錠によりガードボルトを後退させることができないようにしたもの。
【0004】
しかし、これによると、先に第二シリンダー錠を操作して第一シリンダー錠の回転規制を解除してからでなければ、扉の解錠ができないものの、解錠する際の第二シリンダー錠及び第一シリンダー錠の回転方向は同じで、しかも、第一シリンダー錠と第二シリンダー錠とが互いに回転を規制する構造にはなっていない。
【0005】
<特許文献2(特開2001−262876号公報)>
屋外側からのキー操作によりロック部材を進退させる第一シリンダー錠と、この第一シリンダー錠に連動連結される係合爪と、この係合爪に係合する係合位置と係合爪に係合しない非係合位置との間を移動自在な係合片と、一方のスライド停止位置で係合片を非係合位置に移動させ第一シリンダー錠を回転自在とし、他方のスライド停止位置で係合片を係合位置に移動させ第一シリンダー錠の回転を阻止するスライドボードと、屋外側からのキー操作によりスライドボードをスライドさせる第二シリンダー錠と、屋内側に設けられロック部材を進退させるサムターンと、屋内側に設けられ第二シリンダー錠に連動しスライドボードをスライドさせる回転操作片とを具備し、屋外側及び屋内側から必要に応じてダブルロック,シングルロックの各状態に切換操作ができる一方、屋内側からは1サムターンでの施解錠操作を可能としたもの。
【0006】
しかし、ダブルロック状態になっている場合に屋外側から解錠するには、第二シリンダー錠をキーにて操作し、第一シリンダー錠の回転の阻止状態を一時的に解除してから行い、その一時的解除状態で第一シリンダー錠を施錠操作すると、再びダブルロック状態を保持するようになっているが、これも、解錠する際の第二シリンダー錠及び第一シリンダー錠の回転方向は同じで、しかも、第一シリンダー錠と第二シリンダー錠とが互いに回転を規制する構造にはなっていない。
【0007】
<特許文献3(特開2004−107941号公報)>
ドアに組込んだ第1のシリンダー錠に連動し、ドア枠に設けた受座に出没自在に嵌合する第1のデッドボルトと、この近傍に設けられた第2のシリンダー錠と、この第2のシリンダー錠に連動し、第1のデッドボルトに、上下方向に出没自在に嵌合する第2のデッドボルトとからなり、第1のシリンダー錠を施錠した状態で第2のシリンダー錠を施錠することにより、第2のデッドボルトが第1のデッドボルトに嵌合してロックするもの。
【0008】
しかし、これも、解錠する際の第2のシリンダー錠及び第1のシリンダー錠の回転方向は同じで、しかも、第1のシリンダー錠と第2のシリンダー錠とが互いに回転を規制する構造にはなっていない。
【特許文献1】特開2001−164806号公報
【特許文献2】特開2001−262876号公報
【特許文献3】特開2004−107941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、同一鍵を使用する2つの錠前を逆回転構造とし、且つ、2つの錠前が連動して互いの動作を拘束することで操作順序を固定化し、使用者の複雑な操作なしで不正解錠のリスクを従来よりも低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明の二重錠前は、同じ鍵で施錠・解錠できるが施錠・解錠によるシリンダーの回転方向が互いに逆回転となっている第1の錠前及び第2の錠前と、第1の錠前のシリンダーの回転に連動し、その解錠時には第2の錠前のシリンダーの回転を拘束し、施錠時には第2の錠前のシリンダーの回転を許容する第1の回転拘束手段と、第2の錠前のシリンダーの回転に連動し、その解錠時には第1の錠前のシリンダーの回転を許容し、施錠時には第1の錠前のシリンダーの回転を拘束する第2の回転拘束手段とを備えてなる。
【0011】
請求項2に係る発明は、第1及び第2の回転拘束手段を次のような態様としたものである。
第1の回転拘束手段は、第1の錠前のシリンダーに連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第2の錠前のシリンダーに向かって進退する第1の制御棒を有し、この第1の制御棒が進出して第2の錠前のシリンダーに設けられた第2の拘束部と係合することにより第2の錠前のシリンダーの回転を拘束し、また、第1の制御棒が後退して第2の拘束部との係合を解除することにより第2の錠前のシリンダーの回転を許容する。
第2の回転拘束手段は、第2の錠前のシリンダーに連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第1の錠前のシリンダーに向かって進退する第2の制御棒を有し、この第2の制御棒が進出して第1の錠前のシリンダーに設けられた第1の拘束部と係合することにより第1の錠前のシリンダーの回転を拘束し、また、第2の制御棒が後退して第1の拘束部との係合を解除することにより第1の錠前のシリンダーの回転を許容する。
【0012】
請求項3に係る発明は、第1及び第2の回転拘束手段を次のような態様としたものである。
第1の回転拘束手段は、第1の錠前のシリンダーの内筒に基端を連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第2の錠前のシリンダーに向かって進退する第1の制御棒と、その先端に連結された第1の制御ピンとを有し、この第1の制御棒が進出して第1の制御ピンが第2の錠前のシリンダーの外筒と内筒の間を貫通することにより該内筒の回転を拘束し、また、第1の制御棒が後退して第2の錠前のシリンダーの内筒から抜出することにより該内筒の回転を許容する。
第2の回転拘束手段は、第2の錠前のシリンダーの内筒に基端を連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第1の錠前のシリンダーに向かって進退する第2の制御棒と、その先端に連結された第2の制御ピンとを有し、この第2の制御棒が進出して第2の制御ピンが第1の錠前のシリンダーの外筒と内筒の間を貫通することにより該内筒の回転を拘束し、また、第2の制御棒が後退して第1の錠前のシリンダーの内筒から抜出することにより該内筒の回転を許容する。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の具体的態様で、第1の制御棒、第1の制御ピン、第2の制御棒、第2の制御ピンを次のような構成とする。
第1の制御棒は、第1の錠前のシリンダーの外筒に設けられたスリットを通じてその外方へ突出する。
第1の制御ピンは、第2の錠前のシリンダーの外筒に設けられた案内部を通じて、第2の錠前のシリンダーの内筒に設けられた第2の拘束穴に挿脱自在に挿入する。
第2の制御棒は、第2の錠前のシリンダーの外筒に設けられたスリットを通じてその外方へ突出する。
第2の制御ピンは、第1の錠前のシリンダーの外筒に設けられた案内部を通じて、第1の錠前のシリンダーの内筒に設けられた第1の拘束穴に挿脱自在に挿入する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、同一鍵を使用する2つの錠前が逆回転で且つ連動しているため、第1の錠前はいくら不正な操作をしても解錠することはできず、第2の錠前から先に解錠しなければならないこと、しかも、通常とは逆に回転させなければならないことによって不正解錠にかかる時間を増加できる。また、2つの錠前は同じ鍵を使用するので、使用者は1つの鍵で開閉できる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、第1の錠前のシリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第2の錠前のシリンダーに向かって進退する第1の制御棒により第2の錠前のシリンダーの回転を拘束し、第2の錠前のシリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第1の錠前のシリンダーに向かって進退する第2の制御棒により第1の錠前のシリンダーの回転を拘束するので、第1の錠前と第2の錠前との連動を簡単な機構により実現できる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、第1及び第2の錠前のそれぞれのシリンダーににおいて制御棒の基端が内筒に連結され、制御棒の先端に連結された制御ピンが制御棒の進出により、相手側の錠前のシリンダーの外筒と内筒との間を貫通することによりその内筒の回転を拘束し、制御棒の後退により制御ピンが内筒から抜出することにより内筒の回転を許容するので、第1及び第2の錠前のシリンダーに対する回転の拘束と回転の許容とを的確に切り換えることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によると、第1及び第2の錠前のそれぞれのシリンダーににおいて、制御棒が自己のシリンダーの外筒に設けられたスリットを通じてその外方へ突出し、制御ピンが相手側のシリンダーの外筒に設けられた案内部を通じて、相手側の内筒に設けられた拘束穴に挿脱自在に挿入するので、シリンダーの内筒の回転による制御棒の進退動作、その進退による制御ピンの挿脱動作をスムーズに且つより確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1において、同一鍵を使用する第1の錠前10と第2の錠前11とがドア1に上下に並設され、第1の錠前10は、そのシリンダー11を右回りに回転させてそのかんぬき機構部12により壁2に対して施錠し、第2の錠前10は、そのシリンダー21を左回りに回転させてそのかんぬき機構部22により同様に施錠する。
【0019】
第1の錠前10のシリンダー11と第2の錠前10のシリンダー21には、その回転動作と連動する第1の制御棒13、第2の制御棒23がそれぞれ連結されており、互いのシリンダー11・12の動作を拘束する。すなわち、すべて解錠状態のとき、第1の錠前10のシリンダー11は第2の錠前10の第2の制御棒23の拘束を受けておらず、施錠できる状態にあり、第2の錠前10のシリンダー21は第1の錠前10の第1の制御棒13の拘束を受け、施錠できる状態にない。第1の錠前10を施錠すると、第1の錠前10の第1の制御棒13の拘束が解け、第2の錠前10は施錠できる状態になる。続いて第2の錠前10を施錠すると、第2の錠前10の第2の制御棒23の拘束を受け、第1の錠前10は動かせなくなる。従って、解錠するときは、第1の錠前10からは解錠できず、第2の錠前10から解錠する。
【0020】
このようにして、同一鍵を使用する2つの錠前10・20が逆回転で且つ連動しているため、第1の錠前10はいくら不正な操作をしても解錠することはできず、第2の錠前10から先に解錠しなければならないこと、且つ通常とは逆に回転させなければならないことによって不正解錠にかかる時間を増加できる。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1として、ここでは原理を説明するため、錠の構造は簡略化し、通常のドア錠前の構成要素、すなわちラッチボルト、デッドボルト(かんぬき)、サムターン、受座、ハンドルは省略し、シリンダーと、締具として掛け金式かんぬきと、シリンダーの動きを制御する要素との基本構造で表現する。また、シリンダーと鍵の構造については特にこだわるものでなく、通常利用されているものであるので、詳しくは説明しない。
【0022】
図1に示すように、本実施例は2つの錠前、すなわち第1の錠前10と第2の錠前20が扉1のフロント面に対し上下に平行に位置している。
第1の錠前10は、第1のシリンダー11と第1のかんぬき機構部12と第1の制御棒13で構成されている。第2の錠前20は、同様に第2のシリンダー21と第2のかんぬき機構部22と第2の制御棒23で構成されている。
【0023】
第1の錠前10において、第1のかんぬき機構部12と第1の制御棒13は第1のシリンダー11に連結され、第1のシリンダー11の回転運動に応じて第1のかんぬき機構部12は回転し、第1の制御棒13は第2の錠前20の第2のシリンダー21に向かって進退する。同様に、第2の錠前20において、第2のかんぬき機構部22と第2の制御棒23は第2のシリンダー21に連結され、第2のシリンダー21の回転運動に応じて第2のかんぬき機構部22は回転し、第2の制御棒23は第1の錠前10の第1のシリンダー11に向かって進退する。
【0024】
第1のシリンダー11には、第2の錠前20の第2の制御棒23による拘束を受けるための第1の拘束穴14が形成されている。同様に、第2のシリンダー12には、第1の錠前10の第1の制御棒13による拘束を受けるための第2の拘束穴24が形成されている。
【0025】
第1の錠前10と第2の錠前20の鍵は共通であるが、第1の錠前10の第1のシリンダー11と第2の錠前20の第2のシリンダー21の回転方向は逆方向である。すなわち、施錠するとき、第1の錠前10が右回り(時計方向)であれば、第2の錠前20は左回り(反時計方向)とし、解錠するとき、第1の錠前10が左回りであれば、第2の錠前20は右回りとする。
【0026】
第1のかんぬき機構部12及び第2のかんぬき機構部22は、それぞれのシリンダー11・21の回転に応じて回転し、施錠するときは、回りきったところで、壁2の受側に到達し、ドア1が施錠される。なお、この実施例1では特に構成として重要ではないので単純な回転式の掛け金風で表現しているが、ドアの場合は通常のデッドボルト式となる。
【0027】
第1の制御棒13は、基端が第1のシリンダー11に連結され、先端部が第2のシリンダー21の回転を拘束するときに、第2のシリンダー21の第2の拘束穴24に挿入される。第1の制御棒13の第1のシリンダー11との連結部分は回転する機構とし、第1の制御棒13の先端は第1のシリンダー11が回転しても同心円状の弧を描くことなく、第1の制御棒13の先端は第2のシリンダー21の第2の拘束穴24に向かう。
同様に、第2の制御棒23は、基端が第2のシリンダー21に連結され、先端部が第1のシリンダー11の回転を拘束するときに、第1のシリンダー11の第1の拘束穴14に挿入される。第2の制御棒23の第2のシリンダー21との連結部分は回転する機構とし、第2の制御棒23の先端は第2のシリンダー21が回転しても同心円状の弧を描くことなく、第2の制御棒23の先端は第1のシリンダー11の第1の拘束穴14に向かう。
【0028】
第1の錠前10及び第2の錠前20が共に解錠状態のとき、第1の錠前10の第1の制御棒13の先端部が第2の錠前20の第2の拘束穴24に挿入されていて、第2の錠前20の第2のシリンダー21は回転できない。一方、第2の錠前20の第2の制御棒23の先端部は第1の錠前10の第1の拘束穴14に挿入されていないので、第1の錠前10の第1のシリンダー11は回転できる。従って、このときは第1の錠前10しか施錠できる状態にない。
【0029】
第1の錠前10が施錠状態で、第2の錠前20が解錠状態のとき、第1の錠前10の第1の制御棒13の先端部が第2の錠前20の第2の拘束穴24から抜けるので、第2の錠前20の第2のシリンダー21が回転できるようになる。従って、このときは第2の錠前20が施錠できる状態になる。
【0030】
第1の錠前10及び第2の錠前20が共に施錠状態のとき、第2の錠前20の第2の制御棒23の先端部が第1の錠前10の第1の拘束穴14に挿入されていて、第1の錠前10の第1のシリンダー11は回転できない。従って、このときは第2の錠前20しか解錠できる状態にない。
【0031】
次に、図2、3、4を参照して実施例1の施錠・解錠動作を説明する。なお、シリンダーの動き及びかんぬき機構部の動きについては、通常のシリンダーの動き及びかんぬき機構部と同じであるので説明は省略する。
【0032】
両錠前10・20が解錠状態で、ドア1が施錠されていない状態のとき、図2に示す通り、第1の錠前10の第1の制御棒13の先端部が第2の錠前20の第2の拘束穴24に挿入されていて、第2の錠前20の第2のシリンダー21は回転できない。一方、第2の錠前20の第2の制御棒23の先端部は第1の錠前10の第1の拘束穴14に挿入されていないので、第1の錠前10の第1のシリンダー11は回転できる。従って、第1の錠前10は右回りに回転させることにより施錠できる状態になっている。
【0033】
次に、第1の錠前10を施錠した状態のとき、図3に示す通り、第1の錠前10を施錠、すなわち第1のシリンダー11が施錠する方向、図では右回りに回転すると、第1の錠前10の第1の制御棒13の先端部が第2の錠前20の第2の拘束穴24から抜ける。そうすると、第2の錠前20の第2のシリンダー21が回転できるようになる。従って、第2の錠前20は左回りに回転させることにより施錠できる状態になる。
【0034】
次に、両錠前10・20が施錠状態で、ドア1が施錠されている状態のとき、図4に示す通り、第2の錠前20を施錠、すなわち第2のシリンダー21が施錠する方向、図では左回りに回転すると、第2の錠前20の第2の制御棒23の先端部が第1の錠前10の第1の拘束穴14に挿入される。そうすると、第1の錠前10の第1のシリンダー11は回転できなくなる。従って、解錠する場合は、第2の錠前20から解錠することになる。
【0035】
ドア1を解錠する場合は、以上の順序とは逆、すなわち、第1の錠前10は第2の錠前20で拘束され解錠できず、第2の錠前20から解錠する。第2の錠前20を右回りに回転させて解錠すると、第2の制御棒23の先端部が第1の錠前10の第1の拘束穴14から抜け、第1の錠前10を解錠できる状態になる。続けて、第1の錠前10を左回りに回転させて解錠する。これで2つの錠前が解錠状態となり、ドア1が解錠される。
【実施例2】
【0036】
実施例1では原理的な構成のみ説明したが、実施例2では、制御棒をより確実に作用させる具体的構造についても述べる。
図5、図6、図7を参照して実施例2を説明する。
【0037】
実施例2も、第1の錠前10と第2の錠前20の鍵は共通であるが、第1の錠前10の第1のシリンダー11と第2の錠前20の第2のシリンダー21の回転方向は逆方向である。すなわち、施錠するとき、第1の錠前10が右回り(時計方向)であれば、第2の錠前20は左回り(反時計方向)とし、解錠するとき、第1の錠前10が左回りであれば、第2の錠前20は右回りとする。
【0038】
実施例1との構成の違いは、制御棒の先端に制御ピンを連結し、この制御ピンがシリンダーの外筒と内筒の間を貫くことで、内筒の回転を拘束するようにしている。
【0039】
なお、実施例1と同様、錠前の構造は簡略化し、通常のドア錠前の構成要素、すなわちラッチボルト、デッドボルト(かんぬき)、サムターン、受座、ハンドルは省略し、シリンダーと、締具として掛け金式かんぬきと、シリンダーの動きを制御する要素との基本構造で表現する。また、シリンダーと鍵の構造については特にこだわるものでなく、通常利用されているものであるので、詳しくは説明しない。
【0040】
図5に示すように、第1の錠前10は、第1のシリンダー11と第1のかんぬき機構部12と第1の制御棒13で構成されている。第2の錠前20は、同様に第2のシリンダー21と第2のかんぬき機構部22と第2の制御棒23で構成されている。
【0041】
第1のかんぬき機構部12及び第2のかんぬき機構部22は、それぞれのシリンダー11・21の内筒の回転に応じて動作し、施錠するときは、回りきったところで、壁の受側に到達し、ドアが施錠される。なお、この実施例2でも特に構成として重要ではないので省略しているが、ドアの場合は通常のデッドボルト式となる。
【0042】
第1のシリンダー11は、内筒17と外筒18を有し、さらに通常のシリンダーと同様の機構部分がある。回転可能な内筒17には、第1のかんぬき機構部12と第1の制御棒13が連結されている。また、内筒17には、第2の錠前20の第2の制御棒23による拘束を受けるための第1の拘束穴14が形成されている。外筒18には、第1の制御棒13を突出させるスリット18aと、第2の錠前20の第2の制御棒23に連結された第2の制御ピン25を案内する案内部である制御ピンガイド16とが、外筒18を貫通して設けられている。
【0043】
同様に第2のシリンダー21は、内筒27と外筒28を有し、さらに通常のシリンダーと同様の機構部分がある。回転可能な内筒27には、第2のかんぬき機構部22と第2の制御棒23が連結されている。また、内筒27には、第1の錠前10の第1の制御棒13による拘束を受けるための第2の拘束穴24が形成されている。外筒28には、第2の制御棒23を突出させるスリット28aと、第1の錠前10の第1の制御棒13に連結された第1の制御ピン15を案内する案内部である制御ピンガイド26とが、外筒28を貫通して設けられている。
【0044】
第1の制御棒13は、基端が内筒17に連結され、先端に第1の制御ピン15を連結している。第1の制御棒13と内筒17との連結部分、及び第1の制御棒13と第1の制御ピン15との連結部分は回転する機構とし、第1の制御棒13は、内筒17の円弧運動を第1の制御ピン15の直線運動へ変換する機能を果たす。
【0045】
同様に第2の制御棒23は、基端が内筒27に連結され、先端に第2の制御ピン25を連結している。第2の制御棒23と内筒27との連結部分、及び第2の制御棒23と第2の制御ピン25との連結部分は回転する機構とし、第2の制御棒23は、内筒27の円弧運動を第2の制御ピン25の直線運動へ変換する機能を果たす。
【0046】
第1の制御棒13と第2の制御棒23とは、シリンダー11・21の軸線方向に食い違う位置関係にあり、従って、両シリンダー11・21の制御ピンガイド16・26同士及び拘束穴14・24同士も食い違う位置関係にある。
【0047】
第1の制御ピン15は、第1の制御棒13が進出するのに伴い、第2のシリンダー21の制御ピンガイド26を通じて内筒27の第2の拘束穴24に挿入され、内筒27と外筒28の間を貫くことによって、内筒27の回転を拘束する。制御ピンガイド26は、制御ピン15を直線摺動させながら第2の拘束穴24へ案内する。
【0048】
同様に第2の制御ピン25は、第2の制御棒23が進出するのに伴い、第1のシリンダー11の制御ピンガイド16を通じて内筒17の第1の拘束穴14に挿入され、内筒17と外筒18の間を貫くことによって、内筒17の回転を拘束する。制御ピンガイド16は、制御ピン25を直線摺動させながら第1の拘束穴14へ案内する。
【0049】
実施例2の施錠・解錠動作について説明する。
図5に示す通り、第1の錠前10及び第2の錠前20が共に解錠状態のとき、第1の錠前10の第1の制御棒13は進出し、その先端の第1の制御ピン15が、第2の錠前20の外筒28と内筒27との間を貫いて、内筒27の第2の拘束穴24へ挿入するので、内筒27は回転を拘束される。一方、第2の錠前20の第2の制御棒23は後退し、その先端の第2の制御ピン25が、第1の錠前10の内筒17の第1の拘束穴14から抜けて、外筒18と内筒17との間を貫かなくなるので、内筒17は回転を拘束されない。従って、このときは第1の錠前10しか施錠できる状態にない。
【0050】
図5に示す状態から図6に示す通り、第1の錠前10を右回りに回転させて施錠すると、第1の錠前10の第1の制御棒13が後退し、その先端の第1の制御ピン15が、第2の錠前20の内筒27の第2の拘束穴24から抜けて、内筒27と外筒28を貫かなくなるので、第2の錠前20の内筒27が回転できるようになる。従って、第2の錠前20は施錠できる状態になる。
【0051】
図6に示す状態から図7に示す通り、第2の錠前20を左回りに回転させて施錠すると、第2の錠前20の第2の制御棒23が進出し、その先端の第2の制御ピン25が第1の錠前10の外筒18と内筒17との間を貫いて内筒17の第1の拘束穴14に挿入するので、第1の錠前10の内筒17は回転できない。従って、第2の錠前20しか解錠できる状態にない。
【0052】
ドアを解錠する場合は、以上の手順とは逆、すなわち、第1の錠前10は、第2の錠前20からの第2の制御棒23の作用で拘束され解錠できないので、第2の錠前20から解錠する。第2の錠前20を解錠すると第2の制御棒23が後退し、第2の制御ピン25が第1の錠前10の外筒18と内筒17との間を貫かなくなるので、第1の錠前10の内筒17が回転できるようになり、第1の錠前10を解錠できる状態になる。そこで、第1の錠前10を解錠すると、両錠前10・20が解錠状態となり、ドアが解錠される。
なお、実施例2で、内筒の円弧運動を制御ピン15・25の直線運動へ変換する機能として制御棒13・23を用いたが、歯車の組み合わせでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明はドアのほか、セキュリティボックス、ケース、ロッカーなどにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1の概略構成図である。
【図2】実施例1において第1及び第2の両錠前が解錠状態の動作説明図である。
【図3】同じく第1の錠前が施錠状態、第2の錠前が解錠状態の動作説明図である。
【図4】同じく第1及び第2の両錠前が施錠状態の動作説明図である。
【図5】実施例2において第1及び第2の両錠前が解錠状態の動作説明図で、(A)は正面から見た図、(B)は側面から見た図である。
【図6】同じく第1の錠前が施錠状態、第2の錠前が解錠状態の動作説明図で、(A)は正面から見た図、(B)は側面から見た図である。
【図7】同じく第1及び第2の両錠前が施錠状態の動作説明図で、(A)は正面から見た図、(B)は側面から見た図である。
【図8】従来の二重錠前の模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ドア
2 壁
10 第1の錠前
11 第1のシリンダー
12 第1のかんぬき機構部
13 第1の制御棒
14 第1の拘束穴
15 第1の制御ピン
16 制御ピンガイド
17 内筒
18 外筒
18a スリット
20 第2の錠前
21 第2のシリンダー
22 第2のかんぬき機構部
23 第2の制御棒
24 第2の拘束穴
25 第2の制御ピン
26 制御ピンガイド
28a スリット
27 内筒
28 外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ鍵で施錠・解錠できるが施錠・解錠によるシリンダーの回転方向が互いに逆回転となっている第1の錠前及び第2の錠前と、第1の錠前のシリンダーの回転に連動し、その解錠時には第2の錠前のシリンダーの回転を拘束し、施錠時には第2の錠前のシリンダーの回転を許容する第1の回転拘束手段と、第2の錠前のシリンダーの回転に連動し、その解錠時には第1の錠前のシリンダーの回転を許容し、施錠時には第1の錠前のシリンダーの回転を拘束する第2の回転拘束手段とを備えてなることを特徴とする連動式逆回転二重錠前。
【請求項2】
第1の回転拘束手段は、第1の錠前のシリンダーに連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第2の錠前のシリンダーに向かって進退する第1の制御棒を有し、この第1の制御棒が進出して第2の錠前のシリンダーに設けられた第2の拘束部と係合することにより第2の錠前のシリンダーの回転を拘束し、また、第1の制御棒が後退して第2の拘束部との係合を解除することにより第2の錠前のシリンダーの回転を許容し、
第2の回転拘束手段は、第2の錠前のシリンダーに連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第1の錠前のシリンダーに向かって進退する第2の制御棒を有し、この第2の制御棒が進出して第1の錠前のシリンダーに設けられた第1の拘束部と係合することにより第1の錠前のシリンダーの回転を拘束し、また、第2の制御棒が後退して第1の拘束部との係合を解除することにより第1の錠前のシリンダーの回転を許容する、
ことを特徴とする請求項1に記載の連動式逆回転二重錠前。
【請求項3】
第1の回転拘束手段は、第1の錠前のシリンダーの内筒に基端を連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第2の錠前のシリンダーに向かって進退する第1の制御棒と、その先端に連結された第1の制御ピンとを有し、この第1の制御棒が進出して第1の制御ピンが第2の錠前のシリンダーの外筒と内筒の間を貫通することにより該内筒の回転を拘束し、また、第1の制御棒が後退して第2の錠前のシリンダーの内筒から抜出することにより該内筒の回転を許容し、
第2の回転拘束手段は、第2の錠前のシリンダーの内筒に基端を連結され、該シリンダーの施錠・解錠による回転に伴い第1の錠前のシリンダーに向かって進退する第2の制御棒と、その先端に連結された第2の制御ピンとを有し、この第2の制御棒が進出して第2の制御ピンが第1の錠前のシリンダーの外筒と内筒の間を貫通することにより該内筒の回転を拘束し、また、第2の制御棒が後退して第1の錠前のシリンダーの内筒から抜出することにより該内筒の回転を許容する、
ことを特徴とする請求項1に記載の連動式逆回転二重錠前。
【請求項4】
第1の制御棒は、第1の錠前のシリンダーの外筒に設けられたスリットを通じてその外方へ突出し、
第1の制御ピンは、第2の錠前のシリンダーの外筒に設けられた案内部を通じて、第2の錠前のシリンダーの内筒に設けられた第2の拘束穴に挿脱自在に挿入し、
第2の制御棒は、第2の錠前のシリンダーの外筒に設けられたスリットを通じてその外方へ突出し、
第2の制御ピンは、第1の錠前のシリンダーの外筒に設けられた案内部を通じて、第1の錠前のシリンダーの内筒に設けられた第1の拘束穴に挿脱自在に挿入する。
ことを特徴とする請求項2に記載の連動式逆回転二重錠前。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−91845(P2009−91845A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264706(P2007−264706)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)