説明

遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置

本発明の課題は、遊星ねじ機構及び差動ねじ原理の両者を利用し、従来に比して正確に回転運動を直線運動に運動変換することである。本発明の回転−直線運動変換装置は、ねじ軸20と、ねじ軸の周りにてねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラ36と、ねじ軸及び遊星ねじローラを囲繞し遊星ねじローラと螺合するローラナット24とを有し、ねじ軸20及び遊星ねじローラ36は互いに逆方向のねじにて螺合し、遊星ねじローラ36及びローラナット24は互いに同一方向のねじにて螺合し、各ねじのピッチは等しく、ねじ軸20又はローラナット24が回転されても何れもスラスト変位しないねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係に対し、ねじ軸又はローラナットの条数が増減されており、ねじ軸又はローラナットが回転すると遊星ねじローラは滑ることなくねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、回転−直線運動変換装置に係り、更に詳細には回転運動を直線運動に変換する遊星式差動ねじ型の回転−直線運動変換装置に係る。
【背景技術】
回転運動を直線運動に変換するねじ式の回転−直線運動変換装置の一つとして、例えば特開平10−196756号公報に記載されている如く、ねじ軸と、ねじ軸の周りに配設されねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、ねじ軸及び遊星ねじローラを囲繞し遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星ねじ式回転−直線運動変換装置が従来より知られている。
かかるねじ式回転−直線運動変換装置によれば、ねじ軸及びローラナットの一方が回転されると、遊星ねじローラが回転され、遊星ねじローラの回転によりねじ軸及びローラナットの他方が直線運動せしめられるので、例えば台形ねじにて互いに螺合するねじ軸及びナットを有する回転−直線運動変換装置の場合に比して変換効率を高くすることができ、またねじ軸とナットとの間にボールが介装されるボールねじ式の回転−直線運動変換装置の場合に比して耐荷重性を高くすることができると共に、ねじ軸及びナットの一方の一回転当りのねじ軸及びナットの他方の直線変位量を小さくすることができる。
またねじ軸と遊星ねじローラとローラナットとを有する装置として、米国特許2683379号公報にはベアリング装置が記載されており、米国特許3173304号公報には回転−直線運動変換装置が記載されている。
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記特許文献1に記載された従来のねじ式回転−直線運動変換装置に於いては、遊星ねじローラ及びローラナットは相対的にスラスト変位しないので、ローラナットの一回転当りのねじ軸の直線変位量を小さくすることができず、また組立て性が悪いという問題がある。
また上記特許文献2に記載されたベアリング装置は本来は回転しながら直線運動を行うベアリング装置であるが、回転−直線運動変換装置としても使用可能である。しかしこのベアリング装置を回転−直線運動変換装置として使用する場合には、荷重により動作が変化し、回転−直線運動のギヤ比(単位変位入力当りの出力変位)が一定にならないため、回転角度と直線変位量とを1対1に対応させて正確に回転運動を直線運動に変換することができないという問題がある。
またねじの螺合部とは別に平歯車の噛合い部により回転を伝達させる機構が必須であり、平歯車の噛合い部がなければベアリング装置が容易にロック状態になってしまうと共に、平歯車の噛み合いによる作動音の発生が避けられず、特に高速の回転入力時に大きい作動音が発生する。
また上記特許文献3に記載された装置は回転−直線運動変換装置として現在広く一般的に市販されている装置であるが、遊星ねじローラ及びローラナットのねじが同一の方向のねじであり且つ遊星ねじローラのねじ条数はローラナットのねじ条数に等しい。そのためローラナットが回転する際のねじ軸のスラスト変位は遊星ねじローラがない通常のねじと同様に発生する。即ち遊星ねじローラが回転する場合のねじ軸のスラスト変位は遊星ねじローラが回転することなく滑る場合のねじ軸のスラスト変位と同一である。換言すれば上記特許文献3に記載された回転−直線運動変換装置に於いては、ねじの螺合部に於いて滑りと転がりとが同時に発生することが前提となっており、そのため摩擦は滑り摩擦及び転がり摩擦の複合となり一定にならない。また上記特許文献3に記載された装置は単に旧来の回転−直線運動変換装置である台形ねじをスムーズに作動させるものに過ぎず、スラスト変位を小さくすることができない。
更に最近の工作機械等に於ける高精度な位置決め及び必要耐荷重性の増大により、回転−直線運動変換装置は回転運動と直線運動との間の運動変換を非常に正確に行うことができると共に、微動、即ち微小なスラスト変位が可能であり且つ耐荷重性能に優れていることが必要となってきている。
本願発明者は、上記特許文献1乃至3に記載の装置に於ける上述の如き問題点及び回転−直線運動変換装置に対する要求性能に鑑み、上記特許文献3に記載された装置が有する優れた耐荷重性能を損なうことなく上記特許文献1乃至3に記載の上述の問題を解消すべく、ねじの螺合により遊星歯車機構による減速及び差動ねじによる減速の両者を達成すべく鋭意検討を行った。
一般に、遊星歯車装置に於ける歯車は、組付けの問題から、はす歯歯車ではなく平歯車である。遊星歯車装置の歯車がはす歯歯車である場合には、各歯車の回転方向の関係から太陽歯車及び遊星歯車は互いに逆方向のはす歯歯車で同一のねじれ角を持ち、内歯歯車は遊星歯車と同一方向のねじれ角を有するはす歯歯車である。
従ってねじの螺合により遊星歯車と同様の減速機構を達成するためには、太陽歯車に対応するねじ軸、遊星歯車に対応する遊星ねじローラ、内歯歯車に対応するローラナットのねじのピッチが同一であり且つねじのリード角が互いに等しく、ねじ軸のみが逆方向のねじとなる。
しかしこの遊星ねじの構造に於いては、何れのねじ部材も他のねじ部材に対し相対的にスラスト変位しないため、各ねじ部材を組付けることができない。本願発明者は更にこの点についても鋭意検討を行った結果、ねじ部材のスラスト変位を可能にして組付けを可能にするためには、ねじの螺合を確保しながらねじ軸又はローラナットのリード角を増減させ、そのリード角の増減分によってスラスト変位を達成すればよいことを見出した。
一般に、二つのねじ部材が完全に螺合するためにはそれらのねじのピッチが互いに等しくなければならない。また遊星状のねじ部材の配置構造に於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのリード角が全て等しくなるためには、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効螺合径(有効ねじ径)がそれぞれの条数の比に一致しなければならない。従って何れのねじ部材もスラスト変位を起こさない関係とは、ねじ軸のみが逆ねじであり且つねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチが等しく、それぞれのねじの条数の比が有効ねじ径の比に等しい関係である。
逆にスラスト変位をさせるねじ部材(ねじ軸又はローラナット)のねじ条数を上記スラスト変位を起こさない関係から整数の条数だけ増減させれば、そのねじ部材を他のねじ部材に対し相対的にスラスト変位させることができる。かくして増減される条数を本明細書に於いては「差動条数」という。
【発明の開示】
本発明は、上述の如く本願発明者により鋭意行われた検討の結果得られた知見に基づき、ねじ軸と遊星ねじローラとローラナットとを有する回転−直線運動変換装置に於いて、遊星ねじ機構(遊星歯車減速機構)の回転減速及びねじ軸と遊星ねじローラとの間又は遊星ねじローラとローラナットとの間の差動ねじの原理の両者を利用することにより、優れた耐荷重性能を確保しつつ、回転角度と直線変位量とを一対一に対応させると共に従来に比して大きい減速比にて回転運動を直線運動に運動変換することを主要な課題とするものである。
上述の主要な課題は、本発明によれば、ねじ軸と、ねじ軸の周りに配設されねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、ねじ軸及び遊星ねじローラを囲繞し遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置にして、ねじ軸及び遊星ねじローラは互いに逆方向のねじにて螺合し、遊星ねじローラ及びローラナットは互いに同一方向のねじにて螺合し、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじのピッチは互いに等しく、ねじ軸又はローラナットが回転されてもねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの何れもスラスト変位しないねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係に対し、ねじ軸又はローラナットの条数が増減されており、ねじ軸及びローラナットが相対的に回転すると遊星ねじローラは滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転することを特徴とする遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置(以下構成1という)によって達成される。
この構成によれば、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットは互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、ねじ軸又はローラナットは遊星ねじローラと共働して差動ねじとしての機能を果たし、これによりねじ軸とローラナットとの間に於いて回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させて回転運動を微小な直線運動に正確に且つ確実に変換することができ、またねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットは互いに螺合するので、上記特許文献3に記載の装置の場合と同様の優れた耐荷重性能を確保することができる。
また回転運動エネルギを直線運動エネルギに変換する効率及び直線運動エネルギを回転運動エネルギに変換する効率をそれぞれ正効率及び逆効率とすると、従来の回転−直線運動変換装置に於ける正効率及び逆効率の何れもねじの摩擦に依存し、従ってねじのリード角に依存する。これに対し上記構成1によれば、後に詳細に説明する如く、ねじのリード角に依存することなく正効率を80%以上の高い値にすることができ、これにより回転運動を直線運動に効率的に変換することができると共に、ねじのリード角に依存することなく逆効率を0にし、直線運動が回転運動に変換されることを効果的に阻止することができる。
また本発明によれば、上記構成1に於いて、ねじ軸及びローラナットのうちの一方の部材が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ねじ軸及びローラナットのうちの他方の部材が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、他方の部材の条数が増減されていることが好ましい(以下構成2という)。
この構成によれば、ねじ軸及びローラナットのうちの一方の部材の回転運動を正確にねじ軸及びローラナットのうちの他方の部材の微小な直線運動に正確に且つ確実に変換することができる。
また本発明によれば、上記構成2に於いて、一方の部材と共働して遊星ねじローラをねじ軸の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラをそれらの軸線周りに回転可能に支持するキャリアを有することが好ましい(以下構成3という)。
この構成によれば、キャリアにより遊星ねじローラをねじ軸の軸線周りの所定の位置に確実に保持すると共に、遊星ねじローラを確実にそれらの軸線周りに回転可能に支持することができる。
また本発明によれば、上記構成3に於いて、キャリアは前記一方の部材によりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記一方の部材に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることが好ましい(以下構成4という)。
この構成によれば、遊星ねじローラがローラナットに対し相対的にスラスト変位することを確実に阻止しつつ遊星ねじローラを確実にねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転させ公転させることができる。
また本発明によれば、上記構成1に於いて、遊星ねじローラがねじ山の噛み合いによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転する際の摩擦損失は、遊星ねじローラがねじ軸若しくはローラナットに対し相対的に回転することなくねじ軸若しくはローラナットに対し相対的に滑る際の摩擦損失よりも小さいことが好ましい(以下構成5という)。
この構成によれば、ねじ軸及びローラナットが相対的に回転すると遊星ねじローラが滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転する状況を確実に確保することができる。
また本発明によれば、上記構成1乃至5の何れかに於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットはそれぞれ対応する軸線の周りに螺旋状に延在するねじを有し、各ねじのねじ山はそれぞれ対応する軸線に沿う断面で見て左右対称であることが好ましい(以下構成6という)。
この構成によれば、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットは互いに共働して確実に遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、ねじ軸又はローラナットは遊星ねじローラと共働して確実に差動ねじとしての機能を果たすことができる。
また本発明によれば、上記構成4に於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの噛み合い部へ異物が侵入することを防止する異物侵入防止部材を有し、異物侵入防止部材はねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記一方の部材に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることが好ましい(以下構成7という)。
この構成によれば、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの噛み合い部へ異物が侵入することを効果的に防止して異物の侵入に起因する運動変換装置の作動不良を効果的に防止することができると共に、異物侵入防止部材がねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの回転を阻害することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上記構成7に於いて、異物侵入防止部材は前記他方の部材のねじに係合するねじ形断面の係合面を有し、前記他方の部材のねじに沿って該他方の部材に対し相対的に回転しつつ相対的にスラスト変位することが好ましい(以下構成8という)。
この構成によれば、異物侵入防止部材がねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの回転を阻害することを確実に防止しつつ、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの噛み合い部へ異物が侵入することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上記構成7又は8に於いて、異物侵入防止部材はキャリアにより支持されていることが好ましい(以下構成9という)。
この構成によれば、異物侵入防止部材を確実に一方の部材に対し相対的に回転可能に且つ相対的にスラスト変位不可能に支持することができる。
また本発明によれば、上記構成1乃至9の何れかに於いて、遊星ねじローラの個数は、ねじ軸及びローラナットの合計の条数を正の整数にて除算した値であることが好ましい(以下構成10という)。
この構成によれば、ねじ軸とローラナットとの間にこれらに螺合する複数個の遊星ねじローラを確実に配置することができる。
また本発明によれば、上記構成3又は4に於いて、キャリアは含油金属にて形成されていることが好ましい(以下構成11という)。
この構成によれば、遊星ねじローラをそれらの軸線周りに滑らかに回転可能に支持し、その良好な支持状態を長期間に亘り維持することができる。
また本発明によれば、上記構成3又は4に於いて、キャリアは円板状をなし、制振鋼板にて形成されていることが好ましい(以下構成12という)。
この構成によれば、遊星ねじローラの回転振動を減衰させて運動変換装置の作動時の静粛性を確実に向上させることができる。
また本発明によれば、上記構成9に於いて、キャリア及び異物侵入防止部材は遊星ねじローラの軸線方向両側に設けられていることが好ましい(以下構成13という)。
この構成によれば、遊星ねじローラをねじ軸の軸線周りの所定の位置に確実に保持し、遊星ねじローラを確実にそれらの軸線周りに回転可能に支持することができると共に、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの噛み合い部へ異物が侵入することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上記構成1乃至12の何れかに於いて、請求項1乃至12の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の構造を有する第一及び第二の運動変換ユニットを有し、第一の運動変換ユニットのねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじ及び第二の運動変換ユニットのねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットのねじはそれぞれ互いに逆方向であり、第一及び第二の運動変換ユニットのねじ軸は互いに整合して一体的に連結され、前記第一及び第二の運動変換ユニットの前記ローラナットは互いに整合して一体的に連結され、第一及び第二の運動変換ユニットの遊星ねじローラはねじ軸の軸線に沿って互いに隔置されていることが好ましい(以下構成13という)。
上記構成1乃至12の何れかの遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置に於いては、ねじ軸と遊星ねじローラとが逆ねじの関係をなすので、ねじ軸と遊星ねじローラとの間の螺合部がスラスト方向に滑ると、遊星ねじローラが本来の公転方向とは逆方向へ公転しようとし、そのためローラナットに本来の回転方向と逆方向の回転の力が作用する。これに対し上記構成14によれば、ローラナットに本来の回転方向と逆方向に作用する回転の力が第一及び第二の運動変換ユニットのローラナットの間に於いて相殺されるので、ねじ軸と遊星ねじローラとの間のスラスト方向の滑りを確実に機械的に阻止することができる。
また本発明によれば、上記構成14に於いて、異物侵入防止部材は第一及び第二の運動変換ユニットの遊星ねじローラの互いに離れた側の端部に近接して設けられていることが好ましい(以下構成15という)。
この構成によれば、第一及び第二の運動変換ユニットの遊星ねじローラの互いに近接する側の端部に異物侵入防止部材を設ける必要がないと共に、運動変換装置の何れの端部からも異物が侵入することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上記構成1に於いて、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効ねじ径をそれぞれDs、Dp、Dnとし、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの条数をそれぞれNs、Np、Nnとすると、ねじ軸又はローラナットが回転されてもねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの何れもスラスト変位しないねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係はNs:Np:Nn=Ds:Dp:Dnが成立する関係であり、ねじ軸の条数Ns又はローラナットの条数Nnがこの関係を満たす値に対し1多い数又は1少ない数に設定されていることが好ましい(以下構成16という)。
また本発明によれば、上記構成2に於いて、ローラナットが回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ねじ軸が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ねじ軸の条数が増減されていることが好ましい(以下構成17という)。
また本発明によれば、上記構成2に於いて、ねじ軸が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ローラナットが回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナットの条数が増減されていることが好ましい(以下構成18という)。
また本発明によれば、上記構成2に於いて、前記他方の部材にスラスト変位方向の力が与えられても、前記一方の部材が回転しないことが好ましい(以下構成19という)。
また本発明によれば、上記構成4に於いて、キャリアはローラナットによりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つローラナットに対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることが好ましい(以下構成20という)。
また本発明によれば、上記構成4に於いて、キャリアはねじ軸によりねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つねじ軸に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることが好ましい(以下構成21という)。
また本発明によれば、上記構成7に於いて、異物侵入防止部材はゴム状弾性材にて形成されていることが好ましい(以下構成22という)。
また本発明によれば、上記構成7に於いて、異物侵入防止部材はねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つローラナットに対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることが好ましい(以下構成23という)。
また本発明によれば、上記構成7に於いて、異物侵入防止部材はねじ軸及びローラナットに対し相対的に回転可能に且つねじ軸に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることが好ましい(以下構成24という)。
また本発明によれば、上記構成8に於いて、異物侵入防止部材の係合面は前記他方の部材のねじに対し弾性的に付勢されていることが好ましい(以下構成25という)。
また本発明によれば、上記構成9に於いて、異物侵入防止部材は取り外し可能にキャリアに取り付けられていることが好ましい(以下構成26という)。
また本発明によれば、上記構成10に於いて、異物侵入防止部材はキャリアに対し遊星ねじローラとは反対の側に位置することが好ましい(以下構成27という)。
また本発明によれば、上記構成1乃至27の何れかに於いて、遊星ねじローラ及びローラナットは同一方向のねじに加えて、遊星ねじローラに設けられた外歯車とローラナットに設けられ外歯車と噛合する内歯車とよりなる歯車構造により相互に回転を伝達することが好ましい(以下構成28という)。
また本発明によれば、上記構成28に於いて、外歯車の軸線は遊星ねじローラの軸線に整合し、外歯車の基準ピッチ円の直径は遊星ねじローラのねじの基準ピッチ円の直径と等しいことが好ましい(以下構成29という)。
また本発明によれば、上記構成28又は29に於いて、外歯車及び内歯車の歯数比は外歯車及び内歯車の有効ねじ径の比と等しいことが好ましい(以下構成30という)。
また本発明によれば、上記構成28乃至30の何れかに於いて、外歯車及び内歯車の歯数比は外歯車及び内歯車の条数の比と等しいことが好ましい(以下構成31という)。
また本発明によれば、上記構成28乃至31の何れかに於いて、外歯車は遊星ねじローラの少なくとも一端部に一体に形成され、内歯車はローラナットに固定されていることが好ましい(以下構成32という)。
また本発明によれば、上記構成28乃至32の何れかに於いて、外歯車は遊星ねじローラの両端部に設けられ、二つの外歯車の歯形は互いに他に対し0°よりも大きく360°よりも小さい位相差を有することが好ましい(以下構成33という)。
また本発明によれば、上記構成33に於いて、位相差は90°よりも大きく270°よりも小さいことが好ましい(以下構成34という)。
また本発明によれば、上記構成34に於いて、位相差は180°であることが好ましい(以下構成35という)。
また本発明によれば、上記構成28乃至35の何れかに於いて、外歯車の歯は遊星ねじローラのねじの一部を郭定していることが好ましい(以下構成36という)。
また本発明によれば、上記構成28乃至35の何れかに於いて、外歯車は遊星ねじローラの少なくとも一端部に設けられ、内歯車の歯はローラナットにより外歯車の歯の間にて少なくともローラナットの軸線に平行な軸線の周りに自転可能に支持され且つ外歯車の歯と係合する複数個の回転体により郭定されていることが好ましい(以下構成37という)。
また本発明によれば、上記構成1乃至37の何れかに於いて、ねじ軸及び遊星ねじローラのねじのねじ山形状は、ねじ軸の軸線を通る断面で見て共通の圧力角の部位を有することが好ましい(以下構成38という)。
また本発明によれば、上記構成38に於いて、ねじ軸及び遊星ねじローラのねじは、ねじ軸及び遊星ねじローラのねじのピッチ、有効ねじ径、条数に基づき平均ねじれ角が演算され、平均ねじれ角に基づき平均圧力角が演算され、平均圧力角及びねじれ角に基づき演算されたねじ山角度を有することが好ましい(以下構成39という)。
また本発明によれば、上記構成39に於いて、ねじ軸の差動条数は正の値であり、ローラナットのねじは台形のねじ山を有し、遊星ねじローラの歯先のねじ山角度及びねじ軸の歯元のねじ山角度はローラナットのねじ山角度と同一であり、遊星ねじローラの歯元のねじ山角度及びねじ軸の歯先のねじ山角度はそれらの平均の角度がローラナットのねじ山角度と同一であることが好ましい(以下構成40という)。
また本発明によれば、上記構成39に於いて、ねじ軸の差動条数は負の値であり、ローラナットのねじは台形のねじ山を有し、遊星ねじローラのねじ山角度及びねじ軸の歯先のねじ山角度はローラナットのねじ山角度と同一であり、ねじ軸の歯元のねじ山角度は平均圧力角及びねじれ角に基づき演算される二つのねじ山角度のうちの小さい方の値であることが好ましい(以下構成41という)。
また本発明によれば、上記構成1乃至41の何れかに於いて、遊星ねじローラの両端の端面は軸線に整合する穴を有し、キャリアは複数の突起を有し、突起が穴に嵌入することにより遊星ねじローラを軸線の周りに回転可能に支持していることが好ましい(以下構成42という)。
また本発明によれば、上記構成42に於いて、穴及び突起はテーパ状をなしていることが好ましい(以下構成43という)。
また本発明によれば、上記構成42又は43に於いて、キャリアは遊星ねじローラの端部の側面を部分的に包囲して支持する側面支持部を有することが好ましい(以下構成44という)。
また本発明によれば、上記構成42乃至44の何れかに於いて、キャリアは含油金属にて形成されていることが好ましい(以下構成45という)。
また本発明によれば、上記構成1乃至41の何れかの遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法として、複数個の遊星ねじローラを保持治具により互いに他に対し所定の位置関係にて自転可能に支持し、保持治具を回転させながら複数個の遊星ねじローラと共にローラナット内に挿入することが好ましい(以下方法1という)。
また本発明によれば、上記構成32の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法として、複数個の遊星ねじローラを保持治具により互いに他に対し所定の位置関係にて自転可能に支持し、保持治具を回転させながら複数個の遊星ねじローラと共にローラナット内に挿入し、しかる後内歯車を外歯車と噛合せた状態で内歯車をローラナットに固定することが好ましい(以下方法2という)。
また本発明によれば、上記方法1又は2の組立て方法に於いて、保持治具は複数個の遊星ねじローラの一端を回転可能に支持する第一の支持部と、複数個の遊星ねじローラの他端を回転可能に支持する第二の支持部と、第一及び第二の支持部を一体的に連結する連結部とを有することが好ましい(以下方法3という)。
また本発明によれば、上記方法3の組立て方法に於いて、保持治具は上記構成33の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立てに使用され、複数個の遊星ねじローラの前記一端及び前記他端は互いに異なる外径の第一及び第二の軸部を有し、第一及び第二の支持部はそれぞれ第一及び第二の軸部の直径に対応する内径の孔を有することが好ましい(以下方法4という)。
また本発明によれば、上記方法1乃至4の何れかの組立て方法に於いて、保持治具は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立てが完了すると、前記一方の部材と共働して遊星ねじローラをねじ軸の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラをそれらの軸線周りに回転可能に支持するキャリアとして機能することが好ましい(以下方法5という)。
また本発明によれば、上記方法1乃至5の何れかの組立て方法に於いて、保持治具は樹脂にて形成されていることが好ましい(以下方法6という)。
【図面の簡単な説明】
図1はローラナットの回転運動をねじ軸の直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第一の実施例を示す縦断面図である。
図2はねじ軸が除去された状態にて第一の実施例の要部を示す平断面図である。
図3は第一の実施例の右側面(右半分)及び軸線に垂直な縦断面(左半分)を示す図である。
図4は第一の実施例の左側面である。
図5はねじ軸の雄ねじをねじ軸の軸線に平行な断面にて示す拡大部分断面図である。
図6は第一の実施例の作動原理を示す解図的説明図であり、特に(A)は図1の右側より回転−直線運動変換装置を見た場合のねじ軸、ローラナット、遊星ねじローラ、キャリアの回転方向を示し、(B)は図1の右側上方より回転−直線運動変換装置を見た場合についてキャリアを固定してねじ軸、ローラナット、遊星ねじローラのスラスト移動方向を示している。
図7はローラナットの回転運動をねじ軸の直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第二の実施例を示す縦断面である。
図8は第一の実施例の修正例として構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第三の実施例を示す縦断面である。
図9はねじ軸の回転運動をローラナットの直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第四の実施例を示す縦断面である。
図10はねじ軸の回転運動とローラナットの直線運動との間にて運動変換を行うよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第五の実施例を示す縦断面である。
図11はねじ軸の回転運動をローラナットの直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第六の実施例を示しており、特に(A)は軸線を通る縦断面であり、(B)は(A)の線B−Bに沿うねじ軸が除去された状態にて第六の実施例を(A)の線B−Bに沿って切断した断面を示す断面図である。
図12は図11に示された遊星ねじローラの拡大正面図(A)、拡大左側面図(B)、拡大右側面図(C)である。
図13は図11に示されたキャリアの正面図(A)、左側面図(B)、右側面図(C)である。
図14は図11に示された各ねじの軸線に沿う拡大部分断面図であり、(A)はローラナットの雌ねじを示し、(B)は遊星ねじローラの雄ねじを示し、(C)はねじ軸の雄ねじを示している。
図15はねじ軸の差動条数Nsが+1である場合について、ローラナットの雌ねじと遊星ねじローラの雄ねじとの噛合状態(A)、及び遊星ねじローラの雄ねじとねじ軸の雄ねじとの噛合状態(B)を示す断面図である。
図16は第六の実施例による運動変換装置の長手方向中央部の軸線に垂直な断面を示す拡大縦断面図である。
図17はねじ軸の差動条数Nsが−1である場合について、各ねじの軸線に沿う拡大部分断面図であり、(A)はローラナットの雌ねじを示し、(B)は遊星ねじローラの雄ねじを示し、(C)はねじ軸の雄ねじを示している。
図18はねじ軸の差動条数Nsが−1である場合について、ローラナットの雌ねじと遊星ねじローラの雄ねじとの噛合状態(A)、及び遊星ねじローラの雄ねじとねじ軸の雄ねじとの噛合状態(B)を示す断面図である。
図19は遊星ねじローラを支持する状態にてキャリアを示す正面図である。
図20は遊星ねじローラがローラナット所定の位置まで挿入され、二つの平歯車がそれぞれ対応する内歯車に噛み合うようローラナット内に挿入され圧入により固定された状態を示す断面図である。
図21は第六の実施例の修正例として構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第七の実施例を示す図11(B)と同様の縦縦断面である。
図22は第六の実施例の修正例として構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第八の実施例を示す部分縦縦断面(A)、部分左側面図(B)、部分平面図(C)である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
第一の実施例
図1はローラナットの回転運動をねじ軸の直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第一の実施例を示す縦断面図、図2はねじ軸が除去された状態にて第一の実施例の要部を示す平断面図、図3は第一の実施例の右側面(右半分)及び軸線に垂直な縦断面(左半分)を示す図、図4は第一の実施例の左側面である。
これらの図に於いて、10は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置を全体的に示しており、回転−直線運動変換装置10は二つの支柱12及び14を介して台座16により支持されている。回転−直線運動変換装置10は軸線18に沿って延在するねじ軸20を含み、ねじ軸20は雄ねじ22を有するねじ部20Aと該ねじ部20Aと一体をなす回転阻止軸部20Bとよりなっている。
ねじ部20Aは軸線18に沿って延在する実質的に円筒形のローラナット24に挿通され、ローラナット24よりも大きい軸線方向の長さを有している。回転阻止軸部20Bは角部が面取りされた正方形の断面形状を有し、支柱12に設けられ対応する断面形状の貫通孔12Aに挿通され、これにより軸線18に沿ってスラスト変位可能に且つ軸線18の周りに回転不可能に支柱12によって支持されている。
ローラナット24は内周面に雌ねじ26を有し、支柱14に設けられた貫通孔14Aに挿通され、支柱14によりボールベアリング28を介して軸線18の周りに回転可能に支持されている。ボールベアリング28のアウタレース及びインナレースはそれぞれCリング30及び32により支柱14及びローラナット24の一端の外周部に固定されている。
ねじ軸20とローラナット24との間には雄ねじ34を有する複数個の遊星ねじローラ36が配置されており、各遊星ねじローラ36は軸線18に平行な軸線38に沿って延在し、ローラナット24よりも短い長さを有している。図示の実施例に於いては、遊星ねじローラ36は9個設けられ、軸線18の周りに等間隔に互いに周方向に隔置されている。各遊星ねじローラ36は両端に円柱状のシャフト部36A及び36Bを有し、シャフト部36A及び36Bはそれぞれねじ軸20を囲繞する環状のキャリア40及び42により軸線38の周りに自転可能に且つ軸線18の周りに公転可能に且つローラナット24に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されている。
キャリア40及び42はねじ軸20の雄ねじ22よりも大きい内径及びローラナット24の雌ねじ26よりも小さい外径を有し、ねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に軸線18の周りに自由に回転可能である。またキャリア40及び42は例えば含油金属の如き摩擦係数が低い材料にて形成され、それぞれCリング44及び46によってローラナット24に固定されたストッパリング48及び50により軸線方向外方へ移動しないよう支持されている。
キャリア40及び42はそれぞれ軸線方向外方へ延在するスリーブ部を有し、スリーブ部の外周面には実質的に半円状の断面形状を有し周方向に延在する環状の突起52及び54が設けられている。キャリア40及び42のスリーブ部の周りには樹脂やゴムの如き弾性を有するゴム状弾性材にて形成された異物侵入防止部材56及び58が嵌合し、異物侵入防止部材56及び58はその凹部に突起52及び54が嵌合することによってキャリア40及び42により取り外し可能に、即ち交換可能に支持されている。異物侵入防止部材56及び58はそれぞれキャリア40及び42よりも軸線方向外方へ延在するスリーブ部を有し、各スリーブ部はねじ軸20の雄ねじ22に対し弾性的に付勢された状態にてこれに係合し螺合する雌ねじ60及び62を有している。
ローラナット24の雌ねじ26及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34は同一方向のねじであるのに対し、ねじ軸20の雄ねじ22及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34は互いに逆方向のねじである。各遊星ねじローラ36の雄ねじ34はねじ軸20の雄ねじ22及びローラナット24の雌ねじ26に螺合している。特にローラナット24がねじ軸20に対し相対的に軸線18の周りに回転すると、遊星ねじローラ36は滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転する。
尚「遊星ねじローラ36が滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転する」ことは、「遊星ねじローラ36がねじ山の噛み合いによりねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転する際の摩擦損失」が、「遊星ねじローラ36がねじ軸20若しくはローラナット24に対し相対的に回転することなくねじ軸20若しくはローラナット24に対し相対的に滑る際の摩擦損失」よりも小さくなるよう、各ねじの間の摩擦係数等との関係にて各ねじのピッチ角等が最適に設定されることにより達成される。
図5はねじ軸20の雄ねじ22を軸線18に平行な断面にて示す拡大部分断面図である。尚図5に於いて、二点鎖線22Aは有効ねじ径の位置を示している。図5に示されている如く、雄ねじ22は90度の挾角をなし先端が丸みを帯びた実質的に二等辺三角形のねじ山形状を有し、軸線18の周りに螺旋状に延在している。また雄ねじ22のねじ山はねじの延在方向に垂直な断面で見て左右対称であるのではなく、軸線18に沿う断面で見て左右対称であるよう形成されている。更に各ねじ山の斜面は軸線18に沿う断面で見て半径Rsの円弧状をなし、有効ねじ径の位置22Aに於ける各ねじ山の斜面の軸線18に対する傾斜角は45度である。
またローラナット24の雌ねじ26及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34もねじ軸20の雄ねじ22と同様に形成されており、従ってねじ軸20の雄ねじ22と遊星ねじローラ36の雄ねじ34及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34とローラナット24の雌ねじ26は、それらの回転方向及び回転角度の大小に拘らず常にそれぞれ有効ねじ径の径方向位置であって軸線方向に互いにねじピッチ分隔置された複数の位置に於いて互いに実質的に点接触する状況を維持する。尚異物侵入防止部材56及び58の雌ねじ60及び62はねじ軸20の雄ねじ22に実質的に密着する断面形状を有している。
またねじ軸20の雄ねじ22、ローラナット24の雌ねじ26、遊星ねじローラ36の雄ねじ34は互いに同一のピッチを有する多条ねじであるが、ローラナット24が回転されてもねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の何れもスラスト変位しないねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の有効ねじ径及び条数の関係に対し、ねじ軸20の条数が1増減された条数に設定される。即ちねじ軸20の差動条数が+1又は−1に設定される。
即ち、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の有効ねじ径をそれぞれDs、Dp、Dnとし、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の条数をそれぞれNs、Np、Nnとすると、ローラナット24が回転されてもねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の何れもスラスト変位しないねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の有効ねじ径及び条数の関係とはNs:Np:Nn:=Ds:Dp:Dnが成立する関係であり、ねじ軸20の条数Nsがこの関係を満たす値に対し1多い数又は1少ない数に設定され、図示の第一の実施例に於いては、ねじ軸20の差動条数が−1に設定されている。
以上の説明より解る如く、ねじ軸20、ローラナット24、遊星ねじローラ36、キャリア40及び42は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機構を構成すると共に、ねじ軸20の差動条数によりローラナット24及び遊星ねじローラ36に対し相対的にねじ軸20を軸線18に沿ってスラスト変位させる差動ねじ機構を構成している。
図6は第一の実施例の作動原理を示す解図的説明図であり、特に図6(A)は図1の右側より回転−直線運動変換装置10を見た場合のねじ軸20、ローラナット24、遊星ねじローラ36、キャリア40及び42の回転方向を示し、図6(B)は図1の右側上方より回転−直線運動変換装置10を見た場合についてキャリア40及び42を固定してねじ軸20、ローラナット24、遊星ねじローラ36のスラスト移動方向を示している。
図6(A)に示されている如く、ねじ軸20は回転しないので、ローラナット24が軸線18の周りに時計廻り方向へ回転されると、各遊星ねじローラ36はそれぞれ対応する軸線38の周りに時計廻り方向へ自転しつつねじ軸20の周りに時計廻り方向へ公転し、キャリア40及び42は軸線18の周りに時計廻り方向へ回転する。
図6(B)に示されている如く、右ねじを有する一つの遊星ねじローラ36についてキャリア40及び42を固定して考えると、遊星ねじローラ36はその軸線38の周りに時計廻り方向へ回転することにより右ねじの締め込み方向へスラスト変位しようとし、これに螺合する左ねじのねじ軸20は軸線18の周りに反時計廻り方向へ回転することにより手前側へスラスト変位しようとする。
この場合遊星ねじローラ36はキャリア40及び42によりスラスト変位が阻止されるので、ねじ軸20は軸線18の周りに反時計廻り方向へ回転することにより遊星ねじローラ36に対し相対的にスラスト変位する。従ってローラナット24が軸線18の周りに時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸20はその差動条数が−1であるので手前側へスラスト変位し、ローラナット24が軸線18の周りに反時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸20は向こう側へスラスト変位する。
尚ねじ軸20の差動条数が+1である場合には、ねじ軸20は上述の場合とは逆方向へ移動する。またローラナット24の差動条数が+1の場合に於いて、ローラナット24が軸線18の周りに時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸20は手前側へスラスト変位し、ローラナット24が軸線18の周りに反時計廻り方向へ回転されると、ねじ軸20は向こう側へスラスト変位し、ローラナット24の差動条数が−1である場合にはねじ軸20は逆方向へスラスト変位する。
遊星ねじローラ36に対するねじ軸20の相対的スラスト変位量の大きさは遊星ねじローラ36の1公転当り1条分、即ちねじのピッチPであり、ローラナット24の1回転当りの公転数は「ローラナット24の有効ねじ径Dn」を「ねじ軸20の有効ねじ径Dsとローラナット24の有効ねじ径Dnとの和」にて除算した値であるので、ローラナット24の1回転当りのねじ軸20のスラスト変位量の大きさLsは下記の式1にて表される。
Ls=P・Dn/(Ds+Dn) ……(1)
例えば図示の第一の実施例に於いて、ピッチPが1mmであり、遊星ねじローラ36の雄ねじ34が4条(Np=4)の右ねじであり、その有効ねじ径が7mmであり、ローラナット24の雌ねじ26の有効ねじ径Dnが遊星ねじローラ36の雄ねじ34の4.5倍の31.5mmであり、その右ねじの条数Nnが遊星ねじローラ36及び遊星ねじローラ36が相対的にスラスト変位しない条件4.5×4の18条であるとすると、ねじ軸20の雄ねじ22の有効ねじ径Dsは、遊星ねじローラ36の雄ねじ34の2.5倍の17.5mmであり、その左ねじの条数Nsはねじ軸20及び遊星ねじローラ36が相対的にスラスト変位しない条件の条数より1少ない条数、即ち1条の2.5×4倍より1少ない9条であるとすると、ローラナット24の1回転当りのねじ軸20のスラスト変位量の大きさLsは上記式1より17.5/49mmである。
尚図示の第一の実施例に於ける遊星ねじローラ36の個数は上述の如く9個であるが、これは上記具体例に於いてねじ軸20及びローラナット24の合計の条数27を正の整数3にて除算した値であり、遊星ねじローラ36の個数がねじ軸20及びローラナット24の合計の条数を正の整数にて除算した値(正の整数)である場合に遊星ねじローラ36を軸線18の周りに等間隔にて互いに周方向に隔置された状態に配置することができる。
かくして図示の第一の実施例によれば、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、ねじ軸20及び遊星ねじローラ36は互いに共働して差動ねじとしての機能を果たし、またねじ軸20が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナット24が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されているので、回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてローラナット24の回転運動を正確にねじ軸20の微小な直線運動に正確に変換することができる。
この点に関し、第一の実施例の装置と上記特許文献3に記載の装置との差異を具体的に説明すべく、ねじのピッチが1mmであり、ねじ軸、遊星ねじローラ、ローラナットの有効ねじ径がそれぞれ20mm、5mm、30mmである場合について、両者のスラスト変位量の差異を説明する。
上記特許文献3に記載の装置の場合には、遊星ねじローラは通常ピッチが1mmの1条ねじであり、ローラナットのねじは条数6の同一方向のねじの雄ねじであり、ねじ軸のねじは同一方向の雄ねじで6条のねじである。この場合ローラナットが1回転する際のねじ軸のスラスト変位は6mmとなり、遊星ねじローラが回転するか否かに拘らず同一である。
これに対し第一の実施例の場合には、遊星ねじローラ36及びローラナット24のねじは上記の場合と同一であるが、ねじ軸20のねじは遊星ねじローラのねじとは逆方向であり、そのねじ条数は遊星ねじローラ36との有効ねじ径の比である4に1を加えた5条であるとする。即ちねじ軸20は4条ねじである場合にはスラスト変位を起こさないが、差動条数を1に設定することによりねじ軸20と遊星ねじローラ36のリード角に差が生じ、ねじ軸20がスラスト変位を発生する。このスラスト変位量は上述の如くねじ軸20の周りを遊星ねじローラ36が1周公転する場合の差動条数分のねじピッチ(差動条数×ねじピッチ)である。
従ってローラナット24が1回転する際に遊星ねじローラ36はねじ軸20の周りを0.6回転の公転運動を行い、その公転運動によってねじ軸20と遊星ねじローラ36との間には0.6mmのスラスト変位が発生する。換言すれば上記特許文献3の構造と同一の大きさ及び同一のねじピッチであっても、ねじ軸20のスラスト変位量を上記特許文献3に記載の装置に対し1/10と非常に小さくすることができる。
またねじを利用した従来の回転−直線運動変換機構として、滑り摩擦を用いる滑りねじ、回転摩擦を用いるボールねじ、滑り摩擦及び回転摩擦を用いる遊星ローラねじ、循環式ローラねじなどが存在する。これら従来の回転−直線運動変換機構に於ける正効率及び逆効率は何れも使用する摩擦に依存し、従ってねじのリード角に依存する。そのため正効率が例えば90%近くとよいものは必ず逆効率もよく、逆に直線運動エネルギが回転運動エネルギに変換されないようにしようとすると、正効率は必ず低下し、50%程度以下になる。換言すれば、正効率を落とさずにスラスト方向の逆入力運動が回転運動に変換されることを阻止できない。
これに対し図示の第一の実施例によれば、従来の回転−直線運動変換機構に於ける物理常識を覆し、ねじのリード角に依存することなく正効率を80%以上の高い値にすることができ、これによりローラナット24の回転運動をねじ軸20の直線運動に効率的に変換することができると共に、ねじのリード角に依存することなく逆効率を0にし、ねじ軸20の直線運動がローラナット24の回転運動に変換されることを効果的に阻止することができる。
上述の如く、ねじ軸20の雄ねじ22及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34は互いに逆ねじの関係にあり、これらのねじのねじ山は軸線18に沿う断面で見て左右対称である。よってねじ軸20の雄ねじ22及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34の結合は厳密には「ねじ結合」ではなく、リード角、即ちねじれ角が異なる二つのはす歯歯車の「歯車結合」である。ねじれ角が異なる二つのはす歯歯車が噛み合って回転すると、それらの間に相対的なスラスト変位が生じるので、ねじ軸20はこの現象に従ってスラスト変位する。よって図示の第一の実施例によれば、ローラナット24の回転をねじ軸20のスラスト変位に変換する効率、即ち正効率を機械的なはす歯歯車の効率である80%以上の値にすることができる。
またねじ軸20の雄ねじ22及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34は上述の如く二つのはす歯歯車の「歯車結合」であるので、ねじれ角が異なっていてもねじ軸20及び遊星ねじローラ36の一方のスラスト変位が他方の回転運動に変換されることはない。即ちねじ軸20及び遊星ねじローラ36の一方にスラスト方向の力が作用しても、両者の歯の噛み合い部に圧縮応力が作用するだけである。換言すればねじ軸20及び遊星ねじローラ36の一方にスラスト方向の力が作用することにより他方を回転させようとしても、他方は回転しない。よって図示の第一の実施例によれば、ねじ軸20のスラスト変位をローラナット24の回転運動に変換する効率、即ち逆効率を確実に0にすることができる。
また図示の第一の実施例によれば、ローラナット24と共働して遊星ねじローラ36をねじ軸20の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラ36をそれらの軸線38の周りに回転可能に支持するキャリア40及び42が設けられ、キャリア40及び42はローラナット24によりローラナットに対し相対的に回転可能に且つローラナットに対し相対的にスラスト変位不可能に支持されているので、遊星ねじローラ36をねじ軸20の軸線18の周りの所定の位置に確実に保持すると共に、遊星ねじローラ36を確実にそれらの軸線38の周りに回転可能に支持することができ、これにより遊星ねじローラ36がローラナット24に対し相対的にスラスト変位することを確実に阻止しつつ遊星ねじローラ36を確実にねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転させ公転させることができる。
また図示の第一の実施例によれば、遊星ねじローラ36がねじの歯の噛み合いによりねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転する際の摩擦損失は、遊星ねじローラ36がねじ軸20若しくはローラナット24に対し相対的に回転することなくねじ軸20若しくはローラナット24に対し相対的に滑る際の摩擦損失よりも小さいので、ねじ軸20及びローラナット24が相対的に回転すると遊星ねじローラ36が滑ることなくねじ山の噛み合いによりねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転する状況を確実に確保することができる。
また図示の第一の実施例によれば、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24は互いに螺合するので、上記特許文献3に記載の装置の場合と同様の優れた耐荷重性能を確保することができ、特にねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の各ねじ山の斜面は対応する軸線に沿う断面で見て円弧状をなし、それらの回転に拘らず常にそれぞれ有効ねじ径の径方向位置であって軸線方向に互いにねじピッチ分隔置された複数の位置に於いて互いに実質的に点接触する状況を維持するので、回転方向や回転角度の大きさ等に関係なく回転角度と直線変位量とを非常に正確に一対一に対応させて運動の変換を行うことができる。
また図示の第一の実施例によれば、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24はそれぞれ対応する軸線の周りに螺旋状に延在するねじ22、34、26を有し、各ねじの軸線18に平行な断面は左右対称であるので、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24が互いに共働して確実に遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たす状況を確保することができる共に、ねじ軸20及び遊星ねじローラ36が互いに共働して確実に差動ねじとしての機能を果たす状況を確保することができる。
また図示の第一の実施例によれば、異物侵入防止部材56及び58が設けられ、異物侵入防止部材56及び58はねじ軸20及びローラナット24に対し相対的に回転可能に且つローラナット24に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されており、異物侵入防止部材56及び58はローラナット24及びキャリア40、42に対し相対的にスラスト変位するねじ軸20の雄ねじ22に係合するねじ形断面の係合面としての雌ねじ60、62を有し、ねじ軸20の雄ねじ22に沿ってねじ軸20に対し相対的に回転しつつ相対的にスラスト変位するので、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の噛み合い部へ異物が侵入することを効果的に防止して異物の侵入に起因する運動変換装置10の作動不良を効果的に防止することができると共に、異物侵入防止部材56及び58がねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の回転を阻害することを確実に防止することができる。
また図示の第一の実施例によれば、異物侵入防止部材56及び58はそれぞれキャリア40及び42により支持されているので、異物侵入防止部材56及び58を確実にローラナット24に対し相対的に回転可能に且つ相対的にスラスト変位不可能に支持することができると共に、キャリア40及び42は含油金属の如き摩擦係数が低い材料にて形成されているので、遊星ねじローラ36をそれらの軸線38の周りに滑らかに回転可能に支持し、良好な耐久性や静粛性を確保することができる。
特に図示の第一の実施例によれば、ローラナット24が回転されても遊星ねじローラ36はスラスト変位せず、ねじ軸20のみがスラスト変位するので、例えば後述の第二及び第五の実施例の場合に比してスラスト変位する部材全体の質量を小さくすることができる。尚このことは後述の第四の実施例についても同様である。
第二の実施例
図7はローラナットの回転運動をねじ軸の直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第二の実施例を示す縦断面である。尚図7に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この第二の実施例に於いては、ねじ部20Aは第一の実施例のねじ部20Aに対応する大径部20Cのうち遊星ねじローラ36に対向する中央部にのみ設けられ大径部20Cの両端部には雄ねじ22は設けられていない。またキャリア40及び42は第一の実施例の場合と同様ねじ軸20及びローラナット24に対し相対回転可能であるが、それぞれ大径部20Cに固定されたCリング44、46及びストッパリング48、50により大径部20Bに対し相対的にスラスト変位しないよう設けられている。
またキャリア40及び42のスリーブ部の外周面には実質的に断面半円形の周溝が設けられており、異物侵入防止部材56及び58はそれらの内周面に設けられ周方向に延在する突起52A及び54Aが対応する周溝に嵌入すことによりキャリア40及び42により支持されている。異物侵入防止部材56及び58の外周面はローラナット24の雌ねじ26に対し弾性的に付勢された状態にてこれに係合し螺合する雄ねじ60A及び62Aを有している。
またこの第二の実施例に於いては、ローラナット24の差動条数が+1又は−1に設定されており、この実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。従ってねじ軸20、ローラナット24、遊星ねじローラ36、キャリア40及び42は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機構を構成すると共に、ローラナット24の差動条数によりローラナット24に対し相対的にねじ軸20及び遊星ねじローラ36を軸線18に沿ってスラスト変位させる差動ねじ機構を構成している。
具体例として、遊星ねじローラ36の有効ねじ径Dpは7mmであり、その雄ねじ34は4条の右ねじであり、ローラナット24の有効ねじ径Dnは遊星ねじローラの4.5倍の31.5mmであり、その右ねじの雌ねじ26の条数は相対変位しない条件の条数より1少ない17条である。またねじ軸20の有効ねじ径Dsは遊星ねじローラ36の2.5倍の17.5mmであり、その左ねじの雄ねじ22の条数は相対変位しない条件2.5×4の10条である。
この第二の実施例に於いて、ローラナット24が軸線18の周りに回転されると、各遊星ねじローラ36が軸線38の周りに自転しつつねじ軸20のねじ部20Aの周りに公転し、これによりねじ軸20が遊星ねじローラ36と共に軸線18に沿ってスラスト変位する。この場合にもローラナット24の1回転当りのねじ軸20のスラスト変位量の大きさLsは上記式1にて表される。
かくして図示の第二の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、遊星ねじローラ36及びローラナット24は互いに共働して差動ねじとしての機能を果たし、またねじ軸20が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナット24が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されている。従って回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてローラナット24の回転運動を正確にねじ軸20の微小な直線運動に正確に変換することができ、また上述の第一の実施例について上述した他の作用効果を得ることができる。
特に図示の第二の実施例によれば、遊星ねじローラ36をねじ軸20の周りに配設し、その状態にて遊星ねじローラ36及びねじ軸20をローラナット24内にねじ込みにより挿入すればよいので、遊星ねじローラ36がローラナット24の内側に配設されることを要する上述の第一の実施例の場合に比して、運動変換装置10の組み立てを容易に行うことができる。尚このことは後述の第五の実施例についても同様である。
第三の実施例
図8は第一の実施例の修正例として構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第三の実施例を示す縦断面である。尚図7に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号又は図1に於いて付された符号にL又はRが付けられた符号が付されている。
この第三の実施例の運動変換装置10は、上述の第一の実施例の運動変換装置10と同様の構造を有する第一の運動変換ユニット10L及び第二の運動変換ユニット10Rを有し、第一の運動変換ユニット10L及び第二の運動変換ユニット10Rは互いに他に対し鏡像の関係をなすと共に、軸線18に沿って互いに他に対し整合している。第一の運動変換ユニット10Lのねじ軸20Lの雄ねじ22L、遊星ねじローラ36Lの雄ねじ34L、ローラナット24Lの雌ねじ26L及び第二の運動変換ユニット10Rのねじ軸20Rの雄ねじ22R、遊星ねじローラ36Rの雄ねじ34R、ローラナット24Rの雌ねじ26Rはそれぞれ互いに逆方向である。
ねじ軸20は左ねじ22Lが設けられたねじ部20ALと右ねじが設けられたねじ部20ARとを有し、ねじ部20AL及び20ARは一体に形成され、ねじ部20ALの周りに遊星ねじローラ36L、キャリア40L、42L、異物侵入防止部材56L、ローラナット24Lが配設されている。同様にねじ部20ARの周りには遊星ねじローラ36R、キャリア40R及び42R、異物侵入防止部材56R、ローラナット24Rが配設されており、遊星ねじローラ36R及びローラナット24Rはそれぞれ左ねじの雄ねじ34R及び雌ねじ26Rを有している。
また互いに対向する側のキャリア42L及び42Rは軸線18に沿って互いに隔置されており、これにより遊星ねじローラ36L及び36Rも軸線18に沿って互いに隔置されている。ローラナット24L及び24Rは互いに対向する端部が当接する状態にて溶接又はボルトの如き機械的締結手段により一体的に連結されており、一体となって回転する。第一の運動変換ユニット10L及び第二の運動変換ユニット10Rには上述の第一の実施例に於ける異物侵入防止部材58に対応する異物侵入防止部材は設けられておらず、異物侵入防止部材56L及び56Rが第一及び第二の運動変換ユニットの遊星ねじローラ36L及び36Rの互いに離れた側の端部に近接して設けられている。
図示の実施例に於いては、第一の運動変換ユニット10Lのローラナット24Lの一端がボールベアリング28を介して支柱12により回転可能に支持されているが、第二の運動変換ユニット10Rのローラナット24Rもボールベアリングを介して支柱により回転可能に支持されるよう修正されてもよい。
この第三の実施例の他の点は上述の第一の実施例の場合と同様に構成されており、従ってローラナット24L及び24Rが軸線18の周りに回転されると、各遊星ねじローラ36Lが軸線38Lの周りに自転しつつねじ軸20のねじ部20ALの周りに公転すると共に、各遊星ねじローラ36Rが軸線38Rの周りに自転しつつねじ軸20のねじ部20ARの周りに公転し、これによりねじ軸20が軸線18に沿ってスラスト変位する。
かくして図示の第三の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてローラナット24の回転運動を正確にねじ軸20の微小な直線運動に正確に変換することができ、また上述の第一の実施例について上述した他の作用効果を得ることができる。
また上述の第一の実施例に於いては、ねじ軸20の雄ねじ22と遊星ねじローラ36の雄ねじ34とが逆ねじの関係をなすので、ねじ軸20と遊星ねじローラ36との間のねじのかみ合い部がスラスト方向に滑ると、遊星ねじローラ36が本来の公転方向とは逆方向へ公転しようとし、そのためローラナット24に本来の回転方向と逆方向の回転の力が作用する。
図示の第三の実施例によれば、上述の如くローラナットに本来の回転方向と逆方向に作用する回転の力が第一の運動変換ユニット10Lのローラナット24Lと第二の運動変換ユニット10Rのローラナット24Rとの間にて相殺されるので、ねじ軸20と遊星ねじローラ36との間のスラスト方向の滑りを確実に機械的に阻止することができる。
第四の実施例
図9はねじ軸の回転運動をローラナットの直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第四の実施例を示す縦断面である。尚図9に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この第四の実施例に於いては、ねじ軸20は支柱12により軸線18の周りに回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ローラナット24は図9には詳細に示されていないがセレーション溝等の手段によって支柱14により軸線18の周りに回転不可能に且つスラスト変位可能に支持されている。
特に図示の実施例に於いては、シャフト部20Bは大径部と小径部とを有し、小径部が減摩ブッシュ64を介して支柱12の断面円形の貫通孔12Aに挿通されている。減摩ブッシュ64は大径部と小径部との間の肩部と支柱12との間に介在するフランジ部を有し、減摩ブッシュ64の他端側にはCリング66により小径部に固定された減摩ワッシャ68が配設されている。
この第三の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されており、従ってねじ軸20が軸線18の周りに回転されると、遊星ねじローラ36が軸線38の周りに自転しつつねじ軸20のねじ部20Aの周りに公転し、これによりローラナット24が遊星ねじローラ36と共に軸線18に沿ってスラスト変位する。この場合ねじ軸20の1回転当りのローラナット24のスラスト変位量の大きさLnは下記の式2にて表される。
Ln=P・Ds/(Ds+Dn) ……(2)
かくして図示の第四の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、ねじ軸20及び遊星ねじローラ36は互いに共働して差動ねじとしての機能を果たし、またローラナット24が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ねじ軸20が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されているので、回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてねじ軸20の回転運動を正確にローラナット24の微小な直線運動に正確に変換することができ、また上述の第一の実施例について上述した他の作用効果を得ることができる。
第五の実施例
図10はねじ軸の回転運動をローラナットの直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第五の実施例を示す縦断面である。尚図10に於いて図7及び図9に示された部材と同一の部材には図7及び図9に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この第五の実施例に於いては、上述の第四の実施例の場合と同様、ねじ軸20は支柱12により軸線18の周りに回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、ローラナット24は支柱14により軸線18の周りに回転不可能に且つ軸線18に沿ってスラスト変位可能に支持されている。またこの実施例は他の点については上述の第二の実施例と同様に構成されている。
従ってねじ軸20が軸線18の周りに回転されると、遊星ねじローラ36が軸線38の周りに自転しつつねじ軸20のねじ部20Aの周りに公転し、これによりローラナット24が軸線18に沿ってスラスト変位する。この場合にもねじ軸20の1回転当りのローラナット24のスラスト変位量の大きさLnは上記式2にて表される。
かくして図示の第五の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、遊星ねじローラ36及びローラナット24は互いに共働して差動ねじとしての機能を果たし、また上述の第四の実施例の場合と同様、ローラナット24が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ねじ軸20が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されているので、回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてねじ軸20の回転運動を正確にローラナット24の微小な直線運動に正確に変換することができ、また上述の第一の実施例について上述した他の作用効果を得ることができる。
第六の実施例
図11はねじ軸の回転運動をローラナットの直線運動に運動変換するよう構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第六の実施例を示しており、特に(A)は軸線を通る縦断面であり、(B)は(A)の線B−Bに沿うねじ軸が除去された状態にて第六の実施例を(A)の線B−Bに沿って切断した断面を示す断面図である。尚図11(A)の上半分はローラナットが切断された状態の断面図であり、図11(A)の下半分はローラナットが切断されると共にねじ軸より手前側の遊星ねじローラが除去された状態の断面図である。また図11に於いて、図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この第六の実施例の運動変換装置10は、各ねじの方向が逆である点を除き基本的には上述の第一の実施例の運動変換装置10と同様に構成されており、図11には示されていないがねじ軸20は軸線18の周りに回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナット24は軸線18の周りに回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されている。
特に第六の実施例に於いては、図12に詳細に示されている如く、各遊星ねじローラ36は雄ねじ34と、その軸線方向両側に一体に形成された平歯の外歯車70及び72と、外歯車70及び72の軸線方向外側に一体に形成されたシャフト部36A及び36Bとを有している。シャフト部36A及び36Bは円柱形をなしているが、後に詳細に説明する目的でシャフト部36A及び36Bの直径は互いに異なり、特に図示の実施例に於いてはシャフト部36Aの直径はシャフト部36Bの直径よりも小さく設定されている。尚このシャフト部の直径の大小関係は逆でもよい。
外歯車70及び72は雄ねじ34の両端部の領域に平歯車の歯形が加工されることにより形成されており、従って外歯車70及び72は雄ねじ34のねじ山が軸線38に沿って延在し且つ軸線38の周りに均等に隔置された平歯車の歯溝により分断された形態をなしている。また外歯車70及び72の歯の高さは雄ねじ34のねじ山よりも僅かに低く、従って外歯車70及び72の歯の外端により郭定される直径は雄ねじ34のねじ山の頂点により郭定される直径よりも僅かに小さい。
外歯車70及び72の歯形は互いに他に対し0°よりも大きく360°よりも小さい位相差を有している。外歯車70及び72はそれぞれ平歯の内歯車74及び76と噛合しており、従って内歯車74及び76の歯形も互いに他に対し外歯車70及び72の位相差と同一の位相差を有している。内歯車74及び76はローラナット24の雌ねじ26の領域に対し軸線方向両側に配置され、ローラナット24の孔に圧入されている。尚外歯車及び内歯車の位相差は、一端の外歯車の歯先と内歯車の歯元が係合しているときに他端の外歯車の歯元と内歯車の歯先が係合するよう、90°よりも大きく270°よりも小さい位相差、特に図示の実施例の如く180°の位相差であることが好ましい。
外歯車70及び72の軸線は遊星ねじローラ36の軸線38に整合し、外歯車70及び72の基準ピッチ円の直径は遊星ねじローラ36の雄ねじ34の基準ピッチ円の直径(有効ねじ径)と等しい。また外歯車70、72及び内歯車74、76の歯数比は雄ねじ34及び雌ねじ26の有効ねじ径の比と等しく、従って雄ねじ34及び雌ねじ26の条数の比と等しい。尚外歯車70、72及び内歯車74、76は平歯車である必要はなく、例えば組付け性を考慮すると、歯のねじれ角が30°以下のはす歯歯車であってもよい。
各遊星ねじローラ36はキャリア78により軸線38の周りに回転可能に支持されている。図13に示されている如く、キャリア78は遊星ねじローラ36のシャフト部36Aを軸線38の周りに回転可能に支持する第一の支持部としての支持リング80と、遊星ねじローラ36のシャフト部36Bを軸線38の周りに回転可能に支持する第二の支持部としての支持リング82と、支持リング80及び82を一体的に連結する複数の連結部84とを有している。
支持リング80及び82はねじ軸20の雄ねじ22の外径よりも僅かに大きい内径を有すると共に、ローラナット24の雌ねじ26の内径よりも僅かに小さい外径を有している。また支持リング80及び82はそれぞれ遊星ねじローラ36のシャフト部36A及び36Bを受ける複数の穴86及び88を有している。シャフト部36A及び36Bの直径の大小関係に対応して、穴86の直径は穴88の直径よりも小さく設定されている。穴86及び88はキャリア78の軸線90の周りに均等に隔置され、径方向外方にて開いた実質的にU形の断面形状を有している。連結部84は穴86及び88の間にて軸線90の周りに放射状に配列され且つ軸線90に沿って延在する板状をなしている。尚キャリア78は形状保持性及び所要の強度を有する金属の如き任意の材料にて形成されてよいが、上述の構造を有するので、樹脂にて成形されることが好ましい。
ローラナット24の内側にて支持リング80及び82の軸線方向外側には支持リング80及び82の外径よりも大きい外径を有するストッパリング92及び94が配設され、ローラナット24の孔に圧入により固定されている。ストッパリング92及び94はキャリア78の支持リング80及び82の軸線方向外側まで延在する断面L形をなし、これによりキャリア78が軸線方向外方へローラナット24に対し相対的に移動することを阻止するようになっている。
尚図11に示されている如く、第六の実施例に於いては、上記各実施例に於ける異物侵入防止部材56及び58に相当する部材は設けられておらず、キャリア78の支持リング80及び82が異物侵入防止部材としての機能をも果たすようになっているが、各ねじの螺合部へ異物が侵入することが確実に防止されるよう、上記各実施例の場合と同様の異物侵入防止部材が設けられてもよい。
次に第六の実施例に於けるローラナット24の雌ねじ26、遊星ねじローラ36の雄ねじ34、ねじ軸20の雄ねじ22のねじ山形状(歯形)について説明する。
本発明の回転−直線運動変換装置10に於ける各ねじは、ねじとして機能すると共に、歯車の歯として機能しなければならない。各ねじがねじとして機能するためには、有効ねじ径の位置に於いて互いに適正に噛合っていなければならない。また各ねじが歯車の歯として機能するためには、各ねじ(歯車)のモジュールが互いに同一であり且つ圧力角が互いに同一であることが必要である。しかし本発明の回転−直線運動変換装置10に於いては、互いに噛み合うねじ軸20及び遊星ねじローラ36のねじのモジュール及び圧力角の何れも互いに同一にすることができず、従って歯(ねじ山)の干渉が発生し易く、そのため組付け性が良好ではない。
一般に、二つのねじ同士が噛合うためには、二つのねじのねじ山はピッチが互いに同一であり且つねじ山の角度が互いに同一であることが必要である。しかし本発明の回転−直線運動変換装置10に於いては、有効ねじ径の比の条数の関係に対しねじ軸20の条数が増減されているため、ねじ山の角度を同じにすると円周方向の噛合いの角度である圧力角がねじ軸と遊星ねじローラとでは異なる値になる。
ねじ山の角度(軸線を通る断面で見た圧力角)をλとし、ねじの進み角及びリードをそれぞれγ及びLとし、ねじのピッチ及び条数をそれぞれP及びNとし、有効ねじ径(基準ピッチ円直径)をφとすると、リードL、進み角γ、ねじ山のねじれ角β、正面噛み合い圧力角αはそれぞれ下記の式3〜6により表される。
L=P・N ……(3)
γ=Tan−1{P/(φ・π)} ……(4)
β=0.5π−γ ……(5)
α=Tan−1{Tan(λ)・Tan(β)} ……(6)
よって、ピッチP、ねじ条数N、有効ねじ径φが決定されれば、圧力角αが計算により求められる。遊星ねじローラ36のピッチPpを1mmとし、条数Npを1とし、有効ねじ径φpを4mmとする。またねじ軸20と遊星ねじローラ36の有効ねじ径の比を3:1とし、ねじ軸20の差動条数を+1とすると、ねじ軸20のリードLは4mmとなり、有効ねじ径φsは12mmとなる。
従って遊星ねじローラ36のねじれ角βpを85.45°とし、ねじ軸20のねじれ角βsを83.94°とし、遊星ねじローラ36のねじ山角度λpを27.5°としたときには、通常の歯車の場合の遊星ねじローラ36の圧力角αpは81.31°になる。この圧力角を満足するねじ軸20のねじ山角度λsは34.76°となり、このようなねじの噛み合いでは圧力角が同一にならず、ねじ山角度で7.26°の差が生じ、ねじの噛み合いが干渉によって阻害される。
従ってねじ軸20及び遊星ねじローラ36のねじのモジュール及び圧力角が互いに相違する問題を克服して歯の干渉を防止すると共にバックラッシをなくすための特別の工夫が必要である。上述の如く、モジュール及び圧力角が相違することは有効ねじ径の比に対応する条数の関係に対しねじ軸20の条数が増減されていることが原因であり、条数の増減によるリード角の相違に起因して歯の干渉が発生する。よってリード角が相違するねじを適正に螺合させるためには、ねじ山の形状を如何に設定すべきであるかが重要である。
本発明の回転−直線運動変換装置10に於けるねじは歯車としても機能するので、ねじを歯車として見ると、遊星ねじローラ36及びねじ軸20の歯は基準ピッチ円の位置に於いて互いに噛み合い、遊星ねじローラ36及びねじ軸20の回転に伴って遊星ねじローラの歯の歯先とねじ軸の歯の歯元とが係合し、遊星ねじローラの歯の歯元とねじ軸の歯の歯先とが係合する。よってこれらの係合が密になるようねじ山の形状を設定すればよい。
まず、遊星ねじローラ36及びねじ軸20のねじ山角度の平均値である仮想のねじ山角度を決定し、その仮想のねじ山角度を圧力角に変換すれば、その値が両者の噛合いの圧力角の平均値である。その圧力角からそれぞれの進み角(リード角)の違いにより計算されるねじ山角度を逆に求める。
計算の流れは以下の通りである。まず遊星ねじローラ36及びねじ軸20のねじの条件から平均ねじれ角βaを求め、平均ねじ山角度λaを決定し、上記式6に従って平均圧力角αaを演算する。次いでこの平均圧力角αa及びそれぞれのねじれ角βp、βsに基づき上記式6に従って遊星ねじローラ36のねじ山角度λp及びねじ軸20のねじ山角度λsを演算する。
前述のねじの条件を例に説明すると、まずねじの条件から、平均ねじれ角βaは以下の如く演算される。
βa=(βp+βs)/2
=(85.31+83.94)/2
=84.70
次に平均ねじ山角度λaを27.5°に決定すると、平均圧力角αaは79.89°となる。この圧力角を満足する遊星ねじローラ36のねじ山角度λpは30.75°であり、ねじ軸20のねじ山角度λsは24.05°である。尚ねじ山角度λs、λpはねじ軸20の差動条数が正の値であるときにはλs<λpであり、ねじ軸20の差動条数が負の値であるときにはλs>λpである。よってねじ軸の差動条数が−1であるときには遊星ねじローラ36のねじ山角度λpは24.05°であり、ねじ軸20のねじ山角度λsは30.75°である。
かくしてねじ山角度の演算が完了すると、ねじ山角度に基づいて各ねじのねじ山形状を求める。以下ねじ山形状の決定方法について説明する。
本発明の装置10はねじ軸20又はローラナット24が他方に対しスラスト方向に押出される回転−直線運動変換装置である。スラスト方向の大きい荷重に耐え且つバックラッシをなくすためには、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24のねじ山は、軸線18を通る断面で見てねじ山の角度ができるだけ小さく、ねじ山の強度が高く、ねじ山が有効ねじ径の位置に於いて互いに噛合い、ねじ山が隙間なく互いに嵌合することが必要である。
従来のはす歯歯車との噛合いの相違点は、はす歯歯車の歯は軸線に垂直な断面で見て互いに隙間なく噛合うことにより回転運動の伝達を円滑に行うのに対し、本発明の装置に於いてはねじ山が軸線に垂直な方向だけでなくスラスト方向についても隙間なく互いに噛合うことが必要であるということである。即ち本発明の装置に於いては軸線に垂直な断面に於いてのみならず軸線を通る断面に於いてもねじ山が互いに密に嵌合しなければならない。
また滑りねじやボールねじ等の従来の装置に於いては、ねじ等の接触部が軸線を中心とする螺旋状をなしているが、逆効率を確実に0にするためにはねじ軸20及び遊星ねじローラ36のねじ山の接触部が軸線18の周りに螺旋状をなしていないことが重要であり、本発明の装置に於いてはスラスト方向に大きい力の伝達が可能であるよう、ねじ山は軸線48を通る断面で見て互いに隙間なく嵌合し、ねじ山の接触部は軸線18を中心とする放射線状をなしている。
ねじ山の形状を決定するにあたり、ローラナット24の雌ねじ26の干渉及び加工性の点から、ローラナット24のねじ溝の角度を45°以下に設定することができない。一般に、ねじ溝の角度が55°以上でなければ、従ってねじ山角度λnが27.5°以上でなければ、ローラナット24のねじを連続的に加工したり軸線を通る断面で見て直線的なねじ山形状のねじを形成することができない。
またねじ軸20の差動条数が正の値であるか負の値であるかによって歯形の決定方法が異なる。
(1)ねじ軸の差動条数が正の値である場合
まずローラナット24のねじ溝の角度を決定する。ローラナット24のねじ山角度λnはねじ溝の角度の1/2である。
今ローラナット24のねじ溝の角度を55°とすると、ねじ山角度λnは27.5°となる。またねじ軸20の差動条数が正の値である場合に於いてねじ軸20及び遊星ねじローラ36のモジュールが互いに異なる場合には、そのことに起因するねじ山の干渉は遊星ねじローラ36のねじの歯元とねじ軸20のねじの歯先に於いて集中的に発生する。遊星ねじローラ36のねじ及びねじ軸20のねじの平均の圧力角を演算すべく、ねじ山の角度(軸線を通る断面に於ける平均圧力角λa)を27.5°とする。この場合遊星ねじローラ36の歯元のねじ山角度λpiは24.05°となり、ねじ軸20のねじの歯先のねじ山角度λsoは30.75°となる。
よって遊星ねじローラ36のねじは、歯先に於いて27.5°のねじ山角度λpoを有し、歯元に於いて24.05°のねじ山角度λpiを有する場合に、軸線18を通る断面で見てローラナット24のねじと密に嵌合する。
またねじ軸20のねじは、歯先に於いて30.75°のねじ山角度λsoを有し、歯元に於いてローラナット24の歯先のねじ山角度と同一の27.5°のねじ山角度λsiを有する場合に、遊星ねじローラ24のねじとスラスト方向及び回転方向の何れに於いても密に嵌合する。
遊星ねじローラ36の歯元及びねじ軸20の歯先は回転伝達方向である軸線18に垂直な断面で見て同一の圧力角を有していなければならない。またねじ軸20及び遊星ねじローラ36は有効ねじ径の位置を中心としてその径方向内側及び外側の領域に於いて連続的に噛合う状況になければならない。よって軸線18を通る断面に於ける平均圧力角は、ローラナット24のねじ山角度λn、遊星ねじローラ36の歯先のねじ山角度λpo、ねじ軸20の歯元のねじ山角度λsiと同一の27.5°である。
以上の考察より解る如く、ローラナット24のねじ山角度は加工上の制約の範囲内にてできる限り小さい鋭角であり、遊星ねじローラ36の歯先のねじ山角度及びねじ軸20の歯元のねじ山角度がローラナット24のねじ山角度と同一であり、遊星ねじローラ24の歯元のねじ山角度及びねじ軸20の歯先のねじ山角度がそれらの平均の角度がローラナット24のねじ山角度と同一である場合に、各ねじの歯形が最も理想的な歯形になることが解る。
従って上記例の場合の各ねじの好ましいねじ山角度は以下の通りである。
ローラナット24のねじ山角度λn=遊星ねじローラ36の歯先のねじ山λpo
=ねじ軸20の歯元のねじ山角度λsi
=27.5°
遊星ねじローラ36の歯元のねじ山角度λsi=24.05°
ねじ軸20の歯先のねじ山角度λso=30.75°
尚各ねじの歯形形状は回転による干渉が生じないよう、インボリュート関数により補正される。
(2)ねじ軸の差動条数が負の値である場合
この場合にもローラナット24のねじ山角度λnはねじ溝の角度による制約を受ける。またねじ軸20の差動条数が負の値である場合に於いてねじ軸20及び遊星ねじローラ36のモジュールが互いに異なる場合には、そのことに起因するねじ山の干渉は遊星ねじローラ36のねじの歯先とねじ軸20のねじの歯元に於いて集中的に発生する。
従ってねじ軸20の差動条数が正の値である場合と同様、ローラナット24のねじ溝の角度を55°とすると、ねじ山角度λnは27.5°となる。よって遊星ねじローラ36のねじの歯先のねじ山角度λpoも27.5°となり、歯元は軸線18を通る断面で見て密に噛み合う必要があるので、歯元のねじ山角度λpiも27.5°となる。またねじ軸20のねじの歯先も遊星ねじローラ24のねじの歯元と噛み合うので、ねじ軸20のねじの歯先のねじ山角度λsoも27.5°となる。
よってねじ軸20のねじの歯元のねじ山角度λsiのみがモジュールの相違の影響を受けるので、上記式6に従って演算されればよく、その値は19.14°である。
以上の考察より解る如く、ローラナット24のねじ山角度は加工上の制約の範囲内にてできる限り小さい鋭角であり、遊星ねじローラ36の歯先及び歯元のねじ山角度及びねじ軸20の歯先のねじ山角度がローラナット24のねじ山角度と同一であり、ねじ軸20の歯元のねじ山角度が平均圧力角及びねじれ角に基づき演算される二つのねじ山角度のうちの小さい方の値である場合に、各ねじの歯形が最も理想的な歯形になることが解る。
尚ねじ軸の差動条数が負の値である場合にも、各ねじの歯形形状は回転による干渉が生じないよう、インボリュート関数により補正される。
図14は各ねじの軸線に沿う拡大部分断面図であり、(A)はローラナット24の雌ねじ26を示し、(B)は遊星ねじローラ36の雄ねじ34を示し、(C)はねじ軸20の雄ねじ22を示している。図14に於いて、符号100、102、104はそれぞれ雌ねじ26遊、雄ねじ34、雄ねじ22を歯車として見たときの基準ピッチ円を示している。
図14に示されている如く、ローラナット24の雌ねじ26は台形の歯形を有し、遊星ねじローラ36の雄ねじ34及びねじ軸20の雄ねじ22はインボリュート歯形を有している。ローラナット24の雌ねじ26のねじ溝はθnの開き角(θn/2に等しいねじ山角度λn)を有し、遊星ねじローラ36の雄ねじ34のねじ山はλpoの歯先のねじ山角度及びλpoよりも小さいλpiの歯元のねじ山角度を有している。ねじ軸20の雄ねじ22のねじ山はλsoの歯先のねじ山角度及びλsoよりも小さいλsiの歯元のねじ山角度を有している。
ねじ軸20の差動条数Nsは+1、即ちローラナット24又はねじ軸20が回転されてもねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の何れもスラスト変位しないねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の有効ねじ径及び条数の関係に対し1多い数に設定されているので、図14に示されている如く、遊星ねじローラ36の雄ねじ34の歯先のねじ山角度λpoはローラナット24の雌ねじ26のねじ山角度λnと同一の値に設定され、ねじ軸20の雄ねじ22の歯元のねじ山角度λsiもλnと同一の値に設定されている。
図15はねじ軸20の差動条数Nsが+1である図示の第六の実施例について、上述の如く歯形が設定されたローラナット24の雌ねじ26と遊星ねじローラ36の雄ねじ34との噛合状態(A)、及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34とねじ軸20の雄ねじ22との噛合状態(B)を示している。図15より解る如く、軸線18を通る断面で見て、遊星ねじローラ36はねじ軸20及びローラナット24に対し良好に噛み合っている。
また図16は第六の実施例による運動変換装置10の長手方向中央部の軸線18に垂直な断面を示す拡大縦断面図である。尚図16に於いて、細線は各ねじの有効ねじ径(歯車のピッチ円直径)を表し、太線はねじの歯形の断面を示している。また図16に於いては、明瞭化の目的で各部材のハッチングは省略されている。図16より解る如く、軸線18に垂直な断面に於いても、遊星ねじローラ36はねじ軸20及びローラナット24に対し歯としての噛み合いを維持しており、従って遊星ねじローラ36、ねじ軸20、ローラナット24は互いに歯車の噛み合いとして相互に回転力を伝達する。
尚ねじ軸20の差動条数Nsが−1、即ちローラナット24又はねじ軸20が回転されてもねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の何れもスラスト変位しないねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24の有効ねじ径及び条数の関係に対し1少ない数に設定されている場合には、図17に示されている如く、ローラナット24の雌ねじ26の開き角θn、遊星ねじローラ36の雄ねじ34の歯元角λpi、ねじ軸20の雄ねじ22の歯先角λsoとは互いに同一の値に設定される。またねじ軸20の雄ねじ22の歯元角λsiはねじ軸20の歯元のねじ山角度が平均圧力角及びねじれ角に基づき演算される二つのねじ山角度のうちの小さい方の値に設定される。
図18はねじ軸20の差動条数Nsが−1である場合について、上述の如く歯形が設定されたローラナット24の雌ねじ26と遊星ねじローラ36の雄ねじ34との噛合状態(A)、及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34とねじ軸20の雄ねじ22との噛合状態(B)を示している。図18より解る如く、ねじ軸20の差動条数Nsが−1である場合にも、軸線18を通る断面で見て、遊星ねじローラ36はねじ軸20及びローラナット24に対し良好に噛み合う。また図には示されていないが、図16の場合と同様、軸線18に垂直な断面に於いても、遊星ねじローラ36はねじ軸20及びローラナット24に対し歯としての噛み合いを維持し、従って遊星ねじローラ36、ねじ軸20、ローラナット24は互いに歯車の噛み合いとして相互に回転力を伝達する。
かくして図示の第六の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、ねじ軸20、遊星ねじローラ36、ローラナット24は互いに共働して遊星歯車減速機構と同様の減速機能を果たすと共に、遊星ねじローラ36及びローラナット24は互いに共働して差動ねじとしての機能を果たし、またねじ軸20が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、ローラナット24が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持されている。従って回転角度と直線変位量とを一対一に正確に対応させてローラナット24の回転運動を正確にねじ軸20の微小な直線運動に正確に変換することができ、また上述の第一の実施例について上述した他の作用効果を得ることができる。
上述の如く、上記第一乃至第五の実施例の運動変換装置10も良好に機能するが、ねじ軸20にごみ等の異物が付着すると、ねじ軸20と遊星ねじローラ36とが固着した状態になり、その結果ローラナット24と遊星ねじローラ36と間に滑りが発生し、ローラナット24のみがねじ軸20及び遊星ねじローラ36に対し相対的に軸線18に沿って変位することがある。特にこの現象はローラナット24と遊星ねじローラ36と間に潤滑剤が塗布された場合に顕著になる。またねじ軸20が上述の差動原理に基づかずに遊星ねじローラ36に対し滑ることにより、遊星ねじローラ36とねじ軸20との間にねじの滑り変位が発生する場合がある。
これに対し第六の実施例によれば、各遊星ねじローラ36は雄ねじ34に対し軸線方向両側に一体に形成された外歯車70及び72を有し、これらの外歯車はそれぞれローラナット24の雌ねじ26の領域に対し軸線方向両側に固定された内歯車74及び76と噛合し、外歯車70、72及び内歯車74、76の噛み合いによりローラナット24又は遊星ねじローラ36の回転が強制的に他方へ伝達されるので、ローラナット24と遊星ねじローラ36と間に滑りが発生することに起因してローラナット24のみがねじ軸20及び遊星ねじローラ36に対し相対的に軸線18に沿って変位することを確実に防止することができる。
またローラナット24が軸線18の周りに回転されると、その回転により上述の如く遊星ねじローラ36が確実に回転され、遊星ねじローラ36が自身の軸線38の周りに確実に回転すると共にねじ軸20の周りに確実に公転するので、ねじ軸20を確実に差動原理に基づいて軸線に沿ってスラスト変位させ、ねじ軸20が滑ることを防止することができる。
特に第六の実施例によれば、上述の如く外歯車70及び72の軸線は遊星ねじローラ36の軸線38に整合し、外歯車70及び72の基準ピッチ円の直径は遊星ねじローラ36の雄ねじ34の基準ピッチ円の直径と等しい。また外歯車70、72及び内歯車74、76の歯数比は雄ねじ34及び雌ねじ26の有効ねじ径の比と等しく、従って雄ねじ34及び雌ねじ26の条数の比と等しい。
従ってローラナット24及び遊星ねじローラ36の回転数の関係を外歯車70、72及び内歯車74、76の歯数比によって正確に規制すると共に、雄ねじ34及び雌ねじ26の本来あるべき有効ねじ径の比の関係と正確に一致させることができる。よって雄ねじ34及び雌ねじ26の公差に起因する有効ねじ径の比の関係のずれや経時変化等に起因する実際の有効ねじ径の比に変化が生じても、差動原理に基づく作動を確保するためのローラナット24及び遊星ねじローラ36の回転数の関係を確実に維持することができ、これにより、上記第一乃至第五の実施例の場合に比して長期間に亘り運動変換装置10の確実且つ正確な作動を確保することができる。
前述の如く、特許文献2に記載されたベアリング装置に於いても、ねじ結合に加えて遊星歯車が設けられている。第六の実施例に於ける外歯車70、72及び内歯車74、76は、特許文献2に記載されたベアリング装置に於ける遊星歯車とは追加の目的が異なり、また対象となるねじの動作も異なる。
特許文献2に記載されたベアリング装置に於いては、全てのねじが同じ方向のねじである。従ってローラナット及びねじ軸のねじの作用により、遊星ねじローラには同一の方向、即ちねじのリード角に直角の方向に傾けようとする力が働く。そのため遊星歯車により遊星ねじローラの両端を支持し傾かないように規制しなければ遊星ねじローラが傾き、その結果ねじは動作せずロック状態、即ち回転不可能な状態で止まってしまう。従って特許文献2に記載されたベアリング装置に於いては、遊星歯車はローラナット及び遊星ねじローラがロック状態になることなく回転するための必須の構成部品である。
これに対し第六の実施例の構成に於いては、ねじ軸20の雄ねじ22及び遊星ねじローラ36の雄ねじ34が逆ねじであり、これらのねじ自体がはす歯の歯車結合を構成している。よって回転の伝達や運動変換装置10の基本的な動作には外歯車70、72及び内歯車74、76は不要である。従って第六の実施例の構成に於いては、外歯車70、72及び内歯車74、76は、前述の如き滑りに起因する差動原理に基づかない作動を確実に排除し、狙った差動原理に基づく動作を確実に行わせる最も簡便な手段として補助的に追加されたものである。
また第六の実施例の構成に於いては、外歯車70、72及び内歯車74、76は、上述の如くねじ軸20の動作をも規定することができる。即ち、第六の実施例の構成に於いては、ねじ軸20と遊星ねじローラ36との間の滑りをも排除できるのに対し、特許文献2に記載されたベアリング装置に於いては、あくまで遊星ねじローラ36とローラナット24との間の動作を制約するに留まる。
かくして第六の実施例の構成に於いては、一見特許文献2に記載された歯車構造と同一の歯車構造が追加されているように見受けられるが、運動変換装置10の構成の相違により、追加された歯車構造の機能及び効果は大きく異なる。
また全ての遊星ねじローラ36が同一に形成される場合にも、遊星ねじローラ36の一端に於ける雄ねじ34の位相に対する外歯車70の位相の関係が遊星ねじローラ36の他端に於ける雄ねじ34の位相に対する外歯車72の位相の関係と異なる場合があるので、ローラナット24に対する全ての遊星ねじローラ36の方向が確実に同一の方向になるよう、全ての遊星ねじローラ36がローラナット24に対し組付けられなければならない。
第六の実施例によれば、上述の如く遊星ねじローラ36の一端のシャフト部36Aの直径は他端のシャフト部36Bの直径よりも小さく設定されており、これに対応してキャリア78の支持リング80の穴86の直径は支持リング82の穴88の直径よりも小さく設定されている。従ってローラナット24に対する全ての遊星ねじローラ36の方向を容易に且つ確実に同一の方向にすることができ、これにより全ての遊星ねじローラ36をローラナット24に対し適正に組付けることができると共に、外歯車70及び72を内歯車74及び76に対し適正に噛み合わせることができる。
また遊星ねじローラ36の外歯車70及び72と内歯車74及び76との噛み合いによる回転の伝達を円滑に行わせるためには、これらの外歯車及び内歯車の歯数が多い方が好ましいが、歯数を多くしようとすると遊星ねじローラ36の直径を小さくすることができず、また歯数が多くなると歯の大きさが小さくなり、転造等による歯車の加工が困難又は不可能になる。
第六の実施例によれば、遊星ねじローラ36の外歯車70及び72の歯形は互いに他に対し0°よりも大きく360°よりも小さい位相差を有し、内歯車74及び76の歯形も互いに他に対し外歯車70及び72の位相差と同一の位相差を有している。従って歯の大きさを小さくすることなく歯数が2倍の場合と同等の効果を得ることができ、これにより遊星ねじローラ36の直径が大きくなって運動変換装置10が大型化することを防止することができると共に、ねじ軸20の雄ねじ22及びローラナット24の雌ねじ26の加工と同様、遊星ねじローラ36の雄ねじ34及び外歯車70、72を切削加工ではなく、低廉な転造により形成することができる。
更に第六の実施例によれば、上述の如く外歯車70及び72は雄ねじ34の両端部の領域に平歯車の歯形が加工されることにより形成され、雄ねじ34のねじ山が軸線38に沿って延在し且つ軸線38の周りに均等に隔置された平歯車の歯溝により分断された形態をなしている。従って外歯車70及び72が遊星ねじローラ36の本体とは別体の部材として形成され、遊星ねじローラ36の本体に固定される場合に比して、遊星ねじローラ36を容易に且つ能率よく且つ低廉に製造することができる。また後述の如く遊星ねじローラ36がローラナット24に対し組み付けられる際に、外歯車70及び72は雄ねじ34の一部として機能することができる。
またこの第六の実施例の運動変換装置10は上述の構造を有するので、以下の要領にて組み立てられる。
図19に示されている如く、まずキャリア78の穴86及び88にそれぞれ各遊星ねじローラ36の軸部36A及び36Bを嵌め込むことにより、9個の遊星ねじローラ36をキャリア78により支持する。次いでかくして9個の遊星ねじローラ36がキャリア78により支持された状態で、キャリア78をその軸線90の周りに回転させながらローラナット24内に挿入する。これにより各遊星ねじローラ36は雄ねじ34がローラナット24の雌ねじ26と噛み合うことにより、自身の軸線38の周りに自転すると共にローラナット24の軸線の周りに公転し、キャリア78と共に徐々にローラナット24内に進入する。
遊星ねじローラ36がローラナット24に対し図20に示された所定の位置まで挿入されると、平歯車70及び72がそれぞれ内歯車74及び76に噛み合うようローラナット24内に挿入され、ローラナット24に対し圧入により固定される。次いでローラナット24内にストッパリング92及び94が挿入され、ローラナット24に対し圧入により固定される。
更にストッパリング92又は94及び支持リング80又は82にねじ軸20の一端を挿入し、ねじ軸20の雄ねじ22が遊星ねじローラ36の雄ねじ34に螺合するようねじ軸20を軸線18の周りに回転させることにより、ねじ軸20がローラナット24及び遊星ねじローラ36に対し所定の位置に位置決めされるまで遊星ねじローラ36の環状列内にねじ軸20を挿入する。
かくしてこの第六の実施例の組立て方法によれば、ねじ軸20の雄ねじ22、遊星ねじローラ36の雄ねじ34、ローラナット24の雌ねじ26が適正に噛み合うと共に、遊星ねじローラ36の外歯車70及び72と内歯車74及び76とが適正に噛み合うよう、運動変換装置10を能率よく組み立てることができる。
またこの組立て方法によれば、運動変換装置10の組立て時にはキャリア78を組立て治具として機能させ、組立て完了後にはキャリア78を運動変換装置10内に残存させて遊星ねじローラ36を回転可能に支持するキャリアとして機能させることができるので、キャリアと組立て治具とが別の部材である場合に比して、運動変換装置10の組み立てを能率よく行うことができる。
第七の実施例
図21は第六の実施例の修正例として構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第七の実施例を示す図11(B)と同様の縦縦断面である。尚図21に於いて図11に示された部材と同一の部材には図11に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この第七の実施例に於いては、上述の第六の実施例に於ける内歯車74及び76のねじ山の位置に内歯車の代用として複数個のボール又はローラ(円筒)の如き回転体106が配設され、各回転体106はローラナット24の両端に圧入により固定された保持リング108により少なくとも軸線18に平行な軸線の周りに回転可能に支持されている。また遊星ねじローラ36の外歯車70及び72は回転体106と滑らかに噛み合う外形に形成されている。よって外歯車70及び72は回転体106に接触しながら回転し、回転体106は定位置にて自転することによって歯の噛み合いを滑らかにする。
尚回転体106は上述の第六の実施例に於ける内歯車74及び76と同様の機能を果たすので、回転体106を内歯車と見なすと、この実施例に於いても外歯車及び内歯車の歯数比は遊星ねじローラ36の雄ねじ34及びローラナット24の雌ねじ26の有効ねじ径の比に設定されている。
従ってこの第七の実施例によれば、上述の第六の実施例の場合と同様に遊星ねじローラ36とローラナット24とが滑ることなくこれらの間にて確実に回転運動を伝達させることができると共に、上述の第六の実施例の場合に比して歯打ち音を低減することができる。また外歯車70及び72の歯の歯先円の直径を雄ねじ34の谷径より小さくし、遊星ねじローラ36の軸線38に沿って見て外歯車70及び72の歯が雄ねじ34に重複しないようにすることすることができ、これにより上述の第六の実施例の場合に比して運動変換装置10の組立て性を向上させると共に、型成形可能な外歯車の形状を実現することができる。
第八の実施例
図22は第六の実施例の修正例として構成された本発明による遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の第八の実施例を示す部分縦縦断面(A)、部分左側面図(B)、部分平面図(C)である。尚図22に於いても図11に示された部材と同一の部材には図11に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
この第八の実施例に於いては、各遊星ねじローラ36の両端の端面には軸線38に沿って延在するテーパ溝110が形成されている。また各遊星ねじローラ36の両端を軸線38の周りに回転可能に支持する一対のキャリア112が設けられており、キャリア112は図22には示されていないローラナット24の雌ねじ26の内径よりも小さい外径及び図22には示されていないねじ軸20の雄ねじ22の外径よりも大きい内径を有する実質的に円環板状をなしている。
またキャリア112は周方向に均等に隔置された円錐テーパ状の複数の突起114を有し、各突起114はそれぞれ対応するテーパ溝110に嵌入し、これにより遊星ねじローラ36の端部を軸線38の周りに回転可能に支持している。更にキャリア112には突起114の間に複数の側面支持部116が一体に設けられている。各側面支持部116は遊星ねじローラ36の外歯車70及び72の外径よりも僅かに大きい直径の円弧状の側壁面118を有し、側壁面118にて外歯車70及び72を回転可能に支持している。尚キャリア112は含油金属の如き金属にて形成されていることが好ましい。
一般に、各遊星ねじローラ36の両端を軸線38の周りに回転可能に支持するキャリアの外径はローラナット24の雌ねじ26の内径よりも小さい値であり、その内径はねじ軸20の雄ねじ22の外径よりも大きい値でなければならない。また各遊星ねじローラ36がその両端のシャフト部36A及び36Bにてキャリアにより回転可能に支持される場合には、シャフト部の直径は遊星ねじローラの確実な回転支持状態を確保し得る大きさに設定されなければならない。
そのため特に運動変換装置10を小型化すべく遊星ねじローラ36の直径が小さく設定される場合には、キャリアの径方向の幅が小さくならざるを得ず、従ってシャフト部に対しキャリアの径方向内側及び外側の領域の幅が小さくなって、遊星ねじローラの確実な回転支持状態を確保することが困難になる。
これに対し第六の実施例によれば、キャリア112は突起114が対応するテーパ溝110に嵌入することにより遊星ねじローラ36の端部を軸線38の周りに回転可能に支持すると共に、側面支持部116の側壁面118が外歯車70及び72を回転可能に支持するので、遊星ねじローラ36の直径が小さい場合にも遊星ねじローラの確実な回転支持状態を確保することができる。
また一般に、遊星ねじローラ36の雄ねじ34や外歯車70、72が転造により形成される場合には、遊星ねじローラ36の両端の端面には軸線38に沿って延在する心出し用のテーパ溝が形成され、突起114が嵌入するテーパ溝は心出し用のテーパ溝であってよいので、心出し用のテーパ溝を有効に利用して遊星ねじローラを確実に且つ良好に回転可能に支持することができる。
尚この実施例に於いても、上述の第六の実施例の場合と同様、ローラナット24に対する全ての遊星ねじローラ36の方向が確実に同一の方向になるよう、遊星ねじローラ36の両端の端面に形成されるテーパ溝110のテーパ角若しくは深さが相互に異なる値に設定されてもよい。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例に於いては、ねじ軸20又はローラナット24の差動条数は+1又は−1であるが、差動条数は任意に設定されてよく、第一乃至第五の実施例に於いてねじ軸20の雄ねじ22が右ねじに設定され、遊星ねじローラ36の雄ねじ34及びローラナット24の雌ねじ26が左ねじに設定されてもよく、また第六乃至第八の実施例に於いてねじ軸20の雄ねじ22が左ねじに設定され、遊星ねじローラ36の雄ねじ34及びローラナット24の雌ねじ26が右ねじに設定されてもよい。
また上述の第一乃至第五の実施例に於いては、ねじ軸20とローラナット24との間の相対的スラスト変位の範囲を規定する手段は設けられていないが、ねじ軸20とローラナット24との間の相対的スラスト変位の範囲を規定するストッパがねじ軸20若しくはローラナット24に設けられてもよい。
また上述の第一乃至第五の実施例に於いては、異物侵入防止部材56及び58はそれぞれキャリア40及び42により支持され、ねじ軸20のねじ22に係合する雌ねじ60、62又はローラナット24の雌ねじ26に係合する雄ねじ60A、62Aを有しているが、これらのねじが省略されてもよく、また異物侵入防止部材は一端にてスラスト変位する部材に支持され且つ他端にて回転する部材に相対回転可能に接続されたゴムの如き弾性材よりなる筒形のダストブーツに置き換えられてもよい。
また上述の第一乃至第五の実施例に於いては、遊星ねじローラ36をねじ軸20の軸線周りの所定の位置に保持し遊星ねじローラ36をそれらの軸線38の周りに回転可能に支持するキャリア40及び42は環状のブロック状をなしているが、キャリア40及び42は軸線18に垂直に延在する円環板状の部材として構成されてもよく、その場合には遊星ねじローラ36の回転振動を効果的に減衰させることができるよう、制振鋼板にて形成されることが好ましい。
また上述の第三の実施例は第一の実施例の修正例として構成され、第一の実施例の構成を有する第一及び第二の運動変換ユニットが一体的に連結されているが、上述の第二乃至第五の実施例又は第六乃至第八の実施例の構成を有する第一及び第二の運動変換ユニットが一体的に連結されてもよく、その場合にも上述の第三の実施例の場合と同様の作用効果が得られる。
また第六及び第七の実施例に於ける外歯車70、72及び内歯車74、76等は、遊星ねじローラ36の何れかの端部側にのみ設けられてもよく、またこれらの実施例に於いてはローラナット24、遊星ねじローラ36、ねじ軸20の各ねじの歯形が上述の如くこれらの部材間に於いて適正に回転が伝達される歯形に設定されているので、外歯車70、72及び内歯車74、76等が省略されてもよい。
また第六の実施例に於ける各部材のねじのねじ山角度や歯形が第一乃至第五の何れかの実施例に適用されてもよく、外歯車70、72及び内歯車74、76若しくはキャリア78の構造が第一乃至第五の何れかの実施例に適用されてもよく、第七の実施例に於ける外歯車70、72及び回転体106の構造が第一乃至第五の何れかの実施例に適用されてもよく、第八の実施例に於けるキャリア112の構造が第一乃至第五の何れかの実施例に適用されてもよい。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、前記ねじ軸の周りに配設され前記ねじ軸と螺合する複数個の遊星ねじローラと、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラを囲繞し前記遊星ねじローラと螺合するローラナットとを有する遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置にして、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラは互いに逆方向のねじにて螺合し、前記遊星ねじローラ及び前記ローラナットは互いに同一方向のねじにて螺合し、前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットのねじのピッチは互いに等しく、前記ねじ軸又は前記ローラナットが回転されても前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの何れもスラスト変位しない前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係に対し、前記ねじ軸又は前記ローラナットの条数が増減されており、前記ねじ軸及び前記ローラナットが相対的に回転すると前記遊星ねじローラは滑ることなくねじ山の噛み合いにより前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転することを特徴とする遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項2】
前記ねじ軸及び前記ローラナットのうちの一方の部材が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、前記ねじ軸及び前記ローラナットのうちの他方の部材が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、前記他方の部材の条数が増減されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項3】
前記一方の部材と共働して前記遊星ねじローラを前記ねじ軸の軸線周りの所定の位置に保持し前記遊星ねじローラをそれらの軸線周りに回転可能に支持するキャリアを有することを特徴とする請求項2に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項4】
前記キャリアは前記一方の部材により前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記一方の部材に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項5】
前記遊星ねじローラがねじ山の噛み合いにより前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転する際の摩擦損失は、前記遊星ねじローラが前記ねじ軸若しくは前記ローラナットに対し相対的に回転することなく前記ねじ軸若しくは前記ローラナットに対し相対的に滑る際の摩擦損失よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項6】
前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットはそれぞれ対応する軸線の周りに螺旋状に延在するねじを有し、各ねじのねじ山はそれぞれ対応する軸線に沿う断面で見て左右対称であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項7】
前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの噛み合い部へ異物が侵入することを防止する異物侵入防止部材を有し、前記異物侵入防止部材は前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記一方の部材に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることを特徴とする請求項4に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項8】
前記異物侵入防止部材は前記他方の部材のねじに係合するねじ形断面の係合面を有し、前記他方の部材のねじに沿って該他方の部材に対し相対的に回転しつつ相対的にスラスト変位することを特徴とする請求項7に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項9】
前記異物侵入防止部材は前記キャリアにより支持されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項10】
前記遊星ねじローラの個数は、前記ねじ軸及び前記ローラナットの合計の条数を正の整数にて除算した値であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項11】
前記キャリアは含油金属にて形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項12】
前記キャリアは円板状をなし、制振鋼板にて形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項13】
前記キャリア及び前記異物侵入防止部材は前記遊星ねじローラの軸線方向両側に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の構造を有する第一及び第二の運動変換ユニットを有し、前記第一の運動変換ユニットの前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットのねじ及び前記第二の運動変換ユニットの前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットのねじはそれぞれ互いに逆方向であり、前記第一及び第二の運動変換ユニットの前記ねじ軸は互いに整合して一体的に連結され、前記第一及び第二の運動変換ユニットの前記ローラナットは互いに整合して一体的に連結され、前記第一及び第二の運動変換ユニットの前記遊星ねじローラは前記ねじ軸の軸線に沿って互いに隔置されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項15】
前記異物侵入防止部材は前記第一及び第二の運動変換ユニットの前記遊星ねじローラの互いに離れた側の端部に近接して設けられていることを特徴とする請求項14に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項16】
前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの有効ねじ径をそれぞれDs、Dp、Dnとし、前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの条数をそれぞれNs、Np、Nnとすると、前記ねじ軸又は前記ローラナットが回転されても前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの何れもスラスト変位しない前記ねじ軸、前記遊星ねじローラ、前記ローラナットの有効ねじ径及び条数の関係はNs:Np:Nn=Ds:Dp:Dnが成立する関係であり、前記ねじ軸の条数Ns又は前記ローラナットの条数Nnがこの関係を満たす値に対し1多い数又は1少ない数に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項17】
前記ローラナットが回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、前記ねじ軸が回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、前記ねじ軸の条数が増減されていることを特徴とする請求項2に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項18】
前記ねじ軸が回転可能に且つスラスト変位不可能に支持され、前記ローラナットが回転不可能に且つスラスト変位可能に支持され、前記ローラナットの条数が増減されていることを特徴とする請求項2に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項19】
前記他方の部材にスラスト変位方向の力が与えられても、前記一方の部材が回転しないことを特徴とする請求項2に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項20】
前記キャリアは前記ローラナットにより前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記ローラナットに対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることを特徴とする請求項4に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項21】
前記キャリアは前記ねじ軸により前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記ねじ軸に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることを特徴とする請求項4に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項22】
前記異物侵入防止部材はゴム状弾性材にて形成されていることを特徴とする請求項7に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項23】
前記異物侵入防止部材は前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記ローラナットに対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることを特徴とする請求項7に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項24】
前記異物侵入防止部材は前記ねじ軸及び前記ローラナットに対し相対的に回転可能に且つ前記ねじ軸に対し相対的にスラスト変位不可能に支持されていることを特徴とする請求項7に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項25】
前記異物侵入防止部材の係合面は前記他方の部材のねじに対し弾性的に付勢されていることを特徴とする請求項8に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項26】
前記異物侵入防止部材は取り外し可能に前記キャリアに取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項27】
前記異物侵入防止部材は前記キャリアに対し前記遊星ねじローラとは反対の側に位置することを特徴とする請求項10に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項28】
前記遊星ねじローラ及び前記ローラナットは前記同一方向のねじに加えて、前記遊星ねじローラに設けられた外歯車と前記ローラナットに設けられ前記外歯車と噛合する内歯車とよりなる歯車構造により相互に回転を伝達することを特徴とする請求項1乃至27の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項29】
前記外歯車の軸線は前記遊星ねじローラの軸線に整合し、前記外歯車の基準ピッチ円の直径は前記遊星ねじローラのねじの基準ピッチ円の直径と等しいことを特徴とする請求項28に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項30】
前記外歯車及び前記内歯車の歯数比は前記外歯車及び前記内歯車の有効ねじ径の比と等しいことを特徴とする請求項28又は29に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項31】
前記外歯車及び前記内歯車の歯数比は前記外歯車及び前記内歯車の条数の比と等しいことを特徴とする請求項28乃至30の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項32】
前記外歯車は前記遊星ねじローラの少なくとも一端部に一体に形成され、前記内歯車は前記ローラナットに固定されていることを特徴とする請求項28乃至31の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項33】
前記外歯車は前記遊星ねじローラの両端部に設けられ、前記二つの外歯車の歯形は互いに他に対し0°よりも大きく360°よりも小さい位相差を有することを特徴とする請求項28乃至32の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項34】
前記位相差は90°よりも大きく270°よりも小さいことを特徴とする請求項33に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項35】
前記位相差は180°であることを特徴とする請求項34に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項36】
前記外歯車の歯は前記遊星ねじローラのねじの一部を郭定していることを特徴とする請求項28乃至35の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項37】
前記外歯車は前記遊星ねじローラの少なくとも一端部に設けられ、前記内歯車の歯は前記ローラナットにより前記外歯車の歯の間にて少なくとも前記ローラナットの軸線に平行な軸線の周りに自転可能に支持され且つ前記外歯車の歯と係合する複数個の回転体により郭定されていることを特徴とする請求項28乃至35の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項38】
前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラのねじのねじ山形状は、前記ねじ軸の軸線を通る断面で見て共通の圧力角の部位を有することを特徴とする請求項1乃至37の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項39】
前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラのねじは、前記ねじ軸及び前記遊星ねじローラのねじのピッチ、有効ねじ径、条数に基づき平均ねじれ角が演算され、前記平均ねじれ角に基づき平均圧力角が演算され、前記平均圧力角及びねじれ角に基づき演算されたねじ山角度を有することを特徴とする請求項38に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項40】
前記ねじ軸の差動条数は正の値であり、前記ローラナットのねじは台形のねじ山を有し、前記遊星ねじローラの歯先のねじ山角度及び前記ねじ軸の歯元のねじ山角度は前記ローラナットのねじ山角度と同一であり、前記遊星ねじローラの歯元のねじ山角度及び前記ねじ軸の歯先のねじ山角度はそれらの平均の角度が前記ローラナットのねじ山角度と同一であることを特徴とする請求項39に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項41】
前記ねじ軸の差動条数は負の値であり、前記ローラナットのねじは台形のねじ山を有し、前記遊星ねじローラのねじ山角度及び前記ねじ軸の歯先のねじ山角度は前記ローラナットのねじ山角度と同一であり、前記ねじ軸の歯元のねじ山角度は前記平均圧力角及びねじれ角に基づき演算される二つのねじ山角度のうちの小さい方の値であることを特徴とする請求項39に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項42】
前記遊星ねじローラの両端の端面は軸線に整合する穴を有し、前記キャリアは複数の突起を有し、前記突起が前記穴に嵌入することにより前記遊星ねじローラを軸線の周りに回転可能に支持していることを特徴とする請求項1乃至41の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項43】
前記穴及び前記突起はテーパ状をなしていることを特徴とする請求項42に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項44】
前記キャリアは前記遊星ねじローラの端部の側面を部分的に包囲して支持する側面支持部を有することを特徴とする請求項42又は43に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項45】
前記キャリアは含油金属にて形成されていることを特徴とする請求項42乃至44の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置。
【請求項46】
請求項1乃至41の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法であって、複数個の遊星ねじローラを保持治具により互いに他に対し所定の位置関係にて自転可能に支持し、前記保持治具を回転させながら前記複数個の遊星ねじローラと共に前記ローラナット内に挿入することを特徴とする遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法。
【請求項47】
請求項32に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法であって、複数個の遊星ねじローラを保持治具により互いに他に対し所定の位置関係にて自転可能に支持し、前記保持治具を回転させながら前記複数個の遊星ねじローラと共に前記ローラナット内に挿入し、しかる後内歯車を前記外歯車と噛合せた状態で前記内歯車を前記ローラナットに固定することを特徴とする遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法。
【請求項48】
前記保持治具は前記複数個の遊星ねじローラの一端を回転可能に支持する第一の支持部と、前記複数個の遊星ねじローラの他端を回転可能に支持する第二の支持部と、前記第一及び第二の支持部を一体的に連結する連結部とを有することを特徴とする請求項46又は47に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法。
【請求項49】
前記保持治具は請求項33に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立てに使用され、前記複数個の遊星ねじローラの前記一端及び前記他端は互いに異なる外径の第一及び第二のシャフト部を有し、前記第一及び第二の支持部はそれぞれ前記第一及び第二のシャフト部の直径に対応する内径の孔を有することを特徴とする請求項48に記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法。
【請求項50】
前記保持治具は遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立てが完了すると、前記一方の部材と共働して前記遊星ねじローラを前記ねじ軸の軸線周りの所定の位置に保持し前記遊星ねじローラをそれらの軸線周りに回転可能に支持するキャリアとして機能することを特徴とする請求項46乃至49の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法。
【請求項50】
前記保持治具は樹脂にて形成されていることを特徴とする請求項46乃至50の何れかに記載の遊星式差動ねじ型回転−直線運動変換装置の組立て方法。

【国際公開番号】WO2004/094870
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505733(P2005−505733)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005598
【国際出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】