運動案内装置及びローラねじ
【課題】取付け面の傾き誤差や偏荷重等があっても、スキューが発生しにくい運動案内装置及びローラねじを提供する。
【解決手段】運動案内装置は、軌道部材1と、複数条のローラ転走面1bに対向する複数条の負荷ローラ転走面2d、複数条の負荷ローラ転走面2dと平行に伸びる複数条の無負荷戻し路8、及び複数条の負荷ローラ転走面2dと複数条の無負荷戻し路8を接続する複数の方向転換路6を有する移動部材2と、複数のローラ循環路に配列される複数のローラ3と、を備える。複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラ3が配列される。軌道部材1に対して移動部材2を軌道部材1の長手方向に相対的に移動させると、二列以上の複数のローラ3が、軌道部材1のローラ転走面1bと移動部材2の負荷ローラ転走面2dとの間を転がり運動し、ローラ循環路を循環する。
【解決手段】運動案内装置は、軌道部材1と、複数条のローラ転走面1bに対向する複数条の負荷ローラ転走面2d、複数条の負荷ローラ転走面2dと平行に伸びる複数条の無負荷戻し路8、及び複数条の負荷ローラ転走面2dと複数条の無負荷戻し路8を接続する複数の方向転換路6を有する移動部材2と、複数のローラ循環路に配列される複数のローラ3と、を備える。複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラ3が配列される。軌道部材1に対して移動部材2を軌道部材1の長手方向に相対的に移動させると、二列以上の複数のローラ3が、軌道部材1のローラ転走面1bと移動部材2の負荷ローラ転走面2dとの間を転がり運動し、ローラ循環路を循環する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のテーブル等の移動体が線運動するのを案内する運動案内装置に関し、特に転動体としてローラを用いた定格荷重の大きな運動案内装置に関する。
【0002】
また、本発明は、ねじ軸とナットとの間に転動体を介在させたねじ装置に関し、特に転動体としてローラを用いたローラねじに関する。
【背景技術】
【0003】
転動体としてローラを用いた運動案内装置には、ボールを用いた場合に比べて定格荷重(剛性)を大きくできたり、テーブル等の移動体を精度良く移動させたりできるという長所がある。このため、精密工作機械、重切削加工機、半導体・液晶製造装置等の用途に適しており、近年その需要も飛躍的に伸びている。
【0004】
一般的にこの種の運動案内装置は、ベースに取り付けられる軌道部材と、テーブルに取り付けられる移動部材と、軌道部材と移動部材との間に転動体として転がり運動可能に介在される複数のローラと、を備える。移動部材には、軌道部材のローラ転走面に対向する負荷ローラ転走面、負荷ローラ転走面に平行な無負荷戻し路、負荷ローラ転走面と無負荷戻し路を接続する一対のU字状の方向転換路が形成される。軌道部材に対する移動部材の相対的な移動に伴い、ローラが、負荷ローラ転走面、無負荷戻し路、一対の方向転換路から構成されるローラ循環路を循環する。転動体としてローラを用いると、ボールに比べて転走面との接触面積を大きくとれるので、負荷できる荷重を大きくすることができる。
【0005】
ボールは四方八方に転がることができるのに対し、ローラの移動方向は一方向に限られる。軌道部材と移動部材との間でローラを円滑に転がり運動させるためには、ローラの回転軸をローラの進行方向に対して直交させなければならない。しかし、運動案内装置の製作上の加工誤差、使用時の取付け誤差、偏荷重等により、軌道部材のローラ転走面と移動部材のローラ転走面の平行度が保たれない場合がある。この場合、ローラの回転軸が正規の状態から傾くスキューと呼ばれる現象が発生することがある。スキューが発生すると、ローラが円滑に転がり運動できなくなる。
【0006】
運動案内装置においては、ローラは無負荷戻し路内で無負荷状態になり、負荷ローラ転走路内で負荷状態になる。偏荷重を受けたときや取付け誤差があったとき、無負荷戻し路内で無負荷状態のローラが平行度の狂った負荷ローラ転走路に入らなければならず、これが原因でスキューが発生する。
【0007】
出願人は、剛性とスキューの防止を両立できる運動案内装置として、転動体としてのローラの直径と長さの比に着目し、ローラの直径をD、ローラの回転軸方向の長さをLとしたとき、1.5<L/D<3とすることにより、同一型番のボール仕様の運動案内装置に比べ、剛性を向上させることができ、また、スキューの発生を防止することができる運動案内装置を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−310151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、ベースやテーブルの取付け面の精度を従来のボールを用いた運動案内装置と同等にしたまま、運動案内装置の定格荷重を増やしたいという需要がある。すなわち、ローラを用いた運動案内装置でありながら取付け面の傾き誤差や偏荷重を吸収・許容できる運動案内装置が望まれている。ローラねじにおいても、ナットやねじ軸の取付け精度を従来のボールねじと同等にしたまま、定格荷重を増やしたいという需要がある。
【0010】
しかし、取付け面の傾き誤差や偏荷重があると、ローラにスキューが発生しやすくなり、ローラを円滑に転がり運動させることが困難になる。
【0011】
そこで本発明は、取付け面の傾き誤差や偏荷重等があっても、スキューが発生しにくい運動案内装置及びローラねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、長手方向に伸びる複数条のローラ転走面を有する軌道部材と、前記複数条のローラ転走面に対向する複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の負荷ローラ転走面と平行に伸びる複数条の無負荷戻し路、及び前記複数条の負荷ローラ転走面と前記複数条の無負荷戻し路を接続する複数の方向転換路を有する移動部材と、前記複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の無負荷戻し路及び前記複数の方向転換路から構成される複数のローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、前記軌道部材に対して前記移動部材を前記軌道部材の長手方向に相対的に移動させると、前記二列以上の複数のローラが、前記軌道部材のローラ転走面と前記移動部材の負荷ローラ転走面との間を転がり運動する運動案内装置である。
【0013】
本発明の他の態様は、外周面に螺旋状のローラ転走面を有するねじ軸と、内周面に前記ねじ軸の前記ローラ転走面に対向する螺旋状の負荷ローラ転走面を有するナットと、螺旋状の前記負荷ローラ転走面の一端と他端とを接続する無負荷戻し路を有する循環部材と、前記ナットの前記負荷ローラ転走面、及び前記循環部材の前記無負荷戻し路から構成されるローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、前記ねじ軸に対して前記ナットを相対的に回転させると、前記二列以上の複数のローラが、前記ねじ軸のローラ転走面と前記ナットの負荷ローラ転走面との間を転がり運動するローラねじである。
【発明の効果】
【0014】
転走面からローラに作用する応力分布の最大値と最小値の差が大きくなれば、ローラの弾性変形量の差が大きくなり、ローラにスキューが発生しやすくなる。ローラを複列化することにより、各列のローラに作用する応力分布のばらつきを小さくすることができるので、スキューが発生するのを防止することができる。また、ローラの定格荷重はローラの接触部長さ(軸線方向長さ)で決定される。複列化しても接触部長さを同程度にすれば、定格荷重もそれほど低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における直線運動案内装置の分解斜視図
【図2】上記運動案内装置の断面図
【図3】エンドプレートに形成される方向転換路を示す図
【図4】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間に介在されるローラの詳細図(端部突当て壁のみ)
【図5】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間に介在されるローラの詳細図(中央部突当て壁のみ)
【図6】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間に介在されるローラの詳細図(端部突当て壁+中央部突当て壁)
【図7】移動ブロックにモーメント荷重が作用した状態を示す図
【図8】ローラに発生する応力分布を比較した図(図中(a)は単列ローラを示し、図中(b)は複列ローラを示す)
【図9】ローラがスキュー角θ傾いた状態を示す模式図
【図10】二列のローラを保持するリテーナを示す図(図中(a)は斜視図を示し、図中(b)は平面図を示し、図中(c)は側面図を示す)
【図11】リテーナの他の例を示す図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は側面図を示す)
【図12】リテーナのさらに他の例を示す平面図
【図13】リテーナのさらに他の例を示す平面図
【図14】エンドプレートの一部の斜視図
【図15】内外方向転換路構成部材の斜視図
【図16】内側方向転換路構成部材の斜視図
【図17】ローラに荷重Qが作用したときに発生する面圧分布を示す図
【図18】TypeA,TypeB,TypeCのローラの模式図
【図19】ローラの接触部長さを変化させたときの接触部に働く面圧を示すグラフ
【図20】ローラのL/Dと面圧σmax,σminの関係を表すグラフ
【図21】ローラのL/Dと面圧比σmax/σminの関係を表すグラフ
【図22】本発明の一実施形態におけるローラねじの斜視図
【図23】ナットの斜視図
【図24】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間の二列のローラを示す断面図
【図25】循環部材とねじ軸との位置関係を示す斜視図
【図26】DF構造の運動案内装置の軌道レールを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態の運動案内装置を詳細に説明する。図1は運動案内装置の分解斜視図を示し、図2は軌道レールの長手方向に直交する断面図を示す。
【0017】
運動案内装置は、長手方向に直線状に伸びる軌道部材としての軌道レール1と、この軌道レール1に多数のローラ3を介して長手方向に移動可能に組み付けられる移動部材としての移動ブロック2と、を備えている。
【0018】
図2に示すように、軌道レール1は、断面略四角形状で、その左右側面には、V字状の凹み1aが形成される。軌道レール1の底面を水平面に配置した状態(図2に示される状態)において、凹み1aの傾いた上下の壁面には、ローラ転走面1bが形成される。軌道レール1の左右側面には、上下に二条ずつ合計四条のローラ転走面1bが形成される。各ローラ転走面1bは平面的に形成され、軌道レール1の長手方向に沿って細長く伸びる。上側のローラ転走面1bが含まれる平面と下側のローラ転走面1bが含まれる平面とは、ほぼ90度の角度で交差する。四条のローラ転走面1bをこのような配置にすることにより、移動ブロック2に作用する垂直方向荷重(ラジアル荷重、逆ラジアル荷重)、水平方向荷重、モーメント荷重を負荷できるようになる。軌道レ−ル1は金属製であり、ローラ転走面1bは研削加工される。
【0019】
図1に示すように、移動ブロック2は、軌道レ−ル1の四条のローラ転走面1bに対向する四条の負荷ローラ転走面2d、四条の負荷ローラ転走面2dに平行な四条の無負荷戻し路8が形成される移動ブロック本体4と、四条の負荷ローラ転走面2dそれぞれ及び四条の無負荷戻し路8それぞれを接続する方向転換路が形成される方向転換路構成部材5,24,30を備える。方向転換路構成部材5,24,30は、エンドプレート5、内側方向転換路構成部材30、及び内外方向転換路構成部材24から構成される。移動ブロック2の左右の側壁それぞれには、二条の方向転換路が形成される。二条の方向転換路は、移動ブロック2の移動方向の端部において立体交差する。エンドプレート5には、立体交差する外側の方向転換路の外周側が形成される。内側方向転換路構成部材30には、内側の方向転換路の内周側が形成される。内外方向転換路構成部材24には、内側の方向転換路の外周側及び外側の方向転換路の内周側が形成される。エンドプレート5は、移動ブロック本体4の移動方向の端面に取り付けられる。内側方向転換路構成部材30及び内外方向転換路構成部材24は、エンドプレート5に組み込まれる。
【0020】
移動ブロック本体4は、軌道レール1の上面に対向する中央部2aと、中央部2aの左右両側から下方に延びて軌道レール1の左右側面に対向する側壁部2bと、を備える。移動ブロック本体4の側壁部2bには、軌道レール1の側面に設けた凹み1aに形状を合わせたV字状の突出部2cが形成される。この突出部2cの両側面には、ローラ転走面1bに対応する二条の負荷ローラ転走面2dが形成される。図2に示すように、突出部2cの上側の負荷ローラ転走面2dは軌道レ−ル1の上側のローラ転走面1bと平行であり、突出部2cの下側の負荷ローラ転走面2dは下側のローラ転走面1bと平行である。上側の負荷ローラ転走面2dが含まれる平面と下側の負荷ローラ転走面2dが含まれる平面とは、ほぼ90度の角度で交差する。
【0021】
移動ブロック2の四条の負荷ローラ転走面2d、四条の無負荷戻し路8、及び四条の方向転換路によって四条のサーキット状のローラ循環路が形成される。各ローラ循環路には、一条当り二列の複数のローラ3が配列される。二列の複数のローラ3は、単一の樹脂製の保持器としてのリテーナ10に保持される。二列の複数のローラ3はその軸線方向が互いに平行である。各列の複数のローラ3a間にはローラ3の軸線方向にわずかな隙間が空けられている。
【0022】
図2の断面図に示すように、軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dとの間には、二列の複数のローラ3が介在される。二列の複数のローラ3は、ローラ転走面1bと負荷ローラ転走面2dとの間で圧縮荷重を受けている。軌道レ−ル1に対して移動ブロック本体4が相対的に移動すると、二列の複数のローラ3が負荷ローラ転走路7(ローラ転走面と負荷ローラ転走面2dとの間)で荷重を受けながら転がり運動する。移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dの一端まで転がったローラ3は、図3に示すように、エンドプレート5内に掬い上げられ、U字状の方向転換路6(内側方向転換路6−1及び外側方向転換路6−2)を経由した後、無負荷戻し路8に入る。移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dは、移動ブロック本体4の左右の側壁部2bそれぞれに上下二条設けられる。無負荷戻し路8は、移動ブロック本体4の左右の側壁部2bそれぞれに上下二条設けられる。内側方向転換路6−1は上側の負荷ローラ転走面2dと下側の無負荷戻し路8を接続し、外側方向転換路6−2は、下側の負荷ローラ転走面2dと上側の無負荷戻し路8を接続する。
【0023】
方向転換路6及び無負荷戻し路8内では、ローラ3の周囲には隙間が空き、ローラ3は無負荷状態になる。このため、ローラ3は後続のローラ3に押されながら移動する。無負荷戻し路8を通過したローラ3は、反対側の方向転換路6を経由した後、再び負荷ローラ転走路7に入る。これら負荷ローラ転走路7、方向転換路6及び無負荷戻し路8でサーキット状のローラ循環路が形成される。
【0024】
図4はローラ転走面1bと負荷ローラ転走面2dとの間に介在されるローラ3の詳細図を示す。ローラ3には円筒ローラが用いられる。ローラ3の側面(外周面)には、クラウニングが施されておらず、完全にストレートに形成されている。ローラ転走面1b及び負荷ローラ転走面2dにも、クラウニングが施されておらず、断面図において完全にストレートに形成されている。ローラ3の端面は平面に形成され、ローラ3の端面と側面との接続部分となる角には、円弧状の面取りが施される。ローラ3は面取りを除いたローラの外周面がローラ転走面1b及び負荷ローラ転走面2dに接触する。
【0025】
従来の運動案内装置においては、スキューを防止するために、ローラ自体やローラ転走面及び負荷ローラ転走面にクラウニングを施していた。しかし、クラウニングを施すには三次元的な加工が必要になるので、ローラや転走面に加工誤差やばらつきといった新たな問題が付加されてしまう。ローラ3にクラウニングの施されない円筒ローラを使用し、転走面1b,2dの断面をストレートに形成することにより、三次元的な加工を施す必要がなくなり、ローラ3及び転走面1b,2dを安定して高精度に製作でき、加工工数を削減化することができる。ここで、ローラ3の直径をD、長さ(端面から端面までの距離)をLとしたとき、L/D≦1に設定される。ローラ3の比をこのように設定した理由については後述する。なお、ローラ3の端面は球面の一部の形状に形成されてもよい。その場合のローラ3の長さは、球面まで含めたローラ3の全長となる。
【0026】
負荷ローラ転走面2dの幅方向の両端部には、二列の複数のローラ3の最も外側の端面3bに接触可能な一対の金属製の端部突当て壁31が形成される。端部突当て壁31は、負荷ローラ転走面2dと一体であり、負荷ローラ転走面2dの長手方向に伸びる。各列のローラ3a間には突当て壁は設けられていない。ローラ3の外側の端面3bには、移動ブロック本体4に組み込まれる保持部材11,13も接触可能である。
【0027】
図5は、突当て壁の他の例を示す。この例では、移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dには、各列の間に、二列の複数のローラ3の対向する端面3cに接触可能な金属製の中央部突当て壁32が形成される。中央部突当て壁32は、負荷ローラ転走面2dと一体であり、負荷ローラ転走面2dに沿って長手方向に伸びる。この例では、負荷ローラ転走面2dの幅方向の両端部には、端部突当て壁31(図4参照)は形成されていない。
【0028】
図6は、負荷ローラ転走面2dに端部突当て壁31と中央部突当て壁32を形成した例を示す。移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dには、その幅方向の両端部に、二列の複数のローラ3の最も外側の端面3bに接触可能な一対の金属製の端部突当て壁31が形成されると共に、各列のローラ3aの間に、二列の複数のローラ3の対向する端面3cに接触可能な金属製の中央部突当て壁32が形成される。各列の複数のローラ3aは中央部突当て壁32と端部突当て壁31との間に挟まれる。
【0029】
図8は、従来の一列のローラと本発明の二列のローラとで、ローラに発生する応力分布を比較したものである。運動案内装置の取付け誤差(例えば二本の軌道レ−ル1の平行度が狂う)があったり、運動案内装置の移動ブロック2にモーメント荷重が作用したりする(図7参照)とき、移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dが軌道レ−ル1のローラ転走面1bに対して傾く。そのとき、ローラには図8(a)に示すような応力分布が発生する。ローラの一方の端部の応力σ1と他方の端部の応力σ2の差が大きいと、弾性変形量にも差が出る。弾性変形量に差があればあるほどスキューが起こり易くなる。図8(b)に示すようにローラ3を複列化することにより、応力の差をσ1−σ2からσ1´−σ2´又はσ3´−σ4´に小さくすることができる。一列当りのローラ3の応力分布の差を小さくできるので、スキューを起こしにくくなる。特にL/D≦1のローラを使用すると、ローラ3の形状自体もスキューを起こしにくい形状になるので、よりスキューが起こりにくくなる。ローラ3のL/Dとスキューとの関係については、後述する。
【0030】
運動案内装置の定格荷重は、ローラ3とローラ転走面1b(又は負荷ローラ転走面2d)との接触長さによって決定される。ローラ3を複列化してもローラ3の長さの合算値であるA+A=2Aを単列ローラRの長さBにほぼ等しくすれば、運動案内装置の定格荷重を落とさないことができる。
【0031】
図4〜6に示すように、ローラ3を複列化することにより、ローラ3の端面に接触する突当て壁31,32を形成することも可能になる。ローラ3を正規の軌道に沿って転がすためには、ローラ3の両端面を突当て壁31,32で案内し、スキューが起きたローラ3を矯正する必要がある。しかし、従来の一般的な運動案内装置においては、突当て壁31,32を形成することは行われていない。突当て壁31,32を形成すると負荷ローラ転走面2dの研削加工が困難になるというのが理由の一つではある。しかし、それ以上にローラ3の長さLが大きいと、ローラ3にスキューが起きたとき、ローラ3が突当て壁31,32に擦れながら強い力で突当て壁31,32を押すので、突当て壁31,32が変形したり、ローラ3がロックしたりする(かじりや焼付きといった問題を起こす)というのが理由にあった。図9に示すように、ローラ3が進行方向に対してスキュー角θ傾いたとき、ローラ3の端面が突当て壁31,32を変形させる量はl/2・tanθで与えられる。この値が大きいと、ローラ3が突当て壁31,32を押す力も大きくなり、上述の問題を起こす。複列化してローラ3の長さLを短くすることにより、ローラ3が突当て壁を押す力も小さくなるので、突当て壁31,32の強度も確保することができる。
【0032】
図6に示すように、突当て壁31,32は、ローラ3の両端面に接触できるようにするのが理想である。ローラ3を正規の軌道に沿って転がすことができるからである。ただし、ローラ3はリテーナ10によって所定の位置に保持されているので、リテーナ10が、無負荷戻し路8から負荷ローラ転走面2dに入るローラ3が突当て壁31,32にひっかかるのを防止する。このため、図4及び図5に示すように、突当て壁31,32の一方のみを設け、突当て壁31,32の一方のみがローラ3に接触するようにしてもよい。
【0033】
図10は、複数のローラ3をリテーナ10に保持した状態を示す。二列の複数のローラ3は、単一の樹脂性のリテーナ10に保持されている。リテーナ10は、各列の複数のローラ3aの間に介在され、ローラ3a同士が接触するのを防止する複数のスペーサ10aと、二列の複数のローラ3の最も外側の端部で複数のスペーサ10aを繋ぐ一対の可撓性のベルト10bと、各列の複数のローラ3aの間で複数のスペーサを繋ぐ可撓性の中央ベルト10cと、を備える。複数のスペーサ10aそれぞれの長さはローラ3の長さにほぼ等しく、その進行方向の両端部には、ローラ3に対応する曲面状凹部が形成される。一対のベルト10bは、ローラ3の軸線方向の端面よりも外方に張り出していて、ローラ循環路に形成した案内溝によって案内される(図4参照)。図10(b)の平面図及び図10(c)の側面図に示すように、各列の複数のローラ3aのピッチP及び位相は、二列の間で同一である。
【0034】
二列の複数のローラ3をリテーナ10に保持させることで、ローラ3の整列案内が可能になる。また、ローラ3はリテーナ10の伸縮性を利用して軸線方向及び進行方向に自由に動ける状態にある。このため、一つのローラ3にスキューが起こったとしても、他のローラ3にスキューが伝わりにくくなっている。さらに、各列のローラ3aの間でローラの進み遅れ(移動量の差)はたとえ生じたとしてもわずかである。一つのリテーナ10で二列の複数のローラ3を保持したとしても、リテーナ10の弾性変形量で各列のローラ3aの進み遅れを吸収することができる。
【0035】
図11は、リテーナ10の他の例を示す。この例では、各列の複数のローラ3aのピッチPが二列間で同一であり、各列の複数のローラ3aの位相がピッチの1/2だけずれている。複数のスペーサ10a、一対の可撓性のベルト10b、及び中央ベルト10cの構成は、上記図10に示すリテーナ10と同一であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。二列の複数のローラ3をこの例のように千鳥配置することで、ローラ3を円滑に循環させることができる。
【0036】
図12は、リテーナ10のさらに他の例を示す。この例では、各列の複数のローラ3aの対向する端面を接触させ、二列のローラを一列のローラのように見立てた状態で、二列の複数のローラ3をリテーナ10に保持させている。リテーナ10は、二列の複数のローラ3の列方向に介在される複数のスペーサ10aと、二列の複数のローラ3の最も外側の端部で複数のスペーサ10aを繋ぐ一対の可撓性のベルト10bと、を備える。
【0037】
図13は、リテーナのさらに他の例を示す。この例では、二列の複数のローラ3は列数に応じた二つのリテーナ10に列方向に一定の間隔を空けた状態で保持される。各リテーナ10は、各列の列方向の複数のローラ3a間に介在され、ローラ3a同士が接触するのを防止する複数のスペーサ10aと、各列の複数のローラ3aの軸線方向の端部で複数のスペーサ10aを繋ぐ可撓性のベルト10bと、を有する。この例によれば、各リテーナ10は互いに分離されているので、各列の複数のローラ3aは他の列の複数のローラ3aの影響を受けない。このため、一方の列のローラ3aにスキューが起きても他方の列のローラ3aに影響が及ぶのを防止できる。
【0038】
図1に示すように、移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dの両側縁には、長尺の保持部材11,12,13が取り付けられる。樹脂製の保持部材11,12,13には、軌道レ−ル1から移動ブロック2を外した際に負荷ローラ転走面2dからローラ3が脱落するのを防止できるよう、リテーナ10を案内する案内溝が形成されている。軌道レール1の底面を水平面に配置した状態(図1に示される状態)において、第1保持部材11は、下側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の下側を案内する(図2参照)。第2保持部材12は、下側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の上側を案内すると共に、上側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の下側を案内する。第3保持部材13は、上側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の上側を案内する。
【0039】
移動ブロック本体4の側壁部2bには、上下2条の負荷ローラ転走面2dから所定間隔を隔てて平行に伸びる貫通孔14が空けられる。この貫通孔14に無負荷戻し路8を構成する無負荷戻し路構成部材15が挿入される。無負荷戻し路構成部材15は、細長のパイプ形状の部材を軸線方向に沿って2分割した一対のパイプ半体からなる。無負荷戻し路構成部材15には無負荷戻し路8が形成されると共に、リテーナ10のベルト10bを案内する案内溝が形勢される。無負荷戻し路構成部材15は、その両端がエンドプレート5に支持される。
【0040】
図14はエンドプレート5の斜視図を示す。エンドプレート5は、移動ブロック本体4と断面形状を合わせていて、水平部5aと側壁部5bとを備えている(図1参照)。側壁部5bには、深さが深い外側方向転換路の外周側18及び深さが浅い内側方向転換路の外周側19が立体交差するように形成される。外側方向転換路の外周側18と内側方向転換路の外周側19は互いに直交する。浅く形成される内側方向転換路の外周側19は、深く形成される外側方向転換路の外周側18によって中央部分が分断される。またエンドプレート5の外側方向転換路の外周側18には、外側方向転換路を通過するリテーナ10の外周側を案内する案内部18aが形成される。エンドプレート5の端面には、移動ブロック本体4に対してエンドプレート5を位置決めするための位置決め凸部20が形成され、保持部材11,12,13を位置決めするための位置決め凹部21,22,23が形成される。
【0041】
図15は、エンドプレート5に組み込まれる内外方向転換路構成部材24を示す。内外方向転換路構成部材24は全体形状が側溝のような形状に形成される。この内外方向転換路構成部材24は、エンドプレート5に形成された方向転換路の外周側18に嵌め込まれる。内外方向転換路構成部材24の外側には、外側方向転換路の内周側25が形成され、内側には、エンドプレート5に形成された内側方向転換路の外周側19と一緒に内側方向転換路の外周側を構成する内側方向転換路の外周側26が形成される。エンドプレート5に形成される外側方向転換路の外周側18と、内外方向転換路構成部材24に形成される外側方向転換路の内周側25とで外側方向転換路が構成される。また内外方向転換路構成部材24をエンドプレートに嵌め込むと、エンドプレート5に形成された内側方向転換路の外周側19の分断された部分に内外方向転換路構成部材24に形成された内側方向転換路の外周側26が嵌まり込み、これにより内側方向転換路の外周側の全体が形成される。また内外方向転換路構成部材24には、外側方向転換路の内周側25に沿って、外側方向転換路を通過するリテーナ10の内周側を案内する案内部25aが形成される。
【0042】
図16は、内側方向転換路の内周側を構成する内側方向転換路構成部材30を示す。内側方向転換路構成部材30は半円柱形状に形成され、その外周面に内側方向転換路の内周側30aが形成される。エンドプレート5に内外方向転換路構成部材24を嵌め込んだ後、この内側方向転換路構成部材30をエンドプレート5に嵌め込む。内側方向転換路の内周側30aの両脇には、内側方向転換路を通過するリテーナ10の内周側を案内する案内部30bが形成される。
【0043】
ローラをL/D≦1に設定した意義は以下のとおりである。図17に示すモデルを用い、ローラ3に荷重Qが作用したときのローラ3の接触部に働く面圧を解析した。
【0044】
ローラ3に働く荷重は以下の式から算出した。
【数1】
Q:荷重、Da:ローラの直径、l:ローラの長さ、1/m=0.3:ポアソン比である。
【0045】
この図17に示すように、ローラ3に荷重Qを作用させたとき、ローラ3の中央部に働く面圧σminに比べてローラ3の端部で働く面圧σmaxが高くなる。この面圧比σmax/σminが大きくなればなるほど、ローラ3の軸線方向の中央部での弾性変形量と端部での弾性変形量の差が大きくなり、スキューを起こしやすくなる。
【0046】
次に、図18に示すように、TypeA→TypeB→TypeCと順次ローラ3の軸線方向の長さLを長くし、L/Dの値も変化させて、接触部の面圧を解析した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
L/Dの値が変化すると、面圧比σmax/σminが変化することがわかったので、さらにローラ3の接触部長さをさまざまに変化させて、接触部に働く面圧を計算した。その結果を図19に示す。そして、計算結果から、L/Dと面圧σmax,σminの関係をグラフにまとめた。図20は、L/Dと面圧σmax,σminの関係を表し、図21は、L/Dと面圧比σmax/σminの関係を表す。図21に示すように、L/Dが1以下になると、面圧比σmax/σminが急激に低減し、面圧σmaxのσmin差も小さくなることがわかった。σmax/σminが低減することは、スキューが起こりにくくなることを意味する。L/Dを1以下にすることで、もともとスキューの起こりにくいローラになることがわかる。L/Dを0.5以下にすることで、よりスキューが起こりにくくなることがわかる。
【0049】
図22は、本発明の一実施形態におけるローラねじの斜視図を示す。ローラねじは、外周面に螺旋状のローラ転走面51aが形成されるねじ軸51と、内周面にローラ転走面51aに対向する螺旋状の負荷ローラ転走面52aが形成されるナット52とを備える。
【0050】
ねじ軸51は、炭素鋼、クロム鋼、又はステンレス鋼などの棒鋼の外周面に、所定のリードを有する螺旋状のローラ転走面51aを切削及び研削加工又は転造加工によって形成したものである。ローラ転走面51aの断面は、V字形状でその開き角度は約90度である(図24参照)。この実施形態では、ねじ軸51の外周面に、二条のローラ転走面51aが形成される。そして、二条のローラ転走面51aそれぞれに複数のローラ54がパラレル配列(複数のローラの軸線が平行になる配列)される。もちろん、ローラねじの条数は、一条、二条、三条などローラねじの用途によって適宜決定される。
【0051】
図23は、ナット52の斜視図を示す。ナット52は、炭素鋼、クロム鋼、又はステンレス鋼などの円筒の内周面に、所定のリードを有する螺旋状の負荷ローラ転走面52aを切削及び研削加工又は転造加工によって形成したものである。負荷ローラ転走面52aの断面は、V字形状でその開き角度は約90度である。ナット52の外周の軸線方向の端部には、ナット52を相手部品に取り付けるためのフランジ52bが形成される。
【0052】
図24は、ねじ軸51のローラ転走面51aとナット52の負荷ローラ転走面52aとの間に挟まれる二列のローラ54を示す。二列のローラ54は円筒形状で、軸線54bを一致させた状態に積み重ねられる。側面からみた二列のローラ54の形状は、正方形に近くなる。ローラ54は、円筒形の側面54cと、一対の端面54aと、側面54cと端面54aとの間に形成される面取り部54dと、を備える。二列のローラ54の側面54cは、ねじ軸51のローラ転走面51a及びナット52の負荷ローラ転走面52aに接触する。
【0053】
図25は、ナット52に取り付けられる循環部材53とねじ軸51との位置関係を示す。二条のローラ転走面51aを移動するローラ54を循環させるために、循環部材53は二組設けられる。循環部材53は、ナット52の軸線方向に伸びる貫通孔に挿入される循環パイプ58と、循環パイプ58の軸線方向の端部に取り付けられる一対の方向転換路構成部材62と、を備える。循環部材53には、負荷ローラ転走路の一端と他端とを接続する無負荷戻し通路が形成される。無負荷戻し通路は、循環パイプ58に形成され、ナット52の中心線と平行に直線的に伸びる直線通路と、直線通路の両端に接続され、一対の方向転換路構成部材62に形成される曲線状の一対の方向転換路と、から構成される。負荷ローラ転走路の一端まで転がったローラ54は、循環部材53の方向転換路内に導かれ、直線通路を経由した後、残りの方向転換路から再び負荷ローラ転走路の他端に戻される。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施形態の運動案内装置においては、軌道レ−ルの左右側面にV字状の凹みを形成し、移動ブロックに凹み内に突出するV字状の突出部を形成し、軌道レールの凹みの一対の上下壁面にローラ転走路を形成する所謂DB構造の運動案内装置を示している。しかし、本発明は、図26に示すように、軌道レ−ル1の左右側面にV字状の突出部61を形成し、移動ブロックにV字状の突出部に対応するV字状の凹みを形成し、軌道レ−ル1の突出部61の一対の上下壁面にローラ転走面63が形成される所謂DF構造の運動案内装置に適用することもできる。
【0055】
また、ローラ循環路の一条当り、三列、四列のローラを配列することもできる。ローラにクラウニングを施したクラウニングローラを用いてもよいし、転走面の断面をクラウニング転走面にしてもよい。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、移動ブロックが直線的に運動する運動案内装置について説明したが、本発明はローラスプラインや曲線運動を案内する曲線運動案内装置にも適用することもできる。
【0057】
さらに、上記実施形態においては、移動ブロックを軌道レールから取り外したとき、リテーナは複数のローラが脱落しないように保持しているが、ローラ循環路で一定の間隔でローラを保持することができれば、移動ブロックを軌道レールから取り外したとき、複数のローラがリテーナから脱落してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…軌道レール(軌道部材),1b…ローラ転走面,2d…負荷ローラ転走面,2…移動ブロック(移動部材),3…ローラ,3a…各列のローラ,3b…二列の複数のローラの最も外側の端面,3c…二列の複数のローラの対向する端面,6−1…外側方向転換路(方向転換路),6−2…内側方向転換路(方向転換路),7…負荷ローラ転走路,8…無負荷戻し路,10…リテーナ(保持器),10a…スペーサ,10b…ベルト,31…端部突当て壁,32…中央部突当て壁,51…ねじ軸,51a…ローラ転走面,52…ナット,52a…負荷ローラ転走面,53…循環部材,54…二列の複数のローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のテーブル等の移動体が線運動するのを案内する運動案内装置に関し、特に転動体としてローラを用いた定格荷重の大きな運動案内装置に関する。
【0002】
また、本発明は、ねじ軸とナットとの間に転動体を介在させたねじ装置に関し、特に転動体としてローラを用いたローラねじに関する。
【背景技術】
【0003】
転動体としてローラを用いた運動案内装置には、ボールを用いた場合に比べて定格荷重(剛性)を大きくできたり、テーブル等の移動体を精度良く移動させたりできるという長所がある。このため、精密工作機械、重切削加工機、半導体・液晶製造装置等の用途に適しており、近年その需要も飛躍的に伸びている。
【0004】
一般的にこの種の運動案内装置は、ベースに取り付けられる軌道部材と、テーブルに取り付けられる移動部材と、軌道部材と移動部材との間に転動体として転がり運動可能に介在される複数のローラと、を備える。移動部材には、軌道部材のローラ転走面に対向する負荷ローラ転走面、負荷ローラ転走面に平行な無負荷戻し路、負荷ローラ転走面と無負荷戻し路を接続する一対のU字状の方向転換路が形成される。軌道部材に対する移動部材の相対的な移動に伴い、ローラが、負荷ローラ転走面、無負荷戻し路、一対の方向転換路から構成されるローラ循環路を循環する。転動体としてローラを用いると、ボールに比べて転走面との接触面積を大きくとれるので、負荷できる荷重を大きくすることができる。
【0005】
ボールは四方八方に転がることができるのに対し、ローラの移動方向は一方向に限られる。軌道部材と移動部材との間でローラを円滑に転がり運動させるためには、ローラの回転軸をローラの進行方向に対して直交させなければならない。しかし、運動案内装置の製作上の加工誤差、使用時の取付け誤差、偏荷重等により、軌道部材のローラ転走面と移動部材のローラ転走面の平行度が保たれない場合がある。この場合、ローラの回転軸が正規の状態から傾くスキューと呼ばれる現象が発生することがある。スキューが発生すると、ローラが円滑に転がり運動できなくなる。
【0006】
運動案内装置においては、ローラは無負荷戻し路内で無負荷状態になり、負荷ローラ転走路内で負荷状態になる。偏荷重を受けたときや取付け誤差があったとき、無負荷戻し路内で無負荷状態のローラが平行度の狂った負荷ローラ転走路に入らなければならず、これが原因でスキューが発生する。
【0007】
出願人は、剛性とスキューの防止を両立できる運動案内装置として、転動体としてのローラの直径と長さの比に着目し、ローラの直径をD、ローラの回転軸方向の長さをLとしたとき、1.5<L/D<3とすることにより、同一型番のボール仕様の運動案内装置に比べ、剛性を向上させることができ、また、スキューの発生を防止することができる運動案内装置を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−310151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、ベースやテーブルの取付け面の精度を従来のボールを用いた運動案内装置と同等にしたまま、運動案内装置の定格荷重を増やしたいという需要がある。すなわち、ローラを用いた運動案内装置でありながら取付け面の傾き誤差や偏荷重を吸収・許容できる運動案内装置が望まれている。ローラねじにおいても、ナットやねじ軸の取付け精度を従来のボールねじと同等にしたまま、定格荷重を増やしたいという需要がある。
【0010】
しかし、取付け面の傾き誤差や偏荷重があると、ローラにスキューが発生しやすくなり、ローラを円滑に転がり運動させることが困難になる。
【0011】
そこで本発明は、取付け面の傾き誤差や偏荷重等があっても、スキューが発生しにくい運動案内装置及びローラねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、長手方向に伸びる複数条のローラ転走面を有する軌道部材と、前記複数条のローラ転走面に対向する複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の負荷ローラ転走面と平行に伸びる複数条の無負荷戻し路、及び前記複数条の負荷ローラ転走面と前記複数条の無負荷戻し路を接続する複数の方向転換路を有する移動部材と、前記複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の無負荷戻し路及び前記複数の方向転換路から構成される複数のローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、前記軌道部材に対して前記移動部材を前記軌道部材の長手方向に相対的に移動させると、前記二列以上の複数のローラが、前記軌道部材のローラ転走面と前記移動部材の負荷ローラ転走面との間を転がり運動する運動案内装置である。
【0013】
本発明の他の態様は、外周面に螺旋状のローラ転走面を有するねじ軸と、内周面に前記ねじ軸の前記ローラ転走面に対向する螺旋状の負荷ローラ転走面を有するナットと、螺旋状の前記負荷ローラ転走面の一端と他端とを接続する無負荷戻し路を有する循環部材と、前記ナットの前記負荷ローラ転走面、及び前記循環部材の前記無負荷戻し路から構成されるローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、前記ねじ軸に対して前記ナットを相対的に回転させると、前記二列以上の複数のローラが、前記ねじ軸のローラ転走面と前記ナットの負荷ローラ転走面との間を転がり運動するローラねじである。
【発明の効果】
【0014】
転走面からローラに作用する応力分布の最大値と最小値の差が大きくなれば、ローラの弾性変形量の差が大きくなり、ローラにスキューが発生しやすくなる。ローラを複列化することにより、各列のローラに作用する応力分布のばらつきを小さくすることができるので、スキューが発生するのを防止することができる。また、ローラの定格荷重はローラの接触部長さ(軸線方向長さ)で決定される。複列化しても接触部長さを同程度にすれば、定格荷重もそれほど低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における直線運動案内装置の分解斜視図
【図2】上記運動案内装置の断面図
【図3】エンドプレートに形成される方向転換路を示す図
【図4】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間に介在されるローラの詳細図(端部突当て壁のみ)
【図5】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間に介在されるローラの詳細図(中央部突当て壁のみ)
【図6】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間に介在されるローラの詳細図(端部突当て壁+中央部突当て壁)
【図7】移動ブロックにモーメント荷重が作用した状態を示す図
【図8】ローラに発生する応力分布を比較した図(図中(a)は単列ローラを示し、図中(b)は複列ローラを示す)
【図9】ローラがスキュー角θ傾いた状態を示す模式図
【図10】二列のローラを保持するリテーナを示す図(図中(a)は斜視図を示し、図中(b)は平面図を示し、図中(c)は側面図を示す)
【図11】リテーナの他の例を示す図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は側面図を示す)
【図12】リテーナのさらに他の例を示す平面図
【図13】リテーナのさらに他の例を示す平面図
【図14】エンドプレートの一部の斜視図
【図15】内外方向転換路構成部材の斜視図
【図16】内側方向転換路構成部材の斜視図
【図17】ローラに荷重Qが作用したときに発生する面圧分布を示す図
【図18】TypeA,TypeB,TypeCのローラの模式図
【図19】ローラの接触部長さを変化させたときの接触部に働く面圧を示すグラフ
【図20】ローラのL/Dと面圧σmax,σminの関係を表すグラフ
【図21】ローラのL/Dと面圧比σmax/σminの関係を表すグラフ
【図22】本発明の一実施形態におけるローラねじの斜視図
【図23】ナットの斜視図
【図24】ローラ転走面と負荷ローラ転走面との間の二列のローラを示す断面図
【図25】循環部材とねじ軸との位置関係を示す斜視図
【図26】DF構造の運動案内装置の軌道レールを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態の運動案内装置を詳細に説明する。図1は運動案内装置の分解斜視図を示し、図2は軌道レールの長手方向に直交する断面図を示す。
【0017】
運動案内装置は、長手方向に直線状に伸びる軌道部材としての軌道レール1と、この軌道レール1に多数のローラ3を介して長手方向に移動可能に組み付けられる移動部材としての移動ブロック2と、を備えている。
【0018】
図2に示すように、軌道レール1は、断面略四角形状で、その左右側面には、V字状の凹み1aが形成される。軌道レール1の底面を水平面に配置した状態(図2に示される状態)において、凹み1aの傾いた上下の壁面には、ローラ転走面1bが形成される。軌道レール1の左右側面には、上下に二条ずつ合計四条のローラ転走面1bが形成される。各ローラ転走面1bは平面的に形成され、軌道レール1の長手方向に沿って細長く伸びる。上側のローラ転走面1bが含まれる平面と下側のローラ転走面1bが含まれる平面とは、ほぼ90度の角度で交差する。四条のローラ転走面1bをこのような配置にすることにより、移動ブロック2に作用する垂直方向荷重(ラジアル荷重、逆ラジアル荷重)、水平方向荷重、モーメント荷重を負荷できるようになる。軌道レ−ル1は金属製であり、ローラ転走面1bは研削加工される。
【0019】
図1に示すように、移動ブロック2は、軌道レ−ル1の四条のローラ転走面1bに対向する四条の負荷ローラ転走面2d、四条の負荷ローラ転走面2dに平行な四条の無負荷戻し路8が形成される移動ブロック本体4と、四条の負荷ローラ転走面2dそれぞれ及び四条の無負荷戻し路8それぞれを接続する方向転換路が形成される方向転換路構成部材5,24,30を備える。方向転換路構成部材5,24,30は、エンドプレート5、内側方向転換路構成部材30、及び内外方向転換路構成部材24から構成される。移動ブロック2の左右の側壁それぞれには、二条の方向転換路が形成される。二条の方向転換路は、移動ブロック2の移動方向の端部において立体交差する。エンドプレート5には、立体交差する外側の方向転換路の外周側が形成される。内側方向転換路構成部材30には、内側の方向転換路の内周側が形成される。内外方向転換路構成部材24には、内側の方向転換路の外周側及び外側の方向転換路の内周側が形成される。エンドプレート5は、移動ブロック本体4の移動方向の端面に取り付けられる。内側方向転換路構成部材30及び内外方向転換路構成部材24は、エンドプレート5に組み込まれる。
【0020】
移動ブロック本体4は、軌道レール1の上面に対向する中央部2aと、中央部2aの左右両側から下方に延びて軌道レール1の左右側面に対向する側壁部2bと、を備える。移動ブロック本体4の側壁部2bには、軌道レール1の側面に設けた凹み1aに形状を合わせたV字状の突出部2cが形成される。この突出部2cの両側面には、ローラ転走面1bに対応する二条の負荷ローラ転走面2dが形成される。図2に示すように、突出部2cの上側の負荷ローラ転走面2dは軌道レ−ル1の上側のローラ転走面1bと平行であり、突出部2cの下側の負荷ローラ転走面2dは下側のローラ転走面1bと平行である。上側の負荷ローラ転走面2dが含まれる平面と下側の負荷ローラ転走面2dが含まれる平面とは、ほぼ90度の角度で交差する。
【0021】
移動ブロック2の四条の負荷ローラ転走面2d、四条の無負荷戻し路8、及び四条の方向転換路によって四条のサーキット状のローラ循環路が形成される。各ローラ循環路には、一条当り二列の複数のローラ3が配列される。二列の複数のローラ3は、単一の樹脂製の保持器としてのリテーナ10に保持される。二列の複数のローラ3はその軸線方向が互いに平行である。各列の複数のローラ3a間にはローラ3の軸線方向にわずかな隙間が空けられている。
【0022】
図2の断面図に示すように、軌道レール1のローラ転走面1bと移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dとの間には、二列の複数のローラ3が介在される。二列の複数のローラ3は、ローラ転走面1bと負荷ローラ転走面2dとの間で圧縮荷重を受けている。軌道レ−ル1に対して移動ブロック本体4が相対的に移動すると、二列の複数のローラ3が負荷ローラ転走路7(ローラ転走面と負荷ローラ転走面2dとの間)で荷重を受けながら転がり運動する。移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dの一端まで転がったローラ3は、図3に示すように、エンドプレート5内に掬い上げられ、U字状の方向転換路6(内側方向転換路6−1及び外側方向転換路6−2)を経由した後、無負荷戻し路8に入る。移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dは、移動ブロック本体4の左右の側壁部2bそれぞれに上下二条設けられる。無負荷戻し路8は、移動ブロック本体4の左右の側壁部2bそれぞれに上下二条設けられる。内側方向転換路6−1は上側の負荷ローラ転走面2dと下側の無負荷戻し路8を接続し、外側方向転換路6−2は、下側の負荷ローラ転走面2dと上側の無負荷戻し路8を接続する。
【0023】
方向転換路6及び無負荷戻し路8内では、ローラ3の周囲には隙間が空き、ローラ3は無負荷状態になる。このため、ローラ3は後続のローラ3に押されながら移動する。無負荷戻し路8を通過したローラ3は、反対側の方向転換路6を経由した後、再び負荷ローラ転走路7に入る。これら負荷ローラ転走路7、方向転換路6及び無負荷戻し路8でサーキット状のローラ循環路が形成される。
【0024】
図4はローラ転走面1bと負荷ローラ転走面2dとの間に介在されるローラ3の詳細図を示す。ローラ3には円筒ローラが用いられる。ローラ3の側面(外周面)には、クラウニングが施されておらず、完全にストレートに形成されている。ローラ転走面1b及び負荷ローラ転走面2dにも、クラウニングが施されておらず、断面図において完全にストレートに形成されている。ローラ3の端面は平面に形成され、ローラ3の端面と側面との接続部分となる角には、円弧状の面取りが施される。ローラ3は面取りを除いたローラの外周面がローラ転走面1b及び負荷ローラ転走面2dに接触する。
【0025】
従来の運動案内装置においては、スキューを防止するために、ローラ自体やローラ転走面及び負荷ローラ転走面にクラウニングを施していた。しかし、クラウニングを施すには三次元的な加工が必要になるので、ローラや転走面に加工誤差やばらつきといった新たな問題が付加されてしまう。ローラ3にクラウニングの施されない円筒ローラを使用し、転走面1b,2dの断面をストレートに形成することにより、三次元的な加工を施す必要がなくなり、ローラ3及び転走面1b,2dを安定して高精度に製作でき、加工工数を削減化することができる。ここで、ローラ3の直径をD、長さ(端面から端面までの距離)をLとしたとき、L/D≦1に設定される。ローラ3の比をこのように設定した理由については後述する。なお、ローラ3の端面は球面の一部の形状に形成されてもよい。その場合のローラ3の長さは、球面まで含めたローラ3の全長となる。
【0026】
負荷ローラ転走面2dの幅方向の両端部には、二列の複数のローラ3の最も外側の端面3bに接触可能な一対の金属製の端部突当て壁31が形成される。端部突当て壁31は、負荷ローラ転走面2dと一体であり、負荷ローラ転走面2dの長手方向に伸びる。各列のローラ3a間には突当て壁は設けられていない。ローラ3の外側の端面3bには、移動ブロック本体4に組み込まれる保持部材11,13も接触可能である。
【0027】
図5は、突当て壁の他の例を示す。この例では、移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dには、各列の間に、二列の複数のローラ3の対向する端面3cに接触可能な金属製の中央部突当て壁32が形成される。中央部突当て壁32は、負荷ローラ転走面2dと一体であり、負荷ローラ転走面2dに沿って長手方向に伸びる。この例では、負荷ローラ転走面2dの幅方向の両端部には、端部突当て壁31(図4参照)は形成されていない。
【0028】
図6は、負荷ローラ転走面2dに端部突当て壁31と中央部突当て壁32を形成した例を示す。移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dには、その幅方向の両端部に、二列の複数のローラ3の最も外側の端面3bに接触可能な一対の金属製の端部突当て壁31が形成されると共に、各列のローラ3aの間に、二列の複数のローラ3の対向する端面3cに接触可能な金属製の中央部突当て壁32が形成される。各列の複数のローラ3aは中央部突当て壁32と端部突当て壁31との間に挟まれる。
【0029】
図8は、従来の一列のローラと本発明の二列のローラとで、ローラに発生する応力分布を比較したものである。運動案内装置の取付け誤差(例えば二本の軌道レ−ル1の平行度が狂う)があったり、運動案内装置の移動ブロック2にモーメント荷重が作用したりする(図7参照)とき、移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dが軌道レ−ル1のローラ転走面1bに対して傾く。そのとき、ローラには図8(a)に示すような応力分布が発生する。ローラの一方の端部の応力σ1と他方の端部の応力σ2の差が大きいと、弾性変形量にも差が出る。弾性変形量に差があればあるほどスキューが起こり易くなる。図8(b)に示すようにローラ3を複列化することにより、応力の差をσ1−σ2からσ1´−σ2´又はσ3´−σ4´に小さくすることができる。一列当りのローラ3の応力分布の差を小さくできるので、スキューを起こしにくくなる。特にL/D≦1のローラを使用すると、ローラ3の形状自体もスキューを起こしにくい形状になるので、よりスキューが起こりにくくなる。ローラ3のL/Dとスキューとの関係については、後述する。
【0030】
運動案内装置の定格荷重は、ローラ3とローラ転走面1b(又は負荷ローラ転走面2d)との接触長さによって決定される。ローラ3を複列化してもローラ3の長さの合算値であるA+A=2Aを単列ローラRの長さBにほぼ等しくすれば、運動案内装置の定格荷重を落とさないことができる。
【0031】
図4〜6に示すように、ローラ3を複列化することにより、ローラ3の端面に接触する突当て壁31,32を形成することも可能になる。ローラ3を正規の軌道に沿って転がすためには、ローラ3の両端面を突当て壁31,32で案内し、スキューが起きたローラ3を矯正する必要がある。しかし、従来の一般的な運動案内装置においては、突当て壁31,32を形成することは行われていない。突当て壁31,32を形成すると負荷ローラ転走面2dの研削加工が困難になるというのが理由の一つではある。しかし、それ以上にローラ3の長さLが大きいと、ローラ3にスキューが起きたとき、ローラ3が突当て壁31,32に擦れながら強い力で突当て壁31,32を押すので、突当て壁31,32が変形したり、ローラ3がロックしたりする(かじりや焼付きといった問題を起こす)というのが理由にあった。図9に示すように、ローラ3が進行方向に対してスキュー角θ傾いたとき、ローラ3の端面が突当て壁31,32を変形させる量はl/2・tanθで与えられる。この値が大きいと、ローラ3が突当て壁31,32を押す力も大きくなり、上述の問題を起こす。複列化してローラ3の長さLを短くすることにより、ローラ3が突当て壁を押す力も小さくなるので、突当て壁31,32の強度も確保することができる。
【0032】
図6に示すように、突当て壁31,32は、ローラ3の両端面に接触できるようにするのが理想である。ローラ3を正規の軌道に沿って転がすことができるからである。ただし、ローラ3はリテーナ10によって所定の位置に保持されているので、リテーナ10が、無負荷戻し路8から負荷ローラ転走面2dに入るローラ3が突当て壁31,32にひっかかるのを防止する。このため、図4及び図5に示すように、突当て壁31,32の一方のみを設け、突当て壁31,32の一方のみがローラ3に接触するようにしてもよい。
【0033】
図10は、複数のローラ3をリテーナ10に保持した状態を示す。二列の複数のローラ3は、単一の樹脂性のリテーナ10に保持されている。リテーナ10は、各列の複数のローラ3aの間に介在され、ローラ3a同士が接触するのを防止する複数のスペーサ10aと、二列の複数のローラ3の最も外側の端部で複数のスペーサ10aを繋ぐ一対の可撓性のベルト10bと、各列の複数のローラ3aの間で複数のスペーサを繋ぐ可撓性の中央ベルト10cと、を備える。複数のスペーサ10aそれぞれの長さはローラ3の長さにほぼ等しく、その進行方向の両端部には、ローラ3に対応する曲面状凹部が形成される。一対のベルト10bは、ローラ3の軸線方向の端面よりも外方に張り出していて、ローラ循環路に形成した案内溝によって案内される(図4参照)。図10(b)の平面図及び図10(c)の側面図に示すように、各列の複数のローラ3aのピッチP及び位相は、二列の間で同一である。
【0034】
二列の複数のローラ3をリテーナ10に保持させることで、ローラ3の整列案内が可能になる。また、ローラ3はリテーナ10の伸縮性を利用して軸線方向及び進行方向に自由に動ける状態にある。このため、一つのローラ3にスキューが起こったとしても、他のローラ3にスキューが伝わりにくくなっている。さらに、各列のローラ3aの間でローラの進み遅れ(移動量の差)はたとえ生じたとしてもわずかである。一つのリテーナ10で二列の複数のローラ3を保持したとしても、リテーナ10の弾性変形量で各列のローラ3aの進み遅れを吸収することができる。
【0035】
図11は、リテーナ10の他の例を示す。この例では、各列の複数のローラ3aのピッチPが二列間で同一であり、各列の複数のローラ3aの位相がピッチの1/2だけずれている。複数のスペーサ10a、一対の可撓性のベルト10b、及び中央ベルト10cの構成は、上記図10に示すリテーナ10と同一であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。二列の複数のローラ3をこの例のように千鳥配置することで、ローラ3を円滑に循環させることができる。
【0036】
図12は、リテーナ10のさらに他の例を示す。この例では、各列の複数のローラ3aの対向する端面を接触させ、二列のローラを一列のローラのように見立てた状態で、二列の複数のローラ3をリテーナ10に保持させている。リテーナ10は、二列の複数のローラ3の列方向に介在される複数のスペーサ10aと、二列の複数のローラ3の最も外側の端部で複数のスペーサ10aを繋ぐ一対の可撓性のベルト10bと、を備える。
【0037】
図13は、リテーナのさらに他の例を示す。この例では、二列の複数のローラ3は列数に応じた二つのリテーナ10に列方向に一定の間隔を空けた状態で保持される。各リテーナ10は、各列の列方向の複数のローラ3a間に介在され、ローラ3a同士が接触するのを防止する複数のスペーサ10aと、各列の複数のローラ3aの軸線方向の端部で複数のスペーサ10aを繋ぐ可撓性のベルト10bと、を有する。この例によれば、各リテーナ10は互いに分離されているので、各列の複数のローラ3aは他の列の複数のローラ3aの影響を受けない。このため、一方の列のローラ3aにスキューが起きても他方の列のローラ3aに影響が及ぶのを防止できる。
【0038】
図1に示すように、移動ブロック本体4の負荷ローラ転走面2dの両側縁には、長尺の保持部材11,12,13が取り付けられる。樹脂製の保持部材11,12,13には、軌道レ−ル1から移動ブロック2を外した際に負荷ローラ転走面2dからローラ3が脱落するのを防止できるよう、リテーナ10を案内する案内溝が形成されている。軌道レール1の底面を水平面に配置した状態(図1に示される状態)において、第1保持部材11は、下側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の下側を案内する(図2参照)。第2保持部材12は、下側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の上側を案内すると共に、上側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の下側を案内する。第3保持部材13は、上側のローラ転走面2dを移動するリテーナ10の上側を案内する。
【0039】
移動ブロック本体4の側壁部2bには、上下2条の負荷ローラ転走面2dから所定間隔を隔てて平行に伸びる貫通孔14が空けられる。この貫通孔14に無負荷戻し路8を構成する無負荷戻し路構成部材15が挿入される。無負荷戻し路構成部材15は、細長のパイプ形状の部材を軸線方向に沿って2分割した一対のパイプ半体からなる。無負荷戻し路構成部材15には無負荷戻し路8が形成されると共に、リテーナ10のベルト10bを案内する案内溝が形勢される。無負荷戻し路構成部材15は、その両端がエンドプレート5に支持される。
【0040】
図14はエンドプレート5の斜視図を示す。エンドプレート5は、移動ブロック本体4と断面形状を合わせていて、水平部5aと側壁部5bとを備えている(図1参照)。側壁部5bには、深さが深い外側方向転換路の外周側18及び深さが浅い内側方向転換路の外周側19が立体交差するように形成される。外側方向転換路の外周側18と内側方向転換路の外周側19は互いに直交する。浅く形成される内側方向転換路の外周側19は、深く形成される外側方向転換路の外周側18によって中央部分が分断される。またエンドプレート5の外側方向転換路の外周側18には、外側方向転換路を通過するリテーナ10の外周側を案内する案内部18aが形成される。エンドプレート5の端面には、移動ブロック本体4に対してエンドプレート5を位置決めするための位置決め凸部20が形成され、保持部材11,12,13を位置決めするための位置決め凹部21,22,23が形成される。
【0041】
図15は、エンドプレート5に組み込まれる内外方向転換路構成部材24を示す。内外方向転換路構成部材24は全体形状が側溝のような形状に形成される。この内外方向転換路構成部材24は、エンドプレート5に形成された方向転換路の外周側18に嵌め込まれる。内外方向転換路構成部材24の外側には、外側方向転換路の内周側25が形成され、内側には、エンドプレート5に形成された内側方向転換路の外周側19と一緒に内側方向転換路の外周側を構成する内側方向転換路の外周側26が形成される。エンドプレート5に形成される外側方向転換路の外周側18と、内外方向転換路構成部材24に形成される外側方向転換路の内周側25とで外側方向転換路が構成される。また内外方向転換路構成部材24をエンドプレートに嵌め込むと、エンドプレート5に形成された内側方向転換路の外周側19の分断された部分に内外方向転換路構成部材24に形成された内側方向転換路の外周側26が嵌まり込み、これにより内側方向転換路の外周側の全体が形成される。また内外方向転換路構成部材24には、外側方向転換路の内周側25に沿って、外側方向転換路を通過するリテーナ10の内周側を案内する案内部25aが形成される。
【0042】
図16は、内側方向転換路の内周側を構成する内側方向転換路構成部材30を示す。内側方向転換路構成部材30は半円柱形状に形成され、その外周面に内側方向転換路の内周側30aが形成される。エンドプレート5に内外方向転換路構成部材24を嵌め込んだ後、この内側方向転換路構成部材30をエンドプレート5に嵌め込む。内側方向転換路の内周側30aの両脇には、内側方向転換路を通過するリテーナ10の内周側を案内する案内部30bが形成される。
【0043】
ローラをL/D≦1に設定した意義は以下のとおりである。図17に示すモデルを用い、ローラ3に荷重Qが作用したときのローラ3の接触部に働く面圧を解析した。
【0044】
ローラ3に働く荷重は以下の式から算出した。
【数1】
Q:荷重、Da:ローラの直径、l:ローラの長さ、1/m=0.3:ポアソン比である。
【0045】
この図17に示すように、ローラ3に荷重Qを作用させたとき、ローラ3の中央部に働く面圧σminに比べてローラ3の端部で働く面圧σmaxが高くなる。この面圧比σmax/σminが大きくなればなるほど、ローラ3の軸線方向の中央部での弾性変形量と端部での弾性変形量の差が大きくなり、スキューを起こしやすくなる。
【0046】
次に、図18に示すように、TypeA→TypeB→TypeCと順次ローラ3の軸線方向の長さLを長くし、L/Dの値も変化させて、接触部の面圧を解析した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
L/Dの値が変化すると、面圧比σmax/σminが変化することがわかったので、さらにローラ3の接触部長さをさまざまに変化させて、接触部に働く面圧を計算した。その結果を図19に示す。そして、計算結果から、L/Dと面圧σmax,σminの関係をグラフにまとめた。図20は、L/Dと面圧σmax,σminの関係を表し、図21は、L/Dと面圧比σmax/σminの関係を表す。図21に示すように、L/Dが1以下になると、面圧比σmax/σminが急激に低減し、面圧σmaxのσmin差も小さくなることがわかった。σmax/σminが低減することは、スキューが起こりにくくなることを意味する。L/Dを1以下にすることで、もともとスキューの起こりにくいローラになることがわかる。L/Dを0.5以下にすることで、よりスキューが起こりにくくなることがわかる。
【0049】
図22は、本発明の一実施形態におけるローラねじの斜視図を示す。ローラねじは、外周面に螺旋状のローラ転走面51aが形成されるねじ軸51と、内周面にローラ転走面51aに対向する螺旋状の負荷ローラ転走面52aが形成されるナット52とを備える。
【0050】
ねじ軸51は、炭素鋼、クロム鋼、又はステンレス鋼などの棒鋼の外周面に、所定のリードを有する螺旋状のローラ転走面51aを切削及び研削加工又は転造加工によって形成したものである。ローラ転走面51aの断面は、V字形状でその開き角度は約90度である(図24参照)。この実施形態では、ねじ軸51の外周面に、二条のローラ転走面51aが形成される。そして、二条のローラ転走面51aそれぞれに複数のローラ54がパラレル配列(複数のローラの軸線が平行になる配列)される。もちろん、ローラねじの条数は、一条、二条、三条などローラねじの用途によって適宜決定される。
【0051】
図23は、ナット52の斜視図を示す。ナット52は、炭素鋼、クロム鋼、又はステンレス鋼などの円筒の内周面に、所定のリードを有する螺旋状の負荷ローラ転走面52aを切削及び研削加工又は転造加工によって形成したものである。負荷ローラ転走面52aの断面は、V字形状でその開き角度は約90度である。ナット52の外周の軸線方向の端部には、ナット52を相手部品に取り付けるためのフランジ52bが形成される。
【0052】
図24は、ねじ軸51のローラ転走面51aとナット52の負荷ローラ転走面52aとの間に挟まれる二列のローラ54を示す。二列のローラ54は円筒形状で、軸線54bを一致させた状態に積み重ねられる。側面からみた二列のローラ54の形状は、正方形に近くなる。ローラ54は、円筒形の側面54cと、一対の端面54aと、側面54cと端面54aとの間に形成される面取り部54dと、を備える。二列のローラ54の側面54cは、ねじ軸51のローラ転走面51a及びナット52の負荷ローラ転走面52aに接触する。
【0053】
図25は、ナット52に取り付けられる循環部材53とねじ軸51との位置関係を示す。二条のローラ転走面51aを移動するローラ54を循環させるために、循環部材53は二組設けられる。循環部材53は、ナット52の軸線方向に伸びる貫通孔に挿入される循環パイプ58と、循環パイプ58の軸線方向の端部に取り付けられる一対の方向転換路構成部材62と、を備える。循環部材53には、負荷ローラ転走路の一端と他端とを接続する無負荷戻し通路が形成される。無負荷戻し通路は、循環パイプ58に形成され、ナット52の中心線と平行に直線的に伸びる直線通路と、直線通路の両端に接続され、一対の方向転換路構成部材62に形成される曲線状の一対の方向転換路と、から構成される。負荷ローラ転走路の一端まで転がったローラ54は、循環部材53の方向転換路内に導かれ、直線通路を経由した後、残りの方向転換路から再び負荷ローラ転走路の他端に戻される。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施形態の運動案内装置においては、軌道レ−ルの左右側面にV字状の凹みを形成し、移動ブロックに凹み内に突出するV字状の突出部を形成し、軌道レールの凹みの一対の上下壁面にローラ転走路を形成する所謂DB構造の運動案内装置を示している。しかし、本発明は、図26に示すように、軌道レ−ル1の左右側面にV字状の突出部61を形成し、移動ブロックにV字状の突出部に対応するV字状の凹みを形成し、軌道レ−ル1の突出部61の一対の上下壁面にローラ転走面63が形成される所謂DF構造の運動案内装置に適用することもできる。
【0055】
また、ローラ循環路の一条当り、三列、四列のローラを配列することもできる。ローラにクラウニングを施したクラウニングローラを用いてもよいし、転走面の断面をクラウニング転走面にしてもよい。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、移動ブロックが直線的に運動する運動案内装置について説明したが、本発明はローラスプラインや曲線運動を案内する曲線運動案内装置にも適用することもできる。
【0057】
さらに、上記実施形態においては、移動ブロックを軌道レールから取り外したとき、リテーナは複数のローラが脱落しないように保持しているが、ローラ循環路で一定の間隔でローラを保持することができれば、移動ブロックを軌道レールから取り外したとき、複数のローラがリテーナから脱落してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…軌道レール(軌道部材),1b…ローラ転走面,2d…負荷ローラ転走面,2…移動ブロック(移動部材),3…ローラ,3a…各列のローラ,3b…二列の複数のローラの最も外側の端面,3c…二列の複数のローラの対向する端面,6−1…外側方向転換路(方向転換路),6−2…内側方向転換路(方向転換路),7…負荷ローラ転走路,8…無負荷戻し路,10…リテーナ(保持器),10a…スペーサ,10b…ベルト,31…端部突当て壁,32…中央部突当て壁,51…ねじ軸,51a…ローラ転走面,52…ナット,52a…負荷ローラ転走面,53…循環部材,54…二列の複数のローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸びる複数条のローラ転走面を有する軌道部材と、
前記複数条のローラ転走面に対向する複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の負荷ローラ転走面と平行に伸びる複数条の無負荷戻し路、及び前記複数条の負荷ローラ転走面と前記複数条の無負荷戻し路を接続する複数の方向転換路を有する移動部材と、
前記複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の無負荷戻し路及び前記複数の方向転換路から構成される複数のローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、
前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、
前記軌道部材に対して前記移動部材を前記軌道部材の長手方向に相対的に移動させると、前記二列以上の複数のローラが、前記軌道部材のローラ転走面と前記移動部材の負荷ローラ転走面との間を転がり運動する運動案内装置。
【請求項2】
ローラの直径をD、長さをLとしたとき、前記複数のローラそれぞれは、L/D≦1であることを特徴とする請求項1に運動案内装置。
【請求項3】
前記軌道部材のローラ転走面及び前記移動部材の負荷ローラ転走面の少なくとも一方には、その幅方向の両端部に、前記二列以上の複数のローラの最も外側の端面に接触可能な一対の金属製の端部突当て壁が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記軌道部材のローラ転走面及び前記移動部材の負荷ローラ転走面の少なくとも一方には、各列の間に、前記二列以上の複数のローラの対向する端面に接触可能な金属製の中央部突当て壁が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記軌道部材のローラ転走面及び前記移動部材の負荷ローラ転走面の少なくとも一方には、その幅方向の両端部に、前記二列以上の複数のローラの最も外側の端面に接触可能な一対の金属製の端部突当て壁が形成されると共に、各列の間に、前記二列以上の複数のローラの対向する端面に接触可能な金属製の中央部突当て壁が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項6】
前記二列以上の複数のローラは、単一の樹脂製の保持器に列方向に一定の間隔を空けて保持され、
前記単一の保持器は、各列の複数のローラの間に介在され、ローラ同士が接触するのを防止する複数のスペーサと、前記二列以上の複数のローラの最も外側の端部で前記複数のスペーサを繋ぐ可撓性のベルトと、を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項7】
前記二列以上の複数のローラは、列数に応じた数の樹脂製の保持器に列方向に一定の間隔を空けた状態に保持され、
各保持器は、各列の複数のローラ間に介在され、ローラ同士が接触するのを防止する複数のスペーサと、前記各列の複数のローラの軸線方向の端部で前記複数のスペーサを繋ぐ可撓性のベルトと、を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項8】
各列の複数のローラのピッチ及び位相が、二以上の列の間で同一であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項9】
各列の複数のローラのピッチが、二以上の列の間で同一であり、
各列の複数のローラの位相が、二以上の列の間で前記ピッチの1/nずれていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の運動案内装置。ただし、nは列数。
【請求項10】
外周面に螺旋状のローラ転走面を有するねじ軸と、
内周面に前記ねじ軸の前記ローラ転走面に対向する螺旋状の負荷ローラ転走面を有するナットと、
螺旋状の前記負荷ローラ転走面の一端と他端とを接続する無負荷戻し路を有する循環部材と、
前記ナットの前記負荷ローラ転走面、及び前記無負荷戻し路から構成されるローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、
前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、
前記ねじ軸に対して前記ナットを相対的に回転させると、前記二列以上の複数のローラが、前記ねじ軸のローラ転走面と前記ナットの負荷ローラ転走面との間を転がり運動するローラねじ。
【請求項1】
長手方向に伸びる複数条のローラ転走面を有する軌道部材と、
前記複数条のローラ転走面に対向する複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の負荷ローラ転走面と平行に伸びる複数条の無負荷戻し路、及び前記複数条の負荷ローラ転走面と前記複数条の無負荷戻し路を接続する複数の方向転換路を有する移動部材と、
前記複数条の負荷ローラ転走面、前記複数条の無負荷戻し路及び前記複数の方向転換路から構成される複数のローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、
前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、
前記軌道部材に対して前記移動部材を前記軌道部材の長手方向に相対的に移動させると、前記二列以上の複数のローラが、前記軌道部材のローラ転走面と前記移動部材の負荷ローラ転走面との間を転がり運動する運動案内装置。
【請求項2】
ローラの直径をD、長さをLとしたとき、前記複数のローラそれぞれは、L/D≦1であることを特徴とする請求項1に運動案内装置。
【請求項3】
前記軌道部材のローラ転走面及び前記移動部材の負荷ローラ転走面の少なくとも一方には、その幅方向の両端部に、前記二列以上の複数のローラの最も外側の端面に接触可能な一対の金属製の端部突当て壁が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記軌道部材のローラ転走面及び前記移動部材の負荷ローラ転走面の少なくとも一方には、各列の間に、前記二列以上の複数のローラの対向する端面に接触可能な金属製の中央部突当て壁が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記軌道部材のローラ転走面及び前記移動部材の負荷ローラ転走面の少なくとも一方には、その幅方向の両端部に、前記二列以上の複数のローラの最も外側の端面に接触可能な一対の金属製の端部突当て壁が形成されると共に、各列の間に、前記二列以上の複数のローラの対向する端面に接触可能な金属製の中央部突当て壁が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項6】
前記二列以上の複数のローラは、単一の樹脂製の保持器に列方向に一定の間隔を空けて保持され、
前記単一の保持器は、各列の複数のローラの間に介在され、ローラ同士が接触するのを防止する複数のスペーサと、前記二列以上の複数のローラの最も外側の端部で前記複数のスペーサを繋ぐ可撓性のベルトと、を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項7】
前記二列以上の複数のローラは、列数に応じた数の樹脂製の保持器に列方向に一定の間隔を空けた状態に保持され、
各保持器は、各列の複数のローラ間に介在され、ローラ同士が接触するのを防止する複数のスペーサと、前記各列の複数のローラの軸線方向の端部で前記複数のスペーサを繋ぐ可撓性のベルトと、を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項8】
各列の複数のローラのピッチ及び位相が、二以上の列の間で同一であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項9】
各列の複数のローラのピッチが、二以上の列の間で同一であり、
各列の複数のローラの位相が、二以上の列の間で前記ピッチの1/nずれていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の運動案内装置。ただし、nは列数。
【請求項10】
外周面に螺旋状のローラ転走面を有するねじ軸と、
内周面に前記ねじ軸の前記ローラ転走面に対向する螺旋状の負荷ローラ転走面を有するナットと、
螺旋状の前記負荷ローラ転走面の一端と他端とを接続する無負荷戻し路を有する循環部材と、
前記ナットの前記負荷ローラ転走面、及び前記無負荷戻し路から構成されるローラ循環路に配列される複数のローラと、を備え、
前記複数条のローラ循環路の少なくとも一条のローラ循環路には、一条当り二列以上の複数のローラが配列され、
前記ねじ軸に対して前記ナットを相対的に回転させると、前記二列以上の複数のローラが、前記ねじ軸のローラ転走面と前記ナットの負荷ローラ転走面との間を転がり運動するローラねじ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−112069(P2011−112069A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266342(P2009−266342)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
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