説明

道路ネットワーク整備装置

【課題】 最低基準以下の道路に沿って目的地が設定される可能性を考慮し、必要最低限度の道路網を地図データとして採用することができる道路ネットワーク整備装置を提供する。
【解決手段】 格上げ手段は、格上げの候補である候補道路について格上げするか否かを決定する。まず、候補道路の周辺に存在する地物を地図情報記憶手段から検索する(ステップS41)。そして、候補道路に沿って地物が存在するか否かを判定する(ステップS42)。候補道路と地物との距離が一定距離(例えば10m)以内である場合に、格上げ手段は、候補道路からアクセスする地物が存在していると判断してこの候補道路を格上げの対象とする(ステップS43)。一方、候補道路から一定距離以内に地物が検索されなかった場合には、当該候補道路については格上げ対象から除外される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路網を表現した道路ネットワーク上に設定された出発地から目的地までに至る推奨ルートを探索し、該推奨ルートを案内するカーナビゲーションに用いられる道路ネットワークを整備する道路ネットワーク整備装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション用の道路地図として採用される主要道路は、一般的に舗装されておりかつ道路幅が数m(例えば、6m)以上の車両走行に適した道路である。しかし、主要道路とはいえない最低基準以下の道路であっても、その道路に沿って民家など経路探索時の目的地となり得る地物が存在する場合がある。
このような最低基準以下の道路に沿って目的地が設定された場合であってもその目的地に最適な到着地を案内する技術が知られている。例えば、特許文献1には、主要道路と最低基準以下の道路とが接続される位置を最終到着地として案内する技術が開示されている。また、特許文献2には、広大な駐車場内の所定目的地に最も近い駐車場入り口を案内する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−74681号公報
【特許文献2】特開2003−42787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうした従来の技術では、あくまでも最低基準以下の道路や近い駐車場入り口を案内できるのが限度であって、最低基準以下の道路へ進入する経路を案内できるものではない。
一方、最低基準以下の道路をすべて主要道路に含めて地図データとして採用した場合、その地図データは膨大、かつ、複雑となる。加えて、地図データを記憶する容量が無用に増大し、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索処理ではこれらすべての道路を考慮する必要があるため複雑な処理が必要となる。
本発明は、こうした従来技術の問題点を解決するためになされた発明である。すなわち、本発明の目的は、最低基準以下の道路に沿って目的地が設定される可能性を考慮し、必要最低限度の道路網を地図データ(道路ネットワークデータ)として採用することができる道路ネットワーク整備装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、道路網を表現した道路ネットワーク上に設定された出発地から目的地までに至る推奨ルートを探索し、該推奨ルートを案内するカーナビゲーションに用いられる道路ネットワークを整備する道路ネットワーク整備装置であって、自動車の走行に適した道路網を含み、自動車の通行可能なその他の道路網までの形状および接続関係を表現する道路ネットワーク情報と、建造物などの形状や位置を表現する地物情報とを記憶している地図情報記憶手段と、該地図情報記憶手段に記憶されている道路ネットワーク情報から、前記道路ネットワークとして採用されていない道路で、かつ、その一端が前記道路ネットワークとして採用されている道路に接続している格上げ候補道路を選出する道路選出手段と、該道路選出手段により選出された候補道路に沿って前記地物が存在するとき、その候補道路を前記道路ネットワークとして格上げする格上げ手段とを備えることを特徴とする。
なお、上述した特徴は、本発明の特徴のすべてを列挙したものではなく、これらを要部とする構成や方法もまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、最低基準以下の道路に沿って存在する、一般住宅や店舗等の目的地までの的確な案内が可能となる必要最低限度の道路網を地図データとして採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】道路ネットワーク整備装置の構成図。
【図2】道路ネットワークデータの説明図。
【図3】道路ネットワーク整備処理のフローチャート
【図4】格上げ処理のフローチャート
【図5】格上げ処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例)
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。
本実施例における道路ネットワーク整備装置11は、道路網を表現した道路ネットワーク上に設定された出発地から目的地までに至る推奨ルートを探索するとともにその推奨ルートを案内するカーナビゲーションに用いられる道路ネットワークを生成する際に用いられる装置である。
図1に示すように、道路ネットワーク整備装置11は、地図情報記憶手段12と、道路選出手段13と、格上げ手段14と、データ書込み手段15とを備える。
【0009】
地図情報記憶手段12は、データの読み出しおよび書き込みが可能な大容量のハードディスクである。当該地図情報記憶手段12には、道路ネットワーク情報と地物情報とが記憶されている。
道路ネットワーク情報には、図2に示すように、自動車の走行に適した道路網21(例えば道路幅が6m以上)に対応する道路ネットワーク(リンク22およびノード23等)が含まれている。また、道路ネットワーク情報には、自動車の走行に適していない道路網24(例えば道路幅が6m未満)に対応する道路ネットワーク(リンク25等)も含まれている。なお、これらの道路ネットワーク情報は、所定の領域を格子状のメッシュで区切った区画単位で管理されている。
【0010】
この道路ネットワーク情報には、自動車が通行可能なその他の道路網までの形状および接続関係に関する情報が含まれている。具体的には、道路ネットワーク情報を構成するリンク(道路に対応)には、当該リンクの属性等を表す各種属性情報が付与されている。属性情報としては、リンクを特定する固有のID番号、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端および終端に存在するノードの緯度・経度座標、リンクを構成する複数の構成点の緯度・経度座標、道路名称、道路種別、道路幅員、一方通行、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、および制限速度等がある。また、道路ネットワーク情報を構成するノード(交差点に対応)は、当該ノードに対応する交差点の位置を表わす位置情報や、接続するリンクを特定するためのID番号を属性情報として有している。
【0011】
地物情報には、建造物などの地物26(図2参照)の形状を表現するための構成点の位置情報や、存在する代表点の位置(緯度・経度)を認識するための位置情報などが含まれている。
道路選出手段13は、地図情報記憶手段12に記憶されている道路ネットワーク情報から、経路探索用の道路ネットワークとして採用されていない道路で、かつ、その一端が道路ネットワークとして採用されている道路に直接的又は間接的に接続されている道路を格上げする候補道路として選出する機能を有する。
【0012】
格上げ手段14は、道路選出手段13によって選出された候補道路に沿って目的地となり得る地物が存在するときに、その候補道路に対応するリンクやノードを道路ネットワークとして格上げする機能を有する。換言すると、本来であれば道路ネットワークとして採用されないような、自動車の走行に適していない道路であったとしても、一定の条件を満たすことで経路探索の対象とするべく当該道路に対応するリンクやノードを道路ネットワークとして採用するのである。
データ書込み手段15は、自動車の走行に適した道路の道路ネットワークデータおよび格上げ手段14で格上げされた道路ネットワークデータが含まれる、新たに生成された道路ネットワーク情報を地図情報記憶手段12に書き込む機能を有する。
【0013】
次に、上述した道路ネットワーク整備装置11を用いて道路ネットワークを整備する方法について説明する。
図3に示すように、まず、道路ネットワーク整備装置11は、特定の領域に対応する1つのメッシュに含まれる道路ネットワーク情報を地図情報記憶手段12から読み出して、道路ネットワーク整備装置11が備える図示しない一時記憶領域(メモリ)に書き込む(ステップS31)。
【0014】
次に、道路選出手段13は、道路ネットワーク情報の中から自動車の走行に適した道路網に対応する道路ネットワークデータを選出する(ステップS32)。具体的に、道路選出手段13は、道路ネットワーク情報を構成する道路ネットワークデータにおけるリンクの属性情報から道路幅員情報を読み出して、道路幅員が6m以上の道路に対応するリンクについてはすべて自動車の走行に適した道路であると判断して選出する。さらに、道路選出手段13は、当該自動車の走行に適した道路が接続している交差点に対応するノードについても選出する。
【0015】
また、道路選出手段13は、自動車の走行に適した道路として選出されていない道路のうち、自動車の走行に適した道路と同様に道路ネットワークを整備する対象として格上げ候補となる道路に対応する道路ネットワークデータを選出する(ステップS33)。具体的に、道路選出手段13は、道路幅員が6m未満の道路であって、当該道路の一端が自動車の走行に適した道路として選出されている道路に直接的又は間接的に接続されている格上げ候補となる候補道路に対応する道路ネットワークデータを選出する。例えば、道路の両端に車止めが存在している道路や、道路幅員が2m未満であって歩行者や自転車しか通行することができないことが明らかな道路に対応する道路ネットワークデータについては、ここでの選出処理の対象からは除外されることになる。
【0016】
次に、格上げ手段14は、道路選出手段13により選出された格上げ候補となる道路に沿って地物が存在するとき、その候補となる道路を自動車の走行に適した道路として格上げする格上げ処理を実行する(ステップS34)。この格上げ処理の詳細については後述する。
そして、データ書込み手段15は、道路選出手段13によって選出された自動車の走行に適した道路網に対応する道路ネットワークデータと、格上げ手段14によって格上げされた道路網に対応する道路ネットワークデータ群とを、新たに生成された道路ネットワーク情報として地図情報記憶手段12に書き込む(ステップS35)。
【0017】
次に、格上げ処理(ステップS34)について説明する。
図4に示すように、格上げ手段14は、道路選出手段13により選出された格上げ候補道路について、1つずつ格上げするか否かを決定していく。まず、格上げ手段14は、図5に示すように、何れか1つの候補道路51に着目する。この候補道路51は、その一端側が自動車の走行に適した道幅の広い道路52に直接的に接続されている一方で、他端側は行き止まりであるか若しくは車止めが存在している。そして、当該候補道路51に対応するリンク53は、ノード54を介して道路52に対応するリンク55と接続されている。リンク53の他端は行き止まり又は車止めの存在を表わす端点ノード56に接続されている。
【0018】
そして、格上げ手段14は、候補道路51の周辺に存在する地物57に関する地物情報を地図情報記憶手段12から検索する(ステップS41)。具体的に、格上げ手段14は、候補道路51に対応するリンク53における図示しない複数の構成点から一定距離(例えば20m)以内に代表点58が存在している地物57の地物情報を検索する。なお、構成点が存在しないリンクについては、当該リンクを含む所定の矩形状をなす仮想領域を形成して、その仮想領域内に含まれる地物57を検索するようにしてもよい。
【0019】
次に、格上げ手段14は、候補道路51に沿って地物が存在するか否かを判定する(ステップS42)。具体的に、格上げ手段14は、地物情報の属性情報から代表点58の位置情報を読み出して、当該代表点58の位置(緯度・経度)からリンク53に垂線を引くとともに、その垂線の長さに相当する距離を算出する。そして、その距離が一定距離(例えば10m)以内である場合に、格上げ手段14は、リンク53に対応する候補道路51には、当該候補道路51からアクセスする地物が存在していると判断してこの候補道路51を格上げの対象とする(ステップS43)。一方、候補道路51から一定距離以内に地物57が検索されなかった場合には、当該候補道路51については格上げ対象から除外される。
【0020】
次に、道路ネットワーク整備装置11は、すべての候補道路について格上げ判定を実行したか否かを確認する(ステップS44)。すべての候補道路について格上げ判定を実行した場合には、格上げ処理を終了する。一方、格上げ判定が実行されていない候補道路が存在する場合には、道路ネットワーク整備装置11は、当該候補道路について格上げ判定を継続する。
以上の処理は、地図情報記憶手段12に記憶されているすべての道路ネットワーク情報について実行される。
【0021】
以上説明したとおり、本実施例における道路ネットワーク整備装置11を用いることで、従来は道路ネットワークとして採用されていない道路のうち、経路探索時に目的地が設定される可能性のある施設にアクセスしている必要最低限の道路について道路ネットワークデータとして採用することができる。
【0022】
(変形例)
以下、本実施例の変形例について説明する。
・上記実施例において、格上げ手段14が候補道路51に沿って地物が存在するか否かを判定する処理においては、地物57が属性情報として、どの道路にアクセスしているかを示す出入口地点情報を有している場合、候補道路51と地物57の出入口地点との情報に基づいて判断することも可能である。
【0023】
・候補道路51に沿って存在する地物が極端に少ない(例えば1つ)場合、そのことのみをもって候補道路51を格上げしたのでは、利便性や実用性と道路ネットワーク情報のデータ量増加とのバランスを考慮しても妥当でない場合も考えられる。そこで、候補道路51に沿って存在する地物の数が一定数以上存在する場合にのみ、当該候補道路を格上げするといった処理を採用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
11…道路ネットワーク整備装置、12…地図情報記憶手段、13…道路選出手段、14…格上げ手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路網を表現した道路ネットワーク上に設定された出発地から目的地までに至る推奨ルートを探索し、該推奨ルートを案内するカーナビゲーションに用いられる道路ネットワークを整備する道路ネットワーク整備装置であって、
自動車の走行に適した道路網を含み、自動車の通行可能なその他の道路網までの形状および接続関係を表現する道路ネットワーク情報と、建造物などの形状や位置を表現する地物情報とを記憶している地図情報記憶手段と、
該地図情報記憶手段に記憶されている道路ネットワーク情報から、前記道路ネットワークとして採用されていない道路で、かつ、その一端が前記道路ネットワークとして採用されている道路に接続している格上げ候補道路を選出する道路選出手段と、
該道路選出手段により選出された候補道路に沿って前記地物が存在するとき、その候補道路を前記道路ネットワークとして格上げする格上げ手段と
を備えた道路ネットワーク整備装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−57863(P2013−57863A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197026(P2011−197026)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】