説明

遮光性に優れたガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム

【課題】アルミニウム箔を用いなくとも隠蔽性と酸素バリア性を有しており、さらに包装材料として十分な耐ピンホール特性を有する積層体を提供する。
【解決手段】白色顔料を5〜40質量%含有するポリアミド樹脂フィルムの少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系共重合体であるガスバリアコート層を有することを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。また、前記ガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを使用した積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料に使用されるフィルムとして好適なガスバリア性フィルムに関する。
【0002】
従来より、包装材料として、ナイロンフィルムとシーラント樹脂フィルムの少なくとも2層からなる積層体が使用されている。ナイロンフィルム層は、主として輸送時の衝撃や内容物との擦過から生ずるピンホールや破袋を防ぐための層であり、シーラント樹脂フィルム層は包装材料をヒートシールするためのポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂からなる層である。
【0003】
食品等の包装分野においては、内容物が劣化しやすいものがある。例えば油脂は、スナック菓子、チョコレート、ピーナッツ、油揚げなどの食品に多く含まれているが、光や酸素の影響によって変質や劣化を起こしやすい。したがって、油脂を含む食品の包装には、十分に遮光するための隠蔽性と、脱酸素のためのガス置換包装を可能とするための酸素バリア性が必要となる。
【0004】
アルミニウム箔は酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性を有すると共に太陽光あるいは蛍光等の遮光性を有するので内容物保護、特に、内容物中に含まれる油脂成分、色素成分等の浸透、透過を阻止すると共にそれらの酸化等による内容物の変質等を防止することができる。よって、隠蔽性と酸素バリア性に優れた包装材料とするためには、前記のナイロンフィルムとシーラント樹脂フィルムの2層に加えて、さらにアルミニウム箔を積層したフィルムが知られている。しかしながら、アルミニウム箔を使用した包装材料は、金属探知機等を用いて内容物に混入した金属片(異物)等の検査を行う際に、アルミニウムが金属探知機に反応し、金属片(異物)を探知することが極めて困難であるという問題がある。さらに、電子レンジで加熱するとアルミニウム箔からスパークが発生してピンホールを生じるために、電子レンジ加熱ができないという問題もある。したがって、脱アルミニウムが食品包装業界の課題となっている。
【0005】
そこで、シーラント層に白色顔料である酸化チタンを配合して包装体の遮光性を高めることが知られているが、シーラント層は多くの場合、食品と直接接するため、シーラント層に配合されている酸化チタンが、食品油を吸収し、結果として、袋の内面を構成するシーラント部分が柚子肌のように盛り上がるいわゆる「柚子肌化」が発生して包装材としての品位を損ねるという問題がある。
【0006】
そこで、内容物に直接触れるシーラント層にチタンを使用しないものとしては、印刷インキによる連続印刷膜を設けた遮光性積層体(特許文献1)、また、印刷層とともに着色樹脂層を設けた包材(特許文献2)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1においては、印刷膜上に点状にインキを載せるために十分な隠蔽性を得にくい。多色刷りすることにより、ある程度の隠蔽性は得られるが、十分ではなく、製造工程が煩雑で、製品コストも高くなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2では、着色樹脂層を設けることにより隠蔽性は得られるが、印刷層とともに遮光性付与のために樹脂層を1層設ける必要があるため、製造工程面や価格面において問題があった。また、同文献において用いられている着色樹脂層は、樹脂としてポリオレフィンを用いたものであり、包装材料として重要な特性である耐ピンホール性能が十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−321193号公報
【特許文献2】特開平11−348206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、先に、上記包装用袋の構成材料であるポリアミドフィルムに白色顔料を添加し遮光性を高めることで、金属探知機の使用が可能であり、柚子肌化といった外観不良も解決できる積層体を提案した(PCT/JP2010/050517)。しかしながら、前記積層体では柚子肌化を防ぐことは出来たが、ガスバリア性の改善には依然別のバリア性フィルム、例えば透明蒸着PETなどを積層する必要があった。
【0011】
以上述べたように、遮光性に優れるフィルムにおいては、その用途を鑑みるとガスバリア性も兼備することが必要となる。特にボイル・レトルト食品用包装材料の構成成分となる二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムにおいては、遮光性と高湿度環境下でのバリア性が実用上重要となってくる。しかしながら、遮光性と高湿度環境下のバリア性を兼ね備える二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは実質的に存在していなかった。
【0012】
本発明は前記課題を解決するものであり、アルミニウム箔を用いなくとも隠蔽性と酸素や水蒸気に対するバリア性とを有しており、さらに包装材料として十分な耐ピンホール特性を有する積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は鋭意検討の結果、二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに白色顔料を添加して遮光性を高め、さらに、少なくとも一方の面にガスバリアコート層を形成させることにより、本発明の課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)白色顔料を5〜40質量%含有するポリアミド樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂を含むガスバリアコート層を積層してなることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(2)フィルムの光学濃度が0.3以上であり、かつ白色度が60〜100%であることを特徴とする(1)記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(3)(1)記載の白色顔料が酸化チタンであることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(4)前記ポリアミド樹脂フィルム基材が白色顔料を含有するポリアミド樹脂層と白色顔料を含有しないポリアミド樹脂層から構成された複層構造を有していることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(5)ガスバリアコート層の厚みが0.5μm〜3.5μmであることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(6) 酸素透過度が20℃×65%RH環境下で150ml/(m・day・MPa)以下であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
(7)少なくとも1層に(1)〜(6)いずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを使用した積層フィルム。
(8)(7)記載の積層フィルムを製袋してなる包装袋。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分な隠蔽性とともに、酸素と水蒸気に対するバリア性を有するフィルムが提供される。油脂を含む食品の包装材料として用いると、内容物の酸化による品質低下を抑制することができると同時に、内容物が水分を含んでいる場合にも好適に使用することができる。
【0016】
本発明では、基材であるポリアミド樹脂層に酸化チタンを含有して隠蔽性を付与しているため、包装袋として使用する際には内容物がこの層に直接接することがない、したがって、シーラント層のいわゆる柚子肌化により包装材料としての品位を損ねたり、チタンが内容物に混入するといったことがない。
【0017】
本発明のフィルムは、ポリアミド樹脂層を使用しているため屈曲に強く、ピンホールの発生が抑制できるため、包装材料として使用した際のガスの漏れや混入を最小限とすることができる。
【0018】
さらにポリアミド樹脂層を酸化チタン含有層と酸化チタン非含有層の多層構造とすることで、引張強度・引張伸度などの機械特性を向上させることができる。
【0019】
本発明のフィルムは、アルミニウム箔を用いずとも、隠蔽性と酸素バリア性を付与できるので、包装材料として用いた際に、金属探知機による異物検査や、電子レンジによる加熱を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明の基材フィルムについて説明する。
【0022】
本発明に用いられる基材フィルムは、以下のような方法により製造される。
【0023】
概略的には、例えば、ポリアミド樹脂組成物を押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印可キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを製膜し、この未延伸フィルムに延伸処理を施すことで得られる。未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、この未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
【0024】
延伸処理には、縦方向に延伸した後、横方向に延伸処理する逐次二軸延伸と、縦横同時に延伸処理を行う同時二軸延伸とがある。いずれの延伸方法においても、0.05以上の面配向係数が得られるように面倍率が9倍以上になるようにして延伸処理することが好ましい。
【0025】
延伸方法は、特に限定されないが、一工程で、溶融フィルム化、後述のモノマー除去工程、水分調整工程、延伸工程、熱セット工程、冷却工程を実施できる同時二軸延伸法が効率的であるため好ましい。
【0026】
逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸が行われたフィルムは、延伸処理が行われたテンター内において150〜220℃の温度で熱固定し、必要に応じて10%以下、好ましくは2〜6%の範囲で縦方向および/または横方向の弛緩処理を施す。
【0027】
ポリアミド樹脂の例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、およびそれらの混合物、共重合体、複合体等が挙げられる。特に、コストパフォーマンスに優れるナイロン6が、生産性や性能の面で好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂は、溶融時のモノマー生成を抑制する等の目的で、末端封鎖されていてもよい。末端封鎖剤としては、有機グリシジルエステル、無水ジカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸、ジアミンなどが用いられる。
【0029】
ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されるものではないが、溶媒として96%硫酸を用い、温度25℃、濃度1g/dLの条件で測定した相対粘度が1.5〜5.0であることが好ましい。さらに好ましくは、2.5〜4.5、いっそう好ましくは3.0〜4.0の範囲である。この相対粘度が1.5未満のものは、フィルムの力学的特性が著しく低下しやすくなる。また、5.0を超えるものは、フィルムの製膜性に支障をきたしやすくなる。
【0030】
ポリアミド樹脂フィルム基材には必要に応じて、フィルムの性能に悪影響を与えない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、無機微粒子等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上添加することができる。これらの添加剤の配合量は、ポリアミド樹脂フィルム中に0.001〜5.0質量%の範囲が適当である。
【0031】
ポリアミド樹脂フィルム基材には、フィルムのスリップ性を向上させるなどの目的で、滑剤が配合されていてもよい。ポリアミド樹脂フィルム基材が単層の場合や、複層の場合で白色顔料を含有するポリアミド樹脂層を外層に配する場合には、白色顔料がポリアミド樹脂フィルムの表層に存在するので、滑剤を添加しなくても白色顔料が滑剤としての役割を担う。このため特に滑剤を添加する必要はない。しかし複層の場合で酸化チタンを含有していないポリアミド樹脂層を外層に設ける時には、この層に滑剤を添加することが好ましい。滑剤としては、無機系滑剤、有機系滑剤いずれも用いることができる。滑剤の具体例としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、層状ケイ酸塩、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。中でも、シリカが好ましい。滑剤の含有量はポリアミド樹脂中に0.01〜0.3質量%の範囲が適当である。
【0032】
ポリアミド樹脂フィルム基材には、白色顔料が含有されている。白色顔料の含有量は、ポリアミド樹脂フィルム中において、5〜40質量%の範囲であることが必要であり、好ましくは15〜30質量%の範囲である。白色顔料の含有量が5質量%未満であると、積層体の光学濃度が0.3未満となってしまい、十分な遮光性を得ることができず、結果として、食品を包装した時に内容物が経時的な酸化劣化を起こしやすくなる。一方、40質量%を超えると、単層フィルムの場合はポリアミド樹脂フィルムの強度が著しく低下し、ラミネート強力測定時にフィルム表面のへき開が発生しラミネート強力が低下する。複層フィルムの場合はフィルムの層間強力が低下し、単層フィルム同様にラミネート強力が低下する。
【0033】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムの光学濃度(OD値)は0.3以上であることが必要であり、好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。光学濃度が0.3未満では、遮光性及び隠蔽性が不十分となるため、この積層体で包装した場合に、油脂等を含む内容物は酸化劣化しやすくなる。また、内容物が透けて見えてしまうこともあり好ましくない。本発明のポリアミド樹脂フィルムの光学濃度を0.3以上と範囲にするためには、フィルム中の白色顔料の含有量を本発明で規定する範囲で調整する必要がある。
【0034】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、その白色度が60%〜100%であることが好ましく、より好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは80%〜100%である。白色度が60%未満では、白色性が不十分であるために、包装材料のような意匠性が要求される用途では商品価値が低下するおそれがある。本発明のポリアミド樹脂フィルムの白色度を60〜100%の範囲にするためには、フィルム中の白色顔料の含有量を本発明で規定する範囲で調整する必要がある。
【0035】
本発明で用いる白色顔料の種類は特に限定されず、公知のものを広く使用することでき、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられるが、光学濃度の点から酸化チタンが好ましい。
【0036】
本発明で用いる白色顔料の粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.4μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満であるとポリアミド樹脂フィルム中での分散性が悪く、粗大凝集物がフィルム中に散在して、フィルム中にピンホールが発生し、製品価値を低下させることがある。一方、平均粒径が0.5μmを超えるとポリアミド樹脂フィルムを製膜する時にフィルムが破断する頻度が高くなり生産性が低下する。
【0037】
本発明に用いるポリアミド樹脂フィルム基材は、単層構造であってもよいし、ポリアミド樹脂の種類や白色顔料の含有量の異なる2層以上のポリアミド樹脂層が積層されてなる多層構造であってもよい
【0038】
ポリアミド樹脂フィルム基材が白色顔料を含有するポリアミド層(以下、『白色層』と略す)と白色顔料を含有していないポリアミド層(以下、『透明層』と略す。)から構成された複層構造であると、ポリアミド樹脂フィルムの機械強度が向上するため好ましい。特に、透明層/白色層/透明層のように、表層に白色顔料を含有していない層を配し、内層が白色顔料を含有する層を配した3層以上の多層構造を採ると、機械強度に優れかつ、製膜や積層加工時に白色顔料粒子が欠落しないためにより好ましい。白色顔料の配合量は、本発明で規定したフィルム中の白色顔料の配合量を維持しつつ、白色層の含有量が10〜60質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。白色層の白色顔料含有量が10質量%未満であると、ポリアミド樹脂フィルム全体の平均の白色顔料含有量を5質量%以上の範囲とすることが難しく、積層体としたときに十分な光学濃度が得られない。一方、60質量%を超えると、フィルムの層間強力が低下し、ラミネート強力が低下する。
【0039】
白色顔料をポリアミド樹脂フィルム中に配合する方法は特に限定されるものではなく、製造工程の任意の時点で配合することができる。例えば、ポリアミド樹脂の重合時に白色顔料を添加する方法、ポリアミド樹脂中に白色顔料を高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造しこれをポリアミド樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)、ポリアミド樹脂と白色顔料とを押出機にて溶融混合する方法などが挙げられる。本発明においてはマスターバッチ法を用いて、フィルム化前に所望の白色顔料濃度に調整する方法が好ましく採用される。
【0040】
本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、ポリアミド樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂を含むガスバリアコート層を積層してなる。
【0041】
本発明において用いられるポリ塩化ビニリデン系樹脂としては、塩化ビニリデンホモポリマーや、塩化ビニリデンにアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、グリシジルメタクリレート、メチロールメタクリレートなどの成分を一種以上共重合したものが用いられる。
【0042】
本発明におけるポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を60質量%以上、好ましくは70〜97質量%含む重合体であり、ラテックスの形で用いられる。ラテックス中の樹脂の平均粒径は0.05〜0.5μm、好ましくは0.07〜0.3μmである。
【0043】
また、ポリ塩化ビニリデン系樹脂には本発明の効果を損なわない範囲で、例えばアンチブロッキング剤、架橋剤、撥水剤、帯電防止剤などの各種添加剤を併用しても良い。
【0044】
コートの方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、インバースロール法、またはこれらの組み合わせによる各種コート方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。
【0045】
ポリアミド樹脂フィルム基材には、ガスバリアコート層を積層する前に、コロナ放電処理やアンカーコート層形成が行われても良い。
【0046】
本発明において、ガスバリアコート層を形成する方法としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の有機溶剤溶液又は水性分散液に、必要により滑剤や帯電防止剤を配合したものを、コート厚みで0.5μm〜3.5μm、さらに好ましくは0.7μm〜3.0μm、さらに好ましくは1.0μm〜2.5μmの範囲でコーティングする方法がある。このコート厚みが0.5μmよりも薄いと十分なガスバリア性が発現せず、一方多すぎると効果が飽和するばかりでなく、耐ピンホール性などのフィルム物性が損なわれることがある。コーティング方法としては、ポリアミド樹脂フィルム基材にポリ塩化ビニリデン系樹脂の有機溶剤溶液又は水性分散液をコーティングするポストコート法や、ポリアミド樹脂フィルム基材の未延伸時にコーティングした後延伸するプリコート法がある。あるいは、プリコート法の一種として、未延伸のポリアミド樹脂フィルムをいったん一軸方向に延伸した後、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の有機溶剤溶液又は水性分散液をコーティングして、その後さらに先の延伸方向と直交する方向に延伸する方法も挙げられる。
【0047】
本発明のガスバリア性ポリアミド樹脂フィルムは、プリコート法を用いて製造することにより、ポリアミド樹脂フィルム基材とガスバリアコート層との密着性を高めることができる。また、プリコート法はポストコート法に比べて生産性が良く、経済性に優れている。
【0048】
本発明のガスバリア性ポリアミド樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、包装用途に使用する場合には、10μm〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0049】
得られたガスバリア性ポリアミド樹脂フィルムには、必要に応じてコート面や非コート面にコロナ放電処理、メッキ処理、清浄処理、金属処理、各種コート等の物理的化学的処理を施してもよい。
【0050】
上記のようにして得られる本発明のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムは、ポリアミド樹脂フィルムとしての優れた強度、機械的物性に加えて、優れた遮光性、及びガスバリア性を有し、基材フィルムとコート層との間の密着性に優れるため包装材料として好適に使用できる。
【0051】
本発明のガスバリア性ポリアミド樹脂フィルムは、例えばドライラミネート法や押出しラミネート法など公知の方法を用いて、ポリオレフィンなどのシーラント層と積層して積層フィルムとすることができ、さらに、シーラント層同士を熱融着させて包装袋とすることができる。積層フィルムや包装袋は、食品をはじめ、医薬品、雑貨などの包装材料として広範囲に使用することができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、本発明は必ずしもそれらの例に限定されるものではない。
【0053】
1.測定方法
測定方法(1)〜(6)については、23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置した試料を23℃、50%RHの環境下で測定した。
【0054】
(1)各層厚み
走査型電子顕微鏡(SEM)によりフィルム断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
【0055】
(2)無機粒子の粒子径の測定方法
島津製作所製のレーザー回折散乱式粒子径測定機SALD−2000により測定した。
【0056】
(3)白色度
分光式色差計SE−6000(日本電色工業社製)を用いて色調Lとして求めた。
【0057】
(4)隠蔽度
マクベス社製光学濃度計TR932により、3mmΦの透過ノズルを使用して測定される光学濃度(OD値)を隠蔽度とした。
【0058】
(5)引張強度
島津製作所製DSS−500型オ−トグラフを使用しJIS K7127に準じてMD方向、TD方向について各5点を測定し、合計10点の測定値の平均値を用いた。
【0059】
(6)引張伸度
島津製作所製DSS−500型オ−トグラフを使用しJIS K7127に準じてMD方向、TD方向について各5点を測定し、合計10点の測定値の平均値を用いた。
【0060】
(7)酸素透過度
JIS K−7126−2法に記載の方法に準じて、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。単位はml/(m・day・MPa)。実用上、150ml/(m・day・MPa)以下であることが好ましい。
【0061】
(8)水蒸気透過度
JIS K−7129B法に記載の方法に準じて、モコン社製PERMATRAN−W 3/33を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件下で測定した。単位はg/(m・day)。実用上、30g/(m・day)以下であることが好ましい。
【0062】
(9)耐ピンホール性
MD300mm×TD200mmのサイズの積層体サンプルを直径89mm(3.5インチ)の円筒状に把持し、初期把持間隔178mm(7インチ)、最大屈曲時の把持間隔25mm(1インチ)として、ゲルボテスター(理学工業社製)で20℃×65%RH環境下で5000回屈曲を与えた後のピンホール数を計数することにより評価した。
【0063】
2.原料
下記の実施例・比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
【0064】
(1)ナイロン6樹脂
ユニチカ社製A1030BRF、相対粘度3.0
【0065】
(2)ポリメタキシリレンジアジパミド(MXD6)
三菱瓦斯化学社製MX ナイロン6007 、相対粘度2.6
【0066】
(3)チタンマスターバッチA、B
ナイロン6樹脂40質量部に、下記酸化チタンAまたはBを60質量部ドライブレンドした後、これをシリンダー温度設定250℃の30mm径2軸押出機で溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却、固化後、切断して、それぞれペレット形状の、チタンマスターバッチA、Bを得た。
酸化チタンA:チタン工業社製、KRONOS酸化チタン1074、ルチル型、平均粒径0.4μm
酸化チタンB:チタン工業社製、KRONOS酸化チタンKR−310、ルチル型、平均粒径0.35μm
【0067】
(4)シリカマスターバッチ
内容積30リットルのオートクレーブに10kgのε−カプロラクタム、1kgの水、および600gのシリカ微粒子(サイリシア310P:富士シリシア社製、平均粒径1.4μm)を投入し、100℃に保持して、この温度で反応系内が均一になるまで撹拌した。引き続き、撹拌しながら260℃に加熱し、圧力1.5MPaを1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに1時間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断して、ポリアミド樹脂からなるペレットを得た。次いでこのペレットを95℃の熱水で8時間精錬し、未反応モノマー等を除去した後、乾燥した。得られたシリカマスターバッチの相対粘度は3.0、シリカ含有量は6質量%であった。
【0068】
実施例1
シリカ含有量が0.1質量%となるようにシリカマスターバッチをブレンドしたナイロン6樹脂と、チタンマスターバッチAとをブレンドし、さらに、ナイロン6樹脂の配合割合が85質量%、酸化チタンAの配合割合が15質量%となるようにして、シリンダー温度260℃に設定した単軸押出機に供給し、Tダイより押出し、設定温度20℃の冷却ロールに接触させて厚さ180μmのポリアミド樹脂シートを得た。得られたポリアミド樹脂シートの一方の面にPVDCラテックス(旭化成ケミカルズ社製 L561B)を延伸後のコート厚みが2.0μmとなるようにコーティングした後、同時二軸延伸機に導き、縦3.3倍、横3.0倍の倍率で同時二軸延伸を施した。続いて、温度210℃で熱処理し、横方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ20μmのガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム1を得た。
【0069】
実施例2、3
チタンマスターバッチの配合割合を適宜変更し、それ以外は実施例1と同様にして、表1に示すようなガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム2、3を得た。
【0070】
実施例4
チタンマスターバッチの種類をチタンマスターバッチBに変更し、それ以外は実施例1と同様にして、表1に示すようなガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム4を得た。
【0071】
実施例5
シリカ含有量が0.1質量%となるようにシリカマスターバッチをブレンドしたナイロン6樹脂と、MXD6樹脂と、チタンマスターバッチAとを、ナイロン6樹脂の配合割合が70質量%、MXD6樹脂の配合割合が15質量%、酸化チタンAの配合割合が15質量%となるようにブレンドした以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム5を得た。
【0072】
実施例6
ナイロン6樹脂にシリカ含有量が0.08質量%となるようにシリカマスターバッチをブレンドして押出機Aに投入し260℃で溶融押出した。一方、ナイロン6樹脂とチタンマスターバッチAを、ナイロン6樹脂の配合割合が90質量%、酸化チタンAの配合割合が10質量%となるように押出機Bに投入し260℃で溶融押出した。押出機A、押出機Bでそれぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、押出機A由来の酸化チタンを含有しないポリアミド樹脂をA層(透明層)、押出機B由来の酸化チタンを含有するポリアミド樹脂をB層(白色層)として、A/B/Aの三層構成のシートをTダイから押し出し、表面温度20℃の冷却ロールに密着させて、A/B/A=20/140/20μmとなる厚み180μmのポリアミド樹脂シ−トを得た。得られたポリアミド樹脂シートの一方の面にPVDCラテックス(旭化成ケミカルズ社製 L561B)を延伸後のコート厚みが2.0μmとなるようにコーティングした後、同時二軸延伸機に導き、縦3.3倍、横3.0倍の倍率で同時二軸延伸を施した。続いて、温度210℃で熱処理し、横方向に5%の弛緩処理を行い、厚さ20μmのガスバリア性ポリアミド樹脂6を得た。ガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム6のフィルム層構成は、A/B/A=2/14/2μmであった。
【0073】
実施例7
複層フィルムの層構成、各層の厚みを表1のようにして、それ以外は実施例6と同様にしてガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム7を得た。
【0074】
実施例8
シリカ含有量が0.1質量%となるようにシリカマスターバッチをブレンドしたナイロン6樹脂と、チタンマスターバッチAとをブレンドし、さらに、ナイロン6樹脂の配合割合が80質量%、酸化チタンAの配合割合が20質量%となるようにして、シリンダー温度260℃に設定した単軸押出機に供給し、Tダイより押出し、設定温度20℃の冷却ロールに接触させて厚さ180μmのポリアミド樹脂シートを得た。得られたポリアミド樹脂フィルムを周速の異なる加熱ローラー群からなるMD延伸機により、温度55℃、延伸倍率2.8倍で縦延伸し、PVDCラテックス(旭化成ケミカルズ社製 L529B)を延伸後のコート厚みが1.6μmとなるようにコーティングした後、90℃で3.7倍に横延伸して、逐次延伸処理をおこなった。
【0075】
この後、テンター内で徐々に温度を上げて最高到達温度210℃で熱処理し、さらに210℃でTD方向に2%のリラックスを施し、厚さ19.6μmのガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム8を得た。
【0076】
実施例9
延伸後のコート厚みを0.7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ18.7μmのガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム9を得た。
【0077】
実施例10
延伸後のコート厚みを3.3μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ21.3μmのガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム10を得た。
【0078】
実施例11
コート剤の種類を旭化成ケミカルズ社製 PVDCラテックス L536Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム11を得た。
【0079】
実施例12
ポリアミド樹脂シートの厚みを250μmにした以外は、実施例1と同様にして、厚さ27μmのガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム12を得た。
【0080】
実施例13
シリカ含有量が0.1質量%となるようにシリカマスターバッチをブレンドしたナイロン6樹脂とチタンマスターバッチAとをブレンドし、酸化チタンAの配合割合が15質量%となるようにして、シリンダー温度260℃に設定した単軸押出機に供給し、Tダイより押出し、設定温度20℃の冷却ロールに接触させて厚さ150μmのポリアミド樹脂シートを得た。得られたポリアミド樹脂シートを50℃に調整した温水槽に2分間浸漬し、同時2軸延伸機にて延伸温度180℃で縦3倍、横3.3倍延伸し、200℃で5秒間の熱処理を行い、さらに横方向に5%の弛緩処理を行い、冷却して、厚さ15μmのポリアミド樹脂フィルムを得た。
【0081】
得られたポリアミド樹脂フィルムの一方の面にコロナ処理を施し、コロナ処理面にテトラヒドロフランに溶解させたPVDCラテックス(旭化成ケミカルズ社製 R204)を、延伸後のコート厚みが3.0μmとなるようにコーティングした後、100℃で1分間乾燥し、厚さ18μmのガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム13を得た。
【0082】
比較例1
チタンマスターバッチの配合割合を変更し、ナイロン6樹脂の配合割合が97質量%、酸化チタンAの配合割合が3質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム14を得た。
【0083】
比較例2
チタンマスターバッチの配合割合を変更し、ナイロン6樹脂の配合割合が55質量%、酸化チタンAの配合割合が45質量%となるようにした以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性ポリアミド樹脂フィルム15を得た。
【0084】
比較例3
低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製、スミカセンF200)とチタンマスターバッチAをブレンドし、低密度ポリエチレン樹脂の配合割合が85質量%、酸化チタンAの配合割合が15質量%となるようにして、シリンダー温度180℃に設定した単軸押出機に供給し、Tダイより押出し、設定温度30℃の冷却ロールに接触させて厚さ20μmの低密度ポリエチレンフィルムを得た。得られた低密度ポリエチレンフィルムの一方の面にコロナ処理を施し、コロナ処理面にテトラヒドロフランに溶解させたPVDCラテックスをコーティングしようとしたが、乾燥時にかかる100℃の熱により熱収縮が起こり、積層体を得ることができなかった。
【0085】
実施例1〜13、比較例1〜3のフィルム製造で用いた樹脂組成と得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例1〜13、比較例1〜2で得られたガスバリア性ポリアミド樹脂フィルムの物性をまとめて表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
実施例1〜13、比較例1〜2から次のことが判る。
【0090】
実施例1〜13では、十分な隠蔽性、酸素バリア性、水蒸気バリア性に優れた積層体が得られた。これらはすべて、アルミニウム箔や、アルミニウム蒸着樹脂フィルムを用いていないため、電子レンジ適性を備え、また金属探知機による異物検査が可能である。
【0091】
比較例1は、酸化チタンの配合量が少ないために隠蔽度が不足し、結果として積層体の隠蔽度が0.3未満となり、十分な遮光性や隠蔽性が得られなかった。
【0092】
比較例2は、酸化チタンの配合量が多すぎたために、積層体の耐ピンホール性が低下し、ピンホールの発生個数が20を超えた。このレベルでは積層体を包装用として用いた場合、商品等を運送した際に積層体に穴が空く可能性がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色顔料を5〜40質量%含有するポリアミド樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系樹脂を含むガスバリアコート層を積層してなることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項2】
フィルムの光学濃度が0.3以上であり、かつ白色度が60〜100%であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1記載の白色顔料が酸化チタンであることを特徴とするガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂フィルム基材が白色顔料を含有するポリアミド樹脂層と白色顔料を含有しないポリアミド樹脂層から構成された複層構造を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項5】
ガスバリアコート層の厚みが0.5μm〜3.5μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項6】
酸素透過度が20℃×65%RH環境下で150ml/(m・day・MPa)以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム。
【請求項7】
少なくとも1層に請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを使用した積層フィルム。
【請求項8】
請求項7記載の積層フィルムを製袋してなる包装袋。

【公開番号】特開2012−20417(P2012−20417A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157899(P2010−157899)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】