説明

遮水材

【課題】遮水性や強度等の性能を向上させた上で安価な遮水材を提供する。
【解決手段】本遮水材10は、フライアッシュと、ベントナイトとを含んでいるので、石炭を燃料として用いる火力発電所において、燃焼時に大量に生成される不要なフライアッシュを有効利用することができ、該フライアッシュの廃棄料を含めた遮水材10の築造費のトータルコストを低減することができる。また、該フライアッシュにベントナイトを加えることで所望の遮水性の確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、産業廃棄物や一般廃棄物等を最終処分するための廃棄物処分場の遮水層に使用される遮水材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業廃棄物の排出量は増大する傾向にあり、また石炭火力発電所の稼動需要も増加しており、これに伴い最終処分場の建設も、海面、陸上を問わず数多く推し進められている。ところで、この種の最終処分場においては、有害物質の周辺への漏出をいかに抑えるかが重要な課題となっており、このため、従来一般には、処分場の周囲の法面や底面に遮水シートを敷設して有害物質の漏出を抑えるようにしていた。しかしながら、遮水シートは、敷設面の不陸や原地盤の不等沈下などの影響で局部的に破損する可能性があり、有害物質の漏出対策としては不十分である、という課題が残っている。
【0003】
このため、最近では、例えば、海面処分場においては、埋立処分域を囲む二重矢板式護岸の内部や処分域の底面に固化処理土やコンクリートを打設して遮水層を形成することが実施され、一方、陸上処分場においては、処分域を囲む地中にコンクリートを打設して連続地中壁(遮水層)を形成し、あるいは処分域の底面に固化処理土やコンクリートを打設して遮水層を形成することが多く実施されるようになってきている。しかるに、前記した固化処理土やコンクリートを打設してなる遮水層は、一般的に剛性は高いが靭性が不足するため、廃棄物の載荷重による地盤沈下や地震による地盤変動を受けた場合に脆性破壊を起こす虞があり、遮水層として信頼性に欠けるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、海面処分場の遮水構造物に用いる遮水材として、含水比100〜300%の海成粘土懸濁液に粘土鉱物(ベントナイト)と、繊維状物質(強化材)と、固化材とを添加混合してゲル状物質に改質してなるものが記載されており、これによって変形追従性の高い遮水層が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−336811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした近年の状況の中、所望の圧縮強度を有し、しかも変形時の靭性(変形追従性)をも有し、せん断ひずみが発生した状態においても遮水性を低下させることなく、安価な遮水材の開発が求められている。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、遮水性や強度等の性能を向上させた上で安価な遮水材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、遮水層に使用される遮水材であって、該遮水材は、フライアッシュと、ベントナイトとを含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明では、遮水材の主材料に、石炭を燃料として用いる火力発電所において、燃焼時に大量に生成される不要なフライアッシュを有効利用することで、フライアッシュの廃棄料を含めた遮水材の築造費のトータルコストを低減することができ、しかも、該フライアッシュにベントナイトを加えることで所望の遮水性を確保することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、重量比にて、前記フライアッシュ:前記ベントナイト=9以下:1の割合で配合されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、遮水材の透水係数k=1×10−6cm/s以下を確保することができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記遮水材は、高炉セメントと、海水とを含むことを特徴とするものである。
請求項3の発明では、高炉セメントを含むことで、遮水材を固化させる他に、固化材に含まれる六価クロムの溶出を抑制するだけでなく、フライアッシュに含まれるその他の有害物質の溶出をも防ぐことができる。また、遮水材に海水を含むことで、遮水材がスラリー状となり、施工時の流動性及び充填性を確保することができる。特に鉛直矢板の目地など狭小な施工箇所への充填性が向上する。
【0011】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明において、重量比にて、前記フライアッシュ:前記高炉セメント=12以下:1の割合で配合されることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、フライアッシュに含まれる有害物質の溶出を確実に防止することが可能になる。
【0012】
請求項5に記載した発明は、請求項3または4に記載した発明において、重量比にて、前記フライアッシュ+前記高炉セメント+前記ベントナイト:前記海水=略10:6の割合で配合されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、施工時の流動性及び充填性をさらに向上させることができる。
【0013】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれかに記載した発明において、前記遮水材は、繊維材を含むことを特徴とするものである。
請求項6の発明では、固化材、例えば、高炉セメントとの相乗効果により、遮水性を低下させることなく所望の圧縮強度及び靭性を確保することができる。
【0014】
請求項7に記載した発明は、請求項6に記載した発明において、前記繊維材は、ポリプロピレン繊維であることを特徴とするものである。
請求項7の発明では、ポリプロピレン繊維を添加した際、該ポリプロピレン繊維が遮水材全体に分散するために遮水材(遮水層)全域に亘って強度及び靭性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る遮水材によれば、所望の遮水性、強度及び変形時の靭性を確保することができ、不要となるフライアッシュを有効利用することでフライアッシュの廃棄料を含めた遮水材の築造費のトータルコストを低減することができる。しかも、施工時の流動性及び充填性を確保することでき、施工を含めた全体コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る遮水材を使用した遮水層を備えた海面処分場を示す図である。
【図2】図2は、本遮水材の三軸透水試験の試験結果を示すものである。
【図3】図3は、本遮水材の一軸圧縮強度試験の試験結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る遮水材10は、例えば、産業廃棄物や一般廃棄物等を最終処分するための廃棄物処分場に備えた遮水層6に使用されるものである。
図1は、遮水層6を備えた海面処分場を示したものである。本海面処分場における埋立処分域1は、護岸2により外水域Aから締切られた内水域B内に設定されている。
護岸2は、ここではケーソン式護岸からなっており、海底地盤(ここでは、透水性地盤)Gに造成した捨石マウンド3上に据付けられたケーソン4と、ケーソン4の背後に裏込石を投入して造成された裏込層5とからなっている。該裏込層5の、内水域B側の背面は法面となっており、この裏込層5の法面と埋立処分域1の底面上には、本発明に係る遮水層6が連続して造成されている。なお、裏込層5の法面上での厚さt1、埋立処分域1の底面上での厚さt2は、一例としてt1=3m程度、t2=2m程度に設定される。また、所望により裏込層5の法面に予め防砂シートを敷設し、該防砂シート上に遮水層6を造成してもよい。
【0018】
遮水層6は、主材料であるフライアッシュと、ベントナイトと、繊維材と、高炉セメントと、海水とを所定の重量比で配合した遮水材10により造成されている。
フライアッシュは、石炭を燃料として用いる火力発電所において、燃焼時に生成されるものである。ベントナイトは、所謂粘土鉱物である。繊維材は、例えば、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド(PA)繊維、ビニロン繊維、グラスファイバ(GF)やテント布地の端材を採用することができる。また、繊維材は、繊維径が10〜400μmで、かつ繊維長が10〜50mmの大きさのものを用いるのが好ましい。なお、添加時に繊維が均一に分散する観点から、ポリプロピレン(PP)繊維を採用するのが最も好ましい。また、高炉セメントは、遮水材10を固化させる機能の他に、フライアッシュに含まれる有害物質の溶出を防止することができる。
【0019】
本遮水材10は、重量比にて、フライアッシュ:ベントナイト=9以下:1の割合で配合され、且つフライアッシュ:高炉セメント=12以下:1の割合で配合され、且つ(フライアッシュ+高炉セメント+ベントナイト):海水=略10:6の割合で配合されて構成される。また、ポリプロピレン繊維は、体積比で、全体の0.5%〜1.0%の割合で添加される。
【0020】
そこで、具体的な配合例を次に示す。遮水材10は、全体が1500(kg/m)の場合、フライアッシュを776.1(kg)、ベントナイトを86.2(kg)、高炉セメントを71.9(kg)、ポリプロピレン繊維を9.0(kg)、海水を556.8(kg)としてそれぞれ配合する。
【0021】
そして、上述した配合による遮水材10を1週間経過した後に溶出試験、4週間経過した後に三軸透水試験及び一軸圧縮強度試験を行った結果を以下に説明する。
まず、六価クロム、砒素、セレン、ふっ素及びほう素を対象とした溶出試験を行った結果、全ての有害物質において環境基準値以下であることを確認することができた。
次に、三軸透水試験の試験結果を図2に示すが、図2から解るように、軸ひずみが0%である初期状態における透水係数はk=約3.0×10−7cm/sであり、十分な遮水性を有するものである。しかも、変形が進行して軸ひずみが10%になった状態においても水みちが生じることなく、圧縮変形することによりいっそう透水係数kは低下するようになる。
【0022】
次に、一軸圧縮強度試験の試験結果を図3に示すが、図3から解るように、供試体(3体)により若干のバラツキはあるが、変形が進行して軸ひずみが15%になった状態においても圧縮強度は100kN/m以上を確保することができ、十分な耐久性を有するものである。すなわち、該遮水材10は、遮水層6の上層に載置される廃棄物(水中重量10kN/m)10m厚相当分に耐えられる強度を有し、地震による大きな揺れを受け変形しても靭性により破壊を起こすことなく、十分な耐久性を有している。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る遮水材10は、フライアッシュと、ベントナイトとを含んでいるので、石炭を燃料として用いる火力発電所において、燃焼時に大量に生成される不要なフライアッシュを有効利用することができ、フライアッシュの廃棄料を含めた遮水材10の築造費のトータルコストを低減することができる。また、該フライアッシュにベントナイトを加えることで所望の遮水性の確保することができる。
また、遮水材10には、フライアッシュ及びベントナイトに加え、高炉セメントを含むことで、フライアッシュに含まれる有害物質の溶出を防ぐことができる。しかも、ポリプロピレン等の繊維材を含むことで、高炉セメントとの相乗効果により、所望の強度及び変形時の靭性(変形追従性)を確保することができる。さらには、本遮水材10は海水を含むので、施工時の流動性及び充填性を確保することができ、ひいては、施工性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0024】
6 遮水層,10 遮水材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水層に使用される遮水材であって、
該遮水材は、フライアッシュと、ベントナイトとを含むことを特徴とする遮水材。
【請求項2】
重量比にて、前記フライアッシュ:前記ベントナイト=9以下:1の割合で配合されることを特徴とする請求項1に記載の遮水材。
【請求項3】
前記遮水材は、高炉セメントと、海水とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の遮水材。
【請求項4】
重量比にて、前記フライアッシュ:前記高炉セメント=12以下:1の割合で配合されることを特徴とする請求項3に記載の遮水材。
【請求項5】
重量比にて、前記フライアッシュ+前記高炉セメント+前記ベントナイト:前記海水=略10:6の割合で配合されることを特徴とする請求項3または4に記載の遮水材。
【請求項6】
前記遮水材は、繊維材を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遮水材。
【請求項7】
前記繊維材は、ポリプロピレン繊維であることを特徴とする請求項6に記載の遮水材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−59758(P2013−59758A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−69200(P2012−69200)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(512109161)地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 (13)
【Fターム(参考)】