説明

遮熱化粧シート

【課題】短納期で安価に製造可能であり、耐候性や耐摩耗性、耐水性等の各物性に優れ、かつ光線遮蔽効果を有しながら、しかも絵柄の深み等の意匠性にも優れた遮熱化粧シートを提供すること。
【解決手段】着色ベースフィルム層、印刷層、オーバーレイフィルム層を少なくともこの順に積層してなる遮熱化粧シートにおいて、前記着色ベースフィルム層の着色顔料として酸化チタンを用い、前記印刷層の顔料としてイソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、酸化チタンの少なくとも一つ以上を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に住居や店舗、船舶等の外装扉の表層に用いるのをはじめとし、窓枠、テラス、車庫等の屋外に使われる、耐侯性が高く、光線遮蔽効果を有する遮熱化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玄関扉の表層等については耐候性のあるオレフィン系化粧シートが使われてきたが、実際の屋外暴露や促進耐候性試験にて耐侯性は評価しており、太陽光の紫外光領域に対しては処方を施した設計ではあったが、赤外光領域の熱の吸収に対しては、考慮されていなかった。
【0003】
実際に使用されていると、耐候性としては満足されるものであったが、太陽光の赤外光領域の熱の吸収によって、蓄熱作用が発生し、結果として基材に伝わる事で、熱膨張が発生し、表裏の温度差によって反りが発生する慢性的な問題については、解決されないままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−089441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、短納期で安価に製造可能であり、耐候性や耐摩耗性、耐水性等の各物性に優れ、かつ光線遮蔽効果を有しながら、しかも絵柄の深み等の意匠性にも優れた遮熱化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、着色ベースフィルム層、印刷層、オーバーレイフィルム層を少なくともこの順に積層してなる遮熱化粧シートにおいて、前記着色ベースフィルム層の着色顔料として酸化チタンを用い、前記印刷層の顔料としてイソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、酸化チタンの少なくとも一つ以上を用いることを特徴とする遮熱化粧シートである。
【0007】
またその請求項2記載の発明は、前記オーバーレイフィフィルム層としてホモまたはランダムポリプロピレン系樹脂に紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加したものを用い、さらに前記オーバーレイフィフィルム層の表面側に、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートに紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加したコーティング層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の遮熱化粧シートである。
【0008】
またその請求項3記載の発明は、前記オーバーレイフィフィルム層としてポリメチルメタアクリル樹脂に紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加したものを用い、さらに前記印刷層とオーバーレイフィルム層の間にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも1つ以上からなる接着剤層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の遮熱化粧シートである。
【発明の効果】
【0009】
太陽光の赤外光領域の熱の吸収によって、蓄熱作用が発生し、結果として基材に伝わる事で、熱膨張が発生し、表裏の温度差によって反りが発生する。本発明はその請求項1記載の発明により、着色ベースフィルム層と印刷層に特定の顔料を用いる事で、赤外光領域の反射率を一定以上に上げる事が可能となり、光線遮蔽効果を得て、反りの発生を防止することを可能とする。
【0010】
またその請求項2記載の発明により、オーバーレイフィルム層の樹脂を特定しさらにその表面側に特定の樹脂のコーティング層を設けることで経時の耐候性と光線遮蔽効果の維持とを可能とした。
【0011】
またその請求項3記載の発明により、オーバーレイフィルム層の樹脂を特定しさらに印刷層とオーバーレイフィルム層との間に特定の樹脂の接着剤層を設けることで経時の層間強度と光線遮蔽効果の維持とを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の遮熱化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の遮熱化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。着色ベースフィルム層1、印刷層2、オーバーレイフィルム層3からなり、適宜接着剤層4やコーティング層5を設けてなる。
【0014】
本発明における着色ベースフィルム層1としては、塩化ビニル樹脂代替として取り扱いが容易なホモまたはランダムポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン樹脂が好適に用いられる。また、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤などを適宜するのが好適である。
【0015】
本発明における着色ベースフィルム層1に用いる顔料としては、酸化チタンが用いられる。これにより、赤外光領域の反射率を一定以上に上げる事が可能となる。
【0016】
本発明における印刷層2としては、前記着色ベースフィルム層1に好適なインキを用いて設ければ良い。具体的には前記ベースフィルム層1がポリプロピレン樹脂であれば、ウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂の混合物が好適に用いられる。
【0017】
本発明における印刷層2に用いる顔料としては、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、酸化チタンの少なくとも一つ以上を用いる。これにより、赤外光領域の反射率を一定以上に上げる事が可能となる。
【0018】
本発明におけるオーバーフィルム層3としては、さらにこの表面にコーティング層5を設ける場合は、前記着色ベースフィルム層1や印刷層2との層間密着を考慮して樹脂を選択すればよく、具体的には前記着色ベースフィルム層1がホモまたはランダムポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン樹脂であるなら同様のホモまたはランダムポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン樹脂が好ましく、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加するのが好適である。
一方、オーバーレイフィルム層3が表面層となる場合は、ポリメチルメタアクリル樹脂を用いるのが好ましく、紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加するのが好適であり、層間密着を考慮して印刷層2との間にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも1つ以上からなる接着剤層4を設けるのが好ましい。
【実施例1】
【0019】
着色ベースフィルム層1として、ポリエチレン樹脂100重量部に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3重量部、紫外線吸収剤を1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1重量部、酸化チタンを23重量部添加して、厚み55μmに製膜した。
【0020】
前記着色ベースフィルム1の表面に印刷層2として、ウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂を7:3の割合で混合したもの100重量部に、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートを2:8の混合からなる硬化剤を3重量部添加して、イソインドリノン、ポリアゾ、フタロシアニンからなる顔料を3重量部添加してインキとし、木目柄をグラビア印刷にて印刷した。
【0021】
前記着色ベースフィルム1の印刷層2を設けた面に、オーバーレイフィルム層3として、ランダムポリプロピレン系樹脂を用い100重量部に対して紫外線吸収剤0.5重量部とヒンダードアミン系光安定剤0.3重量部を添加したものを溶融押出により設け、乾燥後の厚みが70μmとなるようにして設けた。
【0022】
最後に、前記オーバーレイフィルム層3の表面にアクリルポリオール100重量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート10重量部と紫外線吸収剤5重量部とヒンダードアミン系光安定剤5重量部を添加したものをコーティングにより9μmとなるようにして設け、遮熱化粧シートを作成した。
【実施例2】
【0023】
着色ベースフィルム1と印刷層2は実施例1と同様に作成した。前記印刷層2の表面にアクリル−ポリエステル−塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤(アクリル/ポリエステル/塩酢ビ=30/30/30)をグラビアコート法により乾燥後の塗布量1.5g/m2に塗工して接着剤層4を形成し、オーバーレイフィルム層3としてポリメチルメタアクリル樹脂100重量部に紫外線吸収剤3重量部とヒンダードフェノール系酸化防止剤1重量部からなる厚さ50μmのガラス転移点が104℃の透明アクリル樹脂フィルムを、フィルム表面温度120℃の条件で熱ラミネートして、遮熱化粧シートを作成した。
【0024】
<比較例>
着色ベースフィルム層1に用いる顔料をカーボンブラック、印刷層2に用いる顔料をカーボンブラックとし、その他の材料構成は実施例1と同様のものを用いて遮熱化粧シートを作成した。
【0025】
<性能比較1>
実施例1と実施例2と比較例1の遮熱化粧シートに関し、(株)日立ハイテクノロジーズ製U−4100形分光光度計を用い、遮熱化粧シートについて、波長340nm〜2500nmの光に対する反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
<性能比較2>
また、縦20cm横11cm厚みが0.6mmの無塗装鋼板に対して、接着剤を用いて、片面のみ遮熱化粧シートを貼り合わせたものについて、ハロゲン球を真上から15cm離したところから、遮熱化粧シートが照射面になるよう30分間照射し続け、鋼板表裏を1分毎に温度を記録し、最大値を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
表1より、近赤外光領域(780nm〜2000nm)においての反射率が高く、遮熱性に優れている事が確認された。表2より、遮熱性に優れている事が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の遮熱化粧シートは、主に住居や店舗、船舶等の外装扉の表層に用いるのをはじめとし、窓枠、テラス、車庫等の屋外に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…着色ベースフィルム層
2…印刷層
3…オーバーレイフィルム層
4…接着剤層
5…コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色ベースフィルム層、印刷層、オーバーレイフィルム層を少なくともこの順に積層してなる遮熱化粧シートにおいて、
前記着色ベースフィルム層の着色顔料として酸化チタンを用い、
前記印刷層の顔料としてイソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、酸化チタンの少なくとも一つ以上を用いることを特徴とする遮熱化粧シート。
【請求項2】
前記オーバーレイフィフィルム層としてホモまたはランダムポリプロピレン系樹脂に紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加したものを用い、さらに前記オーバーレイフィフィルム層の表面側に、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートに紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を添加したコーティング層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の遮熱化粧シート。
【請求項3】
前記オーバーレイフィフィルム層としてポリメチルメタアクリル樹脂に紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加したものを用い、さらに前記印刷層とオーバーレイフィルム層の間にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも1つ以上からなる接着剤層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の遮熱化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2013−86451(P2013−86451A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231515(P2011−231515)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】