説明

還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有した組成物

【課題】本発明は、抗酸化力、とりわけ活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用に優れた組成物の提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有し、活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用が相乗的に高めら組成物である。また本発明は、還元型補酵素Q10とカロチノイド類を共に含有する組成物を用いる活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去方法でもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有した抗酸化力に優れた組成物および当該組成物を用いる活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去方法に関する。還元型補酵素Q10およびカロチノイド類は、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
補酵素Qは細菌から哺乳動物まで広く生体に分布する必須成分であり、生体内の細胞中におけるミトコンドリアの電子伝達系構成成分として知られている。補酵素Qは、ミトコンドリア内において酸化と還元を繰り返すことで、電子伝達系における伝達成分としての機能を担っている。ヒトでは補酵素Qの側鎖が繰り返し構造を10個持つ補酵素Q10が主成分であり、生体内においては、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の比が一定の範囲に保たれながら機能を発揮しており、通常、40〜90%程度が還元型として存在していると言われている。補酵素Qの生理的作用としては、ミトコンドリア賦活作用によるエネルギー生産の活性化、心機能の活性化、細胞膜の安定化効果、抗酸化作用による細胞の保護効果などが挙げられている。
【0003】
このように、補酵素Q10には、酸化型と還元型が存在しているが、還元型補酵素Q10は抗酸化作用を持つため、血中に十分量の還元型補酵素Q10を送り込むことにより、血中の抗酸化力を効果的に増加させることが可能となる。血中の抗酸化力を増加させることは、虚血再還流時の血管障害、動脈効果の再狭窄防止、脳梗塞後の血管障害の防止、動脈硬化の予防、糖尿病の合併症の予防などの、活性酸素種によって増悪が示唆されている多くの疾患に対して幅広い有用性が考えられる。
【0004】
一方、カロチノイド類は自然界の植物の葉や果実、野菜等、あるいは藻類に広く存在する色素である。カロチノイド類は植物や藻類の細胞内でクロロフィルが光合成を行う際に発生する活性酸素から生体を守っていると考えられている。また、これらの植物を摂取する動物にも広く分布しており、カニやエビの甲殻やサケの筋肉中、ウニ、スケトウダラの卵等にも含まれている。カロチノイド類の含量の少ない卵の孵化率が著しく低くなるとの報告もあることから、明確なことは分かっていないが、やはり動物でも活性酸素等からの障害から生体を保護していると言われている。
【0005】
カロチノイドの種類としては、トマトに多く含まれるリコピンや、ニンジンに多く含まれるβ−カロテンを始め、α−カロテン、アスタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、フコキサンチン、ビタミンA等があり、これらを含んだ食物を食するヒトにおいても、カロチノイドは非常に重要な働きをしていると考えられている。
【0006】
例えば、β−カロチンが癌の発症を抑えるとの報告(非特許文献1)、リコペンが大腸癌を抑制するとの報告(非特許文献2)、ルチンやゼアキサンチンが加齢性網膜黄斑変性症のリスクを低減させるとの報告(非特許文献3)、アスタキサンチンが目の調節機能障害を改善したり(特許文献1)、白内障の予防、改善に効果がある(特許文献2)との報告などがある。これらのカロチノイド類は分子内にイソプレンを持つテトラテルペン類であり、その類似した構造から、生体内では同じような働きが期待される。
【0007】
上記の種々の効果の多くは、還元型補酵素Q10およびカロチノイド類が有する抗酸化力、とりわけ、生体内で発生した活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する効果に起因すると考えられている。従って、還元型補酵素Q10又は、上記のカロチノイド類は生体内で非常に重要な働きを担っており、それらを体内に取り入れることは生体にとって有益と考えられる。
【0008】
ここで、還元型補酵素Q10は空気酸化に対して非常に不安定であるため、非常に使いづらい側面を有している。そこで、本発明者らは還元型補酵素Q10と種々の抗酸化剤を含み、還元型補酵素Q10を安定に保持しうる製剤を発明した(特許文献3)。しかしながら、このような安定化された還元型補酵素Q10でも、上記種々の効果を発揮するための抗酸化力、つまり、活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する効果は不十分な場合があり、当該効果を向上させる方法、ならびに、当該効果が向上された製剤が求められている。
【0009】
一方、カロチノイド類も同様であり、生体にとって有用な効果を示すと期待されるが、生体内で発生した活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する効果は十分ではなく、従って、生体内で発揮される上記効果も十分満足されるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO02/094253
【特許文献2】特開平10−276721号公報
【特許文献3】特開2003−119127号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M. M .Mathews-Roth, Pure Appl. Chem., 57, 717-722, 1984
【非特許文献2】T. Narisawa, et al ;Jpn. J. Cancer Res., 89, 1003-1008, 1998
【非特許文献3】J. M. Seddon, et al ;JAMA, 272, 1413-1420, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、還元型補酵素Q10またはカロチノイド類が有する活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する効果をさらに効果的に発揮させる組成物および、これら組成物を用いた活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、還元型補酵素Q10とカロチノイド類が共存した場合には、それぞれが単独の場合と比較して、相乗的に活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する効果が高まるという注目すべき新知見を見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は還元型補酵素Q10及びカロチノイド類を含有することを特徴とする活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用が相乗的高められた組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、還元型補酵素Q10及びカロチノイド類を含有する組成物を用いる活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去方法にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、活性酸素及び/又はフリーラジカルを消去する効果の高い組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物は、必須成分として還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有する。還元型補酵素Q10とカロチノイド類を共に含有することにより、抗酸化力、すなわち、活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用が相乗的に高められた組成物とすることができる。
【0018】
ここで、「活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用が相乗的に高められた」とは、実施例の項で詳述する方法にて還元型補酵素Q10とカロチノイド類が共存する場合の抗酸化力(A)を測定した際に、その値が、同方法により測定した還元型補酵素Q10単独の抗酸化力(B)とカロチノイド単独の抗酸化力(C)の和を上回ることを意味する。具体的には、各々の抗酸化力の測定結果を下記評価式a:
A/(B+C)×100 (評価式a)
にあてはめた場合に、100を超える、好ましくは105以上、より好ましくは110以上となることを意味する。
【0019】
または、還元型補酵素Q10とカロチノイド類が共存する場合の還元型補酵素Q10の持つ抗酸化力が、還元型補酵素Q10を単独で用いた場合の抗酸化力を上回ることを意味する。具体的には、各々の抗酸化力の測定結果を下記評価式b:
(A−C)/B×100 (評価式b)
にあてはめた場合に、100を超える、好ましくは105以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上、特に好ましくは130以上となることを意味する。
【0020】
本発明で使用する還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができるが、好ましくは、既存の高純度補酵素Q10などの酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、一般的な還元剤、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸等を用いて還元することにより得ることができる。
【0021】
組成物中の還元型補酵素Q10割合が少なすぎる場合には期待する抗酸化力が得られないため、組成物中の還元型補酵素Q10の割合は、普通0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、なお好ましくは10重量%以上、とりわけ30重量%以上、なかんずく60重量%以上である。上限は特に制限されないが、経済的な観点等より、普通90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0022】
本発明で用いる還元型補酵素Q10は単独でも良く、又、酸化型補酵素Q10との混合物であっても良いが、補酵素Q10全量中、還元型補酵素Q10の割合が60重量%以上のものが好ましく、70重量%以上のものがより好ましく、80%重量以上のものが更に好ましく、とりわけ90重量%以上のものが好ましく、最も好ましくは95重量%以上である。上限は100重量%であり、特に限定はされないが、普通、99.9重量%以下である。
【0023】
カロチノイド類としては、アスタキサンチン、β−カロチン、α−カロチン、リコピン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、フコキサンチン、ビタミンA等をあげることができる。中でも、アスタキサンチン、β−カロチン、α−カロチン、リコピン、クリプトキサンチン、ルテイン、ビタミンAが好ましく、アスタキサンチン、β−カロチン、α−カロチン、リコピン、ルテイン、ビタミンAがより好ましく、アスタキサンチン、β−カロチン、リコピン、ビタミンAが更に好ましく、アスタキサンチン、β−カロチン、リコピンが特に好ましい。最も好ましくはアスタキサンチンである。これらのカロチノイド類は化学合成されたものでも良いし、天然物から抽出、さらには精製されたものでも良い。
【0024】
これらのカロチノイド類を含む天然物としては、藻類、酵母菌、植物プランクトン、果実、野菜、ハーブ、甲殻類、卵等がある。
【0025】
本発明は還元型補酵素Q10及びカロチノイド類を含有した組成物を用いることを特徴とするが、この時、還元型補酵素Q10に対するカロチノイド類の重量比は、普通0.001以上、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05以上である。上限は特に制限されないが、通常は、10以下、好ましくは1以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0026】
また、本発明では組成物中に油脂を含んでも良い。本発明で使用する油脂としては、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができる。動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができる。更に、これら天然油脂を分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、脂肪酸の部分グリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質等も使用しうる。また、これらの混合物を使用しても良い。
【0027】
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリドを挙げることができる。脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリドを挙げることができる。
【0028】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が、各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリドを挙げることができる。
【0029】
リン脂質としては、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、及び、これらの混合物等を挙げることができる。
【0030】
上記油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂や加工油脂、リン脂質が好ましい。これらは油脂の価格、還元型補酵素Q10およびカロチノイド類の安定性等を考慮して選定するのが好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、オリーブ油、サフラワー油、MCT、リン脂質等が好ましく、米油、大豆油、菜種油、サフラワー油、MCT、リン脂質等が特に好ましい。
【0031】
これらの油脂の重量に対する還元型補酵素Q10の重量比は、普通、0.1%以上であり、好ましくは1%以上、さらに好ましくは10%以上である。上限は特に制限されないが、普通90%以下、好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0032】
本発明の組成物には還元型補酵素Q10およびカロチノイド類の他に、他の素材が適宜添加されていてもよい。このようなものとしては、特に制限されず、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、有効成分の溶解補助剤、安定化剤等が挙げられる。
【0033】
上記賦形剤としては特に制限されないが、例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
【0034】
上記崩壊剤としては特に制限されないが、例えば、でんぷん、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガント等を挙げることができる。
【0035】
上記滑沢剤としては特に制限されないが、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等を挙げることができる。
【0036】
上記結合剤としては特に制限されないが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトール等を挙げることができる。
【0037】
上記酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸等を挙げることができる。
【0038】
上記着色剤としては特に制限されないが、例えば、医薬品、食品に添加することが許可されているもの等を挙げることができる。
【0039】
上記凝集防止剤としては特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等を挙げることができる。
【0040】
上記吸収促進剤としては特に制限されないが、例えば、高級アルコール類、高級脂肪酸類、ショ糖脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができるが、還元型補酵素Q10やカロチノイド類の安定性等の観点より、ポリグリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。なかでも、HLBが下限として、通常4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、特に好ましくは8以上であり、また、上限として通常12以下、好ましくは11以下、より好ましくは10以下のものが好適である。
【0041】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい具体例は、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンジオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、デカグリセリンペンタオレエートであり、さらには、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノオレエートが好ましく、最も好ましくはジグリセリンモノオレエートである。
【0042】
上記有効成分の溶解補助剤としては特に制限されないが、例えば、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸等を挙げることができる。
【0043】
上記安定化剤としては特に制限されないが、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の組成物中には還元型補酵素Q10およびカロチノイド類以外の活性成分を含んでも良い。これらの活性成分としては、例えば、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、ポリフェノール、有機酸、糖類、ペプチド、タンパク質等を挙げることができる。
【0045】
上記素材のなかでも、吸収促進剤、とりわけポリグリセリン脂肪酸エステルを添加した場合には、還元型補酵素Q10およびカロチノイド類の生体吸収性を大きく高めることができ、本発明の組成物が有する抗酸化作用を効率的に発揮させることができる。
【0046】
還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有する組成物は、そのまま使用することができるが、それらをカプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、錠剤、シロップ、飲料等の経口投与形態に更に加工して、経口剤として使用することもできる。また、練り歯磨き等のための形態に更に加工しても使用しうる。特に好ましくは、カプセル剤であり、とりわけ、ソフトカプセルである。
【0047】
カプセル基材としては特に制限されず、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮等を由来とするゼラチンをはじめとして、他の基材、例えば、食品添加物として使用しうるカラギーナン、アルギン酸等の海藻由来品やローカストビーンガムやグアーガム等の植物種子由来品、プルラン、カードラン等の微生物由来品やセルロース類を含む製造用剤も使用しうる。
【0048】
また、本発明の還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有する組成物は、一般的な食品に加えることもできる。例えば、パン、パスタ、雑炊、米飯、ビスケット、クラッカー、ケーキ、菓子、ガム、キャンディー等に適宜添加して用いることもできる。言うまでもなく、他の食品形態として利用することも妨げない。
【0049】
さらに、本発明の還元型補酵素Q10およびカロチノイド類を含有する組成物は、皮膚に直接塗布する形態として、皮膚用剤として使用することもできる。この場合、剤型は、特に限定されるものではなく、例えば、適当な基剤中に上記組成物を溶解または混合分散させて、クリーム状、ペースト状、ジェリー状、ゲル状、乳液状、液状の形状になされたもの(軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤など)、基剤中に上記薬物を溶解または混合分散させたものを支持体上に展延したもの(パップ剤など)、粘着剤中に上記組成物を溶解または混合分散させたものを支持体上に展延したもの(プラスター剤、テープ剤など)が挙げられる。
【0050】
本発明の組成物、並びに、当該組成物を有効成分とする経口剤あるいは皮膚用剤は、相乗的に高められた活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用を有し、生体を活性酸素またはフリーラジカルが原因となる障害から防護するのに有用である。
【0051】
また、還元型補酵素Q10とカロチノイドの共存により発揮される相乗的に高められた活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去作用は、食品、医薬製品または化粧品の酸化防止にも有用である。すなわち、食品、医薬製品または化粧品中に還元型補酵素Q10とカロチノイド類を共に含有させることにより、食品、医薬製品または化粧品の酸化を効果的に抑制することができる。
【0052】
本方法によって酸化が抑制される食品、医薬製品または化粧品としては特に制限されないが、酸化されやすい油脂を含有する食品、医薬製品または化粧品の場合が特に有効である。
【0053】
食品、医薬製品または化粧品中に還元型補酵素Q10とカロチノイド類を共に含有させる方法としては特に制限されず、これら製品の製造過程において還元型補酵素Q10及びカロチノイド類を添加しても良いし、できあがった製品に、別途調整した還元型補酵素Q10及びカロチノイド類を含有する組成物を添加してもよい。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を揚げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
[抗酸化力の測定法]
(測定法1)
抗酸化力測定の第1法として、酸化反応により生じるチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の量を測定する手法を用いた(Buege J. A. and Aust S. D. ;Methods Enzymol., 1978, 52, 302)。
【0056】
すなわち、本方法では、まず、ラット脳を約2.5倍重量の生理食塩水中でホモジナイズし、脳ホモジネートを得る。この脳ホモジネート80μlに、試料として抗酸化物質を含んだエタノール溶液30μl、イーグルMEM培地120μl、CuSO(240μM)およびFeCl(240μM)を添加し、37℃に保った。27時間後、20%TCA溶液0.9mlと0.67%チオバルビツール溶液0.9mlを添加し、100℃で30分間加熱した。水冷、更に遠心分離後、上清を分取し、532nmの吸光度を測定した。本測定系では抗酸化物質の抗酸化力が強いほどTBARSの量が少なくなるが、抗酸化物質を添加しない場合のTBARS量に対し、抗酸化物質を添加した場合に減少したTBARS量の割合を、その抗酸化物質の抗酸化力(%)とした。
【0057】
(測定法2)
TBARSは赤色物質のため、カロチノイドの種類によっては、上記測定法1では、正確な吸光度を測定することができない場合がある。そこで、DPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl)を用いた分光測定法も用いた(篠原和毅 鈴木建夫;食品機能研究法,2000,218)。
【0058】
本測定法2では、まず、400μMのDPPHエタノール溶液12mlに200mMのMES緩衝液(pH6.0)12mlを加え、さらに12mlのエタノールを加えた混合液を調製した。この混合液0.9mlに抗酸化物質を含んだエタノール溶液0.6mlを添加し、20分後、510nmでの吸光度を測定した。本測定系では抗酸化物質の抗酸化力が強いほど吸光度が小さくなるが、カテキンを用いて作成した検量線より各抗酸化物質の抗酸化力を定量した。すなわち、まず、十分量のカテキンによりDPPHラジカルを消去して最も低い値の吸光度を示した場合の抗酸化力を100%とし、カテキンを添加しない場合、つまりDPPHラジカルが全量残存している場合の吸光度を抗酸化力が0%とした。そして、この2点より作成した検量線を用い、各抗酸化物質を添加した場合の吸光度から抗酸化力(%)を求めた。
[評価式]
上記の測定法によって、還元型補酵素Q10とカロチノイドを併用した場合の抗酸化力(Aとする)、還元型補酵素Q10単独での抗酸化力(Bとする)、及び、カロチノイド単独での抗酸化力(Cとする)を測定する。そして、併用時の抗酸化力と、還元型補酵素Q10単独の抗酸化力とカロチノイド単独の抗酸化力の和(相加効果)を比較し、併用による相乗効果の有無を判定する。
【0059】
本発明においては、還元型補酵素Q10とカロチノイドの併用による相乗効果の有無は、正確を期すために下記の2通りの方法により評価した。
(評価式a) A/(B+C)×100
(評価式b) (A−C)/B×100
式中、Aは還元型補酵素Q10とカロチノイドを併用した場合の抗酸化力、Bは還元型補酵素Q10単独での抗酸化力、Cはカロチノイド単独での抗酸化力を表す。
【0060】
評価式aは、還元型補酵素Q10及びカロチノイドの併用時の抗酸化と、個々の単独の抗酸化力の和とを比較するものである。相加的な効果の場合、理論値は100となり、100を超える結果となれば、相乗効果があると判断できる。
【0061】
一方、評価式bは、還元型補酵素Q10とカロチノイドを併用した場合の還元型補酵素Q10の抗酸化力と、還元型補酵素補酵素Q10単独の抗酸化力と比較するものである。式の分子において、還元型補酵素Q10とカロチノイドを併用した場合の抗酸化力からカロチノイド単独の抗酸化力を減じており、相加的な効果しかない場合には、この値は還元型補酵素補酵素Q10単独の抗酸化と等しくなる。従って、式の理論値は100となり、100を超える結果となれば、相乗効果があると判断できる。
【0062】
(参考例)
1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10、60gのL−アスコルビン酸を加え、78℃にて撹拌し、還元反応を行った。30時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらエタノール400g、水100gを添加した。このエタノール溶液を撹拌しながら、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却し、生成した結晶を濾別した。得られた湿結晶を冷エタノール、冷水の順で洗浄した後に圧乾燥することにより、白色の乾燥結晶95gを得た(有姿収率95モル%)。なお、減圧乾燥を除くすべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.5/0.5であった。
【0063】
(実施例1)
参考例1で得た還元型補酵素Q10及び/又はカロチノイド類の一つであるアスタキサンチンのエタノール溶液(各々100mM)を試料とし、上記測定法1にて、抗酸化力を測定した。各々の測定結果を上記評価式aおよび評価式bに当てはめ、相乗効果の有無を判定した。表1に示す通り、評価式aでは135、評価式bでは205となり、還元型補酵素Q10およびカロチノイド類が共存した場合の明らかな抗酸化力の相乗効果が確認された。
【0064】
【表1】

【0065】
(実施例2)
参考例1で得た還元型補酵素Q10及び/又はβ−カロチン、還元型補酵素Q10及び/又はリコペンのエタノール溶液(各々25μM)を試料とし、測定法2にて、抗酸化力を測定した。各々の測定結果を上記評価式aおよび評価式bにあてはめ、相乗効果の有無を判定した。表2に示す通り、還元型補酵素Q10とβ−カロチンの場合、評価式aでは107、評価式bでは114と算出された。また、還元型補酵素Q10とリコペンの場合、評価式aでは105、評価式bでは105と算出された。以上より、還元型補酵素Q10とβ−カロチン、あるいは、還元型補酵素Q10とリコペンが共存した場合の明らかな抗酸化力の相乗効果が確認された。
【0066】
【表2】

【0067】
(比較例1)
参考例1で得た還元型補酵素Q10およびビタミンEを使用し、実施例1と全く同様の検討を行った。その結果、評価式aでは90、評価式bでは82となり、還元型補酵素Q10とビタミンEの場合には、相乗効果は認められなかった。
【0068】
(実施例3)
米油、硬化油、蜜蝋、レシチン、ジグリセリンモノオレエートの混合物に参考例1で得た還元型補酵素Q10およびアスタキサンチンを添加し、常法により下記成分より成るゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
【0069】
還元型補酵素Q10 60重量部
アスタキサンチン 10重量部
米油 500重量部
ジグリセリンモノオレエート 180重量部
硬化油 170重量部
蜜蝋 60重量部
レシチン 20重量部
【0070】
(実施例4)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、炭素数8:炭素数10=6:4)に参考例1で得た還元型補酵素Q10およびビタミンAを添加し、常法により下記成分より成るゼラチンのソフトカプセル製剤を得た。
【0071】
還元型補酵素Q10 60重量部
ビタミンA 5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセリド 935重量部
【0072】
(実施例5)
参考例1で得た還元型補酵素Q10およびリコピン(トマト抽出物)をプロパノールに溶解し、これを微結晶セルロースに吸着させた後、減圧下で乾燥した。これに、窒素雰囲気下でトウモロコシ澱粉、乳糖、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウムを混合し、次いでポリビニルピロリドンの水溶液を結合剤として加え、常法により顆粒化した。これに滑沢剤としてタルクを加えて混合した後、錠剤に打錠した。
【0073】
還元型補酵素Q10 150重量部
リコピン 10重量部
トウモロコシ澱粉 200重量部
乳糖 120重量部
カルボキシメチルセルロース 80重量部
微結晶セルロース 300重量部
ポリビニルピロリドン 40重量部
ステアリン酸マグネシウム 20重量部
タルク 80重量部
【0074】
(実施例6)
参考例1で得た還元型補酵素Q10およびアスタキサンチンを含有する下記組成のクリームを常法により調製した。
【0075】
還元型補酵素Q10 10重量部
アスタキサンチン 1重量部
グリセロールソルビタン脂肪酸エステル 60重量部
微結晶性ワックス 10重量部
オリーブオイル 30重量部
流動パラフィン 180重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
プロピレングリコール 37重量部
硫酸マグネシウム 7重量部
脱塩水 655重量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型補酵素Q10及びアスタキサンチンを含有し、
還元型補酵素Q10とアスタキサンチンが共存する場合の抗酸化力(A)を測定した際に、同方法により測定した還元型補酵素Q10単独の抗酸化力(B)およびアスタキサンチン単独の抗酸化力(C)が、A/(B+C)×100≧110、および、(A−C)/B×100≧130を満たす組成物。
【請求項2】
還元型補酵素Q10に対するアスタキサンチンの重量比が0.001〜10である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
さらに、油脂を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
油脂の重量に対する還元型補酵素Q10の重量比が0.1%以上である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
経口投与形態に加工された請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
皮膚に直接塗布する形態を有する請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を有効成分とする経口投与剤。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を有効成分とする皮膚用剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を用いることを特徴とする活性酸素及び/又はフリーラジカルの消去方法。
【請求項10】
食品、医薬製品または化粧品の酸化防止方法であって、食品、医薬製品または化粧品に、還元型補酵素Q10とアスタキサンチンを共に含有させることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2013−79287(P2013−79287A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12211(P2013−12211)
【出願日】平成25年1月25日(2013.1.25)
【分割の表示】特願2006−512065(P2006−512065)の分割
【原出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】